ダクタク句集2022年(令和4年)下期 自選集 [自選集2022]
12/31sat
行く年も走りおおせし鉄路あり
(ゆくとしもはしおおせしてつろあり)
さわし柿切れ干し柿を食らう暮れ
(さわしがききれほしがきをくらうくれ)
暮れなれど二人ポカンと映画見る
(くれなれどふたりぽかんとえいがみる)
歳晩に火鉢を出して非日常
(さいばんにひばちをだしてひにちじょう)
愚痴を言う大晦日にも三つだけ
(ぐちをいうおおみそかせにもみっつだけ)
※年内の仕事は最低限にして昨日までに終わっ
た。今日は心身ともに予備日? これが大正
解。それで句の方をちょっと棚卸し。暮れの
句を掃除し残った句を羅列する。
映画は「恋におちたシェイクスピア」、なぜ
かちゃんと通しでは見なかったヤツ。
12/30fri
煤払い終え扇橋の千代女かな
(すすはらいおえせんきょうのちよじょかな)
※先代入船亭扇橋の得意演目ではなかったよう
だが、古いテープで「加賀の千代女」を聴き、
いっぺんで好きになった。今その動画はアッ
プされていないようだ。
千代女の有名な句に「あさがおやつるべとら
れてもらひみず」がある。扇橋は落語界一の
俳句好きだった。
黒豆の出来は如何と長電話
(くろまめのできはいかんとながでんわ)
12/29thu
耕筰忌 からたちの花の 今やっと
(こうさくき からたちのはなの いまやっと)
※明治以降の日本の歌には、メロディの繰り返
しで1番2番ではなくて全曲流れるように一
つのメロディによるものが多い。
城ヶ島の雨(梁田貞)初恋(越谷達之助)小
諸なる古城のほとり(弘田龍太郎)などなど。
へたくそな私が歌えるようになるまで大いに
時間を要したが、その分味わい深い。当時は
一種の流行だったのかも。
12/28wed
海鼠腸を 食う人を見て 喜寿迎ふ
(このわたを くうひとをみて きじゅむこう)
喜寿の席 トンカツ食いて 見つめらる
(きじゅのせき とんかつくいて みつめらる)
生きるのみ 雨のあがりて 喜寿の冬
(いきるのみ あめのあがりて きじゅのふゆ)
※満77歳の誕生日を迎えた。祝いの宴で一席、
羞恥心を抑えて喜寿の3句。
12/27tue
極月や 火の用心の 江戸言葉
(ごくげつや ひのようじんの えどことば)
※年末は毎日夕方に「火の用心」の見回りをし
ている。最近はうるさいとかやめろとか一部
住民が反発する所があったらしい。なんとア
ホがいることか。
拍子木の音のあとに、「火の用心さっしゃり
ましょう」と粋な呼びかけをする人がいる。
ハハーンあの人だな。
12/26mon
歳末に 展望しえぬ 世事多く
(さいまつに てんぼうしえぬ せじおおく)
※メディアは一斉に年末モード。一年を振り返
り、翌一年をばっさりと展望する、・・・の
だが。展望と言える内容は少ない。
12/25sun
車椅子 押すは孫の子 クリスマス
(くるまいす おすはまごのこ くりすます)
手袋やクルマ待つ間の毛玉とり
(てぶくろやくるままつまのけだまとり)
※クリスマス光景点描。平和だ。
12/24sat
窓越しにダンス練習見る聖夜
(まどごしにだんすれんしゅうみるせいや)
※クリスマスめいたものは身辺にも近所にもな
いと思っていたが、そうでもない。
近くに越して来た中国人の中年独身男性がど
ういうわけか家にイルミネーションを飾って
いる。へえ・・と驚いて眺める。公民館のホ
ールでは練習か本番か・・・。優雅だ。
12/23fri
冬嵐 アクア通いの 医師休診
(ふゆあらし あくあがよいの いしきゅうしん)
名を聞きぬ 顔はメールで 冬の孫
(なをききぬ かおはめーるで ふゆのまご)
※安全を考えるときりがない。まして冬に生ま
れた初孫だ。
12/22thu
新聞を 素早く読みて 冬至かな
(しんぶんを すばやくよみて とうじかな)
さわし柿切れ干し柿を食らう暮れ
(さわしがききれほしがきをくらうくれ)
※12月はバタバタと忙しいとか、あっという
間だとかの声を聞く気はない。こう寒いので
は暖かい屋内でじっとしているにしくはない。
今日は冬至ではないか。
12/20tue
木枯らしや不意なる喉の内視鏡
(こがらしやふいなるのどのないしきょう)
※親しい友が甲状腺ガンで死んでから2年にな
る。こちとらも甲状腺ホルモン某の持病があ
る上に最近とみに喉元のところでミニトラブ
ルが起こる。美声もかすれることが多い。
呼吸器科に行って訴えた。心配を取り除いて
と。そしていきなりの内視鏡だ。結論は、
「きれいです。なんにもありません。あって
も年齢相応の嚥下トラブルでしょう」と。
12/19mon
サッカーは 冬の季語なり メッシ勝つ
(さっかーは ふゆのきごなり めっしかつ)
※アルゼンチン、PK戦の末に優勝。冬の季語で
ある所以はシーズン設定にあるだろうと想像で
きるが、この熱戦にはふさわしくない。手に汗
握る2時間だった。
12/18sun
年賀状仕舞いを告げて月下弦
(ねんがじょうしまいをつげてつきかげん)
※年賀状仕舞いとした。迷った。ここでも下りの
明確な階段を降りることになるのだぞ、と言い
聞かせる。
12/17sat
農道の一角カフェとなりて冬
(のうどうのいっかくかふぇとなりてふゆ)
※行ってみると洒落た料理をこざっぱりと提供
する、地元にはない店だ。この手の店が方々
に現れ、センスを感じながらも、音もなく
消えていく。お客は地方都市の若い女房連、
30km圏内、単価1500円で基本的にはゼロサム
ゲームである。逞しい例外もあるけれど。
12/16fri
木賃といふアパートの煤払い
(もくちんというあぱーとのすすはらい)
※周辺の他の物件に較べ、50年以上前に建て
られたもの。居住者がいっしょに大掃除して
いた。今どき貴重な光景。黒光りしている?
12/13tue
出勤は 冬夕焼け見て 深夜番
(しゅっきんは ふゆゆやけみて しんやばん)
人参のとれてシチュウに大切りに
(にんじんのとれてしちゅうにおおぎりに)
12/11sun
着ぶくれて 週末頼みの 吊り革に
(きぶくれて しゅうまつだのみの つりかわに)
※久々に「週末頼みの通勤」の感覚を思い出し
た。ところがちっとも苦ではない。
12/10sat
湯気の音 剃刀の音 昼下がり
(ゆげのおと かみそりのおと ひるさがり)
※馴染みの床屋の主人がなくなり、そのまま閉
店。ずっと近くの格安店に行った。料金はほ
ぼ半分、時間は1/3、「どうしましょう」以
外無言、悪くない。
12/9fri
十二月 火星いざよふ 月を待つ
(じゅうにがつ かせいいざよう つきをまつ)
※18時前の散歩のときに十六夜の月が山の端
を離れた。行く先には火星が待っている。見
事な月だが、なかなか火星に追いつけない。
さて、このレース、今夜はどうなるか?
12/8thu
滑子汁 ふうふうする間の 香りかな
(なめこじる ふうふうするまの かおりかな)
※寒さはなかなか戻らないなと嘆いている間に、
これが平年並みとなってしまう。とにかく暖
かい部屋、熱いものが欲しい。
12/7wed
神無月 四万人を 呼ぶ娘
(かんなづき よんまんにんを よぶむすめ)
※先月初旬あいみょんがワンマン・ライヴで甲
子園球場を札止めにした!! よく知らない
歌手、二三度聴いたことはある。とても信じ
られないペンライトの波また波。
12/6tue
モーツァルト忌 朝一番で ジュピターを
(もーつぁるとき あさいちばんで じゅぴたーを)
※季語にモーツァルト忌というのがあると知っ
た。やや異様な感じがするが、せっかくだから
交響曲第41番で記念日(の一日遅れ)を刻む
ことにした。
12/5mon
戦ありて 落ち葉の上に 松落葉
(いくさありて おちばのうえに まつおちば)
※公民館、集会所の大掃除。こういうのをしっか
りやるのが、シニアの役目だと少しは認識して
出かける。それにしても外の作業は今日あたり
かなり酷だ。彼の地では、寒さの酷さを知る者
が寒さ攻めにしている。
12/3sat
初炬燵 文庫本にて 漱石を
(はつごたつ ぶんこぼんにて そうせきを)
※昨日今日一段と冷え込む。リビングにコタツと
いうのは今まで避けてきたが、もうこの歳、そ
んなことは言っていられない。
12/2fri
大どれの大根 店を攻略す
(おおどれのだいこん みせをこうりゃくす)
新聞は 瑣事のみ多く 日向ぼこ
(しんぶんは さじのみおおく ひなたぼこ)
※ネットを初め情報過多の今日では新聞の位置も
難しい。ヘッドラインはとっくに知られている
し、深掘りするにしても対象の選択は読者によ
ってことなる。全方位型になると、瑣事の羅列
となりかねない。購読料を払っているので目を
通さざるを得ない。半ばいやいやだ。家内はチ
ラシ以外殆ど読まない、はっきりしている。こ
れがうらやましい。
12/1thu
干し柿の 遅れて吊るす 十余り
(ほしがきの おくれてつるす とおあまり)
※日々の瑣事のみで静かにしていると12月の到
来に感慨はない。しかしこの日長いこと途切れ
ていた友人とのメール交換が出来て、これから
年末の幸いなる予感がする。
**********
11/30wed
小春日の港に人のいぬ無残
(こはるびのみなとにひとのいぬむざん)
※カップル観光客の聖地になりかけた木更津港
をまたぐ中の島大橋も人っ子ひとりいない。
海と港を見渡す昔日の静けさと言えないこと
もないが、今度は船が断然少ない。
11/28mon
朝刊の 読めぬ昏さや 時雨雲
(ちょうかんの よめぬくらさや しぐれぐも)
※いやでも冬の到来を感じた朝。真っ黒な雲が
空を覆い続けた。寒さもひとしお。
そうだ、コタツを作ろう。
11/27sun
冬めく日 自宅待機とやらでいる
(ふゆめくひ じたくたいきとやらでいる)
※ゼロコロナ目標ではないから、濃厚接触者の
更なる探索はしていない。しかしそれに準じ
た注意喚起はある。その筋から「自宅観察・
外出自粛」の要請があった。感染ルートは仄
めかす程度で、最後に「通常の日常対策で十
分です」とも。それなら言って来るな、と思
ったが。
11/26sat
曲りても 玉葱の苗 植え終わる
(まがりても たまねぎのなえ うえおわる)
※早生の苗を植えたところで雑事が増えたため
一休み。今回で予定した苗は全部植え終わっ
た。鉛筆の木軸ほどの太さの葉鞘が望ましい
というが苗の調達段階でそれは挫折する。そ
んな立派な苗ではない。黒マルチは使わない。
11/25fri
ワクチンの五回目 初冬の静寂
(わくちんのごかいめ しょとうのせいじゃく)
※集団接種会場で粛々と済ませた。慣れて哀し。
11/23wed
冬の日や事故せし妻の帰宅かな
(ふゆのひやじこせしつまのきたくかな)
事故調書自署なめらかに石蕗の花
(じこちょうしょじしょなめらかにつわのはな)
冬夕焼け惑い長きに見ずに果て
(ふゆゆやけまどいながきにみずにはて)
11/22tue
剪定の音続きたり冬支度
(せんていのおとつづきたりふゆじたく)
バサと落ち研ぎ手の腕を暮れに聞く
(ばさとおちとぎてのうでをくれにきく)
※11月恒例の垣根の刈り込みだが、近年は次
第に億劫になりつつある。着手せずに、今日
は刃物の研ぎ日とか勝手に決めて一日延ばし
にする。
11/21mon
テレビ電話互いに冬の身づくろい
(てれびでんわたがいにふゆのみづくろい)
三の酉あり火の用心と時候言い
(さんのとりありひのようじんとじこういい)
11/19sat
保母開ける窓少しだけ冬はじめ
(ほぼあけるまどすこしだけふゆはじめ)
※コロナ渦で換気は怠れない、しかい今朝の風
はつめたい。この前までのゆったり換気があ
っという間に冬の光景に。
11/18fri
雨音は幻聴 小春の日の朝
(あまおとはげんちょう こはるのひのあさ)
犬こばむ 晩秋日々の同じ道
(いぬこばむ ばんしゅうひびのおなじみち)
※5回目のワクチンを打ってきた。集団接種会
場では打つ人も迎えるスタッフも粛々と仕事
をこなしている印象。結構な形の雲が面白お
かしく晩秋の空を飾っているのに、ワクチン
接種にかくも馴れ切ってしまうとは・・・。
11/17thu
顎引いて 若く撮れると 秋の宿
(あごひいて わかくとれると あきのやど)
※小人数で近場の温泉郷に。家族外の同伴者と
の宿泊は何年ぶりか? もちろん恐る恐るの
出立だったが、ホテルに着いて湯に入って酒
が入れば・・・もう心配は雲散霧消。これが
いけない。
11/16wed
月島の 路地に山芋 並べあり
(つきしまの ろじにやまいも ならべあり)
病葉や 柿のヘタ虫 駆除を聞く
(わくらばや かきのへたむし くじょをきく)
11/15tue
秋フェスタ 膝をさすりて 餅の列
(あきふぇすた ひざをさすりて もちのれつ)
※農協の収穫祭と言えどもフェスタと称する。
一番人気はつきたての餅の販売だ。列のすぐ
そばで絶えずついてこねて・・・。
11/14mon
孫自慢 歴史好きだと 葛の花
(まごじまん れきしずきだと くずのはな)
※シニア同士の話題は、結局は子と孫と病気の
自慢に落ち着く。幸いコロナ禍のせいで、聞
く被害からは遠ざかっていたが、ぼちぼち再
開の気配だ。
11/12sat
お十夜といふを知りてぞ喜寿の坂
(おじゅうやというをしりてぞきじゅのさか)
※もうひと月余りで満で喜寿の歳を迎える。関
西で主に浄土宗の仏事として十夜法要という
のがある。「現世で十日十夜善いことをすれ
ば・・・」という、これからでも間に合う、
ドロナワOKの教えらしい。すがりたい気持
ち?あります。
11/10thu
喜寿の日に 会社退けりと 星月夜
(きじゅのひに かいしゃひけりと ほしづきよ)
※会社生活を終える感慨はその長さによるので
はなかろうが、恵まれてかつ望まれて勤務を
続けられたことは幸せなことだと思う。お疲
れさま。
11/9wed
橡餅を 目指し竈に 火をくべぬ
(とちもちを めざしかまどに ひをくべぬ)
子が可愛 鴉が泣きて 秋澄めり
(こがかわい からすがなきて あきすめり)
蚯蚓鳴き 酒も喉越し 緩やかに
(みみずなき さけものどご しゆるやかに)
※絵画教室の例会で先生が来ない。一番熱心な
のに。何度電話をしたのに出ない・・・。も
しかして? 彼女は80歳台中盤、一人暮ら
し。終わるころ、ひょっこり顔を見せた。
スマホ持たずに出先で一時間以上も立ち話と
か。帰宅して着信の多さにびっくり。
11/6sun
秋の空 数合わせ気味の 守備位置に
(あきのそら かずあわせぎみの しゅびいちに)
フェスなるも 法被が主役 いわし雲
(ふぇすなるもはっぴがしゅやくいわしぐも)
※地域の蘇生と祭りのリベンジなど思惑が交錯
しても、お天気には恵まれた。若手のエンジ
ンに少しでも火がつくか?
11/5sat
ナレーターの 声ゆったりと 古都の秋
(なれーたーの こえゆったりと ことのあき)
※養老孟司の愛読者、ファンではないが、彼と
鎌倉を描いたBSシリーズ番組は好きだ。鎌倉
への対し方、愛し方は大好きだし、それ以上
に断然妬ましい。
11/4fri
ミサイルと 地震頻りに 夜長とて
(みさいると じしんしきりに よながとて)
合唱の 女史再デビュー 雁渡る
(がっしょうの じょしさいでびゅー かりわたる)
※地域の活発な女性陣、鳴りを潜めていたが、
この週の各種催しから息を吹き返した感があ
る。その昔のお局さんも加わる。
11/3thu
死ぬまでの 替え芯ありて 文化の日
(しぬまでの かえしんありて ぶんかのひ)
※シャープペンシル用に替芯0.5mm,2Bを取り
寄せた。普通の店にはないから少し多めに3
ケースを買った。それ以来ではないが、次第
に字を書くことは少なくなった。書く機会が
減ったのと、PC,スマホのせいだ。
一生懸命毎日書くようにしているが・・・。
国宝を みな見せるとぞ 文化の日
(こくほうを みなみせると ぞぶんかのひ)
11/2wed
城下秋 旧町名を 音に読む
(じょうかあき きゅうちょうめいを おとによむ)
※全国の城下町共通の、それらしい町名にはど
うも馴染めない。大手町、馬場町、鍛治町、
本町、寺町等々。せっかくのユニークな町名
があったのに。ちなみに生まれた町の名は融
通寺町。近くに桂林寺町。
11/1tue
畳織る 今年のイグサの 香りかな
(たたみおる ことしのいぐさの かおりかな)
※7月までに収穫するイグサは油の処理、形状
不良の厳しいリジェクトなどを経て、秋に
「織り」が本格化し畳表となる。
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10/31mon
友の待つ 広き階段 見上げ秋
(とものまつ ひろきかいだん みあげあき)
※立派な階段、踊りがあって、また階段が。彼
はどうやって登ったのかな? そう、エレベ
ーターがあるのでは? ・・・もう遅い。
お隣の シュウメイギクの 揃い踏み
(おとなりの しゅうめいぎくの そろいぶみ)
10/30sun
秋の夜のライン顔見し黙しおり
(あきのよのらいんかおみしもくしおり)
※ラインが開通して初めて友人と顔を見ながら
の会話を始めた時、相手がふっと押し黙った
時があったならよーく考えた方が良い。相手
は対面会話に感激したのではなく、こちらの
顔の想像以上の老け込みに唖然として息を吞
んだのだ。毎日見ている顔では気づかない老
けの大きな溝がある。きっと。
10/29sat
杜鵑草 思い出しつつ つい疎遠
(ほととぎす おもいだしつつ ついそえん)
※こんな時だからこそ親しい友人とはせめて連
絡を保ちたい。遠隔での連絡手段が一般的に
なっているとはいえ、ついその一歩が出ない
ことも。
10/28fri
文化祭 準備を仕切る 嗄れ声
(ぶんかさい じゅんびをしきる しゃがれごえ)
白マスク白髪が秋の草むしり
(しろますくしらががあきのくさむしり)
※いくらなんでも俺は公民館の世話にはならな
い、とイッパシの口をたたいていた男が、ど
っぷりとは言わないまでも文化祭などの活動
に参加している。アアとため息も出るが、同
じ年代の人たちが手練れのエースである。
10/26wed
介護する 合間の絵筆 いわし雲
(かいごする あいまのえふで いわしぐも)
※絵仲間の女性は80歳で介護の仕事をしてい
る。絵教室も遅刻早退で忙しい。肝心の絵は
あっさりしていて外連味がない。ごてごて塗
りたくるコチトラは感心しきり。
10/25tue
公園に シニア週一 落葉掃き
(こうえんに しにあしゅういち おちばはき)
※町内の道路、公園などの清掃はシニアの無償
の労働に負っている。老人会、誘われたこと
もない。とか言っているうちに10年近くだ。
10/24mon
イチジクの 絵にむらさきの 熟したり
(いちじくの えにむらさきの じゅくしたり)
※当地の文化祭に仲間と水彩画を出展すること
になった。いつもは間際に非才さを嘆くのだ
が、今回は秋の野菜や果物をうまく描けた。
それがどこであれ衆目に晒すというのは大変
なことで、実はかなりホッとしている。
10/23sun
さつまいも 半分掘って 虫の里
(さつまいも はんぶんほって むしのさと)
※関東南部は曇り日と雨天続きで日照時間が極
端に少なかった。もう少しかな?と残してお
いたサツマイモは意図せざる放置でどうなっ
ていることやら。気をもんでいる。
10/22sat
教師褒め 親父酒出す 秋の夕
(きょうしほめ おやじさけだす あきのゆう)
※この句は8/5の
「ほろ酔いの 教師は黒く 大夕焼」
と同じ思い出につながる。中学校の事務の先
生が帰途に我が家に寄って、私の部活の充実
ぶりを褒めていった。
誰も覚えていないかもしれないが、テニスと
タバコと酒が大好きな、しょうもない先生。
俺は好きだったよ。
10/20thu
欅 自らなる形 秋に満つ
(けやき みずからなるかたち あきにみつ)
※散歩ルートにある3本のケヤキ。紅葉、落葉
前の今、一年の成長を全身で現わしているよ
うに思われる。何の変哲もないケヤキなのだ
が、一年の成績は5だなと思う。
10/19wed
秋冷えて 昨夜は風呂に 入りしかと
(あきひえて さくやはふろに いりしかと)
※実はよくある話。もっと寒くなると毎晩風呂
に入るが、多少肌寒くなっても風呂は二日に
一度、もう一日はシャワーで済ます。済ます
というより、のんびり・ゆったりかつ気軽な
シャワーが好きだ。それで掲句のような疑問
が湧き出る。ボケのせいではない証拠にかな
り以前からのことなのだが。
10/18tue
児童向け 大きな字読む 良夜かな
(じどうむけ おおきなじよむ りょうやかな)
※図書館にはシニア向けに大文字本が用意され
ているが、その分がさばるので敬遠していた。
この前借りてきた季語写真集は親切な内容で
わかりやすく気に入っていたら、中高生向け
の児童図書とあった。
10/17mon
柿の実や 製材所の お茶時間
(かきのみや せいざいしょの おちゃじかん)
※当家の一本の柿の木は今年お休み。数少ない
実が殆ど7月までで落果した。周期的な不作
なのか、以前のようなヘタ虫の被害か、今の
ところ不明。
10/16sun
リヤカーに 子と芋と鍋 芋煮行
(りやかーに こといもとなべ いもにこう)
※町内の親しい母親仲間が集まり、日と持ち寄
りを決め、一切合切を積み込んで、町中から
郊外の広い河畔の湧水場まで歩いていく。小
一時間ほどもある女集団のおしゃべり付きの
移動だ。今なら目立って、鼻つまみにもなろ
うが、当時はなんとも街の光景になじんでい
た。行った先は天国、おしゃべりと芋煮。息
抜きと骨休め。
10/15sat
垣を剪り 果樹には秋の お礼肥
(かきをきり かじゅにはあきの おれいごえ)
※金木犀も大方花を落としたし、少ししたら一
年分の丈を詰める。秋の作業の一つ。
10/14fri
涼気早や 寒気となりて 坂の家
(りょうきはや かんきとなりて さかのいえ)
※挨拶は寒いですねに変わった。坂の中途から
見下ろす夕方の光景は光を失って空も地も鈍
色。
10/12wed
長身の 荷風が覗く 路地の秋
(ちょうしんの かふうがのぞく ろじのあき)
※YouTubeの朗読で荷風の「日和下駄」「濹東
綺譚」を聞く。朗読で扱われているものの中
では長い方、後者は3時間余りだ。しかし、
いずれも以前に読んでいるので、歩きながら
でも気軽に聞ける。細部は聞き流しても、む
しろ荷風文章の達者なリズムが味わえる。
10/10mon
竿売りの 音高らかに 刈田道
(さおうりの おとたからかに かりたみち)
※その道は行き止まりだよと言ってあげたかった
が、農道をまっすぐに行く。テープの音が両側
の小高い丘に反射するようだ。ナビ圏外の小道。
あの手の軽トラのセールスは多分地の人ではな
い。大量に安く仕入れて、県を跨ってでもひた
すらに売り歩くと聞いた。
10/9sun
栗名月 雲の間にこそ 香りあり
(くりめいげつ くものまにこそ かおりあり)
※ここ数日の曇天に半ば諦めていた十三夜、厚か
った雲が夕方にかけゆっくり薄くなり、格好の
名月待ちとなった。
客なくて 金木犀の 盛りかな
(きゃくなくて きんもくせいの さかりかな)
10/7fri
コスモスや 犬に拒まれ 花の道
(こすもすや いぬにこばまれ はなのみち)
※異常な寒さに我が家の犬はより元気になる。や
や夏バテ気味の頃散歩を短縮して来のこと、今
日その道に拒否権を発動した。
10/6thu
鰯雲 静かがよろし スピーカー
(いわしぐも しずかがよろし すぴーかー)
※市がつけている広報スピーカー。防犯上の注意
喚起や気候情報がメイン。不審者、詐欺電話情
報、大雨や強風注意、警報、行方不明者捜索な
ど幅広い。この季節に多いのが有害鳥獣駆除実
施のお知らせ。等々。
良く聞こえないという人も多い中で、近い人々
は音の大きさに頭を抱えている。いずれにして
も静かがいい。使わないで済むような。
10/4tue
露草や林間一帯を領す
(つゆくさやりんかんいったいをりょうす)
※この光景は昨年まではなかった。一年草と言わ
れる露草が辺り一面をわがもの顔に青い花を散
りばめている。
10/3mon
クラス会 秋集合は 動物園
(くらすかい あきしゅうごうは どうぶつえん)
※ミニクラス会を3年ぶりにやろうということに。
年末年始の危険、風邪とのダブルパンチ、第8
波だってこわいが・・・。慎重派と決行派、間
をとってなるべく速やかに、ということになっ
た。動物園の後は谷中に降りて一散歩、店に急
ぐことに。
10/2sun
牛乳で コーヒー飲む癖 今朝の秋
(ぎゅうにゅうで こーひーのむくせ けさのあき)
※コーヒーファンを自認して小うるさいことを
言っていたのも今は昔。一日に一杯とする必
要があり、その貴重な一杯を朝食の牛乳にイ
ンスタントコーヒーを入れたことが運の尽き。
「おや、おいしいねえ」となった。
10/1sat
法要の 客と出会いぬ 風蝶草
(ほうようの きゃくとであいぬ ふうちょうそう)
※喪服の3人と出会った。理容店主の四十九日
とわかった。故人は8月の暑い盛りに逝った。
残暑が厳しいといわれていたが、台風と大雨
が列島を翻弄している間にすっかり例年並み
の気温になった。涼しい天国に早く来過ぎた
と思っているかもしれない。
**********
9/30fri
秋西日 茶筅日向に 干されあり
(あきにしび ちゃせんひなたに ほされあり)
四方から 今ぞ今ぞと 虫の闇
(しほうから いまぞいまぞと むしのやみ)
9/29thu
野分去り 他家の毬栗 数えけり
(のわきさり たけのいがぐり かぞえけり)
秋場所や 初老力士の 力こぶ
(あきばしょや しょろうりきしの ちからこぶ)
※台風後の散歩、俳句作り、九月場所テレビ桟敷
そして草むしりか、九月もすっかり年寄りの種
目で終わりそう。
9/28wed
国葬の過ぎてボートは生き返り
(こくそうのすぎてぼーとはいきかえり)
※総意とは何だろう? 総意とは言えないけれど、
本来は総意となってすべきことを識り重視し、
右顧左眄せず突き進んだ・・・安部元総理の業
績だと思う。右っぽいとか言われそうだが。
9/27tue
さびしいね大変ねとぞ彼岸過ぎ
(さびしいねたいへんねとぞひがんすぎ)
※友人は男一人住まいの後期高齢者。都心でもさ
まざまに支援の手、声掛けがあるという。しか
しこの手の言葉は慰めにもなんにもならない、
と友人は苦笑。そこまで落ち込んでいない、と。
彼は175センチを超える偉丈夫である。
9/25sun
今朝の秋 呉服店主の 紺の足袋
(けさのあき ごふくてんしゅの こんのたび)
※後ろに土蔵の蔵屋敷を構えた呉服商店。商売
は今や細々とらしい。足袋の裏は白い。
9/24sat
かすかなる 踏切の音 自在秋
(かすかなる ふみきりのおと じざいあき)
※台風が近くを通過している深夜、強風の合間
に近くの踏切の音が聞こえる。かすかだが。
耳が良いせい? 年齢と鍛錬?のせいで好き
な音を自由に呼び起こすことが出来るように
なった。この時間にローカル線が走るわけが
ない。
9/23fri
短めの 形見の杖で 彼岸まで
(みじかめの かたみのつえで ひがんまで)
秋彼岸 風に戦の末予感
(あきひがん かぜにいくさのすえよかん)
※戦争、内外国葬2題、インフレ・経済、災害
・・・落ち着かないこと限りないが、これも
聞こえ過ぎ、情報化社会故の不幸かもしれな
い。どこかで分水嶺を越えてすうーっと静か
になることもある。それが秋分の日。
9/22thu
風の盆 男踊りは 空を切り
(かぜのぼん おとこおどりは くうをきり)
※今月初めの富山八尾町、越中おわら節のお祭
り「風の盆」。この旋律と踊り、何故こんな
にも哀切極まるものが生まれて、かつ継がれ
ているのか? みんなで踊るのと、保存会の
踊りを静粛に大事にただ眺めるのが並行して
あるからなのかな?
