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ダクタク句集2022年(令和4年)4月 [ダクタク2022年4月]

4/30sat
我が道を 行く人稀に 荷風の忌
  (わがみちを いくひとまれに かふうのき)

白足袋の 軒に干されて 四月尽
  (しろたびの のきにほされて しがつじん)
  ※NHKの王朝文学講座をYouTubeで聴き始めて3
   カ月。更級日記、和泉式部日記を聞き流した。
   犬の散歩の途中にである。それでも多く登場す
   る和歌に接して親しみを感じるようになった。
   今日の後者の句にも、続けて七七が出る。上等
   ではないが。
   「白足袋の 軒に干されて 四月尽
         紺地の足袋の 普段なつかし」
   「良いことの ながりし四月 疾く過ぎん
            枕に脈の 音の健やか」

4/29fri
あちこちで 遂に顔伏す 目借時
  (あちこちで ついにかおふす めかりどき)

合宿所 窓開け放つ 春の闇
  (がっしゅくじょ まどあけはなつ はるのやみ)
  ※コロナ禍の近況2句。図書館は読書室使用を条
   件付きで再開。隣の人が遠いのでつい安心して
   コックリ。昨年クラスターを出してしまった高
   校の大きな合宿所は今なお閉鎖中。

4/28thu
新年度 なお坂道の 塾通い
  (しんねんどなおさかみちのじゅくがよい)

雪形を 見る人しのぶ メールかな
  (ゆきがたをみるひとしのぶめーるかな)

4/27wed
描きつつ 春は病いの 憂さくらべ
  (えがきつつ はるはやまいの うさくらべ)

オオデマリ アイリスともに 吾嬲り
  (おおでまり あいりすともに われなぶり)
  ※月2回の絵画教室は絵よりもおしゃべり? オ
   オデマリと紫色のアイリスの対照の妙は難しす
   ぎる。

4/26tue
草を刈る 鎌の研ぎ初め 日永かな
  (くさをかる かまのとぎそめ ひながかな)

ようやくの雨音や 晩春を寝る
  (ようやくのあまおとや ばんしゅんをねる)

4/25mon
逃げ水の 先に閉じにし 校舎あり
  (にげみずのさきにとじにしこうしゃあり)
  ※こちらも御多聞に漏れず郊外の小中学校を中心
   になお統廃合の話がある。生活圏、友人知人、
   仕事や親戚などとの関係、果ては選挙の地盤な
   ど、近くに訊けばナルホドと同情が大きくなる。

4/24sun
女二人 スイカの苗の 良し悪し
  (おんなふたり すいかのなえの よしわるし)
  ※当地で西瓜の苗が植え時。例年のごとく2苗だ
   けポットで買ってきた。ちょっと遅めのわりに
   値段が安い。それでは接ぎ木の苗ではないなと
   疑う。案の定。

4/23sat
春の黄に 土偶のまなこ 和らげり
  (はるのきに どぐうのまなこ やわらげり)

石楠花や 女御の日記 思わるる
  (しゃくなげや にょうごのにっき おもわるる)

4/22fri
田は霞む 植うる順番 我にあり
  (たはかすむ ううるじゅんばん われにあり)

すみれ野に埃 顔出す戦車兵
  (すみれのにほこり かおだすせんしゃへい)
   ※ウクライナの要衝マウリポリをめぐる局面が
    最終期にある。すみれ野と街を蹂躙すること
    は許されない。兵は無表情だ。

4/21thu
ミズキ咲き 木の花なべて 白い朝
  (みずきさき きのはななべて しろいあさ)
   ※石楠花の白い花が満開で、白の花ミズキとク
    レマチスが加わった。この季節は期せずして
    我が家の庭はちょっと大仰だが「白の競演」
    となる。花ニラの消えたあとには白い小さな
    ユリ形の花が咲いて、地で白の駄目押しをし
    ている。

4/20wed
城はサクラ 路地には黒き 板の塀
  (しろはさくら ろじにはくろき いたのへい)
   ※郷里会津のサクラの盛りは子供時代の昔4月
    20日前後であったと思う。戊辰戦役で城下
    中心部の古い建物は残っていなかったが、城
    下町の人の風情とその人々が家屋に託す矜持
    がここかしこにあった(ように思う)。

4/19tue
こころみの 源氏分厚き 春の宵
  (こころみの げんじぶあつき はるのよい)
   ※YouTubeのNHK古典講座で「更級日記」を散
    歩の時に聞いている。慣れないことだけれど、
    せっかくのスマホのギガを有効活用!するた
    めだ。テキストもなし、理解不十分も気にし
    ないで、45分×27回を一周聞き終えた。
    かなりの新発見があり、大雑把でも習得の体
    験は実に久しぶりだ。作者の源氏物語への傾
    倒ぶりが随所に現れることも初めてわかった。

4/18mon
風やんで ほんの春雨 耳たてる
  (かぜやんで ほんのはるさめ みみたてる)

奥穂高 置きし小石よ 風光る
  (おくほだか おきしこいしよ かぜひかる)

めがねかけ 少なくなりし 芹摘みぬ
  (めがねかけ すくなくなりし せりつみぬ)

4/16sat
数を聞く 老舗爺売る 桜餅
  (かずをきく しにせじじうる さくらもち)
   ※この季節は桜餅専業とも見える。うーん、や
    っぱりコンビニ買いのものとは違う。

花ミズキ 宝飾着物 買い取ると
  (はなみずき ほうしょくきもの かいとると)

4/15fri
観音堂 五百年の春 大庇
  (かんのんどう ごひゃくねんのはる おおひさし)
   ※桜見物の足を伸ばし、鳳来寺観音堂再訪を果
    たした。初めの時よりしっかり保全されてい
    るようで一安心。相変わらずの優美さ。周囲
    のサクラを眺めて弁当を開く。

4/14thu
葉桜や 病院互いに 付き添いぬ
  (はざくらや びょういんたがいに つきそいぬ)

石楠花の 蕾落とさじ 妻の声
  (しゃくなげの つぼみおとさじ つまのこえ)

4/13wed
啄木忌 費え支えし 金田一
  (たくぼくき ついえささえし きんだいち)
   ※同郷の先輩金田一京助は文学上の付き合いの
    みならず、常に貧困だった東京の啄木に何く
    れとなく援助をした。ちなみに小生の中高使
    用の国語辞書は金田一の手になるものだ。

4/12tue
花ニラの 群れるを踏まず 猫黒子
  (はなにらの むれるをふまず ねこくろこ)

花冷えや 今宵だけとて 床の暖
  (はなびえや こよいだけとて とこのだん)

4/11mon
高齢者試験通れり春の膳
  (こうれいしゃしけんとおれりはるのぜん)
   ※家人の免許更新試験、難関の暗誦試験を優秀
    な成績で通過したらしい。これは医者の見立
    て以上に安心材料、目出度い。

4/10sun
春の朝手の皺深くなりにけり
  (はるのあさてのしわふかくなりにけり)

人間は退歩するらし春爛漫
  (にんげんはたいほするらしはるらんまん)

4/9sat
山小屋の 春曙は 闇多く
  (やまごやの はるあけぼのは やみおおく)
   ※久しぶりに若い時に山に行った夢を見た。真
    っ暗な中でここはどこだろうと息をひそめて
    いると、僅かな窓に山が次第に見えてきた。
    安心。山小屋だ、ここは。

4/7thu
風車売り 夢に長屋の前におり
  (かざぐるまうり ゆめにながやのまえにおり)

春灯 女二人の 声低く
  (はるあかし おんなふたりの こえひくく)
   ※春は茫漠と夢に遊び、覚めては霞の果てに夕
    日を見送る。やや退廃的な心地こそ、季節の
    特権なりしも、それを許さざるはだれ。

4/6wed
眺めては また剪定の 日和かな
  (ながめては またせんていの ひよりかな)
   ※柿の木も若芽が出てきた。当家で図抜けて遅
    いのはぶどうだ。剪定は一応終えているので
    格子のバーに誘引する。これもYouTubeで学
    習したから方法は進化したはずだ。
    ところが剪定のやり残しが多く見つかる。や
    っぱり杜撰だな。

4/4mon
花冷えや 親のビデオの 仕舞い方
  (はなびえや おやのびでおの しまいかた)
   ※生前の両親を撮影したビデオが結構ある。い
    ずれもちゃんと編集整理したものだ。他のメ
    ディアは散逸しても一向に構わないが、これ
    だけは親の面影を残す唯一のものであり、大
    げさだが墓をどう整理して後につなぐかを考
    えるのと同じ心境だ。

4/3sun
蝉貰う人 喜寿となる 連翹忌
  (せみもらうひと きじゅとなる れんぎょうき)
   ※4月2日は高村光太郎の命日。連翹忌という。
    30年ほども前の出張の帰りに、友人と花巻市
    郊外の高村光太郎旧居を訪れた。辺り一面深い
    雪が積もっていて、今のように保存のための上
    屋がなかった旧居は見るからに粗末で寒く、す
    き間から雪原が覗けた。戦後すぐに、宮沢賢治
    の縁繋がりでこの地を選び、隠れ住むように囲
    炉裏に坐して自戒自省の数年を過ごした。
     近くに農家はない、地元の人とも交わりを避
    けていた。例外は村の子供たちで交遊があった
    とか。特に花巻まで買い出しに行ってもどる光
    太郎から飴玉を貰うのが楽しみだったと言う。
    小さな彫り物を貰うこともあったとか。当時の
    子供の一人が、たまたま我々が利用したバスの
    運転手だった。発車時刻までの生き証人?の話。

4/2sat
ジャカランダ
   ホウオウボクになに 四月バカ
  (じゃからんだ ほうおうぼくになに しがつばか)
   ※熱帯三大花樹のことを言っている。もう一つは
    アフリカン・チューリップ・ツリー。別名カエ
    ンボク。日本でいうチューリップツリー(別名
    半纏の木)とは似ても似つかぬが。
    友人撮影の写真が載る蝶のカレンダー、4月は
    ホウオウボクの真っ赤な花、花、花に憩うヘレ
    ナキシタアゲハ。

4/1fri
柳芽吹く 根岸の里の くねり道
  (やなぎめぶく ねぎしのさとの くねりみち)
   ※都心を歩く会は中断して久しい。遠慮のない友
    人と連れ立っての歩き会は実に楽しいものだっ
    た。子規庵を訪ねたあと根岸の古い道を辿ると
    青々とした柳並木の道があった。5年ほども前
    になる。季節は違うが光景がよみがえる。今は
    子規庵も閉鎖中と聞いた。
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ダクタク句集2022年(令和4年)3月 [ダクタク2022年3月]

3/31thu
春に惑う 田舎住まいと 街住まい
  (はるにまどう いなかずまいと まちずまい)
   ※コロナ禍で「なにがなんでも都会で」という考
    えが見直されているという。もっと積極的に首
    都東京と東京圏の規模縮小を図るべきだと思う。
    事が起こったときに今の首都圏はゆとりが無さ
    過ぎるからだ。しかし・・・
    折しもこの週末、目黒川花見と会食の席に誘わ
    れた。即刻OK、久しぶりに歩きたい。いや、
    やめとけ。やっぱり惑う。

3/30wed
紫雲英田は みちのくにあり トラクター
  (げんげだは みちのくにあり とらくたー)
   ※ようやく田んぼに人の動きが見えた。これから
    春耕というか、4月中旬以降の田植えに向けた
    耕しが始まる。間に合うのかなと心配になる。

3/29tue
落ち雲雀 見失うほど 草はなし
  (おちひばり みうしなうほど くさはなし)
   ※雲雀は地方によっては姿を消したところもある
    とか。ふんだんに見れる当地のアリガタミを再
    認識。とはいえ、高速道路の騒音がなかった頃
    はさらに格段に良かったのだが。

3/28mon
花曇り 夕餉の好み 尋ねらる
  (はなぐもり ゆうげのこのみ たずねらる)
   ※ご飯のおかずを言い合っているとはなんと平和
    ボケで、能天気なことか!と一喝されそうな塩
    梅だ。まあ、いいではないか。・・・ちゃんと
    ニュースは見ているし。

3/27sun
釘付けは 一人静よ 露天風呂
  (くぎづけは ひとりしずかよ ろてんぶろ)
   ※午後になって雨模様だが気温は下がらない。当
    家の桃の花は一気に開く。陽光桜、ソメイヨシ
    ノ、桃、プラムなどの開花順はどうであったか、
    記憶も曖昧になってしまった。

3/26sat
花種の 名を書く木札 二つ三つ
  (はなだねの なをかくきふだ ふたつみつ)
   ※彼岸中には寒い日の戻りがあるというが、明け
    て暖かさが戻ってきた。

春光や かおり貴き 娘あり
  (しゅんこうや かおりとうとき むすめあり)
   ※初秋の9月に上総の国から京に向け、家族と旅
    立った娘がいた。菅原孝標の娘13歳である。
    この娘、源氏物語に憧れている更級日記の主役。
    1020年のこと。ざっと1000年も前の話。

3/24thu
忘るるな メールで頼む さくら餅
  (わするるな めーるでたのむ さくらもち)

花を見て より費やせり 御徒町
  (はなをみて よりついやせり おかちまち)
   ※我が家のモモより早く開花したサクラも寒さで
    もたもたしている。さて今日は?

3/22tue
春の雲 リルケ詩集の一個でも
  (はるのくもりるけししゅうのいっこでも)

敦子女史 鴎外読めと言われ春
  (あつこじょしおうがいよめといわれはる)
   ※春夏秋冬、読書の進まぬ理由をあれこれと並べ
    る。今は眠気。
    尾崎喜八「音楽への愛と感謝」(平凡社ライブ
    ラリー)、著者は昔から尊敬する神様のような
    人。怠る理由も許してくれる。

3/21mon
彼岸会も行った気になり庭の隅
  (ひがんえもいったきになりにわのすみ) 

山茱萸やウィルスいずれと思わしむ
  (さんしゅゆやうぃるすいずれとおもわしむ)
   ※山間部に入ったところに山茱萸が咲き誇ってい
    る里を見た。早春の花だが家の周囲では見かけ
    ない。別名でハルコガネバナとか、幸運をもた
    らすといい。

3/20sun
連翹や 登校の列より高く
  (れんぎょうや とうこうのれつよりたかく)

連翹や 家建たぬ地の 主のごと
  (れんぎょうや いえたたぬちの ぬしのごと)

3/19sat
落ち雲雀 見失わずに 草の陰
  (おちひばり みうしなわずに くさのかげ)

今ならば 濃き草餅と 称えんが
  (いまならば こきくさもちと たたえんが)
   ※母の草餅はヨモギが自ら選んで採集したものだ
    けに草のにおい芬々で、子供の時分においしい
    と言った記憶がない。

3/18fri
春眠や害鳥駆除のふれ聞こゆ
  (しゅんみんやがいちょうくじょのふれきこゆ)
   ※曜日を決めて春秋に行う農村、野山での駆除。
    害獣が対象の場合もある。猟銃を用いるのでオ
    ダヤカではないが、実施反対派ではない。

3/17thu
涅槃会は 行けずに朝の まぼろしに
  (ねはんえは いけずにあさの まぼろしに)

西行忌 彷徨ふ外の 兵ありて
  (さいぎょうき さまよふとつの へいありて)
   ※旧暦2月15日は釈迦入滅の日。今年は中止。
    西行はこの日にサクラの散る中で死にたいと歌
    に詠み、何度も言っていたとか。なんと実際に
    は翌日の16に亡くなった。

3/16wed
鳥曇り 北に平和を 言伝り
  (とりぐもり きたにへいわを ことづてり)
   ※北に帰る準備に余念がない鴨たちに、せめても
    のメッセージを託したつもり。

妻は日々 桃の蕾を 測りおり
  (つまはひび もものつぼみを はかりおり)
   ※桃の開花の前にサクラが咲いてしまうのでは?

