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ダクタク句集2022年(令和4年)7月 [ダクタク2022年7月]

7/31sun
風鈴や 南部湯宿の 闇の濃さ
  (ふうりんや なんぶゆやどの やみのこさ)
   ※花巻市郊外の花巻温泉郷台温泉に宿泊したこ
    とがある。いい湯いい宿だった。遅くついた
    のに印象深いのは夏の闇の深さと透明な湯の
    せいか。

7/30sat
兜虫 遅き経済の 良さ知らず
  (かぶとむし おそきけいざいの よさしらず)
   ※この国はかつて高い経済成長を実現し、効率
    第一を叫んで、その果実を満喫した。その頃、
    個人商店は消え失せ、全国の街々が画一化し
    ていった。背後で家庭が地域が変質した。
    画一化は街だけではない。人間だって(後の
    言葉で言えば)クローンのようなサラリーマ
    ンや労働者が自分の生きがいとして、その路
    線に沿い、成長に貢献した。絶頂時には
    「21世紀は日本の世紀」とまで。
    ところが今、「失いし20~30年」とかを
    耳に痛いほど聞いている。聞いて久しい。
    「経済成長は神話だよ、続かない」「成長の
    代わりに多くを失っているんだよ。今良く考
    えなければ手遅れになる・・・」50年以上
    前にアンチ高度成長を言った人はいっぱいい
    たね、そう言えば。ためにする人も多かった
    が、深刻な正論もあった。

7/29fri
煙草屋の 解体終わり 晩夏なる
  (たばこやの かいたいおわり ばんかなる)
   ※店先販売はとうの昔にやめ、長いこと自販機
    がならんでいた。不思議なもので店も住まい
    も一緒に解体されると、かなりのおばあさん
    が日がな店番をしていたことが思い出される。

7/28thu
夏号の 稿を渡せり 白き道
  (なつごうの こうをわたせり しろきみち)
  ※一回きりと代理を頼まれた。夏を迎えるエッセ
   イなんでも、という。地域のミニコミ誌みたい
   なもの。安請け合いした直後に梅雨が明け、真
   夏の暑さが襲ってきた。「なんでも」を頼りに
   やっとこ駄文を弄した。どうせ誰も見ない、と
   思ったことを後悔した。

7/27wed
端居やめ 犬の背たんと 流しけり
  (はしいやめ いぬのせたんと ながしけり)

冷麺や 腰にさしたる 扇子かな
  (れいめんや こしにさしたる せんすかな)

7/25mon
夏稽古 代役の子に 黒子あり
  (なつげいこ だいやくのこに ほくろあり)

夏稽古 来ぬ子の役を 全部やり
  (なつげいこ こぬこのやくを ぜんぶやり)
   ※地域で演劇の指導をしている人の稽古場を端
    で見せてもらった。こんな人がいることが大
    変貴重に思えるが、やはりコロナ禍のせいで、
    せっかくの夏休みの強化練習も参加者が思う
    に任せないとのことだ。

7/23sat
蝉時雨「巴里は燃えているか」聞こゆ
  (せみしぐれ ぱりはもえているかきこゆ)

百日紅の赤「巴里は燃えているか」
  (さるすべりのあか ぱりはもえているか)
   ※NHKスペシャル「映像の世紀」シリーズの通
    しのテーマ。作曲した加古隆のインタビュー
    番組を聴いた。やっぱり憎いねェ。

7/22fri
百日紅 警報の声 流れけり
  (さるすべり けいほうのこえ ながれけり)
   ※当家の一本の桃の木。小粒とは言え実は多く
    たわわだが、今年は虫の被害が多かった。プ
    ラムのカイアガラムシに気を取られノーケア
    だった。
    やっと不順な天候の合間を縫って収穫し終え
    た。さて来年に向けてはどうしようか? 思
    案を始めている。

7/20wed  
ああいえばこういう夏の国訛り
  (ああいえばこういうなつのくになまり)
   ※Lineでのテレビ電話、これが少し前だったら、
    「用もないのに顔はいらない」とか言って一
    方的に敬遠したろうに、この齢になると、晩
    くやってきた、この便利な仕組みに結構素直
    になじんでいる。年齢による羞恥心の欠如?
    いやそんなことをいうほど衒いもない。

7/19tue
夏時雨桃の実落ちる音にせく
  (なつしぐれもものみおちるおとにせく)
   ※不順な天候が続く。担当の雑草刈りも果樹の
    世話も意に沿っては進まない。やっぱり九州
    山口地方に梅雨末期に似た豪雨の被害が心配
    になる。

7/18mon
祇園会や 小雨に白の 角隠し
  (ぎおんえや こさめにしろの つのかくし)
   ※故郷の近く会津田島町の祇園会のメインは花
    嫁行列。今年はどうなるのだろうか? 近年
    は嫁のナリテが町の内外から押し寄せるとい
    う。7月16日は1月16日とともに、昔の
    言葉で「藪入り」、奉公人や嫁入りした娘が
    実家に里帰りした日だ。今や完全な死語。
    こちらの花嫁はその日のうちに帰るのだろう。

