ダクタク句集2022年(令和4年)9月 [ダクタク2022年9月]
9/30fri
秋西日 茶筅日向に 干されあり
(あきにしび ちゃせんひなたに ほされあり)
四方から 今ぞ今ぞと 虫の闇
(しほうから いまぞいまぞと むしのやみ)
9/29thu
野分去り 他家の毬栗 数えけり
(のわきさり たけのいがぐり かぞえけり)
秋場所や 初老力士の 力こぶ
(あきばしょや しょろうりきしの ちからこぶ)
※台風後の散歩、俳句作り、九月場所テレビ桟敷
そして草むしりか、九月もすっかり年寄りの種
目で終わりそう。
9/28wed
国葬の過ぎてボートは生き返り
(こくそうのすぎてぼーとはいきかえり)
※総意とは何だろう? 総意とは言えないけれど、
本来は総意となってすべきことを識り重視し、
右顧左眄せず突き進んだ・・・安部元総理の業
績だと思う。右っぽいとか言われそうだが。
9/27tue
さびしいね大変ねとぞ彼岸過ぎ
(さびしいねたいへんねとぞひがんすぎ)
※友人は男一人住まいの後期高齢者。都心でもさ
まざまに支援の手、声掛けがあるという。しか
しこの手の言葉は慰めにもなんにもならない、
と友人は苦笑。そこまで落ち込んでいない、と。
彼は175センチを超える偉丈夫である。
9/25sun
今朝の秋 呉服店主の 紺の足袋
(けさのあき ごふくてんしゅの こんのたび)
※後ろに土蔵の蔵屋敷を構えた呉服商店。商売
は今や細々とらしい。足袋の裏は白い。
9/24sat
かすかなる 踏切の音 自在秋
(かすかなる ふみきりのおと じざいあき)
※台風が近くを通過している深夜、強風の合間
に近くの踏切の音が聞こえる。かすかだが。
耳が良いせい? 年齢と鍛錬?のせいで好き
な音を自由に呼び起こすことが出来るように
なった。この時間にローカル線が走るわけが
ない。
9/23fri
短めの 形見の杖で 彼岸まで
(みじかめの かたみのつえで ひがんまで)
秋彼岸 風に戦の末予感
(あきひがん かぜにいくさのすえよかん)
※戦争、内外国葬2題、インフレ・経済、災害
・・・落ち着かないこと限りないが、これも
聞こえ過ぎ、情報化社会故の不幸かもしれな
い。どこかで分水嶺を越えてすうーっと静か
になることもある。それが秋分の日。
9/22thu
風の盆 男踊りは 空を切り
(かぜのぼん おとこおどりは くうをきり)
※今月初めの富山八尾町、越中おわら節のお祭
り「風の盆」。この旋律と踊り、何故こんな
にも哀切極まるものが生まれて、かつ継がれ
ているのか? みんなで踊るのと、保存会の
踊りを静粛に大事にただ眺めるのが並行して
あるからなのかな?
9/21wed
木彫師 師の師は光雲 いわし雲
(もくちょうし しのしはこううん いわしぐも)
※内房の小さな街に住む木彫師は高名な名前を
口にする。僅かに「知ってる?」という気分
が漂う。例の野猿像どころか最近は彫りたい
ものとは無縁であると残念がる。
9/19mon
子規忌なり 少し老けたと 言いにけり
(しききなり すこしふけたと いいにけり)
下弦なる 月確かめて 敬老の日
(かげんなる つきたしかめて けいろうのひ)
※浮遊する敬老の日は今年子規忌と同じ19日
になった。その業績から子規翁と呼ばれるこ
とも多いが、亡くなったのは35歳。
9/18sun
街なかで 熊除けの鈴 秋まみれ
(まちなかで くまよけのすず あきまみれ)
※無人を思わせる団地の静謐を破って鈴の音が
聞こえる。日曜日の住人が無聊に任せてスピ
ーカーで流しているのではない。
9/17sat
秋の日やメインツリーは果樹となる
(あきのひやめいんつりーはかじゅとなる)
※ガーデニング風に言えば、我が家のメインツ
リーはモモ、ブドウ、柿の3本。今年の成績
を言えばいろいろあるが、後期高齢者の思い
込みは安定していて、功が拮抗している。
9/15thu
よろず屋にバス待つ人の宿場町
(よろずやにばすまつひとのしゅくばまち)
街なかに街道ありて秋夕暮れ
(まちなかにかいどうありてあきゆぐれ)
※米を収穫して現金収入を手にした農家にとっ
て一年で一番豊かさを感じる季節だ。思い切
って遠出して温泉で骨を休めたり、近くの街
に買い物に出たり。小さな商店街のある街ま
では多くはバスで行きかえりだ。日常使いの
品ではなく、好きな品を既に考えてある。
小さな街の小さな商店街。一日声があふれる。
9/14wed
秋の日強し団地音一つなし
(あきのひつよしだんちおとひとつなし)
※こんな音のない風景はミステリー映画の撮影
に使えるのでは?なんて思いがうかぶが、今
やこうしたシーンは全国に溢れ、履いて捨て
るほどある。洗濯物のそよぎが「使用中」を
示す。
9/13tue
無人駅の読書 針の進む音
(むじんえきのどくしょ はりのすすむおと)
※こんな静かな無人駅があるところは貴重かな?