3/15tue
遅れ来し ラッパスイセン 仄かなり
  (おくれきし らっぱすいせん ほのかなり)
   ※昨日の異常な暑さは植物に強烈な一撃になった
    ようだ。圧巻は近所のふくらみかけた開花前の
    木蓮が一日で全部開いたこと。見事を通り越し
    て変身だ。脚色された舞台のよう。

3/14mon
子をなして 大事らくらく 嫁の春
  (こをなして だいじらくらく よめのはる)
   ※甥の娘が嫁ぎ先で出産した。幼いころから男顔
    負けのやんちゃぶりだったが、なるほど安産だ
    ったらしい。電話口でも元気いっぱいだった。

3/13sun
花辛夷 今年は畔を 厚くせん
  (はなこぶし ことしはあぜを あつくせん)
   ※東北地方では辛夷の花は農作業開始の目印とか。
    当地では早い所で4月中旬に田植えをする。も
    う農作業は始まっている。頑丈そうな分厚い畔
    作りも今は機械が行う。

3/12sat
辛夷咲く 今年ラッパは 先駆けず
  (こぶしさく ことしらっぱは さきげけず)
   ※辛夷が咲き始めた。上にコブシ、地にラッパス
    イセンというのが定番だったが、今年は違う。
    2月の寒さのせいか?でもサクラは例年並みだ
    という。丈の短い植物が深刻に寒さの被害に遭
    ったのかな。

3/11fri
昼前に 鶯餅の 店の前
  (ひるまえにうぐいすもちのみせのまえ)

七輪の 目刺しのコゲと においかな
  (しちりんの めざしのこげと においかな)

3/10thu
赤ともる ギフチョウを見し 春の茶屋
  (あかともる ぎふちょうをみし はるのちゃや)
   ※友人が写真と文を担当した全編蝶のカレンダー。
   3月は草丈も短い繁みに憩うギフチョウである。

3/9wed
雛仕舞う 長持ちの蓋 ギーとなり
  (ひなしまう ながもちのふた ぎーとなり)
   ※余裕を持って雛を飾り、雛祭りが過ぎたら、だ
    らだらせずに仕舞う。いずれにも気を配るゆと
    りがあったものだ。

3/8tue
春蘭や病疲れの口多し
  (しゅんらんややまいづかれのくちおおし)
   ※元気な知人が一人、ガンを患っている。なお意
    気軒高で治療を受けてきたが、なかなか良い結
    果が得られない。さすがに表情に弱さが見られ
    るようになった。それでも話は殆ど先方から。

3/7mon
戸惑いぬ 溢るるほどの ミモザ来る
  (とまどいぬ あふるるほどの みもざくる)

花ミモザ 図書館に行く 道しるべ
  (はなみもざ としょかんにいく みちしるべ)
   ※例年よりずっと遅いミモザ。今年木を小ぶりに
    しようというお宅から大きなバケツいっぱいの
    ミモザが届いた。

3/6sun
春の路地 母の友 奥に住みたり
  (はるのろじ ははのとも おくにすみたり)
   ※春一番の風もおさまる。この陽気は昔々の季節
    の光景を運んでくる。

3/5sat
蕗の薹 秘めたる場所の いい時分
  (ふきのとう ひめたるばしょの いいじぶん)
   ※昨年はゆったり構えていて終盤の食べごろのヤ
    ツをごっそりやられたっけ。この暖かさだ。油
    断は出来ない。

3/4fri
ラインにて 妹が句を見る 春の夕
  (らいんにて いもがくをみる はるのゆう)

牡丹の芽 見知らぬ人に 教えられ
  (ぼたんのめ みしらぬひとに おしえられ)
   ※兄弟とラインで顔を見たり、句を交換したり、
    とてもコロナ禍前にはなぜか恥ずかしくて出来
    なかったことだ。かと思うと初めての人に牡丹
    の芽の違いを教えられたり、思わぬ交流は以前
    と同じ。

3/3thu
雛の家 馳走したため 夕餉かな
  (ひなのいえ ちそうしたため ゆうげかな)
   ※正式にお客を招いて食事をふるまう時には、そ
    れがお祝い事でも不祝儀例えば法事とかの場合
    でも、ご馳走を予め筆で認め、客に供したもの
    だ。洋の東西を越えて共通しているものらしい。

3/2wed
低山の遠きにて春平らかなり
  (ていざんのとおきにてはるたいらかなり)
   ※山高きがゆえに貴からず。房総の山々に高山は
    ないが、深い無数の地の皺、人の住む多くの山
    並みを作っている。低きがゆえにゆったりとた
    おやかに見えることもある。

3/1tue
鷽を見し今日暖かき日となれり
  (うそをみし きょうあたたかきひとなれり)
   ※今朝我が庭の梅の木に「鷽うそ」を見た。確か
    に。頭の黒色、それに続くオレンジ・・・間違
    いない。留鳥で今頃は低地で過ごすとあるから、
    間違いないのだが何せ現れることが少ない。自
    信はあるのだが、哀しいかな、ド素人+門外漢
    だ。しかし人には尋ねない。しばらくは信じる
    ことにした。
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ダクタク句集2022年(令和4年)2月 [ダクタク2022年2月]

2/28mon
西郷も 滴り弱き 春の雨
  (さいごうも したたりよわき はるのあめ)
   ※今月は西郷輝彦が亡くなった。前立腺がんを患
    っていたとか。合掌。多くのシニアが同じ道を
    たどりつつある。小用は出るものの次第に弱く、
    時間は長くなる。

2/27sun 
移り紅 梅身を染めて 思い初む
  (うつりべに うめみをそめて おもいそむ)
   ※梅の種類で移り紅というのは初め白で開花し、
    次第に赤くなるらしい。2月の寒さ続きで梅の
    開花は遅れていたが、この陽気で梅の恋が始ま
    る?

草の芽の かすかな音の 続々と
  (くさのめの かすかなおとの ぞくぞくと)
   ※球根類の芽出しが盛んだ。他の草花、雑草類も
    一斉に地表に出るや、背を伸ばしている。

2/25fri
春の花 鬱なことども ともに増え
  (はるのはな うつなことども ともにふえ)
   ※ウクライナ全土に。かの地の動向を日々記すこ
    とはやめることとするが、どうにもこの鬱はや
    るせない、見逃しがたい。

2/24thu
菠薐草 コロナ禍の年 青丈夫
  (ほうれんそう ころなかのとし あおじょうぶ) 
   ※昨日プーチンが動いた。

2/23wed
黒き幹 黒き節々 梅の花
  (くろきみき くろきふしぶし うめのはな)

風の朝 初クロッカスの 地を割いて
  (かぜのあさ はつくろっかすの ちをさいて)

2/22tue
看護師が 良く眠る夜 ヒヤシンス
  (かんごしが よくねむるよる ひやしんす)
   ※都心で在宅医療の医院に勤務する親戚の娘が
    帰ってきた。日頃心配し通しの親をよそ眼に、
    実家での時間の大半をゆっくり眠って過ごし
    たという。

2/21mon
全集に すき間のありて 漱石の日
  (ぜんしゅうに すきまのありて そうせきのひ)
   ※今日2月21日は漱石が文部省から文学博士
    の称号を打診され、肩書の要なしと回答して
    辞退した日だとか。明治44年のこと。

2/20sun
旬の味 到着待てり 春灯り
  (しゅんのあじ とうちゃくまてり はるあかり)

春の闇 再配達の 人の笑み
  (はるのやみ さいはいたつの ひとのえみ)
   ※テレビの録画で「プレバト」を見た。お題は
    「宅配の手渡し」であった。番組はいつもの
    通りだったが、今回同じ題で自分も作ってみ
    たのが上記の2句だ。いつも思っているが、
    なかなか難しい、これだって「才能あり」は
    難しかろうと思う。

2/18fri
電球に笠あり春に灯りあり
  (でんきゅうにかさありはるにあかりあり)
   ※冷たい夕暮れ。近所の家に昔なじみの温かい
    電球の灯りがともっている。昨今の明るいけ
    れども真っ白な蛍光灯やLEDと違って、見て
    いるだけで少しは温かくなってくる。

2/17thu
なすことのあれども春の朝寝かな
  (なすことのあれどもはるのあさねかな)

遍路笠去年に廻りし人の笑み
  (へんろがさこぞにまわりしひとのえみ)
   ※朝の夢うつつは値千金。日頃は犬の散歩で許
    されないが、今朝だけは別。
    友人の友人が四国遍路旅の話をしてくれた。
    コロナ禍を思えば冒険と言うか一大決心であ
    ったろう。彼に家族はいない。

2/15tue
房総の 光かくやと 春の海
  (ぼうそうの ひかりかくやと はるのうみ)
   ※一年一回の脳MRI検査。昨日とは打って変わ
    ってきれいに晴れ上がり、検査、診察後の展
    望フロアからの景色が素晴らしい。やれやれ
    また一年の命がつながった、と言えば大げさ
    か?

2/14mon
ウクライナ 畑焼きしたき 人あらむ
  (うくらいな はたやきしたき ひとあらん)
   ※今日一日は接種翌日とあって静養日。おかげ
    で発熱、患部の疼痛、頭痛等は全くと言って
    いいほどなかった。今回はモデルナ。

2/13sun
看護師の頬 冬残照の僅か
  (かんごしの ほほ ふゆざんしょうのわずか)
   ※やっと3回目のワクチンを打った。周辺市町
    村の知人よりはかなり遅め。4日前に接種券
    が届いて、予約し、市の集中接種会場に行っ
    た。かなり大勢の人がいた。医療関係の人が
    言っていたが、遅れは明らかに接種券の配布
    作業の遅れのせいだと。

2/11fri
剪定を 一日延ばす 余寒かな
  (せんていを いちにちのばす よかんかな)

スコップも 農具も置いて 冴え返る
  (すこっぷも のうぐもおいて さえかえる)

2/10thu
初午や 祠に餅の 紙包み
  (はつうまや ほこらにもちの かみづつみ)
   ※農作業を始める日で、豊作を祈るお稲荷さん
    のお祭り日とか。餅もそのままではなくて、
    油で揚げたものだった。なるほどキツネ色だ。

2/9wed
針供養 和装で参る 生徒たち
  (はりくよう わそうでまいる せいとたち)
   ※花嫁修業という言葉があった。生け花や茶道
    は現在も盛んだが、めっきり姿を消したのは
    洋裁、和裁の実用を兼ねた習い事。

2/8tue
マニキュアに選手の泪春灯り
  (まにきゅあにせんしゅのなみだはるあかり)
   ※北京冬季五輪は悲喜こもごもの報道あり。

2/7mon
寝違えて 寒き春のみ 他見えず
  (ねちがえて さむきはるのみ ほかみえず)

春嵐 ポンペイ見たし 上野は遠し
  (はるあらし ぽんぺいみたし うえのはとおし)
   ※ポンペイレッドと呼ばれる色が印象的なモザ
    イク画。関西の粋な日本家屋の壁色にも似た
    色だ。

2/5sat
うかれ猫 続きし会は 画面越し
  (うかれねこ つづきしかいは がめんごし)
   ※テレワークとかが普通になった今、積極的に
    これを仲間内で活用する輩もいる。突如テレ
    読書会をやろうとか、昔の同僚のテレビ顔合
    わせをしようとか・・・。まあお断り。
    テレビ飲み会に至っては仲間から「そのうち
    春になったら」と遠ざけられたのにも拘わら
    ず、立春のその日に呼びかけメールが再び舞
    い込んだ。やれやれ・・・。

2/4fri
施設あり節分の声声続き
  (しせつあり せつぶんのこえごえつづき)
   
春立ちて 咽喉を撫でさす 猫のおり
  (はるたちて のどをなでさす ねこのおり)

2/2wed
冷蔵庫 朝に頓死す 春隣り
  (れいぞうこ あさにとんしす はるどなり)

みぞれ日に 市原悦子の 声ありて
  (みぞれびに いちはらえつこの こえありて)
   ※長いこと使ったものは不思議なことに同じよ
    うな時期に更新時期が舞い込む。クルマも冷
    蔵庫も・・・、心臓も消化器も・・・とかに
    はならないようにしなくては。

2/1tue
大寒の地をはむ妻の新車赤
  (だいかんのちをはむ つまのしんしゃあか)
   ※随分待たされた納車日が訪れた。今までのク
    ルマとは年次が離れているので、安全機構や
    ナビ、操作方法に至るまでかなり変化があり、
    面食らっている。当家のクルマ使用と運転は
    殆どが家内だが、慣れるまでは助け合いだ。

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ダクタク句集2022年(令和4年)1月 [ダクタク2022年1月]

1/30sun
蠟梅の寺は散歩に遠くなり
  (ろうばいのてらはさんぽにとおくなり)
   ※片道4千歩近くの寺まで、久しぶりに今回は
    クルマで赴いた。かすかだが馥郁とした香り
    が漂っていた。以前は毎朝この近くまで歩い
    て、帰路も徒歩だった。ところが歳だからと、
    大して意識もせずに次第に歩数が減少してい
    る。・・・歳と身体のいたわり過ぎかも。

1/29sat
春近し 仏頂面の 料理かな
  (はるちかし ぶっちょうづらの りょうりかな)
   ※なんとなく春の兆しを追い求める気持ちがあ
    る。確実な暦の展開をあてにしている。どこ
    かでオミクロンの性状に気を許してるのかも
    知れないが。

1/28fri
疎開知る 着ぶくれの人 門の内
  (そかいしる きぶくれのひと もんのうち)

葬場の閉めたる広さ寒夜かな
  (そうじょうのしめたるひろさかんやかな)

1/27thu
野水仙 はためくほどの 風となり
  (のすいせん はためくほどの かぜとなり)

鉄火丼 どんと来たりて 寒四郎
  (てっかどん どんときたりて かんしろう)
   ※世の中の活気という意味では否応なしの右往
    左往、長い様子見だ。超越?至難の業だ。

1/24mon
三寒の膝粘り切り四温かな
  (さんかんのひざねばりきりしおんかな)

動画が師 剪定すれば 春近し
  (どうががし せんていすれば はるちかし)
   ※寒中冬籠りとは言え、コロナ禍対策としてで
    あり、気分的には落ち着かない日々だ。読書
    も切れ目だし、夢枕獏「白鯨」を読み始める。
     アノ「白鯨」と較べれば超読みやすいが、
    500頁超の厚さだ。

1/23sun
冬ざれや 故郷の大津絵 耳の底
  (ふゆざれや くにのおおつえ みみのそこ)
   ※実に約60年ぶりに会津大津絵という民謡を
    聞いた。祖母の小声の歌を聞いた時以来かも。
    いくつもの曲がある中で、地味な曲調と戊辰
    戦役とその後の暮らしをうたった歌詞は切々
    と訴えるものがある。

1/21fri
新しき 回線通じ 今日大寒
  (あたらしき かいせんつうじ きょうだいかん)

怒髪立つも 外の寒気で 鎮まれり
  (どはつたつも そとのかんきで しずまれり)
   ※インターネット、光電話等の契約先を変更し
    た。昨年の11月以来やっと全ての工事や手
    続きが終了した。

1/20thu
蔵壁に 鴉の影が 日脚伸ぶ
  (くらかべに からすのかげが ひあしのぶ)
   ※大寒の日。さすがに日没後は冷える。しかし
    冬至から一カ月近くたって、夕方の定刻に出
    かけると確実に明るくなってきている。冷え
    てもアッタカイ感じだ。その足は鈍いが。

1/19wed
寒稽古 青の絵の具で 始め見ん
  (かんげいこ あおのえのぐで はじめみん)
   ※千葉県も近く「蔓延防止」対象地域に指定さ
    れる。絵画教室も今回で暫くは休止となる。
    今年最初の会は季語「寒稽古」に当たるが、
    絵の出来は並み。

1/18tue
軒めぐり どんどの藁を 給いたり
  (のきめぐり どんどのわらを たまいたり)
   ※どんど焼きが近くの田んぼで町内ごとに行わ
    れた。それに先立って子供たちは、風の吹く
    寒い日に町内の商店などを回り、大声で藁を
    出してもらった。あの頃の梱包の多くは稲わ
    ら製の筵だった。

1/17mon
冬の虹告げ丁重な礼言われ
  (ふゆのにじつげていちょうなれいいわれ)

この冬は 筆の遅きが さらになり
  (このふゆは ふでのおそきが さらになり)
   ※何年か前から起こった手の強張り。やさしく
    握って書く字がままならない。強張ってペン
    先が暴走することもしばしば。それを避けよ
    うとゆっくり、軽く・・・結果遅くなる。

1/16sun
寒寝床 本持つ指の 頼りなき
  (かんねどこ ほんもつゆびの たよりなき)
   ※当地温暖ではあるが、エアコンなしの部屋の
    未明はさすがにこたえる。「指出し手袋」の
    出動も指先や腕全体の冷えにはかなわない。

1/15sat
ウィスキーの 新瓶となり 小正月
  (うぃすきーの しんびんとなり こしょうがつ)
   ※小正月なんて一般家庭では半ば死語。小豆粥
    とかどんど焼きとか遥か子供時代にははっき
    り残っていたが。

1/14fri
雪の道 おすそ分けとて 姪来たる
  (ゆきのみち おすそわけとて めいきたる)
   ※いただいたカステラがすごくおいしかったか
    らと言う。2切れだけだけど、それで十分。

1/13thu
ツィッターも ラインも如かず 冬静寂
  (つぃったーも らいんもしかず ふゆしじま)
   ※冷えたが穏やかに晴れ上がる。この静寂の魅
    力に対抗できる音は? 主張と騒音のSMS、
    ウィルス禍の激しい噂。・・・。

1/12wed
褞袍てふ 便利はなくて 読書かな
  (どてらちょう べんりはなくて どくしょかな)
   ※椅子に座っても寝っ転がっても、上半身と手
    元指先が寒い。ドテラとかワタイレとかが懐
    かしい。ヒートテックとかではなくて。

1/11tue
布団干す狭くて二枚ばかりなり
  (ふとんほすせまくてにまいばかりなり)
   ※男が設計した家は家事には不向きと、とかく
    の不平には慣れているが、寒中の晴れ間に布
    団を干そうとして今更自分でも実感。

1/10mon
寒中は 空のみの野の いとどなり
  (かんちゅうは そらのみののの いとどなり)

目方増え 医師に年賀の 声低く
  (めかたふえ いしにねんがの こえひくく)
   ※ここ7,8年安定していた体重が怪しい動き
    を見せている。想定範囲をこの半月ほど飛び
    ぬけている。一足早く緊急事態宣言発出か。

1/9sun
着ぶくれて 北の民話を 繰り出せり
  (きぶくれて きたのみんわを くりだせり)

正月や 突然友の 顔と声
  (しょうがつや とつぜんともの かおとこえ)
   ※おそるおそるLineで友達を増やす。思わぬと
    ころで友人とテレビ電話で話した。テレワー
    クとかテレビ会議とか世の中では盛んだが、
    遅ればせながら。

1/8sat
緩斜面 ゆっくり滑るを 夢に見し
  (かんしゃめん ゆっくりすべるを ゆめにみし)

初夢や 主席を好きに 握手せり
  (はつゆめや しゅせきをすきに あくしゅせり)
   ※日頃の思いとは別に、いざ対面すると興奮し
    て握手までしてしまう。目覚めて醜態とは思
    うのだが。ホンマモノの外交もこうした、イ
    デオロギー・安保・経済上の便益・歴史など
    ・・・複雑なファクターを内包しつつ、目先
    の国益で動いてしまう。こんなことがあるの
    では?