9/21wed
木彫師 師の師は光雲 いわし雲
(もくちょうし しのしはこううん いわしぐも)
※内房の小さな街に住む木彫師は高名な名前を
口にする。僅かに「知ってる?」という気分
が漂う。例の野猿像どころか最近は彫りたい
ものとは無縁であると残念がる。
9/19mon
子規忌なり 少し老けたと 言いにけり
(しききなり すこしふけたと いいにけり)
下弦なる 月確かめて 敬老の日
(かげんなる つきたしかめて けいろうのひ)
※浮遊する敬老の日は今年子規忌と同じ19日
になった。その業績から子規翁と呼ばれるこ
とも多いが、亡くなったのは35歳。
9/18sun
街なかで 熊除けの鈴 秋まみれ
(まちなかで くまよけのすず あきまみれ)
※無人を思わせる団地の静謐を破って鈴の音が
聞こえる。日曜日の住人が無聊に任せてスピ
ーカーで流しているのではない。
9/17sat
秋の日やメインツリーは果樹となる
(あきのひやめいんつりーはかじゅとなる)
※ガーデニング風に言えば、我が家のメインツ
リーはモモ、ブドウ、柿の3本。今年の成績
を言えばいろいろあるが、後期高齢者の思い
込みは安定していて、功が拮抗している。
9/15thu
よろず屋にバス待つ人の宿場町
(よろずやにばすまつひとのしゅくばまち)
街なかに街道ありて秋夕暮れ
(まちなかにかいどうありてあきゆぐれ)
※米を収穫して現金収入を手にした農家にとっ
て一年で一番豊かさを感じる季節だ。思い切
って遠出して温泉で骨を休めたり、近くの街
に買い物に出たり。小さな商店街のある街ま
では多くはバスで行きかえりだ。日常使いの
品ではなく、好きな品を既に考えてある。
小さな街の小さな商店街。一日声があふれる。
9/14wed
秋の日強し団地音一つなし
(あきのひつよしだんちおとひとつなし)
※こんな音のない風景はミステリー映画の撮影
に使えるのでは?なんて思いがうかぶが、今
やこうしたシーンは全国に溢れ、履いて捨て
るほどある。洗濯物のそよぎが「使用中」を
示す。
9/13tue
無人駅の読書 針の進む音
(むじんえきのどくしょ はりのすすむおと)
※こんな静かな無人駅があるところは貴重かな?
いまどきは遠隔で音声案内がある。
9/11sun
耳元で癌を語りて夏に逝く
(みみもとでがんをかたりてなつにいく)
ワケギ好き冷凍を説く床屋あり
(わけぎずきれいとうをとくとこやあり)
※仲の良かった床屋の親父が死んだ。3年近く
の肺ガンとの闘いの末である。なにをさせて
も執念とこだわりの強い人だったから、ゆっ
くりした床屋タイムの話はいつも楽しみだっ
た。合掌。
9/10sat
名月もかすむ蝮の噂かな
(めいげつもかすむまむしのうわさかな)
※見事な名月。さすがに。見えすぎなくらい。
9/7wed
我慢して 追肥をかてに 秋茄子
(がまんして ついひをかてに あきなすび)
※9/7泉鏡花の忌日。代表作以外は読むことのな
かった作家だが、ネットの朗読に親しんで鏡
花も三つほど聴いた。いずれもスマホのおか
げ、YouTubeのおかげ、ヒマのおかげ。鏡花
との距離が随分縮まった。
9/6tue
稲刈り機揺られウクライナのことを
(いねかりきゆられうくらいなのことを)
運転は孫に勝りて刈田かな
(うんてんはまごにまさりてかりたかな)
一族も郎党もいず刈り終わる
(いちぞくもろうとうもいずかりおわる)
稲刈りてデータを入れる月明かり
(いねかりてでーたをいれるつきあかり)
9/5mon
カタロニア 野の鳥を見る 善衛の忌
(かたろにあ ののとりをみる よしえのき)
※少し左派がかった元日本ペンクラブ会長堀田
善衛が亡くなったのが1998年9月5日。
スペインアスツゥリアスとカタロニアに合わ
せて5年近く住んだ作家である。著作も多い。
小生がスペインオタクになった機縁である。
野の鳥はピースピースと鳴く、とカザルス。
9/4sun
飴色の ぶどう袋に 妻方々
(あめいろの ぶどうふくろに つまほうぼう)
※甘くはありませんがとお裾分けするが、おい
しかったと言ってくれる人もいる。高級品が
多い最近では昔のぶどうの味でなつかしかっ
たという感想かな?
9/3sat
剃りたての 頬を撫でつつ 桐一葉
(そりたての ほほをなでつつ きりひとは)
※例年より低い気温が続く。台風は沖縄県先島
近辺で停滞の後東北に動き始めた。
朝に切る ぶどう三房を 仏前に
(あさにきる ぶどうみふさを ぶつぜんに)
9/2fri
近道の 秋灯の家 時計鳴る
(ちかみちの しゅうとうのいえ とけいなる)
※やっぱり昭和か?ちょっと古めの時計の音が
聞こえた。窓に映る灯りも古めの暖色系だし、
新しい家にしてはやや奇々怪々。
9/1thu
度を重ね 二百十日の 俄雨
(どをかさね にひゃくとおかの にわかあめ)
小椋鳥 夕立家に 帰りかね
(こむくどり ゆうだちいえに かえりかね)
※ムクドリは常に群れで行動するのに、突然の
激しい雨に打たれ、一羽が木の根元に取り残
された。いつもは群れの旺盛な動きに舌打ち
することもあるが今日の姿はほんの小鳥だ。
**********
8/30tue
秋の風来て花痩せしサルスベリ
(あきのかぜきてはなやせしさるすべり)
露草や 初お目見えの 庭の朝
(つゆくさや はつおめみえの にわのあさ)
※曇り日が続いたのち昨日今日は一段と涼しい
日。夜の気温が20度を切ると涼しいから一
気に寒いへ悲鳴に変わる。庭の草の中に露草
発見! 25年来、我が庭で初めて。
8/28sun
秋と聞き 山門今日は 中に入る
(あきときき さんもんきょうは なかにいる)
眼鏡かえ スマホで秋の 季語一つ
(めがねかえ すまほであきの きごひとつ)
8/27sat
夏豪雨 気圧配置の 骨身まで
(なつごうう きあつはいちの ほねみまで)
※秋田、山形、新潟を中心に、この夏豪雨の被
害が広がった。気圧配置の固定化と前線の居
座り、線状降水帯の連続発生等によるものだ
った。一週間ほど前からの事前の予報の通り
であったが、それでも被害は甚大なものに。
8/25thu
眠らねば 班増えるとて 晩夏かな
(ねむらねば はんふえるとて ばんかかな)
譲られし 苗のトマトの 味野生
(ゆずられし なえのとまとの あじやせい)
8/24wed
少年の目に父祖の地よ盆地秋
(しょうねんのめにふそのちよぼんちあき)
※8/23は白虎隊の日、自刃した日。その場所飯
盛山からは砲煙にかすむ城下だけでなく会津
盆地の初秋の景色が広く見えただろう。命全
うすればもっともっと馴染んだはずの故郷の
景色が。
8/22mon
朗読の声朝に聞く邦子の忌
(ろうどくのこえあさにきくくにこのき)
※8/22は向田邦子忌日。YouTubeの朗読物は特に
この1,2年で優良コンテンツが激増してい
る。中でも人気を博しているのは、明治以降
の大作家連の短編と向田邦子のドラマものだ。
わかるような気がする。
8/21sun
三代の 球児いよよの ガッツあり
(さんだいの きゅうじいよよの がっつあり)
※夏の甲子園も決勝を残すのみ。東北勢同士の
決勝を夢見たが、まあ仙台育英の優勝が実現
すれば大殊勲だ。
8/19fri
つかまらせ 花緒をすげる 秋めく日
(つかまらせ はなおをすげる あきめくひ)
※当地はからっとした天気。こんな日はあらぬ
ことを幻のように想像してみたい。下駄ばき
で鼻緒が切れて困っていた少女がいた・・・。
8/18thu
対策の 水を飲みつつ 白槿
(たいさくの みずをのみつつ しろむくげ)
溶接工 腕さえわたる 盆の明け
(ようせつこう うでさえわたる ぼんのあけ)
※60歳を超えて所属した会社で一緒だった人
と偶然会った。何年ぶりか? 溶接工のキャ
ップを務めていた名人、その腕の変わらぬ自
信はほんの2,3言でわかる。
8/17wed
葡萄一房光を貯めて下がりおり
(ぶどうひとふさひかりをためてさがりおり)
※不順な気候の中で、我が家の名もないぶどう
は大奮闘。例年より遅れ気味だがより多くの
房をつけている。緑色の固い粒々が次第に飴
色に、光を通すようになってきた。早いヤツ
をつまみ食い出来るのがこの時期の無上の喜
び。
8/16tue
学徒兵命全うすれば夏
(がくとへいいのちまっとうすればなつ)
※学徒の繰上げ卒業にまつわる事実が新たにわ
かったことを伝える特別番組を見た。決然と
出陣式で雨中行進をした人たちの中で、なお
多くの若人が戦地に行かなくても済んだこと
を知る。
8/15mon
逢ひとふて 驟雨疾走 孫産まる
(あいとうて しゅううしっそう まごうまる)
※姪夫婦に待望の初孫ができた。日頃冷静な二
人だが、狂喜して病院に向かう。
8/14sun
嵐去る 盆の街角 見渡しぬ
(あらしさる ぼんのまちかど みわたしぬ)
久闊の 言葉探して 盂蘭盆会
(きゅうかつの ことばさがして うらぼんえ)
年寄りて 盆にことなし 風の音
(としよりて ぼんにことなし かぜのおと)
8/13sat
盂蘭盆会 レーダーで追う 故郷の雲
(うらぼんえ れーだーでおう くにのくも)
※スマホでPCで現在地以外の地域の天気、雨
雲レーダー、災害可能性や警報・注意報のチ
ェックが容易にかつ即座に出来る。
必要があればそのまま即電話でコンタクトを
とる、地域のメディアにアクセスをすること
も可能だ。通信とデータ送受の革新は急速。
しかし自然の猛威を前にして、出来ることは
限られる。これは変わらない。
8/12fri
調律の 待たれる頭 炎天下
(ちょうりつの またれるあたま えんてんか)
起動時の 膝の重さよ 秋立ちぬ
(きどうじのひざのおもさよあきたちぬ)
※朝起きがけの膝の重さは老化速報。一年後の
歩行能力を知ることが出来る。そう思う。ほ
んの5~10歩で重さは消え、快調になるの
だが。PCのように再起動で問題解決、とは
いかない。立秋、しばらくは残暑、その後は
確実に秋、着実に老化。
8/11thu
高山病 肩の小屋にて 米を炊く
(こうざんびょう かたのこやにて こめをたく)
※若い頃4月に連休を待ちきれず、登山に出か
けた。槍沢小屋を朝に出て槍ヶ岳を目指すシ
ンプルな計画。ただ積雪は多く、ジグザグの
登りが最後まで直登となる。登りの残り1/4
くらいのところでガタンと体力が落ちた。
先に着いて小屋で寛ぐ人の姿がはっきり見え
るところだった。そこからなんと2時間強か
かったのだ。1時間半はその場所でストップ。
動けない。好天で良かった。50年前のこと。
今では最高の思い出。今日は「山の日」とか。
8/10tue
眼前は 水被る稲 晩夏光
(がんぜんは みずかぶるいね ばんかこう)
※東北北部に豪雨被害が続いている。当地は暑
さ続きで、盆明けの稲の刈入れを前にしてい
る。とんでもない違い。
8/8mon
小型船 夏のくらしの 音がもれ
(こがたせん なつのくらしの おとがもれ)
※くらしの音と問われたら、NHKラジオの正午
過ぎ「昼のいこい」のテーマと答えるかもし
れない。木更津港に係留している小型鋼船の
一つからこれが聞こえた時、ジーーンときま
したね。
8/7sun
白球の清涼と女子のブラスよ
(はっきゅうのせいりょうとじょしのぶらすよ)
※夏の甲子園開幕。観客、応援団を入れての試
合は一層熱が入る。それにしても応援席は女
性上位だ。チェアガールにブラスバンド、女
子は皆余裕たっぷり、笑顔がこぼれている。
お付き合い参加ではない。
がしんたれ強豪以外よ暴れたれ
(がしんたれきょうごういがいよあばれたれ)
※大阪桐蔭、何馬身か空いて智弁和歌山等々下
馬評はどれも関西勢優位のよう。
8/6sat
原爆忌 乞ひ願ふこと 今多く
(げんばくき こいねがうこと いまおおく)
母削る 鉛筆が誇り 原爆忌
(ははけずる えんぴつがほこり げんばくき)
※今でも当時母が毎晩削ってくれた鉛筆のカッコ
良さは周囲を寄せ付けなかったと思っている。
ちなみに、幼少時代の私は暴れたら手が付けら
れないと匙を投げられた挙句、家の中で「原爆」
と呼ばれていた。
8/5fri
ホーン越し やや声低く 大暑かな
(ほーんごし ややこえひくく たいしょかな)
上向いて ヴィーナス夏の かんばせを
(うえむいて びーなすなつの かんばせを)
揺らぐごと 雲海に浮く 肩の小屋
(ゆらぐごと うんかいにうく かたのこや)
8/4thu
外人の 教師が走る 夏の朝
(がいじんの きょうしがはしる なつのあさ)
※オーストラリア出身の幼稚園の外人先生が走
る。いつも遅れてくるようだ。おはようござ
いますと挨拶する表情はいつも照れている。
大きい幼稚園は差別化の目玉として英語教育
を掲げる。ネーティヴの先生がいますよとい
うわけだ。しかしそれ以外の仕事もなんでも
やらされるみたい。園児を乗せたバスが着く
と、にこやかにお迎えする。到着園児の顔、
人数、バスの座席点検・・・朝から大変だ。
8/3wed
潮干狩り 一坪ほどが わが漁場
(しおひがり ひとつぼほどが わがりょうば)
※海上は風通し万全だけれど、アサリを求めて
さまようと予期せぬ密にもなりかねない。そ
れで「動き回らないで」とスピーカーが。マ
スク着用の注意はないが、しっかり着けてい
る人が多い。もう今年は終わり、死なないで。
8/2tue
ほろ酔いの 教師は黒く 大夕焼
(ほろよいの きょうしはくろく おおゆやけ)
※部活の指導を終えた教師は自転車でいち早く
ご帰還。近くの一杯飲み屋に駆け込む。真っ
赤な顔で家に向かう頃、生徒たちに会う。そ
して「おう、気をつけて帰れよ」と。自転車
はすでにふらふら・・・。世の中がすべて今
より寛容な時代。
8/1mon
雨音は 夢か幻聴 蝉しぐれ
(あまおとは ゆめかげんちょう せみしぐれ)
※深夜確かに雨音を聴いた。朝になってあれは
雨でなかったとがっかりすることのないよう
に、寝床でしっかり耳をそばだてた。しかし
朝がっかりした。余計落胆した。降雨のシル
シは露ほどもない。
今朝はほんのちょっとだけど涼しいが、これ
ぞ降雨のシルシでは? 家人はすげなく否定。
降雨なしが決定。
これからは寝床から起きて立って外を眺めて
確認しようということになった。もっとも小
生は少年時代に寝ぼけ癖の輝かしい戦歴があ
るから、起き上がっての確認もそこまで含め
て睡眠中の出来事となるかも。
認知症の忍び寄っているせいなのか、熱中症
近辺の暑さのせいなのか?
**********
7/31sun
風鈴や 南部湯宿の 闇の濃さ
(ふうりんや なんぶゆやどの やみのこさ)
※花巻市郊外の花巻温泉郷台温泉に宿泊したこ
とがある。いい湯いい宿だった。遅くついた
のに印象深いのは夏の闇の深さと透明な湯の
せいか。
7/30sat
兜虫 遅き経済の 良さ知らず
(かぶとむし おそきけいざいの よさしらず)
※この国はかつて高い経済成長を実現し、効率
第一を叫んで、その果実を満喫した。その頃、
個人商店は消え失せ、全国の街々が画一化し
ていった。背後で家庭が地域が変質した。
人間だって(後の言葉で言えば)クローンの
ようなサラリーマンが労働者が生きがいとし
て、その路線に沿い、貢献した。絶頂時には
「21世紀は日本の世紀」とまで。
ところが今、「失いし20~30年」とかを
聞いている。聞いて久しい。
「経済成長は神話だよ、続かない」「多くを
失っているんだよ。今良く考えなければ手遅
れになると・・・」50年以上前にアンチ高
度成長を言った人はいっぱいいたね、そう言
えば。ためにする人も多かったが、深刻な正
論もあった。
7/29fri
煙草屋の 解体終わり 晩夏なる
(たばこやの かいたいおわり ばんかなる)
※店先販売はとうの昔にやめ、長いこと自販機
がならんでいた。不思議なもので店も住まい
も一緒に解体されると、かなりのおばあさん
が日がな店番をしていたことが思い出される。
7/28thu
夏号の 稿を渡せり 白き道
(なつごうの こうをわたせり しろきみち)
※一回きりと代理を頼まれた。夏を迎えるエッセ
イなんでも、という。地域のミニコミ誌みたい
なもの。安請け合いした直後に梅雨が明け、真
夏の暑さが襲ってきた。「なんでも」を頼りに
やっとこ駄文を弄した。どうせ誰も見ない、と
思ったことを後悔した。
7/27wed
端居やめ 犬の背たんと 流しけり
(はしいやめ いぬのせたんと ながしけり)
冷麺や 腰にさしたる 扇子かな
(れいめんや こしにさしたる せんすかな)
7/25mon
夏稽古 代役の子に 黒子あり
(なつげいこ だいやくのこに ほくろあり)
夏稽古 来ぬ子の役を 全部やり
(なつげいこ こぬこのやくを ぜんぶやり)
※地域で演劇の指導をしている人の稽古場を端
で見せてもらった。こんな人がいることが大
変貴重に思えるが、やはりコロナ禍のせいで、
せっかくの夏休みの強化練習も参加者が思う
に任せないとのことだ。
7/23sat
蝉時雨「巴里は燃えているか」聞こゆ
(せみしぐれ ぱりはもえているかきこゆ)
百日紅の赤「巴里は燃えているか」
(さるすべりのあか ぱりはもえているか)
※NHKスペシャル「映像の世紀」シリーズの通
しのテーマ。作曲した加古隆のインタビュー
番組を聴いた。やっぱり憎いねェ。
7/22fri
百日紅 警報の声 流れけり
(さるすべり けいほうのこえ ながれけり)
※当家の一本の桃の木。小粒とは言え実は多く
たわわだが、今年は虫の被害が多かった。プ
ラムのカイアガラムシに気を取られノーケア
だった。
やっと不順な天候の合間を縫って収穫し終え
た。さて来年に向けてはどうしようか? 思
案を始めている。
7/20wed
ああいえばこういう夏の国訛り
(ああいえばこういうなつのくになまり)
※Lineでのテレビ電話、これが少し前だったら、
「用もないのに顔はいらない」とか言って一
方的に敬遠したろうに、この齢になると、晩
くやってきた、この便利な仕組みに結構素直
になじんでいる。年齢による羞恥心の欠如?
いやそんなことをいうほど衒いもない。
7/19tue
夏時雨桃の実落ちる音にせく
(なつしぐれもものみおちるおとにせく)
※不順な天候が続く。担当の雑草刈りも果樹の
世話も意に沿っては進まない。やっぱり九州
山口地方に梅雨末期に似た豪雨の被害が心配
になる。
7/18mon
祇園会や 小雨に白の 角隠し
(ぎおんえや こさめにしろの つのかくし)
※故郷の近く会津田島町の祇園会のメインは花
嫁行列。今年はどうなるのだろうか? 近年
は嫁のナリテが町の内外から押し寄せるとい
う。7月16日は1月16日とともに、昔の
言葉で「藪入り」、奉公人や嫁入りした娘が
実家に里帰りした日だ。今や完全な死語。
こちらの花嫁はその日のうちに帰るのだろう。
7/17sun
宵山に 泣いたらあかん 稚児の声
(よいやまに ないたらあかん ちごのこえ)
※久しぶりの京都祇園祭のフル日程が無事に進
むことを切に祈る。NHKドラマ『京都人の密
かな愉しみ』はええなァ。直近は「Blue修業
中 門出の桜」かな。源孝志ディレクターに
よるもの。くせはあるものの、ええ腕しては
るわァ。
7/16sat
夏の雨 頼朝が行く 国境
(なつのあめ よりともがいく くにざかい)
※近くに鎌倉街道という古道がある。随分説明
を受け、フィールドワークにも出かけたが、
仔細の記憶はゼロ。ただ南の安房の国から上
総の国に、頼朝が土地の豪族、兵を募りなが
ら北上したのはテレビの通りらしい。
7/15fri
ラケット背に 女剣士が 夏椿
(らけっとせに おんなけんしが なつつばき)
※小雨の中を自転車で行く姿は凛々しい。コー
ト使えまいに、と思うが今は体育館で大勢で
乱打練習が出来るらしい。
7/13wed
短夜や ひそかに話す 人通る
(みじかよ やひそかにはなす ひととおる)
夏帽子 カフェを待つ間の 立ち向かい
(なつぼうし かふぇをまつまの たちむかい)
※カフェテラスという屋外の店が大都市で増え
ている。最近は地方都市でも狭い舗道を占拠
してテラスと称しているのが多い。ましてや
そこの空くのを待っている御婦人連がある。
7/11mon
命がけ 炎暑の選挙 いかと見る
(いのちがけ えんしょのせんきょ いかとみる)
※参議院選挙が終わった。普通の人が普通に与
えられる選挙権、それは勝ち取った権利。被
選挙数の比較優位によってのみ代議員となれ
る。この価値をどうみる、どうみるべきか?
