ダクタク句集2023年(令和5年)上期 自選集 [自選集2023]
2023年5月分コピー済 未選定
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5/31wed
友堂々50号の絵梅雨に入る
(ともどうどうごじゅうごうのえつゆにいる)
※友人からの案内で地域絵画グループの美術展
を見に行った。なかなかどうして手管の面々、
圧倒された。うなだれて雨模様の中を帰って
きた。
5/30tue
片陰もなき牛込の柳町
(かたかげもなきうしごめのやなぎちょう))
※先日の東京行続き。
あの日は背中がじりじりと季節外れの真夏日。
好きで歩いているとはいえ、一時間休みなし
というのはやや危険。わかってはいるけど・
・・ほう、ここは東京女子医大のすぐ近くだ。
安心。
白靴で夏目通りよ坂の街
(しろぐつでなつめどおりよさかのまち)
5/29mon
手拭いを職人風に豆の飯
(てぬぐいをしょくにんふうにまめのめし)
薬の日どくだみ抜く手てぬるかり
(くすりのひどくだみぬくててぬるかり)
5/28sun
ランドセル開いたままの子走り梅雨
(らんどせるあいたままのこはしりづゆ)
西瓜苗植うるに場所の狭まりて
(すいかなえううるにばしょのせばまりて)
※家庭菜園でも連作障害を避けるために知恵
を絞る。スイカはウリ科、好みの野菜がワ
ンサとある。4,5年間を空けよとなると
相当に大変。
5/26fri
走り梅雨ブラ翁が間奏曲よ
(はしりづゆぶらおうがかんそうきょくよ)
※日ごとの天気の変化、寒暖の差が激しい。
梅雨も近い。ブラームス親方をブラ翁と称
し、型にはめようとする無理。句を作る者
が味わう快感。
5/25thu
緑陰に人や自在に神楽坂
(りょくいんにひとやじざいにかぐらざか)
※先日の東京行続き。
年に一度のフィエスタが近いとあって、坂
のそこかしこで関係の人がたむろしている。
久しぶりの都会の街と人。
日盛りやただ黙々と坂の道
(ひざかりやただもくもくとさかのみち)
※暑いというのに遠回りして坂の途中から大
久保通りに左折。牛込を経由し市谷を掠めて
北上、目標の一つ、夏目坂に向かう。
ただ歩く、これがいい。東京の普通の道を。
5/24wed
毘沙門天賽銭の音友の息
(びしゃもんてんさいせんのおととものいき)
※先日の東京行続き。
神楽坂を上ると中ほど左手に善国寺がある。
地域では「毘沙門さま」と呼ばれていると
か、山の手七福神の一つ。日傘が集ってい
る。神楽坂は日影が多く、酷暑?の中、こ
こまでは出足快調だ。
5/23tue
電車今夏の帽子を膝に置く
(でんしゃいまなつのぼうしをひざにおく)
※先日の東京行。電車に乗るのさえ多少興奮し
ている? それほど久しぶりの出来事。
駅頭は久闊よりも暑さかな
(えきとうはきゅうかつよりもあつさかな)
5/22mon
麦秋はこの地ここだけ夫婦いる
(ばくしゅうはこのちここだけふうふいる)
莢豌豆手疲るほどの地の恵み
(さやえんどうてつかるほどのちのめぐみ)
※都会をゆっくり味わい、疲れるほどに歩いた
が、住まいへの帰巣本能が以前より強い。
歳のせいもあり、またコロナ禍で寸断された
都会への思いのせいもあろう。
5/21sun
AIの変革にいるか夏木立
(え-あいのへんかくにいるかなつこだち)
※ほんのしばらくの間で世界中の話題になって
いる生成AI。良いにつけ悪いにつけ影響を
まともに被る世代ではない。したがって急速
な大変革とはいえ、その動きを劇場で味わっ
ている気分だ。今や出し物としては戦争を凌
ぐかも。
5/19fri
Тシャツの長き横文字夏来たる
(てーしゃつのながきよこもじなつきたる)
雨上がる緑の重さ薄暑かな
(あめあがるみどりのおもさはくしょかな)
5/17wed
薫風や三年見ぬ間の濠の駅
(くんぷうやみとせみぬまのほりのえき)
※気の合った仲間との、三年ぶりの歩き会は真
夏日の昼下がりの神楽坂に集合した。暑い。
想定外の「決死行」となった。
5/16tue
風薫る休場明け後の二連勝
(かぜかおるやすみあけごのにれんしょう)
※横綱の両膝のサポーター、単なるテーピング
ではなくてなにやら角ばったガード材がそこ
を覆っている。きょうも明日も横綱を応援し
ている。結果勝ちであればいい。
5/15mon
夏来たる無愛想なる街もよし
(なつきたるぶあいそうなるまちもよし)
※テレビも他のメディアも、また街に出れば商
店も通りも、東京も地方も「ターゲットは若
者」とりわけ「Z世代」とか。
これイコール落ち着かない世の中だ。
こびちゃいけない。
5/14sun
青嵐打ち捨てられし苗の青
(あおあらしうちすてられしなえのあお)
※当地の田植えは大半が四月中に終わっている
が、何の品種かもち米か?半月も遅れて田植
えをした。使いようがない、残った苗の山。
5/13sat
山法師の白は濁手爺の家
(やまぼうしのしろはにごしでじじのいえ)
※ヤマボウシの花が咲き始めている。いつも通
る家のそれはもう半ばを越えている。しかも
その白色は実に深い色をしている。家ごとに
木ごとに白が違う気がする。
5/12fri
聖五月戴冠式に仔細あり
(せいごがつたいかんしきにしさいあり)
サツマイモ植えず三日の雨続き
(さつまいもうえずみっかのあめつづき)
5/11thu
芍薬は画材見事な見得を切り
(しゃくやくはがざいみごとなみえをきり)
※今朝4時過ぎ当地を震度5強の強い揺れが襲
った。人生で初めての5強を体験、その最中
これが更に強くなったら・・・首都直下地震
ではないか?の強い恐怖に捕らわれた。
見舞いのメールなどを受信し、一息ついたの
は約一時間後。
5/9tue
細き棒ギブスの中を夏に入る
(ほそきぼうぎぶすのなかをなつにいる)
※知人が自分の庭で転倒し踝を骨折した。齢を
重ねての骨折は時に大変なのだが、時間はか
かるが完治できる見通しだ。ギブスに合った
木の棒をプレゼントした。大いに感謝された。
5/8mon
春惜しみ上野の山をただ抜ける
(はるおしみうえののやまをただぬける)
角曲がる都電見下ろし暮れかぬる
(かどまがるとでんみおろしくれかぬる)
※晩春という言葉にある郷愁を感じるのだが、
自分の体験と小津安二郎の映画の記憶とが混
然となって境目が妖しくなってことにも原因
がある。不甲斐ない自分の記憶力にがっかり
はするものの、悪い気分ではない。
春をじっくり惜しむほど情緒のある人間では
ない。なぜか浮かんでくるのは、言問通りか
らがら芸大の裏手に上がって、ただ御徒町方
面に上野の山を突っ切ってくる。もう一つは
王子駅付近で都電が直角に曲がるあたり、近
くには飛鳥山がありこの辺もサクラがあった。
広い道路をまたぐ横断歩道の上から飽かずに
眺めている。どちらも夕暮れ近く。
草の山と鎌を眺めつ春惜しむ
(くさのやまとかまをながめつはるおしむ)
5/6sat
芋植うる今日は二畝ばかりなり
(いもううるきょうはふたうねばかりなり)
磯茶屋の大椀どっと浅蜊汁
(いそじゃやのおおわんどっとあさりじる)
5/5fri
チェーホフは春の日そして春の夕
(ちぇーほふははるのひそしてはるのゆう)
※午前中はゆっくり読書と新聞、午後は晴れの
強風の中畑に駆り出される。行く春を惜しむ、
どころか黄砂混じりの風の中、サツマイモを
植える準備をする。今年はちゃんと黒マルチ
を張って50本植える予定。ちゃんとやるに
はやはり私の出番。
5/4thu
住職を庭師とまがふ日永かな
(じゅうしょくをにわしとまがうひながかな)
団地の子女子が率いて日永かな
(だんちのこじょしがひきいてひながかな)
5/3wed
峠越え八十八夜の歯科通い
(とうげこえはちじゅうはちやのしかがよい)
※家内が歯茎の治療に難渋し、腕の良い口腔
歯科を求めて隣市の医院を紹介してもらっ
た。国道沿いで行くと遠くなり、山越えの
ショートカットを選んで連れて行く。
それにしても遠い。午後の予約で行くと午
後一杯取られてしまう。
5/2tue
忌野忌木の間隠れの清志郎
(いまわのきこのまがくれのきよしろう)
※快晴。木漏れ日を浴びながら草むしり。新たに
入手したイヤホーンで清志郎を聴く。
フーン・・・いいなあ。いいのは清志郎であっ
て、値段の割にイヤホーンはだめ。それとも、
スマホ越しの音ってこんなものか?
5/1mon
句日記や苦あり楽あり柿若葉
(くにっきやくありらくありかきわかば)
※誰にも見てもらっていないという前提なれど
も、出来ればコンスタントに自分が満足する
句を作りたいと思う。
そのための強制力の一つがこのブログだ。始
めた以上自分で恥ずかしい句は見せられぬ、
決めて開店休業とはいかぬ、と。
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4/30sun
荷風忌や言葉あふれて街ゆれて
(かふうきやことばあふれてまちゆれて)
※インバウンドの回復のニュースで浅草雷門周
辺の雑踏が伝えられる。あそこにはすぐ横に
交番があって、我慢強い優しい警察官が絶え
ず笑顔で外国人に応対している。日本の若者
の言葉らしき洪水もある。荷風卒倒。
4/29sat
春爛漫バラは匂いて吾無臭
(はるらんまんばらはにおいてわれむしゅう)
※その昔顔は脂ぎって口の中、パンツの中、靴
の中は蒸れて異臭があった。普段においてそ
うだった。ところが今や匂いはないと人に言
われる。優秀な女歯科医に出会ってからは少
しのプラークもチェックされる。この10年
超、自分の歯の数に異動はない。口臭もない。
生きている証拠も急速に減っているというこ
とか。
4/27thu
動画見てブドウの芽かきためらわず
(どうがみてぶどうのめかきためらわず)
※動画投稿サイトもユーチューブ以外に様々あ
るらしいが、DIY・修理・家事・野菜果実栽
培・ガーデニングなどなど課題に広く応えて
くれるのはユーチューブだろう。本件のテー
マも関係のサイトが見きれないほどある。
4/26wed
しなやかな八十路の筆よ豆の花
(しなやかなやそじのふでよまめのはな)
※どこが痛い、ここが痛い、もう歳だからダメ、
とかいいながら筆を持たせると、対象をきり
っと見つめ、力強く筆を滑らせる。絵画教室
の師はまだ当分大丈夫だ。
4/25tue
新人の帽子は二つかげろへる
(しんじんのぼうしはふたつかげろえる)
※中学校野球部でも新人は二人だけ? うち一
人はつい先月までの小学生を思わせるチビ。
今部活は曲がり角、顧問の教師の激務防止と
やらで学校外から人材を呼んで運営や指導を
委ねるという。さて・・・。そもそも学年二
人ではチームがそのうち成立しなくなる。
これは少子化対策か?
4/24mon
喜寿の春尾崎今なら同じ岸
(きじゅのはるおざきいまならおなじきし)
※尾崎豊の歌特集でたっぷりと聴いた。しみじ
みと繰り返し。
4/22sat
春の蚊や血を吸う知恵はなかりけり
(はるのかやちをすうちえはなかりけり)
4/21fri
葱坊主貯めし雑草抜きにけり
(ねぎぼうずためしざっそうぬきにけり)
学年の違う子らいる葱坊主
(がくねんのちがうこらいるねぎぼうず)
※コロナ禍の制限された暮らしは畑仕事を増や
したとか。周辺でもそれまでの庭を大胆に畑
にした家が何軒か見受けられる。やせた葱坊
主がクレイムを言いたがって・・・。
4/20thu
涅槃図や絵解きの僧の若返り
(ねはんずやえときのそうのわかがえり)
※ペンライトを使うところは変わりないが、声
が変わった、若い透き通るいい声だ。わかり
やすい。だが、こちとら内容を理解したいと
聴いているわけではない。嗄れ声のいつもの
声の方が落ち着くしありがたい。死んだわけ
じゃないだろう。
4/18tue
捻挫して常より見入るすみれ草
(ねんざしてつねよりみいるすみれそう)
※家内が犬を曳いていて踏み外し、捻挫した。
初め大層痛がったが、時間を置かず整形外科
で診てもらい患部を固定した。これが奏功し
軽くて済んだみたい。ほぼ全快。
4/17mon
大風のやみて間もなく浮かれ猫
(おおかぜのやみてまもなくうかれねこ)
※時々吹きまくる大風が長いこと続いた。建物
が揺れ撓るほどで睡眠には大敵。ようやく静
かになったと思ったら、・・・猫の恋の始ま
り? 早くないか? 温暖化?
4/16sun
外来の受付すれば青柳
(がいらいのうけつけすればあおやなぎ)
4/14fri
角とれてと言われ久しく蕨餅
(かどとれてといわれひさしくわらびもち)
4/13thu
屋根の鞠今も探して啄木忌
(やねのまりいまもさがしてたくぼくき)
※ふとしたことで昔のことを思い出し、その前
後のことまで妙に生々しく覚えていた、なん
てことがある。啄木の故郷を思っての一首、
「その昔小学校の柾屋根に
我が投げし鞠いかにかなりけむ」
4/12wed
どの家も表札のごとハナズオウ
(どのいえもひょうさつのごとはなずおう)
春愁や宅配人のほころべり
(しゅんしゅうやたくはいにんのほころべり)
4/11tue
描きし絵の穏やかなれど徂春かな
(かきしえのおだやかなれどそしゅんかな)
※絵画教室の会でOBの来訪があり、腕前の進
歩と積極的な出展、入賞のことなど、大いに
アオラレタ。なにこの歳になって、画家にな
りたいわけじゃなし・・・とお決まりの言い
訳はするものの、もう少し上手になってもと
素直に願う気持ちや切なるものがある。
4/10mon
田植え機のギヤなめらかに父となる
(たうえきのぎやなめらかにちちとなる)
※農業後継者の彼はまだ新米のうち。先日父親
になったらしい。田植えは早くて1週間後、
腕が鳴って仕方がないというところか?
4/9sun
山笑ふバイクは遅し郵便夫
(やまわらうばいくはおそしゆうびんふ)
春巻を揚げて届けに手の温み
(はるまきをあげてとどけにてのぬくみ)
※もらった筍の一部を春巻にし届ける。スマホ
で時刻を確認し揚げたてを。
4/8sat
春爛漫愛想尽かしの果樹あれど
(はるらんまんあいそづかしのかじゅあれど)
※一番遅いぶどうの木が芽吹き始めた。梅、桃、
プラム、柿に続いてである。狭い土地に果樹
を縦列に欲張って植えているせいか、昨年は
殆どの木の収穫が落ち込んだ。対虫害では努
力するもいずれも効なく終始した。ああ、と
嘆息すること、今に引きずっている。
4/7fri
旅ごころ蠢き長く放哉忌
(たびごころうごめきながくほうさいき)
※お金もないが、飼い犬がホテル・病院に預け
にくい事情があるため、旅行は控えることが
多い。コロナ禍で余計固まった感じ。
4/5wed
学校のサクラを望み湯屋はあり
(がっこうのさくらをのぞみゆやはあり)
※御多聞にもれず、サクラと言えば城に学校で
ある。小学校の桜並木を思い出していたら、
ふと何のつながりもなしに近くに建っていた
温泉会館なるものが頭に浮かんできた。これ
も小学校も少し離れて故郷の川沿いにあった。
温泉などではなく「沸かし」だったろう。
70年ほど前のこと、あのころは農閑期の人
々など家族連れが客だった。何年かで閉鎖し
た。二階建ての、それらしくないモルタル塗
りの白い建物だった。
4/4tue
龍一の音々さやか風光る
(りゅういちのおとおとさやかかぜひかる)
※坂本龍一死去
4/3mon
毎日が今良しと推す山笑ふ
(まいにちがいまよしとおすやまわらう)
※サクラの終盤になると背景の山々の若葉が輝
き始める。昨日は今が一番いい時季だと思っ
たが、今朝になると今日の方がもっと良くな
ったと。
4/2sun
花びらはいつにも増して連翹忌
(はなびらはいつにもましてれんぎょうき)
記念館は雪深くあり光太郎忌
(きねんかんはゆきぶかくありこうたろうき)
※真冬に訪れた、高村光太路郎記念館は当時の
厳しさそのままに花巻郊外にあった。藁ぶき
の小さな一軒家、村はずれで隣家はない。
大雪の中に見た、強烈な印象は今も鮮明であ
る。光太郎忌はサクラ咲く、うららかな季節
だが、思い出は常に雪に埋もれた、あの光景
だ。したがって句は季重なりとなる。なに、
構うものか。
4/1sat
桜散り桜餅食い四月馬鹿
(さくらちりさくらもちくいしがつばか)
※今日は文句ない晴れ日。なんと言われようと
午前中は桜吹雪を見に、午後は甲子園の決勝
観戦だ。雑草が庭で背伸びして笑っている。
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3/31fri
酒倉は人呼ぶカフェに鳥曇り
(さかぐらはひとよぶかふぇにとりぐもり)
※街がやさしく変貌すると言えば耳障りは良い
が、街のいたるところでインバウンド向け、
フリー客向けに変身するのはどうにもいただ
けない。落ち着かない。
通りの両側に高いオフィスビルやマンション
が、目の高さにはいらっしゃいませの声。
うんざりだ。
3/30thu
春たけなわ入道雲のようなもの
(はるたけなわにゅうどうぐものようなもの)
※兄妹からなかなか良い電話が入った。積乱雲
のような形がにょきにょきと立ちかけている。
ちょいと歩くと汗がにじむような午後。
3/28tue
パスで行く博物館は花の道
(ぱすでいくはくぶつかんははなのみち)
※その昔上野の国立博物館年間パスを持ってい
た。驚くほど安かった。夏は勤務の後でも入
れる閉館時間だったように思う。ちょいぶら
っと見て御徒町まで歩く、それが良かった。
3/27mon
人ゆらり高き足場に花の風
(ひとゆらりたかきあしばにはなのかぜ)
桜湯はサービスとありカフェの午後
(さくらゆはさーびすとありかふぇのごご)
※雨がちな日が続き、当地のサクラはけなげに
も少しも散らずにピークを迎えている。
尊氏の本心はどこ藪椿
(たかうじのほんしんはどこやぶつばき)
3/26sun
目も耳も親譲りなり喜寿の春
(めもみみもおやゆずりなりきじゅのはる)
※見た目は別としても、目も耳も鼻も歯や咽喉
も、役割の面で今でも至極堅調である。親に
感謝している。
春場所は気付けば楽日花の冷え
(はるばしょはきづけばらくびはなのひえ)
3/25sat
待て待てと言葉緩めて春の雷
(まてまてとことばゆるめてはるのらい)
※もう言葉を荒げる年齢でもない、とは思うも
のの・・・。
汚すのも洗うのも雨土筆かな
(よごすのもあらうのもあめつくしかな)
3/24fri
たんぽぽの絮飛ばすとき命燃え
(たんぽぽのじょとばすときいのちもえ)
窓開けて歯科に客待つサクラかな
(まどあけてしかにきゃくまつさくらかな)
声も歌もサクラに吸われデイの庭
(こえもうたもさくらにすわれでいのにわ)
3/23thu
夕まぐれ野蒜の花が主演なり
(ゆうまぐれのびるのはながしゅえんなり)
※3月は映画の賞の月。我が家の主演賞は断然
花ニラ。地味で小さな花が夕方薄暗くなると
庭中に冴えてくる。
3/21tue
木瓜の垣見知る主人の赭ら顔
(ぼけのかきみしるしゅじんのあからがお)
※何年か越しの賜だろう、木瓜が棚いっぱいに
咲き誇っている。比較的地味な花だから、そ
の主人ともどもドヤ顔はしない。
3/19sun
春場所や贔屓力士の眉伸びて
(はるばしょやひいきりきしのまゆのびて)
※WBCに選抜高校野球も始まり球春真っ盛り。
相撲もと行きたいけれど休場相次ぎ、こちら
は戦国下剋上・・・。
3/17fri
藪椿手折って土の瓶思い
(やぶつばきたおってつちのびんおもい)
※椿らしくない、珍しいと思って、素焼きの花
瓶にさし、スケッチ始めたまでは良かったが、
上手に描けたと思った椿の絵がどうも椿に見
えない。仲間も「これ椿か?」と不評。こち
らは不満。・・・それもそのはず元々が椿ら
しくないのだから。
3/16thu
もぐら塚生命力の霞みおり
(もぐらづかせいめいりょくのかすみおり)
※国立科学博物館のもぐら研究の先生が話して
いた。仕事の半分以上が動物の骨の標本作り
であると。しかも標本作成には「3無」の特
徴がある由。「無計画」「無目的」「無制限」
にやるのだそうな。標本を多種、大量に持つ
ことが将来の研究のなによりの基盤だ、その
ためであると。なるほどとびっくり。
今日も動物園から送られてきた動物の死骸、
奄美で交通事故死したアマミノクロウサギの
死骸に向き合う。
3/15wed
春時雨香り充溢今朝のパン
(はるしぐれかおりじゅういつけさのぱん)
※薄暗い朝も許せる。
3/14tue
駅前の円墳にあり白木蓮
(えきまえのえんぷんにありしろもくれん
※すれ違う白マスクの数はそんなに減っていな
い。近くの駅では白が急増とか。
3/13mon
新設の波止は揺らいで眼張釣り
(しんせつのはとはゆらいでめばるつり)
※次第に風が強くなる。午後は雨も。新しい波
止は強風で揺れるのではないか、余計なお世
話。
3/12sun
春霞五重塔の圓遊の
(はるがすみごじゅうのとうのえんゆうの)
※圓遊の新作落語「五重塔から のっそり」を
聴いた。良かった。露伴「五重塔」のスジに
沿って、その空気を面白く上手に伝える。
サクラ前でもいいから谷中を歩きたいものだ。
3/11sat
皺の手や三月十日の句が多く
(しわのてやさんがつとおかのくがおおく)
※三月十日は東京大空襲で季語
今日三月十一日は東日本大震災、これも季語
うららかや都電の車庫に音ありて
(うららかやとでんのしゃこにおとありて)
3/10fri
春の夕ジムの灯りのみこうこう
(はるのゆうじむのあかりのみこうこう)
呼吸器の音と点滅春の闇
(こきゅうきのおととてんめつはるのやみ)
※アカデミー賞の発表が間近いからというので
もないが、過去の受賞作「ミリオンダラー・
ベイビー」を見た。以前にも見たが、今回も
感動した。クリント・イーストウッドにモー
ガン・フリーマンが揃い、ヒラリー・スワン
クときたら、2005賞総なめもわかる。
3/9thu
青海苔やこんなのという男あり
(あおのりやこんなのというおとこあり)
※今シーズンは地元木更津周辺の海苔も有明海
の海苔もそれぞれ違った原因で不漁となって
いるらしい。江戸前のつやつやした黒い海苔
がふんだんに・・・もうそんなことはないの
か? 青海苔は独特の風味があってファンも
多いのだが、不漁続きでは吐き捨てるように
しか言わない。
3/7tue
古竹を切りて三月垣直す
(ふるたけをきりてさんがつかきなおす)
※四月下旬並みの暖かさという今日まで延ばし
ていた作業をする。庭はクロッカス、ムスカ
リ、花ニラの順で賑やかになりそう。
3/6mon
今読まずはもう読まざるの春の雨
(いまよまずはもうよまざるのはるのあめ)
※楽しみにして用意した本なのに出足で躓くこ
とがある。年齢のせいもある。またそのうち
に出直しをと言っても、今回が事実上の最後
だろうと自分を脅迫し追い詰めてみる。
それでもだめ・・・。
3/5sun
春眠やふとんの重さ知りてなお
(しゅんみんやふとんのおもさしりてなお)
※うとうと目を覚ましたが、目はまだ開かない。
冬中使ってきた布団がやけに重く感じる。む
にゅむにゅ・・・暖かいけど、むにゅむにゅ
・・・。やってはいけない自句実況でした。
3/3fri
雪柳最初の白い二三点
(ゆきやなぎさいしょのしろいにさんてん)
雛の日や女房マージャン公民館
(ひなのひやにょうぼまーじゃんこうみんかん)
※どうやら偕老同穴となる雲行きの桃の節句で
はある。最近は女房元気で留守がいいという
常套句もどきが良く似合う。
3/2thu
今朝一はスカルラッティ春一番
(けさいちはすかるらってぃはるいちばん)
春一番ラインで老けを確認し
(はるいちばんらいんでふけをかくにんし)
※ラインで都心歩きの会再開の日を3人で相談
する。便利なものだ、しかも無料とはね。
3/1wed
蘖や鑿研ぐ日々を思いたり
(ひこばえやのみとぐひびをおもいたり)
※暖かすぎる日中、友人との再会兼街歩きも良
かろうと思う。ラインで見る顔もそうは老け
ていないようだし。
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2/28tue
春浅し友の旧居に杭打機
(はるあさしとものきゅうきょにくいうちき)
※随分前に越した友人宅跡だが周囲の土地を合
わせて工事が始まった。杭を打つ必要がある
建物? この近辺では珍しい。
2/26sun
春の海フェリーふわりと波の上
(はるのうみふぇりーふわりとなみのうえ)
※友人を見送って金谷港東京湾フェリーまで出
かけた。天気は良いのだがやや波が高い。心
配のほどではない。でっぷり肥えたフェリー
は無事浮かんで出港した。
2/24fri
春の闇濃かれ三つ星寄り添うて
(はるのやみこかれみつぼしよりそうて)
※昨夕、日の入り後18時30分頃の西の空で、
「新月」と「木星」「金星」とが一列に黄道
上に並ぶ天体ショーを見た。格別レアなこと
ではないが、タイミングと天候がこうもピタ
リと合うことは少ない。写真も撮れたよ。
2/23thu
春の旅ミシン黄色を纏いおり
(はるのたびみしんきいろをまといおり)
旅先の待ちにし膳よ蕗の薹
(たびさきのまちにしぜんよふきのとう)
※旅は思い浮かべるころから出かけるまでが至
福という。明るい黄色はお気に入り、さあ出
かけよう。
2/22wed
猫魔岳街を白くし春むかし
(ねこまだけまちをしろくしはるむかし)
※昔会津若松の点描。2月の午後。通りの遥か
先にあるのは真っ白な残雪をいただく猫魔岳。
これが浮き上がって大きく見える日がある。
市街の根雪は融けて道を洗い、コンクリート
舗装の道はこれも白く見える。家並みは後退。
2/21tue
春一日怠惰の時とのみ記して
(はるひとひたいだのときとのみきして)
ブランコをこいで人待つ青春か
(ぶらんこをこいでひとまつせいしゅんか)
※ろくなニュースはないが、そこは春だからそ
の気になれば春になる。
2/20mon
太陽光パネルが侵す春田かな
(たいようこうぱねるがおかすはるたかな)
蓬髪が床屋帰りで春の風
(ほうはつがとこやがえりではるのかぜ)
2/19sun
街道はうつらうつらの菜の花忌
(かいどうはうつらうつらのなのはなき)
※菜の花忌の頃に古い「街道を行く」のTV番組
を見た。本よりも随分端折ってあるものの、
上手い編集だ。田村高広のナレーションが懐
かしい。
2/18sat
寝もやらずジャガイモ植うる日はうつろ
(ねもやらずじゃがいもううるひはうつろ)
※ちょっと早めのジャガイモの植え付け。肥料
を多めにして、このタイミングの植付けは生
育が良いという話を仕入れてきた。
サボり気味の今年はこれが野良始めだ。ねむ
たい~・・・。
雪形を見たいと思う野良始め
(ゆきがたをみたいとおもうのらはじめ)
2/17fri
梅咲きて痒み嘆きし人いかに
(うめさきてかゆみなげきしひといかに)
※年寄りの冬季の痒みは空気と肌の乾燥が主因
と言われる。彼へのアドバイスは「入浴を一
日おきに、入浴の日は今まで通りちゃんと石
鹸で洗いちゃんと落とすこと。入浴しない日
は一日中石鹸を使わないこと。使わなくとも
すぐ慣れる」というもの。
2/16thu
春の宵億劫という音を上げる
(はるのよいおっくうというねをあげる)
※さて、もう歳かな? 何か動き始めるときに、
初めのひとふんばりを1テンポ待つことが近
頃多くなった。なんのこともないのだけれど、
その時の姿勢でしばしゆっくりするのだ。
2/14tue
家に肌あり初東風の似合う家
(いえにはだありはつこちのにあういえ)
※歳時記は季語とその季語を使った例句を味わ
って、季節感の妙を感じるものだ。しかし季
語の中には違和感どころか時代錯誤と言わざ
るを得ないものも数多い。窮屈でも文句を言
わずにその古い季語に合った対象を見つけよ
ということなのか。
2/12sun
かたや死にかたやはかくも春の声
(かたやしにかたやはかくもはるのこえ)
※久しぶりに聞く彼の声は以前と全然変わらな
い。前回の彼の電話は同期の友の死を伝える
ものだった。昔から二人を対で見がちな私。
2/11sat
生姜酒とめる者なく喜寿の春
(しょうがざけとめるものなくきじゅのはる)
天井のシミ数え切り喜寿の春
(てんじょうのしみかぞえきりきじゅのはる)
※町内会の人から喜寿のお祝いですよね、と言
われて改めて意識した。満77歳の誕生日か
ら2カ月ほど。感慨とてなにもない。
2/10fri
新海苔は産地苦渋の味少し
(しんのりはさんちくじゅうのあじすこし)
※地元木更津、富津の江戸前海苔はここ数年ク
ロダイの養殖場への侵入と食い荒らしなどに
よって被害を被っている。今季は有明海の海
苔の産地も海水温の上昇が海苔生育の大幅減
産につながっているらしい。
2/9thu
春寒やこころに農具並べおり
(はるざむやこころにのうぐならべおり)
※とっくに農具はラインアップ済み。鎌だって
研いである。
2/8wed
壁の上を春日は円くすべりおり
(かべのえをはるびはまるくすべりおり)
※寝室のカーテンの合わせ目から差し込む朝日
が壁の上に7,8センチの円い明るい形を作る。
日の出の時刻が日々早くなるから、見えだす
時刻は一日ごとに少し早くなり、その位置は
左にずれる。秋分の日以降の秋とはちょうど
逆の形だ。
ついでに言えばそこは床の間で春向きの掛け
軸がかけてある。その上を円い光がすべる。
出来過ぎた話。嘘のような本当の話。
2/6mon
童顔は遺影となりて余寒かな
(どうがんはいえいとなりてよざむかな)
寒紅玉切らさずただに好きなれば
(かんこうぎょくきらさずただにすきなれば)
煮大根においはわが身黙しおり
(にだいこんにおいはわがみもくしおり)
2/4sat
立春や師の舌かくも滑らかに
(りっしゅんやしのしたかくもなめらかに)
※絵にもおしゃべりにも盛んなのはすごい。御
年は80歳台後半で絵筆の軽妙なこと、言葉
に切れ目がないこと。
2/3fri
めずらしく朝のご飯寒卵
(めずらしくあさのごはんかんたまご)
豆まきや声の大きさ迷いつつ
(まめまきやこえのおおきさまよいつつ)
※外に向いてまず一声、大き過ぎたかな? 一
瞬のうちに脳裏を掠める。えいッ、構うな、
この大きさで、鬼に入られてしまう。
声の大きさ! 実は単なる羞恥心の減退、認
知症の手前の始まりだったりして・・・。
2/2thu
宵星の西に沈めば冬銀河
(よいぼしのにしにしずめばふゆぎんが)
※日脚が伸びたものの光はまだ弱い。宵の明星
が沈み暗い星空に変わるまで長い時間は要ら
ない。寒風は身を震わせるが、天空の変化の
微妙さは今頃が味わい深い。
2/1wed
着ぶくれて道ゆずりたる好々爺
(きぶくれてみちゆずりたるこうこうや)
客引きも色とりどりに着ぶくれて
(きゃくひきもいろとりどりにきぶくれて)
※1月の寒波はまだ続いている。客の出足はさ
らに細り、夜の街は大変だ。
************************************************
1/31tue
養蜂をやってみたいと春隣り
(ようほうをやってみたいとはるどなり)
※65歳を前にした人がいる。第2の人生の新入
生間近。彼は希望に燃えている。ああした頃
が俺にもあったのだ。
スカーフに冬薔薇置いて画材とす
(すかーふにふゆばらおいてがざいとす)
1/30mon
昼下がり湯たんぽ抱いて名画かな
(ひるさがりゆたんぽだいてめいがかな)
※テレビで一生懸命映画を見ている。殆どが自
宅で録画しておいたものだ。エアコンをとめ
て湯たんぽを抱きかかえる、眠たくならない。
1/29sun
大寒やなんのなんのと言いにけり
(だいかんやなんのなんのといいにけり)
ケッフェルの番号が出ず冬木立
(けっふぇるのばんごうがでずふゆこだち)
※1/25はモーツァルトの誕生日のようである。
ゆうに600以上ある作品を網羅して正確に番
号をつけるのは至難の業といわれるが、なか
でも一番信頼されるのはケッフェルのつけた
作品番号だ。YoutubeなどではKの次に番号を
つけて検索しただけで、世界中でアップされ
た演奏が並ぶ。
そんな超便利な番号が今次々と記憶から抜け
落ちているようだ。がっくりする。少しずつ
か?わからない。今朝も試しにk516で検索
する。馴染みの演奏が並ぶ。胸を撫で下ろす。
1/27fri
蕪三つ葉っぱも自慢熨斗はなし
(かぶみっつはっぱもじまんのしはなし)
金ないか着物はないか冬の声
(きんないかきものはないかふゆのこえ)
1/26thu
大寒波北国生まれの身なれば
(だいかんぱきたぐにうまれのみなれば)
冬鷗群れてぞ川を遡る
(ふゆかもめむれてぞかわをさかのぼる)
※当地はマイナス5度まで気温が下がった。と
は言え、特に変わったことはなにもなかった。
外で飼っている犬の水が氷ってしまったこと
ぐらい。頬がピリピリを越えて、ビリビリと
痛痒いような感覚には遠かった。
犬はもちろん、周囲も穏やかなようだ。
1/25wed
初天神いかず子供らうるさふて
(はつてんじんいかずこどもらうるそうて)
※子供の騒音「あれ買ってくれこれ買ってくれ」
小三治の曾孫が騒ぐ初天神
(こさんじのひまごがさわぐはつてんじん)
※初天神で露店が並ぶ通りに人があふれている。
こんな光景は暫く落語の中だけだろう。故小
三治の「初天神」は絶品だった。
滑舌の稽古は落語初天神
(かつぜつのけいこはらくごはつてんじん)
1/24tue
大寒や譲る畑の草むしる
(だいかんやゆずるはたけのくさむしる)
※家庭菜園を引退するシニアが寒中に草むしり
をしている。じゃがいもの植え付けに始まる
春野菜の作業開始に次の人が間に合うように
との心配りだ。さすがと思う。
しぐるるや明日明後日は寒気来る
(しぐるるやあすあさってはかんきくる)
1/21sat
電気代一段と大寒しばし
(でんきだいいちだんとだいかんしばし)
寒釣りや台半畳の座禅かな
(かんずりやだいはんじょうのざぜんかな)
※電気代が高騰した。次の3割近くの値上げ申
請は円滑に行っても実施は夏前後だろうから、
今のうちに音を上げていてはどうしようもな
いのだが・・・。
寒中に釣りに興ずる人々の境地にはいつまで
たっても近づけない。
1/20fri
四十雀庭に長く居蕪村の忌
(しじゅうからにわにながくいぶそんのき)
※冬型の気圧配置で関東地方は晴れ上がる。雨
模様のすぐ後だけに、庭や畑に出ていざ労働
というわけにはいかない。どこかに正月暮ら
しの残滓が残っているようだ。
枯れ菊の山となりて焼く人なし
(かれぎくのやまとなりてやくひとなし)
1/19thu
坐して描く水墨の線寒の雨
(ざしてかくすいぼくのせんかんのあめ)
1/18wed
マスク越し目が笑いおり初稽古
(ますくごしめがわらいおりはつげいこ)
※水彩画の絵画教室、初会合。恒例でバラを描
いた。
1/16mon
雨音に冬枯れ思い眠りけり
(あまおとにふゆがれおもいねむりけり)
※睡眠にかけての不器用さでは人後に落ちない。
いったん思い詰めて固まると、ちょっとのこ
とではほぐれない。眠れなくとも何の痛痒も
ない身の上だが、・・・犬がいた。朝少しで
も遅くなると叱られる。
1/15sun
初風呂や西日の残るうちに入る
(はつぶろやにしびののこるうちにいる)
※新年早々浴室が薄暗い。外の明かりが残るう
ちに入れば、これはなんと風雅なことか。
いまだに電球を取り換えていない。
1/14sat
初茜山の端木々のこまごまと
(はつあかねやまのはきぎのこまごまと)
侘びの戸に年賀の客の爪の色
(わびのとにねんがのきゃくのつめのいろ)
笑い初め光と電波越しなれど
(わらいぞめひかりとでんぱごしなれど)
※新年も二週間、早いものだ。今日は個人的な
お祝い事があったが、生憎の雨模様。夫婦し
てトンカツを食べてきた。ついでに正月絡み
の句の整理をした。ほどほどのものは今日一
斉に掲句して決まりをつけよう。
1/13fri
母親の角巻借りてポストまで
(ははおやのかくまきかりてぽすとまで)
※北海道や雪国の部屋の中、ことにリビングな
どは温かい。それでちょっとの外出の時など、
簡単な防寒着に、角巻にくるまって出かける。
しかしとうに廃れたことだろう。
1/11wed
若のつく郷土力士や寒の入り
(わかのつくきょうどりきしやかんのいり)
※この一年着実に実力をつけている若元春、若
隆景の兄弟力士は福島県出身。先行している
のは弟若隆景で関脇で大関を狙っている。兄
若元春もこの初場所で初の三役入り。ともに、
地力としぶとさが信条の玄人好みの力士だ。
1/10tue
狐火は都会の闇にこそという
(きつねびはとかいのやみにこそという)
※静謐というのか薄気味悪いと表現すればいい
のか。コロナ禍のもたらした一種人工的な静
けさは都会において夥しいという。
そうかも知れない。人工的な喧騒のすぐ隣に
現れたのだから。
1/9mon
襟巻し杖つき手にはお裾分け
(えりまきしつえつきてにはおすそわけ)
※日中は温かい一日。団地の普段の夕景が戻っ
てきたと言いたいところだが、通行のクルマ
も人も少なくナリを潜めているようだ。これ
がコロナ以降の普段。まるで正月のようと言
った方が近いかな?