1/7fri
南房総の雪 子供連れ立ち
  (みなみぼうそうのゆき こどもつれだち)

街灯の下に 無限の雪降りて
  (がいとうのしたに むげんのゆきふりて)

寒の夜 根雪になれと 思いしも
  (かんのよる ねゆきになれと おもいしも)

氷砕く クルマの音や 寒椿
  (こおりさく くるまのおとや かんつばき)
   ※雪国生まれの小生にとって昨日の大雪は予想
    外の吉事。雪が降りしきる時の吸音するかの
    ような静寂を雪が上がった未明から今朝まで
    感じていた。満足。

1/6thu
着ぶくれて 道守る人 旗持てり
  (きぶくれて みちまもるひと はたもてり)
   ※普段の暮らしが始まった。通勤、工事・・・
    と周囲を見ていたら、雪が降ってきた。見る
    見る積もってきた。降り止まぬ。びっくり。

新年にドクター✕を待つ祈り
  (しんねんにどくたーえくすをまついのり)

1/5wed
寒の入り 寝床の日記の 行僅か
  (かんのいり ねどこのにっきの ぎょうわずか)
   ※三が日はすうーと過ぎ、早や今日は寒の入り。
    寝床の腕、指は防寒対策を施しているが、さ
    すがにそれでも冷たい。就寝は素早く、払暁
    はゆっくりと・・・このパターンは抜け出せ
    そうにない。

1/4tue
冬茜 坂の途中の 家なりき
  (ふゆあかね さかのとちゅうの いえなりき)
   ※都心住まいの頃の通勤路が不思議と印象深い。
    中でも毎日上り下りした坂道は四季の光景が
    焼き付いている。

1/3mon
万両や 我が時代に 歌ありて
  (まんりょうや わがじだいに うたありて)
   ※紅白歌合戦の歌にしても、現代の若い人々は
    歌、楽曲に本当に恵まれているのだろうか?
    と素直な疑念あり。今メディアの多様化の割
    にその幅は狭いのでは? 拡散はするが模倣
    と好みの境は漠としている。

1/1sat
元朝の 踏切の音 まっすぐ来
  (がんちょうの ふみきりのおと まっすぐく)

元日や 妻は普段の 電話をし
  (がんじつや つまはふだんの でんわをし)
   ※犬の散歩に盆も正月もない。ゆっくり帰って
    きたら姪夫婦の年賀の来訪。嬉しいスタート。
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ダクタク句集2021年(令和3年)12月 [ダクタク2021年12月]

12/31fri
コロナ禍や なれど住処に 蜜柑熟れ
   (ころなかや なれどすみかに みかんうれ)

冬型の 高気圧良し ガラス拭き
   (ふゆがたの こうきあつよし がらすふき)

ご無沙汰しご無沙汰されて除夜の鐘
   (ごぶさたしごぶさたされてじょやのかね)
   ※大晦日の今日、いつもより多めに飲んで、早
    めに床に就くのが恒例。「いく年くる年」は
    朝ゆっくり見る。

12/30thu
似せ絵しか 描けぬ哀しさ 年の暮れ
  (にせえしか かけぬかなしさ としのくれ)
   ※水彩画、「描きたいのを好きに描けば良い」
    と思うのだが、これがなかなか・・・。

水滸伝 年末までに 終わらざる
  (すいこでん ねんまつまでに おわらざる)

12/29wed
誕生日 大根焚きに 揚げ入れて
  (たんじょうび だいこんだきに あげいれて)

抱負をという声なくて誕生日
  (ほうふをというこえなくてたんじょうび)
   ※使い慣れていないスマホで、食事に訪れたフ
    ァミレスのアプリをインストールしたら、な
    んと20%割引の上に誕生祝いとかで大きめの
    ケーキまでプレゼントされてびっくり!

12/28tue
老庭師 鋏み風に乗る 年の暮れ
  (ろうにわし はさみかぜにのる としのくれ)

極月や 垣の揃いに こだわりて
  (ごくげつや かきのそろいに こだわりて)
   ※元プロの義兄が手入れしてくれたものだが、
    代わりの老庭師の腕はまだつたない。でも鋏
    の音だけはいいようだ。刃物の世話が上手な
    のかも。

12/27mon
年内の 仕事と言われ 蜜柑もぐ
  (ねんないの しごといわれ みかんもぐ)
   ※先日述べた蝉の抜け殻が落ちないようにそっ
    と鋏を入れる。去年は裏作の年でほんの少し
    しか実をつけなかったが、今年は大丈夫! 
    背の高さほどの、一抱えほどの木一本なのだ
    が、ざっと120個くらいかなと皮算用をし
    ている。味もいい、濃厚さもある。

12/25sat
金星の 西に隠れて 聖夜かな
  (きんせいの にしにかくれて せいやかな)

おとなしい 番組見たり 聖夜なり
  (おとなしい ばんぐみみたり せいやなり)

平らかに 聖地の星を 調べたり
  (たいらかに せいちのほしを しらべたり)

かしこみつ 上皇様の お歳聞く
  (かしこみつ じょうこうさまの おとしきく)
   ※作夜はクリスマスイヴ。上皇様とは誕生日が
    12年と5日違い。干支も同じ。

12/24fri
空蝉や ミカンの枝で 年を越す
  (うつせみや みかんのえだで としをこす)
   ※実写生でもこれはいけないと言われそう。季
    語が三つも重なっている。空蝉、ミカン、年
    越し。ミカンをもいで試食した時に発見、こ
    んなのもいいじゃないかな。

12/23thu
句を添えて 師走の動画を 温めり
  (くをそえて しわすのどうがを あたためり)
   ※今春スマホユーザーとなったのを機に、その
    機動性、カメラの高機能を活かして、動画を
    アップすることを思いついた。既に30本近
    くをアップロード済だ。
    しかし動画といっても静止画を繋いで季節の
    5句を盛り合わせ、そこに好きな音楽をBGM
    とするものだ。1本が3分弱で飾り気のない
    動画である。当然見てくれる人は殆ど0。
    これが本人には意外と新鮮な「句帳」となる
    ことに気がついた。句の羅列より思い出深い、
    面白い。メインは句なのか、写真なのか、音
    楽なのかすら・・その時々。これが無料とは。

12/23wed
朝コール 声も馥郁 冬至たり
  (あさこーる こえもふくいく とうじたり)

柚子なきを 謝して冬至の ジャスミン湯
  (ゆずなきを しゃしてとうじの じゃすみんゆ)

冬至日や 光あるうち 長湯かな
  (とうじびや ひかりあるうち ながゆかな)
   ※今日まで太平洋側は比較的暖か。穏やかな冬
    至の晴れ間にホッとする。明日からは一段と
    寒さが増すとか。今日は頑張って、句の動画
    を5個 YouTubeにアップした。

12/21tue
容保は 宸翰胸に 冬すみれ
  (かたもりは しんかんむねに ふゆすみれ)
   ※大通りの歴史が少しずつ見直されている。慶
    喜の幕末への思い、容保の誠意吐露、共に朝
    敵とされたことへの反発等々。一朝に全てが
    きれいに繋がるものではないが・・・。

12/20mon
路地を来て 神田駅前 冬ぬくし
  (ろじをきて かんだえきまえ ふゆぬくし)
   ※久しぶりに神田小川町近辺に行った。帰途は
    知ったかぶりをして路地をめぐり遠回りの神
    田駅に出ようとした。道路は最盛期?のよう
    には導いてくれなかった。スジ違いを何度か
    犯した。されど結果は勝手知ったる神田駅界
    隈。この辺はまだ大丈夫。

12/19sun
そこらじゅう痒いが目良し耳も良し
  (そこらじゅうかゆいがめよしみみもよし)

寄せ鍋も辛くせよ赤くせよという
  (よせなべもからくせよあかくせよという)

コロナ禍も上司落研湯気揺れる
  (ころなかもじょうしおちけんゆげゆれる)
   ※年末清掃の束の間に川柳3題

12/18sat
冬の雲日没早くならざる日
  (ふゆのくもにちぼつはやくならざるひ)
   ※日中の時間が一番短いのは冬至の日だが、日
    の入り、日没が早いのは冬至以前の12月上
    旬、その分日の出が一番遅いのは冬至後の12
    月下旬だとか。少し賢くなった。

12/17fri
山茶花や 公家の住まいの 石の塚
  (さざんかや くげのすまいの いしのつか)
   ※かなり以前の冬の日に或る公家の住居跡を訪
    ねたことがあった。京都の寒さを身体で思い
    知った一日だった。

12/16thu
目うつろに 呆けし役を 初時雨
  (めうつろに ほうけしやくを はつしぐれ)
   ※俳優山崎努が認知症の老人を演じる映画を見
    た。目の表情が真に迫っていた。

12/15wed
寒き日や 喪中の葉書 集めけり
  (さむきひや もちゅうのはがき あつめけり)

念入りに 少なき賀状 炬燵かな
  (ねんいりに すくなきがじょう こたつかな)
   ※賀状をゆったり書くという経験はない。枚数
    をこなすためについ生産的な方法をその都度
    考えるからだ。しかし今年は違った。大幅に
    枚数を減らし、本来の?書き方に戻った。あ
    せってもいない。

12/14tue
義士の日や 堀部弥兵衛の 齢となり
  (ぎしのひや ほりべやへえの としとなり)
   ※冷たい午前、雪が落ちてきてもおかしくない。
    安兵衛の義父で、義士の最高齢。自分の年齢
    を考えるのに変に現実感がある。

12/13mon
白菜や 妻息災に ざくと割く
  (はくさいや つまそくさいに ざくとさく)
   ※この音、力強いザクッと・・・元気印。

新海苔や 百年の名産 送りたり
  (しんのりや ひゃくねんのめいさん おくりたり)

12/12sun
しつこさで 癌に克つさと 冬帽子
  (しつこさで がんにかつさと ふゆぼうし)
   ※再発した肺ガンに化学療法を続けている床屋
    はげっそり痩せたが、禿げあがった頭と目力
    は精悍でなお意気軒高だ。

12/11sat
身につかず終いの楽器大掃除
  (みにつかずじまいのがっきおおそうじ)
   ※今日明日の気温はぐっと高くなるとあって、
    大掃除その1と指定され、召集を受ける。

12/10fri
花札を二人向かいて冬日向
  (はなふだをふたりむかいてふゆひなた)
        
背伸びして取らん梢のレジ袋
  (せのびしてとらんこずえのれじぶくろ)
   ※今朝の気温は厳しいが、十分な日差しが救っ
    てくれる。

12/9thu
開戦の日 熱狂せしか 吾もまた
  (かいせんのひ ねっきょうせしか われもまた)
   ※対米開戦80周年の今年は当時の状況発掘のニ
    ュースや資料が多い。対中戦争の泥沼化、米
    国中心の対日圧迫政策、軍部の好戦姿勢と国
    民の支持、開戦に至った要因は様々なウェイ
    ト付けが可能だ。

12/8wed
冬ごもり ペトルーシュカを 聴けと友
  (ふゆごもり ぺとるーしゅかを きけととも)

ネットに出 たちまち主役 金目鯛
  (ねっとにで たちまちしゅやく きんめだい)
   ※北海道に住んでいた頃、囲炉裏焼き屋で金目
    鯛やホッケは馴染みの魚だった。ところが金
    目鯛はその後出世?し、内地(北海道では本
    州をこう呼んでいた)で高値となった。今や
    ネットでももてはやされているとか。
    当時から小生はホッケにより親近感を覚えた。
    うまいし塩の香りがする。しかし今や居酒屋
    では結構高い。ホッケ、お前もかッ。

12/6mon
極月も あかつき闇を 重宝し
  (ごくげつも あかつきやみを ちょうほうし)

同じこと 言う人の来る 落ち葉焚き
  (おなじこと いうひとのくる おちばたき)
   ※加齢のせいばかりではなく親からの遺伝もあ
    って深夜から未明の時間に目覚め、そのまま
    長い時間を過ごすことが多い。あせることも
    あるが読書時々うつらうつら・・・楽しめる
    ようになった。冬は寝巻の下に長袖のシャツ
    を着ていても、寝床から腕を出すと寒いので、
    作業用の手さし(袖カバー)を用意している。
    厳寒期には指先出し手袋も。

12/4sat
師走来る 時の会釈は 少しだけ
  (しわすくる ときのえしゃくは すこしだけ)

垣根刈る 冬支度かと 言われたき
  (かきねかる ふゆじたくかと いわれたき)
   ※早いものだ、と常套句を言わねばならない。
    遠慮会釈のない時の流れ。流れに沿って、昔
    流の冬支度を。

12/2thu
舳倉島 渡りの鳥の 五万とぞ
  (へぐらじま わたりのとりの ごまんとぞ)
   ※快晴、晩秋の能登舳倉島の様子を見た。テレ
    ビで。渡りの鳥のまたとない中継地だ。夥し
    い種類と数。多くはシベリアからで冬を日本
    以南の地で過ごすためにきている。すごい、
    生命力に溢れた島。

12/1wed
勲一等の 柿は一葉に 師走来る
  (くんいっとうの かきはひとはに しわすくる)
   ※今年の柿はたった一本ながら、たわわに甘い
    実をつけ、シニアに毎日の楽しみをくれた。
    勲一等功一級ものだ。

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ダクタク句集2022年(令和4年)下期 自選集 [自選集2022]

12/31sat
行く年も走りおおせし鉄路あり 
  (ゆくとしもはしおおせしてつろあり)
さわし柿切れ干し柿を食らう暮れ
  (さわしがききれほしがきをくらうくれ)
暮れなれど二人ポカンと映画見る
  (くれなれどふたりぽかんとえいがみる)
歳晩に火鉢を出して非日常 
  (さいばんにひばちをだしてひにちじょう)
愚痴を言う大晦日にも三つだけ 
  (ぐちをいうおおみそかせにもみっつだけ)
   ※年内の仕事は最低限にして昨日までに終わっ
    た。今日は心身ともに予備日? これが大正
    解。それで句の方をちょっと棚卸し。暮れの
    句を掃除し残った句を羅列する。
    映画は「恋におちたシェイクスピア」、なぜ
    かちゃんと通しでは見なかったヤツ。

12/30fri
煤払い終え扇橋の千代女かな 
  (すすはらいおえせんきょうのちよじょかな)
   ※先代入船亭扇橋の得意演目ではなかったよう
    だが、古いテープで「加賀の千代女」を聴き、
    いっぺんで好きになった。今その動画はアッ
    プされていないようだ。
    千代女の有名な句に「あさがおやつるべとら
    れてもらひみず」がある。扇橋は落語界一の
    俳句好きだった。

黒豆の出来は如何と長電話 
  (くろまめのできはいかんとながでんわ)

12/29thu
耕筰忌 からたちの花の 今やっと 
  (こうさくき からたちのはなの いまやっと)
   ※明治以降の日本の歌には、メロディの繰り返
    しで1番2番ではなくて全曲流れるように一
    つのメロディによるものが多い。
    城ヶ島の雨(梁田貞)初恋(越谷達之助)小
    諸なる古城のほとり(弘田龍太郎)などなど。
    へたくそな私が歌えるようになるまで大いに
    時間を要したが、その分味わい深い。当時は
    一種の流行だったのかも。

12/28wed
海鼠腸を 食う人を見て 喜寿迎ふ 
  (このわたを くうひとをみて きじゅむこう)

喜寿の席 トンカツ食いて 見つめらる
  (きじゅのせき とんかつくいて みつめらる)

生きるのみ 雨のあがりて 喜寿の冬
  (いきるのみ あめのあがりて きじゅのふゆ)
   ※満77歳の誕生日を迎えた。祝いの宴で一席、
    羞恥心を抑えて喜寿の3句。

12/27tue
極月や 火の用心の 江戸言葉 
  (ごくげつや ひのようじんの えどことば)
   ※年末は毎日夕方に「火の用心」の見回りをし
    ている。最近はうるさいとかやめろとか一部
    住民が反発する所があったらしい。なんとア
    ホがいることか。
    拍子木の音のあとに、「火の用心さっしゃり
    ましょう」と粋な呼びかけをする人がいる。
    ハハーンあの人だな。

12/26mon
歳末に 展望しえぬ 世事多く 
  (さいまつに てんぼうしえぬ せじおおく)
   ※メディアは一斉に年末モード。一年を振り返
    り、翌一年をばっさりと展望する、・・・の
    だが。展望と言える内容は少ない。

12/25sun
車椅子 押すは孫の子 クリスマス
  (くるまいす おすはまごのこ くりすます)

手袋やクルマ待つ間の毛玉とり
  (てぶくろやくるままつまのけだまとり)
   ※クリスマス光景点描。平和だ。

12/24sat
窓越しにダンス練習見る聖夜
  (まどごしにだんすれんしゅうみるせいや)
   ※クリスマスめいたものは身辺にも近所にもな
    いと思っていたが、そうでもない。
    近くに越して来た中国人の中年独身男性がど
    ういうわけか家にイルミネーションを飾って
    いる。へえ・・と驚いて眺める。公民館のホ
    ールでは練習か本番か・・・。優雅だ。

12/23fri
冬嵐 アクア通いの 医師休診
  (ふゆあらし あくあがよいの いしきゅうしん)

名を聞きぬ 顔はメールで 冬の孫
  (なをききぬ かおはめーるで ふゆのまご)
   ※安全を考えるときりがない。まして冬に生ま
    れた初孫だ。

12/22thu
新聞を 素早く読みて 冬至かな
  (しんぶんを すばやくよみて とうじかな)

さわし柿切れ干し柿を食らう暮れ
  (さわしがききれほしがきをくらうくれ)
   ※12月はバタバタと忙しいとか、あっという
    間だとかの声を聞く気はない。こう寒いので
    は暖かい屋内でじっとしているにしくはない。
    今日は冬至ではないか。

12/20tue
木枯らしや不意なる喉の内視鏡
  (こがらしやふいなるのどのないしきょう)
   ※親しい友が甲状腺ガンで死んでから2年にな
    る。こちとらも甲状腺ホルモン某の持病があ
    る上に最近とみに喉元のところでミニトラブ
    ルが起こる。美声もかすれることが多い。
    呼吸器科に行って訴えた。心配を取り除いて
    と。そしていきなりの内視鏡だ。結論は、
    「きれいです。なんにもありません。あって
    も年齢相応の嚥下トラブルでしょう」と。

12/19mon
サッカーは 冬の季語なり メッシ勝つ
  (さっかーは ふゆのきごなり めっしかつ)
   ※アルゼンチン、PK戦の末に優勝。冬の季語で
    ある所以はシーズン設定にあるだろうと想像で
    きるが、この熱戦にはふさわしくない。手に汗
    握る2時間だった。

12/18sun
年賀状仕舞いを告げて月下弦
  (ねんがじょうしまいをつげてつきかげん)
   ※年賀状仕舞いとした。迷った。ここでも下りの
    明確な階段を降りることになるのだぞ、と言い
    聞かせる。

12/17sat
農道の一角カフェとなりて冬
  (のうどうのいっかくかふぇとなりてふゆ)
   ※行ってみると洒落た料理をこざっぱりと提供
    する、地元にはない店だ。この手の店が方々
    に現れ、センスを感じながらも、音もなく
    消えていく。お客は地方都市の若い女房連、
    30km圏内、単価1500円で基本的にはゼロサム
    ゲームである。逞しい例外もあるけれど。

12/16fri
木賃といふアパートの煤払い
  (もくちんというあぱーとのすすはらい)
   ※周辺の他の物件に較べ、50年以上前に建て
    られたもの。居住者がいっしょに大掃除して
    いた。今どき貴重な光景。黒光りしている?

