ダクタク句集2023年(令和5年)2月 [ダクタク2023年2月]
2/28tue
春浅し友の旧居に杭打機
(はるあさしとものきゅうきょにくいうちき)
※随分前に越した友人宅跡だが周囲の土地を合
わせて工事が始まった。杭を打つ必要がある
建物? この近辺では珍しい。
2/26sun
春の海フェリーふわりと波の上
(はるのうみふぇりーふわりとなみのうえ)
※友人を見送って金谷港東京湾フェリーまで出
かけた。天気は良いのだがやや波が高い。心
配のほどではない。でっぷり肥えたフェリー
は無事浮かんで出港した。
2/24fri
春の闇濃かれ三つ星寄り添うて
(はるのやみこかれみつぼしよりそうて)
※昨夕、日の入り後18時30分頃の西の空で、
「新月」と「木星」「金星」とが一列に黄道
上に並ぶ天体ショーを見た。格別レアなこと
ではないが、タイミングと天候がこうもピタ
リと合うことは少ない。写真も撮れたよ。
2/23thu
春の旅ミシン黄色を纏いおり
(はるのたびみしんきいろをまといおり)
旅先の待ちにし膳よ蕗の薹
(たびさきのまちにしぜんよふきのとう)
※旅は思い浮かべるころから出かけるまでが至
福という。明るい黄色はお気に入り、さあ出
かけよう。
2/22wed
猫魔岳街を白くし春むかし
(ねこまだけまちをしろくしはるむかし)
※昔会津若松の点描。2月の午後。通りの遥か
先にあるのは真っ白な残雪をいただく猫魔岳。
これが浮き上がって大きく見える日がある。
市街の根雪は融けて道を洗い、コンクリート
舗装の道はこれも白く見える。家並みは後退。
2/21tue
春一日怠惰の時とのみ記して
(はるひとひたいだのときとのみきして)
ブランコをこいで人待つ青春か
(ぶらんこをこいでひとまつせいしゅんか)
※ろくなニュースはないが、そこは春だからそ
の気になれば春になる。
2/20mon
太陽光パネルが侵す春田かな
(たいようこうぱねるがおかすはるたかな)
蓬髪が床屋帰りで春の風
(ほうはつがとこやがえりではるのかぜ)
2/19sun
街道はうつらうつらの菜の花忌
(かいどうはうつらうつらのなのはなき)
※菜の花忌の頃に古い「街道を行く」のTV番組
を見た。本よりも随分端折ってあるものの、
上手い編集だ。田村高広のナレーションが懐
かしい。
2/18sat
寝もやらずジャガイモ植うる日はうつろ
(ねもやらずじゃがいもううるひはうつろ)
※ちょっと早めのジャガイモの植え付け。肥料
を多めにして、このタイミングの植付けは生
育が良いという話を仕入れてきた。
サボり気味の今年はこれが野良始めだ。ねむ
たい~・・・。
雪形を見たいと思う野良始め
(ゆきがたをみたいとおもうのらはじめ)
2/17fri
梅咲きて痒み嘆きし人いかに
(うめさきてかゆみなげきしひといかに)
※年寄りの冬季の痒みは空気と肌の乾燥が主因
と言われる。彼へのアドバイスは「入浴を一
日おきに、入浴の日は今まで通りちゃんと石
鹸で洗いちゃんと落とすこと。入浴しない日
は一日中石鹸を使わないこと。使わなくとも
すぐ慣れる」というもの。
2/16thu
春の宵億劫という音を上げる
(はるのよいおっくうというねをあげる)
※さて、もう歳かな? 何か動き始めるときに、
初めのひとふんばりを1テンポ待つことが近
頃多くなった。なんのこともないのだけれど、
その時の姿勢でしばしゆっくりするのだ。
2/14tue
家に肌あり初東風の似合う家
(いえにはだありはつこちのにあういえ)
※歳時記は季語とその季語を使った例句を味わ
って、季節感の妙を感じるものだ。しかし季
語の中には違和感どころか時代錯誤と言わざ
るを得ないものも数多い。窮屈でも文句を言
わずにその古い季語に合った対象を見つけよ
ということなのか。
2/12sun
かたや死にかたやはかくも春の声
(かたやしにかたやはかくもはるのこえ)
※久しぶりに聞く彼の声は以前と全然変わらな
い。前回の彼の電話は同期の友の死を伝える
ものだった。昔から二人を対で見がちな私。
2/11sat
生姜酒とめる者なく喜寿の春
(しょうがざけとめるものなくきじゅのはる)
天井のシミ数え切り喜寿の春
(てんじょうのしみかぞえきりきじゅのはる)
※町内会の人から喜寿のお祝いですよね、と言
われて改めて意識した。満77歳の誕生日か
ら2カ月ほど。感慨とてなにもない。
2/10fri
新海苔は産地苦渋の味少し
(しんのりはさんちくじゅうのあじすこし)
※地元木更津、富津の江戸前海苔はここ数年ク
ロダイの養殖場への侵入と食い荒らしなどに
よって被害を被っている。今季は有明海の海
苔の産地も海水温の上昇が海苔生育の大幅減
産につながっているらしい。
2/9thu
春寒やこころに農具並べおり
(はるざむやこころにのうぐならべおり)
※とっくに農具はラインアップ済み。鎌だって
研いである。
2/8wed
壁の上を春日は円くすべりおり
(かべのえをはるびはまるくすべりおり)
※寝室のカーテンの合わせ目から差し込む朝日
が壁の上に7,8センチの円い明るい形を作る。
日の出の時刻が日々早くなるから、見えだす
時刻は一日ごとに少し早くなり、その位置は
左にずれる。秋分の日以降の秋とはちょうど
逆の形だ。
ついでに言えばそこは床の間で春向きの掛け
軸がかけてある。その上を円い光がすべる。
出来過ぎた話。嘘のような本当の話。
2/6mon
童顔は遺影となりて余寒かな
(どうがんはいえいとなりてよざむかな)
寒紅玉切らさずただに好きなれば
(かんこうぎょくきらさずただにすきなれば)
煮大根においはわが身黙しおり
(にだいこんにおいはわがみもくしおり)
2/4sat
立春や師の舌かくも滑らかに
(りっしゅんやしのしたかくもなめらかに)
※絵にもおしゃべりにも盛んなのはすごい。御
年は80歳台後半で絵筆の軽妙なこと、言葉
に切れ目がないこと。
2/3fri
めずらしく朝のご飯寒卵
(めずらしくあさのごはんかんたまご)
豆まきや声の大きさ迷いつつ
(まめまきやこえのおおきさまよいつつ)
※外に向いてまず一声、大き過ぎたかな? 一
瞬のうちに脳裏を掠める。えいッ、構うな、
この大きさで、鬼に入られてしまう。
声の大きさ! 実は単なる羞恥心の減退、認
知症の手前の始まりだったりして・・・。
2/2thu
宵星の西に沈めば冬銀河
(よいぼしのにしにしずめばふゆぎんが)
※日脚が伸びたものの光はまだ弱い。宵の明星
が沈み暗い星空に変わるまで長い時間は要ら
ない。寒風は身を震わせるが、天空の変化の
微妙さは今頃が味わい深い。
2/1wed
着ぶくれて道ゆずりたる好々爺
(きぶくれてみちゆずりたるこうこうや)
客引きも色とりどりに着ぶくれて
(きゃくひきもいろとりどりにきぶくれて)
※1月の寒波はまだ続いている。客の出足はさ
らに細り、夜の街は大変だ。
春浅し友の旧居に杭打機
(はるあさしとものきゅうきょにくいうちき)
※随分前に越した友人宅跡だが周囲の土地を合
わせて工事が始まった。杭を打つ必要がある
建物? この近辺では珍しい。
2/26sun
春の海フェリーふわりと波の上
(はるのうみふぇりーふわりとなみのうえ)
※友人を見送って金谷港東京湾フェリーまで出
かけた。天気は良いのだがやや波が高い。心
配のほどではない。でっぷり肥えたフェリー
は無事浮かんで出港した。
2/24fri
春の闇濃かれ三つ星寄り添うて
(はるのやみこかれみつぼしよりそうて)
※昨夕、日の入り後18時30分頃の西の空で、
「新月」と「木星」「金星」とが一列に黄道
上に並ぶ天体ショーを見た。格別レアなこと
ではないが、タイミングと天候がこうもピタ
リと合うことは少ない。写真も撮れたよ。
2/23thu
春の旅ミシン黄色を纏いおり
(はるのたびみしんきいろをまといおり)
旅先の待ちにし膳よ蕗の薹
(たびさきのまちにしぜんよふきのとう)
※旅は思い浮かべるころから出かけるまでが至
福という。明るい黄色はお気に入り、さあ出
かけよう。
2/22wed
猫魔岳街を白くし春むかし
(ねこまだけまちをしろくしはるむかし)
※昔会津若松の点描。2月の午後。通りの遥か
先にあるのは真っ白な残雪をいただく猫魔岳。
これが浮き上がって大きく見える日がある。
市街の根雪は融けて道を洗い、コンクリート
舗装の道はこれも白く見える。家並みは後退。
2/21tue
春一日怠惰の時とのみ記して
(はるひとひたいだのときとのみきして)
ブランコをこいで人待つ青春か
(ぶらんこをこいでひとまつせいしゅんか)
※ろくなニュースはないが、そこは春だからそ
の気になれば春になる。
2/20mon
太陽光パネルが侵す春田かな
(たいようこうぱねるがおかすはるたかな)
蓬髪が床屋帰りで春の風
(ほうはつがとこやがえりではるのかぜ)
2/19sun
街道はうつらうつらの菜の花忌
(かいどうはうつらうつらのなのはなき)
※菜の花忌の頃に古い「街道を行く」のTV番組
を見た。本よりも随分端折ってあるものの、
上手い編集だ。田村高広のナレーションが懐
かしい。
2/18sat
寝もやらずジャガイモ植うる日はうつろ
(ねもやらずじゃがいもううるひはうつろ)
※ちょっと早めのジャガイモの植え付け。肥料
を多めにして、このタイミングの植付けは生
育が良いという話を仕入れてきた。
サボり気味の今年はこれが野良始めだ。ねむ
たい~・・・。
雪形を見たいと思う野良始め
(ゆきがたをみたいとおもうのらはじめ)
2/17fri
梅咲きて痒み嘆きし人いかに
(うめさきてかゆみなげきしひといかに)
※年寄りの冬季の痒みは空気と肌の乾燥が主因
と言われる。彼へのアドバイスは「入浴を一
日おきに、入浴の日は今まで通りちゃんと石
鹸で洗いちゃんと落とすこと。入浴しない日
は一日中石鹸を使わないこと。使わなくとも
すぐ慣れる」というもの。
2/16thu
春の宵億劫という音を上げる
(はるのよいおっくうというねをあげる)
※さて、もう歳かな? 何か動き始めるときに、
初めのひとふんばりを1テンポ待つことが近
頃多くなった。なんのこともないのだけれど、
その時の姿勢でしばしゆっくりするのだ。
2/14tue
家に肌あり初東風の似合う家
(いえにはだありはつこちのにあういえ)
※歳時記は季語とその季語を使った例句を味わ
って、季節感の妙を感じるものだ。しかし季
語の中には違和感どころか時代錯誤と言わざ
るを得ないものも数多い。窮屈でも文句を言
わずにその古い季語に合った対象を見つけよ
ということなのか。
2/12sun
かたや死にかたやはかくも春の声
(かたやしにかたやはかくもはるのこえ)
※久しぶりに聞く彼の声は以前と全然変わらな
い。前回の彼の電話は同期の友の死を伝える
ものだった。昔から二人を対で見がちな私。
2/11sat
生姜酒とめる者なく喜寿の春
(しょうがざけとめるものなくきじゅのはる)
天井のシミ数え切り喜寿の春
(てんじょうのしみかぞえきりきじゅのはる)
