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ダクタク句集2023年(令和5年)2月 [ダクタク2023年2月]

2/28tue
春浅し友の旧居に杭打機
  (はるあさしとものきゅうきょにくいうちき)
   ※随分前に越した友人宅跡だが周囲の土地を合
    わせて工事が始まった。杭を打つ必要がある
    建物? この近辺では珍しい。

2/26sun
春の海フェリーふわりと波の上
  (はるのうみふぇりーふわりとなみのうえ)
   ※友人を見送って金谷港東京湾フェリーまで出
    かけた。天気は良いのだがやや波が高い。心
    配のほどではない。でっぷり肥えたフェリー
    は無事浮かんで出港した。

2/24fri
春の闇濃かれ三つ星寄り添うて
  (はるのやみこかれみつぼしよりそうて)
   ※昨夕、日の入り後18時30分頃の西の空で、
    「新月」と「木星」「金星」とが一列に黄道
    上に並ぶ天体ショーを見た。格別レアなこと
    ではないが、タイミングと天候がこうもピタ
    リと合うことは少ない。写真も撮れたよ。

2/23thu
春の旅ミシン黄色を纏いおり
  (はるのたびみしんきいろをまといおり)

旅先の待ちにし膳よ蕗の薹
  (たびさきのまちにしぜんよふきのとう)
   ※旅は思い浮かべるころから出かけるまでが至
    福という。明るい黄色はお気に入り、さあ出
    かけよう。

2/22wed
猫魔岳街を白くし春むかし
  (ねこまだけまちをしろくしはるむかし)
   ※昔会津若松の点描。2月の午後。通りの遥か
    先にあるのは真っ白な残雪をいただく猫魔岳。
    これが浮き上がって大きく見える日がある。
    市街の根雪は融けて道を洗い、コンクリート
    舗装の道はこれも白く見える。家並みは後退。

2/21tue
春一日怠惰の時とのみ記して
  (はるひとひたいだのときとのみきして)

ブランコをこいで人待つ青春か
  (ぶらんこをこいでひとまつせいしゅんか)
   ※ろくなニュースはないが、そこは春だからそ
    の気になれば春になる。

2/20mon
太陽光パネルが侵す春田かな
  (たいようこうぱねるがおかすはるたかな)
   
蓬髪が床屋帰りで春の風
  (ほうはつがとこやがえりではるのかぜ)

2/19sun
街道はうつらうつらの菜の花忌
  (かいどうはうつらうつらのなのはなき)
   ※菜の花忌の頃に古い「街道を行く」のTV番組
    を見た。本よりも随分端折ってあるものの、
    上手い編集だ。田村高広のナレーションが懐
    かしい。

2/18sat
寝もやらずジャガイモ植うる日はうつろ
  (ねもやらずじゃがいもううるひはうつろ)
   ※ちょっと早めのジャガイモの植え付け。肥料
    を多めにして、このタイミングの植付けは生
    育が良いという話を仕入れてきた。
    サボり気味の今年はこれが野良始めだ。ねむ
    たい~・・・。

雪形を見たいと思う野良始め
  (ゆきがたをみたいとおもうのらはじめ)

2/17fri
梅咲きて痒み嘆きし人いかに
  (うめさきてかゆみなげきしひといかに)
   ※年寄りの冬季の痒みは空気と肌の乾燥が主因
    と言われる。彼へのアドバイスは「入浴を一
    日おきに、入浴の日は今まで通りちゃんと石
    鹸で洗いちゃんと落とすこと。入浴しない日
    は一日中石鹸を使わないこと。使わなくとも
    すぐ慣れる」というもの。

2/16thu
春の宵億劫という音を上げる
  (はるのよいおっくうというねをあげる)
   ※さて、もう歳かな? 何か動き始めるときに、
    初めのひとふんばりを1テンポ待つことが近
    頃多くなった。なんのこともないのだけれど、
    その時の姿勢でしばしゆっくりするのだ。

2/14tue
家に肌あり初東風の似合う家
  (いえにはだありはつこちのにあういえ)
   ※歳時記は季語とその季語を使った例句を味わ
    って、季節感の妙を感じるものだ。しかし季
    語の中には違和感どころか時代錯誤と言わざ
    るを得ないものも数多い。窮屈でも文句を言
    わずにその古い季語に合った対象を見つけよ
    ということなのか。

2/12sun
かたや死にかたやはかくも春の声
  (かたやしにかたやはかくもはるのこえ)
   ※久しぶりに聞く彼の声は以前と全然変わらな
    い。前回の彼の電話は同期の友の死を伝える
    ものだった。昔から二人を対で見がちな私。

2/11sat
生姜酒とめる者なく喜寿の春
  (しょうがざけとめるものなくきじゅのはる)

天井のシミ数え切り喜寿の春
  (てんじょうのしみかぞえきりきじゅのはる)
   ※町内会の人から喜寿のお祝いですよね、と言
    われて改めて意識した。満77歳の誕生日か
    ら2カ月ほど。感慨とてなにもない。

2/10fri
新海苔は産地苦渋の味少し
  (しんのりはさんちくじゅうのあじすこし)
   ※地元木更津、富津の江戸前海苔はここ数年ク
    ロダイの養殖場への侵入と食い荒らしなどに
    よって被害を被っている。今季は有明海の海
    苔の産地も海水温の上昇が海苔生育の大幅減
    産につながっているらしい。

2/9thu
春寒やこころに農具並べおり
  (はるざむやこころにのうぐならべおり)
   ※とっくに農具はラインアップ済み。鎌だって
    研いである。

2/8wed
壁の上を春日は円くすべりおり
  (かべのえをはるびはまるくすべりおり)
   ※寝室のカーテンの合わせ目から差し込む朝日
    が壁の上に7,8センチの円い明るい形を作る。
    日の出の時刻が日々早くなるから、見えだす
    時刻は一日ごとに少し早くなり、その位置は
    左にずれる。秋分の日以降の秋とはちょうど
    逆の形だ。
    ついでに言えばそこは床の間で春向きの掛け
    軸がかけてある。その上を円い光がすべる。
    出来過ぎた話。嘘のような本当の話。

2/6mon
童顔は遺影となりて余寒かな
  (どうがんはいえいとなりてよざむかな)

寒紅玉切らさずただに好きなれば
  (かんこうぎょくきらさずただにすきなれば)

煮大根においはわが身黙しおり
  (にだいこんにおいはわがみもくしおり)

2/4sat
立春や師の舌かくも滑らかに
  (りっしゅんやしのしたかくもなめらかに)
   ※絵にもおしゃべりにも盛んなのはすごい。御
    年は80歳台後半で絵筆の軽妙なこと、言葉
    に切れ目がないこと。