1/8sun
新年に独り住まいの愁い聞く
(しんねんにひとりずまいのうれいきく)
※健康であれば独居の寂しさも気楽さに紛れる
のでは? と思うのは外野の勝手な観測らし
い。あれやこれや想定外の問題、煩わしさが
襲って来るという。
淡雪や停戦告げりうすき唇
(あわゆきやていせんつげりうすきくち)
1/6fri
弾初めはYouTubeなり弦低く
(ひきぞめはゆーちゅーぶなりげんひくく)
※せめて正月にはちゃんとレコードをと思って
いたのだが、この気楽さ、即聴性『どんな曲
でも各種取り揃えて即座に聴ける』には抗し
がたい。今年もせいぜいお世話になることだ
ろう。
1/5thu
世を占う知の巨人とな初テレビ
(よをうらなうちのきょじんとなはつてれび)
三が日休んで鵙の来て黙す
(さんがにちやすんでもずのきてもくす)
1/4wed
去年の絵の感想ありて師の賀状
(こぞのえのかんそうありてしのがじょう)
正月の軸は竹林いつぞやの
(しょうがつのじくはちくりんいつぞやの)
初夢は何本かごちゃごちゃと無理
(はつゆめはなんぼんかごちゃごちゃとむり)
1/3tue
正月や奥に鎮座の茶碗出し
(しょうがつやおくにちんざのちゃわんだし)
耳ふさぎこの世この日は寝正月
(みみふさぎこのよこのひはねしょうがつ)
句を書きて手を懐に寝正月
(くをかきててをふところにねしょうがつ)
※寝正月とかふてくされようと現実にはちょっ
といいことに満ちている。正月の空と散歩、
清新の気分は横溢しているし、ラグビーは早
大が決勝進出、箱根も多くの人の想定より上
位でゴールした。
1/2mon
初詣善男善女になりたふて
(はつもうでぜんなんぜんにょになりとうて)
線香を膝に賜ひて初観音
(せんこうをひざにたまいてはつかんのん)
喜寿とても年玉賜ふ気のありて
(きじゅとてもとしだまたまうきのありて)
1/1sun
新年の祝詞おぐらき犬友と
(しんねんのしゅうしおぐらきいぬともと)
初日の出賀状仕舞いを悔やみおり
(はつひのでがじょうじまいをくやみおり)
※日本海沿いを除いて広く晴れ上がったようだ。
当地も快晴、朝早く犬の散歩を済ませ、お屠
蘇の前に近くの観音様に出かけ年始のお参り
をした。おみくじは大吉、甘酒もいただいた。
交通安全のお札もゲット。こんなにスムーズ
な出発は珍しい。
************************************************
5/31wed
友堂々50号の絵梅雨に入る
(ともどうどうごじゅうごうのえつゆにいる)
※友人からの案内で地域絵画グループの美術展
を見に行った。なかなかどうして手管の面々、
圧倒された。うなだれて雨模様の中を帰って
きた。
5/30tue
片陰もなき牛込の柳町
(かたかげもなきうしごめのやなぎちょう))
※先日の東京行続き。
あの日は背中がじりじりと季節外れの真夏日。
好きで歩いているとはいえ、一時間休みなし
というのはやや危険。わかってはいるけど・
・・ほう、ここは東京女子医大のすぐ近くだ。
安心。
白靴で夏目通りよ坂の街
(しろぐつでなつめどおりよさかのまち)
5/29mon
手拭いを職人風に豆の飯
(てぬぐいをしょくにんふうにまめのめし)
薬の日どくだみ抜く手てぬるかり
(くすりのひどくだみぬくててぬるかり)
5/28sun
ランドセル開いたままの子走り梅雨
(らんどせるあいたままのこはしりづゆ)
西瓜苗植うるに場所の狭まりて
(すいかなえううるにばしょのせばまりて)
※家庭菜園でも連作障害を避けるために知恵
を絞る。スイカはウリ科、好みの野菜がワ
ンサとある。4,5年間を空けよとなると
相当に大変。
5/26fri
走り梅雨ブラ翁が間奏曲よ
(はしりづゆぶらおうがかんそうきょくよ)
※日ごとの天気の変化、寒暖の差が激しい。
梅雨も近い。ブラームス親方をブラ翁と称
し、型にはめようとする無理。句を作る者
が味わう快感。
5/25thu
緑陰に人や自在に神楽坂
(りょくいんにひとやじざいにかぐらざか)
※先日の東京行続き。
年に一度のフィエスタが近いとあって、坂
のそこかしこで関係の人がたむろしている。
久しぶりの都会の街と人。
日盛りやただ黙々と坂の道
(ひざかりやただもくもくとさかのみち)
※暑いというのに遠回りして坂の途中から大
久保通りに左折。牛込を経由し市谷を掠めて
北上、目標の一つ、夏目坂に向かう。
ただ歩く、これがいい。東京の普通の道を。
5/24wed
毘沙門天賽銭の音友の息
(びしゃもんてんさいせんのおととものいき)
※先日の東京行続き。
神楽坂を上ると中ほど左手に善国寺がある。
地域では「毘沙門さま」と呼ばれていると
か、山の手七福神の一つ。日傘が集ってい
る。神楽坂は日影が多く、酷暑?の中、こ
こまでは出足快調だ。
5/23tue
電車今夏の帽子を膝に置く
(でんしゃいまなつのぼうしをひざにおく)
※先日の東京行。電車に乗るのさえ多少興奮し
ている? それほど久しぶりの出来事。
駅頭は久闊よりも暑さかな
(えきとうはきゅうかつよりもあつさかな)
5/22mon
麦秋はこの地ここだけ夫婦いる
(ばくしゅうはこのちここだけふうふいる)
莢豌豆手疲るほどの地の恵み
(さやえんどうてつかるほどのちのめぐみ)
※都会をゆっくり味わい、疲れるほどに歩いた
が、住まいへの帰巣本能が以前より強い。
歳のせいもあり、またコロナ禍で寸断された
都会への思いのせいもあろう。
5/21sun
AIの変革にいるか夏木立
(え-あいのへんかくにいるかなつこだち)
※ほんのしばらくの間で世界中の話題になって
いる生成AI。良いにつけ悪いにつけ影響を
まともに被る世代ではない。したがって急速
な大変革とはいえ、その動きを劇場で味わっ
ている気分だ。今や出し物としては戦争を凌
ぐかも。
5/19fri
Тシャツの長き横文字夏来たる
(てーしゃつのながきよこもじなつきたる)
雨上がる緑の重さ薄暑かな
(あめあがるみどりのおもさはくしょかな)
5/17wed
薫風や三年見ぬ間の濠の駅
(くんぷうやみとせみぬまのほりのえき)
※気の合った仲間との、三年ぶりの歩き会は真
夏日の昼下がりの神楽坂に集合した。暑い。
想定外の「決死行」となった。
5/16tue
風薫る休場明け後の二連勝
(かぜかおるやすみあけごのにれんしょう)
※横綱の両膝のサポーター、単なるテーピング
ではなくてなにやら角ばったガード材がそこ
を覆っている。きょうも明日も横綱を応援し
ている。結果勝ちであればいい。
5/15mon
夏来たる無愛想なる街もよし
(なつきたるぶあいそうなるまちもよし)
※テレビも他のメディアも、また街に出れば商
店も通りも、東京も地方も「ターゲットは若
者」とりわけ「Z世代」とか。
これイコール落ち着かない世の中だ。
こびちゃいけない。
5/14sun
青嵐打ち捨てられし苗の青
(あおあらしうちすてられしなえのあお)
※当地の田植えは大半が四月中に終わっている
が、何の品種かもち米か?半月も遅れて田植
えをした。使いようがない、残った苗の山。
5/13sat
山法師の白は濁手爺の家
(やまぼうしのしろはにごしでじじのいえ)
※ヤマボウシの花が咲き始めている。いつも通
る家のそれはもう半ばを越えている。しかも
その白色は実に深い色をしている。家ごとに
木ごとに白が違う気がする。
5/12fri
聖五月戴冠式に仔細あり
(せいごがつたいかんしきにしさいあり)
サツマイモ植えず三日の雨続き
(さつまいもうえずみっかのあめつづき)
5/11thu
芍薬は画材見事な見得を切り
(しゃくやくはがざいみごとなみえをきり)
※今朝4時過ぎ当地を震度5強の強い揺れが襲
った。人生で初めての5強を体験、その最中
これが更に強くなったら・・・首都直下地震
ではないか?の強い恐怖に捕らわれた。
見舞いのメールなどを受信し、一息ついたの
は約一時間後。
5/9tue
細き棒ギブスの中を夏に入る
(ほそきぼうぎぶすのなかをなつにいる)
※知人が自分の庭で転倒し踝を骨折した。齢を
重ねての骨折は時に大変なのだが、時間はか
かるが完治できる見通しだ。ギブスに合った
木の棒をプレゼントした。大いに感謝された。
5/8mon
春惜しみ上野の山をただ抜ける
(はるおしみうえののやまをただぬける)
角曲がる都電見下ろし暮れかぬる
(かどまがるとでんみおろしくれかぬる)
※晩春という言葉にある郷愁を感じるのだが、
自分の体験と小津安二郎の映画の記憶とが混
然となって境目が妖しくなってことにも原因
がある。不甲斐ない自分の記憶力にがっかり
はするものの、悪い気分ではない。
春をじっくり惜しむほど情緒のある人間では
ない。なぜか浮かんでくるのは、言問通りか
らがら芸大の裏手に上がって、ただ御徒町方
面に上野の山を突っ切ってくる。もう一つは
王子駅付近で都電が直角に曲がるあたり、近
くには飛鳥山がありこの辺もサクラがあった。
広い道路をまたぐ横断歩道の上から飽かずに
眺めている。どちらも夕暮れ近く。
草の山と鎌を眺めつ春惜しむ
(くさのやまとかまをながめつはるおしむ)
5/6sat
芋植うる今日は二畝ばかりなり
(いもううるきょうはふたうねばかりなり)
磯茶屋の大椀どっと浅蜊汁
(いそじゃやのおおわんどっとあさりじる)
5/5fri
チェーホフは春の日そして春の夕
(ちぇーほふははるのひそしてはるのゆう)
※午前中はゆっくり読書と新聞、午後は晴れの
強風の中畑に駆り出される。行く春を惜しむ、
どころか黄砂混じりの風の中、サツマイモを
植える準備をする。今年はちゃんと黒マルチ
を張って50本植える予定。ちゃんとやるに
はやはり私の出番。
5/4thu
住職を庭師とまがふ日永かな
(じゅうしょくをにわしとまがうひながかな)
団地の子女子が率いて日永かな
(だんちのこじょしがひきいてひながかな)
5/3wed
峠越え八十八夜の歯科通い
(とうげこえはちじゅうはちやのしかがよい)
※家内が歯茎の治療に難渋し、腕の良い口腔
歯科を求めて隣市の医院を紹介してもらっ
た。国道沿いで行くと遠くなり、山越えの
ショートカットを選んで連れて行く。
それにしても遠い。午後の予約で行くと午
後一杯取られてしまう。
5/2tue
忌野忌木の間隠れの清志郎
(いまわのきこのまがくれのきよしろう)
※快晴。木漏れ日を浴びながら草むしり。新たに
入手したイヤホーンで清志郎を聴く。
フーン・・・いいなあ。いいのは清志郎であっ
て、値段の割にイヤホーンはだめ。それとも、
スマホ越しの音ってこんなものか?
5/1mon
句日記や苦あり楽あり柿若葉
(くにっきやくありらくありかきわかば)
※誰にも見てもらっていないという前提なれど
も、出来ればコンスタントに自分が満足する
句を作りたいと思う。
そのための強制力の一つがこのブログだ。始
めた以上自分で恥ずかしい句は見せられぬ、
決めて開店休業とはいかぬ、と。
************************************************
4/30sun
荷風忌や言葉あふれて街ゆれて
(かふうきやことばあふれてまちゆれて)
※インバウンドの回復のニュースで浅草雷門周
辺の雑踏が伝えられる。あそこにはすぐ横に
交番があって、我慢強い優しい警察官が絶え
ず笑顔で外国人に応対している。日本の若者
の言葉らしき洪水もある。荷風卒倒。
4/29sat
春爛漫バラは匂いて吾無臭
(はるらんまんばらはにおいてわれむしゅう)
※その昔顔は脂ぎって口の中、パンツの中、靴
の中は蒸れて異臭があった。普段においてそ
うだった。ところが今や匂いはないと人に言
われる。優秀な女歯科医に出会ってからは少
しのプラークもチェックされる。この10年
超、自分の歯の数に異動はない。口臭もない。
生きている証拠も急速に減っているというこ
とか。
4/27thu
動画見てブドウの芽かきためらわず
(どうがみてぶどうのめかきためらわず)
※動画投稿サイトもユーチューブ以外に様々あ
るらしいが、DIY・修理・家事・野菜果実栽
培・ガーデニングなどなど課題に広く応えて
くれるのはユーチューブだろう。本件のテー
マも関係のサイトが見きれないほどある。
4/26wed
しなやかな八十路の筆よ豆の花
(しなやかなやそじのふでよまめのはな)
※どこが痛い、ここが痛い、もう歳だからダメ、
とかいいながら筆を持たせると、対象をきり
っと見つめ、力強く筆を滑らせる。絵画教室
の師はまだ当分大丈夫だ。
4/25tue
新人の帽子は二つかげろへる
(しんじんのぼうしはふたつかげろえる)
※中学校野球部でも新人は二人だけ? うち一
人はつい先月までの小学生を思わせるチビ。
今部活は曲がり角、顧問の教師の激務防止と
やらで学校外から人材を呼んで運営や指導を
委ねるという。さて・・・。そもそも学年二
人ではチームがそのうち成立しなくなる。
これは少子化対策か?
4/24mon
喜寿の春尾崎今なら同じ岸
(きじゅのはるおざきいまならおなじきし)
※尾崎豊の歌特集でたっぷりと聴いた。しみじ
みと繰り返し。
4/22sat
春の蚊や血を吸う知恵はなかりけり
(はるのかやちをすうちえはなかりけり)
4/21fri
葱坊主貯めし雑草抜きにけり
(ねぎぼうずためしざっそうぬきにけり)
学年の違う子らいる葱坊主
(がくねんのちがうこらいるねぎぼうず)
※コロナ禍の制限された暮らしは畑仕事を増や
したとか。周辺でもそれまでの庭を大胆に畑
にした家が何軒か見受けられる。やせた葱坊
主がクレイムを言いたがって・・・。
4/20thu
涅槃図や絵解きの僧の若返り
(ねはんずやえときのそうのわかがえり)
※ペンライトを使うところは変わりないが、声
が変わった、若い透き通るいい声だ。わかり
やすい。だが、こちとら内容を理解したいと
聴いているわけではない。嗄れ声のいつもの
声の方が落ち着くしありがたい。死んだわけ
じゃないだろう。
4/18tue
捻挫して常より見入るすみれ草
(ねんざしてつねよりみいるすみれそう)
※家内が犬を曳いていて踏み外し、捻挫した。
初め大層痛がったが、時間を置かず整形外科
で診てもらい患部を固定した。これが奏功し
軽くて済んだみたい。ほぼ全快。
4/17mon
大風のやみて間もなく浮かれ猫
(おおかぜのやみてまもなくうかれねこ)
※時々吹きまくる大風が長いこと続いた。建物
が揺れ撓るほどで睡眠には大敵。ようやく静
かになったと思ったら、・・・猫の恋の始ま
り? 早くないか? 温暖化?
4/16sun
外来の受付すれば青柳
(がいらいのうけつけすればあおやなぎ)
4/14fri
角とれてと言われ久しく蕨餅
(かどとれてといわれひさしくわらびもち)
4/13thu
屋根の鞠今も探して啄木忌
(やねのまりいまもさがしてたくぼくき)
※ふとしたことで昔のことを思い出し、その前
後のことまで妙に生々しく覚えていた、なん
てことがある。啄木の故郷を思っての一首、
「その昔小学校の柾屋根に
我が投げし鞠いかにかなりけむ」
4/12wed
どの家も表札のごとハナズオウ
(どのいえもひょうさつのごとはなずおう)
春愁や宅配人のほころべり
(しゅんしゅうやたくはいにんのほころべり)
4/11tue
描きし絵の穏やかなれど徂春かな
(かきしえのおだやかなれどそしゅんかな)
※絵画教室の会でOBの来訪があり、腕前の進
歩と積極的な出展、入賞のことなど、大いに
アオラレタ。なにこの歳になって、画家にな
りたいわけじゃなし・・・とお決まりの言い
訳はするものの、もう少し上手になってもと
素直に願う気持ちや切なるものがある。
4/10mon
田植え機のギヤなめらかに父となる
(たうえきのぎやなめらかにちちとなる)
※農業後継者の彼はまだ新米のうち。先日父親
になったらしい。田植えは早くて1週間後、
腕が鳴って仕方がないというところか?