※町内会の人から喜寿のお祝いですよね、と言
われて改めて意識した。満77歳の誕生日か
ら2カ月ほど。感慨とてなにもない。
2/10fri
新海苔は産地苦渋の味少し
(しんのりはさんちくじゅうのあじすこし)
※地元木更津、富津の江戸前海苔はここ数年ク
ロダイの養殖場への侵入と食い荒らしなどに
よって被害を被っている。今季は有明海の海
苔の産地も海水温の上昇が海苔生育の大幅減
産につながっているらしい。
2/9thu
春寒やこころに農具並べおり
(はるざむやこころにのうぐならべおり)
※とっくに農具はラインアップ済み。鎌だって
研いである。
2/8wed
壁の上を春日は円くすべりおり
(かべのえをはるびはまるくすべりおり)
※寝室のカーテンの合わせ目から差し込む朝日
が壁の上に7,8センチの円い明るい形を作る。
日の出の時刻が日々早くなるから、見えだす
時刻は一日ごとに少し早くなり、その位置は
左にずれる。秋分の日以降の秋とはちょうど
逆の形だ。
ついでに言えばそこは床の間で春向きの掛け
軸がかけてある。その上を円い光がすべる。
出来過ぎた話。嘘のような本当の話。
2/6mon
童顔は遺影となりて余寒かな
(どうがんはいえいとなりてよざむかな)
寒紅玉切らさずただに好きなれば
(かんこうぎょくきらさずただにすきなれば)
煮大根においはわが身黙しおり
(にだいこんにおいはわがみもくしおり)
2/4sat
立春や師の舌かくも滑らかに
(りっしゅんやしのしたかくもなめらかに)
※絵にもおしゃべりにも盛んなのはすごい。御
年は80歳台後半で絵筆の軽妙なこと、言葉
に切れ目がないこと。
2/3fri
めずらしく朝のご飯寒卵
(めずらしくあさのごはんかんたまご)
豆まきや声の大きさ迷いつつ
(まめまきやこえのおおきさまよいつつ)
※外に向いてまず一声、大き過ぎたかな? 一
瞬のうちに脳裏を掠める。えいッ、構うな、
この大きさで、鬼に入られてしまう。
声の大きさ! 実は単なる羞恥心の減退、認
知症の手前の始まりだったりして・・・。
2/2thu
宵星の西に沈めば冬銀河
(よいぼしのにしにしずめばふゆぎんが)
※日脚が伸びたものの光はまだ弱い。宵の明星
が沈み暗い星空に変わるまで長い時間は要ら
ない。寒風は身を震わせるが、天空の変化の
微妙さは今頃が味わい深い。
2/1wed
着ぶくれて道ゆずりたる好々爺
(きぶくれてみちゆずりたるこうこうや)
客引きも色とりどりに着ぶくれて
(きゃくひきもいろとりどりにきぶくれて)
※1月の寒波はまだ続いている。客の出足はさ
らに細り、夜の街は大変だ。
ダクタク句集2023年(令和5年)上期 自選集 [自選集2023]
2023年5月分コピー済 未選定
************************************************
5/31wed
友堂々50号の絵梅雨に入る
(ともどうどうごじゅうごうのえつゆにいる)
※友人からの案内で地域絵画グループの美術展
を見に行った。なかなかどうして手管の面々、
圧倒された。うなだれて雨模様の中を帰って
きた。
5/30tue
片陰もなき牛込の柳町
(かたかげもなきうしごめのやなぎちょう))
※先日の東京行続き。
あの日は背中がじりじりと季節外れの真夏日。
好きで歩いているとはいえ、一時間休みなし
というのはやや危険。わかってはいるけど・
・・ほう、ここは東京女子医大のすぐ近くだ。
安心。
白靴で夏目通りよ坂の街
(しろぐつでなつめどおりよさかのまち)
5/29mon
手拭いを職人風に豆の飯
(てぬぐいをしょくにんふうにまめのめし)
薬の日どくだみ抜く手てぬるかり
(くすりのひどくだみぬくててぬるかり)
5/28sun
ランドセル開いたままの子走り梅雨
(らんどせるあいたままのこはしりづゆ)
西瓜苗植うるに場所の狭まりて
(すいかなえううるにばしょのせばまりて)
※家庭菜園でも連作障害を避けるために知恵
を絞る。スイカはウリ科、好みの野菜がワ
ンサとある。4,5年間を空けよとなると
相当に大変。
5/26fri
走り梅雨ブラ翁が間奏曲よ
(はしりづゆぶらおうがかんそうきょくよ)
※日ごとの天気の変化、寒暖の差が激しい。
梅雨も近い。ブラームス親方をブラ翁と称
し、型にはめようとする無理。句を作る者
が味わう快感。
5/25thu
緑陰に人や自在に神楽坂
(りょくいんにひとやじざいにかぐらざか)
※先日の東京行続き。
年に一度のフィエスタが近いとあって、坂
のそこかしこで関係の人がたむろしている。
久しぶりの都会の街と人。
日盛りやただ黙々と坂の道
(ひざかりやただもくもくとさかのみち)
※暑いというのに遠回りして坂の途中から大
久保通りに左折。牛込を経由し市谷を掠めて
北上、目標の一つ、夏目坂に向かう。
ただ歩く、これがいい。東京の普通の道を。
5/24wed
毘沙門天賽銭の音友の息
(びしゃもんてんさいせんのおととものいき)
※先日の東京行続き。
神楽坂を上ると中ほど左手に善国寺がある。
地域では「毘沙門さま」と呼ばれていると
か、山の手七福神の一つ。日傘が集ってい
る。神楽坂は日影が多く、酷暑?の中、こ
こまでは出足快調だ。
5/23tue
電車今夏の帽子を膝に置く
(でんしゃいまなつのぼうしをひざにおく)
※先日の東京行。電車に乗るのさえ多少興奮し
ている? それほど久しぶりの出来事。
駅頭は久闊よりも暑さかな
(えきとうはきゅうかつよりもあつさかな)
5/22mon
麦秋はこの地ここだけ夫婦いる
(ばくしゅうはこのちここだけふうふいる)
莢豌豆手疲るほどの地の恵み
(さやえんどうてつかるほどのちのめぐみ)
※都会をゆっくり味わい、疲れるほどに歩いた
が、住まいへの帰巣本能が以前より強い。
歳のせいもあり、またコロナ禍で寸断された
都会への思いのせいもあろう。
5/21sun
AIの変革にいるか夏木立
(え-あいのへんかくにいるかなつこだち)
※ほんのしばらくの間で世界中の話題になって
いる生成AI。良いにつけ悪いにつけ影響を
まともに被る世代ではない。したがって急速
な大変革とはいえ、その動きを劇場で味わっ
ている気分だ。今や出し物としては戦争を凌
ぐかも。
5/19fri
Тシャツの長き横文字夏来たる
(てーしゃつのながきよこもじなつきたる)
雨上がる緑の重さ薄暑かな
(あめあがるみどりのおもさはくしょかな)
5/17wed
薫風や三年見ぬ間の濠の駅
(くんぷうやみとせみぬまのほりのえき)
※気の合った仲間との、三年ぶりの歩き会は真
夏日の昼下がりの神楽坂に集合した。暑い。
想定外の「決死行」となった。
5/16tue
風薫る休場明け後の二連勝
(かぜかおるやすみあけごのにれんしょう)
※横綱の両膝のサポーター、単なるテーピング
ではなくてなにやら角ばったガード材がそこ
を覆っている。きょうも明日も横綱を応援し
ている。結果勝ちであればいい。
5/15mon
夏来たる無愛想なる街もよし
(なつきたるぶあいそうなるまちもよし)
※テレビも他のメディアも、また街に出れば商
店も通りも、東京も地方も「ターゲットは若
者」とりわけ「Z世代」とか。
これイコール落ち着かない世の中だ。
こびちゃいけない。
5/14sun
青嵐打ち捨てられし苗の青
(あおあらしうちすてられしなえのあお)
※当地の田植えは大半が四月中に終わっている
が、何の品種かもち米か?半月も遅れて田植
えをした。使いようがない、残った苗の山。
5/13sat
山法師の白は濁手爺の家
(やまぼうしのしろはにごしでじじのいえ)
※ヤマボウシの花が咲き始めている。いつも通
る家のそれはもう半ばを越えている。しかも
その白色は実に深い色をしている。家ごとに
木ごとに白が違う気がする。
5/12fri
聖五月戴冠式に仔細あり
(せいごがつたいかんしきにしさいあり)
サツマイモ植えず三日の雨続き
(さつまいもうえずみっかのあめつづき)
5/11thu
芍薬は画材見事な見得を切り
(しゃくやくはがざいみごとなみえをきり)
※今朝4時過ぎ当地を震度5強の強い揺れが襲
った。人生で初めての5強を体験、その最中
これが更に強くなったら・・・首都直下地震
ではないか?の強い恐怖に捕らわれた。
見舞いのメールなどを受信し、一息ついたの
は約一時間後。
5/9tue
細き棒ギブスの中を夏に入る
(ほそきぼうぎぶすのなかをなつにいる)
※知人が自分の庭で転倒し踝を骨折した。齢を
重ねての骨折は時に大変なのだが、時間はか
かるが完治できる見通しだ。ギブスに合った
木の棒をプレゼントした。大いに感謝された。
5/8mon
春惜しみ上野の山をただ抜ける
(はるおしみうえののやまをただぬける)
角曲がる都電見下ろし暮れかぬる
(かどまがるとでんみおろしくれかぬる)
※晩春という言葉にある郷愁を感じるのだが、
自分の体験と小津安二郎の映画の記憶とが混
然となって境目が妖しくなってことにも原因
がある。不甲斐ない自分の記憶力にがっかり
はするものの、悪い気分ではない。
春をじっくり惜しむほど情緒のある人間では
ない。なぜか浮かんでくるのは、言問通りか
らがら芸大の裏手に上がって、ただ御徒町方
面に上野の山を突っ切ってくる。もう一つは
王子駅付近で都電が直角に曲がるあたり、近
くには飛鳥山がありこの辺もサクラがあった。
広い道路をまたぐ横断歩道の上から飽かずに
眺めている。どちらも夕暮れ近く。
草の山と鎌を眺めつ春惜しむ
(くさのやまとかまをながめつはるおしむ)
5/6sat
芋植うる今日は二畝ばかりなり
(いもううるきょうはふたうねばかりなり)
磯茶屋の大椀どっと浅蜊汁
(いそじゃやのおおわんどっとあさりじる)
5/5fri
チェーホフは春の日そして春の夕
(ちぇーほふははるのひそしてはるのゆう)
※午前中はゆっくり読書と新聞、午後は晴れの
強風の中畑に駆り出される。行く春を惜しむ、
どころか黄砂混じりの風の中、サツマイモを
植える準備をする。今年はちゃんと黒マルチ
を張って50本植える予定。ちゃんとやるに
はやはり私の出番。
5/4thu
住職を庭師とまがふ日永かな
(じゅうしょくをにわしとまがうひながかな)
団地の子女子が率いて日永かな
(だんちのこじょしがひきいてひながかな)
5/3wed
峠越え八十八夜の歯科通い
(とうげこえはちじゅうはちやのしかがよい)
※家内が歯茎の治療に難渋し、腕の良い口腔
歯科を求めて隣市の医院を紹介してもらっ
た。国道沿いで行くと遠くなり、山越えの
ショートカットを選んで連れて行く。
それにしても遠い。午後の予約で行くと午
後一杯取られてしまう。
5/2tue
忌野忌木の間隠れの清志郎
(いまわのきこのまがくれのきよしろう)
※快晴。木漏れ日を浴びながら草むしり。新たに
入手したイヤホーンで清志郎を聴く。
フーン・・・いいなあ。いいのは清志郎であっ
て、値段の割にイヤホーンはだめ。それとも、
スマホ越しの音ってこんなものか?