いまどきは遠隔で音声案内がある。
9/11sun
耳元で癌を語りて夏に逝く
(みみもとでがんをかたりてなつにいく)
ワケギ好き冷凍を説く床屋あり
(わけぎずきれいとうをとくとこやあり)
※仲の良かった床屋の親父が死んだ。3年近く
の肺ガンとの闘いの末である。なにをさせて
も執念とこだわりの強い人だったから、ゆっ
くりした床屋タイムの話はいつも楽しみだっ
た。合掌。
9/10sat
名月もかすむ蝮の噂かな
(めいげつもかすむまむしのうわさかな)
※見事な名月。さすがに。見えすぎなくらい。
9/7wed
我慢して 追肥をかてに 秋茄子
(がまんして ついひをかてに あきなすび)
※9/7泉鏡花の忌日。代表作以外は読むことのな
かった作家だが、ネットの朗読に親しんで鏡
花も三つほど聴いた。いずれもスマホのおか
げ、YouTubeのおかげ、ヒマのおかげ。鏡花
との距離が随分縮まった。
9/6tue
稲刈り機揺られウクライナのことを
(いねかりきゆられうくらいなのことを)
運転は孫に勝りて刈田かな
(うんてんはまごにまさりてかりたかな)
一族も郎党もいず刈り終わる
(いちぞくもろうとうもいずかりおわる)
稲刈りてデータを入れる月明かり
(いねかりてでーたをいれるつきあかり)
9/5mon
カタロニア 野の鳥を見る 善衛の忌
(かたろにあ ののとりをみる よしえのき)
※少し左派がかった元日本ペンクラブ会長堀田
善衛が亡くなったのが1998年9月5日。
スペインアスツゥリアスとカタロニアに合わ
せて5年近く住んだ作家である。著作も多い。
小生がスペインオタクになった機縁である。
野の鳥はピースピースと鳴く、とカザルス。
9/4sun
飴色の ぶどう袋に 妻方々
(あめいろの ぶどうふくろに つまほうぼう)
※甘くはありませんがとお裾分けするが、おい
しかったと言ってくれる人もいる。高級品が
多い最近では昔のぶどうの味でなつかしかっ
たという感想かな?