12/13tue
出勤は 冬夕焼け見て 深夜番
  (しゅっきんは ふゆゆやけみて しんやばん)

人参のとれてシチュウに大切りに
  (にんじんのとれてしちゅうにおおぎりに)

12/11sun
着ぶくれて 週末頼みの 吊り革に
  (きぶくれて しゅうまつだのみの つりかわに)
   ※久々に「週末頼みの通勤」の感覚を思い出し
    た。ところがちっとも苦ではない。

12/10sat
湯気の音 剃刀の音 昼下がり
  (ゆげのおと かみそりのおと ひるさがり)
   ※馴染みの床屋の主人がなくなり、そのまま閉
    店。ずっと近くの格安店に行った。料金はほ
    ぼ半分、時間は1/3、「どうしましょう」以
    外無言、悪くない。

12/9fri
十二月 火星いざよふ 月を待つ
  (じゅうにがつ かせいいざよう つきをまつ)
   ※18時前の散歩のときに十六夜の月が山の端
    を離れた。行く先には火星が待っている。見
    事な月だが、なかなか火星に追いつけない。
    さて、このレース、今夜はどうなるか?

12/8thu
滑子汁 ふうふうする間の 香りかな
  (なめこじる ふうふうするまの かおりかな)
   ※寒さはなかなか戻らないなと嘆いている間に、
    これが平年並みとなってしまう。とにかく暖
    かい部屋、熱いものが欲しい。

12/7wed
神無月 四万人を 呼ぶ娘
  (かんなづき よんまんにんを よぶむすめ)
   ※先月初旬あいみょんがワンマン・ライヴで甲
    子園球場を札止めにした!! よく知らない
    歌手、二三度聴いたことはある。とても信じ
    られないペンライトの波また波。

12/6tue
モーツァルト忌 朝一番で ジュピターを
 (もーつぁるとき あさいちばんで じゅぴたーを)
   ※季語にモーツァルト忌というのがあると知っ
    た。やや異様な感じがするが、せっかくだから
    交響曲第41番で記念日(の一日遅れ)を刻む
    ことにした。

12/5mon
戦ありて 落ち葉の上に 松落葉
  (いくさありて おちばのうえに まつおちば)
   ※公民館、集会所の大掃除。こういうのをしっか
    りやるのが、シニアの役目だと少しは認識して
    出かける。それにしても外の作業は今日あたり
    かなり酷だ。彼の地では、寒さの酷さを知る者
    が寒さ攻めにしている。

12/3sat
初炬燵 文庫本にて 漱石を
  (はつごたつ ぶんこぼんにて そうせきを)
   ※昨日今日一段と冷え込む。リビングにコタツと
    いうのは今まで避けてきたが、もうこの歳、そ
    んなことは言っていられない。

12/2fri
大どれの大根 店を攻略す
  (おおどれのだいこん みせをこうりゃくす)

新聞は 瑣事のみ多く 日向ぼこ
  (しんぶんは さじのみおおく ひなたぼこ)
   ※ネットを初め情報過多の今日では新聞の位置も
    難しい。ヘッドラインはとっくに知られている
    し、深掘りするにしても対象の選択は読者によ
    ってことなる。全方位型になると、瑣事の羅列
    となりかねない。購読料を払っているので目を
    通さざるを得ない。半ばいやいやだ。家内はチ
    ラシ以外殆ど読まない、はっきりしている。こ
    れがうらやましい。

12/1thu
干し柿の 遅れて吊るす 十余り
  (ほしがきの おくれてつるす とおあまり)
   ※日々の瑣事のみで静かにしていると12月の到
    来に感慨はない。しかしこの日長いこと途切れ
    ていた友人とのメール交換が出来て、これから
    年末の幸いなる予感がする。


          **********


11/30wed
小春日の港に人のいぬ無残
  (こはるびのみなとにひとのいぬむざん)
   ※カップル観光客の聖地になりかけた木更津港
    をまたぐ中の島大橋も人っ子ひとりいない。
    海と港を見渡す昔日の静けさと言えないこと
    もないが、今度は船が断然少ない。

11/28mon
朝刊の 読めぬ昏さや 時雨雲
  (ちょうかんの よめぬくらさや しぐれぐも)
   ※いやでも冬の到来を感じた朝。真っ黒な雲が
    空を覆い続けた。寒さもひとしお。
    そうだ、コタツを作ろう。

11/27sun
冬めく日 自宅待機とやらでいる
  (ふゆめくひ じたくたいきとやらでいる)
   ※ゼロコロナ目標ではないから、濃厚接触者の
    更なる探索はしていない。しかしそれに準じ
    た注意喚起はある。その筋から「自宅観察・
    外出自粛」の要請があった。感染ルートは仄
    めかす程度で、最後に「通常の日常対策で十
    分です」とも。それなら言って来るな、と思
    ったが。

11/26sat
曲りても 玉葱の苗 植え終わる
  (まがりても たまねぎのなえ うえおわる)
   ※早生の苗を植えたところで雑事が増えたため
    一休み。今回で予定した苗は全部植え終わっ
    た。鉛筆の木軸ほどの太さの葉鞘が望ましい
    というが苗の調達段階でそれは挫折する。そ
    んな立派な苗ではない。黒マルチは使わない。

11/25fri
ワクチンの五回目 初冬の静寂
  (わくちんのごかいめ しょとうのせいじゃく)
   ※集団接種会場で粛々と済ませた。慣れて哀し。

11/23wed
冬の日や事故せし妻の帰宅かな
  (ふゆのひやじこせしつまのきたくかな)

事故調書自署なめらかに石蕗の花
  (じこちょうしょじしょなめらかにつわのはな)

冬夕焼け惑い長きに見ずに果て
  (ふゆゆやけまどいながきにみずにはて)

11/22tue
剪定の音続きたり冬支度
  (せんていのおとつづきたりふゆじたく)

バサと落ち研ぎ手の腕を暮れに聞く
  (ばさとおちとぎてのうでをくれにきく)
   ※11月恒例の垣根の刈り込みだが、近年は次
    第に億劫になりつつある。着手せずに、今日
    は刃物の研ぎ日とか勝手に決めて一日延ばし
    にする。

11/21mon
テレビ電話互いに冬の身づくろい
  (てれびでんわたがいにふゆのみづくろい)

三の酉あり火の用心と時候言い
  (さんのとりありひのようじんとじこういい)

11/19sat
保母開ける窓少しだけ冬はじめ
  (ほぼあけるまどすこしだけふゆはじめ)
   ※コロナ渦で換気は怠れない、しかい今朝の風
    はつめたい。この前までのゆったり換気があ
    っという間に冬の光景に。

11/18fri
雨音は幻聴 小春の日の朝
  (あまおとはげんちょう こはるのひのあさ)

犬こばむ 晩秋日々の同じ道
  (いぬこばむ ばんしゅうひびのおなじみち)
   ※5回目のワクチンを打ってきた。集団接種会
    場では打つ人も迎えるスタッフも粛々と仕事
    をこなしている印象。結構な形の雲が面白お
    かしく晩秋の空を飾っているのに、ワクチン
    接種にかくも馴れ切ってしまうとは・・・。

11/17thu
顎引いて 若く撮れると 秋の宿
  (あごひいて わかくとれると あきのやど)
   ※小人数で近場の温泉郷に。家族外の同伴者と
    の宿泊は何年ぶりか? もちろん恐る恐るの
    出立だったが、ホテルに着いて湯に入って酒
    が入れば・・・もう心配は雲散霧消。これが
    いけない。

11/16wed
月島の 路地に山芋 並べあり
  (つきしまの ろじにやまいも ならべあり)

病葉や 柿のヘタ虫 駆除を聞く
  (わくらばや かきのへたむし くじょをきく)

11/15tue
秋フェスタ 膝をさすりて 餅の列
  (あきふぇすた ひざをさすりて もちのれつ)
   ※農協の収穫祭と言えどもフェスタと称する。
    一番人気はつきたての餅の販売だ。列のすぐ
    そばで絶えずついてこねて・・・。

11/14mon
孫自慢 歴史好きだと 葛の花
  (まごじまん れきしずきだと くずのはな)
   ※シニア同士の話題は、結局は子と孫と病気の
    自慢に落ち着く。幸いコロナ禍のせいで、聞
    く被害からは遠ざかっていたが、ぼちぼち再
    開の気配だ。

11/12sat
お十夜といふを知りてぞ喜寿の坂
  (おじゅうやというをしりてぞきじゅのさか)
   ※もうひと月余りで満で喜寿の歳を迎える。関
    西で主に浄土宗の仏事として十夜法要という
    のがある。「現世で十日十夜善いことをすれ
    ば・・・」という、これからでも間に合う、
    ドロナワOKの教えらしい。すがりたい気持
    ち?あります。

11/10thu
喜寿の日に 会社退けりと 星月夜
  (きじゅのひに かいしゃひけりと ほしづきよ)
   ※会社生活を終える感慨はその長さによるので
    はなかろうが、恵まれてかつ望まれて勤務を
    続けられたことは幸せなことだと思う。お疲
    れさま。

11/9wed
橡餅を 目指し竈に 火をくべぬ
  (とちもちを めざしかまどに ひをくべぬ)

子が可愛 鴉が泣きて 秋澄めり
  (こがかわい からすがなきて あきすめり)

蚯蚓鳴き 酒も喉越し 緩やかに
  (みみずなき さけものどご しゆるやかに)
   ※絵画教室の例会で先生が来ない。一番熱心な
    のに。何度電話をしたのに出ない・・・。も
    しかして? 彼女は80歳台中盤、一人暮ら
    し。終わるころ、ひょっこり顔を見せた。
    スマホ持たずに出先で一時間以上も立ち話と
    か。帰宅して着信の多さにびっくり。

11/6sun
秋の空 数合わせ気味の 守備位置に
  (あきのそら かずあわせぎみの しゅびいちに)

フェスなるも 法被が主役 いわし雲
  (ふぇすなるもはっぴがしゅやくいわしぐも)
   ※地域の蘇生と祭りのリベンジなど思惑が交錯
    しても、お天気には恵まれた。若手のエンジ
    ンに少しでも火がつくか?

11/5sat
ナレーターの 声ゆったりと 古都の秋
  (なれーたーの こえゆったりと ことのあき)
   ※養老孟司の愛読者、ファンではないが、彼と
    鎌倉を描いたBSシリーズ番組は好きだ。鎌倉
    への対し方、愛し方は大好きだし、それ以上
    に断然妬ましい。

11/4fri
ミサイルと 地震頻りに 夜長とて
  (みさいると じしんしきりに よながとて)

合唱の 女史再デビュー 雁渡る
  (がっしょうの じょしさいでびゅー かりわたる)
   ※地域の活発な女性陣、鳴りを潜めていたが、
    この週の各種催しから息を吹き返した感があ
    る。その昔のお局さんも加わる。

11/3thu
死ぬまでの 替え芯ありて 文化の日
  (しぬまでの かえしんありて ぶんかのひ)
   ※シャープペンシル用に替芯0.5mm,2Bを取り
    寄せた。普通の店にはないから少し多めに3
    ケースを買った。それ以来ではないが、次第
    に字を書くことは少なくなった。書く機会が
    減ったのと、PC,スマホのせいだ。
    一生懸命毎日書くようにしているが・・・。

国宝を みな見せるとぞ 文化の日
  (こくほうを みなみせると ぞぶんかのひ)

11/2wed
城下秋 旧町名を 音に読む
  (じょうかあき きゅうちょうめいを おとによむ)
   ※全国の城下町共通の、それらしい町名にはど
    うも馴染めない。大手町、馬場町、鍛治町、
    本町、寺町等々。せっかくのユニークな町名
    があったのに。ちなみに生まれた町の名は融
    通寺町。近くに桂林寺町。

11/1tue
畳織る 今年のイグサの 香りかな
  (たたみおる ことしのいぐさの かおりかな)
   ※7月までに収穫するイグサは油の処理、形状
    不良の厳しいリジェクトなどを経て、秋に
    「織り」が本格化し畳表となる。


          **********


10/31mon
友の待つ 広き階段 見上げ秋
  (とものまつ ひろきかいだん みあげあき)
   ※立派な階段、踊りがあって、また階段が。彼
    はどうやって登ったのかな? そう、エレベ
    ーターがあるのでは? ・・・もう遅い。

お隣の シュウメイギクの 揃い踏み
  (おとなりの しゅうめいぎくの そろいぶみ)

10/30sun
秋の夜のライン顔見し黙しおり
  (あきのよのらいんかおみしもくしおり)
   ※ラインが開通して初めて友人と顔を見ながら
    の会話を始めた時、相手がふっと押し黙った
    時があったならよーく考えた方が良い。相手
    は対面会話に感激したのではなく、こちらの
    顔の想像以上の老け込みに唖然として息を吞
    んだのだ。毎日見ている顔では気づかない老
    けの大きな溝がある。きっと。

10/29sat
杜鵑草 思い出しつつ つい疎遠
  (ほととぎす おもいだしつつ ついそえん)
   ※こんな時だからこそ親しい友人とはせめて連
    絡を保ちたい。遠隔での連絡手段が一般的に
    なっているとはいえ、ついその一歩が出ない
    ことも。

10/28fri
文化祭 準備を仕切る 嗄れ声
  (ぶんかさい じゅんびをしきる しゃがれごえ)

白マスク白髪が秋の草むしり
  (しろますくしらががあきのくさむしり)
   ※いくらなんでも俺は公民館の世話にはならな
    い、とイッパシの口をたたいていた男が、ど
    っぷりとは言わないまでも文化祭などの活動
    に参加している。アアとため息も出るが、同
    じ年代の人たちが手練れのエースである。

10/26wed
介護する 合間の絵筆 いわし雲
  (かいごする あいまのえふで いわしぐも)
   ※絵仲間の女性は80歳で介護の仕事をしてい
    る。絵教室も遅刻早退で忙しい。肝心の絵は
    あっさりしていて外連味がない。ごてごて塗
    りたくるコチトラは感心しきり。

10/25tue
公園に シニア週一 落葉掃き
  (こうえんに しにあしゅういち おちばはき)
   ※町内の道路、公園などの清掃はシニアの無償
    の労働に負っている。老人会、誘われたこと
    もない。とか言っているうちに10年近くだ。

10/24mon
イチジクの 絵にむらさきの 熟したり
  (いちじくの えにむらさきの じゅくしたり)
   ※当地の文化祭に仲間と水彩画を出展すること
    になった。いつもは間際に非才さを嘆くのだ
    が、今回は秋の野菜や果物をうまく描けた。
    それがどこであれ衆目に晒すというのは大変
    なことで、実はかなりホッとしている。

10/23sun
さつまいも 半分掘って 虫の里
  (さつまいも はんぶんほって むしのさと)
   ※関東南部は曇り日と雨天続きで日照時間が極
    端に少なかった。もう少しかな?と残してお
    いたサツマイモは意図せざる放置でどうなっ
    ていることやら。気をもんでいる。

10/22sat
教師褒め 親父酒出す 秋の夕
  (きょうしほめ おやじさけだす あきのゆう)
   ※この句は8/5の
    「ほろ酔いの 教師は黒く 大夕焼」
    と同じ思い出につながる。中学校の事務の先
    生が帰途に我が家に寄って、私の部活の充実
    ぶりを褒めていった。
    誰も覚えていないかもしれないが、テニスと
    タバコと酒が大好きな、しょうもない先生。
    俺は好きだったよ。

10/20thu
欅 自らなる形 秋に満つ
  (けやき みずからなるかたち あきにみつ)
   ※散歩ルートにある3本のケヤキ。紅葉、落葉
    前の今、一年の成長を全身で現わしているよ
    うに思われる。何の変哲もないケヤキなのだ
    が、一年の成績は5だなと思う。

10/19wed
秋冷えて 昨夜は風呂に 入りしかと
  (あきひえて さくやはふろに いりしかと)
   ※実はよくある話。もっと寒くなると毎晩風呂
    に入るが、多少肌寒くなっても風呂は二日に
    一度、もう一日はシャワーで済ます。済ます
    というより、のんびり・ゆったりかつ気軽な
    シャワーが好きだ。それで掲句のような疑問
    が湧き出る。ボケのせいではない証拠にかな
    り以前からのことなのだが。

10/18tue
児童向け 大きな字読む 良夜かな
  (じどうむけ おおきなじよむ りょうやかな)
   ※図書館にはシニア向けに大文字本が用意され
    ているが、その分がさばるので敬遠していた。
    この前借りてきた季語写真集は親切な内容で
    わかりやすく気に入っていたら、中高生向け
    の児童図書とあった。

10/17mon
柿の実や 製材所の お茶時間
  (かきのみや せいざいしょの おちゃじかん)
   ※当家の一本の柿の木は今年お休み。数少ない
    実が殆ど7月までで落果した。周期的な不作
    なのか、以前のようなヘタ虫の被害か、今の
    ところ不明。