5/1mon
句日記や苦あり楽あり柿若葉
(くにっきやくありらくありかきわかば)
※誰にも見てもらっていないという前提なれど
も、出来ればコンスタントに自分が満足する
句を作りたいと思う。
そのための強制力の一つがこのブログだ。始
めた以上自分で恥ずかしい句は見せられぬ、
決めて開店休業とはいかぬ、と。
************************************************
4/30sun
荷風忌や言葉あふれて街ゆれて
(かふうきやことばあふれてまちゆれて)
※インバウンドの回復のニュースで浅草雷門周
辺の雑踏が伝えられる。あそこにはすぐ横に
交番があって、我慢強い優しい警察官が絶え
ず笑顔で外国人に応対している。日本の若者
の言葉らしき洪水もある。荷風卒倒。
4/29sat
春爛漫バラは匂いて吾無臭
(はるらんまんばらはにおいてわれむしゅう)
※その昔顔は脂ぎって口の中、パンツの中、靴
の中は蒸れて異臭があった。普段においてそ
うだった。ところが今や匂いはないと人に言
われる。優秀な女歯科医に出会ってからは少
しのプラークもチェックされる。この10年
超、自分の歯の数に異動はない。口臭もない。
生きている証拠も急速に減っているというこ
とか。
4/27thu
動画見てブドウの芽かきためらわず
(どうがみてぶどうのめかきためらわず)
※動画投稿サイトもユーチューブ以外に様々あ
るらしいが、DIY・修理・家事・野菜果実栽
培・ガーデニングなどなど課題に広く応えて
くれるのはユーチューブだろう。本件のテー
マも関係のサイトが見きれないほどある。
4/26wed
しなやかな八十路の筆よ豆の花
(しなやかなやそじのふでよまめのはな)
※どこが痛い、ここが痛い、もう歳だからダメ、
とかいいながら筆を持たせると、対象をきり
っと見つめ、力強く筆を滑らせる。絵画教室
の師はまだ当分大丈夫だ。
4/25tue
新人の帽子は二つかげろへる
(しんじんのぼうしはふたつかげろえる)
※中学校野球部でも新人は二人だけ? うち一
人はつい先月までの小学生を思わせるチビ。
今部活は曲がり角、顧問の教師の激務防止と
やらで学校外から人材を呼んで運営や指導を
委ねるという。さて・・・。そもそも学年二
人ではチームがそのうち成立しなくなる。
これは少子化対策か?
4/24mon
喜寿の春尾崎今なら同じ岸
(きじゅのはるおざきいまならおなじきし)
※尾崎豊の歌特集でたっぷりと聴いた。しみじ
みと繰り返し。
4/22sat
春の蚊や血を吸う知恵はなかりけり
(はるのかやちをすうちえはなかりけり)
4/21fri
葱坊主貯めし雑草抜きにけり
(ねぎぼうずためしざっそうぬきにけり)
学年の違う子らいる葱坊主
(がくねんのちがうこらいるねぎぼうず)
※コロナ禍の制限された暮らしは畑仕事を増や
したとか。周辺でもそれまでの庭を大胆に畑
にした家が何軒か見受けられる。やせた葱坊
主がクレイムを言いたがって・・・。
4/20thu
涅槃図や絵解きの僧の若返り
(ねはんずやえときのそうのわかがえり)
※ペンライトを使うところは変わりないが、声
が変わった、若い透き通るいい声だ。わかり
やすい。だが、こちとら内容を理解したいと
聴いているわけではない。嗄れ声のいつもの
声の方が落ち着くしありがたい。死んだわけ
じゃないだろう。
4/18tue
捻挫して常より見入るすみれ草
(ねんざしてつねよりみいるすみれそう)
※家内が犬を曳いていて踏み外し、捻挫した。
初め大層痛がったが、時間を置かず整形外科
で診てもらい患部を固定した。これが奏功し
軽くて済んだみたい。ほぼ全快。
4/17mon
大風のやみて間もなく浮かれ猫
(おおかぜのやみてまもなくうかれねこ)
※時々吹きまくる大風が長いこと続いた。建物
が揺れ撓るほどで睡眠には大敵。ようやく静
かになったと思ったら、・・・猫の恋の始ま
り? 早くないか? 温暖化?
4/16sun
外来の受付すれば青柳
(がいらいのうけつけすればあおやなぎ)
4/14fri
角とれてと言われ久しく蕨餅
(かどとれてといわれひさしくわらびもち)
4/13thu
屋根の鞠今も探して啄木忌
(やねのまりいまもさがしてたくぼくき)
※ふとしたことで昔のことを思い出し、その前
後のことまで妙に生々しく覚えていた、なん
てことがある。啄木の故郷を思っての一首、
「その昔小学校の柾屋根に
我が投げし鞠いかにかなりけむ」
4/12wed
どの家も表札のごとハナズオウ
(どのいえもひょうさつのごとはなずおう)
春愁や宅配人のほころべり
(しゅんしゅうやたくはいにんのほころべり)
4/11tue
描きし絵の穏やかなれど徂春かな
(かきしえのおだやかなれどそしゅんかな)
※絵画教室の会でOBの来訪があり、腕前の進
歩と積極的な出展、入賞のことなど、大いに
アオラレタ。なにこの歳になって、画家にな
りたいわけじゃなし・・・とお決まりの言い
訳はするものの、もう少し上手になってもと
素直に願う気持ちや切なるものがある。
4/10mon
田植え機のギヤなめらかに父となる
(たうえきのぎやなめらかにちちとなる)
※農業後継者の彼はまだ新米のうち。先日父親
になったらしい。田植えは早くて1週間後、
腕が鳴って仕方がないというところか?
4/9sun
山笑ふバイクは遅し郵便夫
(やまわらうばいくはおそしゆうびんふ)
春巻を揚げて届けに手の温み
(はるまきをあげてとどけにてのぬくみ)
※もらった筍の一部を春巻にし届ける。スマホ
で時刻を確認し揚げたてを。
4/8sat
春爛漫愛想尽かしの果樹あれど
(はるらんまんあいそづかしのかじゅあれど)
※一番遅いぶどうの木が芽吹き始めた。梅、桃、
プラム、柿に続いてである。狭い土地に果樹
を縦列に欲張って植えているせいか、昨年は
殆どの木の収穫が落ち込んだ。対虫害では努
力するもいずれも効なく終始した。ああ、と
嘆息すること、今に引きずっている。
4/7fri
旅ごころ蠢き長く放哉忌
(たびごころうごめきながくほうさいき)
※お金もないが、飼い犬がホテル・病院に預け
にくい事情があるため、旅行は控えることが
多い。コロナ禍で余計固まった感じ。
4/5wed
学校のサクラを望み湯屋はあり
(がっこうのさくらをのぞみゆやはあり)
※御多聞にもれず、サクラと言えば城に学校で
ある。小学校の桜並木を思い出していたら、
ふと何のつながりもなしに近くに建っていた
温泉会館なるものが頭に浮かんできた。これ
も小学校も少し離れて故郷の川沿いにあった。
温泉などではなく「沸かし」だったろう。
70年ほど前のこと、あのころは農閑期の人
々など家族連れが客だった。何年かで閉鎖し
た。二階建ての、それらしくないモルタル塗
りの白い建物だった。
4/4tue
龍一の音々さやか風光る
(りゅういちのおとおとさやかかぜひかる)
※坂本龍一死去
4/3mon
毎日が今良しと推す山笑ふ
(まいにちがいまよしとおすやまわらう)
※サクラの終盤になると背景の山々の若葉が輝
き始める。昨日は今が一番いい時季だと思っ
たが、今朝になると今日の方がもっと良くな
ったと。
4/2sun
花びらはいつにも増して連翹忌
(はなびらはいつにもましてれんぎょうき)
記念館は雪深くあり光太郎忌
(きねんかんはゆきぶかくありこうたろうき)
※真冬に訪れた、高村光太路郎記念館は当時の
厳しさそのままに花巻郊外にあった。藁ぶき
の小さな一軒家、村はずれで隣家はない。
大雪の中に見た、強烈な印象は今も鮮明であ
る。光太郎忌はサクラ咲く、うららかな季節
だが、思い出は常に雪に埋もれた、あの光景
だ。したがって句は季重なりとなる。なに、
構うものか。
4/1sat
桜散り桜餅食い四月馬鹿
(さくらちりさくらもちくいしがつばか)
※今日は文句ない晴れ日。なんと言われようと
午前中は桜吹雪を見に、午後は甲子園の決勝
観戦だ。雑草が庭で背伸びして笑っている。
************************************************
3/31fri
酒倉は人呼ぶカフェに鳥曇り
(さかぐらはひとよぶかふぇにとりぐもり)
※街がやさしく変貌すると言えば耳障りは良い
が、街のいたるところでインバウンド向け、
フリー客向けに変身するのはどうにもいただ
けない。落ち着かない。
通りの両側に高いオフィスビルやマンション
が、目の高さにはいらっしゃいませの声。
うんざりだ。
3/30thu
春たけなわ入道雲のようなもの
(はるたけなわにゅうどうぐものようなもの)
※兄妹からなかなか良い電話が入った。積乱雲
のような形がにょきにょきと立ちかけている。
ちょいと歩くと汗がにじむような午後。
3/28tue
パスで行く博物館は花の道
(ぱすでいくはくぶつかんははなのみち)
※その昔上野の国立博物館年間パスを持ってい
た。驚くほど安かった。夏は勤務の後でも入
れる閉館時間だったように思う。ちょいぶら
っと見て御徒町まで歩く、それが良かった。
3/27mon
人ゆらり高き足場に花の風
(ひとゆらりたかきあしばにはなのかぜ)
桜湯はサービスとありカフェの午後
(さくらゆはさーびすとありかふぇのごご)
※雨がちな日が続き、当地のサクラはけなげに
も少しも散らずにピークを迎えている。
尊氏の本心はどこ藪椿
(たかうじのほんしんはどこやぶつばき)
3/26sun
目も耳も親譲りなり喜寿の春
(めもみみもおやゆずりなりきじゅのはる)
※見た目は別としても、目も耳も鼻も歯や咽喉
も、役割の面で今でも至極堅調である。親に
感謝している。
春場所は気付けば楽日花の冷え
(はるばしょはきづけばらくびはなのひえ)
3/25sat
待て待てと言葉緩めて春の雷
(まてまてとことばゆるめてはるのらい)
※もう言葉を荒げる年齢でもない、とは思うも
のの・・・。
汚すのも洗うのも雨土筆かな
(よごすのもあらうのもあめつくしかな)
3/24fri
たんぽぽの絮飛ばすとき命燃え
(たんぽぽのじょとばすときいのちもえ)
窓開けて歯科に客待つサクラかな
(まどあけてしかにきゃくまつさくらかな)
声も歌もサクラに吸われデイの庭
(こえもうたもさくらにすわれでいのにわ)
3/23thu
夕まぐれ野蒜の花が主演なり
(ゆうまぐれのびるのはながしゅえんなり)
※3月は映画の賞の月。我が家の主演賞は断然
花ニラ。地味で小さな花が夕方薄暗くなると
庭中に冴えてくる。
3/21tue
木瓜の垣見知る主人の赭ら顔
(ぼけのかきみしるしゅじんのあからがお)
※何年か越しの賜だろう、木瓜が棚いっぱいに
咲き誇っている。比較的地味な花だから、そ
の主人ともどもドヤ顔はしない。
3/19sun
春場所や贔屓力士の眉伸びて
(はるばしょやひいきりきしのまゆのびて)
※WBCに選抜高校野球も始まり球春真っ盛り。
相撲もと行きたいけれど休場相次ぎ、こちら
は戦国下剋上・・・。
3/17fri
藪椿手折って土の瓶思い
(やぶつばきたおってつちのびんおもい)
※椿らしくない、珍しいと思って、素焼きの花
瓶にさし、スケッチ始めたまでは良かったが、
上手に描けたと思った椿の絵がどうも椿に見