2/3fri
めずらしく朝のご飯寒卵
  (めずらしくあさのごはんかんたまご)

豆まきや声の大きさ迷いつつ
  (まめまきやこえのおおきさまよいつつ)
   ※外に向いてまず一声、大き過ぎたかな? 一
    瞬のうちに脳裏を掠める。えいッ、構うな、
    この大きさで、鬼に入られてしまう。
    声の大きさ! 実は単なる羞恥心の減退、認
    知症の手前の始まりだったりして・・・。

2/2thu
宵星の西に沈めば冬銀河
  (よいぼしのにしにしずめばふゆぎんが)
   ※日脚が伸びたものの光はまだ弱い。宵の明星
    が沈み暗い星空に変わるまで長い時間は要ら
    ない。寒風は身を震わせるが、天空の変化の
    微妙さは今頃が味わい深い。

2/1wed
着ぶくれて道ゆずりたる好々爺
  (きぶくれてみちゆずりたるこうこうや)

客引きも色とりどりに着ぶくれて
  (きゃくひきもいろとりどりにきぶくれて)
   ※1月の寒波はまだ続いている。客の出足はさ
    らに細り、夜の街は大変だ。

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ダクタク句集2023年(令和5年)上期 自選集 [自選集2023]

2023年5月分コピー済 未選定

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5/31wed
友堂々50号の絵梅雨に入る
  (ともどうどうごじゅうごうのえつゆにいる)
   ※友人からの案内で地域絵画グループの美術展
    を見に行った。なかなかどうして手管の面々、
    圧倒された。うなだれて雨模様の中を帰って
    きた。

5/30tue
片陰もなき牛込の柳町
  (かたかげもなきうしごめのやなぎちょう))
   ※先日の東京行続き。
    あの日は背中がじりじりと季節外れの真夏日。
    好きで歩いているとはいえ、一時間休みなし
    というのはやや危険。わかってはいるけど・
    ・・ほう、ここは東京女子医大のすぐ近くだ。
    安心。

白靴で夏目通りよ坂の街
  (しろぐつでなつめどおりよさかのまち)

5/29mon
手拭いを職人風に豆の飯
  (てぬぐいをしょくにんふうにまめのめし)

薬の日どくだみ抜く手てぬるかり
  (くすりのひどくだみぬくててぬるかり)

5/28sun
ランドセル開いたままの子走り梅雨
  (らんどせるあいたままのこはしりづゆ)

西瓜苗植うるに場所の狭まりて
  (すいかなえううるにばしょのせばまりて)
   ※家庭菜園でも連作障害を避けるために知恵
    を絞る。スイカはウリ科、好みの野菜がワ
    ンサとある。4,5年間を空けよとなると
    相当に大変。 

5/26fri
走り梅雨ブラ翁が間奏曲よ
 (はしりづゆぶらおうがかんそうきょくよ)
   ※日ごとの天気の変化、寒暖の差が激しい。
    梅雨も近い。ブラームス親方をブラ翁と称
    し、型にはめようとする無理。句を作る者
    が味わう快感。

5/25thu
緑陰に人や自在に神楽坂
  (りょくいんにひとやじざいにかぐらざか)
   ※先日の東京行続き。
    年に一度のフィエスタが近いとあって、坂
    のそこかしこで関係の人がたむろしている。
    久しぶりの都会の街と人。

日盛りやただ黙々と坂の道
  (ひざかりやただもくもくとさかのみち)
   ※暑いというのに遠回りして坂の途中から大
    久保通りに左折。牛込を経由し市谷を掠めて
    北上、目標の一つ、夏目坂に向かう。
    ただ歩く、これがいい。東京の普通の道を。

5/24wed
毘沙門天賽銭の音友の息
  (びしゃもんてんさいせんのおととものいき)
   ※先日の東京行続き。
    神楽坂を上ると中ほど左手に善国寺がある。
    地域では「毘沙門さま」と呼ばれていると
    か、山の手七福神の一つ。日傘が集ってい
    る。神楽坂は日影が多く、酷暑?の中、こ
    こまでは出足快調だ。

5/23tue
電車今夏の帽子を膝に置く
  (でんしゃいまなつのぼうしをひざにおく)
   ※先日の東京行。電車に乗るのさえ多少興奮し
    ている? それほど久しぶりの出来事。

駅頭は久闊よりも暑さかな
  (えきとうはきゅうかつよりもあつさかな)

5/22mon
麦秋はこの地ここだけ夫婦いる
  (ばくしゅうはこのちここだけふうふいる)

莢豌豆手疲るほどの地の恵み
  (さやえんどうてつかるほどのちのめぐみ)
   ※都会をゆっくり味わい、疲れるほどに歩いた
    が、住まいへの帰巣本能が以前より強い。
    歳のせいもあり、またコロナ禍で寸断された
    都会への思いのせいもあろう。

5/21sun
AIの変革にいるか夏木立
  (え-あいのへんかくにいるかなつこだち)
   ※ほんのしばらくの間で世界中の話題になって
    いる生成AI。良いにつけ悪いにつけ影響を
    まともに被る世代ではない。したがって急速
    な大変革とはいえ、その動きを劇場で味わっ
    ている気分だ。今や出し物としては戦争を凌
    ぐかも。

5/19fri
Тシャツの長き横文字夏来たる
  (てーしゃつのながきよこもじなつきたる)

雨上がる緑の重さ薄暑かな
  (あめあがるみどりのおもさはくしょかな)

5/17wed
薫風や三年見ぬ間の濠の駅
  (くんぷうやみとせみぬまのほりのえき)
   ※気の合った仲間との、三年ぶりの歩き会は真
    夏日の昼下がりの神楽坂に集合した。暑い。
    想定外の「決死行」となった。

5/16tue
風薫る休場明け後の二連勝
  (かぜかおるやすみあけごのにれんしょう)
   ※横綱の両膝のサポーター、単なるテーピング
    ではなくてなにやら角ばったガード材がそこ
    を覆っている。きょうも明日も横綱を応援し
    ている。結果勝ちであればいい。

5/15mon
夏来たる無愛想なる街もよし
  (なつきたるぶあいそうなるまちもよし)
   ※テレビも他のメディアも、また街に出れば商
    店も通りも、東京も地方も「ターゲットは若
    者」とりわけ「Z世代」とか。
    これイコール落ち着かない世の中だ。
    こびちゃいけない。