4/9sun
山笑ふバイクは遅し郵便夫
(やまわらうばいくはおそしゆうびんふ)
春巻を揚げて届けに手の温み
(はるまきをあげてとどけにてのぬくみ)
※もらった筍の一部を春巻にし届ける。スマホ
で時刻を確認し揚げたてを。
4/8sat
春爛漫愛想尽かしの果樹あれど
(はるらんまんあいそづかしのかじゅあれど)
※一番遅いぶどうの木が芽吹き始めた。梅、桃、
プラム、柿に続いてである。狭い土地に果樹
を縦列に欲張って植えているせいか、昨年は
殆どの木の収穫が落ち込んだ。対虫害では努
力するもいずれも効なく終始した。ああ、と
嘆息すること、今に引きずっている。
4/7fri
旅ごころ蠢き長く放哉忌
(たびごころうごめきながくほうさいき)
※お金もないが、飼い犬がホテル・病院に預け
にくい事情があるため、旅行は控えることが
多い。コロナ禍で余計固まった感じ。
4/5wed
学校のサクラを望み湯屋はあり
(がっこうのさくらをのぞみゆやはあり)
※御多聞にもれず、サクラと言えば城に学校で
ある。小学校の桜並木を思い出していたら、
ふと何のつながりもなしに近くに建っていた
温泉会館なるものが頭に浮かんできた。これ
も小学校も少し離れて故郷の川沿いにあった。
温泉などではなく「沸かし」だったろう。
70年ほど前のこと、あのころは農閑期の人
々など家族連れが客だった。何年かで閉鎖し
た。二階建ての、それらしくないモルタル塗
りの白い建物だった。
4/4tue
龍一の音々さやか風光る
(りゅういちのおとおとさやかかぜひかる)
※坂本龍一死去
4/3mon
毎日が今良しと推す山笑ふ
(まいにちがいまよしとおすやまわらう)
※サクラの終盤になると背景の山々の若葉が輝
き始める。昨日は今が一番いい時季だと思っ
たが、今朝になると今日の方がもっと良くな
ったと。
4/2sun
花びらはいつにも増して連翹忌
(はなびらはいつにもましてれんぎょうき)
記念館は雪深くあり光太郎忌
(きねんかんはゆきぶかくありこうたろうき)
※真冬に訪れた、高村光太路郎記念館は当時の
厳しさそのままに花巻郊外にあった。藁ぶき
の小さな一軒家、村はずれで隣家はない。
大雪の中に見た、強烈な印象は今も鮮明であ
る。光太郎忌はサクラ咲く、うららかな季節
だが、思い出は常に雪に埋もれた、あの光景
だ。したがって句は季重なりとなる。なに、
構うものか。
4/1sat
桜散り桜餅食い四月馬鹿
(さくらちりさくらもちくいしがつばか)
※今日は文句ない晴れ日。なんと言われようと
午前中は桜吹雪を見に、午後は甲子園の決勝
観戦だ。雑草が庭で背伸びして笑っている。
************************************************
3/31fri
酒倉は人呼ぶカフェに鳥曇り
(さかぐらはひとよぶかふぇにとりぐもり)
※街がやさしく変貌すると言えば耳障りは良い
が、街のいたるところでインバウンド向け、
フリー客向けに変身するのはどうにもいただ
けない。落ち着かない。
通りの両側に高いオフィスビルやマンション
が、目の高さにはいらっしゃいませの声。
うんざりだ。
3/30thu
春たけなわ入道雲のようなもの
(はるたけなわにゅうどうぐものようなもの)
※兄妹からなかなか良い電話が入った。積乱雲
のような形がにょきにょきと立ちかけている。
ちょいと歩くと汗がにじむような午後。
3/28tue
パスで行く博物館は花の道
(ぱすでいくはくぶつかんははなのみち)
※その昔上野の国立博物館年間パスを持ってい
た。驚くほど安かった。夏は勤務の後でも入
れる閉館時間だったように思う。ちょいぶら
っと見て御徒町まで歩く、それが良かった。
3/27mon
人ゆらり高き足場に花の風
(ひとゆらりたかきあしばにはなのかぜ)
桜湯はサービスとありカフェの午後
(さくらゆはさーびすとありかふぇのごご)
※雨がちな日が続き、当地のサクラはけなげに
も少しも散らずにピークを迎えている。
尊氏の本心はどこ藪椿
(たかうじのほんしんはどこやぶつばき)
3/26sun
目も耳も親譲りなり喜寿の春
(めもみみもおやゆずりなりきじゅのはる)
※見た目は別としても、目も耳も鼻も歯や咽喉
も、役割の面で今でも至極堅調である。親に
感謝している。
春場所は気付けば楽日花の冷え
(はるばしょはきづけばらくびはなのひえ)
3/25sat
待て待てと言葉緩めて春の雷
(まてまてとことばゆるめてはるのらい)
※もう言葉を荒げる年齢でもない、とは思うも
のの・・・。
汚すのも洗うのも雨土筆かな
(よごすのもあらうのもあめつくしかな)
3/24fri
たんぽぽの絮飛ばすとき命燃え
(たんぽぽのじょとばすときいのちもえ)
窓開けて歯科に客待つサクラかな
(まどあけてしかにきゃくまつさくらかな)
声も歌もサクラに吸われデイの庭
(こえもうたもさくらにすわれでいのにわ)
3/23thu
夕まぐれ野蒜の花が主演なり
(ゆうまぐれのびるのはながしゅえんなり)
※3月は映画の賞の月。我が家の主演賞は断然
花ニラ。地味で小さな花が夕方薄暗くなると
庭中に冴えてくる。
3/21tue
木瓜の垣見知る主人の赭ら顔
(ぼけのかきみしるしゅじんのあからがお)
※何年か越しの賜だろう、木瓜が棚いっぱいに
咲き誇っている。比較的地味な花だから、そ
の主人ともどもドヤ顔はしない。
3/19sun
春場所や贔屓力士の眉伸びて
(はるばしょやひいきりきしのまゆのびて)
※WBCに選抜高校野球も始まり球春真っ盛り。
相撲もと行きたいけれど休場相次ぎ、こちら
は戦国下剋上・・・。
3/17fri
藪椿手折って土の瓶思い
(やぶつばきたおってつちのびんおもい)
※椿らしくない、珍しいと思って、素焼きの花
瓶にさし、スケッチ始めたまでは良かったが、
上手に描けたと思った椿の絵がどうも椿に見
えない。仲間も「これ椿か?」と不評。こち
らは不満。・・・それもそのはず元々が椿ら
しくないのだから。
3/16thu
もぐら塚生命力の霞みおり
(もぐらづかせいめいりょくのかすみおり)
※国立科学博物館のもぐら研究の先生が話して
いた。仕事の半分以上が動物の骨の標本作り
であると。しかも標本作成には「3無」の特
徴がある由。「無計画」「無目的」「無制限」
にやるのだそうな。標本を多種、大量に持つ
ことが将来の研究のなによりの基盤だ、その
ためであると。なるほどとびっくり。
今日も動物園から送られてきた動物の死骸、
奄美で交通事故死したアマミノクロウサギの
死骸に向き合う。
3/15wed
春時雨香り充溢今朝のパン
(はるしぐれかおりじゅういつけさのぱん)
※薄暗い朝も許せる。
3/14tue
駅前の円墳にあり白木蓮
(えきまえのえんぷんにありしろもくれん
※すれ違う白マスクの数はそんなに減っていな
い。近くの駅では白が急増とか。
3/13mon
新設の波止は揺らいで眼張釣り
(しんせつのはとはゆらいでめばるつり)
※次第に風が強くなる。午後は雨も。新しい波
止は強風で揺れるのではないか、余計なお世
話。
3/12sun
春霞五重塔の圓遊の
(はるがすみごじゅうのとうのえんゆうの)
※圓遊の新作落語「五重塔から のっそり」を
聴いた。良かった。露伴「五重塔」のスジに
沿って、その空気を面白く上手に伝える。
サクラ前でもいいから谷中を歩きたいものだ。
3/11sat
皺の手や三月十日の句が多く
(しわのてやさんがつとおかのくがおおく)
※三月十日は東京大空襲で季語
今日三月十一日は東日本大震災、これも季語
うららかや都電の車庫に音ありて
(うららかやとでんのしゃこにおとありて)
3/10fri
春の夕ジムの灯りのみこうこう
(はるのゆうじむのあかりのみこうこう)
呼吸器の音と点滅春の闇
(こきゅうきのおととてんめつはるのやみ)
※アカデミー賞の発表が間近いからというので
もないが、過去の受賞作「ミリオンダラー・
ベイビー」を見た。以前にも見たが、今回も
感動した。クリント・イーストウッドにモー
ガン・フリーマンが揃い、ヒラリー・スワン
クときたら、2005賞総なめもわかる。
3/9thu
青海苔やこんなのという男あり
(あおのりやこんなのというおとこあり)
※今シーズンは地元木更津周辺の海苔も有明海
の海苔もそれぞれ違った原因で不漁となって
いるらしい。江戸前のつやつやした黒い海苔
がふんだんに・・・もうそんなことはないの
か? 青海苔は独特の風味があってファンも
多いのだが、不漁続きでは吐き捨てるように
しか言わない。
3/7tue
古竹を切りて三月垣直す
(ふるたけをきりてさんがつかきなおす)
※四月下旬並みの暖かさという今日まで延ばし
ていた作業をする。庭はクロッカス、ムスカ
リ、花ニラの順で賑やかになりそう。
3/6mon
今読まずはもう読まざるの春の雨
(いまよまずはもうよまざるのはるのあめ)
※楽しみにして用意した本なのに出足で躓くこ
とがある。年齢のせいもある。またそのうち
に出直しをと言っても、今回が事実上の最後
だろうと自分を脅迫し追い詰めてみる。
それでもだめ・・・。
3/5sun
春眠やふとんの重さ知りてなお
(しゅんみんやふとんのおもさしりてなお)
※うとうと目を覚ましたが、目はまだ開かない。
冬中使ってきた布団がやけに重く感じる。む
にゅむにゅ・・・暖かいけど、むにゅむにゅ
・・・。やってはいけない自句実況でした。
3/3fri
雪柳最初の白い二三点
(ゆきやなぎさいしょのしろいにさんてん)
雛の日や女房マージャン公民館
(ひなのひやにょうぼまーじゃんこうみんかん)
※どうやら偕老同穴となる雲行きの桃の節句で
はある。最近は女房元気で留守がいいという
常套句もどきが良く似合う。
3/2thu
今朝一はスカルラッティ春一番
(けさいちはすかるらってぃはるいちばん)
春一番ラインで老けを確認し
(はるいちばんらいんでふけをかくにんし)
※ラインで都心歩きの会再開の日を3人で相談
する。便利なものだ、しかも無料とはね。
3/1wed
蘖や鑿研ぐ日々を思いたり
(ひこばえやのみとぐひびをおもいたり)
※暖かすぎる日中、友人との再会兼街歩きも良
かろうと思う。ラインで見る顔もそうは老け
ていないようだし。
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2/28tue
春浅し友の旧居に杭打機
(はるあさしとものきゅうきょにくいうちき)
※随分前に越した友人宅跡だが周囲の土地を合
わせて工事が始まった。杭を打つ必要がある
建物? この近辺では珍しい。
2/26sun
春の海フェリーふわりと波の上
(はるのうみふぇりーふわりとなみのうえ)
※友人を見送って金谷港東京湾フェリーまで出
かけた。天気は良いのだがやや波が高い。心
配のほどではない。でっぷり肥えたフェリー
は無事浮かんで出港した。
2/24fri
春の闇濃かれ三つ星寄り添うて
(はるのやみこかれみつぼしよりそうて)
※昨夕、日の入り後18時30分頃の西の空で、
「新月」と「木星」「金星」とが一列に黄道
上に並ぶ天体ショーを見た。格別レアなこと
ではないが、タイミングと天候がこうもピタ
リと合うことは少ない。写真も撮れたよ。
2/23thu
春の旅ミシン黄色を纏いおり
(はるのたびみしんきいろをまといおり)
旅先の待ちにし膳よ蕗の薹
(たびさきのまちにしぜんよふきのとう)
※旅は思い浮かべるころから出かけるまでが至
福という。明るい黄色はお気に入り、さあ出
かけよう。
2/22wed
猫魔岳街を白くし春むかし
(ねこまだけまちをしろくしはるむかし)
※昔会津若松の点描。2月の午後。通りの遥か
先にあるのは真っ白な残雪をいただく猫魔岳。
これが浮き上がって大きく見える日がある。
市街の根雪は融けて道を洗い、コンクリート
舗装の道はこれも白く見える。家並みは後退。
2/21tue
春一日怠惰の時とのみ記して
(はるひとひたいだのときとのみきして)
ブランコをこいで人待つ青春か
(ぶらんこをこいでひとまつせいしゅんか)
※ろくなニュースはないが、そこは春だからそ
の気になれば春になる。
2/20mon
太陽光パネルが侵す春田かな
(たいようこうぱねるがおかすはるたかな)
蓬髪が床屋帰りで春の風
(ほうはつがとこやがえりではるのかぜ)
2/19sun
街道はうつらうつらの菜の花忌
(かいどうはうつらうつらのなのはなき)
※菜の花忌の頃に古い「街道を行く」のTV番組
を見た。本よりも随分端折ってあるものの、
上手い編集だ。田村高広のナレーションが懐
かしい。
2/18sat
寝もやらずジャガイモ植うる日はうつろ
(ねもやらずじゃがいもううるひはうつろ)
※ちょっと早めのジャガイモの植え付け。肥料
を多めにして、このタイミングの植付けは生
育が良いという話を仕入れてきた。
サボり気味の今年はこれが野良始めだ。ねむ
たい~・・・。
雪形を見たいと思う野良始め
(ゆきがたをみたいとおもうのらはじめ)
2/17fri
梅咲きて痒み嘆きし人いかに
(うめさきてかゆみなげきしひといかに)
※年寄りの冬季の痒みは空気と肌の乾燥が主因
と言われる。彼へのアドバイスは「入浴を一
日おきに、入浴の日は今まで通りちゃんと石
鹸で洗いちゃんと落とすこと。入浴しない日
は一日中石鹸を使わないこと。使わなくとも
すぐ慣れる」というもの。
2/16thu
春の宵億劫という音を上げる
(はるのよいおっくうというねをあげる)
※さて、もう歳かな? 何か動き始めるときに、
初めのひとふんばりを1テンポ待つことが近
頃多くなった。なんのこともないのだけれど、
その時の姿勢でしばしゆっくりするのだ。
2/14tue
家に肌あり初東風の似合う家
(いえにはだありはつこちのにあういえ)
※歳時記は季語とその季語を使った例句を味わ
って、季節感の妙を感じるものだ。しかし季
語の中には違和感どころか時代錯誤と言わざ
るを得ないものも数多い。窮屈でも文句を言
わずにその古い季語に合った対象を見つけよ
ということなのか。
2/12sun
かたや死にかたやはかくも春の声
(かたやしにかたやはかくもはるのこえ)
※久しぶりに聞く彼の声は以前と全然変わらな
い。前回の彼の電話は同期の友の死を伝える
ものだった。昔から二人を対で見がちな私。
2/11sat
生姜酒とめる者なく喜寿の春
(しょうがざけとめるものなくきじゅのはる)
天井のシミ数え切り喜寿の春
(てんじょうのしみかぞえきりきじゅのはる)
※町内会の人から喜寿のお祝いですよね、と言
われて改めて意識した。満77歳の誕生日か
ら2カ月ほど。感慨とてなにもない。
2/10fri
新海苔は産地苦渋の味少し
(しんのりはさんちくじゅうのあじすこし)
※地元木更津、富津の江戸前海苔はここ数年ク
ロダイの養殖場への侵入と食い荒らしなどに
よって被害を被っている。今季は有明海の海
苔の産地も海水温の上昇が海苔生育の大幅減
産につながっているらしい。
2/9thu
春寒やこころに農具並べおり
(はるざむやこころにのうぐならべおり)
※とっくに農具はラインアップ済み。鎌だって
研いである。
2/8wed
壁の上を春日は円くすべりおり
(かべのえをはるびはまるくすべりおり)
※寝室のカーテンの合わせ目から差し込む朝日
が壁の上に7,8センチの円い明るい形を作る。
日の出の時刻が日々早くなるから、見えだす
時刻は一日ごとに少し早くなり、その位置は
左にずれる。秋分の日以降の秋とはちょうど
逆の形だ。
ついでに言えばそこは床の間で春向きの掛け
軸がかけてある。その上を円い光がすべる。
出来過ぎた話。嘘のような本当の話。
2/6mon
童顔は遺影となりて余寒かな
(どうがんはいえいとなりてよざむかな)
寒紅玉切らさずただに好きなれば
(かんこうぎょくきらさずただにすきなれば)
煮大根においはわが身黙しおり
(にだいこんにおいはわがみもくしおり)
2/4sat
立春や師の舌かくも滑らかに
(りっしゅんやしのしたかくもなめらかに)
※絵にもおしゃべりにも盛んなのはすごい。御
年は80歳台後半で絵筆の軽妙なこと、言葉
に切れ目がないこと。
2/3fri
めずらしく朝のご飯寒卵
(めずらしくあさのごはんかんたまご)
豆まきや声の大きさ迷いつつ
(まめまきやこえのおおきさまよいつつ)
※外に向いてまず一声、大き過ぎたかな? 一
瞬のうちに脳裏を掠める。えいッ、構うな、
この大きさで、鬼に入られてしまう。
声の大きさ! 実は単なる羞恥心の減退、認
知症の手前の始まりだったりして・・・。
2/2thu
宵星の西に沈めば冬銀河
(よいぼしのにしにしずめばふゆぎんが)
※日脚が伸びたものの光はまだ弱い。宵の明星
が沈み暗い星空に変わるまで長い時間は要ら
ない。寒風は身を震わせるが、天空の変化の
微妙さは今頃が味わい深い。
2/1wed
着ぶくれて道ゆずりたる好々爺
(きぶくれてみちゆずりたるこうこうや)
客引きも色とりどりに着ぶくれて
(きゃくひきもいろとりどりにきぶくれて)
※1月の寒波はまだ続いている。客の出足はさ
らに細り、夜の街は大変だ。
************************************************
1/31tue
養蜂をやってみたいと春隣り
(ようほうをやってみたいとはるどなり)
※65歳を前にした人がいる。第2の人生の新入
生間近。彼は希望に燃えている。ああした頃
が俺にもあったのだ。
スカーフに冬薔薇置いて画材とす
(すかーふにふゆばらおいてがざいとす)
1/30mon
昼下がり湯たんぽ抱いて名画かな
(ひるさがりゆたんぽだいてめいがかな)
※テレビで一生懸命映画を見ている。殆どが自
宅で録画しておいたものだ。エアコンをとめ
て湯たんぽを抱きかかえる、眠たくならない。
1/29sun
大寒やなんのなんのと言いにけり
(だいかんやなんのなんのといいにけり)
ケッフェルの番号が出ず冬木立
(けっふぇるのばんごうがでずふゆこだち)
※1/25はモーツァルトの誕生日のようである。
ゆうに600以上ある作品を網羅して正確に番
号をつけるのは至難の業といわれるが、なか
でも一番信頼されるのはケッフェルのつけた
作品番号だ。YoutubeなどではKの次に番号を
つけて検索しただけで、世界中でアップされ
た演奏が並ぶ。
そんな超便利な番号が今次々と記憶から抜け
落ちているようだ。がっくりする。少しずつ
か?わからない。今朝も試しにk516で検索
する。馴染みの演奏が並ぶ。胸を撫で下ろす。
1/27fri
蕪三つ葉っぱも自慢熨斗はなし
(かぶみっつはっぱもじまんのしはなし)
金ないか着物はないか冬の声
(きんないかきものはないかふゆのこえ)
1/26thu
大寒波北国生まれの身なれば
(だいかんぱきたぐにうまれのみなれば)
冬鷗群れてぞ川を遡る
(ふゆかもめむれてぞかわをさかのぼる)
※当地はマイナス5度まで気温が下がった。と
は言え、特に変わったことはなにもなかった。
外で飼っている犬の水が氷ってしまったこと
ぐらい。頬がピリピリを越えて、ビリビリと
痛痒いような感覚には遠かった。
犬はもちろん、周囲も穏やかなようだ。
1/25wed
初天神いかず子供らうるさふて
(はつてんじんいかずこどもらうるそうて)
※子供の騒音「あれ買ってくれこれ買ってくれ」
小三治の曾孫が騒ぐ初天神
(こさんじのひまごがさわぐはつてんじん)
※初天神で露店が並ぶ通りに人があふれている。
こんな光景は暫く落語の中だけだろう。故小
三治の「初天神」は絶品だった。
滑舌の稽古は落語初天神
(かつぜつのけいこはらくごはつてんじん)
1/24tue
大寒や譲る畑の草むしる
(だいかんやゆずるはたけのくさむしる)
※家庭菜園を引退するシニアが寒中に草むしり
をしている。じゃがいもの植え付けに始まる
春野菜の作業開始に次の人が間に合うように
との心配りだ。さすがと思う。
しぐるるや明日明後日は寒気来る
(しぐるるやあすあさってはかんきくる)
1/21sat
電気代一段と大寒しばし
(でんきだいいちだんとだいかんしばし)
寒釣りや台半畳の座禅かな
(かんずりやだいはんじょうのざぜんかな)
※電気代が高騰した。次の3割近くの値上げ申
請は円滑に行っても実施は夏前後だろうから、
今のうちに音を上げていてはどうしようもな
いのだが・・・。
寒中に釣りに興ずる人々の境地にはいつまで
たっても近づけない。
1/20fri
四十雀庭に長く居蕪村の忌
(しじゅうからにわにながくいぶそんのき)
※冬型の気圧配置で関東地方は晴れ上がる。雨
模様のすぐ後だけに、庭や畑に出ていざ労働
というわけにはいかない。どこかに正月暮ら
しの残滓が残っているようだ。
枯れ菊の山となりて焼く人なし
(かれぎくのやまとなりてやくひとなし)
1/19thu
坐して描く水墨の線寒の雨
(ざしてかくすいぼくのせんかんのあめ)
1/18wed
マスク越し目が笑いおり初稽古
(ますくごしめがわらいおりはつげいこ)
※水彩画の絵画教室、初会合。恒例でバラを描
いた。
1/16mon
雨音に冬枯れ思い眠りけり
(あまおとにふゆがれおもいねむりけり)
※睡眠にかけての不器用さでは人後に落ちない。
いったん思い詰めて固まると、ちょっとのこ
とではほぐれない。眠れなくとも何の痛痒も
ない身の上だが、・・・犬がいた。朝少しで
も遅くなると叱られる。
1/15sun
初風呂や西日の残るうちに入る
(はつぶろやにしびののこるうちにいる)
※新年早々浴室が薄暗い。外の明かりが残るう
ちに入れば、これはなんと風雅なことか。
いまだに電球を取り換えていない。
1/14sat
初茜山の端木々のこまごまと
(はつあかねやまのはきぎのこまごまと)
侘びの戸に年賀の客の爪の色
(わびのとにねんがのきゃくのつめのいろ)
笑い初め光と電波越しなれど
(わらいぞめひかりとでんぱごしなれど)
※新年も二週間、早いものだ。今日は個人的な
お祝い事があったが、生憎の雨模様。夫婦し
てトンカツを食べてきた。ついでに正月絡み
の句の整理をした。ほどほどのものは今日一
斉に掲句して決まりをつけよう。
1/13fri
母親の角巻借りてポストまで
(ははおやのかくまきかりてぽすとまで)
※北海道や雪国の部屋の中、ことにリビングな
どは温かい。それでちょっとの外出の時など、
簡単な防寒着に、角巻にくるまって出かける。
しかしとうに廃れたことだろう。
1/11wed
若のつく郷土力士や寒の入り
(わかのつくきょうどりきしやかんのいり)
※この一年着実に実力をつけている若元春、若
隆景の兄弟力士は福島県出身。先行している
のは弟若隆景で関脇で大関を狙っている。兄
若元春もこの初場所で初の三役入り。ともに、
地力としぶとさが信条の玄人好みの力士だ。
1/10tue
狐火は都会の闇にこそという
(きつねびはとかいのやみにこそという)
※静謐というのか薄気味悪いと表現すればいい
のか。コロナ禍のもたらした一種人工的な静
けさは都会において夥しいという。
そうかも知れない。人工的な喧騒のすぐ隣に
現れたのだから。
1/9mon
襟巻し杖つき手にはお裾分け
(えりまきしつえつきてにはおすそわけ)
※日中は温かい一日。団地の普段の夕景が戻っ
てきたと言いたいところだが、通行のクルマ
も人も少なくナリを潜めているようだ。これ
がコロナ以降の普段。まるで正月のようと言
った方が近いかな?
1/8sun
新年に独り住まいの愁い聞く
(しんねんにひとりずまいのうれいきく)
※健康であれば独居の寂しさも気楽さに紛れる
のでは? と思うのは外野の勝手な観測らし
い。あれやこれや想定外の問題、煩わしさが
襲って来るという。
淡雪や停戦告げりうすき唇
(あわゆきやていせんつげりうすきくち)
1/6fri
弾初めはYouTubeなり弦低く
(ひきぞめはゆーちゅーぶなりげんひくく)
※せめて正月にはちゃんとレコードをと思って
いたのだが、この気楽さ、即聴性『どんな曲
でも各種取り揃えて即座に聴ける』には抗し
がたい。今年もせいぜいお世話になることだ
ろう。
1/5thu
世を占う知の巨人とな初テレビ
(よをうらなうちのきょじんとなはつてれび)
三が日休んで鵙の来て黙す
(さんがにちやすんでもずのきてもくす)
1/4wed
去年の絵の感想ありて師の賀状
(こぞのえのかんそうありてしのがじょう)
正月の軸は竹林いつぞやの
(しょうがつのじくはちくりんいつぞやの)
初夢は何本かごちゃごちゃと無理
(はつゆめはなんぼんかごちゃごちゃとむり)
1/3tue
正月や奥に鎮座の茶碗出し
(しょうがつやおくにちんざのちゃわんだし)
耳ふさぎこの世この日は寝正月
(みみふさぎこのよこのひはねしょうがつ)
句を書きて手を懐に寝正月
(くをかきててをふところにねしょうがつ)
※寝正月とかふてくされようと現実にはちょっ
といいことに満ちている。正月の空と散歩、
清新の気分は横溢しているし、ラグビーは早
大が決勝進出、箱根も多くの人の想定より上
位でゴールした。
1/2mon
初詣善男善女になりたふて
(はつもうでぜんなんぜんにょになりとうて)
線香を膝に賜ひて初観音
(せんこうをひざにたまいてはつかんのん)
喜寿とても年玉賜ふ気のありて
(きじゅとてもとしだまたまうきのありて)
1/1sun
新年の祝詞おぐらき犬友と
(しんねんのしゅうしおぐらきいぬともと)
初日の出賀状仕舞いを悔やみおり
(はつひのでがじょうじまいをくやみおり)
※日本海沿いを除いて広く晴れ上がったようだ。
当地も快晴、朝早く犬の散歩を済ませ、お屠
蘇の前に近くの観音様に出かけ年始のお参り
をした。おみくじは大吉、甘酒もいただいた。
交通安全のお札もゲット。こんなにスムーズ
な出発は珍しい。
ダクタク句集2023年(令和5年)1月 [ダクタク2023年1月]
1/31tue
養蜂をやってみたいと春隣り
(ようほうをやってみたいとはるどなり)
※65歳を前にした人がいる。第2の人生の新入
生間近。彼は希望に燃えている。ああした頃
が俺にもあったのだ。
スカーフに冬薔薇置いて画材とす
(すかーふにふゆばらおいてがざいとす)
1/30mon
昼下がり湯たんぽ抱いて名画かな
(ひるさがりゆたんぽだいてめいがかな)
※テレビで一生懸命映画を見ている。殆どが自
宅で録画しておいたものだ。エアコンをとめ
て湯たんぽを抱きかかえる、眠たくならない。
1/29sun
大寒やなんのなんのと言いにけり
(だいかんやなんのなんのといいにけり)
ケッフェルの番号が出ず冬木立
(けっふぇるのばんごうがでずふゆこだち)
※1/25はモーツァルトの誕生日のようである。
ゆうに600以上ある作品を網羅して正確に番
号をつけるのは至難の業といわれるが、なか
でも一番信頼されるのはケッフェルのつけた
作品番号だ。YoutubeなどではKの次に番号を
つけて検索しただけで、世界中でアップされ
た演奏が並ぶ。
そんな超便利な番号が今次々と記憶から抜け
落ちているようだ。がっくりする。少しずつ
か?わからない。今朝も試しにk516で検索
する。馴染みの演奏が並ぶ。胸を撫で下ろす。
1/27fri
蕪三つ葉っぱも自慢熨斗はなし
(かぶみっつはっぱもじまんのしはなし)
金ないか着物はないか冬の声
(きんないかきものはないかふゆのこえ)
1/26thu
大寒波北国生まれの身なれば
(だいかんぱきたぐにうまれのみなれば)
冬鷗群れてぞ川を遡る
(ふゆかもめむれてぞかわをさかのぼる)
※当地はマイナス5度まで気温が下がった。と
は言え、特に変わったことはなにもなかった。
外で飼っている犬の水が氷ってしまったこと
ぐらい。頬がピリピリを越えて、ビリビリと
痛痒いような感覚には遠かった。
犬はもちろん、周囲も穏やかなようだ。
1/25wed
初天神いかず子供らうるさふて
(はつてんじんいかずこどもらうるそうて)
※子供の騒音「あれ買ってくれこれ買ってくれ」
小三治の曾孫が騒ぐ初天神
(こさんじのひまごがさわぐはつてんじん)
※初天神で露店が並ぶ通りに人があふれている。
こんな光景は暫く落語の中だけだろう。故小
三治の「初天神」は絶品だった。
滑舌の稽古は落語初天神
(かつぜつのけいこはらくごはつてんじん)
1/24tue
大寒や譲る畑の草むしる
(だいかんやゆずるはたけのくさむしる)
※家庭菜園を引退するシニアが寒中に草むしり
をしている。じゃがいもの植え付けに始まる
春野菜の作業開始に次の人が間に合うように
との心配りだ。さすがと思う。
しぐるるや明日明後日は寒気来る
(しぐるるやあすあさってはかんきくる)
1/21sat
電気代一段と大寒しばし
(でんきだいいちだんとだいかんしばし)
寒釣りや台半畳の座禅かな
(かんずりやだいはんじょうのざぜんかな)
※電気代が高騰した。次の3割近くの値上げ申
請は円滑に行っても実施は夏前後だろうから、
今のうちに音を上げていてはどうしようもな
いのだが・・・。
寒中に釣りに興ずる人々の境地にはいつまで
たっても近づけない。
1/20fri
四十雀庭に長く居蕪村の忌
(しじゅうからにわにながくいぶそんのき)
※冬型の気圧配置で関東地方は晴れ上がる。雨
模様のすぐ後だけに、庭や畑に出ていざ労働
というわけにはいかない。どこかに正月暮ら
しの残滓が残っているようだ。
枯れ菊の山となりて焼く人なし
(かれぎくのやまとなりてやくひとなし)
1/19thu
坐して描く水墨の線寒の雨
(ざしてかくすいぼくのせんかんのあめ)
1/18wed
マスク越し目が笑いおり初稽古
(ますくごしめがわらいおりはつげいこ)
※水彩画の絵画教室、初会合。恒例でバラを描
いた。
1/16mon
雨音に冬枯れ思い眠りけり
(あまおとにふゆがれおもいねむりけり)
※睡眠にかけての不器用さでは人後に落ちない。
いったん思い詰めて固まると、ちょっとのこ
とではほぐれない。眠れなくとも何の痛痒も
ない身の上だが、・・・犬がいた。朝少しで
も遅くなると叱られる。
1/15sun
初風呂や西日の残るうちに入る
(はつぶろやにしびののこるうちにいる)
※新年早々浴室が薄暗い。外の明かりが残るう
ちに入れば、これはなんと風雅なことか。
いまだに電球を取り換えていない。
1/14sat
初茜山の端木々のこまごまと
(はつあかねやまのはきぎのこまごまと)
侘びの戸に年賀の客の爪の色
(わびのとにねんがのきゃくのつめのいろ)
笑い初め光と電波越しなれど
(わらいぞめひかりとでんぱごしなれど)
※新年も二週間、早いものだ。今日は個人的な
お祝い事があったが、生憎の雨模様。夫婦し
てトンカツを食べてきた。ついでに正月絡み
の句の整理をした。ほどほどのものは今日一
斉に掲句して決まりをつけよう。
1/13fri
母親の角巻借りてポストまで
(ははおやのかくまきかりてぽすとまで)
※北海道や雪国の部屋の中、ことにリビングな
どは温かい。それでちょっとの外出の時など、
簡単な防寒着に、角巻にくるまって出かける。
しかしとうに廃れたことだろう。
1/11wed
若のつく郷土力士や寒の入り
(わかのつくきょうどりきしやかんのいり)
※この一年着実に実力をつけている若元春、若
隆景の兄弟力士は福島県出身。先行している
のは弟若隆景で関脇で大関を狙っている。兄
若元春もこの初場所で初の三役入り。ともに、
地力としぶとさが信条の玄人好みの力士だ。
1/10tue
狐火は都会の闇にこそという
(きつねびはとかいのやみにこそという)
※静謐というのか薄気味悪いと表現すればいい
のか。コロナ禍のもたらした一種人工的な静
けさは都会において夥しいという。
そうかも知れない。人工的な喧騒のすぐ隣に
現れたのだから。
1/9mon
襟巻し杖つき手にはお裾分け
(えりまきしつえつきてにはおすそわけ)
※日中は温かい一日。団地の普段の夕景が戻っ
てきたと言いたいところだが、通行のクルマ
も人も少なくナリを潜めているようだ。これ
がコロナ以降の普段。まるで正月のようと言
った方が近いかな?