えない。仲間も「これ椿か?」と不評。こち
らは不満。・・・それもそのはず元々が椿ら
しくないのだから。
3/16thu
もぐら塚生命力の霞みおり
(もぐらづかせいめいりょくのかすみおり)
※国立科学博物館のもぐら研究の先生が話して
いた。仕事の半分以上が動物の骨の標本作り
であると。しかも標本作成には「3無」の特
徴がある由。「無計画」「無目的」「無制限」
にやるのだそうな。標本を多種、大量に持つ
ことが将来の研究のなによりの基盤だ、その
ためであると。なるほどとびっくり。
今日も動物園から送られてきた動物の死骸、
奄美で交通事故死したアマミノクロウサギの
死骸に向き合う。
3/15wed
春時雨香り充溢今朝のパン
(はるしぐれかおりじゅういつけさのぱん)
※薄暗い朝も許せる。
3/14tue
駅前の円墳にあり白木蓮
(えきまえのえんぷんにありしろもくれん
※すれ違う白マスクの数はそんなに減っていな
い。近くの駅では白が急増とか。
3/13mon
新設の波止は揺らいで眼張釣り
(しんせつのはとはゆらいでめばるつり)
※次第に風が強くなる。午後は雨も。新しい波
止は強風で揺れるのではないか、余計なお世
話。
3/12sun
春霞五重塔の圓遊の
(はるがすみごじゅうのとうのえんゆうの)
※圓遊の新作落語「五重塔から のっそり」を
聴いた。良かった。露伴「五重塔」のスジに
沿って、その空気を面白く上手に伝える。
サクラ前でもいいから谷中を歩きたいものだ。
3/11sat
皺の手や三月十日の句が多く
(しわのてやさんがつとおかのくがおおく)
※三月十日は東京大空襲で季語
今日三月十一日は東日本大震災、これも季語
うららかや都電の車庫に音ありて
(うららかやとでんのしゃこにおとありて)
3/10fri
春の夕ジムの灯りのみこうこう
(はるのゆうじむのあかりのみこうこう)
呼吸器の音と点滅春の闇
(こきゅうきのおととてんめつはるのやみ)
※アカデミー賞の発表が間近いからというので
もないが、過去の受賞作「ミリオンダラー・
ベイビー」を見た。以前にも見たが、今回も
感動した。クリント・イーストウッドにモー
ガン・フリーマンが揃い、ヒラリー・スワン
クときたら、2005賞総なめもわかる。
3/9thu
青海苔やこんなのという男あり
(あおのりやこんなのというおとこあり)
※今シーズンは地元木更津周辺の海苔も有明海
の海苔もそれぞれ違った原因で不漁となって
いるらしい。江戸前のつやつやした黒い海苔
がふんだんに・・・もうそんなことはないの
か? 青海苔は独特の風味があってファンも
多いのだが、不漁続きでは吐き捨てるように
しか言わない。
3/7tue
古竹を切りて三月垣直す
(ふるたけをきりてさんがつかきなおす)
※四月下旬並みの暖かさという今日まで延ばし
ていた作業をする。庭はクロッカス、ムスカ
リ、花ニラの順で賑やかになりそう。
3/6mon
今読まずはもう読まざるの春の雨
(いまよまずはもうよまざるのはるのあめ)
※楽しみにして用意した本なのに出足で躓くこ
とがある。年齢のせいもある。またそのうち
に出直しをと言っても、今回が事実上の最後
だろうと自分を脅迫し追い詰めてみる。
それでもだめ・・・。
3/5sun
春眠やふとんの重さ知りてなお
(しゅんみんやふとんのおもさしりてなお)
※うとうと目を覚ましたが、目はまだ開かない。
冬中使ってきた布団がやけに重く感じる。む
にゅむにゅ・・・暖かいけど、むにゅむにゅ
・・・。やってはいけない自句実況でした。
3/3fri
雪柳最初の白い二三点
(ゆきやなぎさいしょのしろいにさんてん)
雛の日や女房マージャン公民館
(ひなのひやにょうぼまーじゃんこうみんかん)
※どうやら偕老同穴となる雲行きの桃の節句で
はある。最近は女房元気で留守がいいという
常套句もどきが良く似合う。
3/2thu
今朝一はスカルラッティ春一番
(けさいちはすかるらってぃはるいちばん)
春一番ラインで老けを確認し
(はるいちばんらいんでふけをかくにんし)
※ラインで都心歩きの会再開の日を3人で相談
する。便利なものだ、しかも無料とはね。
3/1wed
蘖や鑿研ぐ日々を思いたり
(ひこばえやのみとぐひびをおもいたり)
※暖かすぎる日中、友人との再会兼街歩きも良
かろうと思う。ラインで見る顔もそうは老け
ていないようだし。
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2/28tue
春浅し友の旧居に杭打機
(はるあさしとものきゅうきょにくいうちき)
※随分前に越した友人宅跡だが周囲の土地を合
わせて工事が始まった。杭を打つ必要がある
建物? この近辺では珍しい。
2/26sun
春の海フェリーふわりと波の上
(はるのうみふぇりーふわりとなみのうえ)
※友人を見送って金谷港東京湾フェリーまで出
かけた。天気は良いのだがやや波が高い。心
配のほどではない。でっぷり肥えたフェリー
は無事浮かんで出港した。
2/24fri
春の闇濃かれ三つ星寄り添うて
(はるのやみこかれみつぼしよりそうて)
※昨夕、日の入り後18時30分頃の西の空で、
「新月」と「木星」「金星」とが一列に黄道
上に並ぶ天体ショーを見た。格別レアなこと
ではないが、タイミングと天候がこうもピタ
リと合うことは少ない。写真も撮れたよ。
2/23thu
春の旅ミシン黄色を纏いおり
(はるのたびみしんきいろをまといおり)
旅先の待ちにし膳よ蕗の薹
(たびさきのまちにしぜんよふきのとう)
※旅は思い浮かべるころから出かけるまでが至
福という。明るい黄色はお気に入り、さあ出
かけよう。
2/22wed
猫魔岳街を白くし春むかし
(ねこまだけまちをしろくしはるむかし)
※昔会津若松の点描。2月の午後。通りの遥か
先にあるのは真っ白な残雪をいただく猫魔岳。
これが浮き上がって大きく見える日がある。
市街の根雪は融けて道を洗い、コンクリート
舗装の道はこれも白く見える。家並みは後退。
2/21tue
春一日怠惰の時とのみ記して
(はるひとひたいだのときとのみきして)
ブランコをこいで人待つ青春か
(ぶらんこをこいでひとまつせいしゅんか)
※ろくなニュースはないが、そこは春だからそ
の気になれば春になる。
2/20mon
太陽光パネルが侵す春田かな
(たいようこうぱねるがおかすはるたかな)
蓬髪が床屋帰りで春の風
(ほうはつがとこやがえりではるのかぜ)
2/19sun
街道はうつらうつらの菜の花忌
(かいどうはうつらうつらのなのはなき)
※菜の花忌の頃に古い「街道を行く」のTV番組
を見た。本よりも随分端折ってあるものの、
上手い編集だ。田村高広のナレーションが懐
かしい。
2/18sat
寝もやらずジャガイモ植うる日はうつろ
(ねもやらずじゃがいもううるひはうつろ)
※ちょっと早めのジャガイモの植え付け。肥料
を多めにして、このタイミングの植付けは生
育が良いという話を仕入れてきた。
サボり気味の今年はこれが野良始めだ。ねむ
たい~・・・。
雪形を見たいと思う野良始め
(ゆきがたをみたいとおもうのらはじめ)
2/17fri
梅咲きて痒み嘆きし人いかに
(うめさきてかゆみなげきしひといかに)
※年寄りの冬季の痒みは空気と肌の乾燥が主因
と言われる。彼へのアドバイスは「入浴を一
日おきに、入浴の日は今まで通りちゃんと石
鹸で洗いちゃんと落とすこと。入浴しない日
は一日中石鹸を使わないこと。使わなくとも
すぐ慣れる」というもの。
2/16thu
春の宵億劫という音を上げる
(はるのよいおっくうというねをあげる)
※さて、もう歳かな? 何か動き始めるときに、
初めのひとふんばりを1テンポ待つことが近
頃多くなった。なんのこともないのだけれど、
その時の姿勢でしばしゆっくりするのだ。
2/14tue
家に肌あり初東風の似合う家
(いえにはだありはつこちのにあういえ)
※歳時記は季語とその季語を使った例句を味わ
って、季節感の妙を感じるものだ。しかし季
語の中には違和感どころか時代錯誤と言わざ
るを得ないものも数多い。窮屈でも文句を言
わずにその古い季語に合った対象を見つけよ
ということなのか。
2/12sun
かたや死にかたやはかくも春の声
(かたやしにかたやはかくもはるのこえ)
※久しぶりに聞く彼の声は以前と全然変わらな
い。前回の彼の電話は同期の友の死を伝える
ものだった。昔から二人を対で見がちな私。
2/11sat
生姜酒とめる者なく喜寿の春
(しょうがざけとめるものなくきじゅのはる)
天井のシミ数え切り喜寿の春
(てんじょうのしみかぞえきりきじゅのはる)
※町内会の人から喜寿のお祝いですよね、と言
われて改めて意識した。満77歳の誕生日か
ら2カ月ほど。感慨とてなにもない。
2/10fri
新海苔は産地苦渋の味少し
(しんのりはさんちくじゅうのあじすこし)
※地元木更津、富津の江戸前海苔はここ数年ク
ロダイの養殖場への侵入と食い荒らしなどに
よって被害を被っている。今季は有明海の海
苔の産地も海水温の上昇が海苔生育の大幅減
産につながっているらしい。
2/9thu
春寒やこころに農具並べおり
(はるざむやこころにのうぐならべおり)
※とっくに農具はラインアップ済み。鎌だって
研いである。
2/8wed
壁の上を春日は円くすべりおり
(かべのえをはるびはまるくすべりおり)
※寝室のカーテンの合わせ目から差し込む朝日
が壁の上に7,8センチの円い明るい形を作る。
日の出の時刻が日々早くなるから、見えだす
時刻は一日ごとに少し早くなり、その位置は
左にずれる。秋分の日以降の秋とはちょうど
逆の形だ。
ついでに言えばそこは床の間で春向きの掛け
軸がかけてある。その上を円い光がすべる。
出来過ぎた話。嘘のような本当の話。
2/6mon
童顔は遺影となりて余寒かな
(どうがんはいえいとなりてよざむかな)
寒紅玉切らさずただに好きなれば
(かんこうぎょくきらさずただにすきなれば)
煮大根においはわが身黙しおり
(にだいこんにおいはわがみもくしおり)
2/4sat
立春や師の舌かくも滑らかに
(りっしゅんやしのしたかくもなめらかに)
※絵にもおしゃべりにも盛んなのはすごい。御
年は80歳台後半で絵筆の軽妙なこと、言葉
に切れ目がないこと。
2/3fri
めずらしく朝のご飯寒卵
(めずらしくあさのごはんかんたまご)
豆まきや声の大きさ迷いつつ
(まめまきやこえのおおきさまよいつつ)
※外に向いてまず一声、大き過ぎたかな? 一
瞬のうちに脳裏を掠める。えいッ、構うな、
この大きさで、鬼に入られてしまう。
声の大きさ! 実は単なる羞恥心の減退、認
知症の手前の始まりだったりして・・・。
2/2thu
宵星の西に沈めば冬銀河
(よいぼしのにしにしずめばふゆぎんが)
※日脚が伸びたものの光はまだ弱い。宵の明星
が沈み暗い星空に変わるまで長い時間は要ら
ない。寒風は身を震わせるが、天空の変化の
微妙さは今頃が味わい深い。
2/1wed
着ぶくれて道ゆずりたる好々爺
(きぶくれてみちゆずりたるこうこうや)
客引きも色とりどりに着ぶくれて