5/14sun
青嵐打ち捨てられし苗の青
  (あおあらしうちすてられしなえのあお)
   ※当地の田植えは大半が四月中に終わっている
    が、何の品種かもち米か?半月も遅れて田植
    えをした。使いようがない、残った苗の山。

5/13sat
山法師の白は濁手爺の家
  (やまぼうしのしろはにごしでじじのいえ)
   ※ヤマボウシの花が咲き始めている。いつも通
    る家のそれはもう半ばを越えている。しかも
    その白色は実に深い色をしている。家ごとに
    木ごとに白が違う気がする。

5/12fri
聖五月戴冠式に仔細あり
  (せいごがつたいかんしきにしさいあり)

サツマイモ植えず三日の雨続き
  (さつまいもうえずみっかのあめつづき)

5/11thu
芍薬は画材見事な見得を切り
  (しゃくやくはがざいみごとなみえをきり)
   ※今朝4時過ぎ当地を震度5強の強い揺れが襲
    った。人生で初めての5強を体験、その最中
    これが更に強くなったら・・・首都直下地震
    ではないか?の強い恐怖に捕らわれた。
    見舞いのメールなどを受信し、一息ついたの
    は約一時間後。

5/9tue
細き棒ギブスの中を夏に入る
  (ほそきぼうぎぶすのなかをなつにいる)
   ※知人が自分の庭で転倒し踝を骨折した。齢を
    重ねての骨折は時に大変なのだが、時間はか
    かるが完治できる見通しだ。ギブスに合った
    木の棒をプレゼントした。大いに感謝された。

5/8mon
春惜しみ上野の山をただ抜ける
  (はるおしみうえののやまをただぬける)

角曲がる都電見下ろし暮れかぬる
  (かどまがるとでんみおろしくれかぬる)
   ※晩春という言葉にある郷愁を感じるのだが、
    自分の体験と小津安二郎の映画の記憶とが混
    然となって境目が妖しくなってことにも原因
    がある。不甲斐ない自分の記憶力にがっかり
    はするものの、悪い気分ではない。
    春をじっくり惜しむほど情緒のある人間では
    ない。なぜか浮かんでくるのは、言問通りか
    らがら芸大の裏手に上がって、ただ御徒町方
    面に上野の山を突っ切ってくる。もう一つは
    王子駅付近で都電が直角に曲がるあたり、近
    くには飛鳥山がありこの辺もサクラがあった。
    広い道路をまたぐ横断歩道の上から飽かずに
    眺めている。どちらも夕暮れ近く。

草の山と鎌を眺めつ春惜しむ
  (くさのやまとかまをながめつはるおしむ)

5/6sat
芋植うる今日は二畝ばかりなり
  (いもううるきょうはふたうねばかりなり) 

磯茶屋の大椀どっと浅蜊汁
  (いそじゃやのおおわんどっとあさりじる)

5/5fri
チェーホフは春の日そして春の夕
  (ちぇーほふははるのひそしてはるのゆう)
   ※午前中はゆっくり読書と新聞、午後は晴れの
    強風の中畑に駆り出される。行く春を惜しむ、
    どころか黄砂混じりの風の中、サツマイモを
    植える準備をする。今年はちゃんと黒マルチ
    を張って50本植える予定。ちゃんとやるに
    はやはり私の出番。

5/4thu
住職を庭師とまがふ日永かな
  (じゅうしょくをにわしとまがうひながかな)

団地の子女子が率いて日永かな
  (だんちのこじょしがひきいてひながかな)

5/3wed
峠越え八十八夜の歯科通い
  (とうげこえはちじゅうはちやのしかがよい)
   ※家内が歯茎の治療に難渋し、腕の良い口腔
    歯科を求めて隣市の医院を紹介してもらっ
    た。国道沿いで行くと遠くなり、山越えの
    ショートカットを選んで連れて行く。
    それにしても遠い。午後の予約で行くと午
    後一杯取られてしまう。

5/2tue
忌野忌木の間隠れの清志郎
  (いまわのきこのまがくれのきよしろう)
  ※快晴。木漏れ日を浴びながら草むしり。新たに
   入手したイヤホーンで清志郎を聴く。
   フーン・・・いいなあ。いいのは清志郎であっ
   て、値段の割にイヤホーンはだめ。それとも、
   スマホ越しの音ってこんなものか?

5/1mon
句日記や苦あり楽あり柿若葉
  (くにっきやくありらくありかきわかば)
   ※誰にも見てもらっていないという前提なれど
    も、出来ればコンスタントに自分が満足する
    句を作りたいと思う。
    そのための強制力の一つがこのブログだ。始
    めた以上自分で恥ずかしい句は見せられぬ、
    決めて開店休業とはいかぬ、と。


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4/30sun
荷風忌や言葉あふれて街ゆれて
  (かふうきやことばあふれてまちゆれて)
   ※インバウンドの回復のニュースで浅草雷門周
    辺の雑踏が伝えられる。あそこにはすぐ横に
    交番があって、我慢強い優しい警察官が絶え
    ず笑顔で外国人に応対している。日本の若者
    の言葉らしき洪水もある。荷風卒倒。

4/29sat
春爛漫バラは匂いて吾無臭
  (はるらんまんばらはにおいてわれむしゅう)
   ※その昔顔は脂ぎって口の中、パンツの中、靴
    の中は蒸れて異臭があった。普段においてそ
    うだった。ところが今や匂いはないと人に言
    われる。優秀な女歯科医に出会ってからは少
    しのプラークもチェックされる。この10年
    超、自分の歯の数に異動はない。口臭もない。
    生きている証拠も急速に減っているというこ
    とか。

4/27thu
動画見てブドウの芽かきためらわず
  (どうがみてぶどうのめかきためらわず)
   ※動画投稿サイトもユーチューブ以外に様々あ
    るらしいが、DIY・修理・家事・野菜果実栽
    培・ガーデニングなどなど課題に広く応えて
    くれるのはユーチューブだろう。本件のテー
    マも関係のサイトが見きれないほどある。

4/26wed
しなやかな八十路の筆よ豆の花
  (しなやかなやそじのふでよまめのはな)
   ※どこが痛い、ここが痛い、もう歳だからダメ、
    とかいいながら筆を持たせると、対象をきり
    っと見つめ、力強く筆を滑らせる。絵画教室
    の師はまだ当分大丈夫だ。

4/25tue
新人の帽子は二つかげろへる
  (しんじんのぼうしはふたつかげろえる)
   ※中学校野球部でも新人は二人だけ? うち一
    人はつい先月までの小学生を思わせるチビ。
    今部活は曲がり角、顧問の教師の激務防止と
    やらで学校外から人材を呼んで運営や指導を
    委ねるという。さて・・・。そもそも学年二
    人ではチームがそのうち成立しなくなる。
    これは少子化対策か?