10/16sun
リヤカーに 子と芋と鍋 芋煮行
  (りやかーに こといもとなべ いもにこう)
   ※町内の親しい母親仲間が集まり、日と持ち寄
    りを決め、一切合切を積み込んで、町中から
    郊外の広い河畔の湧水場まで歩いていく。小
    一時間ほどもある女集団のおしゃべり付きの
    移動だ。今なら目立って、鼻つまみにもなろ
    うが、当時はなんとも街の光景になじんでい
    た。行った先は天国、おしゃべりと芋煮。息
    抜きと骨休め。

10/15sat
垣を剪り 果樹には秋の お礼肥
  (かきをきり かじゅにはあきの おれいごえ)
   ※金木犀も大方花を落としたし、少ししたら一
    年分の丈を詰める。秋の作業の一つ。

10/14fri
涼気早や 寒気となりて 坂の家
  (りょうきはや かんきとなりて さかのいえ)
   ※挨拶は寒いですねに変わった。坂の中途から
    見下ろす夕方の光景は光を失って空も地も鈍
    色。

10/12wed
長身の 荷風が覗く 路地の秋
  (ちょうしんの かふうがのぞく ろじのあき)
   ※YouTubeの朗読で荷風の「日和下駄」「濹東
    綺譚」を聞く。朗読で扱われているものの中
    では長い方、後者は3時間余りだ。しかし、
    いずれも以前に読んでいるので、歩きながら
    でも気軽に聞ける。細部は聞き流しても、む
    しろ荷風文章の達者なリズムが味わえる。

10/10mon
竿売りの 音高らかに 刈田道
  (さおうりの おとたからかに かりたみち)
  ※その道は行き止まりだよと言ってあげたかった
   が、農道をまっすぐに行く。テープの音が両側
   の小高い丘に反射するようだ。ナビ圏外の小道。
   あの手の軽トラのセールスは多分地の人ではな
   い。大量に安く仕入れて、県を跨ってでもひた
   すらに売り歩くと聞いた。

10/9sun
栗名月 雲の間にこそ 香りあり
  (くりめいげつ くものまにこそ かおりあり)
  ※ここ数日の曇天に半ば諦めていた十三夜、厚か
   った雲が夕方にかけゆっくり薄くなり、格好の
   名月待ちとなった。

客なくて 金木犀の 盛りかな
  (きゃくなくて きんもくせいの さかりかな)

10/7fri
コスモスや 犬に拒まれ 花の道
  (こすもすや いぬにこばまれ はなのみち)
  ※異常な寒さに我が家の犬はより元気になる。や
   や夏バテ気味の頃散歩を短縮して来のこと、今
   日その道に拒否権を発動した。

10/6thu
鰯雲 静かがよろし スピーカー
  (いわしぐも しずかがよろし すぴーかー)
  ※市がつけている広報スピーカー。防犯上の注意
   喚起や気候情報がメイン。不審者、詐欺電話情
   報、大雨や強風注意、警報、行方不明者捜索な
   ど幅広い。この季節に多いのが有害鳥獣駆除実
   施のお知らせ。等々。
   良く聞こえないという人も多い中で、近い人々
   は音の大きさに頭を抱えている。いずれにして
   も静かがいい。使わないで済むような。

10/4tue
露草や林間一帯を領す
  (つゆくさやりんかんいったいをりょうす)
  ※この光景は昨年まではなかった。一年草と言わ
   れる露草が辺り一面をわがもの顔に青い花を散
   りばめている。

10/3mon
クラス会 秋集合は 動物園
  (くらすかい あきしゅうごうは どうぶつえん)
  ※ミニクラス会を3年ぶりにやろうということに。
   年末年始の危険、風邪とのダブルパンチ、第8
   波だってこわいが・・・。慎重派と決行派、間
   をとってなるべく速やかに、ということになっ
   た。動物園の後は谷中に降りて一散歩、店に急
   ぐことに。

10/2sun
牛乳で コーヒー飲む癖 今朝の秋
  (ぎゅうにゅうで こーひーのむくせ けさのあき)
   ※コーヒーファンを自認して小うるさいことを
    言っていたのも今は昔。一日に一杯とする必
    要があり、その貴重な一杯を朝食の牛乳にイ
    ンスタントコーヒーを入れたことが運の尽き。
    「おや、おいしいねえ」となった。

10/1sat
法要の 客と出会いぬ 風蝶草
  (ほうようの きゃくとであいぬ ふうちょうそう)
   ※喪服の3人と出会った。理容店主の四十九日
    とわかった。故人は8月の暑い盛りに逝った。
    残暑が厳しいといわれていたが、台風と大雨
    が列島を翻弄している間にすっかり例年並み
    の気温になった。涼しい天国に早く来過ぎた
    と思っているかもしれない。


          **********


9/30fri
秋西日 茶筅日向に 干されあり
  (あきにしび ちゃせんひなたに ほされあり)

四方から 今ぞ今ぞと 虫の闇
  (しほうから いまぞいまぞと むしのやみ)

9/29thu
野分去り 他家の毬栗 数えけり
  (のわきさり たけのいがぐり かぞえけり)

秋場所や 初老力士の 力こぶ
  (あきばしょや しょろうりきしの ちからこぶ)
  ※台風後の散歩、俳句作り、九月場所テレビ桟敷
   そして草むしりか、九月もすっかり年寄りの種
   目で終わりそう。

9/28wed
国葬の過ぎてボートは生き返り
  (こくそうのすぎてぼーとはいきかえり)
  ※総意とは何だろう? 総意とは言えないけれど、
   本来は総意となってすべきことを識り重視し、
   右顧左眄せず突き進んだ・・・安部元総理の業
   績だと思う。右っぽいとか言われそうだが。

9/27tue
さびしいね大変ねとぞ彼岸過ぎ
  (さびしいねたいへんねとぞひがんすぎ)
  ※友人は男一人住まいの後期高齢者。都心でもさ
   まざまに支援の手、声掛けがあるという。しか
   しこの手の言葉は慰めにもなんにもならない、
   と友人は苦笑。そこまで落ち込んでいない、と。
   彼は175センチを超える偉丈夫である。

9/25sun
今朝の秋 呉服店主の 紺の足袋
  (けさのあき ごふくてんしゅの こんのたび)
   ※後ろに土蔵の蔵屋敷を構えた呉服商店。商売
    は今や細々とらしい。足袋の裏は白い。

9/24sat
かすかなる 踏切の音 自在秋
  (かすかなる ふみきりのおと じざいあき)
   ※台風が近くを通過している深夜、強風の合間
    に近くの踏切の音が聞こえる。かすかだが。
    耳が良いせい? 年齢と鍛錬?のせいで好き
    な音を自由に呼び起こすことが出来るように
    なった。この時間にローカル線が走るわけが
    ない。

9/23fri
短めの 形見の杖で 彼岸まで
  (みじかめの かたみのつえで ひがんまで)

秋彼岸 風に戦の末予感
  (あきひがん かぜにいくさのすえよかん)
   ※戦争、内外国葬2題、インフレ・経済、災害
    ・・・落ち着かないこと限りないが、これも
    聞こえ過ぎ、情報化社会故の不幸かもしれな
    い。どこかで分水嶺を越えてすうーっと静か
    になることもある。それが秋分の日。

9/22thu
風の盆 男踊りは 空を切り
  (かぜのぼん おとこおどりは くうをきり)
   ※今月初めの富山八尾町、越中おわら節のお祭
    り「風の盆」。この旋律と踊り、何故こんな
    にも哀切極まるものが生まれて、かつ継がれ
    ているのか? みんなで踊るのと、保存会の
    踊りを静粛に大事にただ眺めるのが並行して
    あるからなのかな?

9/21wed
木彫師 師の師は光雲 いわし雲
  (もくちょうし しのしはこううん いわしぐも)
   ※内房の小さな街に住む木彫師は高名な名前を
    口にする。僅かに「知ってる?」という気分
    が漂う。例の野猿像どころか最近は彫りたい
    ものとは無縁であると残念がる。

9/19mon
子規忌なり 少し老けたと 言いにけり
  (しききなり すこしふけたと いいにけり)

下弦なる 月確かめて 敬老の日
  (かげんなる つきたしかめて けいろうのひ)
   ※浮遊する敬老の日は今年子規忌と同じ19日
    になった。その業績から子規翁と呼ばれるこ
    とも多いが、亡くなったのは35歳。

9/18sun
街なかで 熊除けの鈴 秋まみれ
  (まちなかで くまよけのすず あきまみれ)
   ※無人を思わせる団地の静謐を破って鈴の音が
    聞こえる。日曜日の住人が無聊に任せてスピ
    ーカーで流しているのではない。

9/17sat
秋の日やメインツリーは果樹となる
  (あきのひやめいんつりーはかじゅとなる)
   ※ガーデニング風に言えば、我が家のメインツ
    リーはモモ、ブドウ、柿の3本。今年の成績
    を言えばいろいろあるが、後期高齢者の思い
    込みは安定していて、功が拮抗している。

9/15thu
よろず屋にバス待つ人の宿場町
  (よろずやにばすまつひとのしゅくばまち)

街なかに街道ありて秋夕暮れ
  (まちなかにかいどうありてあきゆぐれ)
   ※米を収穫して現金収入を手にした農家にとっ
    て一年で一番豊かさを感じる季節だ。思い切
    って遠出して温泉で骨を休めたり、近くの街
    に買い物に出たり。小さな商店街のある街ま
    では多くはバスで行きかえりだ。日常使いの
    品ではなく、好きな品を既に考えてある。
    小さな街の小さな商店街。一日声があふれる。

9/14wed
秋の日強し団地音一つなし
  (あきのひつよしだんちおとひとつなし)
   ※こんな音のない風景はミステリー映画の撮影
    に使えるのでは?なんて思いがうかぶが、今
    やこうしたシーンは全国に溢れ、履いて捨て
    るほどある。洗濯物のそよぎが「使用中」を
    示す。

9/13tue
無人駅の読書 針の進む音
  (むじんえきのどくしょ はりのすすむおと)
   ※こんな静かな無人駅があるところは貴重かな?
    いまどきは遠隔で音声案内がある。

9/11sun
耳元で癌を語りて夏に逝く
  (みみもとでがんをかたりてなつにいく)

ワケギ好き冷凍を説く床屋あり
  (わけぎずきれいとうをとくとこやあり)
   ※仲の良かった床屋の親父が死んだ。3年近く
    の肺ガンとの闘いの末である。なにをさせて
    も執念とこだわりの強い人だったから、ゆっ
    くりした床屋タイムの話はいつも楽しみだっ
    た。合掌。

9/10sat
名月もかすむ蝮の噂かな
  (めいげつもかすむまむしのうわさかな)
   ※見事な名月。さすがに。見えすぎなくらい。

9/7wed
我慢して 追肥をかてに 秋茄子
  (がまんして ついひをかてに あきなすび)
   ※9/7泉鏡花の忌日。代表作以外は読むことのな
    かった作家だが、ネットの朗読に親しんで鏡
    花も三つほど聴いた。いずれもスマホのおか
    げ、YouTubeのおかげ、ヒマのおかげ。鏡花
    との距離が随分縮まった。

9/6tue
稲刈り機揺られウクライナのことを
  (いねかりきゆられうくらいなのことを)

運転は孫に勝りて刈田かな
  (うんてんはまごにまさりてかりたかな)

一族も郎党もいず刈り終わる
  (いちぞくもろうとうもいずかりおわる)

稲刈りてデータを入れる月明かり
  (いねかりてでーたをいれるつきあかり)

9/5mon
カタロニア 野の鳥を見る 善衛の忌 
  (かたろにあ ののとりをみる よしえのき)
   ※少し左派がかった元日本ペンクラブ会長堀田
    善衛が亡くなったのが1998年9月5日。
    スペインアスツゥリアスとカタロニアに合わ
    せて5年近く住んだ作家である。著作も多い。
    小生がスペインオタクになった機縁である。
    野の鳥はピースピースと鳴く、とカザルス。

9/4sun
飴色の ぶどう袋に 妻方々
  (あめいろの ぶどうふくろに つまほうぼう)
   ※甘くはありませんがとお裾分けするが、おい
    しかったと言ってくれる人もいる。高級品が
    多い最近では昔のぶどうの味でなつかしかっ
    たという感想かな?

9/3sat
剃りたての 頬を撫でつつ 桐一葉
  (そりたての ほほをなでつつ きりひとは)
   ※例年より低い気温が続く。台風は沖縄県先島
    近辺で停滞の後東北に動き始めた。

朝に切る ぶどう三房を 仏前に
  (あさにきる ぶどうみふさを ぶつぜんに)

9/2fri
近道の 秋灯の家 時計鳴る
  (ちかみちの しゅうとうのいえ とけいなる)
   ※やっぱり昭和か?ちょっと古めの時計の音が
    聞こえた。窓に映る灯りも古めの暖色系だし、
    新しい家にしてはやや奇々怪々。

9/1thu
度を重ね 二百十日の 俄雨
  (どをかさね にひゃくとおかの にわかあめ)

小椋鳥 夕立家に 帰りかね
  (こむくどり ゆうだちいえに かえりかね)
   ※ムクドリは常に群れで行動するのに、突然の
    激しい雨に打たれ、一羽が木の根元に取り残
    された。いつもは群れの旺盛な動きに舌打ち
    することもあるが今日の姿はほんの小鳥だ。


          **********

8/30tue
秋の風来て花痩せしサルスベリ
  (あきのかぜきてはなやせしさるすべり)

露草や 初お目見えの 庭の朝
  (つゆくさや はつおめみえの にわのあさ)
   ※曇り日が続いたのち昨日今日は一段と涼しい
    日。夜の気温が20度を切ると涼しいから一
    気に寒いへ悲鳴に変わる。庭の草の中に露草
    発見! 25年来、我が庭で初めて。

8/28sun
秋と聞き 山門今日は 中に入る
  (あきときき さんもんきょうは なかにいる)

眼鏡かえ スマホで秋の 季語一つ
  (めがねかえ すまほであきの きごひとつ)

8/27sat
夏豪雨 気圧配置の 骨身まで
  (なつごうう きあつはいちの ほねみまで)
   ※秋田、山形、新潟を中心に、この夏豪雨の被
    害が広がった。気圧配置の固定化と前線の居
    座り、線状降水帯の連続発生等によるものだ
    った。一週間ほど前からの事前の予報の通り
    であったが、それでも被害は甚大なものに。

8/25thu
眠らねば 班増えるとて 晩夏かな
  (ねむらねば はんふえるとて ばんかかな)

譲られし 苗のトマトの 味野生
  (ゆずられし なえのとまとの あじやせい)

8/24wed
少年の目に父祖の地よ盆地秋
  (しょうねんのめにふそのちよぼんちあき)
   ※8/23は白虎隊の日、自刃した日。その場所飯
    盛山からは砲煙にかすむ城下だけでなく会津
    盆地の初秋の景色が広く見えただろう。命全
    うすればもっともっと馴染んだはずの故郷の
    景色が。

8/22mon
朗読の声朝に聞く邦子の忌
  (ろうどくのこえあさにきくくにこのき)
   ※8/22は向田邦子忌日。YouTubeの朗読物は特に
    この1,2年で優良コンテンツが激増してい
    る。中でも人気を博しているのは、明治以降
    の大作家連の短編と向田邦子のドラマものだ。
    わかるような気がする。

8/21sun
三代の 球児いよよの ガッツあり
  (さんだいの きゅうじいよよの がっつあり)
   ※夏の甲子園も決勝を残すのみ。東北勢同士の
    決勝を夢見たが、まあ仙台育英の優勝が実現
    すれば大殊勲だ。

8/19fri
つかまらせ 花緒をすげる 秋めく日
  (つかまらせ はなおをすげる あきめくひ)
   ※当地はからっとした天気。こんな日はあらぬ
    ことを幻のように想像してみたい。下駄ばき
    で鼻緒が切れて困っていた少女がいた・・・。

8/18thu
対策の 水を飲みつつ 白槿
  (たいさくの みずをのみつつ しろむくげ)

溶接工 腕さえわたる 盆の明け
  (ようせつこう うでさえわたる ぼんのあけ)
   ※60歳を超えて所属した会社で一緒だった人
    と偶然会った。何年ぶりか? 溶接工のキャ
    ップを務めていた名人、その腕の変わらぬ自
    信はほんの2,3言でわかる。

8/17wed
葡萄一房光を貯めて下がりおり
  (ぶどうひとふさひかりをためてさがりおり)
   ※不順な気候の中で、我が家の名もないぶどう
    は大奮闘。例年より遅れ気味だがより多くの
    房をつけている。緑色の固い粒々が次第に飴
    色に、光を通すようになってきた。早いヤツ
    をつまみ食い出来るのがこの時期の無上の喜
    び。

8/16tue
学徒兵命全うすれば夏
  (がくとへいいのちまっとうすればなつ)
   ※学徒の繰上げ卒業にまつわる事実が新たにわ
    かったことを伝える特別番組を見た。決然と
    出陣式で雨中行進をした人たちの中で、なお
    多くの若人が戦地に行かなくても済んだこと
    を知る。

8/15mon
逢ひとふて 驟雨疾走 孫産まる
  (あいとうて しゅううしっそう まごうまる)
   ※姪夫婦に待望の初孫ができた。日頃冷静な二
    人だが、狂喜して病院に向かう。

8/14sun
嵐去る 盆の街角 見渡しぬ
  (あらしさる ぼんのまちかど みわたしぬ)

久闊の 言葉探して 盂蘭盆会
  (きゅうかつの ことばさがして うらぼんえ)

年寄りて 盆にことなし 風の音
  (としよりて ぼんにことなし かぜのおと)

8/13sat
盂蘭盆会 レーダーで追う 故郷の雲
  (うらぼんえ れーだーでおう くにのくも)
   ※スマホでPCで現在地以外の地域の天気、雨
    雲レーダー、災害可能性や警報・注意報のチ
    ェックが容易にかつ即座に出来る。
    必要があればそのまま即電話でコンタクトを
    とる、地域のメディアにアクセスをすること
    も可能だ。通信とデータ送受の革新は急速。
    しかし自然の猛威を前にして、出来ることは
    限られる。これは変わらない。