これのない国々の人々よ。
7/10sun
短夜に口の遅さを嘆じけり
(みじかよにくちのおそさをたんじけり)
※加齢とともに口が重くなる、口数が減る。語
彙も減る。自分だけはそこまでにはならない
と、根拠なしの自信もあるにはあったのだが、
そんな希望もあえなくコロナ禍によって潰え
去った。
7/9sat
涼しけり政治の海に笑み消えぬ
(すずしけりせいじのうみにえみきえぬ)
長州と江戸の間で夏憤死
(ちょうしゅうとえどのあいだでなつふんし)
※元首相の街頭演説中の死。毀誉の混じるとこ
ろはあったが、圧倒的な天性とそれ故のゆと
りとユーモアを備えた政治家。合掌。
7/8fri
若妻が 夫の腕ひく 夏木立
(わかづまが おっとのうでひく なつこだち)
杖を持て 実を引き寄せて 袋掛け
(つえをもて みをひきよせて ふくろがけ)
7/7thu
築地塀 驟雨のあとを 見せてあり
(ついじべい しゅううのあとを みせてあり)
※文化財に指定されている江戸時代の築地。荒
い素地がむき出しになっているから年々の雨
等による浸食が心配だ。とは言え、俄雨の後
の箇所を指でエグルように強く触れてみた。
大丈夫だ。指にはなにもついてこない。
7/6wed
浮雲の 行先知らず 芙美子の忌
(うきぐもの いきさきしらず ふみこのき)
※林芙美子の「浮雲」をネットの朗読で全編聞
いた。全部で8時間余り。戦争と男と女の物
語。名匠成瀬巳喜男、高峰秀子、森雅之主演
の同名の映画も鮮明に覚えているが、ネット
朗読版も気に入った。忍耐あっての「聴破」
だが、この長い時間が戦中戦後の時間の経過
と変遷を味わうにはよりフィットするのかも
知れない。芙美子忌は6月28日。
7/4mon
暁に僅かに僅かなれど喜雨
(あかつきにわずかにわずかなれどきう)
※台風の影響で暑さをもたらした気圧配置が崩
れ、雨模様の不安定な天気になった。文字通
りの「喜雨」。西日本の豪雨の気配がないで
もないが、当地当家の野菜、果樹にとっては
喜雨だ。人間にとっても。
7/3sun
なお強き 膝をさすりて 半夏かな
(なおつよき ひざをさすりて はんげかな)
7/2sat
半夏生 犬ともに我れ 脚強く
(はんげしょう いぬともにわれ あしつよし)
※山登りなどには長くネックになっていた右膝
が、この十年近く朝夕の平地歩行には悲鳴を
あげず、持ちこたえている。幸い今に至って
も平地に限れば2、3時間連続でも行ける。
これも、臆病に無理を避けたこと、そして我
が家の犬のお蔭だ。
7/1fri
街ゆがみ 夏の絵描くは ゆがむまま
(まちゆがみ なつのえかくは ゆがむまま)
※都心の馴染みの通りもしばらく見ぬ間に変貌
し、ニョキニョキと高層マンションとやらが
両側に。不自然に見上げてやっと変化を知る。
猛暑がその歪みを激しく助長する。
行く年も走りおおせし鉄路あり
(ゆくとしもはしおおせしてつろあり)
さわし柿切れ干し柿を食らう暮れ
(さわしがききれほしがきをくらうくれ)
暮れなれど二人ポカンと映画見る
(くれなれどふたりぽかんとえいがみる)
歳晩に火鉢を出して非日常
(さいばんにひばちをだしてひにちじょう)
愚痴を言う大晦日にも三つだけ
(ぐちをいうおおみそかせにもみっつだけ)
※年内の仕事は最低限にして昨日までに終わっ
た。今日は心身ともに予備日? これが大正
解。それで句の方をちょっと棚卸し。暮れの
句を掃除し残った句を羅列する。
映画は「恋におちたシェイクスピア」、なぜ
かちゃんと通しでは見なかったヤツ。
12/30fri
煤払い終え扇橋の千代女かな
(すすはらいおえせんきょうのちよじょかな)
※先代入船亭扇橋の得意演目ではなかったよう
だが、古いテープで「加賀の千代女」を聴き、
いっぺんで好きになった。今その動画はアッ
プされていないようだ。
千代女の有名な句に「あさがおやつるべとら
れてもらひみず」がある。扇橋は落語界一の
俳句好きだった。
黒豆の出来は如何と長電話
(くろまめのできはいかんとながでんわ)
12/29thu
耕筰忌 からたちの花の 今やっと
(こうさくき からたちのはなの いまやっと)
※明治以降の日本の歌には、メロディの繰り返
しで1番2番ではなくて全曲流れるように一
つのメロディによるものが多い。
城ヶ島の雨(梁田貞)初恋(越谷達之助)小
諸なる古城のほとり(弘田龍太郎)などなど。
へたくそな私が歌えるようになるまで大いに
時間を要したが、その分味わい深い。当時は
一種の流行だったのかも。
12/28wed
海鼠腸を 食う人を見て 喜寿迎ふ
(このわたを くうひとをみて きじゅむこう)
喜寿の席 トンカツ食いて 見つめらる
(きじゅのせき とんかつくいて みつめらる)
生きるのみ 雨のあがりて 喜寿の冬
(いきるのみ あめのあがりて きじゅのふゆ)
※満77歳の誕生日を迎えた。祝いの宴で一席、
羞恥心を抑えて喜寿の3句。
12/27tue
極月や 火の用心の 江戸言葉
(ごくげつや ひのようじんの えどことば)
※年末は毎日夕方に「火の用心」の見回りをし
ている。最近はうるさいとかやめろとか一部
住民が反発する所があったらしい。なんとア
ホがいることか。
拍子木の音のあとに、「火の用心さっしゃり
ましょう」と粋な呼びかけをする人がいる。
ハハーンあの人だな。
12/26mon
歳末に 展望しえぬ 世事多く
(さいまつに てんぼうしえぬ せじおおく)
※メディアは一斉に年末モード。一年を振り返
り、翌一年をばっさりと展望する、・・・の
だが。展望と言える内容は少ない。
12/25sun
車椅子 押すは孫の子 クリスマス
(くるまいす おすはまごのこ くりすます)
手袋やクルマ待つ間の毛玉とり
(てぶくろやくるままつまのけだまとり)
※クリスマス光景点描。平和だ。
12/24sat
窓越しにダンス練習見る聖夜
(まどごしにだんすれんしゅうみるせいや)
※クリスマスめいたものは身辺にも近所にもな
いと思っていたが、そうでもない。
近くに越して来た中国人の中年独身男性がど
ういうわけか家にイルミネーションを飾って
いる。へえ・・と驚いて眺める。公民館のホ
ールでは練習か本番か・・・。優雅だ。
12/23fri
冬嵐 アクア通いの 医師休診
(ふゆあらし あくあがよいの いしきゅうしん)
名を聞きぬ 顔はメールで 冬の孫
(なをききぬ かおはめーるで ふゆのまご)
※安全を考えるときりがない。まして冬に生ま
れた初孫だ。
12/22thu
新聞を 素早く読みて 冬至かな
(しんぶんを すばやくよみて とうじかな)
さわし柿切れ干し柿を食らう暮れ
(さわしがききれほしがきをくらうくれ)
※12月はバタバタと忙しいとか、あっという
間だとかの声を聞く気はない。こう寒いので
は暖かい屋内でじっとしているにしくはない。
今日は冬至ではないか。
12/20tue
木枯らしや不意なる喉の内視鏡
(こがらしやふいなるのどのないしきょう)
※親しい友が甲状腺ガンで死んでから2年にな
る。こちとらも甲状腺ホルモン某の持病があ
る上に最近とみに喉元のところでミニトラブ
ルが起こる。美声もかすれることが多い。
呼吸器科に行って訴えた。心配を取り除いて
と。そしていきなりの内視鏡だ。結論は、
「きれいです。なんにもありません。あって
も年齢相応の嚥下トラブルでしょう」と。
12/19mon
サッカーは 冬の季語なり メッシ勝つ
(さっかーは ふゆのきごなり めっしかつ)
※アルゼンチン、PK戦の末に優勝。冬の季語で
ある所以はシーズン設定にあるだろうと想像で
きるが、この熱戦にはふさわしくない。手に汗
握る2時間だった。
12/18sun
年賀状仕舞いを告げて月下弦
(ねんがじょうしまいをつげてつきかげん)
※年賀状仕舞いとした。迷った。ここでも下りの
明確な階段を降りることになるのだぞ、と言い
聞かせる。
12/17sat
農道の一角カフェとなりて冬
(のうどうのいっかくかふぇとなりてふゆ)
※行ってみると洒落た料理をこざっぱりと提供
する、地元にはない店だ。この手の店が方々
に現れ、センスを感じながらも、音もなく
消えていく。お客は地方都市の若い女房連、
30km圏内、単価1500円で基本的にはゼロサム
ゲームである。逞しい例外もあるけれど。
12/16fri
木賃といふアパートの煤払い
(もくちんというあぱーとのすすはらい)
※周辺の他の物件に較べ、50年以上前に建て
られたもの。居住者がいっしょに大掃除して
いた。今どき貴重な光景。黒光りしている?
12/13tue
出勤は 冬夕焼け見て 深夜番
(しゅっきんは ふゆゆやけみて しんやばん)
人参のとれてシチュウに大切りに
(にんじんのとれてしちゅうにおおぎりに)
12/11sun
着ぶくれて 週末頼みの 吊り革に
(きぶくれて しゅうまつだのみの つりかわに)
※久々に「週末頼みの通勤」の感覚を思い出し
た。ところがちっとも苦ではない。
12/10sat
湯気の音 剃刀の音 昼下がり
(ゆげのおと かみそりのおと ひるさがり)
※馴染みの床屋の主人がなくなり、そのまま閉
店。ずっと近くの格安店に行った。料金はほ
ぼ半分、時間は1/3、「どうしましょう」以
外無言、悪くない。
12/9fri
十二月 火星いざよふ 月を待つ
(じゅうにがつ かせいいざよう つきをまつ)
※18時前の散歩のときに十六夜の月が山の端
を離れた。行く先には火星が待っている。見
事な月だが、なかなか火星に追いつけない。
さて、このレース、今夜はどうなるか?
12/8thu
滑子汁 ふうふうする間の 香りかな
(なめこじる ふうふうするまの かおりかな)
※寒さはなかなか戻らないなと嘆いている間に、
これが平年並みとなってしまう。とにかく暖
かい部屋、熱いものが欲しい。
12/7wed
神無月 四万人を 呼ぶ娘
(かんなづき よんまんにんを よぶむすめ)
※先月初旬あいみょんがワンマン・ライヴで甲
子園球場を札止めにした!! よく知らない
歌手、二三度聴いたことはある。とても信じ
られないペンライトの波また波。
12/6tue
モーツァルト忌 朝一番で ジュピターを
(もーつぁるとき あさいちばんで じゅぴたーを)
※季語にモーツァルト忌というのがあると知っ
た。やや異様な感じがするが、せっかくだから
交響曲第41番で記念日(の一日遅れ)を刻む
ことにした。
12/5mon
戦ありて 落ち葉の上に 松落葉
(いくさありて おちばのうえに まつおちば)
※公民館、集会所の大掃除。こういうのをしっか
りやるのが、シニアの役目だと少しは認識して
出かける。それにしても外の作業は今日あたり
かなり酷だ。彼の地では、寒さの酷さを知る者
が寒さ攻めにしている。
12/3sat
初炬燵 文庫本にて 漱石を
(はつごたつ ぶんこぼんにて そうせきを)
※昨日今日一段と冷え込む。リビングにコタツと
いうのは今まで避けてきたが、もうこの歳、そ
んなことは言っていられない。
12/2fri
大どれの大根 店を攻略す
(おおどれのだいこん みせをこうりゃくす)
新聞は 瑣事のみ多く 日向ぼこ
(しんぶんは さじのみおおく ひなたぼこ)
※ネットを初め情報過多の今日では新聞の位置も
難しい。ヘッドラインはとっくに知られている
し、深掘りするにしても対象の選択は読者によ
ってことなる。全方位型になると、瑣事の羅列
となりかねない。購読料を払っているので目を
通さざるを得ない。半ばいやいやだ。家内はチ
ラシ以外殆ど読まない、はっきりしている。こ
れがうらやましい。
12/1thu
干し柿の 遅れて吊るす 十余り
(ほしがきの おくれてつるす とおあまり)
※日々の瑣事のみで静かにしていると12月の到
来に感慨はない。しかしこの日長いこと途切れ
ていた友人とのメール交換が出来て、これから
年末の幸いなる予感がする。
**********
11/30wed
小春日の港に人のいぬ無残
(こはるびのみなとにひとのいぬむざん)
※カップル観光客の聖地になりかけた木更津港
をまたぐ中の島大橋も人っ子ひとりいない。
海と港を見渡す昔日の静けさと言えないこと
もないが、今度は船が断然少ない。
11/28mon
朝刊の 読めぬ昏さや 時雨雲
(ちょうかんの よめぬくらさや しぐれぐも)
※いやでも冬の到来を感じた朝。真っ黒な雲が
空を覆い続けた。寒さもひとしお。
そうだ、コタツを作ろう。
11/27sun
冬めく日 自宅待機とやらでいる
(ふゆめくひ じたくたいきとやらでいる)
※ゼロコロナ目標ではないから、濃厚接触者の
更なる探索はしていない。しかしそれに準じ
た注意喚起はある。その筋から「自宅観察・
外出自粛」の要請があった。感染ルートは仄
めかす程度で、最後に「通常の日常対策で十
分です」とも。それなら言って来るな、と思
ったが。
11/26sat
曲りても 玉葱の苗 植え終わる
(まがりても たまねぎのなえ うえおわる)
※早生の苗を植えたところで雑事が増えたため
一休み。今回で予定した苗は全部植え終わっ
た。鉛筆の木軸ほどの太さの葉鞘が望ましい
というが苗の調達段階でそれは挫折する。そ
んな立派な苗ではない。黒マルチは使わない。
11/25fri
ワクチンの五回目 初冬の静寂
(わくちんのごかいめ しょとうのせいじゃく)
※集団接種会場で粛々と済ませた。慣れて哀し。
11/23wed
冬の日や事故せし妻の帰宅かな
(ふゆのひやじこせしつまのきたくかな)
事故調書自署なめらかに石蕗の花
(じこちょうしょじしょなめらかにつわのはな)
冬夕焼け惑い長きに見ずに果て
(ふゆゆやけまどいながきにみずにはて)
11/22tue
剪定の音続きたり冬支度
(せんていのおとつづきたりふゆじたく)
バサと落ち研ぎ手の腕を暮れに聞く
(ばさとおちとぎてのうでをくれにきく)
※11月恒例の垣根の刈り込みだが、近年は次
第に億劫になりつつある。着手せずに、今日
は刃物の研ぎ日とか勝手に決めて一日延ばし
にする。
11/21mon
テレビ電話互いに冬の身づくろい
(てれびでんわたがいにふゆのみづくろい)
三の酉あり火の用心と時候言い
(さんのとりありひのようじんとじこういい)
11/19sat
保母開ける窓少しだけ冬はじめ
(ほぼあけるまどすこしだけふゆはじめ)
※コロナ渦で換気は怠れない、しかい今朝の風
はつめたい。この前までのゆったり換気があ
っという間に冬の光景に。
11/18fri
雨音は幻聴 小春の日の朝
(あまおとはげんちょう こはるのひのあさ)
犬こばむ 晩秋日々の同じ道
(いぬこばむ ばんしゅうひびのおなじみち)
※5回目のワクチンを打ってきた。集団接種会
場では打つ人も迎えるスタッフも粛々と仕事
をこなしている印象。結構な形の雲が面白お
かしく晩秋の空を飾っているのに、ワクチン
接種にかくも馴れ切ってしまうとは・・・。
11/17thu
顎引いて 若く撮れると 秋の宿
(あごひいて わかくとれると あきのやど)
※小人数で近場の温泉郷に。家族外の同伴者と
の宿泊は何年ぶりか? もちろん恐る恐るの
出立だったが、ホテルに着いて湯に入って酒
が入れば・・・もう心配は雲散霧消。これが
いけない。
11/16wed
月島の 路地に山芋 並べあり
(つきしまの ろじにやまいも ならべあり)
病葉や 柿のヘタ虫 駆除を聞く
(わくらばや かきのへたむし くじょをきく)
11/15tue
秋フェスタ 膝をさすりて 餅の列
(あきふぇすた ひざをさすりて もちのれつ)
※農協の収穫祭と言えどもフェスタと称する。
一番人気はつきたての餅の販売だ。列のすぐ
そばで絶えずついてこねて・・・。
11/14mon
孫自慢 歴史好きだと 葛の花
(まごじまん れきしずきだと くずのはな)
※シニア同士の話題は、結局は子と孫と病気の
自慢に落ち着く。幸いコロナ禍のせいで、聞
く被害からは遠ざかっていたが、ぼちぼち再
開の気配だ。
11/12sat
お十夜といふを知りてぞ喜寿の坂
(おじゅうやというをしりてぞきじゅのさか)
※もうひと月余りで満で喜寿の歳を迎える。関
西で主に浄土宗の仏事として十夜法要という
のがある。「現世で十日十夜善いことをすれ
ば・・・」という、これからでも間に合う、
ドロナワOKの教えらしい。すがりたい気持
ち?あります。
11/10thu
喜寿の日に 会社退けりと 星月夜
(きじゅのひに かいしゃひけりと ほしづきよ)
※会社生活を終える感慨はその長さによるので
はなかろうが、恵まれてかつ望まれて勤務を
続けられたことは幸せなことだと思う。お疲
れさま。
11/9wed
橡餅を 目指し竈に 火をくべぬ
(とちもちを めざしかまどに ひをくべぬ)
子が可愛 鴉が泣きて 秋澄めり
(こがかわい からすがなきて あきすめり)
蚯蚓鳴き 酒も喉越し 緩やかに
(みみずなき さけものどご しゆるやかに)
※絵画教室の例会で先生が来ない。一番熱心な
のに。何度電話をしたのに出ない・・・。も
しかして? 彼女は80歳台中盤、一人暮ら
し。終わるころ、ひょっこり顔を見せた。
スマホ持たずに出先で一時間以上も立ち話と
か。帰宅して着信の多さにびっくり。
11/6sun
秋の空 数合わせ気味の 守備位置に
(あきのそら かずあわせぎみの しゅびいちに)
フェスなるも 法被が主役 いわし雲
(ふぇすなるもはっぴがしゅやくいわしぐも)
※地域の蘇生と祭りのリベンジなど思惑が交錯
しても、お天気には恵まれた。若手のエンジ
ンに少しでも火がつくか?
11/5sat
ナレーターの 声ゆったりと 古都の秋
(なれーたーの こえゆったりと ことのあき)
※養老孟司の愛読者、ファンではないが、彼と
鎌倉を描いたBSシリーズ番組は好きだ。鎌倉
への対し方、愛し方は大好きだし、それ以上
に断然妬ましい。
11/4fri
ミサイルと 地震頻りに 夜長とて
(みさいると じしんしきりに よながとて)
合唱の 女史再デビュー 雁渡る
(がっしょうの じょしさいでびゅー かりわたる)
※地域の活発な女性陣、鳴りを潜めていたが、
この週の各種催しから息を吹き返した感があ
る。その昔のお局さんも加わる。
11/3thu
死ぬまでの 替え芯ありて 文化の日
(しぬまでの かえしんありて ぶんかのひ)
※シャープペンシル用に替芯0.5mm,2Bを取り
寄せた。普通の店にはないから少し多めに3
ケースを買った。それ以来ではないが、次第
に字を書くことは少なくなった。書く機会が
減ったのと、PC,スマホのせいだ。
一生懸命毎日書くようにしているが・・・。
国宝を みな見せるとぞ 文化の日
(こくほうを みなみせると ぞぶんかのひ)
11/2wed
城下秋 旧町名を 音に読む
(じょうかあき きゅうちょうめいを おとによむ)
※全国の城下町共通の、それらしい町名にはど
うも馴染めない。大手町、馬場町、鍛治町、
本町、寺町等々。せっかくのユニークな町名
があったのに。ちなみに生まれた町の名は融
通寺町。近くに桂林寺町。
11/1tue
畳織る 今年のイグサの 香りかな
(たたみおる ことしのいぐさの かおりかな)
※7月までに収穫するイグサは油の処理、形状
不良の厳しいリジェクトなどを経て、秋に
「織り」が本格化し畳表となる。
**********
10/31mon
友の待つ 広き階段 見上げ秋
(とものまつ ひろきかいだん みあげあき)
※立派な階段、踊りがあって、また階段が。彼
はどうやって登ったのかな? そう、エレベ
ーターがあるのでは? ・・・もう遅い。
お隣の シュウメイギクの 揃い踏み
(おとなりの しゅうめいぎくの そろいぶみ)
10/30sun
秋の夜のライン顔見し黙しおり
(あきのよのらいんかおみしもくしおり)
※ラインが開通して初めて友人と顔を見ながら
の会話を始めた時、相手がふっと押し黙った
時があったならよーく考えた方が良い。相手
は対面会話に感激したのではなく、こちらの
顔の想像以上の老け込みに唖然として息を吞
んだのだ。毎日見ている顔では気づかない老
けの大きな溝がある。きっと。
10/29sat
杜鵑草 思い出しつつ つい疎遠
(ほととぎす おもいだしつつ ついそえん)
※こんな時だからこそ親しい友人とはせめて連
絡を保ちたい。遠隔での連絡手段が一般的に
なっているとはいえ、ついその一歩が出ない
ことも。
10/28fri
文化祭 準備を仕切る 嗄れ声
(ぶんかさい じゅんびをしきる しゃがれごえ)
白マスク白髪が秋の草むしり
(しろますくしらががあきのくさむしり)
※いくらなんでも俺は公民館の世話にはならな
い、とイッパシの口をたたいていた男が、ど
っぷりとは言わないまでも文化祭などの活動
に参加している。アアとため息も出るが、同
じ年代の人たちが手練れのエースである。
10/26wed
介護する 合間の絵筆 いわし雲
(かいごする あいまのえふで いわしぐも)
※絵仲間の女性は80歳で介護の仕事をしてい
る。絵教室も遅刻早退で忙しい。肝心の絵は
あっさりしていて外連味がない。ごてごて塗
りたくるコチトラは感心しきり。
10/25tue
公園に シニア週一 落葉掃き
(こうえんに しにあしゅういち おちばはき)
※町内の道路、公園などの清掃はシニアの無償
の労働に負っている。老人会、誘われたこと
もない。とか言っているうちに10年近くだ。
10/24mon
イチジクの 絵にむらさきの 熟したり
(いちじくの えにむらさきの じゅくしたり)
※当地の文化祭に仲間と水彩画を出展すること
になった。いつもは間際に非才さを嘆くのだ
が、今回は秋の野菜や果物をうまく描けた。
それがどこであれ衆目に晒すというのは大変
なことで、実はかなりホッとしている。
10/23sun
さつまいも 半分掘って 虫の里
(さつまいも はんぶんほって むしのさと)
※関東南部は曇り日と雨天続きで日照時間が極
端に少なかった。もう少しかな?と残してお
いたサツマイモは意図せざる放置でどうなっ
ていることやら。気をもんでいる。
10/22sat
教師褒め 親父酒出す 秋の夕
(きょうしほめ おやじさけだす あきのゆう)
※この句は8/5の
「ほろ酔いの 教師は黒く 大夕焼」
と同じ思い出につながる。中学校の事務の先
生が帰途に我が家に寄って、私の部活の充実
ぶりを褒めていった。
誰も覚えていないかもしれないが、テニスと
タバコと酒が大好きな、しょうもない先生。
俺は好きだったよ。
10/20thu
欅 自らなる形 秋に満つ
(けやき みずからなるかたち あきにみつ)
※散歩ルートにある3本のケヤキ。紅葉、落葉
前の今、一年の成長を全身で現わしているよ
うに思われる。何の変哲もないケヤキなのだ
が、一年の成績は5だなと思う。
10/19wed
秋冷えて 昨夜は風呂に 入りしかと
(あきひえて さくやはふろに いりしかと)
※実はよくある話。もっと寒くなると毎晩風呂
に入るが、多少肌寒くなっても風呂は二日に
一度、もう一日はシャワーで済ます。済ます
というより、のんびり・ゆったりかつ気軽な
シャワーが好きだ。それで掲句のような疑問
が湧き出る。ボケのせいではない証拠にかな
り以前からのことなのだが。
10/18tue
児童向け 大きな字読む 良夜かな
(じどうむけ おおきなじよむ りょうやかな)
※図書館にはシニア向けに大文字本が用意され
ているが、その分がさばるので敬遠していた。
この前借りてきた季語写真集は親切な内容で
わかりやすく気に入っていたら、中高生向け
の児童図書とあった。
10/17mon
柿の実や 製材所の お茶時間
(かきのみや せいざいしょの おちゃじかん)
※当家の一本の柿の木は今年お休み。数少ない
実が殆ど7月までで落果した。周期的な不作
なのか、以前のようなヘタ虫の被害か、今の
ところ不明。
10/16sun
リヤカーに 子と芋と鍋 芋煮行
(りやかーに こといもとなべ いもにこう)
※町内の親しい母親仲間が集まり、日と持ち寄
りを決め、一切合切を積み込んで、町中から
郊外の広い河畔の湧水場まで歩いていく。小
一時間ほどもある女集団のおしゃべり付きの
移動だ。今なら目立って、鼻つまみにもなろ
うが、当時はなんとも街の光景になじんでい
た。行った先は天国、おしゃべりと芋煮。息
抜きと骨休め。
10/15sat
垣を剪り 果樹には秋の お礼肥
(かきをきり かじゅにはあきの おれいごえ)
※金木犀も大方花を落としたし、少ししたら一
年分の丈を詰める。秋の作業の一つ。
10/14fri
涼気早や 寒気となりて 坂の家
(りょうきはや かんきとなりて さかのいえ)
※挨拶は寒いですねに変わった。坂の中途から
見下ろす夕方の光景は光を失って空も地も鈍
色。
10/12wed
長身の 荷風が覗く 路地の秋
(ちょうしんの かふうがのぞく ろじのあき)
※YouTubeの朗読で荷風の「日和下駄」「濹東
綺譚」を聞く。朗読で扱われているものの中
では長い方、後者は3時間余りだ。しかし、
いずれも以前に読んでいるので、歩きながら
でも気軽に聞ける。細部は聞き流しても、む
しろ荷風文章の達者なリズムが味わえる。
10/10mon
竿売りの 音高らかに 刈田道
(さおうりの おとたからかに かりたみち)
※その道は行き止まりだよと言ってあげたかった
が、農道をまっすぐに行く。テープの音が両側
の小高い丘に反射するようだ。ナビ圏外の小道。
あの手の軽トラのセールスは多分地の人ではな
い。大量に安く仕入れて、県を跨ってでもひた
すらに売り歩くと聞いた。
10/9sun
栗名月 雲の間にこそ 香りあり
(くりめいげつ くものまにこそ かおりあり)
※ここ数日の曇天に半ば諦めていた十三夜、厚か
った雲が夕方にかけゆっくり薄くなり、格好の
名月待ちとなった。
客なくて 金木犀の 盛りかな
(きゃくなくて きんもくせいの さかりかな)
10/7fri
コスモスや 犬に拒まれ 花の道
(こすもすや いぬにこばまれ はなのみち)
※異常な寒さに我が家の犬はより元気になる。や
や夏バテ気味の頃散歩を短縮して来のこと、今
日その道に拒否権を発動した。
10/6thu
鰯雲 静かがよろし スピーカー
(いわしぐも しずかがよろし すぴーかー)
※市がつけている広報スピーカー。防犯上の注意
喚起や気候情報がメイン。不審者、詐欺電話情
報、大雨や強風注意、警報、行方不明者捜索な
ど幅広い。この季節に多いのが有害鳥獣駆除実
施のお知らせ。等々。
良く聞こえないという人も多い中で、近い人々
は音の大きさに頭を抱えている。いずれにして
も静かがいい。使わないで済むような。
10/4tue
露草や林間一帯を領す
(つゆくさやりんかんいったいをりょうす)
※この光景は昨年まではなかった。一年草と言わ
れる露草が辺り一面をわがもの顔に青い花を散
りばめている。
10/3mon
クラス会 秋集合は 動物園
(くらすかい あきしゅうごうは どうぶつえん)
※ミニクラス会を3年ぶりにやろうということに。
年末年始の危険、風邪とのダブルパンチ、第8
波だってこわいが・・・。慎重派と決行派、間
をとってなるべく速やかに、ということになっ
た。動物園の後は谷中に降りて一散歩、店に急
ぐことに。
10/2sun
牛乳で コーヒー飲む癖 今朝の秋
(ぎゅうにゅうで こーひーのむくせ けさのあき)
※コーヒーファンを自認して小うるさいことを
言っていたのも今は昔。一日に一杯とする必
要があり、その貴重な一杯を朝食の牛乳にイ
ンスタントコーヒーを入れたことが運の尽き。
「おや、おいしいねえ」となった。
10/1sat
法要の 客と出会いぬ 風蝶草
(ほうようの きゃくとであいぬ ふうちょうそう)
※喪服の3人と出会った。理容店主の四十九日
とわかった。故人は8月の暑い盛りに逝った。
残暑が厳しいといわれていたが、台風と大雨
が列島を翻弄している間にすっかり例年並み
の気温になった。涼しい天国に早く来過ぎた
と思っているかもしれない。
**********
9/30fri
秋西日 茶筅日向に 干されあり
(あきにしび ちゃせんひなたに ほされあり)
四方から 今ぞ今ぞと 虫の闇
(しほうから いまぞいまぞと むしのやみ)
9/29thu
野分去り 他家の毬栗 数えけり
(のわきさり たけのいがぐり かぞえけり)
秋場所や 初老力士の 力こぶ
(あきばしょや しょろうりきしの ちからこぶ)
※台風後の散歩、俳句作り、九月場所テレビ桟敷
そして草むしりか、九月もすっかり年寄りの種
目で終わりそう。
9/28wed
国葬の過ぎてボートは生き返り
(こくそうのすぎてぼーとはいきかえり)
※総意とは何だろう? 総意とは言えないけれど、
本来は総意となってすべきことを識り重視し、
右顧左眄せず突き進んだ・・・安部元総理の業
績だと思う。右っぽいとか言われそうだが。
9/27tue
さびしいね大変ねとぞ彼岸過ぎ
(さびしいねたいへんねとぞひがんすぎ)
※友人は男一人住まいの後期高齢者。都心でもさ
まざまに支援の手、声掛けがあるという。しか
しこの手の言葉は慰めにもなんにもならない、
と友人は苦笑。そこまで落ち込んでいない、と。
彼は175センチを超える偉丈夫である。
9/25sun
今朝の秋 呉服店主の 紺の足袋
(けさのあき ごふくてんしゅの こんのたび)
※後ろに土蔵の蔵屋敷を構えた呉服商店。商売
は今や細々とらしい。足袋の裏は白い。
9/24sat
かすかなる 踏切の音 自在秋
(かすかなる ふみきりのおと じざいあき)
※台風が近くを通過している深夜、強風の合間
に近くの踏切の音が聞こえる。かすかだが。
耳が良いせい? 年齢と鍛錬?のせいで好き
な音を自由に呼び起こすことが出来るように
なった。この時間にローカル線が走るわけが
ない。
9/23fri
短めの 形見の杖で 彼岸まで
(みじかめの かたみのつえで ひがんまで)
秋彼岸 風に戦の末予感
(あきひがん かぜにいくさのすえよかん)
※戦争、内外国葬2題、インフレ・経済、災害
・・・落ち着かないこと限りないが、これも
聞こえ過ぎ、情報化社会故の不幸かもしれな
い。どこかで分水嶺を越えてすうーっと静か
になることもある。それが秋分の日。
9/22thu
風の盆 男踊りは 空を切り
(かぜのぼん おとこおどりは くうをきり)
※今月初めの富山八尾町、越中おわら節のお祭
り「風の盆」。この旋律と踊り、何故こんな
にも哀切極まるものが生まれて、かつ継がれ
ているのか? みんなで踊るのと、保存会の
踊りを静粛に大事にただ眺めるのが並行して
あるからなのかな?