4/24mon
喜寿の春尾崎今なら同じ岸
  (きじゅのはるおざきいまならおなじきし)
   ※尾崎豊の歌特集でたっぷりと聴いた。しみじ
    みと繰り返し。

4/22sat
春の蚊や血を吸う知恵はなかりけり
  (はるのかやちをすうちえはなかりけり)

4/21fri
葱坊主貯めし雑草抜きにけり
  (ねぎぼうずためしざっそうぬきにけり)

学年の違う子らいる葱坊主
  (がくねんのちがうこらいるねぎぼうず)
   ※コロナ禍の制限された暮らしは畑仕事を増や
    したとか。周辺でもそれまでの庭を大胆に畑
    にした家が何軒か見受けられる。やせた葱坊
    主がクレイムを言いたがって・・・。

4/20thu
涅槃図や絵解きの僧の若返り
  (ねはんずやえときのそうのわかがえり)
   ※ペンライトを使うところは変わりないが、声
    が変わった、若い透き通るいい声だ。わかり
    やすい。だが、こちとら内容を理解したいと
    聴いているわけではない。嗄れ声のいつもの
    声の方が落ち着くしありがたい。死んだわけ
    じゃないだろう。

4/18tue
捻挫して常より見入るすみれ草
  (ねんざしてつねよりみいるすみれそう)
   ※家内が犬を曳いていて踏み外し、捻挫した。
    初め大層痛がったが、時間を置かず整形外科
    で診てもらい患部を固定した。これが奏功し
    軽くて済んだみたい。ほぼ全快。

4/17mon
大風のやみて間もなく浮かれ猫
  (おおかぜのやみてまもなくうかれねこ)
   ※時々吹きまくる大風が長いこと続いた。建物
    が揺れ撓るほどで睡眠には大敵。ようやく静
    かになったと思ったら、・・・猫の恋の始ま
    り? 早くないか? 温暖化?

4/16sun
外来の受付すれば青柳
  (がいらいのうけつけすればあおやなぎ)

4/14fri
角とれてと言われ久しく蕨餅
  (かどとれてといわれひさしくわらびもち)

4/13thu
屋根の鞠今も探して啄木忌
  (やねのまりいまもさがしてたくぼくき)
   ※ふとしたことで昔のことを思い出し、その前
    後のことまで妙に生々しく覚えていた、なん
    てことがある。啄木の故郷を思っての一首、
    「その昔小学校の柾屋根に
        我が投げし鞠いかにかなりけむ」

4/12wed
どの家も表札のごとハナズオウ
  (どのいえもひょうさつのごとはなずおう)

春愁や宅配人のほころべり
  (しゅんしゅうやたくはいにんのほころべり)

4/11tue
描きし絵の穏やかなれど徂春かな
  (かきしえのおだやかなれどそしゅんかな)
   ※絵画教室の会でOBの来訪があり、腕前の進
    歩と積極的な出展、入賞のことなど、大いに
    アオラレタ。なにこの歳になって、画家にな
    りたいわけじゃなし・・・とお決まりの言い
    訳はするものの、もう少し上手になってもと
    素直に願う気持ちや切なるものがある。

4/10mon
田植え機のギヤなめらかに父となる
  (たうえきのぎやなめらかにちちとなる)
   ※農業後継者の彼はまだ新米のうち。先日父親
    になったらしい。田植えは早くて1週間後、
    腕が鳴って仕方がないというところか?

4/9sun
山笑ふバイクは遅し郵便夫
  (やまわらうばいくはおそしゆうびんふ)

春巻を揚げて届けに手の温み
  (はるまきをあげてとどけにてのぬくみ)
   ※もらった筍の一部を春巻にし届ける。スマホ
    で時刻を確認し揚げたてを。

4/8sat
春爛漫愛想尽かしの果樹あれど
  (はるらんまんあいそづかしのかじゅあれど)
   ※一番遅いぶどうの木が芽吹き始めた。梅、桃、
    プラム、柿に続いてである。狭い土地に果樹
    を縦列に欲張って植えているせいか、昨年は
    殆どの木の収穫が落ち込んだ。対虫害では努
    力するもいずれも効なく終始した。ああ、と
    嘆息すること、今に引きずっている。

4/7fri
旅ごころ蠢き長く放哉忌
  (たびごころうごめきながくほうさいき)
   ※お金もないが、飼い犬がホテル・病院に預け
    にくい事情があるため、旅行は控えることが
    多い。コロナ禍で余計固まった感じ。

4/5wed
学校のサクラを望み湯屋はあり
  (がっこうのさくらをのぞみゆやはあり)
   ※御多聞にもれず、サクラと言えば城に学校で
    ある。小学校の桜並木を思い出していたら、
    ふと何のつながりもなしに近くに建っていた
    温泉会館なるものが頭に浮かんできた。これ
    も小学校も少し離れて故郷の川沿いにあった。
    温泉などではなく「沸かし」だったろう。
    70年ほど前のこと、あのころは農閑期の人
    々など家族連れが客だった。何年かで閉鎖し
    た。二階建ての、それらしくないモルタル塗
    りの白い建物だった。

4/4tue
龍一の音々さやか風光る
  (りゅういちのおとおとさやかかぜひかる)
   ※坂本龍一死去

4/3mon
毎日が今良しと推す山笑ふ
  (まいにちがいまよしとおすやまわらう)
   ※サクラの終盤になると背景の山々の若葉が輝
    き始める。昨日は今が一番いい時季だと思っ
    たが、今朝になると今日の方がもっと良くな
    ったと。

4/2sun
花びらはいつにも増して連翹忌
  (はなびらはいつにもましてれんぎょうき)

記念館は雪深くあり光太郎忌
  (きねんかんはゆきぶかくありこうたろうき)
   ※真冬に訪れた、高村光太路郎記念館は当時の
    厳しさそのままに花巻郊外にあった。藁ぶき
    の小さな一軒家、村はずれで隣家はない。
    大雪の中に見た、強烈な印象は今も鮮明であ
    る。光太郎忌はサクラ咲く、うららかな季節
    だが、思い出は常に雪に埋もれた、あの光景
    だ。したがって句は季重なりとなる。なに、
    構うものか。

4/1sat
桜散り桜餅食い四月馬鹿
  (さくらちりさくらもちくいしがつばか)
   ※今日は文句ない晴れ日。なんと言われようと
    午前中は桜吹雪を見に、午後は甲子園の決勝
    観戦だ。雑草が庭で背伸びして笑っている。