(きゃくひきもいろとりどりにきぶくれて)
※1月の寒波はまだ続いている。客の出足はさ
らに細り、夜の街は大変だ。
************************************************
1/31tue
養蜂をやってみたいと春隣り
(ようほうをやってみたいとはるどなり)
※65歳を前にした人がいる。第2の人生の新入
生間近。彼は希望に燃えている。ああした頃
が俺にもあったのだ。
スカーフに冬薔薇置いて画材とす
(すかーふにふゆばらおいてがざいとす)
1/30mon
昼下がり湯たんぽ抱いて名画かな
(ひるさがりゆたんぽだいてめいがかな)
※テレビで一生懸命映画を見ている。殆どが自
宅で録画しておいたものだ。エアコンをとめ
て湯たんぽを抱きかかえる、眠たくならない。
1/29sun
大寒やなんのなんのと言いにけり
(だいかんやなんのなんのといいにけり)
ケッフェルの番号が出ず冬木立
(けっふぇるのばんごうがでずふゆこだち)
※1/25はモーツァルトの誕生日のようである。
ゆうに600以上ある作品を網羅して正確に番
号をつけるのは至難の業といわれるが、なか
でも一番信頼されるのはケッフェルのつけた
作品番号だ。YoutubeなどではKの次に番号を
つけて検索しただけで、世界中でアップされ
た演奏が並ぶ。
そんな超便利な番号が今次々と記憶から抜け
落ちているようだ。がっくりする。少しずつ
か?わからない。今朝も試しにk516で検索
する。馴染みの演奏が並ぶ。胸を撫で下ろす。
1/27fri
蕪三つ葉っぱも自慢熨斗はなし
(かぶみっつはっぱもじまんのしはなし)
金ないか着物はないか冬の声
(きんないかきものはないかふゆのこえ)
1/26thu
大寒波北国生まれの身なれば
(だいかんぱきたぐにうまれのみなれば)
冬鷗群れてぞ川を遡る
(ふゆかもめむれてぞかわをさかのぼる)
※当地はマイナス5度まで気温が下がった。と
は言え、特に変わったことはなにもなかった。
外で飼っている犬の水が氷ってしまったこと
ぐらい。頬がピリピリを越えて、ビリビリと
痛痒いような感覚には遠かった。
犬はもちろん、周囲も穏やかなようだ。
1/25wed
初天神いかず子供らうるさふて
(はつてんじんいかずこどもらうるそうて)
※子供の騒音「あれ買ってくれこれ買ってくれ」
小三治の曾孫が騒ぐ初天神
(こさんじのひまごがさわぐはつてんじん)
※初天神で露店が並ぶ通りに人があふれている。
こんな光景は暫く落語の中だけだろう。故小
三治の「初天神」は絶品だった。
滑舌の稽古は落語初天神
(かつぜつのけいこはらくごはつてんじん)
1/24tue
大寒や譲る畑の草むしる
(だいかんやゆずるはたけのくさむしる)
※家庭菜園を引退するシニアが寒中に草むしり
をしている。じゃがいもの植え付けに始まる
春野菜の作業開始に次の人が間に合うように
との心配りだ。さすがと思う。
しぐるるや明日明後日は寒気来る
(しぐるるやあすあさってはかんきくる)
1/21sat
電気代一段と大寒しばし
(でんきだいいちだんとだいかんしばし)
寒釣りや台半畳の座禅かな
(かんずりやだいはんじょうのざぜんかな)
※電気代が高騰した。次の3割近くの値上げ申
請は円滑に行っても実施は夏前後だろうから、
今のうちに音を上げていてはどうしようもな
いのだが・・・。
寒中に釣りに興ずる人々の境地にはいつまで
たっても近づけない。
1/20fri
四十雀庭に長く居蕪村の忌
(しじゅうからにわにながくいぶそんのき)
※冬型の気圧配置で関東地方は晴れ上がる。雨
模様のすぐ後だけに、庭や畑に出ていざ労働
というわけにはいかない。どこかに正月暮ら
しの残滓が残っているようだ。
枯れ菊の山となりて焼く人なし
(かれぎくのやまとなりてやくひとなし)
1/19thu
坐して描く水墨の線寒の雨
(ざしてかくすいぼくのせんかんのあめ)
1/18wed
マスク越し目が笑いおり初稽古
(ますくごしめがわらいおりはつげいこ)
※水彩画の絵画教室、初会合。恒例でバラを描
いた。
1/16mon
雨音に冬枯れ思い眠りけり
(あまおとにふゆがれおもいねむりけり)
※睡眠にかけての不器用さでは人後に落ちない。
いったん思い詰めて固まると、ちょっとのこ
とではほぐれない。眠れなくとも何の痛痒も
ない身の上だが、・・・犬がいた。朝少しで
も遅くなると叱られる。
1/15sun
初風呂や西日の残るうちに入る
(はつぶろやにしびののこるうちにいる)
※新年早々浴室が薄暗い。外の明かりが残るう
ちに入れば、これはなんと風雅なことか。
いまだに電球を取り換えていない。
1/14sat
初茜山の端木々のこまごまと
(はつあかねやまのはきぎのこまごまと)
侘びの戸に年賀の客の爪の色
(わびのとにねんがのきゃくのつめのいろ)
笑い初め光と電波越しなれど
(わらいぞめひかりとでんぱごしなれど)
※新年も二週間、早いものだ。今日は個人的な
お祝い事があったが、生憎の雨模様。夫婦し
てトンカツを食べてきた。ついでに正月絡み
の句の整理をした。ほどほどのものは今日一
斉に掲句して決まりをつけよう。
1/13fri
母親の角巻借りてポストまで
(ははおやのかくまきかりてぽすとまで)
※北海道や雪国の部屋の中、ことにリビングな
どは温かい。それでちょっとの外出の時など、
簡単な防寒着に、角巻にくるまって出かける。
しかしとうに廃れたことだろう。
1/11wed
若のつく郷土力士や寒の入り
(わかのつくきょうどりきしやかんのいり)
※この一年着実に実力をつけている若元春、若
隆景の兄弟力士は福島県出身。先行している
のは弟若隆景で関脇で大関を狙っている。兄
若元春もこの初場所で初の三役入り。ともに、
地力としぶとさが信条の玄人好みの力士だ。
1/10tue
狐火は都会の闇にこそという
(きつねびはとかいのやみにこそという)
※静謐というのか薄気味悪いと表現すればいい
のか。コロナ禍のもたらした一種人工的な静
けさは都会において夥しいという。
そうかも知れない。人工的な喧騒のすぐ隣に
現れたのだから。
1/9mon
襟巻し杖つき手にはお裾分け
(えりまきしつえつきてにはおすそわけ)
※日中は温かい一日。団地の普段の夕景が戻っ
てきたと言いたいところだが、通行のクルマ
も人も少なくナリを潜めているようだ。これ
がコロナ以降の普段。まるで正月のようと言
った方が近いかな?
1/8sun
新年に独り住まいの愁い聞く
(しんねんにひとりずまいのうれいきく)
※健康であれば独居の寂しさも気楽さに紛れる
のでは? と思うのは外野の勝手な観測らし
い。あれやこれや想定外の問題、煩わしさが
襲って来るという。
淡雪や停戦告げりうすき唇
(あわゆきやていせんつげりうすきくち)
1/6fri
弾初めはYouTubeなり弦低く
(ひきぞめはゆーちゅーぶなりげんひくく)
※せめて正月にはちゃんとレコードをと思って
いたのだが、この気楽さ、即聴性『どんな曲
でも各種取り揃えて即座に聴ける』には抗し
がたい。今年もせいぜいお世話になることだ
ろう。
1/5thu
世を占う知の巨人とな初テレビ
(よをうらなうちのきょじんとなはつてれび)
三が日休んで鵙の来て黙す
(さんがにちやすんでもずのきてもくす)
1/4wed
去年の絵の感想ありて師の賀状
(こぞのえのかんそうありてしのがじょう)
正月の軸は竹林いつぞやの
(しょうがつのじくはちくりんいつぞやの)
初夢は何本かごちゃごちゃと無理
(はつゆめはなんぼんかごちゃごちゃとむり)
1/3tue
正月や奥に鎮座の茶碗出し
(しょうがつやおくにちんざのちゃわんだし)
耳ふさぎこの世この日は寝正月
(みみふさぎこのよこのひはねしょうがつ)
句を書きて手を懐に寝正月
(くをかきててをふところにねしょうがつ)
※寝正月とかふてくされようと現実にはちょっ
といいことに満ちている。正月の空と散歩、
清新の気分は横溢しているし、ラグビーは早
大が決勝進出、箱根も多くの人の想定より上
位でゴールした。
1/2mon
初詣善男善女になりたふて
(はつもうでぜんなんぜんにょになりとうて)
線香を膝に賜ひて初観音
(せんこうをひざにたまいてはつかんのん)
喜寿とても年玉賜ふ気のありて
(きじゅとてもとしだまたまうきのありて)
1/1sun
新年の祝詞おぐらき犬友と
(しんねんのしゅうしおぐらきいぬともと)
初日の出賀状仕舞いを悔やみおり
(はつひのでがじょうじまいをくやみおり)
※日本海沿いを除いて広く晴れ上がったようだ。
当地も快晴、朝早く犬の散歩を済ませ、お屠
蘇の前に近くの観音様に出かけ年始のお参り
をした。おみくじは大吉、甘酒もいただいた。
交通安全のお札もゲット。こんなにスムーズ
な出発は珍しい。
************************************************
5/31wed
友堂々50号の絵梅雨に入る
(ともどうどうごじゅうごうのえつゆにいる)
※友人からの案内で地域絵画グループの美術展
を見に行った。なかなかどうして手管の面々、
圧倒された。うなだれて雨模様の中を帰って
きた。
5/30tue
片陰もなき牛込の柳町
(かたかげもなきうしごめのやなぎちょう))
※先日の東京行続き。
あの日は背中がじりじりと季節外れの真夏日。
好きで歩いているとはいえ、一時間休みなし
というのはやや危険。わかってはいるけど・
・・ほう、ここは東京女子医大のすぐ近くだ。
安心。
白靴で夏目通りよ坂の街
(しろぐつでなつめどおりよさかのまち)
5/29mon
手拭いを職人風に豆の飯
(てぬぐいをしょくにんふうにまめのめし)
薬の日どくだみ抜く手てぬるかり
(くすりのひどくだみぬくててぬるかり)
5/28sun
ランドセル開いたままの子走り梅雨
(らんどせるあいたままのこはしりづゆ)
西瓜苗植うるに場所の狭まりて
(すいかなえううるにばしょのせばまりて)
※家庭菜園でも連作障害を避けるために知恵
を絞る。スイカはウリ科、好みの野菜がワ
ンサとある。4,5年間を空けよとなると
相当に大変。
5/26fri
走り梅雨ブラ翁が間奏曲よ
(はしりづゆぶらおうがかんそうきょくよ)
※日ごとの天気の変化、寒暖の差が激しい。
梅雨も近い。ブラームス親方をブラ翁と称
し、型にはめようとする無理。句を作る者
が味わう快感。
5/25thu
緑陰に人や自在に神楽坂
(りょくいんにひとやじざいにかぐらざか)
※先日の東京行続き。
年に一度のフィエスタが近いとあって、坂
のそこかしこで関係の人がたむろしている。
久しぶりの都会の街と人。
日盛りやただ黙々と坂の道
(ひざかりやただもくもくとさかのみち)
※暑いというのに遠回りして坂の途中から大
久保通りに左折。牛込を経由し市谷を掠めて
北上、目標の一つ、夏目坂に向かう。
ただ歩く、これがいい。東京の普通の道を。
5/24wed
毘沙門天賽銭の音友の息
(びしゃもんてんさいせんのおととものいき)
※先日の東京行続き。
神楽坂を上ると中ほど左手に善国寺がある。
地域では「毘沙門さま」と呼ばれていると
か、山の手七福神の一つ。日傘が集ってい