8/12fri
調律の 待たれる頭 炎天下
  (ちょうりつの またれるあたま えんてんか)

起動時の 膝の重さよ 秋立ちぬ
  (きどうじのひざのおもさよあきたちぬ)
   ※朝起きがけの膝の重さは老化速報。一年後の
    歩行能力を知ることが出来る。そう思う。ほ
    んの5~10歩で重さは消え、快調になるの
    だが。PCのように再起動で問題解決、とは
    いかない。立秋、しばらくは残暑、その後は
    確実に秋、着実に老化。

8/11thu
高山病 肩の小屋にて 米を炊く
  (こうざんびょう かたのこやにて こめをたく)
   ※若い頃4月に連休を待ちきれず、登山に出か
    けた。槍沢小屋を朝に出て槍ヶ岳を目指すシ
    ンプルな計画。ただ積雪は多く、ジグザグの
    登りが最後まで直登となる。登りの残り1/4
    くらいのところでガタンと体力が落ちた。
    先に着いて小屋で寛ぐ人の姿がはっきり見え
    るところだった。そこからなんと2時間強か
    かったのだ。1時間半はその場所でストップ。
    動けない。好天で良かった。50年前のこと。
    今では最高の思い出。今日は「山の日」とか。  

8/10tue
眼前は 水被る稲 晩夏光
  (がんぜんは みずかぶるいね ばんかこう)
   ※東北北部に豪雨被害が続いている。当地は暑
    さ続きで、盆明けの稲の刈入れを前にしてい
    る。とんでもない違い。

8/8mon
小型船 夏のくらしの 音がもれ
  (こがたせん なつのくらしの おとがもれ)
   ※くらしの音と問われたら、NHKラジオの正午
    過ぎ「昼のいこい」のテーマと答えるかもし
    れない。木更津港に係留している小型鋼船の
    一つからこれが聞こえた時、ジーーンときま
    したね。

8/7sun
白球の清涼と女子のブラスよ
  (はっきゅうのせいりょうとじょしのぶらすよ)
   ※夏の甲子園開幕。観客、応援団を入れての試
    合は一層熱が入る。それにしても応援席は女
    性上位だ。チェアガールにブラスバンド、女
    子は皆余裕たっぷり、笑顔がこぼれている。
    お付き合い参加ではない。

がしんたれ強豪以外よ暴れたれ
  (がしんたれきょうごういがいよあばれたれ)
   ※大阪桐蔭、何馬身か空いて智弁和歌山等々下
    馬評はどれも関西勢優位のよう。

8/6sat
原爆忌 乞ひ願ふこと 今多く
  (げんばくき こいねがうこと いまおおく)
 
母削る 鉛筆が誇り 原爆忌
  (ははけずる えんぴつがほこり げんばくき)
  ※今でも当時母が毎晩削ってくれた鉛筆のカッコ
   良さは周囲を寄せ付けなかったと思っている。
   ちなみに、幼少時代の私は暴れたら手が付けら
   れないと匙を投げられた挙句、家の中で「原爆」
   と呼ばれていた。
   
8/5fri
ホーン越し やや声低く 大暑かな
  (ほーんごし ややこえひくく たいしょかな)

上向いて ヴィーナス夏の かんばせを
  (うえむいて びーなすなつの かんばせを)

揺らぐごと 雲海に浮く 肩の小屋
  (ゆらぐごと うんかいにうく かたのこや)

8/4thu
外人の 教師が走る 夏の朝
  (がいじんの きょうしがはしる なつのあさ)
   ※オーストラリア出身の幼稚園の外人先生が走
    る。いつも遅れてくるようだ。おはようござ
    いますと挨拶する表情はいつも照れている。
    大きい幼稚園は差別化の目玉として英語教育
    を掲げる。ネーティヴの先生がいますよとい
    うわけだ。しかしそれ以外の仕事もなんでも
    やらされるみたい。園児を乗せたバスが着く
    と、にこやかにお迎えする。到着園児の顔、
    人数、バスの座席点検・・・朝から大変だ。

8/3wed
潮干狩り 一坪ほどが わが漁場
  (しおひがり ひとつぼほどが わがりょうば)
   ※海上は風通し万全だけれど、アサリを求めて
    さまようと予期せぬ密にもなりかねない。そ
    れで「動き回らないで」とスピーカーが。マ
    スク着用の注意はないが、しっかり着けてい
    る人が多い。もう今年は終わり、死なないで。
8/2tue
ほろ酔いの 教師は黒く 大夕焼
  (ほろよいの きょうしはくろく おおゆやけ)
   ※部活の指導を終えた教師は自転車でいち早く
    ご帰還。近くの一杯飲み屋に駆け込む。真っ
    赤な顔で家に向かう頃、生徒たちに会う。そ
    して「おう、気をつけて帰れよ」と。自転車
    はすでにふらふら・・・。世の中がすべて今
    より寛容な時代。

8/1mon
雨音は 夢か幻聴 蝉しぐれ
  (あまおとは ゆめかげんちょう せみしぐれ)
   ※深夜確かに雨音を聴いた。朝になってあれは
    雨でなかったとがっかりすることのないよう
    に、寝床でしっかり耳をそばだてた。しかし
    朝がっかりした。余計落胆した。降雨のシル
    シは露ほどもない。
    今朝はほんのちょっとだけど涼しいが、これ
    ぞ降雨のシルシでは? 家人はすげなく否定。
    降雨なしが決定。
    これからは寝床から起きて立って外を眺めて
    確認しようということになった。もっとも小
    生は少年時代に寝ぼけ癖の輝かしい戦歴があ
    るから、起き上がっての確認もそこまで含め
    て睡眠中の出来事となるかも。
    認知症の忍び寄っているせいなのか、熱中症
    近辺の暑さのせいなのか?


          **********

7/31sun
風鈴や 南部湯宿の 闇の濃さ
  (ふうりんや なんぶゆやどの やみのこさ)
   ※花巻市郊外の花巻温泉郷台温泉に宿泊したこ
    とがある。いい湯いい宿だった。遅くついた
    のに印象深いのは夏の闇の深さと透明な湯の
    せいか。

7/30sat
兜虫 遅き経済の 良さ知らず
  (かぶとむし おそきけいざいの よさしらず)
   ※この国はかつて高い経済成長を実現し、効率
    第一を叫んで、その果実を満喫した。その頃、
    個人商店は消え失せ、全国の街々が画一化し
    ていった。背後で家庭が地域が変質した。
    人間だって(後の言葉で言えば)クローンの
    ようなサラリーマンが労働者が生きがいとし
    て、その路線に沿い、貢献した。絶頂時には
    「21世紀は日本の世紀」とまで。
    ところが今、「失いし20~30年」とかを
    聞いている。聞いて久しい。
    「経済成長は神話だよ、続かない」「多くを
    失っているんだよ。今良く考えなければ手遅
    れになると・・・」50年以上前にアンチ高
    度成長を言った人はいっぱいいたね、そう言
    えば。ためにする人も多かったが、深刻な正
    論もあった。

7/29fri
煙草屋の 解体終わり 晩夏なる
  (たばこやの かいたいおわり ばんかなる)
   ※店先販売はとうの昔にやめ、長いこと自販機
    がならんでいた。不思議なもので店も住まい
    も一緒に解体されると、かなりのおばあさん
    が日がな店番をしていたことが思い出される。

7/28thu
夏号の 稿を渡せり 白き道
  (なつごうの こうをわたせり しろきみち)
  ※一回きりと代理を頼まれた。夏を迎えるエッセ
   イなんでも、という。地域のミニコミ誌みたい
   なもの。安請け合いした直後に梅雨が明け、真
   夏の暑さが襲ってきた。「なんでも」を頼りに
   やっとこ駄文を弄した。どうせ誰も見ない、と
   思ったことを後悔した。

7/27wed
端居やめ 犬の背たんと 流しけり
  (はしいやめ いぬのせたんと ながしけり)

冷麺や 腰にさしたる 扇子かな
  (れいめんや こしにさしたる せんすかな)

7/25mon
夏稽古 代役の子に 黒子あり
  (なつげいこ だいやくのこに ほくろあり)

夏稽古 来ぬ子の役を 全部やり
  (なつげいこ こぬこのやくを ぜんぶやり)
   ※地域で演劇の指導をしている人の稽古場を端
    で見せてもらった。こんな人がいることが大
    変貴重に思えるが、やはりコロナ禍のせいで、
    せっかくの夏休みの強化練習も参加者が思う
    に任せないとのことだ。

7/23sat
蝉時雨「巴里は燃えているか」聞こゆ
  (せみしぐれ ぱりはもえているかきこゆ)

百日紅の赤「巴里は燃えているか」
  (さるすべりのあか ぱりはもえているか)
   ※NHKスペシャル「映像の世紀」シリーズの通
    しのテーマ。作曲した加古隆のインタビュー
    番組を聴いた。やっぱり憎いねェ。

7/22fri
百日紅 警報の声 流れけり
  (さるすべり けいほうのこえ ながれけり)
   ※当家の一本の桃の木。小粒とは言え実は多く
    たわわだが、今年は虫の被害が多かった。プ
    ラムのカイアガラムシに気を取られノーケア
    だった。
    やっと不順な天候の合間を縫って収穫し終え
    た。さて来年に向けてはどうしようか? 思
    案を始めている。

7/20wed  
ああいえばこういう夏の国訛り
  (ああいえばこういうなつのくになまり)
   ※Lineでのテレビ電話、これが少し前だったら、
    「用もないのに顔はいらない」とか言って一
    方的に敬遠したろうに、この齢になると、晩
    くやってきた、この便利な仕組みに結構素直
    になじんでいる。年齢による羞恥心の欠如?
    いやそんなことをいうほど衒いもない。

7/19tue
夏時雨桃の実落ちる音にせく
  (なつしぐれもものみおちるおとにせく)
   ※不順な天候が続く。担当の雑草刈りも果樹の
    世話も意に沿っては進まない。やっぱり九州
    山口地方に梅雨末期に似た豪雨の被害が心配
    になる。

7/18mon
祇園会や 小雨に白の 角隠し
  (ぎおんえや こさめにしろの つのかくし)
   ※故郷の近く会津田島町の祇園会のメインは花
    嫁行列。今年はどうなるのだろうか? 近年
    は嫁のナリテが町の内外から押し寄せるとい
    う。7月16日は1月16日とともに、昔の
    言葉で「藪入り」、奉公人や嫁入りした娘が
    実家に里帰りした日だ。今や完全な死語。
    こちらの花嫁はその日のうちに帰るのだろう。

7/17sun
宵山に 泣いたらあかん 稚児の声
  (よいやまに ないたらあかん ちごのこえ)
   ※久しぶりの京都祇園祭のフル日程が無事に進
    むことを切に祈る。NHKドラマ『京都人の密
    かな愉しみ』はええなァ。直近は「Blue修業
    中 門出の桜」かな。源孝志ディレクターに
    よるもの。くせはあるものの、ええ腕しては
    るわァ。

7/16sat
夏の雨 頼朝が行く 国境
  (なつのあめ よりともがいく くにざかい)
   ※近くに鎌倉街道という古道がある。随分説明
    を受け、フィールドワークにも出かけたが、
    仔細の記憶はゼロ。ただ南の安房の国から上
    総の国に、頼朝が土地の豪族、兵を募りなが
    ら北上したのはテレビの通りらしい。

7/15fri
ラケット背に 女剣士が 夏椿
  (らけっとせに おんなけんしが なつつばき)
   ※小雨の中を自転車で行く姿は凛々しい。コー
    ト使えまいに、と思うが今は体育館で大勢で
    乱打練習が出来るらしい。

7/13wed
短夜や ひそかに話す 人通る
  (みじかよ やひそかにはなす ひととおる)

夏帽子 カフェを待つ間の 立ち向かい
  (なつぼうし かふぇをまつまの たちむかい)
   ※カフェテラスという屋外の店が大都市で増え
    ている。最近は地方都市でも狭い舗道を占拠
    してテラスと称しているのが多い。ましてや
    そこの空くのを待っている御婦人連がある。

7/11mon
命がけ 炎暑の選挙 いかと見る
  (いのちがけ えんしょのせんきょ いかとみる)
   ※参議院選挙が終わった。普通の人が普通に与
    えられる選挙権、それは勝ち取った権利。被
    選挙数の比較優位によってのみ代議員となれ
    る。この価値をどうみる、どうみるべきか? 
    これのない国々の人々よ。

7/10sun
短夜に口の遅さを嘆じけり
  (みじかよにくちのおそさをたんじけり)
   ※加齢とともに口が重くなる、口数が減る。語
    彙も減る。自分だけはそこまでにはならない
    と、根拠なしの自信もあるにはあったのだが、
    そんな希望もあえなくコロナ禍によって潰え
    去った。

7/9sat
涼しけり政治の海に笑み消えぬ
  (すずしけりせいじのうみにえみきえぬ)

長州と江戸の間で夏憤死
  (ちょうしゅうとえどのあいだでなつふんし)
   ※元首相の街頭演説中の死。毀誉の混じるとこ
    ろはあったが、圧倒的な天性とそれ故のゆと
    りとユーモアを備えた政治家。合掌。

7/8fri
若妻が 夫の腕ひく 夏木立
  (わかづまが おっとのうでひく なつこだち)

杖を持て 実を引き寄せて 袋掛け
  (つえをもて みをひきよせて ふくろがけ)

7/7thu
築地塀 驟雨のあとを 見せてあり
  (ついじべい しゅううのあとを みせてあり)
   ※文化財に指定されている江戸時代の築地。荒
    い素地がむき出しになっているから年々の雨
    等による浸食が心配だ。とは言え、俄雨の後
    の箇所を指でエグルように強く触れてみた。
    大丈夫だ。指にはなにもついてこない。

7/6wed
浮雲の 行先知らず 芙美子の忌
  (うきぐもの いきさきしらず ふみこのき)
   ※林芙美子の「浮雲」をネットの朗読で全編聞
    いた。全部で8時間余り。戦争と男と女の物
    語。名匠成瀬巳喜男、高峰秀子、森雅之主演
    の同名の映画も鮮明に覚えているが、ネット
    朗読版も気に入った。忍耐あっての「聴破」
    だが、この長い時間が戦中戦後の時間の経過
    と変遷を味わうにはよりフィットするのかも
    知れない。芙美子忌は6月28日。

7/4mon
暁に僅かに僅かなれど喜雨
  (あかつきにわずかにわずかなれどきう)
   ※台風の影響で暑さをもたらした気圧配置が崩
    れ、雨模様の不安定な天気になった。文字通
    りの「喜雨」。西日本の豪雨の気配がないで
    もないが、当地当家の野菜、果樹にとっては
    喜雨だ。人間にとっても。

7/3sun
なお強き 膝をさすりて 半夏かな
  (なおつよき ひざをさすりて はんげかな)

7/2sat
半夏生 犬ともに我れ 脚強く
  (はんげしょう いぬともにわれ あしつよし)
   ※山登りなどには長くネックになっていた右膝
    が、この十年近く朝夕の平地歩行には悲鳴を
    あげず、持ちこたえている。幸い今に至って
    も平地に限れば2、3時間連続でも行ける。
    これも、臆病に無理を避けたこと、そして我
    が家の犬のお蔭だ。

7/1fri
街ゆがみ 夏の絵描くは ゆがむまま
  (まちゆがみ なつのえかくは ゆがむまま)
   ※都心の馴染みの通りもしばらく見ぬ間に変貌
    し、ニョキニョキと高層マンションとやらが
    両側に。不自然に見上げてやっと変化を知る。
    猛暑がその歪みを激しく助長する。

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ダクタク句集2021年(令和3年)11月 [ダクタク2021年11月]

11/30tue
秋野菜 画材として後 分けたまふ
     (あきやさい がざいとしてのち わけたもう)

秋の暮 一幕ものの 場を数ふ
     (あきのくれ いちまくものの ばをかぞふ)
        ※我が創作にかかる芝居、長かったなァと思っ
         たが、アレッ・・・一幕だったか? 今から
         考えると色んな幕があって良かった、そうす
         るつもりだったのに。残念。まあ場数は多い
         し、今も続いているね。
         しかしぃ・・ちょっと待ってェな。ちょっと
         書き換えるやさかい。エエェ、出来ひんて?
         そ、そんな後生な・・・。

小春日の 人居ぬ園や 獏眠る
     (こはるびの ひといぬえんや ばくねむる)

11/28sun
小春日や なに食うたとから 長電話
     (こはるびや なにくうたとから ながでんわ)
        ※スマホで通話はスピーカーで。そして胸のポ
         ケットに突っ込んだまま話をする。両手フリ
         ーで。長引く友人とのスタイルがこれに落ち
         着き、スマホって便利だなァと感心。大いに
         笑われた。女の長電話を実体験中。

11/26fri
足腰の かすかに重く 石蕗の花
     (あしこしの かすかにおもく つわのはな)
        ※金木犀の生垣の剪定をやった。2日がかり。

11/25thu
母くれし やなぎ行李よ 冬支度
     (ははくれし やなぎごうりよ ふゆじたく)

友の笑み 蝶々とともに 冬茜
     (とものえみ ちょうちょとともに ふゆあかね)
        ※後輩の蝶キチの撮った写真が来年のカレンダ
         ーに採用されたと、それを贈ってくれた。立
         派な全国版で、彼の渾身の写真12枚が各月
         を飾っている。すごい出来だ。嬉しい。

11/23tue
マップ上 動線たどる 一葉忌
     (まっぷじょう どうせんたどる いちようき)
        ※一葉人気は根強い。都心の3か所の旧居跡を
         訪ねる人は引きも切らず、ネットの「一葉暮
         らしの研究」もいまだに旺盛のよう。
         ・・・アソコへはここを通ったとか、品を仕
         入れにアノ道を行った、この道は何歳の時誰
         を訪ねに通ったとかである。都心散歩の多く
         のファンに支持されているのではと思う。

11/22mon
デジタルや 愁思の顔も 修正し
     (でじたるや しゅうしのかおも しゅうせいし)
        ※顔の整形、といっても画像上のことだが。思
         う通りの方向に自分の画像を修正してくれる。
         以前からこの手のソフトはあったが、空前の
         進歩をしているというのだ。
           空前も 過ぎたらてんで 他人の顔
         最近、こういう小手先の開発ばかりだ。

11/21sun
起きるには まだたっぷりと 酉の市
     (おきるには まだたっぷりと とりのいち)

大いなる がま口腰に 酉の市
     (おおいなる がまぐちこしに とりのいち)

冷え込むや 帽子深めに お酉様
     (ひえこむや ぼうしふかめに おとりさま)
        ※久しぶりに熊手の店、露店の行列。ただお参
         りの客は寂しくて涙が出るほどの閑古鳥。威
         勢のいい手拍子もそこかしこに少しだけ。が
         ま口も空いたままか。今年は二の酉どまり。

11/20sat
秋の暮れ 種の袋の 字のうすし
     (あきのくれ たねのふくろの じのうすし)
        ※秋植え用に大切に保存しておいた種子がなん
         なのかわからない? 袋の上の鉛筆のメモが
         薄れている。そんなの知るか!! 種を見て
         もわからないのか?