1/8sun
新年に独り住まいの愁い聞く
(しんねんにひとりずまいのうれいきく)
※健康であれば独居の寂しさも気楽さに紛れる
のでは? と思うのは外野の勝手な観測らし
い。あれやこれや想定外の問題、煩わしさが
襲って来るという。
淡雪や停戦告げりうすき唇
(あわゆきやていせんつげりうすきくち)
1/6fri
弾初めはYouTubeなり弦低く
(ひきぞめはゆーちゅーぶなりげんひくく)
※せめて正月にはちゃんとレコードをと思って
いたのだが、この気楽さ、即聴性『どんな曲
でも各種取り揃えて即座に聴ける』には抗し
がたい。今年もせいぜいお世話になることだ
ろう。
1/5thu
世を占う知の巨人とな初テレビ
(よをうらなうちのきょじんとなはつてれび)
三が日休んで鵙の来て黙す
(さんがにちやすんでもずのきてもくす)
1/4wed
去年の絵の感想ありて師の賀状
(こぞのえのかんそうありてしのがじょう)
正月の軸は竹林いつぞやの
(しょうがつのじくはちくりんいつぞやの)
初夢は何本かごちゃごちゃと無理
(はつゆめはなんぼんかごちゃごちゃとむり)
1/3tue
正月や奥に鎮座の茶碗出し
(しょうがつやおくにちんざのちゃわんだし)
耳ふさぎこの世この日は寝正月
(みみふさぎこのよこのひはねしょうがつ)
句を書きて手を懐に寝正月
(くをかきててをふところにねしょうがつ)
※寝正月とかふてくされようと現実にはちょっ
といいことに満ちている。正月の空と散歩、
清新の気分は横溢しているし、ラグビーは早
大が決勝進出、箱根も多くの人の想定より上
位でゴールした。
1/2mon
初詣善男善女になりたふて
(はつもうでぜんなんぜんにょになりとうて)
線香を膝に賜ひて初観音
(せんこうをひざにたまいてはつかんのん)
喜寿とても年玉賜ふ気のありて
(きじゅとてもとしだまたまうきのありて)
1/1sun
新年の祝詞おぐらき犬友と
(しんねんのしゅうしおぐらきいぬともと)
初日の出賀状仕舞いを悔やみおり
(はつひのでがじょうじまいをくやみおり)
※日本海沿いを除いて広く晴れ上がったようだ。
当地も快晴、朝早く犬の散歩を済ませ、お屠
蘇の前に近くの観音様に出かけ年始のお参り
をした。おみくじは大吉、甘酒もいただいた。
交通安全のお札もゲット。こんなにスムーズ
な出発は珍しい。
養蜂をやってみたいと春隣り
(ようほうをやってみたいとはるどなり)
※65歳を前にした人がいる。第2の人生の新入
生間近。彼は希望に燃えている。ああした頃
が俺にもあったのだ。
スカーフに冬薔薇置いて画材とす
(すかーふにふゆばらおいてがざいとす)
1/30mon
昼下がり湯たんぽ抱いて名画かな
(ひるさがりゆたんぽだいてめいがかな)
※テレビで一生懸命映画を見ている。殆どが自
宅で録画しておいたものだ。エアコンをとめ
て湯たんぽを抱きかかえる、眠たくならない。
1/29sun
大寒やなんのなんのと言いにけり
(だいかんやなんのなんのといいにけり)
ケッフェルの番号が出ず冬木立
(けっふぇるのばんごうがでずふゆこだち)
※1/25はモーツァルトの誕生日のようである。
ゆうに600以上ある作品を網羅して正確に番
号をつけるのは至難の業といわれるが、なか
でも一番信頼されるのはケッフェルのつけた
作品番号だ。YoutubeなどではKの次に番号を
つけて検索しただけで、世界中でアップされ
た演奏が並ぶ。
そんな超便利な番号が今次々と記憶から抜け
落ちているようだ。がっくりする。少しずつ
か?わからない。今朝も試しにk516で検索
する。馴染みの演奏が並ぶ。胸を撫で下ろす。
1/27fri
蕪三つ葉っぱも自慢熨斗はなし
(かぶみっつはっぱもじまんのしはなし)
金ないか着物はないか冬の声
(きんないかきものはないかふゆのこえ)
1/26thu
大寒波北国生まれの身なれば
(だいかんぱきたぐにうまれのみなれば)
冬鷗群れてぞ川を遡る
(ふゆかもめむれてぞかわをさかのぼる)
※当地はマイナス5度まで気温が下がった。と
は言え、特に変わったことはなにもなかった。
外で飼っている犬の水が氷ってしまったこと
ぐらい。頬がピリピリを越えて、ビリビリと
痛痒いような感覚には遠かった。
犬はもちろん、周囲も穏やかなようだ。
1/25wed
初天神いかず子供らうるさふて
(はつてんじんいかずこどもらうるそうて)
※子供の騒音「あれ買ってくれこれ買ってくれ」
小三治の曾孫が騒ぐ初天神
(こさんじのひまごがさわぐはつてんじん)
※初天神で露店が並ぶ通りに人があふれている。
こんな光景は暫く落語の中だけだろう。故小
三治の「初天神」は絶品だった。
滑舌の稽古は落語初天神
(かつぜつのけいこはらくごはつてんじん)
1/24tue
大寒や譲る畑の草むしる
(だいかんやゆずるはたけのくさむしる)
※家庭菜園を引退するシニアが寒中に草むしり
をしている。じゃがいもの植え付けに始まる
春野菜の作業開始に次の人が間に合うように
との心配りだ。さすがと思う。
しぐるるや明日明後日は寒気来る
(しぐるるやあすあさってはかんきくる)
1/21sat
電気代一段と大寒しばし
(でんきだいいちだんとだいかんしばし)
寒釣りや台半畳の座禅かな
(かんずりやだいはんじょうのざぜんかな)
※電気代が高騰した。次の3割近くの値上げ申
請は円滑に行っても実施は夏前後だろうから、
今のうちに音を上げていてはどうしようもな
いのだが・・・。
寒中に釣りに興ずる人々の境地にはいつまで
たっても近づけない。
1/20fri
四十雀庭に長く居蕪村の忌
(しじゅうからにわにながくいぶそんのき)
※冬型の気圧配置で関東地方は晴れ上がる。雨
模様のすぐ後だけに、庭や畑に出ていざ労働
というわけにはいかない。どこかに正月暮ら
しの残滓が残っているようだ。
枯れ菊の山となりて焼く人なし
(かれぎくのやまとなりてやくひとなし)
1/19thu
坐して描く水墨の線寒の雨
(ざしてかくすいぼくのせんかんのあめ)
1/18wed
マスク越し目が笑いおり初稽古
(ますくごしめがわらいおりはつげいこ)
※水彩画の絵画教室、初会合。恒例でバラを描
いた。
1/16mon
雨音に冬枯れ思い眠りけり
(あまおとにふゆがれおもいねむりけり)
※睡眠にかけての不器用さでは人後に落ちない。
いったん思い詰めて固まると、ちょっとのこ
とではほぐれない。眠れなくとも何の痛痒も
ない身の上だが、・・・犬がいた。朝少しで
も遅くなると叱られる。
1/15sun
初風呂や西日の残るうちに入る
(はつぶろやにしびののこるうちにいる)
※新年早々浴室が薄暗い。外の明かりが残るう
ちに入れば、これはなんと風雅なことか。
いまだに電球を取り換えていない。
1/14sat
初茜山の端木々のこまごまと
(はつあかねやまのはきぎのこまごまと)
侘びの戸に年賀の客の爪の色
(わびのとにねんがのきゃくのつめのいろ)
笑い初め光と電波越しなれど
(わらいぞめひかりとでんぱごしなれど)
※新年も二週間、早いものだ。今日は個人的な
お祝い事があったが、生憎の雨模様。夫婦し
てトンカツを食べてきた。ついでに正月絡み
の句の整理をした。ほどほどのものは今日一
斉に掲句して決まりをつけよう。
1/13fri
母親の角巻借りてポストまで
(ははおやのかくまきかりてぽすとまで)
※北海道や雪国の部屋の中、ことにリビングな
どは温かい。それでちょっとの外出の時など、
簡単な防寒着に、角巻にくるまって出かける。
しかしとうに廃れたことだろう。
1/11wed
若のつく郷土力士や寒の入り
(わかのつくきょうどりきしやかんのいり)
※この一年着実に実力をつけている若元春、若
隆景の兄弟力士は福島県出身。先行している
のは弟若隆景で関脇で大関を狙っている。兄
若元春もこの初場所で初の三役入り。ともに、
地力としぶとさが信条の玄人好みの力士だ。
1/10tue
狐火は都会の闇にこそという
(きつねびはとかいのやみにこそという)
※静謐というのか薄気味悪いと表現すればいい
のか。コロナ禍のもたらした一種人工的な静
けさは都会において夥しいという。
そうかも知れない。人工的な喧騒のすぐ隣に
現れたのだから。
1/9mon
襟巻し杖つき手にはお裾分け
(えりまきしつえつきてにはおすそわけ)
※日中は温かい一日。団地の普段の夕景が戻っ
てきたと言いたいところだが、通行のクルマ
も人も少なくナリを潜めているようだ。これ
がコロナ以降の普段。まるで正月のようと言
った方が近いかな?
1/8sun
新年に独り住まいの愁い聞く
(しんねんにひとりずまいのうれいきく)
※健康であれば独居の寂しさも気楽さに紛れる
のでは? と思うのは外野の勝手な観測らし
い。あれやこれや想定外の問題、煩わしさが
襲って来るという。
淡雪や停戦告げりうすき唇
(あわゆきやていせんつげりうすきくち)
1/6fri
弾初めはYouTubeなり弦低く
(ひきぞめはゆーちゅーぶなりげんひくく)
※せめて正月にはちゃんとレコードをと思って
いたのだが、この気楽さ、即聴性『どんな曲
でも各種取り揃えて即座に聴ける』には抗し
がたい。今年もせいぜいお世話になることだ
ろう。
1/5thu
世を占う知の巨人とな初テレビ
(よをうらなうちのきょじんとなはつてれび)
三が日休んで鵙の来て黙す
(さんがにちやすんでもずのきてもくす)
1/4wed
去年の絵の感想ありて師の賀状
(こぞのえのかんそうありてしのがじょう)
正月の軸は竹林いつぞやの
(しょうがつのじくはちくりんいつぞやの)
初夢は何本かごちゃごちゃと無理
(はつゆめはなんぼんかごちゃごちゃとむり)
1/3tue
正月や奥に鎮座の茶碗出し
(しょうがつやおくにちんざのちゃわんだし)
耳ふさぎこの世この日は寝正月
(みみふさぎこのよこのひはねしょうがつ)
句を書きて手を懐に寝正月
(くをかきててをふところにねしょうがつ)
※寝正月とかふてくされようと現実にはちょっ
といいことに満ちている。正月の空と散歩、
清新の気分は横溢しているし、ラグビーは早
大が決勝進出、箱根も多くの人の想定より上
位でゴールした。
1/2mon
初詣善男善女になりたふて
(はつもうでぜんなんぜんにょになりとうて)
線香を膝に賜ひて初観音
(せんこうをひざにたまいてはつかんのん)
喜寿とても年玉賜ふ気のありて
(きじゅとてもとしだまたまうきのありて)
1/1sun
新年の祝詞おぐらき犬友と
(しんねんのしゅうしおぐらきいぬともと)
初日の出賀状仕舞いを悔やみおり
(はつひのでがじょうじまいをくやみおり)
※日本海沿いを除いて広く晴れ上がったようだ。
当地も快晴、朝早く犬の散歩を済ませ、お屠
蘇の前に近くの観音様に出かけ年始のお参り
をした。おみくじは大吉、甘酒もいただいた。
交通安全のお札もゲット。こんなにスムーズ
な出発は珍しい。
ダクタク句集2022年(令和4年)12月 [ダクタク2022年12月]
12/31sat
行く年も走りおおせし鉄路あり
(ゆくとしもはしおおせしてつろあり)
さわし柿切れ干し柿を食らう暮れ
(さわしがききれほしがきをくらうくれ)
暮れなれど二人ポカンと映画見る
(くれなれどふたりぽかんとえいがみる)
歳晩に火鉢を出して非日常
(さいばんにひばちをだしてひにちじょう)
愚痴を言う大晦日にも三つだけ
(ぐちをいうおおみそかせにもみっつだけ)
※年内の仕事は最低限にして昨日までに終わっ
た。今日は心身ともに予備日? これが大正
解。それで句の方をちょっと棚卸し。暮れの
句を掃除し残った句を羅列する。
映画は「恋におちたシェイクスピア」、なぜ
かちゃんと通しでは見なかったヤツ。
12/30fri
煤払い終え扇橋の千代女かな
(すすはらいおえせんきょうのちよじょかな)
※先代入船亭扇橋の得意演目ではなかったよう
だが、古いテープで「加賀の千代女」を聴き、
いっぺんで好きになった。今その動画はアッ
プされていないようだ。
千代女の有名な句に「あさがおやつるべとら
れてもらひみず」がある。扇橋は落語界一の
俳句好きだった。
黒豆の出来は如何と長電話
(くろまめのできはいかんとながでんわ)
12/29thu
耕筰忌 からたちの花の 今やっと
(こうさくき からたちのはなの いまやっと)
※明治以降の日本の歌には、メロディの繰り返
しで1番2番ではなくて全曲流れるように一
つのメロディによるものが多い。
城ヶ島の雨(梁田貞)初恋(越谷達之助)小
諸なる古城のほとり(弘田龍太郎)などなど。
へたくそな私が歌えるようになるまで大いに
時間を要したが、その分味わい深い。当時は
一種の流行だったのかも。
12/28wed
海鼠腸を 食う人を見て 喜寿迎ふ
(このわたを くうひとをみて きじゅむこう)
喜寿の席 トンカツ食いて 見つめらる
(きじゅのせき とんかつくいて みつめらる)
生きるのみ 雨のあがりて 喜寿の冬
(いきるのみ あめのあがりて きじゅのふゆ)
※満77歳の誕生日を迎えた。祝いの宴で一席、
羞恥心を抑えて喜寿の3句。
12/27tue
極月や 火の用心の 江戸言葉
(ごくげつや ひのようじんの えどことば)
※年末は毎日夕方に「火の用心」の見回りをし
ている。最近はうるさいとかやめろとか一部
住民が反発する所があったらしい。なんとア
ホがいることか。
拍子木の音のあとに、「火の用心さっしゃり
ましょう」と粋な呼びかけをする人がいる。
ハハーンあの人だな。
12/26mon
歳末に 展望しえぬ 世事多く
(さいまつに てんぼうしえぬ せじおおく)
※メディアは一斉に年末モード。一年を振り返
り、翌一年をばっさりと展望する、・・・の
だが。展望と言える内容は少ない。
12/25sun
車椅子 押すは孫の子 クリスマス
(くるまいす おすはまごのこ くりすます)
手袋やクルマ待つ間の毛玉とり
(てぶくろやくるままつまのけだまとり)
※クリスマス光景点描。平和だ。
12/24sat
窓越しにダンス練習見る聖夜
(まどごしにだんすれんしゅうみるせいや)
※クリスマスめいたものは身辺にも近所にもな
いと思っていたが、そうでもない。
近くに越して来た中国人の中年独身男性がど
ういうわけか家にイルミネーションを飾って
いる。へえ・・と驚いて眺める。公民館のホ
ールでは練習か本番か・・・。優雅だ。
12/23fri
冬嵐 アクア通いの 医師休診
(ふゆあらし あくあがよいの いしきゅうしん)
名を聞きぬ 顔はメールで 冬の孫
(なをききぬ かおはめーるで ふゆのまご)
※安全を考えるときりがない。まして冬に生ま
れた初孫だ。
12/22thu
新聞を 素早く読みて 冬至かな
(しんぶんを すばやくよみて とうじかな)
さわし柿切れ干し柿を食らう暮れ
(さわしがききれほしがきをくらうくれ)
※12月はバタバタと忙しいとか、あっという
間だとかの声を聞く気はない。こう寒いので
は暖かい屋内でじっとしているにしくはない。
今日は冬至ではないか。
12/20tue
木枯らしや不意なる喉の内視鏡
(こがらしやふいなるのどのないしきょう)
※親しい友が甲状腺ガンで死んでから2年にな
る。こちとらも甲状腺ホルモン某の持病があ
る上に最近とみに喉元のところでミニトラブ
ルが起こる。美声もかすれることが多い。
呼吸器科に行って訴えた。心配を取り除いて
と。そしていきなりの内視鏡だ。結論は、
「きれいです。なんにもありません。あって
も年齢相応の嚥下トラブルでしょう」と。
12/19mon
サッカーは 冬の季語なり メッシ勝つ
(さっかーは ふゆのきごなり めっしかつ)
※アルゼンチン、PK戦の末に優勝。冬の季語で
ある所以はシーズン設定にあるだろうと想像で
きるが、この熱戦にはふさわしくない。手に汗
握る2時間だった。
12/18sun
年賀状仕舞いを告げて月下弦
(ねんがじょうしまいをつげてつきかげん)
※年賀状仕舞いとした。迷った。ここでも下りの
明確な階段を降りることになるのだぞ、と言い
聞かせる。
12/17sat
農道の一角カフェとなりて冬
(のうどうのいっかくかふぇとなりてふゆ)
※行ってみると洒落た料理をこざっぱりと提供
する、地元にはない店だ。この手の店が方々
に現れ、センスを感じながらも、音もなく
消えていく。お客は地方都市の若い女房連、
30km圏内、単価1500円で基本的にはゼロサム
ゲームである。逞しい例外もあるけれど。
12/16fri
木賃といふアパートの煤払い
(もくちんというあぱーとのすすはらい)
※周辺の他の物件に較べ、50年以上前に建て
られたもの。居住者がいっしょに大掃除して
いた。今どき貴重な光景。黒光りしている?
12/13tue
出勤は 冬夕焼け見て 深夜番
(しゅっきんは ふゆゆやけみて しんやばん)
人参のとれてシチュウに大切りに
(にんじんのとれてしちゅうにおおぎりに)
12/11sun
着ぶくれて 週末頼みの 吊り革に
(きぶくれて しゅうまつだのみの つりかわに)
※久々に「週末頼みの通勤」の感覚を思い出し
た。ところがちっとも苦ではない。
12/10sat
湯気の音 剃刀の音 昼下がり
(ゆげのおと かみそりのおと ひるさがり)
※馴染みの床屋の主人がなくなり、そのまま閉
店。ずっと近くの格安店に行った。料金はほ
ぼ半分、時間は1/3、「どうしましょう」以
外無言、悪くない。
12/9fri
十二月 火星いざよふ 月を待つ
(じゅうにがつ かせいいざよう つきをまつ)
※18時前の散歩のときに十六夜の月が山の端
を離れた。行く先には火星が待っている。見
事な月だが、なかなか火星に追いつけない。
さて、このレース、今夜はどうなるか?
12/8thu
滑子汁 ふうふうする間の 香りかな
(なめこじる ふうふうするまの かおりかな)
※寒さはなかなか戻らないなと嘆いている間に、
これが平年並みとなってしまう。とにかく暖
かい部屋、熱いものが欲しい。
12/7wed
神無月 四万人を 呼ぶ娘
(かんなづき よんまんにんを よぶむすめ)
※先月初旬あいみょんがワンマン・ライヴで甲
子園球場を札止めにした!! よく知らない
歌手、二三度聴いたことはある。とても信じ
られないペンライトの波また波。
12/6tue
モーツァルト忌 朝一番で ジュピターを
(もーつぁるとき あさいちばんで じゅぴたーを)
※季語にモーツァルト忌というのがあると知っ
た。やや異様な感じがするが、せっかくだから
交響曲第41番で記念日(の一日遅れ)を刻む
ことにした。
12/5mon
戦ありて 落ち葉の上に 松落葉
(いくさありて おちばのうえに まつおちば)
※公民館、集会所の大掃除。こういうのをしっか
りやるのが、シニアの役目だと少しは認識して
出かける。それにしても外の作業は今日あたり
かなり酷だ。彼の地では、寒さの酷さを知る者
が寒さ攻めにしている。
12/3sat
初炬燵 文庫本にて 漱石を
(はつごたつ ぶんこぼんにて そうせきを)
※昨日今日一段と冷え込む。リビングにコタツと
いうのは今まで避けてきたが、もうこの歳、そ
んなことは言っていられない。
12/2fri
大どれの大根 店を攻略す
(おおどれのだいこん みせをこうりゃくす)
新聞は 瑣事のみ多く 日向ぼこ
(しんぶんは さじのみおおく ひなたぼこ)
※ネットを初め情報過多の今日では新聞の位置も
難しい。ヘッドラインはとっくに知られている
し、深掘りするにしても対象の選択は読者によ
ってことなる。全方位型になると、瑣事の羅列
となりかねない。購読料を払っているので目を
通さざるを得ない。半ばいやいやだ。家内はチ
ラシ以外殆ど読まない、はっきりしている。こ
れがうらやましい。
12/1thu
干し柿の 遅れて吊るす 十余り
(ほしがきの おくれてつるす とおあまり)
※日々の瑣事のみで静かにしていると12月の到
来に感慨はない。しかしこの日長いこと途切れ
ていた友人とのメール交換が出来て、これから
年末の幸いなる予感がする。
行く年も走りおおせし鉄路あり
(ゆくとしもはしおおせしてつろあり)
さわし柿切れ干し柿を食らう暮れ
(さわしがききれほしがきをくらうくれ)
暮れなれど二人ポカンと映画見る
(くれなれどふたりぽかんとえいがみる)
歳晩に火鉢を出して非日常
(さいばんにひばちをだしてひにちじょう)
愚痴を言う大晦日にも三つだけ
(ぐちをいうおおみそかせにもみっつだけ)
※年内の仕事は最低限にして昨日までに終わっ
た。今日は心身ともに予備日? これが大正
解。それで句の方をちょっと棚卸し。暮れの
句を掃除し残った句を羅列する。
映画は「恋におちたシェイクスピア」、なぜ
かちゃんと通しでは見なかったヤツ。
12/30fri
煤払い終え扇橋の千代女かな
(すすはらいおえせんきょうのちよじょかな)
※先代入船亭扇橋の得意演目ではなかったよう
だが、古いテープで「加賀の千代女」を聴き、
いっぺんで好きになった。今その動画はアッ
プされていないようだ。
千代女の有名な句に「あさがおやつるべとら
れてもらひみず」がある。扇橋は落語界一の
俳句好きだった。
黒豆の出来は如何と長電話
(くろまめのできはいかんとながでんわ)
12/29thu
耕筰忌 からたちの花の 今やっと
(こうさくき からたちのはなの いまやっと)
※明治以降の日本の歌には、メロディの繰り返
しで1番2番ではなくて全曲流れるように一
つのメロディによるものが多い。
城ヶ島の雨(梁田貞)初恋(越谷達之助)小
諸なる古城のほとり(弘田龍太郎)などなど。
へたくそな私が歌えるようになるまで大いに
時間を要したが、その分味わい深い。当時は
一種の流行だったのかも。
12/28wed
海鼠腸を 食う人を見て 喜寿迎ふ
(このわたを くうひとをみて きじゅむこう)
喜寿の席 トンカツ食いて 見つめらる
(きじゅのせき とんかつくいて みつめらる)
生きるのみ 雨のあがりて 喜寿の冬
(いきるのみ あめのあがりて きじゅのふゆ)
※満77歳の誕生日を迎えた。祝いの宴で一席、
羞恥心を抑えて喜寿の3句。
12/27tue
極月や 火の用心の 江戸言葉
(ごくげつや ひのようじんの えどことば)
※年末は毎日夕方に「火の用心」の見回りをし
ている。最近はうるさいとかやめろとか一部
住民が反発する所があったらしい。なんとア
ホがいることか。
拍子木の音のあとに、「火の用心さっしゃり
ましょう」と粋な呼びかけをする人がいる。
ハハーンあの人だな。
12/26mon
歳末に 展望しえぬ 世事多く
(さいまつに てんぼうしえぬ せじおおく)
※メディアは一斉に年末モード。一年を振り返
り、翌一年をばっさりと展望する、・・・の
だが。展望と言える内容は少ない。
12/25sun
車椅子 押すは孫の子 クリスマス
(くるまいす おすはまごのこ くりすます)
手袋やクルマ待つ間の毛玉とり
(てぶくろやくるままつまのけだまとり)
※クリスマス光景点描。平和だ。
12/24sat
窓越しにダンス練習見る聖夜
(まどごしにだんすれんしゅうみるせいや)
※クリスマスめいたものは身辺にも近所にもな
いと思っていたが、そうでもない。
近くに越して来た中国人の中年独身男性がど
ういうわけか家にイルミネーションを飾って
いる。へえ・・と驚いて眺める。公民館のホ
ールでは練習か本番か・・・。優雅だ。
12/23fri
冬嵐 アクア通いの 医師休診
(ふゆあらし あくあがよいの いしきゅうしん)
名を聞きぬ 顔はメールで 冬の孫
(なをききぬ かおはめーるで ふゆのまご)
※安全を考えるときりがない。まして冬に生ま
れた初孫だ。
12/22thu
新聞を 素早く読みて 冬至かな
(しんぶんを すばやくよみて とうじかな)
さわし柿切れ干し柿を食らう暮れ
(さわしがききれほしがきをくらうくれ)
※12月はバタバタと忙しいとか、あっという
間だとかの声を聞く気はない。こう寒いので
は暖かい屋内でじっとしているにしくはない。
今日は冬至ではないか。
12/20tue
木枯らしや不意なる喉の内視鏡
(こがらしやふいなるのどのないしきょう)
※親しい友が甲状腺ガンで死んでから2年にな
る。こちとらも甲状腺ホルモン某の持病があ
る上に最近とみに喉元のところでミニトラブ
ルが起こる。美声もかすれることが多い。
呼吸器科に行って訴えた。心配を取り除いて
と。そしていきなりの内視鏡だ。結論は、
「きれいです。なんにもありません。あって
も年齢相応の嚥下トラブルでしょう」と。
12/19mon
サッカーは 冬の季語なり メッシ勝つ
(さっかーは ふゆのきごなり めっしかつ)
※アルゼンチン、PK戦の末に優勝。冬の季語で
ある所以はシーズン設定にあるだろうと想像で
きるが、この熱戦にはふさわしくない。手に汗
握る2時間だった。
12/18sun
年賀状仕舞いを告げて月下弦
(ねんがじょうしまいをつげてつきかげん)
※年賀状仕舞いとした。迷った。ここでも下りの
明確な階段を降りることになるのだぞ、と言い
聞かせる。
12/17sat
農道の一角カフェとなりて冬
(のうどうのいっかくかふぇとなりてふゆ)
※行ってみると洒落た料理をこざっぱりと提供
する、地元にはない店だ。この手の店が方々
に現れ、センスを感じながらも、音もなく
消えていく。お客は地方都市の若い女房連、
30km圏内、単価1500円で基本的にはゼロサム
ゲームである。逞しい例外もあるけれど。
12/16fri
木賃といふアパートの煤払い
(もくちんというあぱーとのすすはらい)
※周辺の他の物件に較べ、50年以上前に建て
られたもの。居住者がいっしょに大掃除して
いた。今どき貴重な光景。黒光りしている?
12/13tue
出勤は 冬夕焼け見て 深夜番
(しゅっきんは ふゆゆやけみて しんやばん)
人参のとれてシチュウに大切りに
(にんじんのとれてしちゅうにおおぎりに)
12/11sun
着ぶくれて 週末頼みの 吊り革に
(きぶくれて しゅうまつだのみの つりかわに)
※久々に「週末頼みの通勤」の感覚を思い出し
た。ところがちっとも苦ではない。
12/10sat
湯気の音 剃刀の音 昼下がり
(ゆげのおと かみそりのおと ひるさがり)
※馴染みの床屋の主人がなくなり、そのまま閉
店。ずっと近くの格安店に行った。料金はほ
ぼ半分、時間は1/3、「どうしましょう」以
外無言、悪くない。
12/9fri
十二月 火星いざよふ 月を待つ
(じゅうにがつ かせいいざよう つきをまつ)
※18時前の散歩のときに十六夜の月が山の端
を離れた。行く先には火星が待っている。見
事な月だが、なかなか火星に追いつけない。
さて、このレース、今夜はどうなるか?
12/8thu
滑子汁 ふうふうする間の 香りかな
(なめこじる ふうふうするまの かおりかな)
※寒さはなかなか戻らないなと嘆いている間に、
これが平年並みとなってしまう。とにかく暖
かい部屋、熱いものが欲しい。
12/7wed
神無月 四万人を 呼ぶ娘
(かんなづき よんまんにんを よぶむすめ)
※先月初旬あいみょんがワンマン・ライヴで甲
子園球場を札止めにした!! よく知らない
歌手、二三度聴いたことはある。とても信じ
られないペンライトの波また波。
12/6tue
モーツァルト忌 朝一番で ジュピターを
(もーつぁるとき あさいちばんで じゅぴたーを)
※季語にモーツァルト忌というのがあると知っ
た。やや異様な感じがするが、せっかくだから
交響曲第41番で記念日(の一日遅れ)を刻む
ことにした。
12/5mon
戦ありて 落ち葉の上に 松落葉
(いくさありて おちばのうえに まつおちば)
※公民館、集会所の大掃除。こういうのをしっか
りやるのが、シニアの役目だと少しは認識して
出かける。それにしても外の作業は今日あたり
かなり酷だ。彼の地では、寒さの酷さを知る者
が寒さ攻めにしている。
12/3sat
初炬燵 文庫本にて 漱石を
(はつごたつ ぶんこぼんにて そうせきを)
※昨日今日一段と冷え込む。リビングにコタツと
いうのは今まで避けてきたが、もうこの歳、そ
んなことは言っていられない。
12/2fri
大どれの大根 店を攻略す
(おおどれのだいこん みせをこうりゃくす)
新聞は 瑣事のみ多く 日向ぼこ
(しんぶんは さじのみおおく ひなたぼこ)
※ネットを初め情報過多の今日では新聞の位置も
難しい。ヘッドラインはとっくに知られている
し、深掘りするにしても対象の選択は読者によ
ってことなる。全方位型になると、瑣事の羅列
となりかねない。購読料を払っているので目を
通さざるを得ない。半ばいやいやだ。家内はチ
ラシ以外殆ど読まない、はっきりしている。こ
れがうらやましい。
12/1thu
干し柿の 遅れて吊るす 十余り
(ほしがきの おくれてつるす とおあまり)
※日々の瑣事のみで静かにしていると12月の到
来に感慨はない。しかしこの日長いこと途切れ
ていた友人とのメール交換が出来て、これから
年末の幸いなる予感がする。
ダクタク句集2022年(令和4年)11月 [ダクタク2022年11月]
11/30wed
小春日の港に人のいぬ無残
(こはるびのみなとにひとのいぬむざん)
※カップル観光客の聖地になりかけた木更津港
をまたぐ中の島大橋も人っ子ひとりいない。
海と港を見渡す昔日の静けさと言えないこと
もないが、今度は船が断然少ない。
11/28mon
朝刊の 読めぬ昏さや 時雨雲
(ちょうかんの よめぬくらさや しぐれぐも)
※いやでも冬の到来を感じた朝。真っ黒な雲が
空を覆い続けた。寒さもひとしお。
そうだ、コタツを作ろう。
11/27sun
冬めく日 自宅待機とやらでいる
(ふゆめくひ じたくたいきとやらでいる)
※ゼロコロナ目標ではないから、濃厚接触者の
更なる探索はしていない。しかしそれに準じ
た注意喚起はある。その筋から「自宅観察・
外出自粛」の要請があった。感染ルートは仄
めかす程度で、最後に「通常の日常対策で十
分です」とも。それなら言って来るな、と思
ったが。
11/26sat
曲りても 玉葱の苗 植え終わる
(まがりても たまねぎのなえ うえおわる)
※早生の苗を植えたところで雑事が増えたため
一休み。今回で予定した苗は全部植え終わっ
た。鉛筆の木軸ほどの太さの葉鞘が望ましい
というが苗の調達段階でそれは挫折する。そ
んな立派な苗ではない。黒マルチは使わない。
11/25fri
ワクチンの五回目 初冬の静寂
(わくちんのごかいめ しょとうのせいじゃく)
※集団接種会場で粛々と済ませた。慣れて哀し。
11/23wed
冬の日や事故せし妻の帰宅かな
(ふゆのひやじこせしつまのきたくかな)
事故調書自署なめらかに石蕗の花
(じこちょうしょじしょなめらかにつわのはな)
冬夕焼け惑い長きに見ずに果て
(ふゆゆやけまどいながきにみずにはて)
11/22tue
剪定の音続きたり冬支度
(せんていのおとつづきたりふゆじたく)
バサと落ち研ぎ手の腕を暮れに聞く
(ばさとおちとぎてのうでをくれにきく)
※11月恒例の垣根の刈り込みだが、近年は次
第に億劫になりつつある。着手せずに、今日
は刃物の研ぎ日とか勝手に決めて一日延ばし
にする。
11/21mon
テレビ電話互いに冬の身づくろい
(てれびでんわたがいにふゆのみづくろい)
三の酉あり火の用心と時候言い
(さんのとりありひのようじんとじこういい)
11/19sat
保母開ける窓少しだけ冬はじめ
(ほぼあけるまどすこしだけふゆはじめ)
※コロナ渦で換気は怠れない、しかい今朝の風
はつめたい。この前までのゆったり換気があ
っという間に冬の光景に。
11/18fri
雨音は幻聴 小春の日の朝
(あまおとはげんちょう こはるのひのあさ)
犬こばむ 晩秋日々の同じ道
(いぬこばむ ばんしゅうひびのおなじみち)
※5回目のワクチンを打ってきた。集団接種会
場では打つ人も迎えるスタッフも粛々と仕事
をこなしている印象。結構な形の雲が面白お
かしく晩秋の空を飾っているのに、ワクチン
接種にかくも馴れ切ってしまうとは・・・。
11/17thu
顎引いて 若く撮れると 秋の宿
(あごひいて わかくとれると あきのやど)
※小人数で近場の温泉郷に。家族外の同伴者と
の宿泊は何年ぶりか? もちろん恐る恐るの
出立だったが、ホテルに着いて湯に入って酒
が入れば・・・もう心配は雲散霧消。これが
いけない。
11/16wed
月島の 路地に山芋 並べあり
(つきしまの ろじにやまいも ならべあり)
病葉や 柿のヘタ虫 駆除を聞く
(わくらばや かきのへたむし くじょをきく)
11/15tue
秋フェスタ 膝をさすりて 餅の列
(あきふぇすた ひざをさすりて もちのれつ)
※農協の収穫祭と言えどもフェスタと称する。
一番人気はつきたての餅の販売だ。列のすぐ
そばで絶えずついてこねて・・・。
11/14mon
孫自慢 歴史好きだと 葛の花
(まごじまん れきしずきだと くずのはな)
※シニア同士の話題は、結局は子と孫と病気の
自慢に落ち着く。幸いコロナ禍のせいで、聞
く被害からは遠ざかっていたが、ぼちぼち再
開の気配だ。
11/12sat
お十夜といふを知りてぞ喜寿の坂
(おじゅうやというをしりてぞきじゅのさか)
※もうひと月余りで満で喜寿の歳を迎える。関
西で主に浄土宗の仏事として十夜法要という
のがある。「現世で十日十夜善いことをすれ
ば・・・」という、これからでも間に合う、
ドロナワOKの教えらしい。すがりたい気持
ち?あります。
11/10thu
喜寿の日に 会社退けりと 星月夜
(きじゅのひに かいしゃひけりと ほしづきよ)
※会社生活を終える感慨はその長さによるので
はなかろうが、恵まれてかつ望まれて勤務を
続けられたことは幸せなことだと思う。お疲
れさま。
11/9wed
橡餅を 目指し竈に 火をくべぬ
(とちもちを めざしかまどに ひをくべぬ)
子が可愛 鴉が泣きて 秋澄めり
(こがかわい からすがなきて あきすめり)
蚯蚓鳴き 酒も喉越し 緩やかに
(みみずなき さけものどご しゆるやかに)
※絵画教室の例会で先生が来ない。一番熱心な
のに。何度電話をしたのに出ない・・・。も
しかして? 彼女は80歳台中盤、一人暮ら
し。終わるころ、ひょっこり顔を見せた。
スマホ持たずに出先で一時間以上も立ち話と
か。帰宅して着信の多さにびっくり。
11/6sun
秋の空 数合わせ気味の 守備位置に
(あきのそら かずあわせぎみの しゅびいちに)
フェスなるも 法被が主役 いわし雲
(ふぇすなるもはっぴがしゅやくいわしぐも)
※地域の蘇生と祭りのリベンジなど思惑が交錯
しても、お天気には恵まれた。若手のエンジ
ンに少しでも火がつくか?