9/3sat
剃りたての 頬を撫でつつ 桐一葉
(そりたての ほほをなでつつ きりひとは)
※例年より低い気温が続く。台風は沖縄県先島
近辺で停滞の後東北に動き始めた。
朝に切る ぶどう三房を 仏前に
(あさにきる ぶどうみふさを ぶつぜんに)
9/2fri
近道の 秋灯の家 時計鳴る
(ちかみちの しゅうとうのいえ とけいなる)
※やっぱり昭和か?ちょっと古めの時計の音が
聞こえた。窓に映る灯りも古めの暖色系だし、
新しい家にしてはやや奇々怪々。
9/1thu
度を重ね 二百十日の 俄雨
(どをかさね にひゃくとおかの にわかあめ)
小椋鳥 夕立家に 帰りかね
(こむくどり ゆうだちいえに かえりかね)
※ムクドリは常に群れで行動するのに、突然の
激しい雨に打たれ、一羽が木の根元に取り残
された。いつもは群れの旺盛な動きに舌打ち
することもあるが今日の姿はほんの小鳥だ。
秋西日 茶筅日向に 干されあり
(あきにしび ちゃせんひなたに ほされあり)
四方から 今ぞ今ぞと 虫の闇
(しほうから いまぞいまぞと むしのやみ)
9/29thu
野分去り 他家の毬栗 数えけり
(のわきさり たけのいがぐり かぞえけり)
秋場所や 初老力士の 力こぶ
(あきばしょや しょろうりきしの ちからこぶ)
※台風後の散歩、俳句作り、九月場所テレビ桟敷
そして草むしりか、九月もすっかり年寄りの種
目で終わりそう。
9/28wed
国葬の過ぎてボートは生き返り
(こくそうのすぎてぼーとはいきかえり)
※総意とは何だろう? 総意とは言えないけれど、
本来は総意となってすべきことを識り重視し、
右顧左眄せず突き進んだ・・・安部元総理の業
績だと思う。右っぽいとか言われそうだが。
9/27tue
さびしいね大変ねとぞ彼岸過ぎ
(さびしいねたいへんねとぞひがんすぎ)
※友人は男一人住まいの後期高齢者。都心でもさ
まざまに支援の手、声掛けがあるという。しか
しこの手の言葉は慰めにもなんにもならない、
と友人は苦笑。そこまで落ち込んでいない、と。
彼は175センチを超える偉丈夫である。
9/25sun
今朝の秋 呉服店主の 紺の足袋
(けさのあき ごふくてんしゅの こんのたび)
※後ろに土蔵の蔵屋敷を構えた呉服商店。商売
は今や細々とらしい。足袋の裏は白い。
9/24sat
かすかなる 踏切の音 自在秋
(かすかなる ふみきりのおと じざいあき)
※台風が近くを通過している深夜、強風の合間
に近くの踏切の音が聞こえる。かすかだが。
耳が良いせい? 年齢と鍛錬?のせいで好き
な音を自由に呼び起こすことが出来るように
なった。この時間にローカル線が走るわけが
ない。
9/23fri
短めの 形見の杖で 彼岸まで
(みじかめの かたみのつえで ひがんまで)
秋彼岸 風に戦の末予感
(あきひがん かぜにいくさのすえよかん)
※戦争、内外国葬2題、インフレ・経済、災害
・・・落ち着かないこと限りないが、これも
聞こえ過ぎ、情報化社会故の不幸かもしれな
い。どこかで分水嶺を越えてすうーっと静か
になることもある。それが秋分の日。
9/22thu
風の盆 男踊りは 空を切り
(かぜのぼん おとこおどりは くうをきり)
※今月初めの富山八尾町、越中おわら節のお祭
り「風の盆」。この旋律と踊り、何故こんな
にも哀切極まるものが生まれて、かつ継がれ
ているのか? みんなで踊るのと、保存会の
踊りを静粛に大事にただ眺めるのが並行して
あるからなのかな?
9/21wed
木彫師 師の師は光雲 いわし雲
(もくちょうし しのしはこううん いわしぐも)
※内房の小さな街に住む木彫師は高名な名前を
口にする。僅かに「知ってる?」という気分
が漂う。例の野猿像どころか最近は彫りたい
ものとは無縁であると残念がる。
9/19mon
子規忌なり 少し老けたと 言いにけり
(しききなり すこしふけたと いいにけり)
下弦なる 月確かめて 敬老の日
(かげんなる つきたしかめて けいろうのひ)
※浮遊する敬老の日は今年子規忌と同じ19日
になった。その業績から子規翁と呼ばれるこ
とも多いが、亡くなったのは35歳。
9/18sun
街なかで 熊除けの鈴 秋まみれ
(まちなかで くまよけのすず あきまみれ)
※無人を思わせる団地の静謐を破って鈴の音が
聞こえる。日曜日の住人が無聊に任せてスピ
ーカーで流しているのではない。
9/17sat
秋の日やメインツリーは果樹となる
(あきのひやめいんつりーはかじゅとなる)
※ガーデニング風に言えば、我が家のメインツ
リーはモモ、ブドウ、柿の3本。今年の成績
を言えばいろいろあるが、後期高齢者の思い
込みは安定していて、功が拮抗している。
9/15thu
よろず屋にバス待つ人の宿場町
(よろずやにばすまつひとのしゅくばまち)
街なかに街道ありて秋夕暮れ
(まちなかにかいどうありてあきゆぐれ)
※米を収穫して現金収入を手にした農家にとっ
て一年で一番豊かさを感じる季節だ。思い切
って遠出して温泉で骨を休めたり、近くの街
に買い物に出たり。小さな商店街のある街ま
では多くはバスで行きかえりだ。日常使いの
品ではなく、好きな品を既に考えてある。
小さな街の小さな商店街。一日声があふれる。
9/14wed
秋の日強し団地音一つなし
(あきのひつよしだんちおとひとつなし)
※こんな音のない風景はミステリー映画の撮影
に使えるのでは?なんて思いがうかぶが、今
やこうしたシーンは全国に溢れ、履いて捨て
るほどある。洗濯物のそよぎが「使用中」を
示す。
9/13tue
無人駅の読書 針の進む音
(むじんえきのどくしょ はりのすすむおと)
※こんな静かな無人駅があるところは貴重かな?
