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尾崎喜八② [各種備忘録]

されど同じ安息日の夕暮れに
     一五年前、二歳のお前をかるがると背負って、信濃冨士見
     の高原で復活祭の雲雀の歌を聞いたものだったが、いま、
     成人してお前は、年こそ経たれ、同じ復活祭の夕暮れにバ
     ッハを弾いてくれている。私にはもうお前を背負うことも
     かなわないが、しかしこの年老いた私を憐れむのはまだ早
     い。
     「私はこうして、ここにまだ在る」・・・・・しかし、し
     かし、そういう私の存在がこの世から消えた時、「或る春
     の同じ安息日の夕暮れに、お前はふと私の訪れを空気に感
     じて、同じコラールを、花の窓辺に、一層深い思いで弾い
     てくれるだろうか」

     ※皆川達夫による詩の要約。「」内は詩からの引用部分。
     ※「されど同じ安息日の夕暮れに」の喜八の朗読はここ

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尾崎喜八① [各種備忘録]

田舎のモーツァルト
     中学の音楽室でピアノが鳴っている。
     生徒たちは、男も女も、
     両手を膝に、目をすえて、
     きらめくような、流れるような、
     音の造形に聞き入っている。
     そとは秋晴れの安曇野平。
     青い常念と黄ばんだアカシア。
     自然にも形成と傾聴のあるこの田舎で、
     新任の若い女の先生が孜々として
     モーツァルトのみごとなロンドを弾いている。

     ※モーツァルトのロンドニ長調、ホロヴィッツ演奏はここ
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素顔の寅さん(3) [各種備忘録]

貸ふとん 運ぶ踊子 悲しい
     (かしぶとん はこぶおどりこ かなしい)

ステテコ女物サンダルのひと パチンコよく入る
     (すててこおんなものさんだるのひと ぱちんこよくはいる)

素顔の寅さん(2) [各種備忘録]

うつり香の 秘密知ってる 春の闇
     (うつりがの ひみつしってる はるのやみ)

朝寝して 寝返りうてば 昼寝かな
     (あさねして ねがえりうてば ひるねかな)

花冷えや 我が内と外に 君のいて
     (はなびえや わがうちとそとに きみのいて)

やわらかく 浴衣着る女の び熱かな
     (やわらかく ゆかたきるひとの びねつかな)

おふくろ見にきてる ビリになりたくない 白い靴
     (おふくろみにきてる びりになりたくない しろいくつ)

好きだから 強くぶつけた 雪合戦
     (すきだから つよくぶつけた ゆきがっせん)

月ふんで 三番目まで歌う 帰り道
     (つきふんで さんばんめまでうたう かえりみち)

少年の日に帰りたき 初蛍
     (しょうねんのひにかえりたき はつほたる)

むきあって 同じお茶すする ポリと不良
     (むきあって おなじおちゃすする ぽりとふりょう)

はえたたき 握った馬鹿の ひとり言
     (はえたたき にぎったばかの ひとりごと)

素顔の寅さん(1) [各種備忘録]

ひとり遊びなれし子の シャボン玉
     (ひとりあそびなれしこの しゃぼんだま)

遠くでラジオの相撲 西日赤く
     (とおくでらじおのすもう にしびあかく)

コスモスひょろり ふたおや もういない
     (こすもすひょろり ふたおや もういない)

着ぶくれた乞食 じっと見ているプール
     (きぶくれたこじき じっとみているぷーる)

好きだから 強くぶつけた 雪合戦
     (すきだから つよくぶつけた ゆきがっせん)

マスクのガーゼずれた女や 酉の市
     (ますくのがーぜずれたひとや とりのいち)

ポトリといったような気する 毛虫かな
     (ぽとりといったようなきする けむしかな)

初めての 煙草覚えし 隅田川
     (はじめての たばこおぼえし すみだがわ)

日暮里の 線路工夫や 梅雨の朝
     (にっぽりの せんろこうふや つゆのあさ)

金魚屋 生まれた時から 煙草くわえたよう
     (きんぎょや うまれたときから たばこくわえたよう)
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