9/21wed
木彫師 師の師は光雲 いわし雲
(もくちょうし しのしはこううん いわしぐも)
※内房の小さな街に住む木彫師は高名な名前を
口にする。僅かに「知ってる?」という気分
が漂う。例の野猿像どころか最近は彫りたい
ものとは無縁であると残念がる。
9/19mon
子規忌なり 少し老けたと 言いにけり
(しききなり すこしふけたと いいにけり)
下弦なる 月確かめて 敬老の日
(かげんなる つきたしかめて けいろうのひ)
※浮遊する敬老の日は今年子規忌と同じ19日
になった。その業績から子規翁と呼ばれるこ
とも多いが、亡くなったのは35歳。
9/18sun
街なかで 熊除けの鈴 秋まみれ
(まちなかで くまよけのすず あきまみれ)
※無人を思わせる団地の静謐を破って鈴の音が
聞こえる。日曜日の住人が無聊に任せてスピ
ーカーで流しているのではない。
9/17sat
秋の日やメインツリーは果樹となる
(あきのひやめいんつりーはかじゅとなる)
※ガーデニング風に言えば、我が家のメインツ
リーはモモ、ブドウ、柿の3本。今年の成績
を言えばいろいろあるが、後期高齢者の思い
込みは安定していて、功が拮抗している。
9/15thu
よろず屋にバス待つ人の宿場町
(よろずやにばすまつひとのしゅくばまち)
街なかに街道ありて秋夕暮れ
(まちなかにかいどうありてあきゆぐれ)
※米を収穫して現金収入を手にした農家にとっ
て一年で一番豊かさを感じる季節だ。思い切
って遠出して温泉で骨を休めたり、近くの街
に買い物に出たり。小さな商店街のある街ま
では多くはバスで行きかえりだ。日常使いの
品ではなく、好きな品を既に考えてある。
小さな街の小さな商店街。一日声があふれる。
9/14wed
秋の日強し団地音一つなし
(あきのひつよしだんちおとひとつなし)
※こんな音のない風景はミステリー映画の撮影
に使えるのでは?なんて思いがうかぶが、今
やこうしたシーンは全国に溢れ、履いて捨て
るほどある。洗濯物のそよぎが「使用中」を
示す。
9/13tue
無人駅の読書 針の進む音
(むじんえきのどくしょ はりのすすむおと)
※こんな静かな無人駅があるところは貴重かな?
いまどきは遠隔で音声案内がある。
9/11sun
耳元で癌を語りて夏に逝く
(みみもとでがんをかたりてなつにいく)
ワケギ好き冷凍を説く床屋あり
(わけぎずきれいとうをとくとこやあり)
※仲の良かった床屋の親父が死んだ。3年近く
の肺ガンとの闘いの末である。なにをさせて
も執念とこだわりの強い人だったから、ゆっ
くりした床屋タイムの話はいつも楽しみだっ
た。合掌。
9/10sat
名月もかすむ蝮の噂かな
(めいげつもかすむまむしのうわさかな)
※見事な名月。さすがに。見えすぎなくらい。
9/7wed
我慢して 追肥をかてに 秋茄子
(がまんして ついひをかてに あきなすび)
※9/7泉鏡花の忌日。代表作以外は読むことのな
かった作家だが、ネットの朗読に親しんで鏡
花も三つほど聴いた。いずれもスマホのおか
げ、YouTubeのおかげ、ヒマのおかげ。鏡花
との距離が随分縮まった。
9/6tue
稲刈り機揺られウクライナのことを
(いねかりきゆられうくらいなのことを)
運転は孫に勝りて刈田かな
(うんてんはまごにまさりてかりたかな)
一族も郎党もいず刈り終わる
(いちぞくもろうとうもいずかりおわる)
稲刈りてデータを入れる月明かり
(いねかりてでーたをいれるつきあかり)
9/5mon
カタロニア 野の鳥を見る 善衛の忌
(かたろにあ ののとりをみる よしえのき)
※少し左派がかった元日本ペンクラブ会長堀田
善衛が亡くなったのが1998年9月5日。
スペインアスツゥリアスとカタロニアに合わ
せて5年近く住んだ作家である。著作も多い。
小生がスペインオタクになった機縁である。
野の鳥はピースピースと鳴く、とカザルス。
9/4sun
飴色の ぶどう袋に 妻方々
(あめいろの ぶどうふくろに つまほうぼう)
※甘くはありませんがとお裾分けするが、おい
しかったと言ってくれる人もいる。高級品が
多い最近では昔のぶどうの味でなつかしかっ
たという感想かな?
9/3sat
剃りたての 頬を撫でつつ 桐一葉
(そりたての ほほをなでつつ きりひとは)
※例年より低い気温が続く。台風は沖縄県先島
近辺で停滞の後東北に動き始めた。
朝に切る ぶどう三房を 仏前に
(あさにきる ぶどうみふさを ぶつぜんに)
9/2fri
近道の 秋灯の家 時計鳴る
(ちかみちの しゅうとうのいえ とけいなる)
※やっぱり昭和か?ちょっと古めの時計の音が
聞こえた。窓に映る灯りも古めの暖色系だし、
新しい家にしてはやや奇々怪々。
9/1thu
度を重ね 二百十日の 俄雨
(どをかさね にひゃくとおかの にわかあめ)
小椋鳥 夕立家に 帰りかね
(こむくどり ゆうだちいえに かえりかね)
※ムクドリは常に群れで行動するのに、突然の
激しい雨に打たれ、一羽が木の根元に取り残
された。いつもは群れの旺盛な動きに舌打ち
することもあるが今日の姿はほんの小鳥だ。
**********
8/30tue
秋の風来て花痩せしサルスベリ
(あきのかぜきてはなやせしさるすべり)
露草や 初お目見えの 庭の朝
(つゆくさや はつおめみえの にわのあさ)
※曇り日が続いたのち昨日今日は一段と涼しい
日。夜の気温が20度を切ると涼しいから一
気に寒いへ悲鳴に変わる。庭の草の中に露草
発見! 25年来、我が庭で初めて。
8/28sun
秋と聞き 山門今日は 中に入る
(あきときき さんもんきょうは なかにいる)
眼鏡かえ スマホで秋の 季語一つ
(めがねかえ すまほであきの きごひとつ)
8/27sat
夏豪雨 気圧配置の 骨身まで
(なつごうう きあつはいちの ほねみまで)
※秋田、山形、新潟を中心に、この夏豪雨の被
害が広がった。気圧配置の固定化と前線の居
座り、線状降水帯の連続発生等によるものだ
った。一週間ほど前からの事前の予報の通り
であったが、それでも被害は甚大なものに。
8/25thu
眠らねば 班増えるとて 晩夏かな
(ねむらねば はんふえるとて ばんかかな)
譲られし 苗のトマトの 味野生
(ゆずられし なえのとまとの あじやせい)
8/24wed
少年の目に父祖の地よ盆地秋
(しょうねんのめにふそのちよぼんちあき)
※8/23は白虎隊の日、自刃した日。その場所飯
盛山からは砲煙にかすむ城下だけでなく会津
盆地の初秋の景色が広く見えただろう。命全
うすればもっともっと馴染んだはずの故郷の
景色が。
8/22mon
朗読の声朝に聞く邦子の忌
(ろうどくのこえあさにきくくにこのき)
※8/22は向田邦子忌日。YouTubeの朗読物は特に
この1,2年で優良コンテンツが激増してい
る。中でも人気を博しているのは、明治以降
の大作家連の短編と向田邦子のドラマものだ。
わかるような気がする。
8/21sun
三代の 球児いよよの ガッツあり
(さんだいの きゅうじいよよの がっつあり)
※夏の甲子園も決勝を残すのみ。東北勢同士の
決勝を夢見たが、まあ仙台育英の優勝が実現
すれば大殊勲だ。
8/19fri
つかまらせ 花緒をすげる 秋めく日
(つかまらせ はなおをすげる あきめくひ)
※当地はからっとした天気。こんな日はあらぬ
ことを幻のように想像してみたい。下駄ばき
で鼻緒が切れて困っていた少女がいた・・・。
8/18thu
対策の 水を飲みつつ 白槿
(たいさくの みずをのみつつ しろむくげ)
溶接工 腕さえわたる 盆の明け
(ようせつこう うでさえわたる ぼんのあけ)
※60歳を超えて所属した会社で一緒だった人
と偶然会った。何年ぶりか? 溶接工のキャ
ップを務めていた名人、その腕の変わらぬ自
信はほんの2,3言でわかる。
8/17wed
葡萄一房光を貯めて下がりおり
(ぶどうひとふさひかりをためてさがりおり)
※不順な気候の中で、我が家の名もないぶどう
は大奮闘。例年より遅れ気味だがより多くの
房をつけている。緑色の固い粒々が次第に飴
色に、光を通すようになってきた。早いヤツ
をつまみ食い出来るのがこの時期の無上の喜
び。
8/16tue
学徒兵命全うすれば夏
(がくとへいいのちまっとうすればなつ)
※学徒の繰上げ卒業にまつわる事実が新たにわ
かったことを伝える特別番組を見た。決然と
出陣式で雨中行進をした人たちの中で、なお
多くの若人が戦地に行かなくても済んだこと
を知る。
8/15mon
逢ひとふて 驟雨疾走 孫産まる
(あいとうて しゅううしっそう まごうまる)
※姪夫婦に待望の初孫ができた。日頃冷静な二
人だが、狂喜して病院に向かう。
8/14sun
嵐去る 盆の街角 見渡しぬ
(あらしさる ぼんのまちかど みわたしぬ)
久闊の 言葉探して 盂蘭盆会
(きゅうかつの ことばさがして うらぼんえ)
年寄りて 盆にことなし 風の音
(としよりて ぼんにことなし かぜのおと)
8/13sat
盂蘭盆会 レーダーで追う 故郷の雲
(うらぼんえ れーだーでおう くにのくも)
※スマホでPCで現在地以外の地域の天気、雨
雲レーダー、災害可能性や警報・注意報のチ
ェックが容易にかつ即座に出来る。
必要があればそのまま即電話でコンタクトを
とる、地域のメディアにアクセスをすること
も可能だ。通信とデータ送受の革新は急速。
しかし自然の猛威を前にして、出来ることは
限られる。これは変わらない。
8/12fri
調律の 待たれる頭 炎天下
(ちょうりつの またれるあたま えんてんか)
起動時の 膝の重さよ 秋立ちぬ
(きどうじのひざのおもさよあきたちぬ)
※朝起きがけの膝の重さは老化速報。一年後の
歩行能力を知ることが出来る。そう思う。ほ
んの5~10歩で重さは消え、快調になるの
だが。PCのように再起動で問題解決、とは
いかない。立秋、しばらくは残暑、その後は
確実に秋、着実に老化。
8/11thu
高山病 肩の小屋にて 米を炊く
(こうざんびょう かたのこやにて こめをたく)
※若い頃4月に連休を待ちきれず、登山に出か
けた。槍沢小屋を朝に出て槍ヶ岳を目指すシ
ンプルな計画。ただ積雪は多く、ジグザグの
登りが最後まで直登となる。登りの残り1/4
くらいのところでガタンと体力が落ちた。
先に着いて小屋で寛ぐ人の姿がはっきり見え
るところだった。そこからなんと2時間強か
かったのだ。1時間半はその場所でストップ。
動けない。好天で良かった。50年前のこと。
今では最高の思い出。今日は「山の日」とか。
8/10tue
眼前は 水被る稲 晩夏光
(がんぜんは みずかぶるいね ばんかこう)
※東北北部に豪雨被害が続いている。当地は暑
さ続きで、盆明けの稲の刈入れを前にしてい
る。とんでもない違い。
8/8mon
小型船 夏のくらしの 音がもれ
(こがたせん なつのくらしの おとがもれ)
※くらしの音と問われたら、NHKラジオの正午
過ぎ「昼のいこい」のテーマと答えるかもし
れない。木更津港に係留している小型鋼船の
一つからこれが聞こえた時、ジーーンときま
したね。
8/7sun
白球の清涼と女子のブラスよ
(はっきゅうのせいりょうとじょしのぶらすよ)
※夏の甲子園開幕。観客、応援団を入れての試
合は一層熱が入る。それにしても応援席は女
性上位だ。チェアガールにブラスバンド、女
子は皆余裕たっぷり、笑顔がこぼれている。
お付き合い参加ではない。
がしんたれ強豪以外よ暴れたれ
(がしんたれきょうごういがいよあばれたれ)
※大阪桐蔭、何馬身か空いて智弁和歌山等々下
馬評はどれも関西勢優位のよう。
8/6sat
原爆忌 乞ひ願ふこと 今多く
(げんばくき こいねがうこと いまおおく)
母削る 鉛筆が誇り 原爆忌
(ははけずる えんぴつがほこり げんばくき)
※今でも当時母が毎晩削ってくれた鉛筆のカッコ
良さは周囲を寄せ付けなかったと思っている。
ちなみに、幼少時代の私は暴れたら手が付けら
れないと匙を投げられた挙句、家の中で「原爆」
と呼ばれていた。
8/5fri
ホーン越し やや声低く 大暑かな
(ほーんごし ややこえひくく たいしょかな)
上向いて ヴィーナス夏の かんばせを
(うえむいて びーなすなつの かんばせを)
揺らぐごと 雲海に浮く 肩の小屋
(ゆらぐごと うんかいにうく かたのこや)
8/4thu
外人の 教師が走る 夏の朝
(がいじんの きょうしがはしる なつのあさ)
※オーストラリア出身の幼稚園の外人先生が走
る。いつも遅れてくるようだ。おはようござ
いますと挨拶する表情はいつも照れている。
大きい幼稚園は差別化の目玉として英語教育
を掲げる。ネーティヴの先生がいますよとい
うわけだ。しかしそれ以外の仕事もなんでも
やらされるみたい。園児を乗せたバスが着く
と、にこやかにお迎えする。到着園児の顔、
人数、バスの座席点検・・・朝から大変だ。
8/3wed
潮干狩り 一坪ほどが わが漁場
(しおひがり ひとつぼほどが わがりょうば)
※海上は風通し万全だけれど、アサリを求めて
さまようと予期せぬ密にもなりかねない。そ
れで「動き回らないで」とスピーカーが。マ
スク着用の注意はないが、しっかり着けてい
る人が多い。もう今年は終わり、死なないで。
8/2tue
ほろ酔いの 教師は黒く 大夕焼
(ほろよいの きょうしはくろく おおゆやけ)
※部活の指導を終えた教師は自転車でいち早く
ご帰還。近くの一杯飲み屋に駆け込む。真っ
赤な顔で家に向かう頃、生徒たちに会う。そ
して「おう、気をつけて帰れよ」と。自転車
はすでにふらふら・・・。世の中がすべて今
より寛容な時代。
8/1mon
雨音は 夢か幻聴 蝉しぐれ
(あまおとは ゆめかげんちょう せみしぐれ)
※深夜確かに雨音を聴いた。朝になってあれは
雨でなかったとがっかりすることのないよう
に、寝床でしっかり耳をそばだてた。しかし
朝がっかりした。余計落胆した。降雨のシル
シは露ほどもない。
今朝はほんのちょっとだけど涼しいが、これ
ぞ降雨のシルシでは? 家人はすげなく否定。
降雨なしが決定。
これからは寝床から起きて立って外を眺めて
確認しようということになった。もっとも小
生は少年時代に寝ぼけ癖の輝かしい戦歴があ
るから、起き上がっての確認もそこまで含め
て睡眠中の出来事となるかも。
認知症の忍び寄っているせいなのか、熱中症
近辺の暑さのせいなのか?
**********
7/31sun
風鈴や 南部湯宿の 闇の濃さ
(ふうりんや なんぶゆやどの やみのこさ)
※花巻市郊外の花巻温泉郷台温泉に宿泊したこ
とがある。いい湯いい宿だった。遅くついた
のに印象深いのは夏の闇の深さと透明な湯の
せいか。
7/30sat
兜虫 遅き経済の 良さ知らず
(かぶとむし おそきけいざいの よさしらず)
※この国はかつて高い経済成長を実現し、効率
第一を叫んで、その果実を満喫した。その頃、
個人商店は消え失せ、全国の街々が画一化し
ていった。背後で家庭が地域が変質した。
人間だって(後の言葉で言えば)クローンの
ようなサラリーマンが労働者が生きがいとし
て、その路線に沿い、貢献した。絶頂時には
「21世紀は日本の世紀」とまで。
ところが今、「失いし20~30年」とかを
聞いている。聞いて久しい。
「経済成長は神話だよ、続かない」「多くを
失っているんだよ。今良く考えなければ手遅
れになると・・・」50年以上前にアンチ高
度成長を言った人はいっぱいいたね、そう言
えば。ためにする人も多かったが、深刻な正
論もあった。
7/29fri
煙草屋の 解体終わり 晩夏なる
(たばこやの かいたいおわり ばんかなる)
※店先販売はとうの昔にやめ、長いこと自販機
がならんでいた。不思議なもので店も住まい
も一緒に解体されると、かなりのおばあさん
が日がな店番をしていたことが思い出される。
7/28thu
夏号の 稿を渡せり 白き道
(なつごうの こうをわたせり しろきみち)
※一回きりと代理を頼まれた。夏を迎えるエッセ
イなんでも、という。地域のミニコミ誌みたい
なもの。安請け合いした直後に梅雨が明け、真
夏の暑さが襲ってきた。「なんでも」を頼りに
やっとこ駄文を弄した。どうせ誰も見ない、と
思ったことを後悔した。
7/27wed
端居やめ 犬の背たんと 流しけり
(はしいやめ いぬのせたんと ながしけり)
冷麺や 腰にさしたる 扇子かな
(れいめんや こしにさしたる せんすかな)
7/25mon
夏稽古 代役の子に 黒子あり
(なつげいこ だいやくのこに ほくろあり)
夏稽古 来ぬ子の役を 全部やり
(なつげいこ こぬこのやくを ぜんぶやり)
※地域で演劇の指導をしている人の稽古場を端
で見せてもらった。こんな人がいることが大
変貴重に思えるが、やはりコロナ禍のせいで、
せっかくの夏休みの強化練習も参加者が思う
に任せないとのことだ。
7/23sat
蝉時雨「巴里は燃えているか」聞こゆ
(せみしぐれ ぱりはもえているかきこゆ)
百日紅の赤「巴里は燃えているか」
(さるすべりのあか ぱりはもえているか)
※NHKスペシャル「映像の世紀」シリーズの通
しのテーマ。作曲した加古隆のインタビュー
番組を聴いた。やっぱり憎いねェ。
7/22fri
百日紅 警報の声 流れけり
(さるすべり けいほうのこえ ながれけり)
※当家の一本の桃の木。小粒とは言え実は多く
たわわだが、今年は虫の被害が多かった。プ
ラムのカイアガラムシに気を取られノーケア
だった。
やっと不順な天候の合間を縫って収穫し終え
た。さて来年に向けてはどうしようか? 思
案を始めている。
7/20wed
ああいえばこういう夏の国訛り
(ああいえばこういうなつのくになまり)
※Lineでのテレビ電話、これが少し前だったら、
「用もないのに顔はいらない」とか言って一
方的に敬遠したろうに、この齢になると、晩
くやってきた、この便利な仕組みに結構素直
になじんでいる。年齢による羞恥心の欠如?
いやそんなことをいうほど衒いもない。
7/19tue
夏時雨桃の実落ちる音にせく
(なつしぐれもものみおちるおとにせく)
※不順な天候が続く。担当の雑草刈りも果樹の
世話も意に沿っては進まない。やっぱり九州
山口地方に梅雨末期に似た豪雨の被害が心配
になる。
7/18mon
祇園会や 小雨に白の 角隠し
(ぎおんえや こさめにしろの つのかくし)
※故郷の近く会津田島町の祇園会のメインは花
嫁行列。今年はどうなるのだろうか? 近年
は嫁のナリテが町の内外から押し寄せるとい
う。7月16日は1月16日とともに、昔の
言葉で「藪入り」、奉公人や嫁入りした娘が
実家に里帰りした日だ。今や完全な死語。
こちらの花嫁はその日のうちに帰るのだろう。
7/17sun
宵山に 泣いたらあかん 稚児の声
(よいやまに ないたらあかん ちごのこえ)
※久しぶりの京都祇園祭のフル日程が無事に進
むことを切に祈る。NHKドラマ『京都人の密
かな愉しみ』はええなァ。直近は「Blue修業
中 門出の桜」かな。源孝志ディレクターに
よるもの。くせはあるものの、ええ腕しては
るわァ。
7/16sat
夏の雨 頼朝が行く 国境
(なつのあめ よりともがいく くにざかい)
※近くに鎌倉街道という古道がある。随分説明
を受け、フィールドワークにも出かけたが、
仔細の記憶はゼロ。ただ南の安房の国から上
総の国に、頼朝が土地の豪族、兵を募りなが
ら北上したのはテレビの通りらしい。
7/15fri
ラケット背に 女剣士が 夏椿
(らけっとせに おんなけんしが なつつばき)
※小雨の中を自転車で行く姿は凛々しい。コー
ト使えまいに、と思うが今は体育館で大勢で
乱打練習が出来るらしい。
7/13wed
短夜や ひそかに話す 人通る
(みじかよ やひそかにはなす ひととおる)
夏帽子 カフェを待つ間の 立ち向かい
(なつぼうし かふぇをまつまの たちむかい)
※カフェテラスという屋外の店が大都市で増え
ている。最近は地方都市でも狭い舗道を占拠
してテラスと称しているのが多い。ましてや
そこの空くのを待っている御婦人連がある。
7/11mon
命がけ 炎暑の選挙 いかと見る
(いのちがけ えんしょのせんきょ いかとみる)
※参議院選挙が終わった。普通の人が普通に与
えられる選挙権、それは勝ち取った権利。被
選挙数の比較優位によってのみ代議員となれ
る。この価値をどうみる、どうみるべきか?