11/5sat
ナレーターの 声ゆったりと 古都の秋
(なれーたーの こえゆったりと ことのあき)
※養老孟司の愛読者、ファンではないが、彼と
鎌倉を描いたBSシリーズ番組は好きだ。鎌倉
への対し方、愛し方は大好きだし、それ以上
に断然妬ましい。
11/4fri
ミサイルと 地震頻りに 夜長とて
(みさいると じしんしきりに よながとて)
合唱の 女史再デビュー 雁渡る
(がっしょうの じょしさいでびゅー かりわたる)
※地域の活発な女性陣、鳴りを潜めていたが、
この週の各種催しから息を吹き返した感があ
る。その昔のお局さんも加わる。
11/3thu
死ぬまでの 替え芯ありて 文化の日
(しぬまでの かえしんありて ぶんかのひ)
※シャープペンシル用に替芯0.5mm,2Bを取り
寄せた。普通の店にはないから少し多めに3
ケースを買った。それ以来ではないが、次第
に字を書くことは少なくなった。書く機会が
減ったのと、PC,スマホのせいだ。
一生懸命毎日書くようにしているが・・・。
国宝を みな見せるとぞ 文化の日
(こくほうを みなみせると ぞぶんかのひ)
11/2wed
城下秋 旧町名を 音に読む
(じょうかあき きゅうちょうめいを おとによむ)
※全国の城下町共通の、それらしい町名にはど
うも馴染めない。大手町、馬場町、鍛治町、
本町、寺町等々。せっかくのユニークな町名
があったのに。ちなみに生まれた町の名は融
通寺町。近くに桂林寺町。
11/1tue
畳織る 今年のイグサの 香りかな
(たたみおる ことしのいぐさの かおりかな)
※7月までに収穫するイグサは油の処理、形状
不良の厳しいリジェクトなどを経て、秋に
「織り」が本格化し畳表となる。
小春日の港に人のいぬ無残
(こはるびのみなとにひとのいぬむざん)
※カップル観光客の聖地になりかけた木更津港
をまたぐ中の島大橋も人っ子ひとりいない。
海と港を見渡す昔日の静けさと言えないこと
もないが、今度は船が断然少ない。
11/28mon
朝刊の 読めぬ昏さや 時雨雲
(ちょうかんの よめぬくらさや しぐれぐも)
※いやでも冬の到来を感じた朝。真っ黒な雲が
空を覆い続けた。寒さもひとしお。
そうだ、コタツを作ろう。
11/27sun
冬めく日 自宅待機とやらでいる
(ふゆめくひ じたくたいきとやらでいる)
※ゼロコロナ目標ではないから、濃厚接触者の
更なる探索はしていない。しかしそれに準じ
た注意喚起はある。その筋から「自宅観察・
外出自粛」の要請があった。感染ルートは仄
めかす程度で、最後に「通常の日常対策で十
分です」とも。それなら言って来るな、と思
ったが。
11/26sat
曲りても 玉葱の苗 植え終わる
(まがりても たまねぎのなえ うえおわる)
※早生の苗を植えたところで雑事が増えたため
一休み。今回で予定した苗は全部植え終わっ
た。鉛筆の木軸ほどの太さの葉鞘が望ましい
というが苗の調達段階でそれは挫折する。そ
んな立派な苗ではない。黒マルチは使わない。
11/25fri
ワクチンの五回目 初冬の静寂
(わくちんのごかいめ しょとうのせいじゃく)
※集団接種会場で粛々と済ませた。慣れて哀し。
11/23wed
冬の日や事故せし妻の帰宅かな
(ふゆのひやじこせしつまのきたくかな)
事故調書自署なめらかに石蕗の花
(じこちょうしょじしょなめらかにつわのはな)
冬夕焼け惑い長きに見ずに果て
(ふゆゆやけまどいながきにみずにはて)
11/22tue
剪定の音続きたり冬支度
(せんていのおとつづきたりふゆじたく)
バサと落ち研ぎ手の腕を暮れに聞く
(ばさとおちとぎてのうでをくれにきく)
※11月恒例の垣根の刈り込みだが、近年は次
第に億劫になりつつある。着手せずに、今日
は刃物の研ぎ日とか勝手に決めて一日延ばし
にする。
11/21mon
テレビ電話互いに冬の身づくろい
(てれびでんわたがいにふゆのみづくろい)
三の酉あり火の用心と時候言い
(さんのとりありひのようじんとじこういい)
11/19sat
保母開ける窓少しだけ冬はじめ
(ほぼあけるまどすこしだけふゆはじめ)
※コロナ渦で換気は怠れない、しかい今朝の風
はつめたい。この前までのゆったり換気があ
っという間に冬の光景に。
11/18fri
雨音は幻聴 小春の日の朝
(あまおとはげんちょう こはるのひのあさ)
犬こばむ 晩秋日々の同じ道
(いぬこばむ ばんしゅうひびのおなじみち)
※5回目のワクチンを打ってきた。集団接種会
場では打つ人も迎えるスタッフも粛々と仕事
をこなしている印象。結構な形の雲が面白お
かしく晩秋の空を飾っているのに、ワクチン
接種にかくも馴れ切ってしまうとは・・・。
11/17thu
顎引いて 若く撮れると 秋の宿
(あごひいて わかくとれると あきのやど)
※小人数で近場の温泉郷に。家族外の同伴者と
の宿泊は何年ぶりか? もちろん恐る恐るの
出立だったが、ホテルに着いて湯に入って酒
が入れば・・・もう心配は雲散霧消。これが
いけない。
11/16wed
月島の 路地に山芋 並べあり
(つきしまの ろじにやまいも ならべあり)
病葉や 柿のヘタ虫 駆除を聞く
(わくらばや かきのへたむし くじょをきく)
11/15tue
秋フェスタ 膝をさすりて 餅の列
(あきふぇすた ひざをさすりて もちのれつ)
※農協の収穫祭と言えどもフェスタと称する。
一番人気はつきたての餅の販売だ。列のすぐ
そばで絶えずついてこねて・・・。
11/14mon
孫自慢 歴史好きだと 葛の花
(まごじまん れきしずきだと くずのはな)
※シニア同士の話題は、結局は子と孫と病気の
自慢に落ち着く。幸いコロナ禍のせいで、聞
く被害からは遠ざかっていたが、ぼちぼち再
開の気配だ。
11/12sat
お十夜といふを知りてぞ喜寿の坂
(おじゅうやというをしりてぞきじゅのさか)
※もうひと月余りで満で喜寿の歳を迎える。関
西で主に浄土宗の仏事として十夜法要という
のがある。「現世で十日十夜善いことをすれ
ば・・・」という、これからでも間に合う、
ドロナワOKの教えらしい。すがりたい気持
ち?あります。
11/10thu
喜寿の日に 会社退けりと 星月夜
(きじゅのひに かいしゃひけりと ほしづきよ)
※会社生活を終える感慨はその長さによるので
はなかろうが、恵まれてかつ望まれて勤務を
続けられたことは幸せなことだと思う。お疲
れさま。
11/9wed
橡餅を 目指し竈に 火をくべぬ
(とちもちを めざしかまどに ひをくべぬ)
子が可愛 鴉が泣きて 秋澄めり
(こがかわい からすがなきて あきすめり)
蚯蚓鳴き 酒も喉越し 緩やかに
(みみずなき さけものどご しゆるやかに)
※絵画教室の例会で先生が来ない。一番熱心な
のに。何度電話をしたのに出ない・・・。も
しかして? 彼女は80歳台中盤、一人暮ら
し。終わるころ、ひょっこり顔を見せた。
スマホ持たずに出先で一時間以上も立ち話と
か。帰宅して着信の多さにびっくり。
11/6sun
秋の空 数合わせ気味の 守備位置に
(あきのそら かずあわせぎみの しゅびいちに)
フェスなるも 法被が主役 いわし雲
(ふぇすなるもはっぴがしゅやくいわしぐも)
※地域の蘇生と祭りのリベンジなど思惑が交錯
しても、お天気には恵まれた。若手のエンジ
ンに少しでも火がつくか?
11/5sat
ナレーターの 声ゆったりと 古都の秋
(なれーたーの こえゆったりと ことのあき)
※養老孟司の愛読者、ファンではないが、彼と
鎌倉を描いたBSシリーズ番組は好きだ。鎌倉
への対し方、愛し方は大好きだし、それ以上
に断然妬ましい。
11/4fri
ミサイルと 地震頻りに 夜長とて
(みさいると じしんしきりに よながとて)
合唱の 女史再デビュー 雁渡る
(がっしょうの じょしさいでびゅー かりわたる)
※地域の活発な女性陣、鳴りを潜めていたが、
この週の各種催しから息を吹き返した感があ
る。その昔のお局さんも加わる。
11/3thu
死ぬまでの 替え芯ありて 文化の日
(しぬまでの かえしんありて ぶんかのひ)
※シャープペンシル用に替芯0.5mm,2Bを取り
寄せた。普通の店にはないから少し多めに3
ケースを買った。それ以来ではないが、次第
に字を書くことは少なくなった。書く機会が
減ったのと、PC,スマホのせいだ。
一生懸命毎日書くようにしているが・・・。
国宝を みな見せるとぞ 文化の日
(こくほうを みなみせると ぞぶんかのひ)
11/2wed
城下秋 旧町名を 音に読む
(じょうかあき きゅうちょうめいを おとによむ)
※全国の城下町共通の、それらしい町名にはど
うも馴染めない。大手町、馬場町、鍛治町、
本町、寺町等々。せっかくのユニークな町名
があったのに。ちなみに生まれた町の名は融
通寺町。近くに桂林寺町。
11/1tue
畳織る 今年のイグサの 香りかな
(たたみおる ことしのいぐさの かおりかな)
※7月までに収穫するイグサは油の処理、形状
不良の厳しいリジェクトなどを経て、秋に
「織り」が本格化し畳表となる。
ダクタク句集2022年(令和4年)10月 [ダクタク2022年10月]
10/31mon
友の待つ 広き階段 見上げ秋
(とものまつ ひろきかいだん みあげあき)
※立派な階段、踊りがあって、また階段が。彼
はどうやって登ったのかな? そう、エレベ
ーターがあるのでは? ・・・もう遅い。
お隣の シュウメイギクの 揃い踏み
(おとなりの しゅうめいぎくの そろいぶみ)
10/30sun
秋の夜のライン顔見し黙しおり
(あきのよのらいんかおみしもくしおり)
※ラインが開通して初めて友人と顔を見ながら
の会話を始めた時、相手がふっと押し黙った
時があったならよーく考えた方が良い。相手
は対面会話に感激したのではなく、こちらの
顔の想像以上の老け込みに唖然として息を吞
んだのだ。毎日見ている顔では気づかない老
けの大きな溝がある。きっと。
10/29sat
杜鵑草 思い出しつつ つい疎遠
(ほととぎす おもいだしつつ ついそえん)
※こんな時だからこそ親しい友人とはせめて連
絡を保ちたい。遠隔での連絡手段が一般的に
なっているとはいえ、ついその一歩が出ない
ことも。
10/28fri
文化祭 準備を仕切る 嗄れ声
(ぶんかさい じゅんびをしきる しゃがれごえ)
白マスク白髪が秋の草むしり
(しろますくしらががあきのくさむしり)
※いくらなんでも俺は公民館の世話にはならな
い、とイッパシの口をたたいていた男が、ど
っぷりとは言わないまでも文化祭などの活動
に参加している。アアとため息も出るが、同
じ年代の人たちが手練れのエースである。
10/26wed
介護する 合間の絵筆 いわし雲
(かいごする あいまのえふで いわしぐも)
※絵仲間の女性は80歳で介護の仕事をしてい
る。絵教室も遅刻早退で忙しい。肝心の絵は
あっさりしていて外連味がない。ごてごて塗
りたくるコチトラは感心しきり。
10/25tue
公園に シニア週一 落葉掃き
(こうえんに しにあしゅういち おちばはき)
※町内の道路、公園などの清掃はシニアの無償
の労働に負っている。老人会、誘われたこと
もない。とか言っているうちに10年近くだ。
10/24mon
イチジクの 絵にむらさきの 熟したり
(いちじくの えにむらさきの じゅくしたり)
※当地の文化祭に仲間と水彩画を出展すること
になった。いつもは間際に非才さを嘆くのだ
が、今回は秋の野菜や果物をうまく描けた。
それがどこであれ衆目に晒すというのは大変
なことで、実はかなりホッとしている。
10/23sun
さつまいも 半分掘って 虫の里
(さつまいも はんぶんほって むしのさと)
※関東南部は曇り日と雨天続きで日照時間が極
端に少なかった。もう少しかな?と残してお
いたサツマイモは意図せざる放置でどうなっ
ていることやら。気をもんでいる。
10/22sat
教師褒め 親父酒出す 秋の夕
(きょうしほめ おやじさけだす あきのゆう)
※この句は8/5の
「ほろ酔いの 教師は黒く 大夕焼」
と同じ思い出につながる。中学校の事務の先
生が帰途に我が家に寄って、私の部活の充実
ぶりを褒めていった。
誰も覚えていないかもしれないが、テニスと
タバコと酒が大好きな、しょうもない先生。
俺は好きだったよ。
10/20thu
欅 自らなる形 秋に満つ
(けやき みずからなるかたち あきにみつ)
※散歩ルートにある3本のケヤキ。紅葉、落葉
前の今、一年の成長を全身で現わしているよ
うに思われる。何の変哲もないケヤキなのだ
が、一年の成績は5だなと思う。
10/19wed
秋冷えて 昨夜は風呂に 入りしかと
(あきひえて さくやはふろに いりしかと)
※実はよくある話。もっと寒くなると毎晩風呂
に入るが、多少肌寒くなっても風呂は二日に
一度、もう一日はシャワーで済ます。済ます
というより、のんびり・ゆったりかつ気軽な
シャワーが好きだ。それで掲句のような疑問
が湧き出る。ボケのせいではない証拠にかな
り以前からのことなのだが。
10/18tue
児童向け 大きな字読む 良夜かな
(じどうむけ おおきなじよむ りょうやかな)
※図書館にはシニア向けに大文字本が用意され
ているが、その分がさばるので敬遠していた。
この前借りてきた季語写真集は親切な内容で
わかりやすく気に入っていたら、中高生向け
の児童図書とあった。
10/17mon
柿の実や 製材所の お茶時間
(かきのみや せいざいしょの おちゃじかん)
※当家の一本の柿の木は今年お休み。数少ない
実が殆ど7月までで落果した。周期的な不作
なのか、以前のようなヘタ虫の被害か、今の
ところ不明。
10/16sun
リヤカーに 子と芋と鍋 芋煮行
(りやかーに こといもとなべ いもにこう)
※町内の親しい母親仲間が集まり、日と持ち寄
りを決め、一切合切を積み込んで、町中から
郊外の広い河畔の湧水場まで歩いていく。小
一時間ほどもある女集団のおしゃべり付きの
移動だ。今なら目立って、鼻つまみにもなろ
うが、当時はなんとも街の光景になじんでい
た。行った先は天国、おしゃべりと芋煮。息
抜きと骨休め。
10/15sat
垣を剪り 果樹には秋の お礼肥
(かきをきり かじゅにはあきの おれいごえ)
※金木犀も大方花を落としたし、少ししたら一
年分の丈を詰める。秋の作業の一つ。
10/14fri
涼気早や 寒気となりて 坂の家
(りょうきはや かんきとなりて さかのいえ)
※挨拶は寒いですねに変わった。坂の中途から
見下ろす夕方の光景は光を失って空も地も鈍
色。
10/12wed
長身の 荷風が覗く 路地の秋
(ちょうしんの かふうがのぞく ろじのあき)
※YouTubeの朗読で荷風の「日和下駄」「濹東
綺譚」を聞く。朗読で扱われているものの中
では長い方、後者は3時間余りだ。しかし、
いずれも以前に読んでいるので、歩きながら
でも気軽に聞ける。細部は聞き流しても、む
しろ荷風文章の達者なリズムが味わえる。
10/10mon
竿売りの 音高らかに 刈田道
(さおうりの おとたからかに かりたみち)
※その道は行き止まりだよと言ってあげたかった
が、農道をまっすぐに行く。テープの音が両側
の小高い丘に反射するようだ。ナビ圏外の小道。
あの手の軽トラのセールスは多分地の人ではな
い。大量に安く仕入れて、県を跨ってでもひた
すらに売り歩くと聞いた。
10/9sun
栗名月 雲の間にこそ 香りあり
(くりめいげつ くものまにこそ かおりあり)
※ここ数日の曇天に半ば諦めていた十三夜、厚か
った雲が夕方にかけゆっくり薄くなり、格好の
名月待ちとなった。
客なくて 金木犀の 盛りかな
(きゃくなくて きんもくせいの さかりかな)
10/7fri
コスモスや 犬に拒まれ 花の道
(こすもすや いぬにこばまれ はなのみち)
※異常な寒さに我が家の犬はより元気になる。や
や夏バテ気味の頃散歩を短縮して来のこと、今
日その道に拒否権を発動した。
10/6thu
鰯雲 静かがよろし スピーカー
(いわしぐも しずかがよろし すぴーかー)
※市がつけている広報スピーカー。防犯上の注意
喚起や気候情報がメイン。不審者、詐欺電話情
報、大雨や強風注意、警報、行方不明者捜索な
ど幅広い。この季節に多いのが有害鳥獣駆除実
施のお知らせ。等々。
良く聞こえないという人も多い中で、近い人々
は音の大きさに頭を抱えている。いずれにして
も静かがいい。使わないで済むような。
10/4tue
露草や林間一帯を領す
(つゆくさやりんかんいったいをりょうす)
※この光景は昨年まではなかった。一年草と言わ
れる露草が辺り一面をわがもの顔に青い花を散
りばめている。
10/3mon
クラス会 秋集合は 動物園
(くらすかい あきしゅうごうは どうぶつえん)
※ミニクラス会を3年ぶりにやろうということに。
年末年始の危険、風邪とのダブルパンチ、第8
波だってこわいが・・・。慎重派と決行派、間
をとってなるべく速やかに、ということになっ
た。動物園の後は谷中に降りて一散歩、店に急
ぐことに。
10/2sun
牛乳で コーヒー飲む癖 今朝の秋
(ぎゅうにゅうで こーひーのむくせ けさのあき)
※コーヒーファンを自認して小うるさいことを
言っていたのも今は昔。一日に一杯とする必
要があり、その貴重な一杯を朝食の牛乳にイ
ンスタントコーヒーを入れたことが運の尽き。
「おや、おいしいねえ」となった。
10/1sat
法要の 客と出会いぬ 風蝶草
(ほうようの きゃくとであいぬ ふうちょうそう)
※喪服の3人と出会った。理容店主の四十九日
とわかった。故人は8月の暑い盛りに逝った。
残暑が厳しいといわれていたが、台風と大雨
が列島を翻弄している間にすっかり例年並み
の気温になった。涼しい天国に早く来過ぎた
と思っているかもしれない。
友の待つ 広き階段 見上げ秋
(とものまつ ひろきかいだん みあげあき)
※立派な階段、踊りがあって、また階段が。彼
はどうやって登ったのかな? そう、エレベ
ーターがあるのでは? ・・・もう遅い。
お隣の シュウメイギクの 揃い踏み
(おとなりの しゅうめいぎくの そろいぶみ)
10/30sun
秋の夜のライン顔見し黙しおり
(あきのよのらいんかおみしもくしおり)
※ラインが開通して初めて友人と顔を見ながら
の会話を始めた時、相手がふっと押し黙った
時があったならよーく考えた方が良い。相手
は対面会話に感激したのではなく、こちらの
顔の想像以上の老け込みに唖然として息を吞
んだのだ。毎日見ている顔では気づかない老
けの大きな溝がある。きっと。
10/29sat
杜鵑草 思い出しつつ つい疎遠
(ほととぎす おもいだしつつ ついそえん)
※こんな時だからこそ親しい友人とはせめて連
絡を保ちたい。遠隔での連絡手段が一般的に
なっているとはいえ、ついその一歩が出ない
ことも。
10/28fri
文化祭 準備を仕切る 嗄れ声
(ぶんかさい じゅんびをしきる しゃがれごえ)
白マスク白髪が秋の草むしり
(しろますくしらががあきのくさむしり)
※いくらなんでも俺は公民館の世話にはならな
い、とイッパシの口をたたいていた男が、ど
っぷりとは言わないまでも文化祭などの活動
に参加している。アアとため息も出るが、同
じ年代の人たちが手練れのエースである。
10/26wed
介護する 合間の絵筆 いわし雲
(かいごする あいまのえふで いわしぐも)
※絵仲間の女性は80歳で介護の仕事をしてい
る。絵教室も遅刻早退で忙しい。肝心の絵は
あっさりしていて外連味がない。ごてごて塗
りたくるコチトラは感心しきり。
10/25tue
公園に シニア週一 落葉掃き
(こうえんに しにあしゅういち おちばはき)
※町内の道路、公園などの清掃はシニアの無償
の労働に負っている。老人会、誘われたこと
もない。とか言っているうちに10年近くだ。
10/24mon
イチジクの 絵にむらさきの 熟したり
(いちじくの えにむらさきの じゅくしたり)
※当地の文化祭に仲間と水彩画を出展すること
になった。いつもは間際に非才さを嘆くのだ
が、今回は秋の野菜や果物をうまく描けた。
それがどこであれ衆目に晒すというのは大変
なことで、実はかなりホッとしている。
10/23sun
さつまいも 半分掘って 虫の里
(さつまいも はんぶんほって むしのさと)
※関東南部は曇り日と雨天続きで日照時間が極
端に少なかった。もう少しかな?と残してお
いたサツマイモは意図せざる放置でどうなっ
ていることやら。気をもんでいる。
10/22sat
教師褒め 親父酒出す 秋の夕
(きょうしほめ おやじさけだす あきのゆう)
※この句は8/5の
「ほろ酔いの 教師は黒く 大夕焼」
と同じ思い出につながる。中学校の事務の先
生が帰途に我が家に寄って、私の部活の充実
ぶりを褒めていった。
誰も覚えていないかもしれないが、テニスと
タバコと酒が大好きな、しょうもない先生。
俺は好きだったよ。
10/20thu
欅 自らなる形 秋に満つ
(けやき みずからなるかたち あきにみつ)
※散歩ルートにある3本のケヤキ。紅葉、落葉
前の今、一年の成長を全身で現わしているよ
うに思われる。何の変哲もないケヤキなのだ
が、一年の成績は5だなと思う。
10/19wed
秋冷えて 昨夜は風呂に 入りしかと
(あきひえて さくやはふろに いりしかと)
※実はよくある話。もっと寒くなると毎晩風呂
に入るが、多少肌寒くなっても風呂は二日に
一度、もう一日はシャワーで済ます。済ます
というより、のんびり・ゆったりかつ気軽な
シャワーが好きだ。それで掲句のような疑問
が湧き出る。ボケのせいではない証拠にかな
り以前からのことなのだが。
10/18tue
児童向け 大きな字読む 良夜かな
(じどうむけ おおきなじよむ りょうやかな)
※図書館にはシニア向けに大文字本が用意され
ているが、その分がさばるので敬遠していた。
この前借りてきた季語写真集は親切な内容で
わかりやすく気に入っていたら、中高生向け
の児童図書とあった。
10/17mon
柿の実や 製材所の お茶時間
(かきのみや せいざいしょの おちゃじかん)
※当家の一本の柿の木は今年お休み。数少ない
実が殆ど7月までで落果した。周期的な不作
なのか、以前のようなヘタ虫の被害か、今の
ところ不明。
10/16sun
リヤカーに 子と芋と鍋 芋煮行
(りやかーに こといもとなべ いもにこう)
※町内の親しい母親仲間が集まり、日と持ち寄
りを決め、一切合切を積み込んで、町中から
郊外の広い河畔の湧水場まで歩いていく。小
一時間ほどもある女集団のおしゃべり付きの
移動だ。今なら目立って、鼻つまみにもなろ
うが、当時はなんとも街の光景になじんでい
た。行った先は天国、おしゃべりと芋煮。息
抜きと骨休め。
10/15sat
垣を剪り 果樹には秋の お礼肥
(かきをきり かじゅにはあきの おれいごえ)
※金木犀も大方花を落としたし、少ししたら一
年分の丈を詰める。秋の作業の一つ。
10/14fri
涼気早や 寒気となりて 坂の家
(りょうきはや かんきとなりて さかのいえ)
※挨拶は寒いですねに変わった。坂の中途から
見下ろす夕方の光景は光を失って空も地も鈍
色。
10/12wed
長身の 荷風が覗く 路地の秋
(ちょうしんの かふうがのぞく ろじのあき)
※YouTubeの朗読で荷風の「日和下駄」「濹東
綺譚」を聞く。朗読で扱われているものの中
では長い方、後者は3時間余りだ。しかし、
いずれも以前に読んでいるので、歩きながら
でも気軽に聞ける。細部は聞き流しても、む
しろ荷風文章の達者なリズムが味わえる。
10/10mon
竿売りの 音高らかに 刈田道
(さおうりの おとたからかに かりたみち)
※その道は行き止まりだよと言ってあげたかった
が、農道をまっすぐに行く。テープの音が両側
の小高い丘に反射するようだ。ナビ圏外の小道。
あの手の軽トラのセールスは多分地の人ではな
い。大量に安く仕入れて、県を跨ってでもひた
すらに売り歩くと聞いた。
10/9sun
栗名月 雲の間にこそ 香りあり
(くりめいげつ くものまにこそ かおりあり)
※ここ数日の曇天に半ば諦めていた十三夜、厚か
った雲が夕方にかけゆっくり薄くなり、格好の
名月待ちとなった。
客なくて 金木犀の 盛りかな
(きゃくなくて きんもくせいの さかりかな)
10/7fri
コスモスや 犬に拒まれ 花の道
(こすもすや いぬにこばまれ はなのみち)
※異常な寒さに我が家の犬はより元気になる。や
や夏バテ気味の頃散歩を短縮して来のこと、今
日その道に拒否権を発動した。
10/6thu
鰯雲 静かがよろし スピーカー
(いわしぐも しずかがよろし すぴーかー)
※市がつけている広報スピーカー。防犯上の注意
喚起や気候情報がメイン。不審者、詐欺電話情
報、大雨や強風注意、警報、行方不明者捜索な
ど幅広い。この季節に多いのが有害鳥獣駆除実
施のお知らせ。等々。
良く聞こえないという人も多い中で、近い人々
は音の大きさに頭を抱えている。いずれにして
も静かがいい。使わないで済むような。
10/4tue
露草や林間一帯を領す
(つゆくさやりんかんいったいをりょうす)
※この光景は昨年まではなかった。一年草と言わ
れる露草が辺り一面をわがもの顔に青い花を散
りばめている。
10/3mon
クラス会 秋集合は 動物園
(くらすかい あきしゅうごうは どうぶつえん)
※ミニクラス会を3年ぶりにやろうということに。
年末年始の危険、風邪とのダブルパンチ、第8
波だってこわいが・・・。慎重派と決行派、間
をとってなるべく速やかに、ということになっ
た。動物園の後は谷中に降りて一散歩、店に急
ぐことに。
10/2sun
牛乳で コーヒー飲む癖 今朝の秋
(ぎゅうにゅうで こーひーのむくせ けさのあき)
※コーヒーファンを自認して小うるさいことを
言っていたのも今は昔。一日に一杯とする必
要があり、その貴重な一杯を朝食の牛乳にイ
ンスタントコーヒーを入れたことが運の尽き。
「おや、おいしいねえ」となった。
10/1sat
法要の 客と出会いぬ 風蝶草
(ほうようの きゃくとであいぬ ふうちょうそう)
※喪服の3人と出会った。理容店主の四十九日
とわかった。故人は8月の暑い盛りに逝った。
残暑が厳しいといわれていたが、台風と大雨
が列島を翻弄している間にすっかり例年並み
の気温になった。涼しい天国に早く来過ぎた
と思っているかもしれない。
ダクタク句集2022年(令和4年)9月 [ダクタク2022年9月]
9/30fri
秋西日 茶筅日向に 干されあり
(あきにしび ちゃせんひなたに ほされあり)
四方から 今ぞ今ぞと 虫の闇
(しほうから いまぞいまぞと むしのやみ)
9/29thu
野分去り 他家の毬栗 数えけり
(のわきさり たけのいがぐり かぞえけり)
秋場所や 初老力士の 力こぶ
(あきばしょや しょろうりきしの ちからこぶ)
※台風後の散歩、俳句作り、九月場所テレビ桟敷
そして草むしりか、九月もすっかり年寄りの種
目で終わりそう。
9/28wed
国葬の過ぎてボートは生き返り
(こくそうのすぎてぼーとはいきかえり)
※総意とは何だろう? 総意とは言えないけれど、
本来は総意となってすべきことを識り重視し、
右顧左眄せず突き進んだ・・・安部元総理の業
績だと思う。右っぽいとか言われそうだが。
9/27tue
さびしいね大変ねとぞ彼岸過ぎ
(さびしいねたいへんねとぞひがんすぎ)
※友人は男一人住まいの後期高齢者。都心でもさ
まざまに支援の手、声掛けがあるという。しか
しこの手の言葉は慰めにもなんにもならない、
と友人は苦笑。そこまで落ち込んでいない、と。
彼は175センチを超える偉丈夫である。
9/25sun
今朝の秋 呉服店主の 紺の足袋
(けさのあき ごふくてんしゅの こんのたび)
※後ろに土蔵の蔵屋敷を構えた呉服商店。商売
は今や細々とらしい。足袋の裏は白い。
9/24sat
かすかなる 踏切の音 自在秋
(かすかなる ふみきりのおと じざいあき)
※台風が近くを通過している深夜、強風の合間
に近くの踏切の音が聞こえる。かすかだが。
耳が良いせい? 年齢と鍛錬?のせいで好き
な音を自由に呼び起こすことが出来るように
なった。この時間にローカル線が走るわけが
ない。
9/23fri
短めの 形見の杖で 彼岸まで
(みじかめの かたみのつえで ひがんまで)
秋彼岸 風に戦の末予感
(あきひがん かぜにいくさのすえよかん)
※戦争、内外国葬2題、インフレ・経済、災害
・・・落ち着かないこと限りないが、これも
聞こえ過ぎ、情報化社会故の不幸かもしれな
い。どこかで分水嶺を越えてすうーっと静か
になることもある。それが秋分の日。
9/22thu
風の盆 男踊りは 空を切り
(かぜのぼん おとこおどりは くうをきり)
※今月初めの富山八尾町、越中おわら節のお祭
り「風の盆」。この旋律と踊り、何故こんな
にも哀切極まるものが生まれて、かつ継がれ
ているのか? みんなで踊るのと、保存会の
踊りを静粛に大事にただ眺めるのが並行して
あるからなのかな?