る。神楽坂は日影が多く、酷暑?の中、こ
こまでは出足快調だ。
5/23tue
電車今夏の帽子を膝に置く
(でんしゃいまなつのぼうしをひざにおく)
※先日の東京行。電車に乗るのさえ多少興奮し
ている? それほど久しぶりの出来事。
駅頭は久闊よりも暑さかな
(えきとうはきゅうかつよりもあつさかな)
5/22mon
麦秋はこの地ここだけ夫婦いる
(ばくしゅうはこのちここだけふうふいる)
莢豌豆手疲るほどの地の恵み
(さやえんどうてつかるほどのちのめぐみ)
※都会をゆっくり味わい、疲れるほどに歩いた
が、住まいへの帰巣本能が以前より強い。
歳のせいもあり、またコロナ禍で寸断された
都会への思いのせいもあろう。
5/21sun
AIの変革にいるか夏木立
(え-あいのへんかくにいるかなつこだち)
※ほんのしばらくの間で世界中の話題になって
いる生成AI。良いにつけ悪いにつけ影響を
まともに被る世代ではない。したがって急速
な大変革とはいえ、その動きを劇場で味わっ
ている気分だ。今や出し物としては戦争を凌
ぐかも。
5/19fri
Тシャツの長き横文字夏来たる
(てーしゃつのながきよこもじなつきたる)
雨上がる緑の重さ薄暑かな
(あめあがるみどりのおもさはくしょかな)
5/17wed
薫風や三年見ぬ間の濠の駅
(くんぷうやみとせみぬまのほりのえき)
※気の合った仲間との、三年ぶりの歩き会は真
夏日の昼下がりの神楽坂に集合した。暑い。
想定外の「決死行」となった。
5/16tue
風薫る休場明け後の二連勝
(かぜかおるやすみあけごのにれんしょう)
※横綱の両膝のサポーター、単なるテーピング
ではなくてなにやら角ばったガード材がそこ
を覆っている。きょうも明日も横綱を応援し
ている。結果勝ちであればいい。
5/15mon
夏来たる無愛想なる街もよし
(なつきたるぶあいそうなるまちもよし)
※テレビも他のメディアも、また街に出れば商
店も通りも、東京も地方も「ターゲットは若
者」とりわけ「Z世代」とか。
これイコール落ち着かない世の中だ。
こびちゃいけない。
5/14sun
青嵐打ち捨てられし苗の青
(あおあらしうちすてられしなえのあお)
※当地の田植えは大半が四月中に終わっている
が、何の品種かもち米か?半月も遅れて田植
えをした。使いようがない、残った苗の山。
5/13sat
山法師の白は濁手爺の家
(やまぼうしのしろはにごしでじじのいえ)
※ヤマボウシの花が咲き始めている。いつも通
る家のそれはもう半ばを越えている。しかも
その白色は実に深い色をしている。家ごとに
木ごとに白が違う気がする。
5/12fri
聖五月戴冠式に仔細あり
(せいごがつたいかんしきにしさいあり)
サツマイモ植えず三日の雨続き
(さつまいもうえずみっかのあめつづき)
5/11thu
芍薬は画材見事な見得を切り
(しゃくやくはがざいみごとなみえをきり)
※今朝4時過ぎ当地を震度5強の強い揺れが襲
った。人生で初めての5強を体験、その最中
これが更に強くなったら・・・首都直下地震
ではないか?の強い恐怖に捕らわれた。
見舞いのメールなどを受信し、一息ついたの
は約一時間後。
5/9tue
細き棒ギブスの中を夏に入る
(ほそきぼうぎぶすのなかをなつにいる)
※知人が自分の庭で転倒し踝を骨折した。齢を
重ねての骨折は時に大変なのだが、時間はか
かるが完治できる見通しだ。ギブスに合った
木の棒をプレゼントした。大いに感謝された。
5/8mon
春惜しみ上野の山をただ抜ける
(はるおしみうえののやまをただぬける)
角曲がる都電見下ろし暮れかぬる
(かどまがるとでんみおろしくれかぬる)
※晩春という言葉にある郷愁を感じるのだが、
自分の体験と小津安二郎の映画の記憶とが混
然となって境目が妖しくなってことにも原因
がある。不甲斐ない自分の記憶力にがっかり
はするものの、悪い気分ではない。
春をじっくり惜しむほど情緒のある人間では
ない。なぜか浮かんでくるのは、言問通りか
らがら芸大の裏手に上がって、ただ御徒町方
面に上野の山を突っ切ってくる。もう一つは
王子駅付近で都電が直角に曲がるあたり、近
くには飛鳥山がありこの辺もサクラがあった。
広い道路をまたぐ横断歩道の上から飽かずに
眺めている。どちらも夕暮れ近く。
草の山と鎌を眺めつ春惜しむ
(くさのやまとかまをながめつはるおしむ)
5/6sat
芋植うる今日は二畝ばかりなり
(いもううるきょうはふたうねばかりなり)
磯茶屋の大椀どっと浅蜊汁
(いそじゃやのおおわんどっとあさりじる)
5/5fri
チェーホフは春の日そして春の夕
(ちぇーほふははるのひそしてはるのゆう)
※午前中はゆっくり読書と新聞、午後は晴れの
強風の中畑に駆り出される。行く春を惜しむ、
どころか黄砂混じりの風の中、サツマイモを
植える準備をする。今年はちゃんと黒マルチ
を張って50本植える予定。ちゃんとやるに
はやはり私の出番。
5/4thu
住職を庭師とまがふ日永かな
(じゅうしょくをにわしとまがうひながかな)
団地の子女子が率いて日永かな
(だんちのこじょしがひきいてひながかな)
5/3wed
峠越え八十八夜の歯科通い
(とうげこえはちじゅうはちやのしかがよい)
※家内が歯茎の治療に難渋し、腕の良い口腔
歯科を求めて隣市の医院を紹介してもらっ
た。国道沿いで行くと遠くなり、山越えの
ショートカットを選んで連れて行く。
それにしても遠い。午後の予約で行くと午
後一杯取られてしまう。
5/2tue
忌野忌木の間隠れの清志郎
(いまわのきこのまがくれのきよしろう)
※快晴。木漏れ日を浴びながら草むしり。新たに
入手したイヤホーンで清志郎を聴く。
フーン・・・いいなあ。いいのは清志郎であっ
て、値段の割にイヤホーンはだめ。それとも、
スマホ越しの音ってこんなものか?
5/1mon
句日記や苦あり楽あり柿若葉
(くにっきやくありらくありかきわかば)
※誰にも見てもらっていないという前提なれど
も、出来ればコンスタントに自分が満足する
句を作りたいと思う。
そのための強制力の一つがこのブログだ。始
めた以上自分で恥ずかしい句は見せられぬ、
決めて開店休業とはいかぬ、と。
************************************************
4/30sun
荷風忌や言葉あふれて街ゆれて
(かふうきやことばあふれてまちゆれて)
※インバウンドの回復のニュースで浅草雷門周
辺の雑踏が伝えられる。あそこにはすぐ横に
交番があって、我慢強い優しい警察官が絶え
ず笑顔で外国人に応対している。日本の若者
の言葉らしき洪水もある。荷風卒倒。
4/29sat
春爛漫バラは匂いて吾無臭
(はるらんまんばらはにおいてわれむしゅう)
※その昔顔は脂ぎって口の中、パンツの中、靴
の中は蒸れて異臭があった。普段においてそ
うだった。ところが今や匂いはないと人に言
われる。優秀な女歯科医に出会ってからは少
しのプラークもチェックされる。この10年
超、自分の歯の数に異動はない。口臭もない。
生きている証拠も急速に減っているというこ
とか。
4/27thu
動画見てブドウの芽かきためらわず
(どうがみてぶどうのめかきためらわず)
※動画投稿サイトもユーチューブ以外に様々あ
るらしいが、DIY・修理・家事・野菜果実栽
培・ガーデニングなどなど課題に広く応えて
くれるのはユーチューブだろう。本件のテー
マも関係のサイトが見きれないほどある。
4/26wed
しなやかな八十路の筆よ豆の花
(しなやかなやそじのふでよまめのはな)
※どこが痛い、ここが痛い、もう歳だからダメ、
とかいいながら筆を持たせると、対象をきり
っと見つめ、力強く筆を滑らせる。絵画教室
の師はまだ当分大丈夫だ。
4/25tue
新人の帽子は二つかげろへる
(しんじんのぼうしはふたつかげろえる)
※中学校野球部でも新人は二人だけ? うち一
人はつい先月までの小学生を思わせるチビ。
今部活は曲がり角、顧問の教師の激務防止と
やらで学校外から人材を呼んで運営や指導を
委ねるという。さて・・・。そもそも学年二
人ではチームがそのうち成立しなくなる。
これは少子化対策か?
4/24mon
喜寿の春尾崎今なら同じ岸
(きじゅのはるおざきいまならおなじきし)
※尾崎豊の歌特集でたっぷりと聴いた。しみじ
みと繰り返し。
4/22sat
春の蚊や血を吸う知恵はなかりけり
(はるのかやちをすうちえはなかりけり)
4/21fri
葱坊主貯めし雑草抜きにけり
(ねぎぼうずためしざっそうぬきにけり)
学年の違う子らいる葱坊主
(がくねんのちがうこらいるねぎぼうず)
※コロナ禍の制限された暮らしは畑仕事を増や
したとか。周辺でもそれまでの庭を大胆に畑
にした家が何軒か見受けられる。やせた葱坊
主がクレイムを言いたがって・・・。
4/20thu
涅槃図や絵解きの僧の若返り
(ねはんずやえときのそうのわかがえり)
※ペンライトを使うところは変わりないが、声
が変わった、若い透き通るいい声だ。わかり
やすい。だが、こちとら内容を理解したいと
聴いているわけではない。嗄れ声のいつもの
声の方が落ち着くしありがたい。死んだわけ
じゃないだろう。
4/18tue
捻挫して常より見入るすみれ草
(ねんざしてつねよりみいるすみれそう)
※家内が犬を曳いていて踏み外し、捻挫した。
初め大層痛がったが、時間を置かず整形外科
で診てもらい患部を固定した。これが奏功し
軽くて済んだみたい。ほぼ全快。
4/17mon
大風のやみて間もなく浮かれ猫
(おおかぜのやみてまもなくうかれねこ)
※時々吹きまくる大風が長いこと続いた。建物
が揺れ撓るほどで睡眠には大敵。ようやく静
かになったと思ったら、・・・猫の恋の始ま
り? 早くないか? 温暖化?
4/16sun
外来の受付すれば青柳
(がいらいのうけつけすればあおやなぎ)
4/14fri
角とれてと言われ久しく蕨餅
(かどとれてといわれひさしくわらびもち)
4/13thu
屋根の鞠今も探して啄木忌
(やねのまりいまもさがしてたくぼくき)
※ふとしたことで昔のことを思い出し、その前
後のことまで妙に生々しく覚えていた、なん
てことがある。啄木の故郷を思っての一首、
「その昔小学校の柾屋根に
我が投げし鞠いかにかなりけむ」
4/12wed
どの家も表札のごとハナズオウ
(どのいえもひょうさつのごとはなずおう)
春愁や宅配人のほころべり
(しゅんしゅうやたくはいにんのほころべり)
4/11tue
描きし絵の穏やかなれど徂春かな
(かきしえのおだやかなれどそしゅんかな)
※絵画教室の会でOBの来訪があり、腕前の進
歩と積極的な出展、入賞のことなど、大いに
アオラレタ。なにこの歳になって、画家にな
りたいわけじゃなし・・・とお決まりの言い
訳はするものの、もう少し上手になってもと
素直に願う気持ちや切なるものがある。
4/10mon
田植え機のギヤなめらかに父となる
(たうえきのぎやなめらかにちちとなる)
※農業後継者の彼はまだ新米のうち。先日父親
になったらしい。田植えは早くて1週間後、
腕が鳴って仕方がないというところか?