これのない国々の人々よ。
7/10sun
短夜に口の遅さを嘆じけり
(みじかよにくちのおそさをたんじけり)
※加齢とともに口が重くなる、口数が減る。語
彙も減る。自分だけはそこまでにはならない
と、根拠なしの自信もあるにはあったのだが、
そんな希望もあえなくコロナ禍によって潰え
去った。
7/9sat
涼しけり政治の海に笑み消えぬ
(すずしけりせいじのうみにえみきえぬ)
長州と江戸の間で夏憤死
(ちょうしゅうとえどのあいだでなつふんし)
※元首相の街頭演説中の死。毀誉の混じるとこ
ろはあったが、圧倒的な天性とそれ故のゆと
りとユーモアを備えた政治家。合掌。
7/8fri
若妻が 夫の腕ひく 夏木立
(わかづまが おっとのうでひく なつこだち)
杖を持て 実を引き寄せて 袋掛け
(つえをもて みをひきよせて ふくろがけ)
7/7thu
築地塀 驟雨のあとを 見せてあり
(ついじべい しゅううのあとを みせてあり)
※文化財に指定されている江戸時代の築地。荒
い素地がむき出しになっているから年々の雨
等による浸食が心配だ。とは言え、俄雨の後
の箇所を指でエグルように強く触れてみた。
大丈夫だ。指にはなにもついてこない。
7/6wed
浮雲の 行先知らず 芙美子の忌
(うきぐもの いきさきしらず ふみこのき)
※林芙美子の「浮雲」をネットの朗読で全編聞
いた。全部で8時間余り。戦争と男と女の物
語。名匠成瀬巳喜男、高峰秀子、森雅之主演
の同名の映画も鮮明に覚えているが、ネット
朗読版も気に入った。忍耐あっての「聴破」
だが、この長い時間が戦中戦後の時間の経過
と変遷を味わうにはよりフィットするのかも
知れない。芙美子忌は6月28日。
7/4mon
暁に僅かに僅かなれど喜雨
(あかつきにわずかにわずかなれどきう)
※台風の影響で暑さをもたらした気圧配置が崩
れ、雨模様の不安定な天気になった。文字通
りの「喜雨」。西日本の豪雨の気配がないで
もないが、当地当家の野菜、果樹にとっては
喜雨だ。人間にとっても。
7/3sun
なお強き 膝をさすりて 半夏かな
(なおつよき ひざをさすりて はんげかな)
7/2sat
半夏生 犬ともに我れ 脚強く
(はんげしょう いぬともにわれ あしつよし)
※山登りなどには長くネックになっていた右膝
が、この十年近く朝夕の平地歩行には悲鳴を
あげず、持ちこたえている。幸い今に至って
も平地に限れば2、3時間連続でも行ける。
これも、臆病に無理を避けたこと、そして我
が家の犬のお蔭だ。
7/1fri
街ゆがみ 夏の絵描くは ゆがむまま
(まちゆがみ なつのえかくは ゆがむまま)
※都心の馴染みの通りもしばらく見ぬ間に変貌
し、ニョキニョキと高層マンションとやらが
両側に。不自然に見上げてやっと変化を知る。
猛暑がその歪みを激しく助長する。
ダクタク句集2022年(令和4年)上期 自選集 [自選集2022]
6/30thu
果樹の実の 普段のように 夏越しかな
(かじゅのみの ふだんのように なごしかな)
※家を取り巻くように狭い土地にいくつもの果
樹があり、今年も至極順調だ。このような酷
い環境でもと思わざるを得ない。今日も酷暑。
6/29wed
半休を 取りて谷中の 沙羅を見に
(はんきゅうを とりてやなかの しゃらをみに)
※勤務時代の半休を思い出した。昼前に会社を
辞すともう自由、どこに行ってもすぐそこ。
この季節には日暮里駅に行って、谷中、上野
を通って御徒町まで。こんなクソ暑い日では
なかった。
6/28tue
じりじりと 梅雨明けの日の 静かなる
(じりじりと つゆあけのひの しずかなる)
松落葉 園児マスクを 外さざる
(まつおちば えんじますくを はずさざる)
片陰を 六月とても 片陰を
(かたかげをろくがつとてもかたかげを)
※梅雨が明けた。今度の明け方が如何に稀なこ
とかを述べ立てる。仕方がない、こっちも茫
然自失である。
6/27mon
ニュース見る プラム凍るを 砕きおり
(にゅーすみる ぷらむこおるを くだきおり)
※ニュースを見続けることも戦争反対の意思表
示だとか。それにしてもかなりの苦痛を伴う。
ウ軍劣勢を仔細に伝える映像が続く、ついプ
ラムをがぶりと・・・。
いかん、いかん、昔の歯と違うのだから。
6/26sun
今朝1メートル20の桔梗咲く
(けさいちめーとるにじゅうのききょうさく)
生きており 鼻毛が騒ぐ 青葉風
(いきており はなげがさわぐ あおばかぜ)
6/25sat
後頭部 撮りて見入るや 夏の月
(こうとうぶ とりてみいるや なつのつき)
※「後ろ髪がもじゃもじゃだよ。床屋に行った
ら?」と言われて鏡の前に。スマホをかざし
カメラで見れば、自らの後頭部がチェックで
きる。「まだまだ大丈夫!」。しかし便利ば
かりではない。後頭部のてっぺんの薄さをい
やでも確認することになる。お月様。
6/24fri
返信に 水ようかんが あそことぞ
(へんしんに みずようかんが あそことぞ)
※妻の留守は四季を問わず快適だが、今日は当
地も初の真夏日になろうかという暑さ、節電
協力ではないがエアコンなしでいく。
6/23thu
沖縄忌 後の沖縄 よろしくと
(おきなわき のちのおきなわ よろしくと)
※1945年6月海軍司令官の大田実海軍中将
は自決直前に海軍次官にあてた電文で、沖縄
戦の惨状と沖縄県民の献身をつづり、「後世
特別の配慮を」と訴えた。
原文の最後は以下の通り。
「一木一草焦土ト化セン 糧食六月一杯ヲ支
フルノミナリト謂フ 沖縄県民斯ク戦ヘリ
県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ 賜ランコ
トヲ」
復帰後の50年、特別の配慮がなかったとは
思わないが、十分だったとはとても思えない。
6/21tue
夏至の陽は 毒消しとなる 街に出よ
(げしのひは どくけしとなる まちにでよ)
黄金虫 ぶどうの葉食う かすかなる
(こがねむし ぶどうのはくう かすかなる)
6/20mon
方丈を 走る囃子や 山車なくも
(ほうじょうを はしるはやしや だしなくも)
※夏の催しのお祭り、盆踊りを忘れないでと、
祭り囃子をスピーカーに載せたクルマが町内
を回る。かえって寂しいかな?とも思うが町
内の役員のせめてもの心配り。
6/19sun
父の日や 藤村が字を 真似しおり
(ちちのひや とうそんがじを まねしおり)
※父は若い頃から島崎藤村に傾倒していた。昭
和20年代の家の本棚に藤村全集が揃っていた
し、単行本、詩集も豊富だった。なによりの
証拠は藤村の字、書体に憧れ、懸命に真似て
いたことだ。毛筆もペン字も後年聞かされて
から眺めると随分似ている。さすがと思う。
6/17fri
梅雨昏し 四山のあるを 瞑想す
(つゆくらし しざんのあるを めいそうす)
※曇り空の裾に真っ黒な雲が広がり急に暗くな
った。暗さは増すのに雨は降り出さない。近
くに高い山があって周囲に立ち塞がっている
様を想像できる。
6/16thu
あじさいは 素焼きがいいか 惑いおり
(あじさいは すやきがいいか まどいおり)
鬼灯を 鳴らす名人 亡母なりき
(ほおずきを ならすめいじん ははなりき)
※赤く熟れた鬼灯の実を取り出し、楊枝等で慎
重に中の汁体(種?)だけを取り除け、外側
の皮のみとする。これを口に入れ、空気を入
れて膨らましたら舌と口蓋の間に挟んで空気
を出し、音を出す。
汁欲しさに何度も作りはしたが、一度も鳴っ
たことはなかった。
6/15wed
梅雨寒や テレビの欄は スルーして
(つゆざむや てれびのらんは するーして)
アジサイや 紙と腕を越え 色過剰
(あじさいや かみとうでをこえ いろかじょう)
※絵画教室も地味に控えめな集まりを続けてい
るうちに、当市コロナ禍もはっきり下火にな
ってきた。持ち寄ったアジサイは色の多彩さ
だけでなく、形も様々だ。描くには当惑気味。
6/14tue
虞美人草 昭和遠しに 頷きし
(ぐびじんそう しょうわとおしに うなづきし)
※降る雪や明治は遠くなりにけりは大学生だっ
た中村草田男が昭和6年に詠んだ名句。明治
が行って20年の頃、昭和が行って今は34
年。計算するまでもないが。
6/13mon
妻帰る 三浦三崎の 開き鯵
(つまかえる みうらみさきの ひらきあじ)
※フェリーで久里浜から帰って来る。こっち岸
も魚は本場だが、持たされるままに鯵の干物、
申し分ない。
6/11sat
値上げにも 三度の飯や 梅雨晴れ間
(ねあげにも さんどのめしや つゆはれま)
泰山木 エバーグリーンと 唱えた日
(たいさんぼく えばーぐりーんと となえたひ)
※元勤務先製鉄所の50年間の軌跡をドキュメン
タリーに仕立てて放映していた。懐かしかっ
た。50年前の発足時の熱い思いは事業の様変
わりはあっても今も当事者の胸の中にあると
感じた。
6/10fri
立葵 赤を框の 前に見る
(たちあおい あかをかまちの まえにみる)
※当地ではタチアオイの咲き始めと琉球月見草が
いつもいっしょだ。そしてタチアオイの最初は
大抵赤。今年はそれらよりも梅雨の入りが先行
した。
6/9thu
方丈記 古き女優の 声のごと
(ほうじょうき ふるきじょゆうの こえのごと)
※愛聴していたYouTubeコンテンツが消え怒っ
ていたが、そこは無尽蔵、類似サイトも多く、
探す楽しみを味わっている。方丈記解説文の
朗読ではナレーターがあの田中絹代の声のソ
ックリさんで気に入っている。
6/8wed
盆踊り 中止を決めて 梅雨入りぬ
(ぼんおどり ちゅうしをきめて つゆいりぬ)
※町内の役員会、3年連続で盆踊り取りやめを
決めた。子供や年寄り中心の催しだから、も
しものことを考えての決断。
6/6mon
蜻蛉消え 紫式部も 五月闇
(かげろうきえ むらさきしきぶも さつきやみ)
※YouTubeで聴いてきたNHK古典講座「紫式部
日記」が忽然と消えた。NHK関連の著作権者
側がアカウントごと消去したらしい。
ウワー、突然こんなことがァ・・・愕然とし
た。王朝日記シリーズでは更級日記、和泉式
部日記、蜻蛉日記と聴いてきたが、それらは
全部消えた。いずれ繰り返し聴くはずだった。
6/4sat
うこぎ味噌 作らず終いと いい給ふ
(うこぎみそ つくらずじまいと いいたもう)
※格好の話題にうこぎ味噌が浮かび電話をした
が、今年はとりやめたと。垣根の新芽がやや
少なかったから様子を見ているうちに・・・、
とのことだ。電話することが目的だった。
うこぎの天ぷらが話題になった。ネットで買
えるかな。
6/3fri
五月晴 早書き無理も 苦にならず
(さつきばれ はやがきむりも くにならず)
※しゃちほこばって字を書くと手と指がこわば
って、ひどい時には筆が暴走する。気をとり
直して持ち直して書くと回復する。結構同じ
症状の人がいるという。老化現象の一つとか。
なに、緊張して字を書く機会なんて殆どない
し、あってもゆっくり書けばいい。
6/2thu
あじさいや 慎重いまだ 剥がれざる
(あじさいや しんちょういまだ はがれざる)
ドクダミの 節で曲りて 武骨なる
(どくだみの ふしでまがりて ぶこつなる)
6/1wed
夏空や いとうあさこの 生きるって
(なつぞらや いとうあさこの いきるって)
※ラジオのインタビュー番組で「いとうあさこ」
を聞いた。最後半でこれからの抱負と訊かれ、
ただ「生きる」、「生きること」って答えて
いた。孤独な気っ風を感じたね。
**********
5/31tue
南瓜咲く 雄しべ貰いて 婿となす
(かぼちゃさく おしべもらいて むことなす)
※初夏の間は虫たちに任せておけない。しかし
雌しべと雄しべがタイミング良く揃わないこ
とがある。そこで隣近所の畑に声をかける。
5/30mon
祭り化粧 見知らぬ顔と なりて笑む
(まつりげしょう みしらぬかおと なりてえむ)
5/28sat
御用聞き バイクが登る 五月晴
(ごようきき ばいくがのぼる さつきばれ)
※原付バイクと今も言うのか?軽いエンジン音
でゆっくり急坂を登っていく。新緑の坂道。
御用聞きに違いないと思った。御用聞き?今
どき? あの音、ポンポン蒸気を思い出した。
古いなァ。
5/27fri
風薫る さすが汀子の 遺文かな
(かぜかおる さすがていこの いぶんかな)
※虚子の孫稲畑汀子がこの2月に亡くなった。
父の後を継いでホトトギスの大所帯を切盛り
した。最晩年の素直な句境は得難い。
5/26thu
空想は 卯の花髪に 飾る人
(くうそうは うのはなかみに かざるひと)
※NHKの古典講読、王朝日記の世界はいよいよ
「紫式部日記」に入った。散歩しながらYou
Tubeで聞き流しするのだから、もとよりいい
加減なものなのだが、何回か同じところを繰
り返し聞くものだから何%かは頭に残る。原
文に親しむには程遠いが・・・。
既に終わった「更級日記」「和泉式部日記」
「蜻蛉日記」に較べると、理解度がいいのは
何故だろう。ホッとしている。
5/25wed
バイカウツギ バッハの森の ふところに
(ばいかうつぎ ばっはのもりの ふところに)
※バッハのピアノ曲はもっぱらグールドで聴く
ようになった。バッハとて最近はやや凝った、
変形気味の演奏が目立つ中で、正統派の演奏
を聴く思いがする。あのグールドがである。
5/24tue
蘇る バラはアーチを またぎ咲く
(よみがえる ばらはあーちを またぎさく)
グールドの 親ほどになり 五月雨
(ぐーるどの おやほどになり さつきあめ)
※一回り年長のグールドをその活躍の時代から
愛聴している。50歳で急逝した彼は、今や自
分の子供の年齢だ。高価なレコードはお宝も
のだが、YouTubeで毎日のように違った彼を
聴けるのも今日なればこそ。演奏しながらの
ハミングというかうなりというべきか、これ
もちゃんと残っている。(1932-1982)
5/23mon
泰山木 見上げるほどに 蕾増え
(たいさんぼく みあげるほどに つぼみふえ)
※その蕾の小さいうちは葉裏の色と混じり合い
わからない。5月20日を過ぎる辺りでと次
々と大きくなり、真っ白な見事な蕾に、そし
てやがて花開く。この季節に亡くなった母の
記念樹と一人で決めている。
5/22sat
柿若葉 セピアな祖母の 顔ほどに
(かきわかば せぴあなそぼの かおほどに)
※昔は写真はなんであれ貴重だった。黒いシー
トの厚いアルバムに貼られた写真は枚数が限
られたが故に、その時々を思い返す手段だっ
た。それが今は・・・省略。
5/20fri
普段着を 詫びて淑女の バラの香を
(ふだんぎを わびてしゅくじょの ばらのかを)
※バラ園は谷津遊園の跡地。遊園はライダーや
プールなど先端の施設を誇ったが、昭和57年
に閉園した。40年も前のことだ。
行かばやと思いし園は白黒の
写真となりてバラ園飾る
5/19thu
バラに寄す 皺ものびてる 至福かな
(ばらによす しわものびてる しふくかな)
※開花の盛りを越えたというので急遽谷津バラ
園に出掛けた。駐車場を心配したが、ウィー
クデイの午後でなんなくセーフ。幸せそうな
顔、顔がいっぱい。時間ゆっくり。
5/17tue
神田祭 女坂急を ものとせず
(かんださい おんなざかきゅうを ものとせず)
※神田祭は今年2022年偶数年とかで陰祭。ハイ
ライトのひとつ神輿宮入とかは行われなかっ
た。境内からお囃子が聞こえてくると、明神
下から女坂の石段を駆け上がる。比較的近く
に住んでいた頃の、昔々のお話。
5/16mon
カレンダーに桃の摘果と書き込みぬ
(かれんだーにもものてきかとかきこみぬ)
※晴れたら・・・、草むしり、カイガラムシ退治、
ぶどう誘引、桃摘果と労働項目が増えていく。
雨模様のままでもいいっていう気になってきた。
5/15sun
ジャガイモの 花は色あり 長雨よ
(じゃがいもの はなはいろあり ながあめよ)
夕闇に カラー一列 浮かびおり
(ゆうやみに からーいちれつ うかびおり)
※今年4月後半以降関東地方の南部は不純な天候
が続く。ここ房総半島は長雨の後も曇りが続き、
今日も雨模様。
5/14sat
梅雨前の なお梅雨らしき 雨雨が
(つゆまえの なおつゆらしき あめあめが)
薔薇見行 晴れの予想に 恵まれず
(ばらみこう はれのよそうに めぐまれず)
苗見やる 暇なき雨 線状の
(なえみやる いとまなきあめ せんじょうの)
5/13fri
新緑や 名前をずっと 思い出しつつ
(しんりょくやなまえをずっとおもいだしつつ)
※新緑は今が最高。家を出るときから或る人の名
前が思い出せないままだ。目は新緑を愛でてい
る。・・・夏めく、認知症めく。後期高齢者の
暗記試験は満点だったのに・・・。
5/12thu
薔薇の花 吉事を待たず 咲き揃う
(ばらのはな きちじをまたず さきそろう)
雨雲に追われ 野ばらの家の前
(あまぐもにおわれ のばらのいえのまえ)
5/11wed
夏めいて 頭の吹き出 消えにけり
(なつめいて あたまのふきで きえにけり)
※晴れた一日、この時節は寒くも暑くもなく、湿
度も低いし、空気が澄んで正に薫風の光景。一
番贅沢な一日。
5/9mon
青堀の 駅の前なる 古墳初夏
(あおほりの えきのまえなる こふんしょか)
※千葉県は古墳の数では近畿諸府県に比しても遅
れをとらぬ多さであるという。案内板、説明板
の充実、メディアでのアピールなどPRに努めて
いる。
5/8sun
年一度 筍掘りて 友となり
(ねんいちど たけのこほりて ともとなり)
筍を 分けて竹婆の 友となり
(たけのこを わけてちくばの ともとなり)
筍で 通じ壮なり 三品食い
(たけのこで つうじそうなり みしなくい)
※当地の孟宗竹掘りはもう終盤。タケノコ三句。
殆ど川柳だが、家内とその友に感謝。小生はお
相伴に与っている。
5/6fri
立夏の日 カイガラムシの 蔓延れる
(りっかのひ かいがらむしの はびこれる)
今ほどに 端午の写真 あらばこそ
(いまほどに たんごのしゃしん あらばこそ)
※端午の節句に立派な武者人形の前で微笑む男の
子の映像を見た。晴れの舞台にいい写真もムー
ビーすら手軽に残せる時代だなと思ったが、今
日どれだけの家庭でこうした節目節目のお祝い
や、季節の催しをしているだろうか? ネック
はお金ではない。
5/5thu
半袖や オランダ帰りの 鯉のぼり
(はんそでや おらんだがえりの こいのぼり)
大凧や 駐車場行く 連法被
(おおだこや ちゅうしゃじょういく れんはっぴ)
浜松や 大人の揚げる 凧の音
(はままつや おとなのあげる たこのおと)
※5月連休後半に浜松の大凧上げが開催される。
「浜松まつり」という。久しぶりのほぼフルバ
ージョンとか。風がなければ凧が上がらず、
あればあったで凧が乱舞して合戦ともなれば恐
ろしいまでの音が響く。
5/4wed
蝶々が 世をば明るく してもなお
(ちょうちょうが よおばあかるく してもなお)
店先の 春のブラウス 少し褪せ
(みせさきの はるのぶらうす すこしあせ)
5/3tue
春愁を払いのけよと一日吹く
(しゅんしゅうをはらいのけよとひとひふく)
春の雨 人犬濡れて 意気いまだ
(はるのあめ ひといぬぬれて いきいまだ)
※今日は打って変わってきれいな晴れ日。気温も
ぐんぐん上がる。当地観光地とされる所の一部
をを巡回? どこも連休の人出という感じが戻
っている。テークアウトの弁当をクルマの中で
食べると、こちらも外出・外食をした気分にな
った。
5/2mon
八十八夜 欠けたる急須 捨てられず
(はちじゅうはちや かけたるきゅうす すてられず)
春昼や 鮮魚卸しは 店洗う
(しゅんちゅうや せんぎょおろしは みせあらう)
5/1sun
バス停の あるコンビニに 春幟
(ばすていの あるこんびにに はるのぼり)
春の風 今年一枚 耕さず
(はるのかぜ ことしいちまい たがやさず)
※新たに休耕田かと思ったが、品種別の需給の関
係だとか。一時は稲作担い手の減少・高齢化で
休耕田が増え、やがて担い手の統合と耕作大規
模化とで今はほぼ安定していると聞いていたが、
様々な事情があるようだ。
**********
4/30sat
我が道を 行く人稀に 荷風の忌
(わがみちを いくひとまれに かふうのき)
白足袋の 軒に干されて 四月尽
(しろたびの のきにほされて しがつじん)
※NHKの王朝文学講座をYouTubeで聴き始めて3
カ月。更級日記、和泉式部日記を聞き流した。
犬の散歩の途中にである。それでも多く登場す
る和歌に接して親しみを感じるようになった。
今日の後者の句にも、続けて七七が出る。上等
ではないが。
「白足袋の 軒に干されて 四月尽
紺地の足袋の 普段なつかし」
「良いことの ながりし四月 疾く過ぎん
枕に脈の 音の健やか」
4/29fri
あちこちで 遂に顔伏す 目借時
(あちこちで ついにかおふす めかりどき)
合宿所 窓開け放つ 春の闇
(がっしゅくじょ まどあけはなつ はるのやみ)
※コロナ禍の近況2句。図書館は読書室使用を条
件付きで再開。隣の人が遠いのでつい安心して
コックリ。昨年クラスターを出してしまった高
校の大きな合宿所は今なお閉鎖中。
4/28thu
新年度 なお坂道の 塾通い
(しんねんどなおさかみちのじゅくがよい)
雪形を 見る人しのぶ メールかな
(ゆきがたをみるひとしのぶめーるかな)
4/27wed
描きつつ 春は病いの 憂さくらべ
(えがきつつ はるはやまいの うさくらべ)
オオデマリ アイリスともに 吾嬲り
(おおでまり あいりすともに われなぶり)
※月2回の絵画教室は絵よりもおしゃべり? オ
オデマリと紫色のアイリスの対照の妙は難しす
ぎる。
4/26tue
草を刈る 鎌の研ぎ初め 日永かな
(くさをかる かまのとぎそめ ひながかな)
ようやくの雨音や 晩春を寝る
(ようやくのあまおとや ばんしゅんをねる)
4/25mon
逃げ水の 先に閉じにし 校舎あり
(にげみずのさきにとじにしこうしゃあり)
※こちらも御多聞に漏れず郊外の小中学校を中心
になお統廃合の話がある。生活圏、友人知人、
仕事や親戚などとの関係、果ては選挙の地盤な
ど、近くに訊けばナルホドと同情が大きくなる。
4/24sun
女二人 スイカの苗の 良し悪し
(おんなふたり すいかのなえの よしわるし)
※当地で西瓜の苗が植え時。例年のごとく2苗だ
けポットで買ってきた。ちょっと遅めのわりに
値段が安い。それでは接ぎ木の苗ではないなと
疑う。案の定。
4/23sat
春の黄に 土偶のまなこ 和らげり
(はるのきに どぐうのまなこ やわらげり)
石楠花や 女御の日記 思わるる
(しゃくなげや にょうごのにっき おもわるる)
4/22fri
田は霞む 植うる順番 我にあり
(たはかすむ ううるじゅんばん われにあり)
すみれ野に埃 顔出す戦車兵
(すみれのにほこり かおだすせんしゃへい)
※ウクライナの要衝マウリポリをめぐる局面が
最終期にある。すみれ野と街を蹂躙すること
は許されない。兵は無表情だ。
4/21thu
ミズキ咲き 木の花なべて 白い朝
(みずきさき きのはななべて しろいあさ)
※石楠花の白い花が満開で、白の花ミズキとク
レマチスが加わった。この季節は期せずして
我が家の庭はちょっと大仰だが「白の競演」
となる。花ニラの消えたあとには白い小さな
ユリ形の花が咲いて、地で白の駄目押しをし
ている。
4/20wed
城はサクラ 路地には黒き 板の塀
(しろはさくら ろじにはくろき いたのへい)
※郷里会津のサクラの盛りは子供時代の昔4月
20日前後であったと思う。戊辰戦役で城下
中心部の古い建物は残っていなかったが、城
下町の人の風情とその人々が家屋に託す矜持
がここかしこにあった(ように思う)。
4/19tue
こころみの 源氏分厚き 春の宵
(こころみの げんじぶあつき はるのよい)
※YouTubeのNHK古典講座で「更級日記」を散
歩の時に聞いている。慣れないことだけれど、
せっかくのスマホのギガを有効活用!するた
めだ。テキストもなし、理解不十分も気にし
ないで、45分×27回を一周聞き終えた。
かなりの新発見があり、大雑把でも習得の体
験は実に久しぶりだ。作者の源氏物語への傾
倒ぶりが随所に現れることも初めてわかった。
4/18mon
風やんで ほんの春雨 耳たてる
(かぜやんで ほんのはるさめ みみたてる)
奥穂高 置きし小石よ 風光る
(おくほだか おきしこいしよ かぜひかる)
めがねかけ 少なくなりし 芹摘みぬ
(めがねかけ すくなくなりし せりつみぬ)
4/16sat
数を聞く 老舗爺売る 桜餅
(かずをきく しにせじじうる さくらもち)
※この季節は桜餅専業とも見える。うーん、や
っぱりコンビニ買いのものとは違う。
花ミズキ 宝飾着物 買い取ると
(はなみずき ほうしょくきもの かいとると)
4/15fri
観音堂 五百年の春 大庇
(かんのんどう ごひゃくねんのはる おおひさし)
※桜見物の足を伸ばし、鳳来寺観音堂再訪を果
たした。初めの時よりしっかり保全されてい
るようで一安心。相変わらずの優美さ。周囲
のサクラを眺めて弁当を開く。
4/14thu
葉桜や 病院互いに 付き添いぬ
(はざくらや びょういんたがいに つきそいぬ)
石楠花の 蕾落とさじ 妻の声
(しゃくなげの つぼみおとさじ つまのこえ)
4/13wed
啄木忌 費え支えし 金田一
(たくぼくき ついえささえし きんだいち)
※同郷の先輩金田一京助は文学上の付き合いの
みならず、常に貧困だった東京の啄木に何く
れとなく援助をした。ちなみに小生の中高使
用の国語辞書は金田一の手になるものだ。
4/12tue
花ニラの 群れるを踏まず 猫黒子
(はなにらの むれるをふまず ねこくろこ)
花冷えや 今宵だけとて 床の暖
(はなびえや こよいだけとて とこのだん)
4/11mon
高齢者試験通れり春の膳
(こうれいしゃしけんとおれりはるのぜん)
※家人の免許更新試験、難関の暗誦試験を優秀
な成績で通過したらしい。これは医者の見立
て以上に安心材料、目出度い。
4/10sun
春の朝手の皺深くなりにけり
(はるのあさてのしわふかくなりにけり)
人間は退歩するらし春爛漫
(にんげんはたいほするらしはるらんまん)
4/9sat
山小屋の 春曙は 闇多く
(やまごやの はるあけぼのは やみおおく)
※久しぶりに若い時に山に行った夢を見た。真
っ暗な中でここはどこだろうと息をひそめて
いると、僅かな窓に山が次第に見えてきた。
安心。山小屋だ、ここは。
4/7thu
風車売り 夢に長屋の前におり
(かざぐるまうり ゆめにながやのまえにおり)
春灯 女二人の 声低く
(はるあかし おんなふたりの こえひくく)
※春は茫漠と夢に遊び、覚めては霞の果てに夕
日を見送る。やや退廃的な心地こそ、季節の
特権なりしも、それを許さざるはだれ。
4/6wed
眺めては また剪定の 日和かな
(ながめては またせんていの ひよりかな)
※柿の木も若芽が出てきた。当家で図抜けて遅
いのはぶどうだ。剪定は一応終えているので
格子のバーに誘引する。これもYouTubeで学
習したから方法は進化したはずだ。
ところが剪定のやり残しが多く見つかる。や
っぱり杜撰だな。
4/4mon
花冷えや 親のビデオの 仕舞い方
(はなびえや おやのびでおの しまいかた)
※生前の両親を撮影したビデオが結構ある。い
ずれもちゃんと編集整理したものだ。他のメ
ディアは散逸しても一向に構わないが、これ
だけは親の面影を残す唯一のものであり、大
げさだが墓をどう整理して後につなぐかを考
えるのと同じ心境だ。
4/3sun
蝉貰う人 喜寿となる 連翹忌
(せみもらうひと きじゅとなる れんぎょうき)
※4月2日は高村光太郎の命日。連翹忌という。
30年ほども前の出張の帰りに、友人と花巻市
郊外の高村光太郎旧居を訪れた。辺り一面深い
雪が積もっていて、今のように保存のための上
屋がなかった旧居は見るからに粗末で寒く、す
き間から雪原が覗けた。戦後すぐに、宮沢賢治
の縁繋がりでこの地を選び、隠れ住むように囲
炉裏に坐して自戒自省の数年を過ごした。
近くに農家はない、地元の人とも交わりを避
けていた。例外は村の子供たちで交遊があった
とか。特に花巻まで買い出しに行ってもどる光
太郎から飴玉を貰うのが楽しみだったと言う。
小さな彫り物を貰うこともあったとか。当時の
子供の一人が、たまたま我々が利用したバスの
運転手だった。発車時刻までの生き証人?の話。
4/2sat
ジャカランダ
ホウオウボクになに 四月バカ
(じゃからんだ ほうおうぼくになに しがつばか)
※熱帯三大花樹のことを言っている。もう一つは
アフリカン・チューリップ・ツリー。別名カエ
ンボク。日本でいうチューリップツリー(別名
半纏の木)とは似ても似つかぬが。
友人撮影の写真が載る蝶のカレンダー、4月は
ホウオウボクの真っ赤な花、花、花に憩うヘレ
ナキシタアゲハ。
4/1fri
柳芽吹く 根岸の里の くねり道
(やなぎめぶく ねぎしのさとの くねりみち)
※都心を歩く会は中断して久しい。遠慮のない友
人と連れ立っての歩き会は実に楽しいものだっ
た。子規庵を訪ねたあと根岸の古い道を辿ると
青々とした柳並木の道があった。5年ほども前
になる。季節は違うが光景がよみがえる。今は
子規庵も閉鎖中と聞いた。
**********
3/31thu
春に惑う 田舎住まいと 街住まい
(はるにまどう いなかずまいと まちずまい)
※コロナ禍で「なにがなんでも都会で」という考
えが見直されているという。もっと積極的に首
都東京と東京圏の規模縮小を図るべきだと思う。
事が起こったときに今の首都圏はゆとりが無さ
過ぎるからだ。しかし・・・
折しもこの週末、目黒川花見と宴会の席に誘わ
れた。即刻OK、久しぶりに歩きたい。いや、
やめとけ。
3/30wed
紫雲英田は みちのくにあり トラクター
(げんげだは みちのくにあり とらくたー)
※ようやく田んぼに人の動きが見えた。これから
春耕というか、4月中旬以降の田植えに向けた
耕しが始まる。間に合うのかなと心配になる。
3/29tue
落ち雲雀 見失うほど 草はなし
(おちひばり みうしなうほど くさはなし)
※雲雀は地方によっては姿を消したところもある
とか。ふんだんに見れる当地のアリガタミを再
認識。とはいえ、高速道路の騒音がなかった頃
はさらに格段に良かったのだが。
3/28mon
花曇り 夕餉の好み 尋ねらる
(はなぐもり ゆうげのこのみ たずねらる)
※ご飯のおかずを言い合っているとはなんと平和
ボケで、能天気なことか!と一喝されそうな塩
梅だ。まあ、いいではないか。・・・ちゃんと
ニュースは見ているし。
3/27sun
釘付けは 一人静よ 露天風呂
(くぎづけは ひとりしずかよ ろてんぶろ)
※午後になって雨模様だが気温は下がらない。当
家の桃の花は一気に開く。陽光桜、ソメイヨシ
ノ、桃、プラムなどの開花順はどうであったか、
記憶も曖昧になってしまった。
3/26sat
花種の 名を書く木札 二つ三つ
(はなだねの なをかくきふだ ふたつみつ)
※彼岸中には寒い日の戻りがあるというが、明け
て暖かさが戻ってきた。
春光や かおり貴き 娘あり
(しゅんこうや かおりとうとき むすめあり)
※初秋の9月に上総の国から京に向け、家族と旅
立った娘がいた。菅原孝標の娘13歳である。
この娘、源氏物語に憧れている更級日記の主役。
1020年のこと。ざっと1000年も前の話。
3/24thu
忘るるな メールで頼む さくら餅
(わするるな めーるでたのむ さくらもち)
花を見て より費やせり 御徒町
(はなをみて よりついやせり おかちまち)
※我が家のモモより早く開花したサクラも寒さで
もたもたしている。さて今日は?