9/21wed
木彫師 師の師は光雲 いわし雲
(もくちょうし しのしはこううん いわしぐも)
※内房の小さな街に住む木彫師は高名な名前を
口にする。僅かに「知ってる?」という気分
が漂う。例の野猿像どころか最近は彫りたい
ものとは無縁であると残念がる。
9/19mon
子規忌なり 少し老けたと 言いにけり
(しききなり すこしふけたと いいにけり)
下弦なる 月確かめて 敬老の日
(かげんなる つきたしかめて けいろうのひ)
※浮遊する敬老の日は今年子規忌と同じ19日
になった。その業績から子規翁と呼ばれるこ
とも多いが、亡くなったのは35歳。
9/18sun
街なかで 熊除けの鈴 秋まみれ
(まちなかで くまよけのすず あきまみれ)
※無人を思わせる団地の静謐を破って鈴の音が
聞こえる。日曜日の住人が無聊に任せてスピ
ーカーで流しているのではない。
9/17sat
秋の日やメインツリーは果樹となる
(あきのひやめいんつりーはかじゅとなる)
※ガーデニング風に言えば、我が家のメインツ
リーはモモ、ブドウ、柿の3本。今年の成績
を言えばいろいろあるが、後期高齢者の思い
込みは安定していて、功が拮抗している。
9/15thu
よろず屋にバス待つ人の宿場町
(よろずやにばすまつひとのしゅくばまち)
街なかに街道ありて秋夕暮れ
(まちなかにかいどうありてあきゆぐれ)
※米を収穫して現金収入を手にした農家にとっ
て一年で一番豊かさを感じる季節だ。思い切
って遠出して温泉で骨を休めたり、近くの街
に買い物に出たり。小さな商店街のある街ま
では多くはバスで行きかえりだ。日常使いの
品ではなく、好きな品を既に考えてある。
小さな街の小さな商店街。一日声があふれる。
9/14wed
秋の日強し団地音一つなし
(あきのひつよしだんちおとひとつなし)
※こんな音のない風景はミステリー映画の撮影
に使えるのでは?なんて思いがうかぶが、今
やこうしたシーンは全国に溢れ、履いて捨て
るほどある。洗濯物のそよぎが「使用中」を
示す。
9/13tue
無人駅の読書 針の進む音
(むじんえきのどくしょ はりのすすむおと)
※こんな静かな無人駅があるところは貴重かな?
いまどきは遠隔で音声案内がある。
9/11sun
耳元で癌を語りて夏に逝く
(みみもとでがんをかたりてなつにいく)
ワケギ好き冷凍を説く床屋あり
(わけぎずきれいとうをとくとこやあり)
※仲の良かった床屋の親父が死んだ。3年近く
の肺ガンとの闘いの末である。なにをさせて
も執念とこだわりの強い人だったから、ゆっ
くりした床屋タイムの話はいつも楽しみだっ
た。合掌。
9/10sat
名月もかすむ蝮の噂かな
(めいげつもかすむまむしのうわさかな)
※見事な名月。さすがに。見えすぎなくらい。
9/7wed
我慢して 追肥をかてに 秋茄子
(がまんして ついひをかてに あきなすび)
※9/7泉鏡花の忌日。代表作以外は読むことのな
かった作家だが、ネットの朗読に親しんで鏡
花も三つほど聴いた。いずれもスマホのおか
げ、YouTubeのおかげ、ヒマのおかげ。鏡花
との距離が随分縮まった。
9/6tue
稲刈り機揺られウクライナのことを
(いねかりきゆられうくらいなのことを)
運転は孫に勝りて刈田かな
(うんてんはまごにまさりてかりたかな)
一族も郎党もいず刈り終わる
(いちぞくもろうとうもいずかりおわる)
稲刈りてデータを入れる月明かり
(いねかりてでーたをいれるつきあかり)
9/5mon
カタロニア 野の鳥を見る 善衛の忌
(かたろにあ ののとりをみる よしえのき)
※少し左派がかった元日本ペンクラブ会長堀田
善衛が亡くなったのが1998年9月5日。
スペインアスツゥリアスとカタロニアに合わ
せて5年近く住んだ作家である。著作も多い。
小生がスペインオタクになった機縁である。
野の鳥はピースピースと鳴く、とカザルス。
9/4sun
飴色の ぶどう袋に 妻方々
(あめいろの ぶどうふくろに つまほうぼう)
※甘くはありませんがとお裾分けするが、おい
しかったと言ってくれる人もいる。高級品が
多い最近では昔のぶどうの味でなつかしかっ
たという感想かな?
9/3sat
剃りたての 頬を撫でつつ 桐一葉
(そりたての ほほをなでつつ きりひとは)
※例年より低い気温が続く。台風は沖縄県先島
近辺で停滞の後東北に動き始めた。
朝に切る ぶどう三房を 仏前に
(あさにきる ぶどうみふさを ぶつぜんに)
9/2fri
近道の 秋灯の家 時計鳴る
(ちかみちの しゅうとうのいえ とけいなる)
※やっぱり昭和か?ちょっと古めの時計の音が
聞こえた。窓に映る灯りも古めの暖色系だし、
新しい家にしてはやや奇々怪々。
9/1thu
度を重ね 二百十日の 俄雨
(どをかさね にひゃくとおかの にわかあめ)
小椋鳥 夕立家に 帰りかね
(こむくどり ゆうだちいえに かえりかね)
※ムクドリは常に群れで行動するのに、突然の
激しい雨に打たれ、一羽が木の根元に取り残
された。いつもは群れの旺盛な動きに舌打ち
することもあるが今日の姿はほんの小鳥だ。
秋西日 茶筅日向に 干されあり
(あきにしび ちゃせんひなたに ほされあり)
四方から 今ぞ今ぞと 虫の闇
(しほうから いまぞいまぞと むしのやみ)
9/29thu
野分去り 他家の毬栗 数えけり
(のわきさり たけのいがぐり かぞえけり)
秋場所や 初老力士の 力こぶ
(あきばしょや しょろうりきしの ちからこぶ)
※台風後の散歩、俳句作り、九月場所テレビ桟敷
そして草むしりか、九月もすっかり年寄りの種
目で終わりそう。
9/28wed
国葬の過ぎてボートは生き返り
(こくそうのすぎてぼーとはいきかえり)
※総意とは何だろう? 総意とは言えないけれど、
本来は総意となってすべきことを識り重視し、
右顧左眄せず突き進んだ・・・安部元総理の業
績だと思う。右っぽいとか言われそうだが。
9/27tue
さびしいね大変ねとぞ彼岸過ぎ
(さびしいねたいへんねとぞひがんすぎ)
※友人は男一人住まいの後期高齢者。都心でもさ
まざまに支援の手、声掛けがあるという。しか
しこの手の言葉は慰めにもなんにもならない、
と友人は苦笑。そこまで落ち込んでいない、と。
彼は175センチを超える偉丈夫である。
9/25sun
今朝の秋 呉服店主の 紺の足袋
(けさのあき ごふくてんしゅの こんのたび)
※後ろに土蔵の蔵屋敷を構えた呉服商店。商売
は今や細々とらしい。足袋の裏は白い。
9/24sat
かすかなる 踏切の音 自在秋
(かすかなる ふみきりのおと じざいあき)
※台風が近くを通過している深夜、強風の合間
に近くの踏切の音が聞こえる。かすかだが。
耳が良いせい? 年齢と鍛錬?のせいで好き
な音を自由に呼び起こすことが出来るように
なった。この時間にローカル線が走るわけが
ない。
9/23fri
短めの 形見の杖で 彼岸まで
(みじかめの かたみのつえで ひがんまで)
秋彼岸 風に戦の末予感
(あきひがん かぜにいくさのすえよかん)
※戦争、内外国葬2題、インフレ・経済、災害
・・・落ち着かないこと限りないが、これも
聞こえ過ぎ、情報化社会故の不幸かもしれな
い。どこかで分水嶺を越えてすうーっと静か
になることもある。それが秋分の日。
9/22thu
風の盆 男踊りは 空を切り
(かぜのぼん おとこおどりは くうをきり)
※今月初めの富山八尾町、越中おわら節のお祭
り「風の盆」。この旋律と踊り、何故こんな
にも哀切極まるものが生まれて、かつ継がれ
ているのか? みんなで踊るのと、保存会の
踊りを静粛に大事にただ眺めるのが並行して
あるからなのかな?
9/21wed
木彫師 師の師は光雲 いわし雲
(もくちょうし しのしはこううん いわしぐも)
※内房の小さな街に住む木彫師は高名な名前を
口にする。僅かに「知ってる?」という気分
が漂う。例の野猿像どころか最近は彫りたい
ものとは無縁であると残念がる。
9/19mon
子規忌なり 少し老けたと 言いにけり
(しききなり すこしふけたと いいにけり)
下弦なる 月確かめて 敬老の日
(かげんなる つきたしかめて けいろうのひ)
※浮遊する敬老の日は今年子規忌と同じ19日
になった。その業績から子規翁と呼ばれるこ
とも多いが、亡くなったのは35歳。
9/18sun
街なかで 熊除けの鈴 秋まみれ
(まちなかで くまよけのすず あきまみれ)
※無人を思わせる団地の静謐を破って鈴の音が
聞こえる。日曜日の住人が無聊に任せてスピ
ーカーで流しているのではない。
9/17sat
秋の日やメインツリーは果樹となる
(あきのひやめいんつりーはかじゅとなる)
※ガーデニング風に言えば、我が家のメインツ
リーはモモ、ブドウ、柿の3本。今年の成績
を言えばいろいろあるが、後期高齢者の思い
込みは安定していて、功が拮抗している。
9/15thu
よろず屋にバス待つ人の宿場町
(よろずやにばすまつひとのしゅくばまち)
街なかに街道ありて秋夕暮れ
(まちなかにかいどうありてあきゆぐれ)
※米を収穫して現金収入を手にした農家にとっ
て一年で一番豊かさを感じる季節だ。思い切
って遠出して温泉で骨を休めたり、近くの街
に買い物に出たり。小さな商店街のある街ま
では多くはバスで行きかえりだ。日常使いの
品ではなく、好きな品を既に考えてある。
小さな街の小さな商店街。一日声があふれる。
9/14wed
秋の日強し団地音一つなし
(あきのひつよしだんちおとひとつなし)
※こんな音のない風景はミステリー映画の撮影
に使えるのでは?なんて思いがうかぶが、今
やこうしたシーンは全国に溢れ、履いて捨て
るほどある。洗濯物のそよぎが「使用中」を
示す。
9/13tue
無人駅の読書 針の進む音
(むじんえきのどくしょ はりのすすむおと)
※こんな静かな無人駅があるところは貴重かな?
いまどきは遠隔で音声案内がある。
9/11sun
耳元で癌を語りて夏に逝く
(みみもとでがんをかたりてなつにいく)
ワケギ好き冷凍を説く床屋あり
(わけぎずきれいとうをとくとこやあり)
※仲の良かった床屋の親父が死んだ。3年近く
の肺ガンとの闘いの末である。なにをさせて
も執念とこだわりの強い人だったから、ゆっ
くりした床屋タイムの話はいつも楽しみだっ
た。合掌。
9/10sat
名月もかすむ蝮の噂かな
(めいげつもかすむまむしのうわさかな)
※見事な名月。さすがに。見えすぎなくらい。
9/7wed
我慢して 追肥をかてに 秋茄子
(がまんして ついひをかてに あきなすび)
※9/7泉鏡花の忌日。代表作以外は読むことのな
かった作家だが、ネットの朗読に親しんで鏡
花も三つほど聴いた。いずれもスマホのおか
げ、YouTubeのおかげ、ヒマのおかげ。鏡花
との距離が随分縮まった。
9/6tue
稲刈り機揺られウクライナのことを
(いねかりきゆられうくらいなのことを)
運転は孫に勝りて刈田かな
(うんてんはまごにまさりてかりたかな)
一族も郎党もいず刈り終わる
(いちぞくもろうとうもいずかりおわる)
稲刈りてデータを入れる月明かり
(いねかりてでーたをいれるつきあかり)
9/5mon
カタロニア 野の鳥を見る 善衛の忌
(かたろにあ ののとりをみる よしえのき)
※少し左派がかった元日本ペンクラブ会長堀田
善衛が亡くなったのが1998年9月5日。
スペインアスツゥリアスとカタロニアに合わ
せて5年近く住んだ作家である。著作も多い。
小生がスペインオタクになった機縁である。
野の鳥はピースピースと鳴く、とカザルス。
9/4sun
飴色の ぶどう袋に 妻方々
(あめいろの ぶどうふくろに つまほうぼう)
※甘くはありませんがとお裾分けするが、おい
しかったと言ってくれる人もいる。高級品が
多い最近では昔のぶどうの味でなつかしかっ
たという感想かな?
9/3sat
剃りたての 頬を撫でつつ 桐一葉
(そりたての ほほをなでつつ きりひとは)
※例年より低い気温が続く。台風は沖縄県先島
近辺で停滞の後東北に動き始めた。
朝に切る ぶどう三房を 仏前に
(あさにきる ぶどうみふさを ぶつぜんに)
9/2fri
近道の 秋灯の家 時計鳴る
(ちかみちの しゅうとうのいえ とけいなる)
※やっぱり昭和か?ちょっと古めの時計の音が
聞こえた。窓に映る灯りも古めの暖色系だし、
新しい家にしてはやや奇々怪々。
9/1thu
度を重ね 二百十日の 俄雨
(どをかさね にひゃくとおかの にわかあめ)
小椋鳥 夕立家に 帰りかね
(こむくどり ゆうだちいえに かえりかね)
※ムクドリは常に群れで行動するのに、突然の
激しい雨に打たれ、一羽が木の根元に取り残
された。いつもは群れの旺盛な動きに舌打ち
することもあるが今日の姿はほんの小鳥だ。
ダクタク句集2022年(令和4年)8月 [ダクタク2022年8月]
8/30tue
秋の風来て花痩せしサルスベリ
(あきのかぜきてはなやせしさるすべり)
露草や 初お目見えの 庭の朝
(つゆくさや はつおめみえの にわのあさ)
※曇り日が続いたのち昨日今日は一段と涼しい
日。夜の気温が20度を切ると涼しいから一
気に寒いへ悲鳴に変わる。庭の草の中に露草
発見! 25年来、我が庭で初めて。
8/28sun
秋と聞き 山門今日は 中に入る
(あきときき さんもんきょうは なかにいる)
眼鏡かえ スマホで秋の 季語一つ
(めがねかえ すまほであきの きごひとつ)
8/27sat
夏豪雨 気圧配置の 骨身まで
(なつごうう きあつはいちの ほねみまで)
※秋田、山形、新潟を中心に、この夏豪雨の被
害が広がった。気圧配置の固定化と前線の居
座り、線状降水帯の連続発生等によるものだ
った。一週間ほど前からの事前の予報の通り
であったが、それでも被害は甚大なものに。
8/25thu
眠らねば 班増えるとて 晩夏かな
(ねむらねば はんふえるとて ばんかかな)
譲られし 苗のトマトの 味野生
(ゆずられし なえのとまとの あじやせい)
8/24wed
少年の目に父祖の地よ盆地秋
(しょうねんのめにふそのちよぼんちあき)
※8/23は白虎隊の日、自刃した日。その場所飯
盛山からは砲煙にかすむ城下だけでなく会津
盆地の初秋の景色が広く見えただろう。命全
うすればもっともっと馴染んだはずの故郷の
景色が。
8/22mon
朗読の声朝に聞く邦子の忌
(ろうどくのこえあさにきくくにこのき)
※8/22は向田邦子忌日。YouTubeの朗読物は特に
この1,2年で優良コンテンツが激増してい
る。中でも人気を博しているのは、明治以降
の大作家連の短編と向田邦子のドラマものだ。
わかるような気がする。
8/21sun
三代の 球児いよよの ガッツあり
(さんだいの きゅうじいよよの がっつあり)
※夏の甲子園も決勝を残すのみ。東北勢同士の
決勝を夢見たが、まあ仙台育英の優勝が実現
すれば大殊勲だ。
8/19fri
つかまらせ 花緒をすげる 秋めく日
(つかまらせ はなおをすげる あきめくひ)
※当地はからっとした天気。こんな日はあらぬ
ことを幻のように想像してみたい。下駄ばき
で鼻緒が切れて困っていた少女がいた・・・。
8/18thu
対策の 水を飲みつつ 白槿
(たいさくの みずをのみつつ しろむくげ)
溶接工 腕さえわたる 盆の明け
(ようせつこう うでさえわたる ぼんのあけ)
※60歳を超えて所属した会社で一緒だった人
と偶然会った。何年ぶりか? 溶接工のキャ
ップを務めていた名人、その腕の変わらぬ自
信はほんの2,3言でわかる。
8/17wed
葡萄一房光を貯めて下がりおり
(ぶどうひとふさひかりをためてさがりおり)
※不順な気候の中で、我が家の名もないぶどう
は大奮闘。例年より遅れ気味だがより多くの
房をつけている。緑色の固い粒々が次第に飴
色に、光を通すようになってきた。早いヤツ
をつまみ食い出来るのがこの時期の無上の喜
び。
8/16tue
学徒兵命全うすれば夏
(がくとへいいのちまっとうすればなつ)
※学徒の繰上げ卒業にまつわる事実が新たにわ
かったことを伝える特別番組を見た。決然と
出陣式で雨中行進をした人たちの中で、なお
多くの若人が戦地に行かなくても済んだこと
を知る。
8/15mon
逢ひとふて 驟雨疾走 孫産まる
(あいとうて しゅううしっそう まごうまる)
※姪夫婦に待望の初孫ができた。日頃冷静な二
人だが、狂喜して病院に向かう。
8/14sun
嵐去る 盆の街角 見渡しぬ
(あらしさる ぼんのまちかど みわたしぬ)
久闊の 言葉探して 盂蘭盆会
(きゅうかつの ことばさがして うらぼんえ)
年寄りて 盆にことなし 風の音
(としよりて ぼんにことなし かぜのおと)
8/13sat
盂蘭盆会 レーダーで追う 故郷の雲
(うらぼんえ れーだーでおう くにのくも)
※スマホでPCで現在地以外の地域の天気、雨
雲レーダー、災害可能性や警報・注意報のチ
ェックが容易にかつ即座に出来る。
必要があればそのまま即電話でコンタクトを
とる、地域のメディアにアクセスをすること
も可能だ。通信とデータ送受の革新は急速。
しかし自然の猛威を前にして、出来ることは
限られる。これは変わらない。
8/12fri
調律の 待たれる頭 炎天下
(ちょうりつの またれるあたま えんてんか)
起動時の 膝の重さよ 秋立ちぬ
(きどうじのひざのおもさよあきたちぬ)
※朝起きがけの膝の重さは老化速報。一年後の
歩行能力を知ることが出来る。そう思う。ほ
んの5~10歩で重さは消え、快調になるの
だが。PCのように再起動で問題解決、とは
いかない。立秋、しばらくは残暑、その後は
確実に秋、着実に老化。
8/11thu
高山病 肩の小屋にて 米を炊く
(こうざんびょう かたのこやにて こめをたく)
※若い頃4月に連休を待ちきれず、登山に出か
けた。槍沢小屋を朝に出て槍ヶ岳を目指すシ
ンプルな計画。ただ積雪は多く、ジグザグの
登りが最後まで直登となる。登りの残り1/4
くらいのところでガタンと体力が落ちた。
先に着いて小屋で寛ぐ人の姿がはっきり見え
るところだった。そこからなんと2時間強か
かったのだ。1時間半はその場所でストップ。
動けない。好天で良かった。50年前のこと。
今では最高の思い出。今日は「山の日」とか。
8/10tue
眼前は 水被る稲 晩夏光
(がんぜんは みずかぶるいね ばんかこう)
※東北北部に豪雨被害が続いている。当地は暑
さ続きで、盆明けの稲の刈入れを前にしてい
る。とんでもない違い。
8/8mon
小型船 夏のくらしの 音がもれ
(こがたせん なつのくらしの おとがもれ)
※くらしの音と問われたら、NHKラジオの正午
過ぎ「昼のいこい」のテーマと答えるかもし
れない。木更津港に係留している小型鋼船の
一つからこれが聞こえた時、ジーーンときま
したね。
8/7sun
白球の清涼と女子のブラスよ
(はっきゅうのせいりょうとじょしのぶらすよ)
※夏の甲子園開幕。観客、応援団を入れての試
合は一層熱が入る。それにしても応援席は女
性上位だ。チェアガールにブラスバンド、女
子は皆余裕たっぷり、笑顔がこぼれている。
お付き合い参加ではない。
がしんたれ強豪以外よ暴れたれ
(がしんたれきょうごういがいよあばれたれ)
※大阪桐蔭、何馬身か空いて智弁和歌山等々下
馬評はどれも関西勢優位のよう。
8/6sat
原爆忌 乞ひ願ふこと 今多く
(げんばくき こいねがうこと いまおおく)
母削る 鉛筆が誇り 原爆忌
(ははけずる えんぴつがほこり げんばくき)
※今でも当時母が毎晩削ってくれた鉛筆のカッコ
良さは周囲を寄せ付けなかったと思っている。
ちなみに、幼少時代の私は暴れたら手が付けら
れないと匙を投げられた挙句、家の中で「原爆」
と呼ばれていた。
8/5fri
ホーン越し やや声低く 大暑かな
(ほーんごし ややこえひくく たいしょかな)
上向いて ヴィーナス夏の かんばせを
(うえむいて びーなすなつの かんばせを)
揺らぐごと 雲海に浮く 肩の小屋
(ゆらぐごと うんかいにうく かたのこや)
8/4thu
外人の 教師が走る 夏の朝
(がいじんの きょうしがはしる なつのあさ)
※オーストラリア出身の幼稚園の外人先生が走
る。いつも遅れてくるようだ。おはようござ
いますと挨拶する表情はいつも照れている。
大きい幼稚園は差別化の目玉として英語教育
を掲げる。ネーティヴの先生がいますよとい
うわけだ。しかしそれ以外の仕事もなんでも
やらされるみたい。園児を乗せたバスが着く
と、にこやかにお迎えする。到着園児の顔、
人数、バスの座席点検・・・朝から大変だ。
8/3wed
潮干狩り 一坪ほどが わが漁場
(しおひがり ひとつぼほどが わがりょうば)
※海上は風通し万全だけれど、アサリを求めて
さまようと予期せぬ密にもなりかねない。そ
れで「動き回らないで」とスピーカーが。マ
スク着用の注意はないが、しっかり着けてい
る人が多い。もう今年は終わり、死なないで。
8/2tue
ほろ酔いの 教師は黒く 大夕焼
(ほろよいの きょうしはくろく おおゆやけ)
※部活の指導を終えた教師は自転車でいち早く
ご帰還。近くの一杯飲み屋に駆け込む。真っ
赤な顔で家に向かう頃、生徒たちに会う。そ
して「おう、気をつけて帰れよ」と。自転車
はすでにふらふら・・・。世の中がすべて今
より寛容な時代。
8/1mon
雨音は 夢か幻聴 蝉しぐれ
(あまおとは ゆめかげんちょう せみしぐれ)
※深夜確かに雨音を聴いた。朝になってあれは
雨でなかったとがっかりすることのないよう
に、寝床でしっかり耳をそばだてた。しかし
朝がっかりした。余計落胆した。降雨のシル
シは露ほどもない。
今朝はほんのちょっとだけど涼しいが、これ
ぞ降雨のシルシでは? 家人はすげなく否定。
降雨なしが決定。
これからは寝床から起きて立って外を眺めて
確認しようということになった。もっとも小
生は少年時代に寝ぼけ癖の輝かしい戦歴があ
るから、起き上がっての確認もそこまで含め
て睡眠中の出来事となるかも。
認知症の忍び寄っているせいなのか、熱中症
近辺の暑さのせいなのか?