4/9sun
山笑ふバイクは遅し郵便夫
(やまわらうばいくはおそしゆうびんふ)
春巻を揚げて届けに手の温み
(はるまきをあげてとどけにてのぬくみ)
※もらった筍の一部を春巻にし届ける。スマホ
で時刻を確認し揚げたてを。
4/8sat
春爛漫愛想尽かしの果樹あれど
(はるらんまんあいそづかしのかじゅあれど)
※一番遅いぶどうの木が芽吹き始めた。梅、桃、
プラム、柿に続いてである。狭い土地に果樹
を縦列に欲張って植えているせいか、昨年は
殆どの木の収穫が落ち込んだ。対虫害では努
力するもいずれも効なく終始した。ああ、と
嘆息すること、今に引きずっている。
4/7fri
旅ごころ蠢き長く放哉忌
(たびごころうごめきながくほうさいき)
※お金もないが、飼い犬がホテル・病院に預け
にくい事情があるため、旅行は控えることが
多い。コロナ禍で余計固まった感じ。
4/5wed
学校のサクラを望み湯屋はあり
(がっこうのさくらをのぞみゆやはあり)
※御多聞にもれず、サクラと言えば城に学校で
ある。小学校の桜並木を思い出していたら、
ふと何のつながりもなしに近くに建っていた
温泉会館なるものが頭に浮かんできた。これ
も小学校も少し離れて故郷の川沿いにあった。
温泉などではなく「沸かし」だったろう。
70年ほど前のこと、あのころは農閑期の人
々など家族連れが客だった。何年かで閉鎖し
た。二階建ての、それらしくないモルタル塗
りの白い建物だった。
4/4tue
龍一の音々さやか風光る
(りゅういちのおとおとさやかかぜひかる)
※坂本龍一死去
4/3mon
毎日が今良しと推す山笑ふ
(まいにちがいまよしとおすやまわらう)
※サクラの終盤になると背景の山々の若葉が輝
き始める。昨日は今が一番いい時季だと思っ
たが、今朝になると今日の方がもっと良くな
ったと。
4/2sun
花びらはいつにも増して連翹忌
(はなびらはいつにもましてれんぎょうき)
記念館は雪深くあり光太郎忌
(きねんかんはゆきぶかくありこうたろうき)
※真冬に訪れた、高村光太路郎記念館は当時の
厳しさそのままに花巻郊外にあった。藁ぶき
の小さな一軒家、村はずれで隣家はない。
大雪の中に見た、強烈な印象は今も鮮明であ
る。光太郎忌はサクラ咲く、うららかな季節
だが、思い出は常に雪に埋もれた、あの光景
だ。したがって句は季重なりとなる。なに、
構うものか。
4/1sat
桜散り桜餅食い四月馬鹿
(さくらちりさくらもちくいしがつばか)
※今日は文句ない晴れ日。なんと言われようと
午前中は桜吹雪を見に、午後は甲子園の決勝
観戦だ。雑草が庭で背伸びして笑っている。
************************************************
3/31fri
酒倉は人呼ぶカフェに鳥曇り
(さかぐらはひとよぶかふぇにとりぐもり)
※街がやさしく変貌すると言えば耳障りは良い
が、街のいたるところでインバウンド向け、
フリー客向けに変身するのはどうにもいただ
けない。落ち着かない。
通りの両側に高いオフィスビルやマンション
が、目の高さにはいらっしゃいませの声。
うんざりだ。
3/30thu
春たけなわ入道雲のようなもの
(はるたけなわにゅうどうぐものようなもの)
※兄妹からなかなか良い電話が入った。積乱雲
のような形がにょきにょきと立ちかけている。
ちょいと歩くと汗がにじむような午後。
3/28tue
パスで行く博物館は花の道
(ぱすでいくはくぶつかんははなのみち)
※その昔上野の国立博物館年間パスを持ってい
た。驚くほど安かった。夏は勤務の後でも入
れる閉館時間だったように思う。ちょいぶら
っと見て御徒町まで歩く、それが良かった。
3/27mon
人ゆらり高き足場に花の風
(ひとゆらりたかきあしばにはなのかぜ)
桜湯はサービスとありカフェの午後
(さくらゆはさーびすとありかふぇのごご)
※雨がちな日が続き、当地のサクラはけなげに
も少しも散らずにピークを迎えている。
尊氏の本心はどこ藪椿
(たかうじのほんしんはどこやぶつばき)
3/26sun
目も耳も親譲りなり喜寿の春
(めもみみもおやゆずりなりきじゅのはる)
※見た目は別としても、目も耳も鼻も歯や咽喉
も、役割の面で今でも至極堅調である。親に
感謝している。
春場所は気付けば楽日花の冷え
(はるばしょはきづけばらくびはなのひえ)
3/25sat
待て待てと言葉緩めて春の雷
(まてまてとことばゆるめてはるのらい)
※もう言葉を荒げる年齢でもない、とは思うも
のの・・・。
汚すのも洗うのも雨土筆かな
(よごすのもあらうのもあめつくしかな)
3/24fri
たんぽぽの絮飛ばすとき命燃え
(たんぽぽのじょとばすときいのちもえ)
窓開けて歯科に客待つサクラかな
(まどあけてしかにきゃくまつさくらかな)
声も歌もサクラに吸われデイの庭
(こえもうたもさくらにすわれでいのにわ)
3/23thu
夕まぐれ野蒜の花が主演なり
(ゆうまぐれのびるのはながしゅえんなり)
※3月は映画の賞の月。我が家の主演賞は断然
花ニラ。地味で小さな花が夕方薄暗くなると
庭中に冴えてくる。
3/21tue
木瓜の垣見知る主人の赭ら顔
(ぼけのかきみしるしゅじんのあからがお)
※何年か越しの賜だろう、木瓜が棚いっぱいに
咲き誇っている。比較的地味な花だから、そ
の主人ともどもドヤ顔はしない。
3/19sun
春場所や贔屓力士の眉伸びて
(はるばしょやひいきりきしのまゆのびて)
※WBCに選抜高校野球も始まり球春真っ盛り。
相撲もと行きたいけれど休場相次ぎ、こちら
は戦国下剋上・・・。
3/17fri
藪椿手折って土の瓶思い
(やぶつばきたおってつちのびんおもい)
※椿らしくない、珍しいと思って、素焼きの花
瓶にさし、スケッチ始めたまでは良かったが、
上手に描けたと思った椿の絵がどうも椿に見
えない。仲間も「これ椿か?」と不評。こち
らは不満。・・・それもそのはず元々が椿ら
しくないのだから。
3/16thu
もぐら塚生命力の霞みおり
(もぐらづかせいめいりょくのかすみおり)
※国立科学博物館のもぐら研究の先生が話して
いた。仕事の半分以上が動物の骨の標本作り
であると。しかも標本作成には「3無」の特
徴がある由。「無計画」「無目的」「無制限」
にやるのだそうな。標本を多種、大量に持つ
ことが将来の研究のなによりの基盤だ、その
ためであると。なるほどとびっくり。
今日も動物園から送られてきた動物の死骸、
奄美で交通事故死したアマミノクロウサギの
死骸に向き合う。
3/15wed
春時雨香り充溢今朝のパン
(はるしぐれかおりじゅういつけさのぱん)
※薄暗い朝も許せる。
3/14tue
駅前の円墳にあり白木蓮
(えきまえのえんぷんにありしろもくれん
※すれ違う白マスクの数はそんなに減っていな
い。近くの駅では白が急増とか。
3/13mon
新設の波止は揺らいで眼張釣り
(しんせつのはとはゆらいでめばるつり)
※次第に風が強くなる。午後は雨も。新しい波
止は強風で揺れるのではないか、余計なお世
話。
3/12sun
春霞五重塔の圓遊の
(はるがすみごじゅうのとうのえんゆうの)
※圓遊の新作落語「五重塔から のっそり」を
聴いた。良かった。露伴「五重塔」のスジに
沿って、その空気を面白く上手に伝える。
サクラ前でもいいから谷中を歩きたいものだ。
3/11sat
皺の手や三月十日の句が多く
(しわのてやさんがつとおかのくがおおく)
※三月十日は東京大空襲で季語
今日三月十一日は東日本大震災、これも季語
うららかや都電の車庫に音ありて
(うららかやとでんのしゃこにおとありて)
3/10fri
春の夕ジムの灯りのみこうこう
(はるのゆうじむのあかりのみこうこう)
呼吸器の音と点滅春の闇
(こきゅうきのおととてんめつはるのやみ)
※アカデミー賞の発表が間近いからというので
もないが、過去の受賞作「ミリオンダラー・
ベイビー」を見た。以前にも見たが、今回も
感動した。クリント・イーストウッドにモー
ガン・フリーマンが揃い、ヒラリー・スワン
クときたら、2005賞総なめもわかる。
3/9thu
青海苔やこんなのという男あり
(あおのりやこんなのというおとこあり)
※今シーズンは地元木更津周辺の海苔も有明海
の海苔もそれぞれ違った原因で不漁となって
いるらしい。江戸前のつやつやした黒い海苔
がふんだんに・・・もうそんなことはないの
か? 青海苔は独特の風味があってファンも
多いのだが、不漁続きでは吐き捨てるように
しか言わない。
3/7tue
古竹を切りて三月垣直す
(ふるたけをきりてさんがつかきなおす)
※四月下旬並みの暖かさという今日まで延ばし
ていた作業をする。庭はクロッカス、ムスカ
リ、花ニラの順で賑やかになりそう。
3/6mon
今読まずはもう読まざるの春の雨
(いまよまずはもうよまざるのはるのあめ)
※楽しみにして用意した本なのに出足で躓くこ
とがある。年齢のせいもある。またそのうち
に出直しをと言っても、今回が事実上の最後
だろうと自分を脅迫し追い詰めてみる。
それでもだめ・・・。
3/5sun
春眠やふとんの重さ知りてなお
(しゅんみんやふとんのおもさしりてなお)
※うとうと目を覚ましたが、目はまだ開かない。
冬中使ってきた布団がやけに重く感じる。む
にゅむにゅ・・・暖かいけど、むにゅむにゅ
・・・。やってはいけない自句実況でした。
3/3fri
雪柳最初の白い二三点
(ゆきやなぎさいしょのしろいにさんてん)
雛の日や女房マージャン公民館
(ひなのひやにょうぼまーじゃんこうみんかん)
※どうやら偕老同穴となる雲行きの桃の節句で
はある。最近は女房元気で留守がいいという
常套句もどきが良く似合う。
3/2thu
今朝一はスカルラッティ春一番
(けさいちはすかるらってぃはるいちばん)
春一番ラインで老けを確認し
(はるいちばんらいんでふけをかくにんし)
※ラインで都心歩きの会再開の日を3人で相談
する。便利なものだ、しかも無料とはね。
3/1wed
蘖や鑿研ぐ日々を思いたり
(ひこばえやのみとぐひびをおもいたり)
※暖かすぎる日中、友人との再会兼街歩きも良
かろうと思う。ラインで見る顔もそうは老け
ていないようだし。
************************************************
2/28tue
春浅し友の旧居に杭打機
(はるあさしとものきゅうきょにくいうちき)
※随分前に越した友人宅跡だが周囲の土地を合
わせて工事が始まった。杭を打つ必要がある
建物? この近辺では珍しい。
2/26sun
春の海フェリーふわりと波の上
(はるのうみふぇりーふわりとなみのうえ)
※友人を見送って金谷港東京湾フェリーまで出
かけた。天気は良いのだがやや波が高い。心
配のほどではない。でっぷり肥えたフェリー
は無事浮かんで出港した。
2/24fri
春の闇濃かれ三つ星寄り添うて
(はるのやみこかれみつぼしよりそうて)
※昨夕、日の入り後18時30分頃の西の空で、
「新月」と「木星」「金星」とが一列に黄道
上に並ぶ天体ショーを見た。格別レアなこと
ではないが、タイミングと天候がこうもピタ
リと合うことは少ない。写真も撮れたよ。
2/23thu
春の旅ミシン黄色を纏いおり
(はるのたびみしんきいろをまといおり)
旅先の待ちにし膳よ蕗の薹
(たびさきのまちにしぜんよふきのとう)
※旅は思い浮かべるころから出かけるまでが至
福という。明るい黄色はお気に入り、さあ出
かけよう。
2/22wed
猫魔岳街を白くし春むかし
(ねこまだけまちをしろくしはるむかし)
※昔会津若松の点描。2月の午後。通りの遥か
先にあるのは真っ白な残雪をいただく猫魔岳。
これが浮き上がって大きく見える日がある。
市街の根雪は融けて道を洗い、コンクリート
舗装の道はこれも白く見える。家並みは後退。
2/21tue
春一日怠惰の時とのみ記して
(はるひとひたいだのときとのみきして)
ブランコをこいで人待つ青春か
(ぶらんこをこいでひとまつせいしゅんか)
※ろくなニュースはないが、そこは春だからそ
の気になれば春になる。
2/20mon
太陽光パネルが侵す春田かな
(たいようこうぱねるがおかすはるたかな)
蓬髪が床屋帰りで春の風
(ほうはつがとこやがえりではるのかぜ)
2/19sun
街道はうつらうつらの菜の花忌
(かいどうはうつらうつらのなのはなき)
※菜の花忌の頃に古い「街道を行く」のTV番組
を見た。本よりも随分端折ってあるものの、
上手い編集だ。田村高広のナレーションが懐
かしい。
2/18sat
寝もやらずジャガイモ植うる日はうつろ
(ねもやらずじゃがいもううるひはうつろ)
※ちょっと早めのジャガイモの植え付け。肥料
を多めにして、このタイミングの植付けは生
育が良いという話を仕入れてきた。
サボり気味の今年はこれが野良始めだ。ねむ