3/22tue
春の雲 リルケ詩集の一個でも
(はるのくもりるけししゅうのいっこでも)
敦子女史 鴎外読めと言われ春
(あつこじょしおうがいよめといわれはる)
※春夏秋冬、読書の進まぬ理由をあれこれと並べ
る。今は眠気。
尾崎喜八「音楽への愛と感謝」(平凡社ライブ
ラリー)、著者は昔から尊敬する神様のような
人。怠る理由も許してくれる。
3/21mon
彼岸会も行った気になり庭の隅
(ひがんえもいったきになりにわのすみ)
山茱萸やウィルスいずれと思わしむ
(さんしゅゆやうぃるすいずれとおもわしむ)
※山間部に入ったところに山茱萸が咲き誇ってい
る里を見た。早春の花だが家の周囲では見かけ
ない。別名でハルコガネバナとか、幸運をもた
らすといい。
3/20sun
連翹や 登校の列より高く
(れんぎょうや とうこうのれつよりたかく)
連翹や 家建たぬ地の 主のごと
(れんぎょうや いえたたぬちの ぬしのごと)
3/19sat
落ち雲雀 見失わずに 草の陰
(おちひばり みうしなわずに くさのかげ)
今ならば 濃き草餅と 称えんが
(いまならば こきくさもちと たたえんが)
※母の草餅はヨモギが自ら選んで採集したものだ
けに草のにおい芬々で、子供の時分においしい
と言った記憶がない。
3/18fri
春眠や害鳥駆除のふれ聞こゆ
(しゅんみんやがいちょうくじょのふれきこゆ)
※曜日を決めて春秋に行う農村、野山での駆除。
害獣が対象の場合もある。猟銃を用いるのでオ
ダヤカではないが、実施反対派ではない。
3/17thu
涅槃会は 行けずに朝の まぼろしに
(ねはんえは いけずにあさの まぼろしに)
西行忌 彷徨ふ外の 兵ありて
(さいぎょうき さまよふとつの へいありて)
※旧暦2月15日は釈迦入滅の日。今年は中止。
西行はこの日にサクラの散る中で死にたいと歌
に詠み、何度も言っていたとか。なんと実際に
は翌日の16に亡くなった。
3/16wed
鳥曇り 北に平和を 言伝り
(とりぐもり きたにへいわを ことづてり)
※北に帰る準備に余念がない鴨たちに、せめても
のメッセージを託したつもり。
妻は日々 桃の蕾を 測りおり
(つまはひび もものつぼみを はかりおり)
※桃の開花の前にサクラが咲いてしまうのでは?
3/15tue
遅れ来し ラッパスイセン 仄かなり
(おくれきし らっぱすいせん ほのかなり)
※昨日の異常な暑さは植物に強烈な一撃になった
ようだ。圧巻は近所のふくらみかけた開花前の
木蓮が一日で全部開いたこと。見事を通り越し
て変身だ。脚色された舞台のよう。
3/14mon
子をなして 大事らくらく 嫁の春
(こをなして だいじらくらく よめのはる)
※甥の娘が嫁ぎ先で出産した。幼いころから男顔
負けのやんちゃぶりだったが、なるほど安産だ
ったらしい。電話口でも元気いっぱいだった。
3/13sun
花辛夷 今年は畔を 厚くせん
(はなこぶし ことしはあぜを あつくせん)
※東北地方では辛夷の花は農作業開始の目印とか。
当地では早い所で4月中旬に田植えをする。も
う農作業は始まっている。頑丈そうな分厚い畔
作りも今は機械が行う。
3/12sat
辛夷咲く 今年ラッパは 先駆けず
(こぶしさく ことしらっぱは さきげけず)
※辛夷が咲き始めた。上にコブシ、地にラッパス
イセンというのが定番だったが、今年は違う。
2月の寒さのせいか?でもサクラは例年並みだ
という。丈の短い植物が深刻に寒さの被害に遭
ったのかな。
3/11fri
昼前に 鶯餅の 店の前
(ひるまえにうぐいすもちのみせのまえ)
七輪の 目刺しのコゲと においかな
(しちりんの めざしのこげと においかな)
3/10thu
赤ともる ギフチョウを見し 春の茶屋
(あかともる ぎふちょうをみし はるのちゃや)
※友人が写真と文を担当した全編蝶のカレンダー。
3月は草丈も短い繁みに憩うギフチョウである。
3/9wed
雛仕舞う 長持ちの蓋 ギーとなり
(ひなしまう ながもちのふた ぎーとなり)
※余裕を持って雛を飾り、雛祭りが過ぎたら、だ
らだらせずに仕舞う。いずれにも気を配るゆと
りがあったものだ。
3/8tue
春蘭や病疲れの口多し
(しゅんらんややまいづかれのくちおおし)
※元気な知人が一人、ガンを患っている。なお意
気軒高で治療を受けてきたが、なかなか良い結
果が得られない。さすがに表情に弱さが見られ
るようになった。それでも話は殆ど先方から。
3/7mon
戸惑いぬ 溢るるほどの ミモザ来る
(とまどいぬ あふるるほどの みもざくる)
花ミモザ 図書館に行く 道しるべ
(はなみもざ としょかんにいく みちしるべ)
※例年よりずっと遅いミモザ。今年木を小ぶりに
しようというお宅から大きなバケツいっぱいの
ミモザが届いた。
3/6sun
春の路地 母の友 奥に住みたり
(はるのろじ ははのとも おくにすみたり)
※春一番の風もおさまる。この陽気は昔々の季節
の光景を運んでくる。
3/5sat
蕗の薹 秘めたる場所の いい時分
(ふきのとう ひめたるばしょの いいじぶん)
※昨年はゆったり構えていて終盤の食べごろのヤ
ツをごっそりやられたっけ。この暖かさだ。油
断は出来ない。
3/4fri
ラインにて 妹が句を見る 春の夕
(らいんにて いもがくをみる はるのゆう)
牡丹の芽 見知らぬ人に 教えられ
(ぼたんのめ みしらぬひとに おしえられ)
※兄弟とラインで顔を見たり、句を交換したり、
とてもコロナ禍前にはなぜか恥ずかしくて出来
なかったことだ。かと思うと初めての人に牡丹
の芽の違いを教えられたり、思わぬ交流は以前
と同じ。
3/3thu
雛の家 馳走したため 夕餉かな
(ひなのいえ ちそうしたため ゆうげかな)
※正式にお客を招いて食事をふるまう時には、そ
れがお祝い事でも不祝儀例えば法事とかの場合
でも、ご馳走を予め筆で認め、客に供したもの
だ。洋の東西を越えて共通しているものらしい。
3/2wed
低山の遠きにて春平らかなり
(ていざんのとおきにてはるたいらかなり)
※山高きがゆえに貴からず。房総の山々に高山は
ないが、深い無数の地の皺、人の住む多くの山
並みを作っている。低きがゆえにゆったりとた
おやかに見えることもある。
3/1tue
鷽を見し今日暖かき日となれり
(うそをみし きょうあたたかきひとなれり)
※今朝我が庭の梅の木に「鷽うそ」を見た。確か
に。頭の黒色、それに続くオレンジ・・・間違
いない。留鳥で今頃は低地で過ごすとあるから、
間違いないのだが何せ現れることが少ない。自
信はあるのだが、哀しいかな、ド素人+門外漢
だ。しかし人には尋ねない。しばらくは信じる
ことにした。
**********
2/28mon
西郷も 滴り弱き 春の雨
(さいごうも したたりよわき はるのあめ)
※今月は西郷輝彦が亡くなった。前立腺がんを患
っていたとか。合掌。多くのシニアが同じ道を
たどりつつある。小用は出るものの次第に弱く、
時間は長くなる。
2/27sun
移り紅 梅身を染めて 思い初む
(うつりべに うめみをそめて おもいそむ)
※梅の種類で移り紅というのは初め白で開花し、
次第に赤くなるらしい。2月の寒さ続きで梅の
開花は遅れていたが、この陽気で梅の恋が始ま
る?
草の芽の かすかな音の 続々と
(くさのめの かすかなおとの ぞくぞくと)
※球根類の芽出しが盛んだ。他の草花、雑草類も
一斉に地表に出るや、背を伸ばしている。
2/25fri
春の花 鬱なことども ともに増え
(はるのはな うつなことども ともにふえ)
※ウクライナ全土に。かの地の動向を日々記すこ
とはやめることとするが、どうにもこの鬱はや
るせない、見逃しがたい。
2/24thu
菠薐草 コロナ禍の年 青丈夫
(ほうれんそう ころなかのとし あおじょうぶ)
※昨日プーチンが動いた。
2/23wed
黒き幹 黒き節々 梅の花
(くろきみき くろきふしぶし うめのはな)
風の朝 初クロッカスの 地を割いて
(かぜのあさ はつくろっかすの ちをさいて)
2/22tue
看護師が 良く眠る夜 ヒヤシンス
(かんごしが よくねむるよる ひやしんす)
※都心で在宅医療の医院に勤務する親戚の娘が
帰ってきた。日頃心配し通しの親をよそ眼に、
実家での時間の大半をゆっくり眠って過ごし
たという。
2/21mon
全集に すき間のありて 漱石の日
(ぜんしゅうに すきまのありて そうせきのひ)
※今日2月21日は漱石が文部省から文学博士
の称号を打診され、肩書の要なしと回答して
辞退した日だとか。明治44年のこと。
2/20sun
旬の味 到着待てり 春灯り
(しゅんのあじ とうちゃくまてり はるあかり)
春の闇 再配達の 人の笑み
(はるのやみ さいはいたつの ひとのえみ)
※テレビの録画で「プレバト」を見た。お題は
「宅配の手渡し」であった。番組はいつもの
通りだったが、今回同じ題で自分も作ってみ
たのが上記の2句だ。いつも思っているが、
なかなか難しい、これだって「才能あり」は
難しかろうと思う。
2/18fri
電球に笠あり春に灯りあり
(でんきゅうにかさありはるにあかりあり)
※冷たい夕暮れ。近所の家に昔なじみの温かい
電球の灯りがともっている。昨今の明るいけ
れども真っ白な蛍光灯やLEDと違って、見て
いるだけで少しは温かくなってくる。
2/17thu
なすことのあれども春の朝寝かな
(なすことのあれどもはるのあさねかな)
遍路笠去年に廻りし人の笑み
(へんろがさこぞにまわりしひとのえみ)
※朝の夢うつつは値千金。日頃は犬の散歩で許
されないが、今朝だけは別。
友人の友人が四国遍路旅の話をしてくれた。
コロナ禍を思えば冒険と言うか一大決心であ
ったろう。彼に家族はいない。
2/15tue
房総の 光かくやと 春の海
(ぼうそうの ひかりかくやと はるのうみ)
※一年一回の脳MRI検査。昨日とは打って変わ
ってきれいに晴れ上がり、検査、診察後の展
望フロアからの景色が素晴らしい。やれやれ
また一年の命がつながった、と言えば大げさ
か?
2/14mon
ウクライナ 畑焼きしたき 人あらむ
(うくらいな はたやきしたき ひとあらん)
※今日一日は接種翌日とあって静養日。おかげ
で発熱、患部の疼痛、頭痛等は全くと言って
いいほどなかった。今回はモデルナ。
2/13sun
看護師の頬 冬残照の僅か
(かんごしの ほほ ふゆざんしょうのわずか)
※やっと3回目のワクチンを打った。周辺市町
村の知人よりはかなり遅め。4日前に接種券
が届いて、予約し、市の集中接種会場に行っ
た。かなり大勢の人がいた。医療関係の人が
言っていたが、遅れは明らかに接種券の配布
作業の遅れのせいだと。
2/11fri
剪定を 一日延ばす 余寒かな
(せんていを いちにちのばす よかんかな)
スコップも 農具も置いて 冴え返る
(すこっぷも のうぐもおいて さえかえる)
2/10thu
初午や 祠に餅の 紙包み
(はつうまや ほこらにもちの かみづつみ)
※農作業を始める日で、豊作を祈るお稲荷さん
のお祭り日とか。餅もそのままではなくて、
油で揚げたものだった。なるほどキツネ色だ。
2/9wed
針供養 和装で参る 生徒たち
(はりくよう わそうでまいる せいとたち)
※花嫁修業という言葉があった。生け花や茶道
は現在も盛んだが、めっきり姿を消したのは
洋裁、和裁の実用を兼ねた習い事。
2/8tue
マニキュアに選手の泪春灯り
(まにきゅあにせんしゅのなみだはるあかり)
※北京冬季五輪は悲喜こもごもの報道あり。
2/7mon
寝違えて 寒き春のみ 他見えず
(ねちがえて さむきはるのみ ほかみえず)
春嵐 ポンペイ見たし 上野は遠し
(はるあらし ぽんぺいみたし うえのはとおし)
※ポンペイレッドと呼ばれる色が印象的なモザ
イク画。関西の粋な日本家屋の壁色にも似た
色だ。
2/5sat
うかれ猫 続きし会は 画面越し
(うかれねこ つづきしかいは がめんごし)
※テレワークとかが普通になった今、積極的に
これを仲間内で活用する輩もいる。突如テレ
読書会をやろうとか、昔の同僚のテレビ顔合
わせをしようとか・・・。まあお断り。
テレビ飲み会に至っては仲間から「そのうち
春になったら」と遠ざけられたのにも拘わら
ず、立春のその日に呼びかけメールが再び舞
い込んだ。やれやれ・・・。
2/4fri
施設あり節分の声声続き
(しせつあり せつぶんのこえごえつづき)
春立ちて 咽喉を撫でさす 猫のおり
(はるたちて のどをなでさす ねこのおり)
2/2wed
冷蔵庫 朝に頓死す 春隣り
(れいぞうこ あさにとんしす はるどなり)
みぞれ日に 市原悦子の 声ありて
(みぞれびに いちはらえつこの こえありて)
※長いこと使ったものは不思議なことに同じよ
うな時期に更新時期が舞い込む。クルマも冷
蔵庫も・・・、心臓も消化器も・・・とかに
はならないようにしなくては。
2/1tue
大寒の地をはむ妻の新車赤
(だいかんのちをはむ つまのしんしゃあか)
※随分待たされた納車日が訪れた。今までのク
ルマとは年次が離れているので、安全機構や
ナビ、操作方法に至るまでかなり変化があり、
面食らっている。当家のクルマ使用と運転は
殆どが家内だが、慣れるまでは助け合いだ。
**********
1/30sun
蠟梅の寺は散歩に遠くなり
(ろうばいのてらはさんぽにとおくなり)
※片道4千歩近くの寺まで、久しぶりに今回は
クルマで赴いた。かすかだが馥郁とした香り
が漂っていた。以前は毎朝この近くまで歩い
て、帰路も徒歩だった。ところが歳だからと、
大して意識もせずに次第に歩数が減少してい
る。・・・歳と身体のいたわり過ぎかも。
1/29sat
春近し 仏頂面の 料理かな
(はるちかし ぶっちょうづらの りょうりかな)
※なんとなく春の兆しを追い求める気持ちがあ
る。確実な暦の展開をあてにしている。どこ
かでオミクロンの性状に気を許してるのかも
知れないが。
1/28fri
疎開知る 着ぶくれの人 門の内
(そかいしる きぶくれのひと もんのうち)
葬場の閉めたる広さ寒夜かな
(そうじょうのしめたるひろさかんやかな)
1/27thu
野水仙 はためくほどの 風となり
(のすいせん はためくほどの かぜとなり)
鉄火丼 どんと来たりて 寒四郎
(てっかどん どんときたりて かんしろう)
※世の中の活気という意味では否応なしの右往
左往、長い様子見だ。超越?至難の業だ。
1/24mon
三寒の膝粘り切り四温かな
(さんかんのひざねばりきりしおんかな)
動画が師 剪定すれば 春近し
(どうががし せんていすれば はるちかし)
※寒中冬籠りとは言え、コロナ禍対策としてで
あり、気分的には落ち着かない日々だ。読書
も切れ目だし、夢枕獏「白鯨」を読み始める。
アノ「白鯨」と較べれば超読みやすいが、
500頁超の厚さだ。
1/23sun
冬ざれや 故郷の大津絵 耳の底
(ふゆざれや くにのおおつえ みみのそこ)
※実に約60年ぶりに会津大津絵という民謡を
聞いた。祖母の小声の歌を聞いた時以来かも。
いくつもの曲がある中で、地味な曲調と戊辰
戦役とその後の暮らしをうたった歌詞は切々
と訴えるものがある。
1/21fri
新しき 回線通じ 今日大寒
(あたらしき かいせんつうじ きょうだいかん)
怒髪立つも 外の寒気で 鎮まれり
(どはつたつも そとのかんきで しずまれり)
※インターネット、光電話等の契約先を変更し
た。昨年の11月以来やっと全ての工事や手
続きが終了した。
1/20thu
蔵壁に 鴉の影が 日脚伸ぶ
(くらかべに からすのかげが ひあしのぶ)
※大寒の日。さすがに日没後は冷える。しかし
冬至から一カ月近くたって、夕方の定刻に出
かけると確実に明るくなってきている。冷え
てもアッタカイ感じだ。その足は鈍いが。
1/19wed
寒稽古 青の絵の具で 始め見ん
(かんげいこ あおのえのぐで はじめみん)
※千葉県も近く「蔓延防止」対象地域に指定さ
れる。絵画教室も今回で暫くは休止となる。
今年最初の会は季語「寒稽古」に当たるが、
絵の出来は並み。
1/18tue
軒めぐり どんどの藁を 給いたり
(のきめぐり どんどのわらを たまいたり)
※どんど焼きが近くの田んぼで町内ごとに行わ
れた。それに先立って子供たちは、風の吹く
寒い日に町内の商店などを回り、大声で藁を
出してもらった。あの頃の梱包の多くは稲わ
ら製の筵だった。
1/17mon
冬の虹告げ丁重な礼言われ
(ふゆのにじつげていちょうなれいいわれ)
この冬は 筆の遅きが さらになり
(このふゆは ふでのおそきが さらになり)
※何年か前から起こった手の強張り。やさしく
握って書く字がままならない。強張ってペン
先が暴走することもしばしば。それを避けよ
うとゆっくり、軽く・・・結果遅くなる。
1/16sun
寒寝床 本持つ指の 頼りなき
(かんねどこ ほんもつゆびの たよりなき)
※当地温暖ではあるが、エアコンなしの部屋の
未明はさすがにこたえる。「指出し手袋」の
出動も指先や腕全体の冷えにはかなわない。
1/15sat
ウィスキーの 新瓶となり 小正月
(うぃすきーの しんびんとなり こしょうがつ)
※小正月なんて一般家庭では半ば死語。小豆粥
とかどんど焼きとか遥か子供時代にははっき
り残っていたが。
1/14fri
雪の道 おすそ分けとて 姪来たる
(ゆきのみち おすそわけとて めいきたる)
※いただいたカステラがすごくおいしかったか
らと言う。2切れだけだけど、それで十分。
1/13thu
ツィッターも ラインも如かず 冬静寂
(つぃったーも らいんもしかず ふゆしじま)
※冷えたが穏やかに晴れ上がる。この静寂の魅
力に対抗できる音は? 主張と騒音のSMS、
ウィルス禍の激しい噂。・・・。
1/12wed
褞袍てふ 便利はなくて 読書かな
(どてらちょう べんりはなくて どくしょかな)
※椅子に座っても寝っ転がっても、上半身と手
元指先が寒い。ドテラとかワタイレとかが懐
かしい。ヒートテックとかではなくて。
1/11tue
布団干す狭くて二枚ばかりなり
(ふとんほすせまくてにまいばかりなり)
※男が設計した家は家事には不向きと、とかく
の不平には慣れているが、寒中の晴れ間に布
団を干そうとして今更自分でも実感。
1/10mon
寒中は 空のみの野の いとどなり
(かんちゅうは そらのみののの いとどなり)
目方増え 医師に年賀の 声低く
(めかたふえ いしにねんがの こえひくく)
※ここ7,8年安定していた体重が怪しい動き
を見せている。想定範囲をこの半月ほど飛び
ぬけている。一足早く緊急事態宣言発出か。
1/9sun
着ぶくれて 北の民話を 繰り出せり
(きぶくれて きたのみんわを くりだせり)
正月や 突然友の 顔と声
(しょうがつや とつぜんともの かおとこえ)
※おそるおそるLineで友達を増やす。思わぬと
ころで友人とテレビ電話で話した。テレワー
クとかテレビ会議とか世の中では盛んだが、
遅ればせながら。
1/8sat
緩斜面 ゆっくり滑るを 夢に見し
(かんしゃめん ゆっくりすべるを ゆめにみし)
初夢や 主席を好きに 握手せり
(はつゆめや しゅせきをすきに あくしゅせり)
※日頃の思いとは別に、いざ対面すると興奮し
て握手までしてしまう。目覚めて醜態とは思
うのだが。ホンマモノの外交もこうした、イ
デオロギー・安保・経済上の便益・歴史など
・・・複雑なファクターを内包しつつ、目先
の国益で動いてしまう。こんなことがあるの
では?
1/7fri
南房総の雪 子供連れ立ち
(みなみぼうそうのゆき こどもつれだち)
街灯の下に 無限の雪降りて
(がいとうのしたに むげんのゆきふりて)
寒の夜 根雪になれと 思いしも
(かんのよる ねゆきになれと おもいしも)
氷砕く クルマの音や 寒椿
(こおりさく くるまのおとや かんつばき)
※雪国生まれの小生にとって昨日の大雪は予想
外の吉事。雪が降りしきる時の吸音するかの
ような静寂を雪が上がった未明から今朝まで
感じていた。満足。
1/6thu
着ぶくれて 道守る人 旗持てり
(きぶくれて みちまもるひと はたもてり)
※普段の暮らしが始まった。通勤、工事・・・
と周囲を見ていたら、雪が降ってきた。見る
見る積もってきた。降り止まぬ。びっくり。
新年にドクター✕を待つ祈り
(しんねんにどくたーえくすをまついのり)
1/5wed
寒の入り 寝床の日記の 行僅か
(かんのいり ねどこのにっきの ぎょうわずか)
※三が日はすうーと過ぎ、早や今日は寒の入り。
寝床の腕、指は防寒対策を施しているが、さ
すがにそれでも冷たい。就寝は素早く、払暁
はゆっくりと・・・このパターンは抜け出せ
そうにない。
1/4tue
冬茜 坂の途中の 家なりき
(ふゆあかね さかのとちゅうの いえなりき)
※都心住まいの頃の通勤路が不思議と印象深い。
中でも毎日上り下りした坂道は四季の光景が
焼き付いている。
1/3mon
万両や 我が時代に 歌ありて
(まんりょうや わがじだいに うたありて)
※紅白歌合戦の歌にしても、現代の若い人々は
歌、楽曲に本当に恵まれているのだろうか?