7/17sun
宵山に 泣いたらあかん 稚児の声
  (よいやまに ないたらあかん ちごのこえ)
   ※久しぶりの京都祇園祭のフル日程が無事に進
    むことを切に祈る。NHKドラマ『京都人の密
    かな愉しみ』はええなァ。直近は「Blue修業
    中 門出の桜」かな。源孝志ディレクターに
    よるもの。くせはあるものの、ええ腕しては
    るわァ。

7/16sat
夏の雨 頼朝が行く 国境
  (なつのあめ よりともがいく くにざかい)
   ※近くに鎌倉街道という古道がある。随分説明
    を受け、フィールドワークにも出かけたが、
    仔細の記憶はゼロ。ただ南の安房の国から上
    総の国に、頼朝が土地の豪族、兵を募りなが
    ら北上したのはテレビの通りらしい。

7/15fri
ラケット背に 女剣士が 夏椿
  (らけっとせに おんなけんしが なつつばき)
   ※小雨の中を自転車で行く姿は凛々しい。コー
    ト使えまいに、と思うが今は体育館で大勢で
    乱打練習が出来るらしい。

7/13wed
短夜や ひそかに話す 人通る
  (みじかよ やひそかにはなす ひととおる)

夏帽子 カフェを待つ間の 立ち向かい
  (なつぼうし かふぇをまつまの たちむかい)
   ※カフェテラスという屋外の店が大都市で増え
    ている。最近は地方都市でも狭い舗道を占拠
    してテラスと称しているのが多い。ましてや
    そこの空くのを待っている御婦人連がある。

7/11mon
命がけ 炎暑の選挙 いかと見る
  (いのちがけ えんしょのせんきょ いかとみる)
   ※参議院選挙が終わった。普通の人が普通に与
    えられる選挙権、それは勝ち取った権利。被
    選挙数の比較優位によってのみ代議員となれ
    る。この価値をどうみる、どうみるべきか? 
    これのない国々の人々よ。

7/10sun
短夜に口の遅さを嘆じけり
  (みじかよにくちのおそさをたんじけり)
   ※加齢とともに口が重くなる、口数が減る。語
    彙も減る。自分だけはそこまでにはならない
    と、根拠なしの自信もあるにはあったのだが、
    そんな希望もあえなくコロナ禍によって潰え
    去った。

7/9sat
涼しけり政治の海に笑み消えぬ
  (すずしけりせいじのうみにえみきえぬ)

長州と江戸の間で夏憤死
  (ちょうしゅうとえどのあいだでなつふんし)
   ※元首相の街頭演説中の死。毀誉の混じるとこ
    ろはあったが、圧倒的な天性とそれ故のゆと
    りとユーモアを備えた政治家。合掌。

7/8fri
若妻が 夫の腕ひく 夏木立
  (わかづまが おっとのうでひく なつこだち)

杖を持て 実を引き寄せて 袋掛け
  (つえをもて みをひきよせて ふくろがけ)

7/7thu
築地塀 驟雨のあとを 見せてあり
  (ついじべい しゅううのあとを みせてあり)
   ※文化財に指定されている江戸時代の築地。荒
    い素地がむき出しになっているから年々の雨
    等による浸食が心配だ。とは言え、俄雨の後
    の箇所を指でエグルように強く触れてみた。
    大丈夫だ。指にはなにもついてこない。

7/6wed
浮雲の 行先知らず 芙美子の忌
  (うきぐもの いきさきしらず ふみこのき)
   ※林芙美子の「浮雲」をネットの朗読で全編聞
    いた。全部で8時間余り。戦争と男と女の物
    語。名匠成瀬巳喜男、高峰秀子、森雅之主演
    の同名の映画も鮮明に覚えているが、ネット
    朗読版も気に入った。忍耐あっての「聴破」
    だが、この長い時間が戦中戦後の時間の経過
    と変遷を味わうにはよりフィットするのかも
    知れない。芙美子忌は6月28日。

7/4mon
暁に僅かに僅かなれど喜雨
  (あかつきにわずかにわずかなれどきう)
   ※台風の影響で暑さをもたらした気圧配置が崩
    れ、雨模様の不安定な天気になった。文字通
    りの「喜雨」。西日本の豪雨の気配がないで
    もないが、当地当家の野菜、果樹にとっては
    喜雨だ。人間にとっても。

7/3sun
なお強き 膝をさすりて 半夏かな
  (なおつよき ひざをさすりて はんげかな)

7/2sat
半夏生 犬ともに我れ 脚強く
  (はんげしょう いぬともにわれ あしつよし)
   ※山登りなどには長くネックになっていた右膝
    が、この十年近く朝夕の平地歩行には悲鳴を
    あげず、持ちこたえている。幸い今に至って
    も平地に限れば2、3時間連続でも行ける。
    これも、臆病に無理を避けたこと、そして我
    が家の犬のお蔭だ。

7/1fri
街ゆがみ 夏の絵描くは ゆがむまま
  (まちゆがみ なつのえかくは ゆがむまま)
   ※都心の馴染みの通りもしばらく見ぬ間に変貌
    し、ニョキニョキと高層マンションとやらが
    両側に。不自然に見上げてやっと変化を知る。
    猛暑がその歪みを激しく助長する。

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