秋の風来て花痩せしサルスベリ
(あきのかぜきてはなやせしさるすべり)
露草や 初お目見えの 庭の朝
(つゆくさや はつおめみえの にわのあさ)
※曇り日が続いたのち昨日今日は一段と涼しい
日。夜の気温が20度を切ると涼しいから一
気に寒いへ悲鳴に変わる。庭の草の中に露草
発見! 25年来、我が庭で初めて。
8/28sun
秋と聞き 山門今日は 中に入る
(あきときき さんもんきょうは なかにいる)
眼鏡かえ スマホで秋の 季語一つ
(めがねかえ すまほであきの きごひとつ)
8/27sat
夏豪雨 気圧配置の 骨身まで
(なつごうう きあつはいちの ほねみまで)
※秋田、山形、新潟を中心に、この夏豪雨の被
害が広がった。気圧配置の固定化と前線の居
座り、線状降水帯の連続発生等によるものだ
った。一週間ほど前からの事前の予報の通り
であったが、それでも被害は甚大なものに。
8/25thu
眠らねば 班増えるとて 晩夏かな
(ねむらねば はんふえるとて ばんかかな)
譲られし 苗のトマトの 味野生
(ゆずられし なえのとまとの あじやせい)
8/24wed
少年の目に父祖の地よ盆地秋
(しょうねんのめにふそのちよぼんちあき)
※8/23は白虎隊の日、自刃した日。その場所飯
盛山からは砲煙にかすむ城下だけでなく会津
盆地の初秋の景色が広く見えただろう。命全
うすればもっともっと馴染んだはずの故郷の
景色が。
8/22mon
朗読の声朝に聞く邦子の忌
(ろうどくのこえあさにきくくにこのき)
※8/22は向田邦子忌日。YouTubeの朗読物は特に
この1,2年で優良コンテンツが激増してい
る。中でも人気を博しているのは、明治以降
の大作家連の短編と向田邦子のドラマものだ。
わかるような気がする。
8/21sun
三代の 球児いよよの ガッツあり
(さんだいの きゅうじいよよの がっつあり)
※夏の甲子園も決勝を残すのみ。東北勢同士の
決勝を夢見たが、まあ仙台育英の優勝が実現
すれば大殊勲だ。
8/19fri
つかまらせ 花緒をすげる 秋めく日
(つかまらせ はなおをすげる あきめくひ)
※当地はからっとした天気。こんな日はあらぬ
ことを幻のように想像してみたい。下駄ばき
で鼻緒が切れて困っていた少女がいた・・・。
8/18thu
対策の 水を飲みつつ 白槿
(たいさくの みずをのみつつ しろむくげ)
溶接工 腕さえわたる 盆の明け
(ようせつこう うでさえわたる ぼんのあけ)
※60歳を超えて所属した会社で一緒だった人
と偶然会った。何年ぶりか? 溶接工のキャ
ップを務めていた名人、その腕の変わらぬ自
信はほんの2,3言でわかる。
8/17wed
葡萄一房光を貯めて下がりおり
(ぶどうひとふさひかりをためてさがりおり)
※不順な気候の中で、我が家の名もないぶどう
は大奮闘。例年より遅れ気味だがより多くの
房をつけている。緑色の固い粒々が次第に飴
色に、光を通すようになってきた。早いヤツ
をつまみ食い出来るのがこの時期の無上の喜
び。
8/16tue
学徒兵命全うすれば夏
(がくとへいいのちまっとうすればなつ)
※学徒の繰上げ卒業にまつわる事実が新たにわ
かったことを伝える特別番組を見た。決然と
出陣式で雨中行進をした人たちの中で、なお
多くの若人が戦地に行かなくても済んだこと
を知る。
8/15mon
逢ひとふて 驟雨疾走 孫産まる
(あいとうて しゅううしっそう まごうまる)
※姪夫婦に待望の初孫ができた。日頃冷静な二
人だが、狂喜して病院に向かう。
8/14sun
嵐去る 盆の街角 見渡しぬ
(あらしさる ぼんのまちかど みわたしぬ)
久闊の 言葉探して 盂蘭盆会
(きゅうかつの ことばさがして うらぼんえ)
年寄りて 盆にことなし 風の音
(としよりて ぼんにことなし かぜのおと)
8/13sat
盂蘭盆会 レーダーで追う 故郷の雲
(うらぼんえ れーだーでおう くにのくも)
※スマホでPCで現在地以外の地域の天気、雨
雲レーダー、災害可能性や警報・注意報のチ
ェックが容易にかつ即座に出来る。
必要があればそのまま即電話でコンタクトを
とる、地域のメディアにアクセスをすること
も可能だ。通信とデータ送受の革新は急速。
しかし自然の猛威を前にして、出来ることは
限られる。これは変わらない。
8/12fri
調律の 待たれる頭 炎天下
(ちょうりつの またれるあたま えんてんか)
起動時の 膝の重さよ 秋立ちぬ
(きどうじのひざのおもさよあきたちぬ)
※朝起きがけの膝の重さは老化速報。一年後の
歩行能力を知ることが出来る。そう思う。ほ
んの5~10歩で重さは消え、快調になるの
だが。PCのように再起動で問題解決、とは
いかない。立秋、しばらくは残暑、その後は
確実に秋、着実に老化。
8/11thu
高山病 肩の小屋にて 米を炊く
(こうざんびょう かたのこやにて こめをたく)
※若い頃4月に連休を待ちきれず、登山に出か
けた。槍沢小屋を朝に出て槍ヶ岳を目指すシ
ンプルな計画。ただ積雪は多く、ジグザグの
登りが最後まで直登となる。登りの残り1/4
くらいのところでガタンと体力が落ちた。
先に着いて小屋で寛ぐ人の姿がはっきり見え
るところだった。そこからなんと2時間強か
かったのだ。1時間半はその場所でストップ。
動けない。好天で良かった。50年前のこと。
今では最高の思い出。今日は「山の日」とか。
8/10tue
眼前は 水被る稲 晩夏光
(がんぜんは みずかぶるいね ばんかこう)
※東北北部に豪雨被害が続いている。当地は暑
さ続きで、盆明けの稲の刈入れを前にしてい
る。とんでもない違い。
8/8mon
小型船 夏のくらしの 音がもれ
(こがたせん なつのくらしの おとがもれ)
※くらしの音と問われたら、NHKラジオの正午
過ぎ「昼のいこい」のテーマと答えるかもし
れない。木更津港に係留している小型鋼船の
一つからこれが聞こえた時、ジーーンときま
したね。
8/7sun
白球の清涼と女子のブラスよ
(はっきゅうのせいりょうとじょしのぶらすよ)
※夏の甲子園開幕。観客、応援団を入れての試
合は一層熱が入る。それにしても応援席は女
性上位だ。チェアガールにブラスバンド、女
子は皆余裕たっぷり、笑顔がこぼれている。
お付き合い参加ではない。
がしんたれ強豪以外よ暴れたれ
(がしんたれきょうごういがいよあばれたれ)
※大阪桐蔭、何馬身か空いて智弁和歌山等々下
馬評はどれも関西勢優位のよう。
8/6sat
原爆忌 乞ひ願ふこと 今多く
(げんばくき こいねがうこと いまおおく)
母削る 鉛筆が誇り 原爆忌
(ははけずる えんぴつがほこり げんばくき)
※今でも当時母が毎晩削ってくれた鉛筆のカッコ
良さは周囲を寄せ付けなかったと思っている。
ちなみに、幼少時代の私は暴れたら手が付けら
れないと匙を投げられた挙句、家の中で「原爆」
と呼ばれていた。
8/5fri
ホーン越し やや声低く 大暑かな
(ほーんごし ややこえひくく たいしょかな)
上向いて ヴィーナス夏の かんばせを
(うえむいて びーなすなつの かんばせを)
揺らぐごと 雲海に浮く 肩の小屋
(ゆらぐごと うんかいにうく かたのこや)
8/4thu
外人の 教師が走る 夏の朝
(がいじんの きょうしがはしる なつのあさ)
※オーストラリア出身の幼稚園の外人先生が走
る。いつも遅れてくるようだ。おはようござ
いますと挨拶する表情はいつも照れている。
大きい幼稚園は差別化の目玉として英語教育
を掲げる。ネーティヴの先生がいますよとい
うわけだ。しかしそれ以外の仕事もなんでも
やらされるみたい。園児を乗せたバスが着く
と、にこやかにお迎えする。到着園児の顔、
人数、バスの座席点検・・・朝から大変だ。
8/3wed
潮干狩り 一坪ほどが わが漁場
(しおひがり ひとつぼほどが わがりょうば)
※海上は風通し万全だけれど、アサリを求めて
さまようと予期せぬ密にもなりかねない。そ
れで「動き回らないで」とスピーカーが。マ
スク着用の注意はないが、しっかり着けてい
る人が多い。もう今年は終わり、死なないで。
8/2tue
ほろ酔いの 教師は黒く 大夕焼
(ほろよいの きょうしはくろく おおゆやけ)
※部活の指導を終えた教師は自転車でいち早く
ご帰還。近くの一杯飲み屋に駆け込む。真っ
赤な顔で家に向かう頃、生徒たちに会う。そ
して「おう、気をつけて帰れよ」と。自転車
はすでにふらふら・・・。世の中がすべて今
より寛容な時代。
8/1mon
雨音は 夢か幻聴 蝉しぐれ
(あまおとは ゆめかげんちょう せみしぐれ)
※深夜確かに雨音を聴いた。朝になってあれは
雨でなかったとがっかりすることのないよう
に、寝床でしっかり耳をそばだてた。しかし
朝がっかりした。余計落胆した。降雨のシル
シは露ほどもない。
今朝はほんのちょっとだけど涼しいが、これ
ぞ降雨のシルシでは? 家人はすげなく否定。
降雨なしが決定。
これからは寝床から起きて立って外を眺めて
確認しようということになった。もっとも小
生は少年時代に寝ぼけ癖の輝かしい戦歴があ
るから、起き上がっての確認もそこまで含め
て睡眠中の出来事となるかも。
認知症の忍び寄っているせいなのか、熱中症
近辺の暑さのせいなのか?
ダクタク句集2022年(令和4年)7月 [ダクタク2022年7月]
7/31sun
風鈴や 南部湯宿の 闇の濃さ
(ふうりんや なんぶゆやどの やみのこさ)
※花巻市郊外の花巻温泉郷台温泉に宿泊したこ
とがある。いい湯いい宿だった。遅くついた
のに印象深いのは夏の闇の深さと透明な湯の
せいか。
7/30sat
兜虫 遅き経済の 良さ知らず
(かぶとむし おそきけいざいの よさしらず)
※この国はかつて高い経済成長を実現し、効率
第一を叫んで、その果実を満喫した。その頃、
個人商店は消え失せ、全国の街々が画一化し
ていった。背後で家庭が地域が変質した。
画一化は街だけではない。人間だって(後の
言葉で言えば)クローンのようなサラリーマ
ンや労働者が自分の生きがいとして、その路
線に沿い、成長に貢献した。絶頂時には
「21世紀は日本の世紀」とまで。
ところが今、「失いし20~30年」とかを
耳に痛いほど聞いている。聞いて久しい。
「経済成長は神話だよ、続かない」「成長の
代わりに多くを失っているんだよ。今良く考
えなければ手遅れになる・・・」50年以上
前にアンチ高度成長を言った人はいっぱいい
たね、そう言えば。ためにする人も多かった
が、深刻な正論もあった。
7/29fri
煙草屋の 解体終わり 晩夏なる
(たばこやの かいたいおわり ばんかなる)
※店先販売はとうの昔にやめ、長いこと自販機
がならんでいた。不思議なもので店も住まい
も一緒に解体されると、かなりのおばあさん
が日がな店番をしていたことが思い出される。
7/28thu
夏号の 稿を渡せり 白き道
(なつごうの こうをわたせり しろきみち)
※一回きりと代理を頼まれた。夏を迎えるエッセ
イなんでも、という。地域のミニコミ誌みたい
なもの。安請け合いした直後に梅雨が明け、真
夏の暑さが襲ってきた。「なんでも」を頼りに
やっとこ駄文を弄した。どうせ誰も見ない、と
思ったことを後悔した。
7/27wed
端居やめ 犬の背たんと 流しけり
(はしいやめ いぬのせたんと ながしけり)
冷麺や 腰にさしたる 扇子かな
(れいめんや こしにさしたる せんすかな)
7/25mon
夏稽古 代役の子に 黒子あり
(なつげいこ だいやくのこに ほくろあり)
夏稽古 来ぬ子の役を 全部やり
(なつげいこ こぬこのやくを ぜんぶやり)
※地域で演劇の指導をしている人の稽古場を端
で見せてもらった。こんな人がいることが大
変貴重に思えるが、やはりコロナ禍のせいで、
せっかくの夏休みの強化練習も参加者が思う
に任せないとのことだ。
7/23sat
蝉時雨「巴里は燃えているか」聞こゆ
(せみしぐれ ぱりはもえているかきこゆ)
百日紅の赤「巴里は燃えているか」
(さるすべりのあか ぱりはもえているか)
※NHKスペシャル「映像の世紀」シリーズの通
しのテーマ。作曲した加古隆のインタビュー
番組を聴いた。やっぱり憎いねェ。
7/22fri
百日紅 警報の声 流れけり
(さるすべり けいほうのこえ ながれけり)
※当家の一本の桃の木。小粒とは言え実は多く
たわわだが、今年は虫の被害が多かった。プ
ラムのカイアガラムシに気を取られノーケア
だった。
やっと不順な天候の合間を縫って収穫し終え
た。さて来年に向けてはどうしようか? 思
案を始めている。
7/20wed
ああいえばこういう夏の国訛り
(ああいえばこういうなつのくになまり)
※Lineでのテレビ電話、これが少し前だったら、
「用もないのに顔はいらない」とか言って一
方的に敬遠したろうに、この齢になると、晩
くやってきた、この便利な仕組みに結構素直
になじんでいる。年齢による羞恥心の欠如?
いやそんなことをいうほど衒いもない。
7/19tue
夏時雨桃の実落ちる音にせく
(なつしぐれもものみおちるおとにせく)
※不順な天候が続く。担当の雑草刈りも果樹の
世話も意に沿っては進まない。やっぱり九州
山口地方に梅雨末期に似た豪雨の被害が心配
になる。
7/18mon
祇園会や 小雨に白の 角隠し
(ぎおんえや こさめにしろの つのかくし)
※故郷の近く会津田島町の祇園会のメインは花
嫁行列。今年はどうなるのだろうか? 近年
は嫁のナリテが町の内外から押し寄せるとい
う。7月16日は1月16日とともに、昔の
言葉で「藪入り」、奉公人や嫁入りした娘が
実家に里帰りした日だ。今や完全な死語。
こちらの花嫁はその日のうちに帰るのだろう。
7/17sun
宵山に 泣いたらあかん 稚児の声
(よいやまに ないたらあかん ちごのこえ)
※久しぶりの京都祇園祭のフル日程が無事に進
むことを切に祈る。NHKドラマ『京都人の密
かな愉しみ』はええなァ。直近は「Blue修業
中 門出の桜」かな。源孝志ディレクターに
よるもの。くせはあるものの、ええ腕しては
るわァ。
7/16sat
夏の雨 頼朝が行く 国境
(なつのあめ よりともがいく くにざかい)
※近くに鎌倉街道という古道がある。随分説明
を受け、フィールドワークにも出かけたが、
仔細の記憶はゼロ。ただ南の安房の国から上
総の国に、頼朝が土地の豪族、兵を募りなが
ら北上したのはテレビの通りらしい。
7/15fri
ラケット背に 女剣士が 夏椿
(らけっとせに おんなけんしが なつつばき)
※小雨の中を自転車で行く姿は凛々しい。コー
ト使えまいに、と思うが今は体育館で大勢で
乱打練習が出来るらしい。
7/13wed
短夜や ひそかに話す 人通る
(みじかよ やひそかにはなす ひととおる)
夏帽子 カフェを待つ間の 立ち向かい
(なつぼうし かふぇをまつまの たちむかい)
※カフェテラスという屋外の店が大都市で増え
ている。最近は地方都市でも狭い舗道を占拠
してテラスと称しているのが多い。ましてや
そこの空くのを待っている御婦人連がある。
7/11mon
命がけ 炎暑の選挙 いかと見る
(いのちがけ えんしょのせんきょ いかとみる)
※参議院選挙が終わった。普通の人が普通に与
えられる選挙権、それは勝ち取った権利。被
選挙数の比較優位によってのみ代議員となれ
る。この価値をどうみる、どうみるべきか?
これのない国々の人々よ。
7/10sun
短夜に口の遅さを嘆じけり
(みじかよにくちのおそさをたんじけり)
※加齢とともに口が重くなる、口数が減る。語
彙も減る。自分だけはそこまでにはならない
と、根拠なしの自信もあるにはあったのだが、
そんな希望もあえなくコロナ禍によって潰え
去った。
7/9sat
涼しけり政治の海に笑み消えぬ
(すずしけりせいじのうみにえみきえぬ)
長州と江戸の間で夏憤死
(ちょうしゅうとえどのあいだでなつふんし)
※元首相の街頭演説中の死。毀誉の混じるとこ
ろはあったが、圧倒的な天性とそれ故のゆと
りとユーモアを備えた政治家。合掌。
7/8fri
若妻が 夫の腕ひく 夏木立
(わかづまが おっとのうでひく なつこだち)
杖を持て 実を引き寄せて 袋掛け
(つえをもて みをひきよせて ふくろがけ)
7/7thu
築地塀 驟雨のあとを 見せてあり
(ついじべい しゅううのあとを みせてあり)
※文化財に指定されている江戸時代の築地。荒
い素地がむき出しになっているから年々の雨
等による浸食が心配だ。とは言え、俄雨の後
の箇所を指でエグルように強く触れてみた。
大丈夫だ。指にはなにもついてこない。
7/6wed
浮雲の 行先知らず 芙美子の忌
(うきぐもの いきさきしらず ふみこのき)
※林芙美子の「浮雲」をネットの朗読で全編聞
いた。全部で8時間余り。戦争と男と女の物
語。名匠成瀬巳喜男、高峰秀子、森雅之主演
の同名の映画も鮮明に覚えているが、ネット
朗読版も気に入った。忍耐あっての「聴破」
だが、この長い時間が戦中戦後の時間の経過
と変遷を味わうにはよりフィットするのかも
知れない。芙美子忌は6月28日。
7/4mon
暁に僅かに僅かなれど喜雨
(あかつきにわずかにわずかなれどきう)
※台風の影響で暑さをもたらした気圧配置が崩
れ、雨模様の不安定な天気になった。文字通
りの「喜雨」。西日本の豪雨の気配がないで
もないが、当地当家の野菜、果樹にとっては
喜雨だ。人間にとっても。
7/3sun
なお強き 膝をさすりて 半夏かな
(なおつよき ひざをさすりて はんげかな)
7/2sat
半夏生 犬ともに我れ 脚強く
(はんげしょう いぬともにわれ あしつよし)
※山登りなどには長くネックになっていた右膝
が、この十年近く朝夕の平地歩行には悲鳴を
あげず、持ちこたえている。幸い今に至って
も平地に限れば2、3時間連続でも行ける。
これも、臆病に無理を避けたこと、そして我
が家の犬のお蔭だ。
7/1fri
街ゆがみ 夏の絵描くは ゆがむまま
(まちゆがみ なつのえかくは ゆがむまま)
※都心の馴染みの通りもしばらく見ぬ間に変貌
し、ニョキニョキと高層マンションとやらが
両側に。不自然に見上げてやっと変化を知る。
猛暑がその歪みを激しく助長する。
風鈴や 南部湯宿の 闇の濃さ
(ふうりんや なんぶゆやどの やみのこさ)
※花巻市郊外の花巻温泉郷台温泉に宿泊したこ
とがある。いい湯いい宿だった。遅くついた
のに印象深いのは夏の闇の深さと透明な湯の
せいか。
7/30sat
兜虫 遅き経済の 良さ知らず
(かぶとむし おそきけいざいの よさしらず)
※この国はかつて高い経済成長を実現し、効率
第一を叫んで、その果実を満喫した。その頃、
個人商店は消え失せ、全国の街々が画一化し
ていった。背後で家庭が地域が変質した。
画一化は街だけではない。人間だって(後の
言葉で言えば)クローンのようなサラリーマ
ンや労働者が自分の生きがいとして、その路
線に沿い、成長に貢献した。絶頂時には
「21世紀は日本の世紀」とまで。
ところが今、「失いし20~30年」とかを
耳に痛いほど聞いている。聞いて久しい。
「経済成長は神話だよ、続かない」「成長の
代わりに多くを失っているんだよ。今良く考
えなければ手遅れになる・・・」50年以上
前にアンチ高度成長を言った人はいっぱいい
たね、そう言えば。ためにする人も多かった
が、深刻な正論もあった。
7/29fri
煙草屋の 解体終わり 晩夏なる
(たばこやの かいたいおわり ばんかなる)
※店先販売はとうの昔にやめ、長いこと自販機
がならんでいた。不思議なもので店も住まい
も一緒に解体されると、かなりのおばあさん
が日がな店番をしていたことが思い出される。
7/28thu
夏号の 稿を渡せり 白き道
(なつごうの こうをわたせり しろきみち)
※一回きりと代理を頼まれた。夏を迎えるエッセ
イなんでも、という。地域のミニコミ誌みたい
なもの。安請け合いした直後に梅雨が明け、真
夏の暑さが襲ってきた。「なんでも」を頼りに
やっとこ駄文を弄した。どうせ誰も見ない、と
思ったことを後悔した。
7/27wed
端居やめ 犬の背たんと 流しけり
(はしいやめ いぬのせたんと ながしけり)
冷麺や 腰にさしたる 扇子かな
(れいめんや こしにさしたる せんすかな)
7/25mon
夏稽古 代役の子に 黒子あり
(なつげいこ だいやくのこに ほくろあり)
夏稽古 来ぬ子の役を 全部やり
(なつげいこ こぬこのやくを ぜんぶやり)
※地域で演劇の指導をしている人の稽古場を端
で見せてもらった。こんな人がいることが大
変貴重に思えるが、やはりコロナ禍のせいで、
せっかくの夏休みの強化練習も参加者が思う
に任せないとのことだ。
7/23sat
蝉時雨「巴里は燃えているか」聞こゆ
(せみしぐれ ぱりはもえているかきこゆ)
百日紅の赤「巴里は燃えているか」
(さるすべりのあか ぱりはもえているか)
※NHKスペシャル「映像の世紀」シリーズの通
しのテーマ。作曲した加古隆のインタビュー
番組を聴いた。やっぱり憎いねェ。
7/22fri
百日紅 警報の声 流れけり
(さるすべり けいほうのこえ ながれけり)
※当家の一本の桃の木。小粒とは言え実は多く
たわわだが、今年は虫の被害が多かった。プ
ラムのカイアガラムシに気を取られノーケア
だった。
やっと不順な天候の合間を縫って収穫し終え
た。さて来年に向けてはどうしようか? 思
案を始めている。
7/20wed
ああいえばこういう夏の国訛り
(ああいえばこういうなつのくになまり)
※Lineでのテレビ電話、これが少し前だったら、
「用もないのに顔はいらない」とか言って一
方的に敬遠したろうに、この齢になると、晩
くやってきた、この便利な仕組みに結構素直
になじんでいる。年齢による羞恥心の欠如?
いやそんなことをいうほど衒いもない。
7/19tue
夏時雨桃の実落ちる音にせく
(なつしぐれもものみおちるおとにせく)
※不順な天候が続く。担当の雑草刈りも果樹の
世話も意に沿っては進まない。やっぱり九州
山口地方に梅雨末期に似た豪雨の被害が心配
になる。
7/18mon
祇園会や 小雨に白の 角隠し
(ぎおんえや こさめにしろの つのかくし)
※故郷の近く会津田島町の祇園会のメインは花
嫁行列。今年はどうなるのだろうか? 近年
は嫁のナリテが町の内外から押し寄せるとい
う。7月16日は1月16日とともに、昔の
言葉で「藪入り」、奉公人や嫁入りした娘が
実家に里帰りした日だ。今や完全な死語。
こちらの花嫁はその日のうちに帰るのだろう。
7/17sun
宵山に 泣いたらあかん 稚児の声
(よいやまに ないたらあかん ちごのこえ)
※久しぶりの京都祇園祭のフル日程が無事に進
むことを切に祈る。NHKドラマ『京都人の密
かな愉しみ』はええなァ。直近は「Blue修業
中 門出の桜」かな。源孝志ディレクターに
よるもの。くせはあるものの、ええ腕しては
るわァ。
7/16sat
夏の雨 頼朝が行く 国境
(なつのあめ よりともがいく くにざかい)
※近くに鎌倉街道という古道がある。随分説明
を受け、フィールドワークにも出かけたが、
仔細の記憶はゼロ。ただ南の安房の国から上
総の国に、頼朝が土地の豪族、兵を募りなが
ら北上したのはテレビの通りらしい。
7/15fri
ラケット背に 女剣士が 夏椿
(らけっとせに おんなけんしが なつつばき)
※小雨の中を自転車で行く姿は凛々しい。コー
ト使えまいに、と思うが今は体育館で大勢で
乱打練習が出来るらしい。
7/13wed
短夜や ひそかに話す 人通る
(みじかよ やひそかにはなす ひととおる)
夏帽子 カフェを待つ間の 立ち向かい
(なつぼうし かふぇをまつまの たちむかい)
※カフェテラスという屋外の店が大都市で増え
ている。最近は地方都市でも狭い舗道を占拠
してテラスと称しているのが多い。ましてや
そこの空くのを待っている御婦人連がある。
7/11mon
命がけ 炎暑の選挙 いかと見る
(いのちがけ えんしょのせんきょ いかとみる)
※参議院選挙が終わった。普通の人が普通に与
えられる選挙権、それは勝ち取った権利。被
選挙数の比較優位によってのみ代議員となれ
る。この価値をどうみる、どうみるべきか?