たい~・・・。
雪形を見たいと思う野良始め
(ゆきがたをみたいとおもうのらはじめ)
2/17fri
梅咲きて痒み嘆きし人いかに
(うめさきてかゆみなげきしひといかに)
※年寄りの冬季の痒みは空気と肌の乾燥が主因
と言われる。彼へのアドバイスは「入浴を一
日おきに、入浴の日は今まで通りちゃんと石
鹸で洗いちゃんと落とすこと。入浴しない日
は一日中石鹸を使わないこと。使わなくとも
すぐ慣れる」というもの。
2/16thu
春の宵億劫という音を上げる
(はるのよいおっくうというねをあげる)
※さて、もう歳かな? 何か動き始めるときに、
初めのひとふんばりを1テンポ待つことが近
頃多くなった。なんのこともないのだけれど、
その時の姿勢でしばしゆっくりするのだ。
2/14tue
家に肌あり初東風の似合う家
(いえにはだありはつこちのにあういえ)
※歳時記は季語とその季語を使った例句を味わ
って、季節感の妙を感じるものだ。しかし季
語の中には違和感どころか時代錯誤と言わざ
るを得ないものも数多い。窮屈でも文句を言
わずにその古い季語に合った対象を見つけよ
ということなのか。
2/12sun
かたや死にかたやはかくも春の声
(かたやしにかたやはかくもはるのこえ)
※久しぶりに聞く彼の声は以前と全然変わらな
い。前回の彼の電話は同期の友の死を伝える
ものだった。昔から二人を対で見がちな私。
2/11sat
生姜酒とめる者なく喜寿の春
(しょうがざけとめるものなくきじゅのはる)
天井のシミ数え切り喜寿の春
(てんじょうのしみかぞえきりきじゅのはる)
※町内会の人から喜寿のお祝いですよね、と言
われて改めて意識した。満77歳の誕生日か
ら2カ月ほど。感慨とてなにもない。
2/10fri
新海苔は産地苦渋の味少し
(しんのりはさんちくじゅうのあじすこし)
※地元木更津、富津の江戸前海苔はここ数年ク
ロダイの養殖場への侵入と食い荒らしなどに
よって被害を被っている。今季は有明海の海
苔の産地も海水温の上昇が海苔生育の大幅減
産につながっているらしい。
2/9thu
春寒やこころに農具並べおり
(はるざむやこころにのうぐならべおり)
※とっくに農具はラインアップ済み。鎌だって
研いである。
2/8wed
壁の上を春日は円くすべりおり
(かべのえをはるびはまるくすべりおり)
※寝室のカーテンの合わせ目から差し込む朝日
が壁の上に7,8センチの円い明るい形を作る。
日の出の時刻が日々早くなるから、見えだす
時刻は一日ごとに少し早くなり、その位置は
左にずれる。秋分の日以降の秋とはちょうど
逆の形だ。
ついでに言えばそこは床の間で春向きの掛け
軸がかけてある。その上を円い光がすべる。
出来過ぎた話。嘘のような本当の話。
2/6mon
童顔は遺影となりて余寒かな
(どうがんはいえいとなりてよざむかな)
寒紅玉切らさずただに好きなれば
(かんこうぎょくきらさずただにすきなれば)
煮大根においはわが身黙しおり
(にだいこんにおいはわがみもくしおり)
2/4sat
立春や師の舌かくも滑らかに
(りっしゅんやしのしたかくもなめらかに)
※絵にもおしゃべりにも盛んなのはすごい。御
年は80歳台後半で絵筆の軽妙なこと、言葉
に切れ目がないこと。
2/3fri
めずらしく朝のご飯寒卵
(めずらしくあさのごはんかんたまご)
豆まきや声の大きさ迷いつつ
(まめまきやこえのおおきさまよいつつ)
※外に向いてまず一声、大き過ぎたかな? 一
瞬のうちに脳裏を掠める。えいッ、構うな、
この大きさで、鬼に入られてしまう。
声の大きさ! 実は単なる羞恥心の減退、認
知症の手前の始まりだったりして・・・。
2/2thu
宵星の西に沈めば冬銀河
(よいぼしのにしにしずめばふゆぎんが)
※日脚が伸びたものの光はまだ弱い。宵の明星
が沈み暗い星空に変わるまで長い時間は要ら
ない。寒風は身を震わせるが、天空の変化の
微妙さは今頃が味わい深い。
2/1wed
着ぶくれて道ゆずりたる好々爺
(きぶくれてみちゆずりたるこうこうや)
客引きも色とりどりに着ぶくれて
(きゃくひきもいろとりどりにきぶくれて)
※1月の寒波はまだ続いている。客の出足はさ
らに細り、夜の街は大変だ。
************************************************
1/31tue
養蜂をやってみたいと春隣り
(ようほうをやってみたいとはるどなり)
※65歳を前にした人がいる。第2の人生の新入
生間近。彼は希望に燃えている。ああした頃
が俺にもあったのだ。
スカーフに冬薔薇置いて画材とす
(すかーふにふゆばらおいてがざいとす)
1/30mon
昼下がり湯たんぽ抱いて名画かな
(ひるさがりゆたんぽだいてめいがかな)
※テレビで一生懸命映画を見ている。殆どが自
宅で録画しておいたものだ。エアコンをとめ
て湯たんぽを抱きかかえる、眠たくならない。
1/29sun
大寒やなんのなんのと言いにけり
(だいかんやなんのなんのといいにけり)
ケッフェルの番号が出ず冬木立
(けっふぇるのばんごうがでずふゆこだち)
※1/25はモーツァルトの誕生日のようである。
ゆうに600以上ある作品を網羅して正確に番
号をつけるのは至難の業といわれるが、なか
でも一番信頼されるのはケッフェルのつけた
作品番号だ。YoutubeなどではKの次に番号を
つけて検索しただけで、世界中でアップされ
た演奏が並ぶ。
そんな超便利な番号が今次々と記憶から抜け
落ちているようだ。がっくりする。少しずつ
か?わからない。今朝も試しにk516で検索
する。馴染みの演奏が並ぶ。胸を撫で下ろす。
1/27fri
蕪三つ葉っぱも自慢熨斗はなし
(かぶみっつはっぱもじまんのしはなし)
金ないか着物はないか冬の声
(きんないかきものはないかふゆのこえ)
1/26thu
大寒波北国生まれの身なれば
(だいかんぱきたぐにうまれのみなれば)
冬鷗群れてぞ川を遡る
(ふゆかもめむれてぞかわをさかのぼる)
※当地はマイナス5度まで気温が下がった。と
は言え、特に変わったことはなにもなかった。
外で飼っている犬の水が氷ってしまったこと
ぐらい。頬がピリピリを越えて、ビリビリと
痛痒いような感覚には遠かった。
犬はもちろん、周囲も穏やかなようだ。
1/25wed
初天神いかず子供らうるさふて
(はつてんじんいかずこどもらうるそうて)
※子供の騒音「あれ買ってくれこれ買ってくれ」
小三治の曾孫が騒ぐ初天神
(こさんじのひまごがさわぐはつてんじん)
※初天神で露店が並ぶ通りに人があふれている。
こんな光景は暫く落語の中だけだろう。故小
三治の「初天神」は絶品だった。
滑舌の稽古は落語初天神
(かつぜつのけいこはらくごはつてんじん)
1/24tue
大寒や譲る畑の草むしる
(だいかんやゆずるはたけのくさむしる)
※家庭菜園を引退するシニアが寒中に草むしり
をしている。じゃがいもの植え付けに始まる
春野菜の作業開始に次の人が間に合うように
との心配りだ。さすがと思う。
しぐるるや明日明後日は寒気来る
(しぐるるやあすあさってはかんきくる)
1/21sat
電気代一段と大寒しばし
(でんきだいいちだんとだいかんしばし)
寒釣りや台半畳の座禅かな
(かんずりやだいはんじょうのざぜんかな)
※電気代が高騰した。次の3割近くの値上げ申
請は円滑に行っても実施は夏前後だろうから、
今のうちに音を上げていてはどうしようもな
いのだが・・・。
寒中に釣りに興ずる人々の境地にはいつまで
たっても近づけない。
1/20fri
四十雀庭に長く居蕪村の忌
(しじゅうからにわにながくいぶそんのき)
※冬型の気圧配置で関東地方は晴れ上がる。雨
模様のすぐ後だけに、庭や畑に出ていざ労働
というわけにはいかない。どこかに正月暮ら
しの残滓が残っているようだ。
枯れ菊の山となりて焼く人なし
(かれぎくのやまとなりてやくひとなし)
1/19thu
坐して描く水墨の線寒の雨
(ざしてかくすいぼくのせんかんのあめ)
1/18wed
マスク越し目が笑いおり初稽古
(ますくごしめがわらいおりはつげいこ)
※水彩画の絵画教室、初会合。恒例でバラを描
いた。
1/16mon
雨音に冬枯れ思い眠りけり
(あまおとにふゆがれおもいねむりけり)
※睡眠にかけての不器用さでは人後に落ちない。
いったん思い詰めて固まると、ちょっとのこ
とではほぐれない。眠れなくとも何の痛痒も
ない身の上だが、・・・犬がいた。朝少しで
も遅くなると叱られる。
1/15sun
初風呂や西日の残るうちに入る
(はつぶろやにしびののこるうちにいる)
※新年早々浴室が薄暗い。外の明かりが残るう
ちに入れば、これはなんと風雅なことか。
いまだに電球を取り換えていない。
1/14sat
初茜山の端木々のこまごまと
(はつあかねやまのはきぎのこまごまと)
侘びの戸に年賀の客の爪の色
(わびのとにねんがのきゃくのつめのいろ)
笑い初め光と電波越しなれど
(わらいぞめひかりとでんぱごしなれど)
※新年も二週間、早いものだ。今日は個人的な
お祝い事があったが、生憎の雨模様。夫婦し
てトンカツを食べてきた。ついでに正月絡み
の句の整理をした。ほどほどのものは今日一
斉に掲句して決まりをつけよう。
1/13fri
母親の角巻借りてポストまで
(ははおやのかくまきかりてぽすとまで)
※北海道や雪国の部屋の中、ことにリビングな
どは温かい。それでちょっとの外出の時など、
簡単な防寒着に、角巻にくるまって出かける。
しかしとうに廃れたことだろう。
1/11wed
若のつく郷土力士や寒の入り
(わかのつくきょうどりきしやかんのいり)
※この一年着実に実力をつけている若元春、若
隆景の兄弟力士は福島県出身。先行している
のは弟若隆景で関脇で大関を狙っている。兄
若元春もこの初場所で初の三役入り。ともに、
地力としぶとさが信条の玄人好みの力士だ。
1/10tue
狐火は都会の闇にこそという
(きつねびはとかいのやみにこそという)
※静謐というのか薄気味悪いと表現すればいい
のか。コロナ禍のもたらした一種人工的な静
けさは都会において夥しいという。
そうかも知れない。人工的な喧騒のすぐ隣に
現れたのだから。
1/9mon
襟巻し杖つき手にはお裾分け
(えりまきしつえつきてにはおすそわけ)
※日中は温かい一日。団地の普段の夕景が戻っ
てきたと言いたいところだが、通行のクルマ
も人も少なくナリを潜めているようだ。これ
がコロナ以降の普段。まるで正月のようと言
った方が近いかな?
1/8sun
新年に独り住まいの愁い聞く
(しんねんにひとりずまいのうれいきく)
※健康であれば独居の寂しさも気楽さに紛れる
のでは? と思うのは外野の勝手な観測らし
い。あれやこれや想定外の問題、煩わしさが
襲って来るという。
淡雪や停戦告げりうすき唇
(あわゆきやていせんつげりうすきくち)
1/6fri
弾初めはYouTubeなり弦低く
(ひきぞめはゆーちゅーぶなりげんひくく)
※せめて正月にはちゃんとレコードをと思って
いたのだが、この気楽さ、即聴性『どんな曲
でも各種取り揃えて即座に聴ける』には抗し
がたい。今年もせいぜいお世話になることだ
ろう。
1/5thu
世を占う知の巨人とな初テレビ
(よをうらなうちのきょじんとなはつてれび)
三が日休んで鵙の来て黙す
(さんがにちやすんでもずのきてもくす)
1/4wed
去年の絵の感想ありて師の賀状
(こぞのえのかんそうありてしのがじょう)
正月の軸は竹林いつぞやの
(しょうがつのじくはちくりんいつぞやの)
初夢は何本かごちゃごちゃと無理
(はつゆめはなんぼんかごちゃごちゃとむり)
1/3tue
正月や奥に鎮座の茶碗出し
(しょうがつやおくにちんざのちゃわんだし)
耳ふさぎこの世この日は寝正月
(みみふさぎこのよこのひはねしょうがつ)
句を書きて手を懐に寝正月
(くをかきててをふところにねしょうがつ)
※寝正月とかふてくされようと現実にはちょっ
といいことに満ちている。正月の空と散歩、
清新の気分は横溢しているし、ラグビーは早
大が決勝進出、箱根も多くの人の想定より上
位でゴールした。
1/2mon
初詣善男善女になりたふて
(はつもうでぜんなんぜんにょになりとうて)
線香を膝に賜ひて初観音
(せんこうをひざにたまいてはつかんのん)
喜寿とても年玉賜ふ気のありて
(きじゅとてもとしだまたまうきのありて)
1/1sun
新年の祝詞おぐらき犬友と
(しんねんのしゅうしおぐらきいぬともと)
初日の出賀状仕舞いを悔やみおり
(はつひのでがじょうじまいをくやみおり)
※日本海沿いを除いて広く晴れ上がったようだ。
当地も快晴、朝早く犬の散歩を済ませ、お屠
蘇の前に近くの観音様に出かけ年始のお参り
をした。おみくじは大吉、甘酒もいただいた。
交通安全のお札もゲット。こんなにスムーズ
な出発は珍しい。