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3/31fri
酒倉は人呼ぶカフェに鳥曇り
  (さかぐらはひとよぶかふぇにとりぐもり)
   ※街がやさしく変貌すると言えば耳障りは良い
    が、街のいたるところでインバウンド向け、
    フリー客向けに変身するのはどうにもいただ
    けない。落ち着かない。
    通りの両側に高いオフィスビルやマンション
    が、目の高さにはいらっしゃいませの声。
    うんざりだ。

3/30thu
春たけなわ入道雲のようなもの
  (はるたけなわにゅうどうぐものようなもの)
   ※兄妹からなかなか良い電話が入った。積乱雲
    のような形がにょきにょきと立ちかけている。
    ちょいと歩くと汗がにじむような午後。

3/28tue
パスで行く博物館は花の道
  (ぱすでいくはくぶつかんははなのみち)
   ※その昔上野の国立博物館年間パスを持ってい
    た。驚くほど安かった。夏は勤務の後でも入
    れる閉館時間だったように思う。ちょいぶら
    っと見て御徒町まで歩く、それが良かった。

3/27mon
人ゆらり高き足場に花の風
  (ひとゆらりたかきあしばにはなのかぜ)

桜湯はサービスとありカフェの午後
  (さくらゆはさーびすとありかふぇのごご)
   ※雨がちな日が続き、当地のサクラはけなげに
    も少しも散らずにピークを迎えている。

尊氏の本心はどこ藪椿
  (たかうじのほんしんはどこやぶつばき)

3/26sun
目も耳も親譲りなり喜寿の春
  (めもみみもおやゆずりなりきじゅのはる)
   ※見た目は別としても、目も耳も鼻も歯や咽喉
    も、役割の面で今でも至極堅調である。親に
    感謝している。

春場所は気付けば楽日花の冷え
  (はるばしょはきづけばらくびはなのひえ)

3/25sat
待て待てと言葉緩めて春の雷
  (まてまてとことばゆるめてはるのらい)
   ※もう言葉を荒げる年齢でもない、とは思うも
    のの・・・。

汚すのも洗うのも雨土筆かな
  (よごすのもあらうのもあめつくしかな)

3/24fri
たんぽぽの絮飛ばすとき命燃え
  (たんぽぽのじょとばすときいのちもえ)

窓開けて歯科に客待つサクラかな
  (まどあけてしかにきゃくまつさくらかな)

声も歌もサクラに吸われデイの庭
  (こえもうたもさくらにすわれでいのにわ)

3/23thu
夕まぐれ野蒜の花が主演なり
  (ゆうまぐれのびるのはながしゅえんなり)
   ※3月は映画の賞の月。我が家の主演賞は断然
    花ニラ。地味で小さな花が夕方薄暗くなると
    庭中に冴えてくる。

3/21tue
木瓜の垣見知る主人の赭ら顔
  (ぼけのかきみしるしゅじんのあからがお)
   ※何年か越しの賜だろう、木瓜が棚いっぱいに
    咲き誇っている。比較的地味な花だから、そ
    の主人ともどもドヤ顔はしない。

3/19sun
春場所や贔屓力士の眉伸びて
  (はるばしょやひいきりきしのまゆのびて)
   ※WBCに選抜高校野球も始まり球春真っ盛り。
    相撲もと行きたいけれど休場相次ぎ、こちら
    は戦国下剋上・・・。

3/17fri
藪椿手折って土の瓶思い
  (やぶつばきたおってつちのびんおもい)
   ※椿らしくない、珍しいと思って、素焼きの花
    瓶にさし、スケッチ始めたまでは良かったが、
    上手に描けたと思った椿の絵がどうも椿に見
    えない。仲間も「これ椿か?」と不評。こち
    らは不満。・・・それもそのはず元々が椿ら
    しくないのだから。

3/16thu
もぐら塚生命力の霞みおり
  (もぐらづかせいめいりょくのかすみおり)
   ※国立科学博物館のもぐら研究の先生が話して
    いた。仕事の半分以上が動物の骨の標本作り
    であると。しかも標本作成には「3無」の特
    徴がある由。「無計画」「無目的」「無制限」
    にやるのだそうな。標本を多種、大量に持つ
    ことが将来の研究のなによりの基盤だ、その
    ためであると。なるほどとびっくり。
    今日も動物園から送られてきた動物の死骸、
    奄美で交通事故死したアマミノクロウサギの
    死骸に向き合う。

3/15wed
春時雨香り充溢今朝のパン
  (はるしぐれかおりじゅういつけさのぱん)
   ※薄暗い朝も許せる。

3/14tue
駅前の円墳にあり白木蓮
  (えきまえのえんぷんにありしろもくれん
   ※すれ違う白マスクの数はそんなに減っていな
    い。近くの駅では白が急増とか。

3/13mon
新設の波止は揺らいで眼張釣り
  (しんせつのはとはゆらいでめばるつり)
   ※次第に風が強くなる。午後は雨も。新しい波
    止は強風で揺れるのではないか、余計なお世
    話。

3/12sun
春霞五重塔の圓遊の
  (はるがすみごじゅうのとうのえんゆうの)
   ※圓遊の新作落語「五重塔から のっそり」を
    聴いた。良かった。露伴「五重塔」のスジに
    沿って、その空気を面白く上手に伝える。
    サクラ前でもいいから谷中を歩きたいものだ。

3/11sat
皺の手や三月十日の句が多く
  (しわのてやさんがつとおかのくがおおく)
   ※三月十日は東京大空襲で季語
    今日三月十一日は東日本大震災、これも季語

うららかや都電の車庫に音ありて
  (うららかやとでんのしゃこにおとありて)

3/10fri
春の夕ジムの灯りのみこうこう
  (はるのゆうじむのあかりのみこうこう)

呼吸器の音と点滅春の闇
  (こきゅうきのおととてんめつはるのやみ)
   ※アカデミー賞の発表が間近いからというので
    もないが、過去の受賞作「ミリオンダラー・
    ベイビー」を見た。以前にも見たが、今回も
    感動した。クリント・イーストウッドにモー
    ガン・フリーマンが揃い、ヒラリー・スワン
    クときたら、2005賞総なめもわかる。

3/9thu
青海苔やこんなのという男あり
  (あおのりやこんなのというおとこあり)
   ※今シーズンは地元木更津周辺の海苔も有明海
    の海苔もそれぞれ違った原因で不漁となって
    いるらしい。江戸前のつやつやした黒い海苔
    がふんだんに・・・もうそんなことはないの
    か? 青海苔は独特の風味があってファンも
    多いのだが、不漁続きでは吐き捨てるように
    しか言わない。