11/19fri      
秋の暮 パテシエ修行の 娘が嫁ぐ
     (あきのくれ ぱてしえしゅぎょうの こがとつぐ)
        ※ケーキ店開業の夢は諦めて結婚するとか。小
         さいころから知っている、甥の娘だ。まあそ
         れもいいだろう、幸せを祈る。

11/18thu
七五三 子のつく名前 参り札
     (しちごさん このつくなまえ まいりふだ)

病葉も 岩風呂に入る 旅の宿
     (わくらばも いわぶろにいる たびのやど)
        ※PCでダウンロードした曲を整理してはせっせ
         とスマホに移し、オフで聴ける手筈を整えて
         いる。へへ、音の悪いのはリジェクトする。
         YouTubeは駄目。

11/17wed
時雨忌や 二の橋を越え 深川へ
     (しぐれきや にのはしをこえ ふかがわへ)
        ※時雨忌は芭蕉の忌日、陰暦10月12日。ゆ
         かりの深川へはいつも本所側から歩いて、門
         仲をゴールにする。
         本所二の橋のたもとには軍鶏なべや「五鉄」
         の跡地がある。鬼平の行きつけ。

11/16tue
さざんかや 昵懇の犬 動かざる
     (さざんかや じっこんのいぬ うごかざる)
        ※若い秋田犬が道路のあっちで腹ばいになって
         動かないでいる。我が家の犬に興味あっての
         ことではない。実はお目当ては小生である。


11/15mon
小春日は畑でワイヤレスイヤホンで
     (こはるびははたでわいやれすいやほんで)

秋夕焼 電車の音で 腰伸ばす
     (あきゆやけ でんしゃのおとで こしのばす)

幾百の 玉葱植えて 腰立たず
     (いくひゃくの たまねぎうえて こしたたず)
        ※3列の長い畝に黒マルチを張り、300本弱
         の玉葱の苗を飽きずに植える。しかし来年の
         春までは手間いらず。5月前半収穫の早生。

11/14sun
人の顔したる源氏の人逝ける
     (ひとのかおしたるげんじのひとゆける)
        ※瀬戸内寂聴逝去。若いころは一般的な世評に
         乗って、おやおやという思いで眺めていたが、
         自分がそこから解き放たれると彼女の顔が生
         き生きと穏やかに見え始めた。ますますそう
         なった。合掌。

11/12fri
どっしりと 家伝の砧 壁にあり
     (どっしりと かでんのきぬた かべにあり)
        ※郊外から移築した豪農の民家が公園にある。
         様々な農具、民具を入れ替わりで展示してい
         た。機織りの仕上げに反物の布打ちに使った
         とか。生乾きの洗濯物をたたいて柔らかくし
         たり皺をのばしたりもした。昔村落の家々で
         砧の音がした・・・有名なその光景とは、な
         にをしていたんだろう? 聞きそびれた。

11/10wed  
男手が スマホを見つつ 菊膾
     (おとこでが すまほをみつつ きくなます)
        ※季節感はあっても好きなものではない。何度
         か口にする機会はあったが、ちょっと舌先で
         感じてすぐに飲み込む類のものだった。せっ
         かくの到来物の食用菊、少し前進したい。年
         齢並みに。

11/9tue
歩きけり 新酒試飲は 障子部屋
     (あるきけり しんしゅしいんは しょうじべや)
        ※今は近くに醸造会社はない。昔々の話。

望みしも 秋刀魚一向に 気配なし
     (のぞみしも さんまいっこうに けはいなし)

11/8mon
海舟の 呼吸が聞こえる 坂の秋
     (かいしゅうの いきがきこえる さかのあき)
        ※勝海舟は赤坂の地を愛し、都合3度も場所を
         変えて住まいした。幕末は氷川下。その場所
         はマンションの林の中に埋没しているが、近
         くの氷川神社や氷川坂には往時の息吹が残っ
         ているように感じた。交通の激しい大通りの
         間にあって、不思議な静寂がある。

11/7sun
墓売れて にわか夜なべの 石工かな
     (はかうれて にわかよなべの いしくかな)

吾亦紅 午前いっぱい 身じろがず
     (われもこう ごぜんいっぱい みじろがず)
        ※新しいクルマの試乗に行った。今のクルマは
         中古だから、二つのクルマの間には10年近
         くの隔たりがある。話には聞いていたが、IT
         絡みの装備は目を見張るほど。
         しかし「安全のために必要なもの」と運転手
         サポートという名の「大きなお世話」とが混
         然としている。

11/6sat
ゴミ寄せに 鴉が消えて 秋の暮
     (ごみよせに からすがきえて あきのくれ)
    
秋深しジュリーのサンフランシスコ
     (あきふかしじゅりーのさんふらんしすこ)
        ※暦には明日7日は立冬。いくら寒いとは言え
         今日明日が冬であるとは肌に合わない。年々
         のことだ。新旧暦のずれにあるのだから仕方
         がない。しかし自分の句作とかには実感を優
         先していきたい。まだ当分は秋の暮だ。 
         ジュリー・ロンドンの低い声が最も似合う季
         節。

11/5fri
日に一つ もいで柿食う 余生良し
     (ひにひとつ もいでかきくう よせいよし)
        ※胃のバリウム検査に行ってきた。1時間ごと
         の予約制に改まって待ち時間が短くなった。
         この街での検査も25回以上を数える。

11/4thu
文化の日 佳きことありて 嗽二度
     (ぶんかのひ よきことありて うがいにど)

文化の日 洗濯しつつ 長電話
     (ぶんかのひ せんたくしつつ ながでんわ)
        ※文化の日とて関係の催しはなにもない。展示
         だけの文化祭も繰り上げで既に終わっている。
         友人の洗濯時の無聊に付き合う。

11/3wed
背の曲がり 正すこと増え 鱗雲
     (せのまがり ただすことふえ うろこぐも)

立冬は とうに来るらし 秋霞
     (りっとうは とうにきたるらし あきがすみ)

先生の 甲高い声 秋の午後
     (せんせいの かんだかいこえ あきのごご)
        ※もう晩秋である。様々な老化やその兆候を感
         じ始めて久しくなるが、これも秋そのもの。
         人生の秋の風情。

11/2tue
山中の 食堂ひとり とろろ汁
     (さんちゅうの しょくどうひとり とろろじる)
        ※房総半島の紅葉の見頃は11月下旬から12
         月上旬。年によって短く、気がついた頃には
         盛りが終わっていたということも。
         今の山のドライブコースは人もクルマもとこ
         とんまばら。

11/1mon
故郷の 歳時記重し 秋燈下
     (ふるさとの さいじきおもし しゅうとうか)
        ※昭和55年発行の「会津歳時記」がある。横
         になって、うとうとしながら長時間見入るの
         が至福の時なのだが、大部だけに仰向けのま
         までは5分と持たない。
         歳時記といっても当時の俳人仲間が集まり、
         地域の俳人と先輩の句を発掘して郷土の匂い
         がする俳句集を編んでみよう、ということに
         なったらしい。どんな歳時記でもその中に自
         分の句がのる、残るというのは俳句人の夢。
         あれもこれと話と努力は大きくなり、出来上
         がりは重くなった。装丁も立派である。
         後にも先にもこれだけの目論見はこれ一回だ
         け。匂い豊かで、胸に重くなるのを今日も味
         わうことにしよう。
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ダクタク句集2021年(令和3年)10月 [ダクタク2021年10月]

10/31sun
雁渡し 松籟となる 選挙の日
     (かりわたし しょうらいとなる せんきょのひ)

秋燈や 小さき埴輪の 目の丸く
     (しゅうとうや ちさきはにわの めのまるく)
        ※埴輪が机上の電気スタンドに照らされて、今
         までにない影が出来、なにやら意味ありげに
         見える。何か語りかけるようにも感じられる。
         新鮮。今日は玉ねぎの畝作りに駆り出された。
         夕方散歩と投票に。

10/30sat
秋祭り かつて担ぎし 大神輿
     (あきまつり かつてかつぎし おおみこし)

祭礼の ポスター古き 老舗かな 
     (さいれいの ぽすたーふるき しにせかな)
        ※盛んだった秋の祭礼も、今は神社に氏子の主
         な者が集まり、祝詞を上げお神酒をいただく
         だけとか。コロナ以前からそうだったと主は
         話す。

10/28thu
山法師の 実に触れてみる 通学路
     (やまぼしの みにふれてみる つうがくろ)

甘柿は 送るべしとて 甥の家
     (あまがきは おくるべしとて おいのいえ)
        ※木に残っている柿の実はもう僅か。甘柿大好
         きと言ってくれる家に少し送った。取ってま
         でして食べないという家が多い。木守り柿と
         かのつもりもないみたい。

10/27wed
栗ご飯 まだ長月の 寒き日に
     (くりごはん まだながつきの さむきひに)
        ※気温はひと月以上も先を行っている。旧暦で
         はまだ9月長月だ。しかし寒いおかげで、豚
         汁と栗おこわという好みの食卓となった。

10/26tue
ホトトギス清貧の否応なしと
     (ほととぎすせいひんのいやおうなしと)
        ※清貧を旨とする高潔な人と少なくとも外見
         は同じになった。老い、億劫、金なしに加
         え、with コロナで否応なしの清貧である。
         中身もそうありたいと願っているが・・・。

10/25mon
二階まで 朝顔の紺 今日は褒め
     (にかいまで あさがおのこん きょうはほめ)
        ※10月下旬だというのにこの家の朝顔は盛
         んだ。一階の壁は葉と蔓が蔽いつくし、紫
         がかった紺色の花が二階の板壁と窓辺を半
         ば隠している。寒い朝、今朝は季節感の異
         常さはさておき、清々しさを感じた。

10/24sun
矯められし もみじ形を 取り戻す
     (ためられし もみじかたちを とりもどす)
        ※長年桃の木いや桃の実優先で、枝が重なって
         下部にあるもみじがばっさり伐られ、その後
         も伸びる度に切られてきた。やっとこの秋、
         桃の大枝を切り、もみじの雪辱を果たしてや
         った。家人にはこっぴどく叱られたが。

10/23sat
菊坂の 秋簾ふと 見上げおり
     (きくざかの あきすだれふと みあげおり)
        ※菊坂という響きは昭和、それ以前の明治の暮
         らしを彷彿とさせた。源は一葉。谷地ともい
         える一帯の佇まいは変わりつつも、訪れる人
         々は引きも切らない。傍若無人の観光客は住
         民の顰蹙を買っている。今も。小生も観光客。

10/21thu
早く去れ 雉狙わんと 威し銃
     (はやくされ きじねらわんと おどしじゅう)
        ※「有害鳥獣の銃による駆除を行います」朝早
         く市のスピーカーから流れる。被害のひどさ
         は具体的に知っているけれども、雉もなの?
         と思った。国鳥ではなかったか。

10/20wed
鳥渡る 細長き空を まっすぐに
     (とりかえる ほそながきそらを まっすぐに)

美術展 上野の山で 脚さすり
     (びじゅつてん うえののやまで あしさすり)
        ※久しぶりの東京。狭い通りの両側にマンショ
         ンなど高いビルが立ち、空を占拠している。
         視界に細長の四角い空がある。以前に親しん
         だ通りほど、その空の変貌ぶりに驚く。血中
         酸素濃度が低くなる。息苦しい。

10/19tue
降り立って 息白き夜は 栗名月
     (おりたって いきしろきよは くりめいげつ)
        ※旧暦9月13日のこの夜の月(十三夜)を栗
         名月というらしい。出かけた帰りの電車内か
         らは雲が多くとても駄目だなと諦めていたが、
         到着した駅頭からはなんときれいに見えた。

10/17sun
銀杏の やしろ前より 遠くなり
     (ぎんなんの やしろまえより とおくなり)
        ※朝の散歩から足を延ばして「銀杏の社」に向
         かう。夢にお告げがあったから。それにもか
         かわらず時期はちょっと早かった。小さ目の
         が袋一杯ほど。

事件ありて 自然薯掘りを とどまりぬ
     (じけんありて じねんじょほりを とどまりぬ)

10/16sat
ヒヨドリと 柿を争う 朝の陣
     (ひよどりと かきをあらそう あさのじん)

新語見て 却下却下よ 秋の風
     (しんごみて きゃっかきゃっかよ あきのかぜ)
        ※否応なしに飛び込んでくる新語。仮の略語と
         しか言いようがない。くだらないのが多い。
         しかし言葉とはそれぞれの世代がその時代に
         使い残すものだから拒絶しても始まらない。
         自浄能力を信じるしかない。

10/15fri
夕闇や サツマイモ掘る 列残す
     (ゆうやみや さつまいもほる れつのこす)
        ※「なーに今日中に終わるさ」と始めたが、半
         分近くは明日以降に。概ねいい出来だが、所
         々にネキリムシが試食した痕がある。良い色
         の外皮が台無しだ。「だから急がないと」と。

10/13wed
化粧瓶なる濁酒を舐めてみる
     (けしょうびんなるどぶろくをなめてみる)
        ※完全な禁煙をして満一カ月の昨日。ご褒美と
         いうわけではないが、ちょっと前にお土産に
         もらったドブロクを開けてみた。日本酒の原
         酒に近い味? 時間がたっただけ変な味。

10/12tue
月見てる 帰宅困難の 客となり
     (つきみてる きたくこんなんの きゃくとなり)
        ※仲間の中に先日夜の地震のために、ホテル泊
         りをしたヤツがいた。羨ましいとか馬鹿とか
         褒貶半ばの感想が飛び交っている。

10/11mon
ドビュッシーの 曲より速く 妻歩き
     (どびゅっしーの きょくよりはやく つまあるき)

小三治の 音を落として 聞いた秋
     (こさんじの おとをおとして きいたあき)
        ※前の句で多くの人が「月の光」を思い浮かべ
         るのでは。月は名月、秋の季語。ゆっくり歩
         きたいものだねェ・・・といいたいのかよ。
         べらぼーめ~。と小三治が言う。バイク、ク
         ラシック、音キチ、俳句・・・凝り性が好ま
         しかった。

10/10sun
金木犀 欠伸うつしたき 人のあり
     (きんもくせい あくびうつしたき ひとのあり)

摘まむ実の次は柿色を見極めつ
     (つまむみのつぎはかき いろをみきわめつ)
        ※雲の低い日、金木犀の香りが強い。朝散歩帰
         りに摘まむ庭の果物がぶどうから甘柿に変わ
         った。ぶどうの前は桃。我が家の果物だから
         おいしいが、いずれも極めて地味なナリであ
         る。それでも豊饒を感じている。

10/8fri
房州の団扇 手に良し 秋団扇
     (ぼうしゅうの うちわてによし あきうちわ)
        ※少し蒸し暑い日が続いた。しまい遅れの団扇
         が夏の名残り。

10/7thu
秋の日の翳りてモネの日傘かな
     (あきのひのかげりてもねのひがさかな)
        ※肺炎球菌ワクチンの5年前の接種証明を探し
         ているが、当然見当たらない。1回目は定期
         接種とかで自治体の一部補助があったが、2
         回目は任意接種で9千円前後の自己負担とな
         る。基礎疾患(習慣病など)がある者は特に
         1回目の接種を呼びかけているが、効能5年
         でそれ以降のための接種については呼びかけ
         どころかコメントもしていない。どの自治体
         も概ね然り。無責任とイワザルベカラズ。

10/6wed
紫煙消え 句読点なき 暮らし秋
     (しえんきえ くとうてんなき くらしあき)
        ※禁煙してもうすぐ一カ月。今が踏ん張りどこ
         ろだが、なんともメリハリのない暮らしを感
         じてしまう。そう感じること自体情けない話
         なのだが。

10/5tue
新米の 旬の野菜の ごとくして
     (しんまいの しゅんのやさいの ごとくして)
        ※当地の稲刈りは早いから新米はとっくに出回
         っているとか。昨夜当家の食卓にも。
         味はよくわからないが、風味・香りは新鮮で
         若々しくていい。少し固めのせいもあるかな。
         ん、だんだん味も良くなってきた。

10/4mon
過ぎ行くは 渋皮を剥く 背の時間
     (すぎゆくは しぶかわをむく せのじかん)
        ※散歩道を迂回して野山らしき方に向かう。道
         沿いに栗の木があり、夕暮れに落ちた実を拾
         っても大丈夫みたい。今年は幸運な日に20
         個以上をゲット。中学生の通り道でもあるの
         で、これ以上はムリ。結局は買って来て栗飯、
         甘露煮と相成る。例年のパターン。

10/3sun
風なくて 雲ありてこそ 蕎麦の花
     (かぜなくて くもありてこそ そばのはな)

秋時雨 サ行かすかに 朝の床
     (あきしぐれ さぎょうかすかに あさのとこ)
        ※秋のヤセ蚊に散々やられ、真っ暗なうちに目
         が覚めてしまう。無駄な思考はせず、ゆっく
         り、あせらず、長い時間を過ごす。これがな
         かなか難しい。