と素直な疑念あり。今メディアの多様化の割
にその幅は狭いのでは? 拡散はするが模倣
と好みの境は漠としている。
1/1sat
元朝の 踏切の音 まっすぐ来
(がんちょうの ふみきりのおと まっすぐく)
元日や 妻は普段の 電話をし
(がんじつや つまはふだんの でんわをし)
※犬の散歩に盆も正月もない。ゆっくり帰って
きたら姪夫婦の年賀の来訪。嬉しいスタート。
**********
果樹の実の 普段のように 夏越しかな
(かじゅのみの ふだんのように なごしかな)
※家を取り巻くように狭い土地にいくつもの果
樹があり、今年も至極順調だ。このような酷
い環境でもと思わざるを得ない。今日も酷暑。
6/29wed
半休を 取りて谷中の 沙羅を見に
(はんきゅうを とりてやなかの しゃらをみに)
※勤務時代の半休を思い出した。昼前に会社を
辞すともう自由、どこに行ってもすぐそこ。
この季節には日暮里駅に行って、谷中、上野
を通って御徒町まで。こんなクソ暑い日では
なかった。
6/28tue
じりじりと 梅雨明けの日の 静かなる
(じりじりと つゆあけのひの しずかなる)
松落葉 園児マスクを 外さざる
(まつおちば えんじますくを はずさざる)
片陰を 六月とても 片陰を
(かたかげをろくがつとてもかたかげを)
※梅雨が明けた。今度の明け方が如何に稀なこ
とかを述べ立てる。仕方がない、こっちも茫
然自失である。
6/27mon
ニュース見る プラム凍るを 砕きおり
(にゅーすみる ぷらむこおるを くだきおり)
※ニュースを見続けることも戦争反対の意思表
示だとか。それにしてもかなりの苦痛を伴う。
ウ軍劣勢を仔細に伝える映像が続く、ついプ
ラムをがぶりと・・・。
いかん、いかん、昔の歯と違うのだから。
6/26sun
今朝1メートル20の桔梗咲く
(けさいちめーとるにじゅうのききょうさく)
生きており 鼻毛が騒ぐ 青葉風
(いきており はなげがさわぐ あおばかぜ)
6/25sat
後頭部 撮りて見入るや 夏の月
(こうとうぶ とりてみいるや なつのつき)
※「後ろ髪がもじゃもじゃだよ。床屋に行った
ら?」と言われて鏡の前に。スマホをかざし
カメラで見れば、自らの後頭部がチェックで
きる。「まだまだ大丈夫!」。しかし便利ば
かりではない。後頭部のてっぺんの薄さをい
やでも確認することになる。お月様。
6/24fri
返信に 水ようかんが あそことぞ
(へんしんに みずようかんが あそことぞ)
※妻の留守は四季を問わず快適だが、今日は当
地も初の真夏日になろうかという暑さ、節電
協力ではないがエアコンなしでいく。
6/23thu
沖縄忌 後の沖縄 よろしくと
(おきなわき のちのおきなわ よろしくと)
※1945年6月海軍司令官の大田実海軍中将
は自決直前に海軍次官にあてた電文で、沖縄
戦の惨状と沖縄県民の献身をつづり、「後世
特別の配慮を」と訴えた。
原文の最後は以下の通り。
「一木一草焦土ト化セン 糧食六月一杯ヲ支
フルノミナリト謂フ 沖縄県民斯ク戦ヘリ
県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ 賜ランコ
トヲ」
復帰後の50年、特別の配慮がなかったとは
思わないが、十分だったとはとても思えない。
6/21tue
夏至の陽は 毒消しとなる 街に出よ
(げしのひは どくけしとなる まちにでよ)
黄金虫 ぶどうの葉食う かすかなる
(こがねむし ぶどうのはくう かすかなる)
6/20mon
方丈を 走る囃子や 山車なくも
(ほうじょうを はしるはやしや だしなくも)
※夏の催しのお祭り、盆踊りを忘れないでと、
祭り囃子をスピーカーに載せたクルマが町内
を回る。かえって寂しいかな?とも思うが町
内の役員のせめてもの心配り。
6/19sun
父の日や 藤村が字を 真似しおり
(ちちのひや とうそんがじを まねしおり)
※父は若い頃から島崎藤村に傾倒していた。昭
和20年代の家の本棚に藤村全集が揃っていた
し、単行本、詩集も豊富だった。なによりの
証拠は藤村の字、書体に憧れ、懸命に真似て
いたことだ。毛筆もペン字も後年聞かされて
から眺めると随分似ている。さすがと思う。
6/17fri
梅雨昏し 四山のあるを 瞑想す
(つゆくらし しざんのあるを めいそうす)
※曇り空の裾に真っ黒な雲が広がり急に暗くな
った。暗さは増すのに雨は降り出さない。近
くに高い山があって周囲に立ち塞がっている
様を想像できる。
6/16thu
あじさいは 素焼きがいいか 惑いおり
(あじさいは すやきがいいか まどいおり)
鬼灯を 鳴らす名人 亡母なりき
(ほおずきを ならすめいじん ははなりき)
※赤く熟れた鬼灯の実を取り出し、楊枝等で慎
重に中の汁体(種?)だけを取り除け、外側
の皮のみとする。これを口に入れ、空気を入
れて膨らましたら舌と口蓋の間に挟んで空気
を出し、音を出す。
汁欲しさに何度も作りはしたが、一度も鳴っ
たことはなかった。
6/15wed
梅雨寒や テレビの欄は スルーして
(つゆざむや てれびのらんは するーして)
アジサイや 紙と腕を越え 色過剰
(あじさいや かみとうでをこえ いろかじょう)
※絵画教室も地味に控えめな集まりを続けてい
るうちに、当市コロナ禍もはっきり下火にな
ってきた。持ち寄ったアジサイは色の多彩さ
だけでなく、形も様々だ。描くには当惑気味。
6/14tue
虞美人草 昭和遠しに 頷きし
(ぐびじんそう しょうわとおしに うなづきし)
※降る雪や明治は遠くなりにけりは大学生だっ
た中村草田男が昭和6年に詠んだ名句。明治
が行って20年の頃、昭和が行って今は34
年。計算するまでもないが。
6/13mon
妻帰る 三浦三崎の 開き鯵
(つまかえる みうらみさきの ひらきあじ)
※フェリーで久里浜から帰って来る。こっち岸
も魚は本場だが、持たされるままに鯵の干物、
申し分ない。
6/11sat
値上げにも 三度の飯や 梅雨晴れ間
(ねあげにも さんどのめしや つゆはれま)
泰山木 エバーグリーンと 唱えた日
(たいさんぼく えばーぐりーんと となえたひ)
※元勤務先製鉄所の50年間の軌跡をドキュメン
タリーに仕立てて放映していた。懐かしかっ
た。50年前の発足時の熱い思いは事業の様変
わりはあっても今も当事者の胸の中にあると
感じた。
6/10fri
立葵 赤を框の 前に見る
(たちあおい あかをかまちの まえにみる)
※当地ではタチアオイの咲き始めと琉球月見草が
いつもいっしょだ。そしてタチアオイの最初は
大抵赤。今年はそれらよりも梅雨の入りが先行
した。
6/9thu
方丈記 古き女優の 声のごと
(ほうじょうき ふるきじょゆうの こえのごと)
※愛聴していたYouTubeコンテンツが消え怒っ
ていたが、そこは無尽蔵、類似サイトも多く、
探す楽しみを味わっている。方丈記解説文の
朗読ではナレーターがあの田中絹代の声のソ
ックリさんで気に入っている。
6/8wed
盆踊り 中止を決めて 梅雨入りぬ
(ぼんおどり ちゅうしをきめて つゆいりぬ)
※町内の役員会、3年連続で盆踊り取りやめを
決めた。子供や年寄り中心の催しだから、も
しものことを考えての決断。
6/6mon
蜻蛉消え 紫式部も 五月闇
(かげろうきえ むらさきしきぶも さつきやみ)
※YouTubeで聴いてきたNHK古典講座「紫式部
日記」が忽然と消えた。NHK関連の著作権者
側がアカウントごと消去したらしい。
ウワー、突然こんなことがァ・・・愕然とし
た。王朝日記シリーズでは更級日記、和泉式
部日記、蜻蛉日記と聴いてきたが、それらは
全部消えた。いずれ繰り返し聴くはずだった。
6/4sat
うこぎ味噌 作らず終いと いい給ふ
(うこぎみそ つくらずじまいと いいたもう)
※格好の話題にうこぎ味噌が浮かび電話をした
が、今年はとりやめたと。垣根の新芽がやや
少なかったから様子を見ているうちに・・・、
とのことだ。電話することが目的だった。
うこぎの天ぷらが話題になった。ネットで買
えるかな。
6/3fri
五月晴 早書き無理も 苦にならず
(さつきばれ はやがきむりも くにならず)
※しゃちほこばって字を書くと手と指がこわば
って、ひどい時には筆が暴走する。気をとり
直して持ち直して書くと回復する。結構同じ
症状の人がいるという。老化現象の一つとか。
なに、緊張して字を書く機会なんて殆どない
し、あってもゆっくり書けばいい。
6/2thu
あじさいや 慎重いまだ 剥がれざる
(あじさいや しんちょういまだ はがれざる)
ドクダミの 節で曲りて 武骨なる
(どくだみの ふしでまがりて ぶこつなる)
6/1wed
夏空や いとうあさこの 生きるって
(なつぞらや いとうあさこの いきるって)
※ラジオのインタビュー番組で「いとうあさこ」
を聞いた。最後半でこれからの抱負と訊かれ、
ただ「生きる」、「生きること」って答えて
いた。孤独な気っ風を感じたね。
**********
5/31tue
南瓜咲く 雄しべ貰いて 婿となす
(かぼちゃさく おしべもらいて むことなす)
※初夏の間は虫たちに任せておけない。しかし
雌しべと雄しべがタイミング良く揃わないこ
とがある。そこで隣近所の畑に声をかける。
5/30mon
祭り化粧 見知らぬ顔と なりて笑む
(まつりげしょう みしらぬかおと なりてえむ)
5/28sat
御用聞き バイクが登る 五月晴
(ごようきき ばいくがのぼる さつきばれ)
※原付バイクと今も言うのか?軽いエンジン音
でゆっくり急坂を登っていく。新緑の坂道。
御用聞きに違いないと思った。御用聞き?今
どき? あの音、ポンポン蒸気を思い出した。
古いなァ。
5/27fri
風薫る さすが汀子の 遺文かな
(かぜかおる さすがていこの いぶんかな)
※虚子の孫稲畑汀子がこの2月に亡くなった。
父の後を継いでホトトギスの大所帯を切盛り
した。最晩年の素直な句境は得難い。
5/26thu
空想は 卯の花髪に 飾る人
(くうそうは うのはなかみに かざるひと)
※NHKの古典講読、王朝日記の世界はいよいよ
「紫式部日記」に入った。散歩しながらYou
Tubeで聞き流しするのだから、もとよりいい
加減なものなのだが、何回か同じところを繰
り返し聞くものだから何%かは頭に残る。原
文に親しむには程遠いが・・・。
既に終わった「更級日記」「和泉式部日記」
「蜻蛉日記」に較べると、理解度がいいのは
何故だろう。ホッとしている。
5/25wed
バイカウツギ バッハの森の ふところに
(ばいかうつぎ ばっはのもりの ふところに)
※バッハのピアノ曲はもっぱらグールドで聴く
ようになった。バッハとて最近はやや凝った、
変形気味の演奏が目立つ中で、正統派の演奏
を聴く思いがする。あのグールドがである。
5/24tue
蘇る バラはアーチを またぎ咲く
(よみがえる ばらはあーちを またぎさく)
グールドの 親ほどになり 五月雨
(ぐーるどの おやほどになり さつきあめ)
※一回り年長のグールドをその活躍の時代から
愛聴している。50歳で急逝した彼は、今や自
分の子供の年齢だ。高価なレコードはお宝も
のだが、YouTubeで毎日のように違った彼を
聴けるのも今日なればこそ。演奏しながらの
ハミングというかうなりというべきか、これ
もちゃんと残っている。(1932-1982)
5/23mon
泰山木 見上げるほどに 蕾増え
(たいさんぼく みあげるほどに つぼみふえ)
※その蕾の小さいうちは葉裏の色と混じり合い
わからない。5月20日を過ぎる辺りでと次
々と大きくなり、真っ白な見事な蕾に、そし
てやがて花開く。この季節に亡くなった母の
記念樹と一人で決めている。
5/22sat
柿若葉 セピアな祖母の 顔ほどに
(かきわかば せぴあなそぼの かおほどに)
※昔は写真はなんであれ貴重だった。黒いシー
トの厚いアルバムに貼られた写真は枚数が限
られたが故に、その時々を思い返す手段だっ
た。それが今は・・・省略。
5/20fri
普段着を 詫びて淑女の バラの香を
(ふだんぎを わびてしゅくじょの ばらのかを)
※バラ園は谷津遊園の跡地。遊園はライダーや
プールなど先端の施設を誇ったが、昭和57年
に閉園した。40年も前のことだ。
行かばやと思いし園は白黒の
写真となりてバラ園飾る
5/19thu
バラに寄す 皺ものびてる 至福かな
(ばらによす しわものびてる しふくかな)
※開花の盛りを越えたというので急遽谷津バラ
園に出掛けた。駐車場を心配したが、ウィー
クデイの午後でなんなくセーフ。幸せそうな
顔、顔がいっぱい。時間ゆっくり。
5/17tue
神田祭 女坂急を ものとせず
(かんださい おんなざかきゅうを ものとせず)
※神田祭は今年2022年偶数年とかで陰祭。ハイ
ライトのひとつ神輿宮入とかは行われなかっ
た。境内からお囃子が聞こえてくると、明神
下から女坂の石段を駆け上がる。比較的近く
に住んでいた頃の、昔々のお話。
5/16mon
カレンダーに桃の摘果と書き込みぬ
(かれんだーにもものてきかとかきこみぬ)
※晴れたら・・・、草むしり、カイガラムシ退治、
ぶどう誘引、桃摘果と労働項目が増えていく。
雨模様のままでもいいっていう気になってきた。
5/15sun
ジャガイモの 花は色あり 長雨よ
(じゃがいもの はなはいろあり ながあめよ)
夕闇に カラー一列 浮かびおり
(ゆうやみに からーいちれつ うかびおり)
※今年4月後半以降関東地方の南部は不純な天候
が続く。ここ房総半島は長雨の後も曇りが続き、
今日も雨模様。
5/14sat
梅雨前の なお梅雨らしき 雨雨が
(つゆまえの なおつゆらしき あめあめが)
薔薇見行 晴れの予想に 恵まれず
(ばらみこう はれのよそうに めぐまれず)
苗見やる 暇なき雨 線状の
(なえみやる いとまなきあめ せんじょうの)
5/13fri
新緑や 名前をずっと 思い出しつつ
(しんりょくやなまえをずっとおもいだしつつ)
※新緑は今が最高。家を出るときから或る人の名
前が思い出せないままだ。目は新緑を愛でてい
る。・・・夏めく、認知症めく。後期高齢者の
暗記試験は満点だったのに・・・。
5/12thu
薔薇の花 吉事を待たず 咲き揃う
(ばらのはな きちじをまたず さきそろう)
雨雲に追われ 野ばらの家の前
(あまぐもにおわれ のばらのいえのまえ)
5/11wed
夏めいて 頭の吹き出 消えにけり
(なつめいて あたまのふきで きえにけり)
※晴れた一日、この時節は寒くも暑くもなく、湿
度も低いし、空気が澄んで正に薫風の光景。一
番贅沢な一日。
5/9mon
青堀の 駅の前なる 古墳初夏
(あおほりの えきのまえなる こふんしょか)
※千葉県は古墳の数では近畿諸府県に比しても遅
れをとらぬ多さであるという。案内板、説明板
の充実、メディアでのアピールなどPRに努めて
いる。
5/8sun
年一度 筍掘りて 友となり
(ねんいちど たけのこほりて ともとなり)
筍を 分けて竹婆の 友となり
(たけのこを わけてちくばの ともとなり)
筍で 通じ壮なり 三品食い
(たけのこで つうじそうなり みしなくい)
※当地の孟宗竹掘りはもう終盤。タケノコ三句。
殆ど川柳だが、家内とその友に感謝。小生はお
相伴に与っている。
5/6fri
立夏の日 カイガラムシの 蔓延れる
(りっかのひ かいがらむしの はびこれる)
今ほどに 端午の写真 あらばこそ
(いまほどに たんごのしゃしん あらばこそ)
※端午の節句に立派な武者人形の前で微笑む男の
子の映像を見た。晴れの舞台にいい写真もムー
ビーすら手軽に残せる時代だなと思ったが、今
日どれだけの家庭でこうした節目節目のお祝い
や、季節の催しをしているだろうか? ネック
はお金ではない。
5/5thu
半袖や オランダ帰りの 鯉のぼり
(はんそでや おらんだがえりの こいのぼり)
大凧や 駐車場行く 連法被
(おおだこや ちゅうしゃじょういく れんはっぴ)
浜松や 大人の揚げる 凧の音
(はままつや おとなのあげる たこのおと)
※5月連休後半に浜松の大凧上げが開催される。
「浜松まつり」という。久しぶりのほぼフルバ
ージョンとか。風がなければ凧が上がらず、
あればあったで凧が乱舞して合戦ともなれば恐
ろしいまでの音が響く。
5/4wed
蝶々が 世をば明るく してもなお
(ちょうちょうが よおばあかるく してもなお)
店先の 春のブラウス 少し褪せ
(みせさきの はるのぶらうす すこしあせ)
5/3tue
春愁を払いのけよと一日吹く
(しゅんしゅうをはらいのけよとひとひふく)
春の雨 人犬濡れて 意気いまだ
(はるのあめ ひといぬぬれて いきいまだ)
※今日は打って変わってきれいな晴れ日。気温も
ぐんぐん上がる。当地観光地とされる所の一部
をを巡回? どこも連休の人出という感じが戻
っている。テークアウトの弁当をクルマの中で
食べると、こちらも外出・外食をした気分にな
った。
5/2mon
八十八夜 欠けたる急須 捨てられず
(はちじゅうはちや かけたるきゅうす すてられず)
春昼や 鮮魚卸しは 店洗う
(しゅんちゅうや せんぎょおろしは みせあらう)
5/1sun
バス停の あるコンビニに 春幟
(ばすていの あるこんびにに はるのぼり)
春の風 今年一枚 耕さず
(はるのかぜ ことしいちまい たがやさず)
※新たに休耕田かと思ったが、品種別の需給の関
係だとか。一時は稲作担い手の減少・高齢化で
休耕田が増え、やがて担い手の統合と耕作大規
模化とで今はほぼ安定していると聞いていたが、
様々な事情があるようだ。
**********
4/30sat
我が道を 行く人稀に 荷風の忌
(わがみちを いくひとまれに かふうのき)
白足袋の 軒に干されて 四月尽
(しろたびの のきにほされて しがつじん)
※NHKの王朝文学講座をYouTubeで聴き始めて3
カ月。更級日記、和泉式部日記を聞き流した。
犬の散歩の途中にである。それでも多く登場す
る和歌に接して親しみを感じるようになった。
今日の後者の句にも、続けて七七が出る。上等
ではないが。
「白足袋の 軒に干されて 四月尽
紺地の足袋の 普段なつかし」
「良いことの ながりし四月 疾く過ぎん
枕に脈の 音の健やか」
4/29fri
あちこちで 遂に顔伏す 目借時
(あちこちで ついにかおふす めかりどき)
合宿所 窓開け放つ 春の闇
(がっしゅくじょ まどあけはなつ はるのやみ)
※コロナ禍の近況2句。図書館は読書室使用を条
件付きで再開。隣の人が遠いのでつい安心して
コックリ。昨年クラスターを出してしまった高
校の大きな合宿所は今なお閉鎖中。
4/28thu
新年度 なお坂道の 塾通い
(しんねんどなおさかみちのじゅくがよい)
雪形を 見る人しのぶ メールかな
(ゆきがたをみるひとしのぶめーるかな)
4/27wed
描きつつ 春は病いの 憂さくらべ
(えがきつつ はるはやまいの うさくらべ)
オオデマリ アイリスともに 吾嬲り
(おおでまり あいりすともに われなぶり)
※月2回の絵画教室は絵よりもおしゃべり? オ
オデマリと紫色のアイリスの対照の妙は難しす
ぎる。
4/26tue
草を刈る 鎌の研ぎ初め 日永かな
(くさをかる かまのとぎそめ ひながかな)
ようやくの雨音や 晩春を寝る
(ようやくのあまおとや ばんしゅんをねる)
4/25mon
逃げ水の 先に閉じにし 校舎あり
(にげみずのさきにとじにしこうしゃあり)
※こちらも御多聞に漏れず郊外の小中学校を中心
になお統廃合の話がある。生活圏、友人知人、
仕事や親戚などとの関係、果ては選挙の地盤な
ど、近くに訊けばナルホドと同情が大きくなる。
4/24sun
女二人 スイカの苗の 良し悪し
(おんなふたり すいかのなえの よしわるし)
※当地で西瓜の苗が植え時。例年のごとく2苗だ
けポットで買ってきた。ちょっと遅めのわりに
値段が安い。それでは接ぎ木の苗ではないなと
疑う。案の定。
4/23sat
春の黄に 土偶のまなこ 和らげり
(はるのきに どぐうのまなこ やわらげり)
石楠花や 女御の日記 思わるる
(しゃくなげや にょうごのにっき おもわるる)
4/22fri
田は霞む 植うる順番 我にあり
(たはかすむ ううるじゅんばん われにあり)
すみれ野に埃 顔出す戦車兵
(すみれのにほこり かおだすせんしゃへい)
※ウクライナの要衝マウリポリをめぐる局面が
最終期にある。すみれ野と街を蹂躙すること
は許されない。兵は無表情だ。
4/21thu
ミズキ咲き 木の花なべて 白い朝
(みずきさき きのはななべて しろいあさ)
※石楠花の白い花が満開で、白の花ミズキとク
レマチスが加わった。この季節は期せずして
我が家の庭はちょっと大仰だが「白の競演」
となる。花ニラの消えたあとには白い小さな
ユリ形の花が咲いて、地で白の駄目押しをし
ている。
4/20wed
城はサクラ 路地には黒き 板の塀
(しろはさくら ろじにはくろき いたのへい)
※郷里会津のサクラの盛りは子供時代の昔4月
20日前後であったと思う。戊辰戦役で城下
中心部の古い建物は残っていなかったが、城
下町の人の風情とその人々が家屋に託す矜持
がここかしこにあった(ように思う)。
4/19tue
こころみの 源氏分厚き 春の宵
(こころみの げんじぶあつき はるのよい)
※YouTubeのNHK古典講座で「更級日記」を散
歩の時に聞いている。慣れないことだけれど、
せっかくのスマホのギガを有効活用!するた
めだ。テキストもなし、理解不十分も気にし
ないで、45分×27回を一周聞き終えた。
かなりの新発見があり、大雑把でも習得の体
験は実に久しぶりだ。作者の源氏物語への傾
倒ぶりが随所に現れることも初めてわかった。
4/18mon
風やんで ほんの春雨 耳たてる
(かぜやんで ほんのはるさめ みみたてる)
奥穂高 置きし小石よ 風光る
(おくほだか おきしこいしよ かぜひかる)
めがねかけ 少なくなりし 芹摘みぬ
(めがねかけ すくなくなりし せりつみぬ)
4/16sat
数を聞く 老舗爺売る 桜餅
(かずをきく しにせじじうる さくらもち)
※この季節は桜餅専業とも見える。うーん、や
っぱりコンビニ買いのものとは違う。
花ミズキ 宝飾着物 買い取ると
(はなみずき ほうしょくきもの かいとると)
4/15fri
観音堂 五百年の春 大庇
(かんのんどう ごひゃくねんのはる おおひさし)
※桜見物の足を伸ばし、鳳来寺観音堂再訪を果
たした。初めの時よりしっかり保全されてい
るようで一安心。相変わらずの優美さ。周囲
のサクラを眺めて弁当を開く。
4/14thu
葉桜や 病院互いに 付き添いぬ
(はざくらや びょういんたがいに つきそいぬ)
石楠花の 蕾落とさじ 妻の声
(しゃくなげの つぼみおとさじ つまのこえ)
4/13wed
啄木忌 費え支えし 金田一
(たくぼくき ついえささえし きんだいち)
※同郷の先輩金田一京助は文学上の付き合いの
みならず、常に貧困だった東京の啄木に何く
れとなく援助をした。ちなみに小生の中高使
用の国語辞書は金田一の手になるものだ。
4/12tue
花ニラの 群れるを踏まず 猫黒子
(はなにらの むれるをふまず ねこくろこ)
花冷えや 今宵だけとて 床の暖
(はなびえや こよいだけとて とこのだん)
4/11mon
高齢者試験通れり春の膳
(こうれいしゃしけんとおれりはるのぜん)
※家人の免許更新試験、難関の暗誦試験を優秀
な成績で通過したらしい。これは医者の見立
て以上に安心材料、目出度い。
4/10sun
春の朝手の皺深くなりにけり
(はるのあさてのしわふかくなりにけり)
人間は退歩するらし春爛漫
(にんげんはたいほするらしはるらんまん)
4/9sat
山小屋の 春曙は 闇多く
(やまごやの はるあけぼのは やみおおく)
※久しぶりに若い時に山に行った夢を見た。真
っ暗な中でここはどこだろうと息をひそめて
いると、僅かな窓に山が次第に見えてきた。
安心。山小屋だ、ここは。
4/7thu
風車売り 夢に長屋の前におり
(かざぐるまうり ゆめにながやのまえにおり)
春灯 女二人の 声低く
(はるあかし おんなふたりの こえひくく)
※春は茫漠と夢に遊び、覚めては霞の果てに夕
日を見送る。やや退廃的な心地こそ、季節の
特権なりしも、それを許さざるはだれ。
4/6wed
眺めては また剪定の 日和かな
(ながめては またせんていの ひよりかな)
※柿の木も若芽が出てきた。当家で図抜けて遅
いのはぶどうだ。剪定は一応終えているので
格子のバーに誘引する。これもYouTubeで学
習したから方法は進化したはずだ。
ところが剪定のやり残しが多く見つかる。や
っぱり杜撰だな。
4/4mon
花冷えや 親のビデオの 仕舞い方
(はなびえや おやのびでおの しまいかた)
※生前の両親を撮影したビデオが結構ある。い
ずれもちゃんと編集整理したものだ。他のメ
ディアは散逸しても一向に構わないが、これ
だけは親の面影を残す唯一のものであり、大
げさだが墓をどう整理して後につなぐかを考
えるのと同じ心境だ。
4/3sun
蝉貰う人 喜寿となる 連翹忌
(せみもらうひと きじゅとなる れんぎょうき)
※4月2日は高村光太郎の命日。連翹忌という。
30年ほども前の出張の帰りに、友人と花巻市
郊外の高村光太郎旧居を訪れた。辺り一面深い
雪が積もっていて、今のように保存のための上
屋がなかった旧居は見るからに粗末で寒く、す
き間から雪原が覗けた。戦後すぐに、宮沢賢治
の縁繋がりでこの地を選び、隠れ住むように囲
炉裏に坐して自戒自省の数年を過ごした。
近くに農家はない、地元の人とも交わりを避
けていた。例外は村の子供たちで交遊があった
とか。特に花巻まで買い出しに行ってもどる光
太郎から飴玉を貰うのが楽しみだったと言う。
小さな彫り物を貰うこともあったとか。当時の
子供の一人が、たまたま我々が利用したバスの
運転手だった。発車時刻までの生き証人?の話。
4/2sat
ジャカランダ
ホウオウボクになに 四月バカ
(じゃからんだ ほうおうぼくになに しがつばか)
※熱帯三大花樹のことを言っている。もう一つは
アフリカン・チューリップ・ツリー。別名カエ
ンボク。日本でいうチューリップツリー(別名
半纏の木)とは似ても似つかぬが。
友人撮影の写真が載る蝶のカレンダー、4月は
ホウオウボクの真っ赤な花、花、花に憩うヘレ
ナキシタアゲハ。
4/1fri
柳芽吹く 根岸の里の くねり道
(やなぎめぶく ねぎしのさとの くねりみち)
※都心を歩く会は中断して久しい。遠慮のない友
人と連れ立っての歩き会は実に楽しいものだっ
た。子規庵を訪ねたあと根岸の古い道を辿ると
青々とした柳並木の道があった。5年ほども前
になる。季節は違うが光景がよみがえる。今は
子規庵も閉鎖中と聞いた。
**********
3/31thu
春に惑う 田舎住まいと 街住まい
(はるにまどう いなかずまいと まちずまい)
※コロナ禍で「なにがなんでも都会で」という考
えが見直されているという。もっと積極的に首
都東京と東京圏の規模縮小を図るべきだと思う。
事が起こったときに今の首都圏はゆとりが無さ
過ぎるからだ。しかし・・・
折しもこの週末、目黒川花見と宴会の席に誘わ
れた。即刻OK、久しぶりに歩きたい。いや、
やめとけ。
3/30wed
紫雲英田は みちのくにあり トラクター
(げんげだは みちのくにあり とらくたー)
※ようやく田んぼに人の動きが見えた。これから
春耕というか、4月中旬以降の田植えに向けた
耕しが始まる。間に合うのかなと心配になる。
3/29tue
落ち雲雀 見失うほど 草はなし
(おちひばり みうしなうほど くさはなし)
※雲雀は地方によっては姿を消したところもある
とか。ふんだんに見れる当地のアリガタミを再
認識。とはいえ、高速道路の騒音がなかった頃
はさらに格段に良かったのだが。
3/28mon
花曇り 夕餉の好み 尋ねらる
(はなぐもり ゆうげのこのみ たずねらる)
※ご飯のおかずを言い合っているとはなんと平和
ボケで、能天気なことか!と一喝されそうな塩
梅だ。まあ、いいではないか。・・・ちゃんと
ニュースは見ているし。
3/27sun
釘付けは 一人静よ 露天風呂
(くぎづけは ひとりしずかよ ろてんぶろ)
※午後になって雨模様だが気温は下がらない。当
家の桃の花は一気に開く。陽光桜、ソメイヨシ
ノ、桃、プラムなどの開花順はどうであったか、
記憶も曖昧になってしまった。
3/26sat
花種の 名を書く木札 二つ三つ
(はなだねの なをかくきふだ ふたつみつ)
※彼岸中には寒い日の戻りがあるというが、明け
て暖かさが戻ってきた。
春光や かおり貴き 娘あり
(しゅんこうや かおりとうとき むすめあり)
※初秋の9月に上総の国から京に向け、家族と旅
立った娘がいた。菅原孝標の娘13歳である。
この娘、源氏物語に憧れている更級日記の主役。
1020年のこと。ざっと1000年も前の話。
3/24thu
忘るるな メールで頼む さくら餅
(わするるな めーるでたのむ さくらもち)
花を見て より費やせり 御徒町
(はなをみて よりついやせり おかちまち)
※我が家のモモより早く開花したサクラも寒さで
もたもたしている。さて今日は?