3/7tue
古竹を切りて三月垣直す
  (ふるたけをきりてさんがつかきなおす)
   ※四月下旬並みの暖かさという今日まで延ばし
    ていた作業をする。庭はクロッカス、ムスカ
    リ、花ニラの順で賑やかになりそう。

3/6mon
今読まずはもう読まざるの春の雨
  (いまよまずはもうよまざるのはるのあめ)
   ※楽しみにして用意した本なのに出足で躓くこ
    とがある。年齢のせいもある。またそのうち
    に出直しをと言っても、今回が事実上の最後
    だろうと自分を脅迫し追い詰めてみる。
    それでもだめ・・・。

3/5sun
春眠やふとんの重さ知りてなお
  (しゅんみんやふとんのおもさしりてなお)
   ※うとうと目を覚ましたが、目はまだ開かない。
    冬中使ってきた布団がやけに重く感じる。む
    にゅむにゅ・・・暖かいけど、むにゅむにゅ
    ・・・。やってはいけない自句実況でした。

3/3fri
雪柳最初の白い二三点
  (ゆきやなぎさいしょのしろいにさんてん)

雛の日や女房マージャン公民館
  (ひなのひやにょうぼまーじゃんこうみんかん)
   ※どうやら偕老同穴となる雲行きの桃の節句で
    はある。最近は女房元気で留守がいいという
    常套句もどきが良く似合う。

3/2thu
今朝一はスカルラッティ春一番
  (けさいちはすかるらってぃはるいちばん)

春一番ラインで老けを確認し
  (はるいちばんらいんでふけをかくにんし)
   ※ラインで都心歩きの会再開の日を3人で相談
    する。便利なものだ、しかも無料とはね。

3/1wed
蘖や鑿研ぐ日々を思いたり
  (ひこばえやのみとぐひびをおもいたり)
   ※暖かすぎる日中、友人との再会兼街歩きも良
    かろうと思う。ラインで見る顔もそうは老け
    ていないようだし。



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2/28tue
春浅し友の旧居に杭打機
  (はるあさしとものきゅうきょにくいうちき)
   ※随分前に越した友人宅跡だが周囲の土地を合
    わせて工事が始まった。杭を打つ必要がある
    建物? この近辺では珍しい。

2/26sun
春の海フェリーふわりと波の上
  (はるのうみふぇりーふわりとなみのうえ)
   ※友人を見送って金谷港東京湾フェリーまで出
    かけた。天気は良いのだがやや波が高い。心
    配のほどではない。でっぷり肥えたフェリー
    は無事浮かんで出港した。

2/24fri
春の闇濃かれ三つ星寄り添うて
  (はるのやみこかれみつぼしよりそうて)
   ※昨夕、日の入り後18時30分頃の西の空で、
    「新月」と「木星」「金星」とが一列に黄道
    上に並ぶ天体ショーを見た。格別レアなこと
    ではないが、タイミングと天候がこうもピタ
    リと合うことは少ない。写真も撮れたよ。

2/23thu
春の旅ミシン黄色を纏いおり
  (はるのたびみしんきいろをまといおり)

旅先の待ちにし膳よ蕗の薹
  (たびさきのまちにしぜんよふきのとう)
   ※旅は思い浮かべるころから出かけるまでが至
    福という。明るい黄色はお気に入り、さあ出
    かけよう。

2/22wed
猫魔岳街を白くし春むかし
  (ねこまだけまちをしろくしはるむかし)
   ※昔会津若松の点描。2月の午後。通りの遥か
    先にあるのは真っ白な残雪をいただく猫魔岳。
    これが浮き上がって大きく見える日がある。
    市街の根雪は融けて道を洗い、コンクリート
    舗装の道はこれも白く見える。家並みは後退。

2/21tue
春一日怠惰の時とのみ記して
  (はるひとひたいだのときとのみきして)

ブランコをこいで人待つ青春か
  (ぶらんこをこいでひとまつせいしゅんか)
   ※ろくなニュースはないが、そこは春だからそ
    の気になれば春になる。

2/20mon
太陽光パネルが侵す春田かな
  (たいようこうぱねるがおかすはるたかな)
   
蓬髪が床屋帰りで春の風
  (ほうはつがとこやがえりではるのかぜ)

2/19sun
街道はうつらうつらの菜の花忌
  (かいどうはうつらうつらのなのはなき)
   ※菜の花忌の頃に古い「街道を行く」のTV番組
    を見た。本よりも随分端折ってあるものの、
    上手い編集だ。田村高広のナレーションが懐
    かしい。

2/18sat
寝もやらずジャガイモ植うる日はうつろ
  (ねもやらずじゃがいもううるひはうつろ)
   ※ちょっと早めのジャガイモの植え付け。肥料
    を多めにして、このタイミングの植付けは生
    育が良いという話を仕入れてきた。
    サボり気味の今年はこれが野良始めだ。ねむ
    たい~・・・。

雪形を見たいと思う野良始め
  (ゆきがたをみたいとおもうのらはじめ)

2/17fri
梅咲きて痒み嘆きし人いかに
  (うめさきてかゆみなげきしひといかに)
   ※年寄りの冬季の痒みは空気と肌の乾燥が主因
    と言われる。彼へのアドバイスは「入浴を一
    日おきに、入浴の日は今まで通りちゃんと石
    鹸で洗いちゃんと落とすこと。入浴しない日
    は一日中石鹸を使わないこと。使わなくとも
    すぐ慣れる」というもの。

2/16thu
春の宵億劫という音を上げる
  (はるのよいおっくうというねをあげる)
   ※さて、もう歳かな? 何か動き始めるときに、
    初めのひとふんばりを1テンポ待つことが近
    頃多くなった。なんのこともないのだけれど、
    その時の姿勢でしばしゆっくりするのだ。

2/14tue
家に肌あり初東風の似合う家
  (いえにはだありはつこちのにあういえ)
   ※歳時記は季語とその季語を使った例句を味わ
    って、季節感の妙を感じるものだ。しかし季
    語の中には違和感どころか時代錯誤と言わざ
    るを得ないものも数多い。窮屈でも文句を言
    わずにその古い季語に合った対象を見つけよ
    ということなのか。

2/12sun
かたや死にかたやはかくも春の声
  (かたやしにかたやはかくもはるのこえ)
   ※久しぶりに聞く彼の声は以前と全然変わらな
    い。前回の彼の電話は同期の友の死を伝える
    ものだった。昔から二人を対で見がちな私。