10/2sat
秋風や 芭蕉が性を 読みしかな
     (あきかぜや ばしょうがさがを よみしかな)
        ※芭蕉が多方面での人脈と才能を持っていたこ
         とは既に広く言われている。曰く、山師、ス
         パイ、脱藩コーディネーターとか・・・。
         しかし、これらの説は芭蕉の俳句が達した高
         みを損なう何物でもない。むしろ、到達の要
         因となるものだ。こういう評も多い。賛成。

10/1fri
秋の朝 布団変えての 夢路かな
     (あきのあさ ふとんかえての ゆめじかな)
        ※もう一段厚い掛け布団に替えて、台風接近の
         朝は意外と健やかに明けた。予想より遅いせ
         いで関東南岸最接近は午後になってからだ。
         一昨年来のトラウマはあるが、今回は当地
         「進路の西側」に当たる。だから比較的平静。
         (伊豆諸島の人々には申し訳ないが)
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ダクタク句集2021年(令和3年)9月 [ダクタク2021年9月]

9/30thu
残り出でし 隠元を食う 余生かな
     (のこりいでし いんげんをくう よせいかな)

秋が来て 半藤が昭和を 思いけり
     (あきがきて はんどうがしょうわを おもいけり)
        ※半藤一利の著作をまとめて読んだ。おまけに
         今回は細君の末利子のエッセイも。昭和と較
         べると、今日は甚だグローバルだけれど変動
         要因、不安定要素が何倍にも増えた。
         好みで二択ならまだいいのだが・・・。

9/29wed
身構える 台風のコース じわりまた
     (みがまえる たいふうのこーす じわりまた)
        ※一昨年の房総半島台風を思わせる台風16号
         の不気味な動き。あの時の暴風のすさまじさ
         はそれまでの経験の最高値を遥かに超えてい
         た。以来トラウマとなって残っている。

9/28tue
総裁選 まともはおらず 票もなし
     (そうさいせん まともはおらず ひょうもなし)

画材にと 桜紅葉の シミが好き
     (がざいにと さくらもみじの しみがすき)
        ※候補者はかなりの一長一短、つまり一人トッ
         プの器ではないということ。一方朝の散歩道
         で拾ったサクラの落ち葉は「お、これがいい、
         やや、これも捨てがたい・・・」。

9/27mon
手の震え 医師はムリだった 泡立ち草
     (てのふるえ いしはむりだった あわだちそう)
        ※70歳台でバリバリ現役の医師はごまんとい
         る。手術も在宅医療の担い手も・・・少しは
         社会に役立ちたいと思うが。

9/26sun
検診の 人まばらにて 秋の鬱
     (けんしんの ひとまばらにて あきのうつ)
        ※コロナ禍の影響でガン検診の受診者が少ない
         とか。昨日行ったところが、例年の半分以下
         でスイスイだった。ガンの早期発見がそれだ
         け困難になり、国民の健康も損なわれ、医療
         費負担も嵩むか。必死に呼びかけてはいるが。

9/24fri
吾亦紅 年齢のみ母に 近づいて
     (われもこう としのみははに ちかづいて)
        ※お彼岸のお中日に犬(外飼い)のシャンプー
         をした。最近やけにかゆがるので、いい方の
         シャンプーで丹念に。薬効はどうか? 少し
         はいいみたい。感謝されている。

9/23thu
天高し 分厚き本の 進まざる
     (てんたかし ぶあつきほんの すすまざる)
        ※図書館からのメールで本屋大賞受賞作の順番
         が来たことを知る。予約してから半年近くだ。
         難渋している読書中の本の次はこれにしよう。

9/22wed
早きこと 今年いずこも 曼殊沙華
     (はやきこと ことしいずこも まんじゅしゃげ)
        ※庭の白い曼殊沙華も久留里線沿いの真っ赤な
         曼殊沙華も見事に咲き揃っている。例年はお
         彼岸中日にもやや遅れ気味だったのに。

9/21tue
月明かり 術後の姉の いびきかな
     (つきあかり じゅつごのあねの いびきかな)
        ※コロナ禍下での入院と手術、経過は順調だ。
         手術直後に限って5分ほどの対面は許された
         が、その後の面会はダメ。届け物もナースセ
         ンター経由。患者のわがままも抑止される。
         ただし、明月は欲しいまま。

名月や 禁煙の唾 飲みこめり
     (めいげつや きんえんのつば のみこめり)

9/20mon
電話口 朝飯中だと 敬老日
     (でんわぐち あさめしちゅうだと けいろうび)

咽喉が良し 高音も出る 敬老日
     (のどがよし こうおんもでる けいろうび)
        ※実は9月12日を期して禁煙をしている。過
         去のようではなく、本当の禁煙だ。完璧な一
         週間が経過した。爽快、ではある。

9/19sun
糸瓜忌や くせ爪すこし 治りけり
     (へちまきや くせづめすこし なおりけり)

野球忌や 大谷遥かな 峰に立つ
     (やきゅうきや おおたにはるかな みねにたつ)
        ※9月19日は子規忌。おや、子規忌かい、相
         変わらず一年は早いなあ、と思う日。子規に
         入れ込んでいた頃は少し前から騒いでいた。

9/17fri
秋の猫 リボンなどして 無視しおり
     (あきのねこ りぼんなどして むししおり)
        ※岩合某氏の猫番組。猫の住む歴史、環境など
         によって猫の扱い、扱われ方、そして猫の行
         動に様々な違いが生じるものだとわかる。
         知らない人には愛想のカケラも見せない猫は?

9/16thu
高安の まちまちな房 ぶどう描く
     (たかやすの まちまちなふさ ぶどうかく)
        ※教室終了後の画材分捕りは熾烈を極める。
         シャインマスカットの数粒が、昔ながらの小
         粒な甲州ブドウ一房より人気を集める。人気
         の甲斐路のピンチヒッターだったとはいえ、
         ひどい仕打ちだ。甘いのに・・・・。

9/15wed
露草や 嚥下体操の 音きこゆ
     (つゆくさや えんげたいそうの おときこゆ)
        ※開け放ったデイの窓から、大きな声が聞こえ
         る。繰り返しの発声のトレーニングが咽喉元
         の働きを強くするとか。

9/13mon
床屋言う かつて健脚 キノコ狩り
     (とこやいう かつてけんきゃく きのこがり)

肺ガンの シロ点々と 秋澄めり
     (はいがんの しろてんてんと あきすめり)
        ※行きつけの床屋の主人が三度目の癌の攻めに
         直面している。手術が可能かどうか?最適の
         抗がん剤は?次の外来で決めることになると
         いう。

9/12sun
街道に 医家の門柱 帰燕かな
     (かいどうに いかのもんちゅう きえんかな)
        ※季節は確実に過ぎていく。コロナ休みで休講
         だった水彩画も来週には再開、画材は季節の
         果物だとか。サボり過ぎ、どうしよう。

9/11sat
刈り残す 品種を尋ね うろこ雲
     (かりのこす ひんしゅをたずね うろこぐも)
        ※当地の稲刈りは一部を残し殆どが終了。2年
         前の房総半島直撃の台風襲来日も無事に過ぎ
         た。まずは目出度い。あの時の強風と被害、
         トラウマが完全には癒えていない。

9/10fri
遠きから 思い思いて 風の盆
     (とおきから おもいおもいて かぜのぼん)
        ※いまだに実現していない富山市八尾のおわら
         風の盆見物。九月上旬。かすかな憧れだけが
         もう何十年も続いている。
         若いころは、風の盆という名前に惚れてみた
         り女踊りの清楚さが頭に焼き付いていた。中
         年の頃は男踊りの渋さ、凛々しさこそ最高だ
         と。そして今・・・。
         あ、あそこで車椅子に座って飽かず眺めてい
         る、あれが私だ。

9/9thu
草のびて 上下交換の 駅のあり
     (くさのびて じょうげこうかんの えきのあり)
        ※晴れ間が見えても遠出はしない。今日は犬の
         餌買いにちょっとだけ。単線久留里線の横田
         駅は沿線中ほどの駅で、上り下り各一時間1
         本の列車が交差する駅。昼下がり、静寂。

9/8wed
騒がしくなれど九月の歌多し
     (さわがしくなれど くがつのうたおおし)
        ※首相最悪のやめ方。にわかに生臭い話が蔓延
         しつつある。一方でNHKラジオでこの何日か
         で September Song を3,4回聴いた。しか
         も歌い手を変えて。耳に断然懐かしいのはや
         はりシナトラ。

9/7tue
法師蝉の 影を奪いて 秋の冷え
     (ほうしぜみの かげをうばいて あきのひえ)

長雨の 上がらんとして 虫なけど
     (ながあめの あがらんとして むしなけど)
        ※10月下旬並みの気温。風流の人は惜春のよ
         うな言葉はなくとも、行く夏を惜しみ次第に
         秋めく今頃をしみじみ味わうというのだが・
         ・・。

9/6mon
刈入れは 爺がビールつぎ 始まれり
     (かりいれは じじがびーるつぎ はじまれり)
        ※刈入れ作業は勤め人の孫の出番。腰を曲げて
         眺めていた爺は初日を終えた孫にビールをつ
         いでいる。と思う。去年までの主役息子は姿
         が見えない。

9/5sun
秋天や 見上げつ半日 畑におり
     (しゅうてんや みあげつはんにち はたにおり)

隠元棚 慈しみつつ 撤収す
     (いんげんだな いつくしみつつ てっしゅうす)
        ※秋は畑作業が最高、とか言われ繰り出す。雨
         の間の貴重な晴れ間。大当たりだったインゲ
         ン豆。

9/3fri
花桔梗 息子寝んとて 帰り来る
     (はなききょう むすこねんとて かえりくる)
        ※アフガニスタン米軍撤退とその後の混沌。

9/2thu
御仏を うたう父の句 二百十日
     (みほとけを うたうちちのく にひゃくとうか)
        ※一気に十月上旬並みの気温に。豪雨被害はあ
         ったが、台風の襲来はいまのところ少な目だ。

9/1wed
待ち兼ねて 雨音ソフト 八月尽
     (まちかねて あまおとそふと はちがつじん)

秋雨や 雨城楊枝の 代替わり
     (あきさめや うじょうようじの だいがわり)
        ※やっと一雨。雨城は久留里城の別名。長く城
         下で作り伝えられた黒もじ楊枝がある。

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ダクタク句集2021年(令和3年)8月 [ダクタク2021年8月]

8/31tue
爽涼や 係船洗う 細き腕
     (そうりょうや けいせんあらう ほそきうで)
        ※久しぶりに木更津港のそばを通った。日中の
         気温は今日ぐっと低く、凌ぎやすい。砂利運
         搬船が数隻いるだけ。

8/30mon
ホームラン 客なき席に 夏終わる
     (ほーむらん きゃくなきせきに なつおわる)
        ※コロナ禍の真っ最中に、甲子園とパラリンピ
         ック。やや不自然な多忙感。プツンッと切る
         と田舎の超静寂な午後に。夏今終わる。

8/29sun
塗装屋の 足場の払い 速く秋
     (とそうやの あしばのはらい はやくあき)
        ※近くで長々と丁寧に作業をしていた業者が仕
         事を完了した。撤収作業。今日は素早い。

8/27fri
秋暑し 茶筅をしかと 手入れする
     (あきあつし ちゃせんをしかと ていれする)
        ※もどった暑さは一段と強烈、当地は昨日今季
         初めての猛暑日をを記録した。

8/26thu
新しき 稲刈り機動く 爺も見る
     (あたらしき いねかりきうごく じじもみる)
        ※中旬までの長雨で大部分倒れた稲田がある。
         全く丈夫な田も多い。暑い一日。

8/25wed
調剤の 袋を問われ 残暑かな
     (ちょうざいの ふくろをとわれ ざんしょかな)
        ※毎日飲む薬がまた一つ増えた。山となった薬
         を手渡しながら、可愛い薬局のお姉ちゃんが
         言ったものだ。「一日おきの薬が多いから大
         丈夫ですか?ちゃんと飲めますか?」
         バーヤロー!

8/24tue
仕舞た屋に 都会の子いる 秋暑し
     (しもたやに とかいのこいる あきあつし)
        ※東京ナンバーのクルマが子供を迎えに来たと
         ころらしい。2学期もどうにか始まるようだ。

8/22sun
商店の消えゆく秋ぞ空を見る
     (しょうてんの きえゆくあきぞ そらをみる) 

ショーケースに 時計残れり 今朝の秋
     (しょーけーすに とけいのこれり けさのあき)
        ※地方都市の個人商店はこの国の政策で消えゆ
         く運命。主の高齢化などで、櫛の歯が抜ける
         ようにパタパタと、しかし着実に消え去る。

8/20fri
ゆっくりと 猫が横切る 盆の明け
     (ゆっくりと ねこがよこぎる ぼんのあけ)

日に一度 棚のブドウを 摘まみ食い
     (ひにいちど たなのぶどうを つまみぐい)
        ※あれだけの前線が動き、夏の暑さがもどった。
         しかし盆明けの世の中の活動再開は?

8/19thu
クロエーの 髪に秋風 手櫛さす
     (くろえーの かみにあきかぜ てぐしさす)
        ※古代ローマ時代の小説のヒロイン、クロエー。
         句が出来ないー。こういう日もある、多い。

8/18wed
塔の隅 見詰めて描く 夏帽子
     (とうのすみ みつめてえがく なつぼうし)
        ※また暑い夏がやってきた。立派な山門を残す
         寺に子供たちがスケッチしている。外出もま
         まならなかったから、付き添いの人が見当た
         らないのに、さぼらずに熱心に描いている。
         見習わなければ・・・。

8/17tue
新涼というな前線居座れる
     (しんりょうというな ぜんせんいすわれる)
        ※長雨のせいで気温は下がり、爽やかなとも言
         える。当地の稲作農家は盆明けの刈り取りを
         前にして、倒れた稲を苦々しく見つめる。
         一方、水没した西日本の農家は悲嘆に暮れて
         いる。

8/15sun
百日草 在宅治療という不安
     (ひゃくにちそう ざいたくちりょうというふあん)
        ※血中酸素濃度94%以上は在宅治療とか。マク
         ロの正解を導くための明快すぎる基準。

8/14sat
花魁草 我が家を去りて この宿に
     (おいらんそう わがやをさりて このやどに)
        ※どこの庭も菜園もこの雨続きで手が入らない
         ようだ。我が家も同様。西日本の被害状況の
         ニュースを見れば、まだまだ恵まれている。

8/13fri
西瓜乗せ 売り声テスト 繰り返し
     (すいかのせ うりごえてすと くりかえし)
        ※列島全体が前線に覆われ、豪雨の危険が広ま
         る。気温が下がり、さすがに西瓜の季節は終
         わりそう。知合いの西瓜農家も軽トラに満載
         し、盆休みの客を頼みに出かける。

自家製の 小玉西瓜を 半分こ
     (じかせいの こだますいかを はんぶんこ)

8/12thu
虹現れて 風の通りで 見んとする
     (にじあれて かぜのとおりで みんとする)
        ※先日夕方の二度の夕立ちで、二つの虹が現れ
         た。なかなか見事だった。風の通りは一番涼
         しい通り、息を切らして駆け付けた。

声なくも 片陰つくる 幼稚園
     (こえなくも かたかげつくる ようちえん)

8/11wed
草むしる 目線でじっと 我が家見る
     (くさむしる めせんでじっと わがやみる)
        ※蚊取り線香をしっかり腰に巻いて草むしり。
         この目線、この眺めは新鮮。下から目線。住
         んで20年以上になるのに・・・。カメラに
         収めると狭い庭が数倍の広さに見える。

8/9mon
片陰を スマホのラジオ ならし行く
     (かたかげを すまほのらじお ならしゆく)
        ※オリンピック絡みの放送が消えると、こんな
         にも変わるものか。一種静寂という感じ。
         これでコロナ禍関連がなくなったら、この世
         は何をテーマに回っていくのだろう。

8/8sun
包丁と テレビの音と 晩夏かな
     (ほうちょうと てれびのおとと ばんかかな)
        ※日がな一日テレビに見入る亭主といやでもお
         さんどんをする家内。もうそろそろ飽和状態
         に近づいたところで、台風と五輪は閉会式だ。
         長かった強雨がようやく上がったところで、
         昨日が立秋だったことを知った。

8/7fri
原爆忌後期高齢者の二年
     (げんばくき こうきこうれいしゃのにねん)
        ※原爆投下後76年。自分の満年齢に同じ。方
         向性を持った着実な動きの象徴になればと思
         うが、ここにも小さな分断が蔓延り、根付い
         て久しい。

8/5thu
定斎屋の 売り声知らず 盛夏かな
     (じょさいやの うりごえしらず せいかかな)
        ※街も住宅地の通りも見事に閑散。暑気払いの
         薬を売り歩く天秤棒を担いだ薬屋。江戸の風
         物詩。これ自身が季語だとか。

8/4wed
呆けては 知命いまだに 夏暖簾
     (ほうけては ちめいいまだに なつのれん)
        ※50の歳は遥かになったが、「このまま行く
         ことになるなァ」と暫く顔を見ていない友人
         と話す。呆けてきそうな午後の話題。

8/3tue
とまる人あり暑しとも言わず行く
     (とまるひとあり あつしともいわずいく)
        ※蒸し暑い。この朝も修行僧のごとく歩く人が
         いる。初の熱帯夜になっても時刻はいつもと
         同じだ。

8/2mon
豪雨去り 橋脚白し 土用かな
     (ごううさり きょうきゃくしろし どようかな)
        ※不安定な天気になって、午前中の猛暑と午後
         の雷雨というのがパターンになりつつある。
         気象予報が今ほどでなかった頃は、この天気
         パターンを「夏の天気の決まりごと」として
         認識していた。
         夕方の突然の驟雨と雷鳴、予測されると風物
         詩とは言えなくなった。損をしている。
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