3/22tue
春の雲 リルケ詩集の一個でも
(はるのくもりるけししゅうのいっこでも)
敦子女史 鴎外読めと言われ春
(あつこじょしおうがいよめといわれはる)
※春夏秋冬、読書の進まぬ理由をあれこれと並べ
る。今は眠気。
尾崎喜八「音楽への愛と感謝」(平凡社ライブ
ラリー)、著者は昔から尊敬する神様のような
人。怠る理由も許してくれる。
3/21mon
彼岸会も行った気になり庭の隅
(ひがんえもいったきになりにわのすみ)
山茱萸やウィルスいずれと思わしむ
(さんしゅゆやうぃるすいずれとおもわしむ)
※山間部に入ったところに山茱萸が咲き誇ってい
る里を見た。早春の花だが家の周囲では見かけ
ない。別名でハルコガネバナとか、幸運をもた
らすといい。
3/20sun
連翹や 登校の列より高く
(れんぎょうや とうこうのれつよりたかく)
連翹や 家建たぬ地の 主のごと
(れんぎょうや いえたたぬちの ぬしのごと)
3/19sat
落ち雲雀 見失わずに 草の陰
(おちひばり みうしなわずに くさのかげ)
今ならば 濃き草餅と 称えんが
(いまならば こきくさもちと たたえんが)
※母の草餅はヨモギが自ら選んで採集したものだ
けに草のにおい芬々で、子供の時分においしい
と言った記憶がない。
3/18fri
春眠や害鳥駆除のふれ聞こゆ
(しゅんみんやがいちょうくじょのふれきこゆ)
※曜日を決めて春秋に行う農村、野山での駆除。
害獣が対象の場合もある。猟銃を用いるのでオ
ダヤカではないが、実施反対派ではない。
3/17thu
涅槃会は 行けずに朝の まぼろしに
(ねはんえは いけずにあさの まぼろしに)
西行忌 彷徨ふ外の 兵ありて
(さいぎょうき さまよふとつの へいありて)
※旧暦2月15日は釈迦入滅の日。今年は中止。
西行はこの日にサクラの散る中で死にたいと歌
に詠み、何度も言っていたとか。なんと実際に
は翌日の16に亡くなった。
3/16wed
鳥曇り 北に平和を 言伝り
(とりぐもり きたにへいわを ことづてり)
※北に帰る準備に余念がない鴨たちに、せめても
のメッセージを託したつもり。
妻は日々 桃の蕾を 測りおり
(つまはひび もものつぼみを はかりおり)
※桃の開花の前にサクラが咲いてしまうのでは?
3/15tue
遅れ来し ラッパスイセン 仄かなり
(おくれきし らっぱすいせん ほのかなり)
※昨日の異常な暑さは植物に強烈な一撃になった
ようだ。圧巻は近所のふくらみかけた開花前の
木蓮が一日で全部開いたこと。見事を通り越し
て変身だ。脚色された舞台のよう。
3/14mon
子をなして 大事らくらく 嫁の春
(こをなして だいじらくらく よめのはる)
※甥の娘が嫁ぎ先で出産した。幼いころから男顔
負けのやんちゃぶりだったが、なるほど安産だ
ったらしい。電話口でも元気いっぱいだった。
3/13sun
花辛夷 今年は畔を 厚くせん
(はなこぶし ことしはあぜを あつくせん)
※東北地方では辛夷の花は農作業開始の目印とか。
当地では早い所で4月中旬に田植えをする。も
う農作業は始まっている。頑丈そうな分厚い畔
作りも今は機械が行う。
3/12sat
辛夷咲く 今年ラッパは 先駆けず
(こぶしさく ことしらっぱは さきげけず)
※辛夷が咲き始めた。上にコブシ、地にラッパス
イセンというのが定番だったが、今年は違う。
2月の寒さのせいか?でもサクラは例年並みだ
という。丈の短い植物が深刻に寒さの被害に遭
ったのかな。
3/11fri
昼前に 鶯餅の 店の前
(ひるまえにうぐいすもちのみせのまえ)
七輪の 目刺しのコゲと においかな
(しちりんの めざしのこげと においかな)
3/10thu
赤ともる ギフチョウを見し 春の茶屋
(あかともる ぎふちょうをみし はるのちゃや)
※友人が写真と文を担当した全編蝶のカレンダー。
3月は草丈も短い繁みに憩うギフチョウである。
3/9wed
雛仕舞う 長持ちの蓋 ギーとなり
(ひなしまう ながもちのふた ぎーとなり)
※余裕を持って雛を飾り、雛祭りが過ぎたら、だ
らだらせずに仕舞う。いずれにも気を配るゆと
りがあったものだ。
3/8tue
春蘭や病疲れの口多し
(しゅんらんややまいづかれのくちおおし)
※元気な知人が一人、ガンを患っている。なお意
気軒高で治療を受けてきたが、なかなか良い結
果が得られない。さすがに表情に弱さが見られ
るようになった。それでも話は殆ど先方から。
3/7mon
戸惑いぬ 溢るるほどの ミモザ来る
(とまどいぬ あふるるほどの みもざくる)
花ミモザ 図書館に行く 道しるべ
(はなみもざ としょかんにいく みちしるべ)
※例年よりずっと遅いミモザ。今年木を小ぶりに
しようというお宅から大きなバケツいっぱいの
ミモザが届いた。
3/6sun
春の路地 母の友 奥に住みたり
(はるのろじ ははのとも おくにすみたり)
※春一番の風もおさまる。この陽気は昔々の季節
の光景を運んでくる。
3/5sat
蕗の薹 秘めたる場所の いい時分
(ふきのとう ひめたるばしょの いいじぶん)
※昨年はゆったり構えていて終盤の食べごろのヤ
ツをごっそりやられたっけ。この暖かさだ。油
断は出来ない。
3/4fri
ラインにて 妹が句を見る 春の夕
(らいんにて いもがくをみる はるのゆう)
牡丹の芽 見知らぬ人に 教えられ
(ぼたんのめ みしらぬひとに おしえられ)
※兄弟とラインで顔を見たり、句を交換したり、
とてもコロナ禍前にはなぜか恥ずかしくて出来
なかったことだ。かと思うと初めての人に牡丹
の芽の違いを教えられたり、思わぬ交流は以前
と同じ。
3/3thu
雛の家 馳走したため 夕餉かな
(ひなのいえ ちそうしたため ゆうげかな)
※正式にお客を招いて食事をふるまう時には、そ
れがお祝い事でも不祝儀例えば法事とかの場合
でも、ご馳走を予め筆で認め、客に供したもの
だ。洋の東西を越えて共通しているものらしい。
3/2wed
低山の遠きにて春平らかなり
(ていざんのとおきにてはるたいらかなり)
※山高きがゆえに貴からず。房総の山々に高山は
ないが、深い無数の地の皺、人の住む多くの山
並みを作っている。低きがゆえにゆったりとた
おやかに見えることもある。
3/1tue
鷽を見し今日暖かき日となれり
(うそをみし きょうあたたかきひとなれり)
※今朝我が庭の梅の木に「鷽うそ」を見た。確か
に。頭の黒色、それに続くオレンジ・・・間違
いない。留鳥で今頃は低地で過ごすとあるから、
間違いないのだが何せ現れることが少ない。自
信はあるのだが、哀しいかな、ド素人+門外漢
だ。しかし人には尋ねない。しばらくは信じる
ことにした。
**********
2/28mon
西郷も 滴り弱き 春の雨
(さいごうも したたりよわき はるのあめ)
※今月は西郷輝彦が亡くなった。前立腺がんを患
っていたとか。合掌。多くのシニアが同じ道を
たどりつつある。小用は出るものの次第に弱く、
時間は長くなる。
2/27sun
移り紅 梅身を染めて 思い初む
(うつりべに うめみをそめて おもいそむ)
※梅の種類で移り紅というのは初め白で開花し、
次第に赤くなるらしい。2月の寒さ続きで梅の
開花は遅れていたが、この陽気で梅の恋が始ま
る?
草の芽の かすかな音の 続々と
(くさのめの かすかなおとの ぞくぞくと)
※球根類の芽出しが盛んだ。他の草花、雑草類も
一斉に地表に出るや、背を伸ばしている。
2/25fri
春の花 鬱なことども ともに増え
(はるのはな うつなことども ともにふえ)
※ウクライナ全土に。かの地の動向を日々記すこ
とはやめることとするが、どうにもこの鬱はや
るせない、見逃しがたい。
2/24thu
菠薐草 コロナ禍の年 青丈夫
(ほうれんそう ころなかのとし あおじょうぶ)
※昨日プーチンが動いた。
2/23wed
黒き幹 黒き節々 梅の花
(くろきみき くろきふしぶし うめのはな)
風の朝 初クロッカスの 地を割いて
(かぜのあさ はつくろっかすの ちをさいて)
2/22tue
看護師が 良く眠る夜 ヒヤシンス
(かんごしが よくねむるよる ひやしんす)
※都心で在宅医療の医院に勤務する親戚の娘が
帰ってきた。日頃心配し通しの親をよそ眼に、
実家での時間の大半をゆっくり眠って過ごし
たという。
2/21mon
全集に すき間のありて 漱石の日
(ぜんしゅうに すきまのありて そうせきのひ)
※今日2月21日は漱石が文部省から文学博士
の称号を打診され、肩書の要なしと回答して
辞退した日だとか。明治44年のこと。
2/20sun
旬の味 到着待てり 春灯り
(しゅんのあじ とうちゃくまてり はるあかり)
春の闇 再配達の 人の笑み
(はるのやみ さいはいたつの ひとのえみ)
※テレビの録画で「プレバト」を見た。お題は
「宅配の手渡し」であった。番組はいつもの
通りだったが、今回同じ題で自分も作ってみ
たのが上記の2句だ。いつも思っているが、
なかなか難しい、これだって「才能あり」は
難しかろうと思う。
2/18fri
電球に笠あり春に灯りあり
(でんきゅうにかさありはるにあかりあり)
※冷たい夕暮れ。近所の家に昔なじみの温かい
電球の灯りがともっている。昨今の明るいけ
れども真っ白な蛍光灯やLEDと違って、見て
いるだけで少しは温かくなってくる。
2/17thu
なすことのあれども春の朝寝かな
(なすことのあれどもはるのあさねかな)
遍路笠去年に廻りし人の笑み
(へんろがさこぞにまわりしひとのえみ)
※朝の夢うつつは値千金。日頃は犬の散歩で許
されないが、今朝だけは別。
友人の友人が四国遍路旅の話をしてくれた。
コロナ禍を思えば冒険と言うか一大決心であ
ったろう。彼に家族はいない。
2/15tue
房総の 光かくやと 春の海
(ぼうそうの ひかりかくやと はるのうみ)
※一年一回の脳MRI検査。昨日とは打って変わ
ってきれいに晴れ上がり、検査、診察後の展
望フロアからの景色が素晴らしい。やれやれ
また一年の命がつながった、と言えば大げさ
か?
2/14mon
ウクライナ 畑焼きしたき 人あらむ
(うくらいな はたやきしたき ひとあらん)
※今日一日は接種翌日とあって静養日。おかげ
で発熱、患部の疼痛、頭痛等は全くと言って
いいほどなかった。今回はモデルナ。
2/13sun
看護師の頬 冬残照の僅か
(かんごしの ほほ ふゆざんしょうのわずか)
※やっと3回目のワクチンを打った。周辺市町
村の知人よりはかなり遅め。4日前に接種券
が届いて、予約し、市の集中接種会場に行っ
た。かなり大勢の人がいた。医療関係の人が
言っていたが、遅れは明らかに接種券の配布
作業の遅れのせいだと。
2/11fri
剪定を 一日延ばす 余寒かな
(せんていを いちにちのばす よかんかな)
スコップも 農具も置いて 冴え返る
(すこっぷも のうぐもおいて さえかえる)
2/10thu
初午や 祠に餅の 紙包み
(はつうまや ほこらにもちの かみづつみ)
※農作業を始める日で、豊作を祈るお稲荷さん
のお祭り日とか。餅もそのままではなくて、
油で揚げたものだった。なるほどキツネ色だ。
2/9wed
針供養 和装で参る 生徒たち
(はりくよう わそうでまいる せいとたち)
※花嫁修業という言葉があった。生け花や茶道
は現在も盛んだが、めっきり姿を消したのは
洋裁、和裁の実用を兼ねた習い事。
2/8tue
マニキュアに選手の泪春灯り
(まにきゅあにせんしゅのなみだはるあかり)
※北京冬季五輪は悲喜こもごもの報道あり。
2/7mon
寝違えて 寒き春のみ 他見えず
(ねちがえて さむきはるのみ ほかみえず)
春嵐 ポンペイ見たし 上野は遠し
(はるあらし ぽんぺいみたし うえのはとおし)
※ポンペイレッドと呼ばれる色が印象的なモザ
イク画。関西の粋な日本家屋の壁色にも似た
色だ。
2/5sat
うかれ猫 続きし会は 画面越し
(うかれねこ つづきしかいは がめんごし)
※テレワークとかが普通になった今、積極的に
これを仲間内で活用する輩もいる。突如テレ
読書会をやろうとか、昔の同僚のテレビ顔合
わせをしようとか・・・。まあお断り。
テレビ飲み会に至っては仲間から「そのうち
春になったら」と遠ざけられたのにも拘わら
ず、立春のその日に呼びかけメールが再び舞
い込んだ。やれやれ・・・。
2/4fri
施設あり節分の声声続き
(しせつあり せつぶんのこえごえつづき)
春立ちて 咽喉を撫でさす 猫のおり
(はるたちて のどをなでさす ねこのおり)
2/2wed
冷蔵庫 朝に頓死す 春隣り
(れいぞうこ あさにとんしす はるどなり)
みぞれ日に 市原悦子の 声ありて
(みぞれびに いちはらえつこの こえありて)
※長いこと使ったものは不思議なことに同じよ
うな時期に更新時期が舞い込む。クルマも冷
蔵庫も・・・、心臓も消化器も・・・とかに
はならないようにしなくては。
2/1tue
大寒の地をはむ妻の新車赤
(だいかんのちをはむ つまのしんしゃあか)
※随分待たされた納車日が訪れた。今までのク
ルマとは年次が離れているので、安全機構や
ナビ、操作方法に至るまでかなり変化があり、
面食らっている。当家のクルマ使用と運転は
殆どが家内だが、慣れるまでは助け合いだ。
**********
1/30sun
蠟梅の寺は散歩に遠くなり
(ろうばいのてらはさんぽにとおくなり)
※片道4千歩近くの寺まで、久しぶりに今回は
クルマで赴いた。かすかだが馥郁とした香り
が漂っていた。以前は毎朝この近くまで歩い
て、帰路も徒歩だった。ところが歳だからと、
大して意識もせずに次第に歩数が減少してい
る。・・・歳と身体のいたわり過ぎかも。
1/29sat
春近し 仏頂面の 料理かな
(はるちかし ぶっちょうづらの りょうりかな)
※なんとなく春の兆しを追い求める気持ちがあ
る。確実な暦の展開をあてにしている。どこ
かでオミクロンの性状に気を許してるのかも
知れないが。
1/28fri
疎開知る 着ぶくれの人 門の内
(そかいしる きぶくれのひと もんのうち)
葬場の閉めたる広さ寒夜かな
(そうじょうのしめたるひろさかんやかな)
1/27thu
野水仙 はためくほどの 風となり
(のすいせん はためくほどの かぜとなり)
鉄火丼 どんと来たりて 寒四郎
(てっかどん どんときたりて かんしろう)
※世の中の活気という意味では否応なしの右往
左往、長い様子見だ。超越?至難の業だ。
1/24mon
三寒の膝粘り切り四温かな
(さんかんのひざねばりきりしおんかな)
動画が師 剪定すれば 春近し
(どうががし せんていすれば はるちかし)
※寒中冬籠りとは言え、コロナ禍対策としてで
あり、気分的には落ち着かない日々だ。読書
も切れ目だし、夢枕獏「白鯨」を読み始める。
アノ「白鯨」と較べれば超読みやすいが、
500頁超の厚さだ。
1/23sun
冬ざれや 故郷の大津絵 耳の底
(ふゆざれや くにのおおつえ みみのそこ)
※実に約60年ぶりに会津大津絵という民謡を
聞いた。祖母の小声の歌を聞いた時以来かも。
いくつもの曲がある中で、地味な曲調と戊辰
戦役とその後の暮らしをうたった歌詞は切々
と訴えるものがある。
1/21fri
新しき 回線通じ 今日大寒
(あたらしき かいせんつうじ きょうだいかん)
怒髪立つも 外の寒気で 鎮まれり
(どはつたつも そとのかんきで しずまれり)
※インターネット、光電話等の契約先を変更し
た。昨年の11月以来やっと全ての工事や手
続きが終了した。
1/20thu
蔵壁に 鴉の影が 日脚伸ぶ
(くらかべに からすのかげが ひあしのぶ)
※大寒の日。さすがに日没後は冷える。しかし
冬至から一カ月近くたって、夕方の定刻に出
かけると確実に明るくなってきている。冷え
てもアッタカイ感じだ。その足は鈍いが。
1/19wed
寒稽古 青の絵の具で 始め見ん
(かんげいこ あおのえのぐで はじめみん)
※千葉県も近く「蔓延防止」対象地域に指定さ
れる。絵画教室も今回で暫くは休止となる。
今年最初の会は季語「寒稽古」に当たるが、
絵の出来は並み。
1/18tue
軒めぐり どんどの藁を 給いたり
(のきめぐり どんどのわらを たまいたり)
※どんど焼きが近くの田んぼで町内ごとに行わ
れた。それに先立って子供たちは、風の吹く
寒い日に町内の商店などを回り、大声で藁を
出してもらった。あの頃の梱包の多くは稲わ
ら製の筵だった。
1/17mon
冬の虹告げ丁重な礼言われ
(ふゆのにじつげていちょうなれいいわれ)
この冬は 筆の遅きが さらになり
(このふゆは ふでのおそきが さらになり)
※何年か前から起こった手の強張り。やさしく
握って書く字がままならない。強張ってペン
先が暴走することもしばしば。それを避けよ
うとゆっくり、軽く・・・結果遅くなる。
1/16sun
寒寝床 本持つ指の 頼りなき
(かんねどこ ほんもつゆびの たよりなき)
※当地温暖ではあるが、エアコンなしの部屋の
未明はさすがにこたえる。「指出し手袋」の
出動も指先や腕全体の冷えにはかなわない。
1/15sat
ウィスキーの 新瓶となり 小正月
(うぃすきーの しんびんとなり こしょうがつ)
※小正月なんて一般家庭では半ば死語。小豆粥
とかどんど焼きとか遥か子供時代にははっき
り残っていたが。
1/14fri
雪の道 おすそ分けとて 姪来たる
(ゆきのみち おすそわけとて めいきたる)
※いただいたカステラがすごくおいしかったか
らと言う。2切れだけだけど、それで十分。
1/13thu
ツィッターも ラインも如かず 冬静寂
(つぃったーも らいんもしかず ふゆしじま)
※冷えたが穏やかに晴れ上がる。この静寂の魅
力に対抗できる音は? 主張と騒音のSMS、
ウィルス禍の激しい噂。・・・。
1/12wed
褞袍てふ 便利はなくて 読書かな
(どてらちょう べんりはなくて どくしょかな)
※椅子に座っても寝っ転がっても、上半身と手
元指先が寒い。ドテラとかワタイレとかが懐
かしい。ヒートテックとかではなくて。
1/11tue
布団干す狭くて二枚ばかりなり
(ふとんほすせまくてにまいばかりなり)
※男が設計した家は家事には不向きと、とかく
の不平には慣れているが、寒中の晴れ間に布
団を干そうとして今更自分でも実感。
1/10mon
寒中は 空のみの野の いとどなり
(かんちゅうは そらのみののの いとどなり)
目方増え 医師に年賀の 声低く
(めかたふえ いしにねんがの こえひくく)
※ここ7,8年安定していた体重が怪しい動き
を見せている。想定範囲をこの半月ほど飛び
ぬけている。一足早く緊急事態宣言発出か。
1/9sun
着ぶくれて 北の民話を 繰り出せり
(きぶくれて きたのみんわを くりだせり)
正月や 突然友の 顔と声
(しょうがつや とつぜんともの かおとこえ)
※おそるおそるLineで友達を増やす。思わぬと
ころで友人とテレビ電話で話した。テレワー
クとかテレビ会議とか世の中では盛んだが、
遅ればせながら。
1/8sat
緩斜面 ゆっくり滑るを 夢に見し
(かんしゃめん ゆっくりすべるを ゆめにみし)
初夢や 主席を好きに 握手せり
(はつゆめや しゅせきをすきに あくしゅせり)
※日頃の思いとは別に、いざ対面すると興奮し
て握手までしてしまう。目覚めて醜態とは思
うのだが。ホンマモノの外交もこうした、イ
デオロギー・安保・経済上の便益・歴史など
・・・複雑なファクターを内包しつつ、目先
の国益で動いてしまう。こんなことがあるの
では?
1/7fri
南房総の雪 子供連れ立ち
(みなみぼうそうのゆき こどもつれだち)
街灯の下に 無限の雪降りて
(がいとうのしたに むげんのゆきふりて)
寒の夜 根雪になれと 思いしも
(かんのよる ねゆきになれと おもいしも)
氷砕く クルマの音や 寒椿
(こおりさく くるまのおとや かんつばき)
※雪国生まれの小生にとって昨日の大雪は予想
外の吉事。雪が降りしきる時の吸音するかの
ような静寂を雪が上がった未明から今朝まで
感じていた。満足。
1/6thu
着ぶくれて 道守る人 旗持てり
(きぶくれて みちまもるひと はたもてり)
※普段の暮らしが始まった。通勤、工事・・・
と周囲を見ていたら、雪が降ってきた。見る
見る積もってきた。降り止まぬ。びっくり。
新年にドクター✕を待つ祈り
(しんねんにどくたーえくすをまついのり)
1/5wed
寒の入り 寝床の日記の 行僅か
(かんのいり ねどこのにっきの ぎょうわずか)
※三が日はすうーと過ぎ、早や今日は寒の入り。
寝床の腕、指は防寒対策を施しているが、さ
すがにそれでも冷たい。就寝は素早く、払暁
はゆっくりと・・・このパターンは抜け出せ
そうにない。
1/4tue
冬茜 坂の途中の 家なりき
(ふゆあかね さかのとちゅうの いえなりき)
※都心住まいの頃の通勤路が不思議と印象深い。
中でも毎日上り下りした坂道は四季の光景が
焼き付いている。
1/3mon
万両や 我が時代に 歌ありて
(まんりょうや わがじだいに うたありて)
※紅白歌合戦の歌にしても、現代の若い人々は
歌、楽曲に本当に恵まれているのだろうか?
と素直な疑念あり。今メディアの多様化の割
にその幅は狭いのでは? 拡散はするが模倣
と好みの境は漠としている。
1/1sat
元朝の 踏切の音 まっすぐ来
(がんちょうの ふみきりのおと まっすぐく)
元日や 妻は普段の 電話をし
(がんじつや つまはふだんの でんわをし)
※犬の散歩に盆も正月もない。ゆっくり帰って
きたら姪夫婦の年賀の来訪。嬉しいスタート。
**********