2/11sat
生姜酒とめる者なく喜寿の春
  (しょうがざけとめるものなくきじゅのはる)

天井のシミ数え切り喜寿の春
  (てんじょうのしみかぞえきりきじゅのはる)
   ※町内会の人から喜寿のお祝いですよね、と言
    われて改めて意識した。満77歳の誕生日か
    ら2カ月ほど。感慨とてなにもない。

2/10fri
新海苔は産地苦渋の味少し
  (しんのりはさんちくじゅうのあじすこし)
   ※地元木更津、富津の江戸前海苔はここ数年ク
    ロダイの養殖場への侵入と食い荒らしなどに
    よって被害を被っている。今季は有明海の海
    苔の産地も海水温の上昇が海苔生育の大幅減
    産につながっているらしい。

2/9thu
春寒やこころに農具並べおり
  (はるざむやこころにのうぐならべおり)
   ※とっくに農具はラインアップ済み。鎌だって
    研いである。

2/8wed
壁の上を春日は円くすべりおり
  (かべのえをはるびはまるくすべりおり)
   ※寝室のカーテンの合わせ目から差し込む朝日
    が壁の上に7,8センチの円い明るい形を作る。
    日の出の時刻が日々早くなるから、見えだす
    時刻は一日ごとに少し早くなり、その位置は
    左にずれる。秋分の日以降の秋とはちょうど
    逆の形だ。
    ついでに言えばそこは床の間で春向きの掛け
    軸がかけてある。その上を円い光がすべる。
    出来過ぎた話。嘘のような本当の話。

2/6mon
童顔は遺影となりて余寒かな
  (どうがんはいえいとなりてよざむかな)

寒紅玉切らさずただに好きなれば
  (かんこうぎょくきらさずただにすきなれば)

煮大根においはわが身黙しおり
  (にだいこんにおいはわがみもくしおり)

2/4sat
立春や師の舌かくも滑らかに
  (りっしゅんやしのしたかくもなめらかに)
   ※絵にもおしゃべりにも盛んなのはすごい。御
    年は80歳台後半で絵筆の軽妙なこと、言葉
    に切れ目がないこと。

2/3fri
めずらしく朝のご飯寒卵
  (めずらしくあさのごはんかんたまご)

豆まきや声の大きさ迷いつつ
  (まめまきやこえのおおきさまよいつつ)
   ※外に向いてまず一声、大き過ぎたかな? 一
    瞬のうちに脳裏を掠める。えいッ、構うな、
    この大きさで、鬼に入られてしまう。
    声の大きさ! 実は単なる羞恥心の減退、認
    知症の手前の始まりだったりして・・・。

2/2thu
宵星の西に沈めば冬銀河
  (よいぼしのにしにしずめばふゆぎんが)
   ※日脚が伸びたものの光はまだ弱い。宵の明星
    が沈み暗い星空に変わるまで長い時間は要ら
    ない。寒風は身を震わせるが、天空の変化の
    微妙さは今頃が味わい深い。

2/1wed
着ぶくれて道ゆずりたる好々爺
  (きぶくれてみちゆずりたるこうこうや)

客引きも色とりどりに着ぶくれて
  (きゃくひきもいろとりどりにきぶくれて)
   ※1月の寒波はまだ続いている。客の出足はさ
    らに細り、夜の街は大変だ。


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1/31tue
養蜂をやってみたいと春隣り
  (ようほうをやってみたいとはるどなり)
   ※65歳を前にした人がいる。第2の人生の新入
    生間近。彼は希望に燃えている。ああした頃
    が俺にもあったのだ。

スカーフに冬薔薇置いて画材とす
  (すかーふにふゆばらおいてがざいとす)

1/30mon
昼下がり湯たんぽ抱いて名画かな
  (ひるさがりゆたんぽだいてめいがかな)
   ※テレビで一生懸命映画を見ている。殆どが自
    宅で録画しておいたものだ。エアコンをとめ
    て湯たんぽを抱きかかえる、眠たくならない。

1/29sun
大寒やなんのなんのと言いにけり
  (だいかんやなんのなんのといいにけり)

ケッフェルの番号が出ず冬木立
  (けっふぇるのばんごうがでずふゆこだち)
   ※1/25はモーツァルトの誕生日のようである。
    ゆうに600以上ある作品を網羅して正確に番
    号をつけるのは至難の業といわれるが、なか
    でも一番信頼されるのはケッフェルのつけた
    作品番号だ。YoutubeなどではKの次に番号を
    つけて検索しただけで、世界中でアップされ
    た演奏が並ぶ。
    そんな超便利な番号が今次々と記憶から抜け
    落ちているようだ。がっくりする。少しずつ
    か?わからない。今朝も試しにk516で検索
    する。馴染みの演奏が並ぶ。胸を撫で下ろす。

1/27fri
蕪三つ葉っぱも自慢熨斗はなし
  (かぶみっつはっぱもじまんのしはなし)

金ないか着物はないか冬の声
  (きんないかきものはないかふゆのこえ)

1/26thu
大寒波北国生まれの身なれば
  (だいかんぱきたぐにうまれのみなれば)

冬鷗群れてぞ川を遡る
  (ふゆかもめむれてぞかわをさかのぼる)
   ※当地はマイナス5度まで気温が下がった。と
    は言え、特に変わったことはなにもなかった。
    外で飼っている犬の水が氷ってしまったこと
    ぐらい。頬がピリピリを越えて、ビリビリと
    痛痒いような感覚には遠かった。
    犬はもちろん、周囲も穏やかなようだ。

1/25wed
初天神いかず子供らうるさふて
  (はつてんじんいかずこどもらうるそうて)
   ※子供の騒音「あれ買ってくれこれ買ってくれ」
 
小三治の曾孫が騒ぐ初天神
  (こさんじのひまごがさわぐはつてんじん)
   ※初天神で露店が並ぶ通りに人があふれている。
    こんな光景は暫く落語の中だけだろう。故小
    三治の「初天神」は絶品だった。

滑舌の稽古は落語初天神
  (かつぜつのけいこはらくごはつてんじん)

1/24tue
大寒や譲る畑の草むしる
  (だいかんやゆずるはたけのくさむしる)
   ※家庭菜園を引退するシニアが寒中に草むしり
    をしている。じゃがいもの植え付けに始まる
    春野菜の作業開始に次の人が間に合うように
    との心配りだ。さすがと思う。

しぐるるや明日明後日は寒気来る
  (しぐるるやあすあさってはかんきくる)

1/21sat
電気代一段と大寒しばし
  (でんきだいいちだんとだいかんしばし)