これのない国々の人々よ。
7/10sun
短夜に口の遅さを嘆じけり
(みじかよにくちのおそさをたんじけり)
※加齢とともに口が重くなる、口数が減る。語
彙も減る。自分だけはそこまでにはならない
と、根拠なしの自信もあるにはあったのだが、
そんな希望もあえなくコロナ禍によって潰え
去った。
7/9sat
涼しけり政治の海に笑み消えぬ
(すずしけりせいじのうみにえみきえぬ)
長州と江戸の間で夏憤死
(ちょうしゅうとえどのあいだでなつふんし)
※元首相の街頭演説中の死。毀誉の混じるとこ
ろはあったが、圧倒的な天性とそれ故のゆと
りとユーモアを備えた政治家。合掌。
7/8fri
若妻が 夫の腕ひく 夏木立
(わかづまが おっとのうでひく なつこだち)
杖を持て 実を引き寄せて 袋掛け
(つえをもて みをひきよせて ふくろがけ)
7/7thu
築地塀 驟雨のあとを 見せてあり
(ついじべい しゅううのあとを みせてあり)
※文化財に指定されている江戸時代の築地。荒
い素地がむき出しになっているから年々の雨
等による浸食が心配だ。とは言え、俄雨の後
の箇所を指でエグルように強く触れてみた。
大丈夫だ。指にはなにもついてこない。
7/6wed
浮雲の 行先知らず 芙美子の忌
(うきぐもの いきさきしらず ふみこのき)
※林芙美子の「浮雲」をネットの朗読で全編聞
いた。全部で8時間余り。戦争と男と女の物
語。名匠成瀬巳喜男、高峰秀子、森雅之主演
の同名の映画も鮮明に覚えているが、ネット
朗読版も気に入った。忍耐あっての「聴破」
だが、この長い時間が戦中戦後の時間の経過
と変遷を味わうにはよりフィットするのかも
知れない。芙美子忌は6月28日。
7/4mon
暁に僅かに僅かなれど喜雨
(あかつきにわずかにわずかなれどきう)
※台風の影響で暑さをもたらした気圧配置が崩
れ、雨模様の不安定な天気になった。文字通
りの「喜雨」。西日本の豪雨の気配がないで
もないが、当地当家の野菜、果樹にとっては
喜雨だ。人間にとっても。
7/3sun
なお強き 膝をさすりて 半夏かな
(なおつよき ひざをさすりて はんげかな)
7/2sat
半夏生 犬ともに我れ 脚強く
(はんげしょう いぬともにわれ あしつよし)
※山登りなどには長くネックになっていた右膝
が、この十年近く朝夕の平地歩行には悲鳴を
あげず、持ちこたえている。幸い今に至って
も平地に限れば2、3時間連続でも行ける。
これも、臆病に無理を避けたこと、そして我
が家の犬のお蔭だ。
7/1fri
街ゆがみ 夏の絵描くは ゆがむまま
(まちゆがみ なつのえかくは ゆがむまま)
※都心の馴染みの通りもしばらく見ぬ間に変貌
し、ニョキニョキと高層マンションとやらが
両側に。不自然に見上げてやっと変化を知る。
猛暑がその歪みを激しく助長する。
ダクタク句集2022年(令和4年)6月 [ダクタク2022年6月]
6/30thu
果樹の実の 普段のように 夏越しかな
(かじゅのみの ふだんのように なごしかな)
※家を取り巻くように狭い土地にいくつもの果
樹があり、今年も至極順調だ。このような酷
い環境でもと思わざるを得ない。今日も酷暑。
6/29wed
半休を 取りて谷中の 沙羅を見に
(はんきゅうを とりてやなかの しゃらをみに)
※勤務時代の半休を思い出した。昼前に会社を
辞すともう自由、どこに行ってもすぐそこ。
この季節には日暮里駅に行って、谷中、上野
を通って御徒町まで。こんなクソ暑い日では
なかった。
6/28tue
じりじりと 梅雨明けの日の 静かなる
(じりじりと つゆあけのひの しずかなる)
松落葉 園児マスクを 外さざる
(まつおちば えんじますくを はずさざる)
片陰を 六月とても 片陰を
(かたかげをろくがつとてもかたかげを)
※梅雨が明けた。今度の明け方が如何に稀なこ
とかを述べ立てる。仕方がない、こっちも茫
然自失である。
6/27mon
ニュース見る プラム凍るを 砕きおり
(にゅーすみる ぷらむこおるを くだきおり)
※ニュースを見続けることも戦争反対の意思表
示だとか。それにしてもかなりの苦痛を伴う。
ウ軍劣勢を仔細に伝える映像が続く、ついプ
ラムをがぶりと・・・。
いかん、いかん、昔の歯と違うのだから。
6/26sun
今朝1メートル20の桔梗咲く
(けさいちめーとるにじゅうのききょうさく)
生きており 鼻毛が騒ぐ 青葉風
(いきており はなげがさわぐ あおばかぜ)
6/25sat
後頭部 撮りて見入るや 夏の月
(こうとうぶ とりてみいるや なつのつき)
※「後ろ髪がもじゃもじゃだよ。床屋に行った
ら?」と言われて鏡の前に。スマホをかざし
カメラで見れば、自らの後頭部がチェックで
きる。「まだまだ大丈夫!」。しかし便利ば
かりではない。後頭部のてっぺんの薄さをい
やでも確認することになる。お月様。
6/24fri
返信に 水ようかんが あそことぞ
(へんしんに みずようかんが あそことぞ)
※妻の留守は四季を問わず快適だが、今日は当
地も初の真夏日になろうかという暑さ、節電
協力ではないがエアコンなしでいく。
6/23thu
沖縄忌 後の沖縄 よろしくと
(おきなわき のちのおきなわ よろしくと)
※1945年6月海軍司令官の大田実海軍中将
は自決直前に海軍次官にあてた電文で、沖縄
戦の惨状と沖縄県民の献身をつづり、「後世
特別の配慮を」と訴えた。
原文の最後は以下の通り。
「一木一草焦土ト化セン 糧食六月一杯ヲ支
フルノミナリト謂フ 沖縄県民斯ク戦ヘリ
県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ 賜ランコ
トヲ」
復帰後の50年、特別の配慮がなかったとは
思わないが、十分だったとはとても思えない。
6/21tue
夏至の陽は 毒消しとなる 街に出よ
(げしのひは どくけしとなる まちにでよ)
黄金虫 ぶどうの葉食う かすかなる
(こがねむし ぶどうのはくう かすかなる)
6/20mon
方丈を 走る囃子や 山車なくも
(ほうじょうを はしるはやしや だしなくも)
※夏の催しのお祭り、盆踊りを忘れないでと、
祭り囃子をスピーカーに載せたクルマが町内
を回る。かえって寂しいかな?とも思うが町
内の役員のせめてもの心配り。
6/19sun
父の日や 藤村が字を 真似しおり
(ちちのひや とうそんがじを まねしおり)
※父は若い頃から島崎藤村に傾倒していた。昭
和20年代の家の本棚に藤村全集が揃っていた
し、単行本、詩集も豊富だった。なによりの
証拠は藤村の字、書体に憧れ、懸命に真似て
いたことだ。毛筆もペン字も後年聞かされて
から眺めると随分似ている。さすがと思う。
6/17fri
梅雨昏し 四山のあるを 瞑想す
(つゆくらし しざんのあるを めいそうす)
※曇り空の裾に真っ黒な雲が広がり急に暗くな
った。暗さは増すのに雨は降り出さない。近
くに高い山があって周囲に立ち塞がっている
様を想像できる。
6/16thu
あじさいは 素焼きがいいか 惑いおり
(あじさいは すやきがいいか まどいおり)
鬼灯を 鳴らす名人 亡母なりき
(ほおずきを ならすめいじん ははなりき)
※赤く熟れた鬼灯の実を取り出し、楊枝等で慎
重に中の汁体(種?)だけを取り除け、外側
の皮のみとする。これを口に入れ、空気を入
れて膨らましたら舌と口蓋の間に挟んで空気
を出し、音を出す。
汁欲しさに何度も作りはしたが、一度も鳴っ
たことはなかった。
6/15wed
梅雨寒や テレビの欄は スルーして
(つゆざむや てれびのらんは するーして)
アジサイや 紙と腕を越え 色過剰
(あじさいや かみとうでをこえ いろかじょう)
※絵画教室も地味に控えめな集まりを続けてい
るうちに、当市コロナ禍もはっきり下火にな
ってきた。持ち寄ったアジサイは色の多彩さ
だけでなく、形も様々だ。描くには当惑気味。
6/14tue
虞美人草 昭和遠しに 頷きし
(ぐびじんそう しょうわとおしに うなづきし)
※降る雪や明治は遠くなりにけりは大学生だっ
た中村草田男が昭和6年に詠んだ名句。明治
が行って20年の頃、昭和が行って今は34
年。計算するまでもないが。
6/13mon
妻帰る 三浦三崎の 開き鯵
(つまかえる みうらみさきの ひらきあじ)
※フェリーで久里浜から帰って来る。こっち岸
も魚は本場だが、持たされるままに鯵の干物、
申し分ない。
6/11sat
値上げにも 三度の飯や 梅雨晴れ間
(ねあげにも さんどのめしや つゆはれま)
泰山木 エバーグリーンと 唱えた日
(たいさんぼく えばーぐりーんと となえたひ)
※元勤務先製鉄所の50年間の軌跡をドキュメン
タリーに仕立てて放映していた。懐かしかっ
た。50年前の発足時の熱い思いは事業の様変
わりはあっても今も当事者の胸の中にあると
感じた。
6/10fri
立葵 赤を框の 前に見る
(たちあおい あかをかまちの まえにみる)
※当地ではタチアオイの咲き始めと琉球月見草が
いつもいっしょだ。そしてタチアオイの最初は
大抵赤。今年はそれらよりも梅雨の入りが先行
した。
6/9thu
方丈記 古き女優の 声のごと
(ほうじょうき ふるきじょゆうの こえのごと)
※愛聴していたYouTubeコンテンツが消え怒っ
ていたが、そこは無尽蔵、類似サイトも多く、
探す楽しみを味わっている。方丈記解説文の
朗読ではナレーターがあの田中絹代の声のソ
ックリさんで気に入っている。
6/8wed
盆踊り 中止を決めて 梅雨入りぬ
(ぼんおどり ちゅうしをきめて つゆいりぬ)
※町内の役員会、3年連続で盆踊り取りやめを
決めた。子供や年寄り中心の催しだから、も
しものことを考えての決断。
6/6mon
蜻蛉消え 紫式部も 五月闇
(かげろうきえ むらさきしきぶも さつきやみ)
※YouTubeで聴いてきたNHK古典講座「紫式部
日記」が忽然と消えた。NHK関連の著作権者
側がアカウントごと消去したらしい。
ウワー、突然こんなことがァ・・・愕然とし
た。王朝日記シリーズでは更級日記、和泉式
部日記、蜻蛉日記と聴いてきたが、それらは
全部消えた。いずれ繰り返し聴くはずだった。
6/4sat
うこぎ味噌 作らず終いと いい給ふ
(うこぎみそ つくらずじまいと いいたもう)
※格好の話題にうこぎ味噌が浮かび電話をした
が、今年はとりやめたと。垣根の新芽がやや
少なかったから様子を見ているうちに・・・、
とのことだ。電話することが目的だった。
うこぎの天ぷらが話題になった。ネットで買
えるかな。
6/3fri
五月晴 早書き無理も 苦にならず
(さつきばれ はやがきむりも くにならず)
※しゃちほこばって字を書くと手と指がこわば
って、ひどい時には筆が暴走する。気をとり
直して持ち直して書くと回復する。結構同じ
症状の人がいるという。老化現象の一つとか。
なに、緊張して字を書く機会なんて殆どない
し、あってもゆっくり書けばいい。
6/2thu
あじさいや 慎重いまだ 剥がれざる
(あじさいや しんちょういまだ はがれざる)
ドクダミの 節で曲りて 武骨なる
(どくだみの ふしでまがりて ぶこつなる)
6/1wed
夏空や いとうあさこの 生きるって
(なつぞらや いとうあさこの いきるって)
※ラジオのインタビュー番組で「いとうあさこ」
を聞いた。最後半でこれからの抱負と訊かれ、
ただ「生きる」、「生きること」って答えて
いた。孤独な気っ風を感じたね。
果樹の実の 普段のように 夏越しかな
(かじゅのみの ふだんのように なごしかな)
※家を取り巻くように狭い土地にいくつもの果
樹があり、今年も至極順調だ。このような酷
い環境でもと思わざるを得ない。今日も酷暑。
6/29wed
半休を 取りて谷中の 沙羅を見に
(はんきゅうを とりてやなかの しゃらをみに)
※勤務時代の半休を思い出した。昼前に会社を
辞すともう自由、どこに行ってもすぐそこ。
この季節には日暮里駅に行って、谷中、上野
を通って御徒町まで。こんなクソ暑い日では
なかった。
6/28tue
じりじりと 梅雨明けの日の 静かなる
(じりじりと つゆあけのひの しずかなる)
松落葉 園児マスクを 外さざる
(まつおちば えんじますくを はずさざる)
片陰を 六月とても 片陰を
(かたかげをろくがつとてもかたかげを)
※梅雨が明けた。今度の明け方が如何に稀なこ
とかを述べ立てる。仕方がない、こっちも茫
然自失である。
6/27mon
ニュース見る プラム凍るを 砕きおり
(にゅーすみる ぷらむこおるを くだきおり)
※ニュースを見続けることも戦争反対の意思表
示だとか。それにしてもかなりの苦痛を伴う。
ウ軍劣勢を仔細に伝える映像が続く、ついプ
ラムをがぶりと・・・。
いかん、いかん、昔の歯と違うのだから。
6/26sun
今朝1メートル20の桔梗咲く
(けさいちめーとるにじゅうのききょうさく)
生きており 鼻毛が騒ぐ 青葉風
(いきており はなげがさわぐ あおばかぜ)
6/25sat
後頭部 撮りて見入るや 夏の月
(こうとうぶ とりてみいるや なつのつき)
※「後ろ髪がもじゃもじゃだよ。床屋に行った
ら?」と言われて鏡の前に。スマホをかざし
カメラで見れば、自らの後頭部がチェックで
きる。「まだまだ大丈夫!」。しかし便利ば
かりではない。後頭部のてっぺんの薄さをい
やでも確認することになる。お月様。
6/24fri
返信に 水ようかんが あそことぞ
(へんしんに みずようかんが あそことぞ)
※妻の留守は四季を問わず快適だが、今日は当
地も初の真夏日になろうかという暑さ、節電
協力ではないがエアコンなしでいく。
6/23thu
沖縄忌 後の沖縄 よろしくと
(おきなわき のちのおきなわ よろしくと)
※1945年6月海軍司令官の大田実海軍中将
は自決直前に海軍次官にあてた電文で、沖縄
戦の惨状と沖縄県民の献身をつづり、「後世
特別の配慮を」と訴えた。
原文の最後は以下の通り。
「一木一草焦土ト化セン 糧食六月一杯ヲ支
フルノミナリト謂フ 沖縄県民斯ク戦ヘリ
県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ 賜ランコ
トヲ」
復帰後の50年、特別の配慮がなかったとは
思わないが、十分だったとはとても思えない。
6/21tue
夏至の陽は 毒消しとなる 街に出よ
(げしのひは どくけしとなる まちにでよ)
黄金虫 ぶどうの葉食う かすかなる
(こがねむし ぶどうのはくう かすかなる)
6/20mon
方丈を 走る囃子や 山車なくも
(ほうじょうを はしるはやしや だしなくも)
※夏の催しのお祭り、盆踊りを忘れないでと、
祭り囃子をスピーカーに載せたクルマが町内
を回る。かえって寂しいかな?とも思うが町
内の役員のせめてもの心配り。
6/19sun
父の日や 藤村が字を 真似しおり
(ちちのひや とうそんがじを まねしおり)
※父は若い頃から島崎藤村に傾倒していた。昭
和20年代の家の本棚に藤村全集が揃っていた
し、単行本、詩集も豊富だった。なによりの
証拠は藤村の字、書体に憧れ、懸命に真似て
いたことだ。毛筆もペン字も後年聞かされて
から眺めると随分似ている。さすがと思う。
6/17fri
梅雨昏し 四山のあるを 瞑想す
(つゆくらし しざんのあるを めいそうす)
※曇り空の裾に真っ黒な雲が広がり急に暗くな
った。暗さは増すのに雨は降り出さない。近
くに高い山があって周囲に立ち塞がっている
様を想像できる。
6/16thu
あじさいは 素焼きがいいか 惑いおり
(あじさいは すやきがいいか まどいおり)
鬼灯を 鳴らす名人 亡母なりき
(ほおずきを ならすめいじん ははなりき)
※赤く熟れた鬼灯の実を取り出し、楊枝等で慎
重に中の汁体(種?)だけを取り除け、外側
の皮のみとする。これを口に入れ、空気を入
れて膨らましたら舌と口蓋の間に挟んで空気
を出し、音を出す。
汁欲しさに何度も作りはしたが、一度も鳴っ
たことはなかった。
6/15wed
梅雨寒や テレビの欄は スルーして
(つゆざむや てれびのらんは するーして)
アジサイや 紙と腕を越え 色過剰
(あじさいや かみとうでをこえ いろかじょう)
※絵画教室も地味に控えめな集まりを続けてい
るうちに、当市コロナ禍もはっきり下火にな
ってきた。持ち寄ったアジサイは色の多彩さ
だけでなく、形も様々だ。描くには当惑気味。
6/14tue
虞美人草 昭和遠しに 頷きし
(ぐびじんそう しょうわとおしに うなづきし)
※降る雪や明治は遠くなりにけりは大学生だっ
た中村草田男が昭和6年に詠んだ名句。明治
が行って20年の頃、昭和が行って今は34
年。計算するまでもないが。
6/13mon
妻帰る 三浦三崎の 開き鯵
(つまかえる みうらみさきの ひらきあじ)
※フェリーで久里浜から帰って来る。こっち岸
も魚は本場だが、持たされるままに鯵の干物、
申し分ない。
6/11sat
値上げにも 三度の飯や 梅雨晴れ間
(ねあげにも さんどのめしや つゆはれま)
泰山木 エバーグリーンと 唱えた日
(たいさんぼく えばーぐりーんと となえたひ)
※元勤務先製鉄所の50年間の軌跡をドキュメン
タリーに仕立てて放映していた。懐かしかっ
た。50年前の発足時の熱い思いは事業の様変
わりはあっても今も当事者の胸の中にあると
感じた。
6/10fri
立葵 赤を框の 前に見る
(たちあおい あかをかまちの まえにみる)
※当地ではタチアオイの咲き始めと琉球月見草が
いつもいっしょだ。そしてタチアオイの最初は
大抵赤。今年はそれらよりも梅雨の入りが先行
した。
6/9thu
方丈記 古き女優の 声のごと
(ほうじょうき ふるきじょゆうの こえのごと)
※愛聴していたYouTubeコンテンツが消え怒っ
ていたが、そこは無尽蔵、類似サイトも多く、
探す楽しみを味わっている。方丈記解説文の
朗読ではナレーターがあの田中絹代の声のソ
ックリさんで気に入っている。
6/8wed
盆踊り 中止を決めて 梅雨入りぬ
(ぼんおどり ちゅうしをきめて つゆいりぬ)
※町内の役員会、3年連続で盆踊り取りやめを
決めた。子供や年寄り中心の催しだから、も
しものことを考えての決断。
6/6mon
蜻蛉消え 紫式部も 五月闇
(かげろうきえ むらさきしきぶも さつきやみ)
※YouTubeで聴いてきたNHK古典講座「紫式部
日記」が忽然と消えた。NHK関連の著作権者
側がアカウントごと消去したらしい。
ウワー、突然こんなことがァ・・・愕然とし
た。王朝日記シリーズでは更級日記、和泉式
部日記、蜻蛉日記と聴いてきたが、それらは
全部消えた。いずれ繰り返し聴くはずだった。
6/4sat
うこぎ味噌 作らず終いと いい給ふ
(うこぎみそ つくらずじまいと いいたもう)
※格好の話題にうこぎ味噌が浮かび電話をした
が、今年はとりやめたと。垣根の新芽がやや
少なかったから様子を見ているうちに・・・、
とのことだ。電話することが目的だった。
うこぎの天ぷらが話題になった。ネットで買
えるかな。
6/3fri
五月晴 早書き無理も 苦にならず
(さつきばれ はやがきむりも くにならず)
※しゃちほこばって字を書くと手と指がこわば
って、ひどい時には筆が暴走する。気をとり
直して持ち直して書くと回復する。結構同じ
症状の人がいるという。老化現象の一つとか。
なに、緊張して字を書く機会なんて殆どない
し、あってもゆっくり書けばいい。
6/2thu
あじさいや 慎重いまだ 剥がれざる
(あじさいや しんちょういまだ はがれざる)
ドクダミの 節で曲りて 武骨なる
(どくだみの ふしでまがりて ぶこつなる)
6/1wed
夏空や いとうあさこの 生きるって
(なつぞらや いとうあさこの いきるって)
※ラジオのインタビュー番組で「いとうあさこ」
を聞いた。最後半でこれからの抱負と訊かれ、
ただ「生きる」、「生きること」って答えて
いた。孤独な気っ風を感じたね。
ダクタク句集2022年(令和4年)5月 [ダクタク2022年5月]
5/31tue
南瓜咲く 雄しべ貰いて 婿となす
(かぼちゃさく おしべもらいて むことなす)
※初夏の間は虫たちに任せておけない。しかし
雌しべと雄しべがタイミング良く揃わないこ
とがある。そこで隣近所の畑に声をかける。
5/30mon
祭り化粧 見知らぬ顔と なりて笑む
(まつりげしょう みしらぬかおと なりてえむ)
5/28sat
御用聞き バイクが登る 五月晴
(ごようきき ばいくがのぼる さつきばれ)
※原付バイクと今も言うのか?軽いエンジン音
でゆっくり急坂を登っていく。新緑の坂道。
御用聞きに違いないと思った。御用聞き?今
どき? あの音、ポンポン蒸気を思い出した。
古いなァ。
5/27fri
風薫る さすが汀子の 遺文かな
(かぜかおる さすがていこの いぶんかな)
※虚子の孫稲畑汀子がこの2月に亡くなった。
父の後を継いでホトトギスの大所帯を切盛り
した。最晩年の素直な句境は得難い。
5/26thu
空想は 卯の花髪に 飾る人
(くうそうは うのはなかみに かざるひと)
※NHKの古典講読、王朝日記の世界はいよいよ
「紫式部日記」に入った。散歩しながらYou
Tubeで聞き流しするのだから、もとよりいい
加減なものなのだが、何回か同じところを繰
り返し聞くものだから何%かは頭に残る。原
文に親しむには程遠いが・・・。
既に終わった「更級日記」「和泉式部日記」
「蜻蛉日記」に較べると、理解度がいいのは
何故だろう。ホッとしている。
5/25wed
バイカウツギ バッハの森の ふところに
(ばいかうつぎ ばっはのもりの ふところに)
※バッハのピアノ曲はもっぱらグールドで聴く
ようになった。バッハとて最近はやや凝った、
変形気味の演奏が目立つ中で、正統派の演奏
を聴く思いがする。あのグールドがである。
5/24tue
蘇る バラはアーチを またぎ咲く
(よみがえる ばらはあーちを またぎさく)
グールドの 親ほどになり 五月雨
(ぐーるどの おやほどになり さつきあめ)
※一回り年長のグールドをその活躍の時代から
愛聴している。50歳で急逝した彼は、今や自
分の子供の年齢だ。高価なレコードはお宝も
のだが、YouTubeで毎日のように違った彼を
聴けるのも今日なればこそ。演奏しながらの
ハミングというかうなりというべきか、これ
もちゃんと残っている。(1932-1982)
5/23mon
泰山木 見上げるほどに 蕾増え
(たいさんぼく みあげるほどに つぼみふえ)
※その蕾の小さいうちは葉裏の色と混じり合い
わからない。5月20日を過ぎる辺りでと次
々と大きくなり、真っ白な見事な蕾に、そし
てやがて花開く。この季節に亡くなった母の
記念樹と一人で決めている。
5/22sat
柿若葉 セピアな祖母の 顔ほどに
(かきわかば せぴあなそぼの かおほどに)
※昔は写真はなんであれ貴重だった。黒いシー
トの厚いアルバムに貼られた写真は枚数が限
られたが故に、その時々を思い返す手段だっ
た。それが今は・・・省略。
5/20fri
普段着を 詫びて淑女の バラの香を
(ふだんぎを わびてしゅくじょの ばらのかを)
※バラ園は谷津遊園の跡地。遊園はライダーや
プールなど先端の施設を誇ったが、昭和57年
に閉園した。40年も前のことだ。
行かばやと思いし園は白黒の
写真となりてバラ園飾る
5/19thu
バラに寄す 皺ものびてる 至福かな
(ばらによす しわものびてる しふくかな)
※開花の盛りを越えたというので急遽谷津バラ
園に出掛けた。駐車場を心配したが、ウィー
クデイの午後でなんなくセーフ。幸せそうな
顔、顔がいっぱい。時間ゆっくり。
5/17tue
神田祭 女坂急を ものとせず
(かんださい おんなざかきゅうを ものとせず)
※神田祭は今年2022年偶数年とかで陰祭。ハイ
ライトのひとつ神輿宮入とかは行われなかっ
た。境内からお囃子が聞こえてくると、明神
下から女坂の石段を駆け上がる。比較的近く
に住んでいた頃の、昔々のお話。
5/16mon
カレンダーに桃の摘果と書き込みぬ
(かれんだーにもものてきかとかきこみぬ)
※晴れたら・・・、草むしり、カイガラムシ退治、
ぶどう誘引、桃摘果と労働項目が増えていく。
雨模様のままでもいいっていう気になってきた。
5/15sun
ジャガイモの 花は色あり 長雨よ
(じゃがいもの はなはいろあり ながあめよ)
夕闇に カラー一列 浮かびおり
(ゆうやみに からーいちれつ うかびおり)
※今年4月後半以降関東地方の南部は不純な天候
が続く。ここ房総半島は長雨の後も曇りが続き、
今日も雨模様。
5/14sat
梅雨前の なお梅雨らしき 雨雨が
(つゆまえの なおつゆらしき あめあめが)
薔薇見行 晴れの予想に 恵まれず
(ばらみこう はれのよそうに めぐまれず)
苗見やる 暇なき雨 線状の
(なえみやる いとまなきあめ せんじょうの)
5/13fri
新緑や 名前をずっと 思い出しつつ
(しんりょくやなまえをずっとおもいだしつつ)
※新緑は今が最高。家を出るときから或る人の名
前が思い出せないままだ。目は新緑を愛でてい
る。・・・夏めく、認知症めく。後期高齢者の
暗記試験は満点だったのに・・・。
5/12thu
薔薇の花 吉事を待たず 咲き揃う
(ばらのはな きちじをまたず さきそろう)
雨雲に追われ 野ばらの家の前
(あまぐもにおわれ のばらのいえのまえ)
5/11wed
夏めいて 頭の吹き出 消えにけり
(なつめいて あたまのふきで きえにけり)
※晴れた一日、この時節は寒くも暑くもなく、湿
度も低いし、空気が澄んで正に薫風の光景。一
番贅沢な一日。
5/9mon
青堀の 駅の前なる 古墳初夏
(あおほりの えきのまえなる こふんしょか)
※千葉県は古墳の数では近畿諸府県に比しても遅
れをとらぬ多さであるという。案内板、説明板
の充実、メディアでのアピールなどPRに努めて
いる。
5/8sun
年一度 筍掘りて 友となり
(ねんいちど たけのこほりて ともとなり)
筍を 分けて竹婆の 友となり
(たけのこを わけてちくばの ともとなり)
筍で 通じ壮なり 三品食い
(たけのこで つうじそうなり みしなくい)
※当地の孟宗竹掘りはもう終盤。タケノコ三句。
殆ど川柳だが、家内とその友に感謝。小生はお
相伴に与っている。
5/6fri
立夏の日 カイガラムシの 蔓延れる
(りっかのひ かいがらむしの はびこれる)
今ほどに 端午の写真 あらばこそ
(いまほどに たんごのしゃしん あらばこそ)
※端午の節句に立派な武者人形の前で微笑む男の
子の映像を見た。晴れの舞台にいい写真もムー
ビーすら手軽に残せる時代だなと思ったが、今
日どれだけの家庭でこうした節目節目のお祝い
や、季節の催しをしているだろうか? ネック
はお金ではない。
5/5thu
半袖や オランダ帰りの 鯉のぼり
(はんそでや おらんだがえりの こいのぼり)
大凧や 駐車場行く 連法被
(おおだこや ちゅうしゃじょういく れんはっぴ)
浜松や 大人の揚げる 凧の音
(はままつや おとなのあげる たこのおと)
※5月連休後半に浜松の大凧上げが開催される。
「浜松まつり」という。久しぶりのほぼフルバ
ージョンとか。風がなければ凧が上がらず、
あればあったで凧が乱舞して合戦ともなれば恐
ろしいまでの音が響く。
5/4wed
蝶々が 世をば明るく してもなお
(ちょうちょうが よおばあかるく してもなお)
店先の 春のブラウス 少し褪せ
(みせさきの はるのぶらうす すこしあせ)
5/3tue
春愁を払いのけよと一日吹く
(しゅんしゅうをはらいのけよとひとひふく)
春の雨 人犬濡れて 意気いまだ
(はるのあめ ひといぬぬれて いきいまだ)
※今日は打って変わってきれいな晴れ日。気温も
ぐんぐん上がる。当地観光地とされる所の一部
をを巡回? どこも連休の人出という感じが戻
っている。テークアウトの弁当をクルマの中で
食べると、こちらも外出・外食をした気分にな
った。
5/2mon
八十八夜 欠けたる急須 捨てられず
(はちじゅうはちや かけたるきゅうす すてられず)
春昼や 鮮魚卸しは 店洗う
(しゅんちゅうや せんぎょおろしは みせあらう)
5/1sun
バス停の あるコンビニに 春幟
(ばすていの あるこんびにに はるのぼり)
春の風 今年一枚 耕さず
(はるのかぜ ことしいちまい たがやさず)
※新たに休耕田かと思ったが、品種別の需給の関
係だとか。一時は稲作担い手の減少・高齢化で
休耕田が増え、やがて担い手の統合と耕作大規
模化とで今はほぼ安定していると聞いていたが、
様々な事情があるようだ。
南瓜咲く 雄しべ貰いて 婿となす
(かぼちゃさく おしべもらいて むことなす)
※初夏の間は虫たちに任せておけない。しかし
雌しべと雄しべがタイミング良く揃わないこ
とがある。そこで隣近所の畑に声をかける。
5/30mon
祭り化粧 見知らぬ顔と なりて笑む
(まつりげしょう みしらぬかおと なりてえむ)
5/28sat
御用聞き バイクが登る 五月晴
(ごようきき ばいくがのぼる さつきばれ)
※原付バイクと今も言うのか?軽いエンジン音
でゆっくり急坂を登っていく。新緑の坂道。
御用聞きに違いないと思った。御用聞き?今
どき? あの音、ポンポン蒸気を思い出した。
古いなァ。
5/27fri
風薫る さすが汀子の 遺文かな
(かぜかおる さすがていこの いぶんかな)
※虚子の孫稲畑汀子がこの2月に亡くなった。
父の後を継いでホトトギスの大所帯を切盛り
した。最晩年の素直な句境は得難い。
5/26thu
空想は 卯の花髪に 飾る人
(くうそうは うのはなかみに かざるひと)
※NHKの古典講読、王朝日記の世界はいよいよ
「紫式部日記」に入った。散歩しながらYou
Tubeで聞き流しするのだから、もとよりいい
加減なものなのだが、何回か同じところを繰
り返し聞くものだから何%かは頭に残る。原
文に親しむには程遠いが・・・。
既に終わった「更級日記」「和泉式部日記」
「蜻蛉日記」に較べると、理解度がいいのは
何故だろう。ホッとしている。
5/25wed
バイカウツギ バッハの森の ふところに
(ばいかうつぎ ばっはのもりの ふところに)
※バッハのピアノ曲はもっぱらグールドで聴く
ようになった。バッハとて最近はやや凝った、
変形気味の演奏が目立つ中で、正統派の演奏
を聴く思いがする。あのグールドがである。
5/24tue
蘇る バラはアーチを またぎ咲く
(よみがえる ばらはあーちを またぎさく)
グールドの 親ほどになり 五月雨
(ぐーるどの おやほどになり さつきあめ)
※一回り年長のグールドをその活躍の時代から
愛聴している。50歳で急逝した彼は、今や自
分の子供の年齢だ。高価なレコードはお宝も
のだが、YouTubeで毎日のように違った彼を
聴けるのも今日なればこそ。演奏しながらの
ハミングというかうなりというべきか、これ
もちゃんと残っている。(1932-1982)
5/23mon
泰山木 見上げるほどに 蕾増え
(たいさんぼく みあげるほどに つぼみふえ)
※その蕾の小さいうちは葉裏の色と混じり合い
わからない。5月20日を過ぎる辺りでと次
々と大きくなり、真っ白な見事な蕾に、そし
てやがて花開く。この季節に亡くなった母の
記念樹と一人で決めている。
5/22sat
柿若葉 セピアな祖母の 顔ほどに
(かきわかば せぴあなそぼの かおほどに)
※昔は写真はなんであれ貴重だった。黒いシー
トの厚いアルバムに貼られた写真は枚数が限
られたが故に、その時々を思い返す手段だっ
た。それが今は・・・省略。
5/20fri
普段着を 詫びて淑女の バラの香を
(ふだんぎを わびてしゅくじょの ばらのかを)
※バラ園は谷津遊園の跡地。遊園はライダーや
プールなど先端の施設を誇ったが、昭和57年
に閉園した。40年も前のことだ。
行かばやと思いし園は白黒の
写真となりてバラ園飾る
5/19thu
バラに寄す 皺ものびてる 至福かな
(ばらによす しわものびてる しふくかな)
※開花の盛りを越えたというので急遽谷津バラ
園に出掛けた。駐車場を心配したが、ウィー
クデイの午後でなんなくセーフ。幸せそうな
顔、顔がいっぱい。時間ゆっくり。
5/17tue
神田祭 女坂急を ものとせず
(かんださい おんなざかきゅうを ものとせず)
※神田祭は今年2022年偶数年とかで陰祭。ハイ
ライトのひとつ神輿宮入とかは行われなかっ
た。境内からお囃子が聞こえてくると、明神
下から女坂の石段を駆け上がる。比較的近く
に住んでいた頃の、昔々のお話。
5/16mon
カレンダーに桃の摘果と書き込みぬ
(かれんだーにもものてきかとかきこみぬ)
※晴れたら・・・、草むしり、カイガラムシ退治、
ぶどう誘引、桃摘果と労働項目が増えていく。
雨模様のままでもいいっていう気になってきた。
5/15sun
ジャガイモの 花は色あり 長雨よ
(じゃがいもの はなはいろあり ながあめよ)
夕闇に カラー一列 浮かびおり
(ゆうやみに からーいちれつ うかびおり)
※今年4月後半以降関東地方の南部は不純な天候
が続く。ここ房総半島は長雨の後も曇りが続き、
今日も雨模様。
5/14sat
梅雨前の なお梅雨らしき 雨雨が
(つゆまえの なおつゆらしき あめあめが)
薔薇見行 晴れの予想に 恵まれず
(ばらみこう はれのよそうに めぐまれず)
苗見やる 暇なき雨 線状の
(なえみやる いとまなきあめ せんじょうの)
5/13fri
新緑や 名前をずっと 思い出しつつ
(しんりょくやなまえをずっとおもいだしつつ)
※新緑は今が最高。家を出るときから或る人の名
前が思い出せないままだ。目は新緑を愛でてい
る。・・・夏めく、認知症めく。後期高齢者の
暗記試験は満点だったのに・・・。
5/12thu
薔薇の花 吉事を待たず 咲き揃う
(ばらのはな きちじをまたず さきそろう)
雨雲に追われ 野ばらの家の前
(あまぐもにおわれ のばらのいえのまえ)
5/11wed
夏めいて 頭の吹き出 消えにけり
(なつめいて あたまのふきで きえにけり)
※晴れた一日、この時節は寒くも暑くもなく、湿
度も低いし、空気が澄んで正に薫風の光景。一
番贅沢な一日。
5/9mon
青堀の 駅の前なる 古墳初夏
(あおほりの えきのまえなる こふんしょか)
※千葉県は古墳の数では近畿諸府県に比しても遅
れをとらぬ多さであるという。案内板、説明板
の充実、メディアでのアピールなどPRに努めて
いる。
5/8sun
年一度 筍掘りて 友となり
(ねんいちど たけのこほりて ともとなり)
筍を 分けて竹婆の 友となり
(たけのこを わけてちくばの ともとなり)
筍で 通じ壮なり 三品食い
(たけのこで つうじそうなり みしなくい)
※当地の孟宗竹掘りはもう終盤。タケノコ三句。
殆ど川柳だが、家内とその友に感謝。小生はお
相伴に与っている。
5/6fri
立夏の日 カイガラムシの 蔓延れる
(りっかのひ かいがらむしの はびこれる)
今ほどに 端午の写真 あらばこそ
(いまほどに たんごのしゃしん あらばこそ)
※端午の節句に立派な武者人形の前で微笑む男の
子の映像を見た。晴れの舞台にいい写真もムー
ビーすら手軽に残せる時代だなと思ったが、今
日どれだけの家庭でこうした節目節目のお祝い
や、季節の催しをしているだろうか? ネック
はお金ではない。
5/5thu
半袖や オランダ帰りの 鯉のぼり
(はんそでや おらんだがえりの こいのぼり)
大凧や 駐車場行く 連法被
(おおだこや ちゅうしゃじょういく れんはっぴ)
浜松や 大人の揚げる 凧の音
(はままつや おとなのあげる たこのおと)
※5月連休後半に浜松の大凧上げが開催される。
「浜松まつり」という。久しぶりのほぼフルバ
ージョンとか。風がなければ凧が上がらず、
あればあったで凧が乱舞して合戦ともなれば恐
ろしいまでの音が響く。
5/4wed
蝶々が 世をば明るく してもなお
(ちょうちょうが よおばあかるく してもなお)
店先の 春のブラウス 少し褪せ
(みせさきの はるのぶらうす すこしあせ)
5/3tue
春愁を払いのけよと一日吹く
(しゅんしゅうをはらいのけよとひとひふく)
春の雨 人犬濡れて 意気いまだ
(はるのあめ ひといぬぬれて いきいまだ)
※今日は打って変わってきれいな晴れ日。気温も
ぐんぐん上がる。当地観光地とされる所の一部
をを巡回? どこも連休の人出という感じが戻
っている。テークアウトの弁当をクルマの中で
食べると、こちらも外出・外食をした気分にな
った。
5/2mon
八十八夜 欠けたる急須 捨てられず
(はちじゅうはちや かけたるきゅうす すてられず)
春昼や 鮮魚卸しは 店洗う
(しゅんちゅうや せんぎょおろしは みせあらう)
5/1sun
バス停の あるコンビニに 春幟
(ばすていの あるこんびにに はるのぼり)
春の風 今年一枚 耕さず
(はるのかぜ ことしいちまい たがやさず)
※新たに休耕田かと思ったが、品種別の需給の関
係だとか。一時は稲作担い手の減少・高齢化で
休耕田が増え、やがて担い手の統合と耕作大規
模化とで今はほぼ安定していると聞いていたが、
様々な事情があるようだ。