いまどきは遠隔で音声案内がある。
9/11sun
耳元で癌を語りて夏に逝く
(みみもとでがんをかたりてなつにいく)
ワケギ好き冷凍を説く床屋あり
(わけぎずきれいとうをとくとこやあり)
※仲の良かった床屋の親父が死んだ。3年近く
の肺ガンとの闘いの末である。なにをさせて
も執念とこだわりの強い人だったから、ゆっ
くりした床屋タイムの話はいつも楽しみだっ
た。合掌。
9/10sat
名月もかすむ蝮の噂かな
(めいげつもかすむまむしのうわさかな)
※見事な名月。さすがに。見えすぎなくらい。
9/7wed
我慢して 追肥をかてに 秋茄子
(がまんして ついひをかてに あきなすび)
※9/7泉鏡花の忌日。代表作以外は読むことのな
かった作家だが、ネットの朗読に親しんで鏡
花も三つほど聴いた。いずれもスマホのおか
げ、YouTubeのおかげ、ヒマのおかげ。鏡花
との距離が随分縮まった。
9/6tue
稲刈り機揺られウクライナのことを
(いねかりきゆられうくらいなのことを)
運転は孫に勝りて刈田かな
(うんてんはまごにまさりてかりたかな)
一族も郎党もいず刈り終わる
(いちぞくもろうとうもいずかりおわる)
稲刈りてデータを入れる月明かり
(いねかりてでーたをいれるつきあかり)
9/5mon
カタロニア 野の鳥を見る 善衛の忌
(かたろにあ ののとりをみる よしえのき)
※少し左派がかった元日本ペンクラブ会長堀田
善衛が亡くなったのが1998年9月5日。
スペインアスツゥリアスとカタロニアに合わ
せて5年近く住んだ作家である。著作も多い。
小生がスペインオタクになった機縁である。
野の鳥はピースピースと鳴く、とカザルス。
9/4sun
飴色の ぶどう袋に 妻方々
(あめいろの ぶどうふくろに つまほうぼう)
※甘くはありませんがとお裾分けするが、おい
しかったと言ってくれる人もいる。高級品が
多い最近では昔のぶどうの味でなつかしかっ
たという感想かな?
9/3sat
剃りたての 頬を撫でつつ 桐一葉
(そりたての ほほをなでつつ きりひとは)
※例年より低い気温が続く。台風は沖縄県先島
近辺で停滞の後東北に動き始めた。
朝に切る ぶどう三房を 仏前に
(あさにきる ぶどうみふさを ぶつぜんに)
9/2fri
近道の 秋灯の家 時計鳴る
(ちかみちの しゅうとうのいえ とけいなる)
※やっぱり昭和か?ちょっと古めの時計の音が
聞こえた。窓に映る灯りも古めの暖色系だし、
新しい家にしてはやや奇々怪々。
9/1thu
度を重ね 二百十日の 俄雨
(どをかさね にひゃくとおかの にわかあめ)
小椋鳥 夕立家に 帰りかね
(こむくどり ゆうだちいえに かえりかね)
※ムクドリは常に群れで行動するのに、突然の
激しい雨に打たれ、一羽が木の根元に取り残
された。いつもは群れの旺盛な動きに舌打ち
することもあるが今日の姿はほんの小鳥だ。