寒釣りや台半畳の座禅かな
  (かんずりやだいはんじょうのざぜんかな)
   ※電気代が高騰した。次の3割近くの値上げ申
    請は円滑に行っても実施は夏前後だろうから、
    今のうちに音を上げていてはどうしようもな
    いのだが・・・。
    寒中に釣りに興ずる人々の境地にはいつまで
    たっても近づけない。

1/20fri
四十雀庭に長く居蕪村の忌
  (しじゅうからにわにながくいぶそんのき)
   ※冬型の気圧配置で関東地方は晴れ上がる。雨
    模様のすぐ後だけに、庭や畑に出ていざ労働
    というわけにはいかない。どこかに正月暮ら
    しの残滓が残っているようだ。

枯れ菊の山となりて焼く人なし
  (かれぎくのやまとなりてやくひとなし)

1/19thu
坐して描く水墨の線寒の雨
  (ざしてかくすいぼくのせんかんのあめ)

1/18wed
マスク越し目が笑いおり初稽古
  (ますくごしめがわらいおりはつげいこ)
   ※水彩画の絵画教室、初会合。恒例でバラを描
    いた。

1/16mon
雨音に冬枯れ思い眠りけり
  (あまおとにふゆがれおもいねむりけり)
   ※睡眠にかけての不器用さでは人後に落ちない。
    いったん思い詰めて固まると、ちょっとのこ
    とではほぐれない。眠れなくとも何の痛痒も
    ない身の上だが、・・・犬がいた。朝少しで
    も遅くなると叱られる。

1/15sun
初風呂や西日の残るうちに入る
  (はつぶろやにしびののこるうちにいる)
   ※新年早々浴室が薄暗い。外の明かりが残るう
    ちに入れば、これはなんと風雅なことか。
    いまだに電球を取り換えていない。

1/14sat
初茜山の端木々のこまごまと
  (はつあかねやまのはきぎのこまごまと)

侘びの戸に年賀の客の爪の色
  (わびのとにねんがのきゃくのつめのいろ)

笑い初め光と電波越しなれど
  (わらいぞめひかりとでんぱごしなれど)
   ※新年も二週間、早いものだ。今日は個人的な
    お祝い事があったが、生憎の雨模様。夫婦し
    てトンカツを食べてきた。ついでに正月絡み
    の句の整理をした。ほどほどのものは今日一
    斉に掲句して決まりをつけよう。

1/13fri
母親の角巻借りてポストまで
  (ははおやのかくまきかりてぽすとまで)
   ※北海道や雪国の部屋の中、ことにリビングな
    どは温かい。それでちょっとの外出の時など、
    簡単な防寒着に、角巻にくるまって出かける。
    しかしとうに廃れたことだろう。

1/11wed
若のつく郷土力士や寒の入り
  (わかのつくきょうどりきしやかんのいり)
   ※この一年着実に実力をつけている若元春、若
    隆景の兄弟力士は福島県出身。先行している
    のは弟若隆景で関脇で大関を狙っている。兄
    若元春もこの初場所で初の三役入り。ともに、
    地力としぶとさが信条の玄人好みの力士だ。

1/10tue
狐火は都会の闇にこそという
  (きつねびはとかいのやみにこそという)
   ※静謐というのか薄気味悪いと表現すればいい
    のか。コロナ禍のもたらした一種人工的な静
    けさは都会において夥しいという。
    そうかも知れない。人工的な喧騒のすぐ隣に
    現れたのだから。

1/9mon
襟巻し杖つき手にはお裾分け
  (えりまきしつえつきてにはおすそわけ)
   ※日中は温かい一日。団地の普段の夕景が戻っ
    てきたと言いたいところだが、通行のクルマ
    も人も少なくナリを潜めているようだ。これ
    がコロナ以降の普段。まるで正月のようと言
    った方が近いかな?

1/8sun
新年に独り住まいの愁い聞く
  (しんねんにひとりずまいのうれいきく)
   ※健康であれば独居の寂しさも気楽さに紛れる
    のでは? と思うのは外野の勝手な観測らし
    い。あれやこれや想定外の問題、煩わしさが
    襲って来るという。

淡雪や停戦告げりうすき唇
  (あわゆきやていせんつげりうすきくち)

1/6fri
弾初めはYouTubeなり弦低く
  (ひきぞめはゆーちゅーぶなりげんひくく)
   ※せめて正月にはちゃんとレコードをと思って
    いたのだが、この気楽さ、即聴性『どんな曲
    でも各種取り揃えて即座に聴ける』には抗し
    がたい。今年もせいぜいお世話になることだ
    ろう。

1/5thu
世を占う知の巨人とな初テレビ
  (よをうらなうちのきょじんとなはつてれび)

三が日休んで鵙の来て黙す
  (さんがにちやすんでもずのきてもくす)

1/4wed
去年の絵の感想ありて師の賀状
  (こぞのえのかんそうありてしのがじょう)

正月の軸は竹林いつぞやの
  (しょうがつのじくはちくりんいつぞやの)

初夢は何本かごちゃごちゃと無理
  (はつゆめはなんぼんかごちゃごちゃとむり)

1/3tue
正月や奥に鎮座の茶碗出し 
  (しょうがつやおくにちんざのちゃわんだし)

耳ふさぎこの世この日は寝正月 
  (みみふさぎこのよこのひはねしょうがつ)

句を書きて手を懐に寝正月 
  (くをかきててをふところにねしょうがつ)
   ※寝正月とかふてくされようと現実にはちょっ
    といいことに満ちている。正月の空と散歩、
    清新の気分は横溢しているし、ラグビーは早
    大が決勝進出、箱根も多くの人の想定より上
    位でゴールした。

1/2mon
初詣善男善女になりたふて 
  (はつもうでぜんなんぜんにょになりとうて)

線香を膝に賜ひて初観音
  (せんこうをひざにたまいてはつかんのん)

喜寿とても年玉賜ふ気のありて 
  (きじゅとてもとしだまたまうきのありて)

1/1sun
新年の祝詞おぐらき犬友と 
  (しんねんのしゅうしおぐらきいぬともと)

初日の出賀状仕舞いを悔やみおり
  (はつひのでがじょうじまいをくやみおり)
   ※日本海沿いを除いて広く晴れ上がったようだ。
    当地も快晴、朝早く犬の散歩を済ませ、お屠
    蘇の前に近くの観音様に出かけ年始のお参り
    をした。おみくじは大吉、甘酒もいただいた。
    交通安全のお札もゲット。こんなにスムーズ
    な出発は珍しい。

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