ダクタク句集2022年(令和4年)上期 自選集 [自選集2022]
6/30thu
果樹の実の 普段のように 夏越しかな
(かじゅのみの ふだんのように なごしかな)
※家を取り巻くように狭い土地にいくつもの果
樹があり、今年も至極順調だ。このような酷
い環境でもと思わざるを得ない。今日も酷暑。
6/29wed
半休を 取りて谷中の 沙羅を見に
(はんきゅうを とりてやなかの しゃらをみに)
※勤務時代の半休を思い出した。昼前に会社を
辞すともう自由、どこに行ってもすぐそこ。
この季節には日暮里駅に行って、谷中、上野
を通って御徒町まで。こんなクソ暑い日では
なかった。
6/28tue
じりじりと 梅雨明けの日の 静かなる
(じりじりと つゆあけのひの しずかなる)
松落葉 園児マスクを 外さざる
(まつおちば えんじますくを はずさざる)
片陰を 六月とても 片陰を
(かたかげをろくがつとてもかたかげを)
※梅雨が明けた。今度の明け方が如何に稀なこ
とかを述べ立てる。仕方がない、こっちも茫
然自失である。
6/27mon
ニュース見る プラム凍るを 砕きおり
(にゅーすみる ぷらむこおるを くだきおり)
※ニュースを見続けることも戦争反対の意思表
示だとか。それにしてもかなりの苦痛を伴う。
ウ軍劣勢を仔細に伝える映像が続く、ついプ
ラムをがぶりと・・・。
いかん、いかん、昔の歯と違うのだから。
6/26sun
今朝1メートル20の桔梗咲く
(けさいちめーとるにじゅうのききょうさく)
生きており 鼻毛が騒ぐ 青葉風
(いきており はなげがさわぐ あおばかぜ)
6/25sat
後頭部 撮りて見入るや 夏の月
(こうとうぶ とりてみいるや なつのつき)
※「後ろ髪がもじゃもじゃだよ。床屋に行った
ら?」と言われて鏡の前に。スマホをかざし
カメラで見れば、自らの後頭部がチェックで
きる。「まだまだ大丈夫!」。しかし便利ば
かりではない。後頭部のてっぺんの薄さをい
やでも確認することになる。お月様。
6/24fri
返信に 水ようかんが あそことぞ
(へんしんに みずようかんが あそことぞ)
※妻の留守は四季を問わず快適だが、今日は当
地も初の真夏日になろうかという暑さ、節電
協力ではないがエアコンなしでいく。
6/23thu
沖縄忌 後の沖縄 よろしくと
(おきなわき のちのおきなわ よろしくと)
※1945年6月海軍司令官の大田実海軍中将
は自決直前に海軍次官にあてた電文で、沖縄
戦の惨状と沖縄県民の献身をつづり、「後世
特別の配慮を」と訴えた。
原文の最後は以下の通り。
「一木一草焦土ト化セン 糧食六月一杯ヲ支
フルノミナリト謂フ 沖縄県民斯ク戦ヘリ
県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ 賜ランコ
トヲ」
復帰後の50年、特別の配慮がなかったとは
思わないが、十分だったとはとても思えない。
6/21tue
夏至の陽は 毒消しとなる 街に出よ
(げしのひは どくけしとなる まちにでよ)
黄金虫 ぶどうの葉食う かすかなる
(こがねむし ぶどうのはくう かすかなる)
6/20mon
方丈を 走る囃子や 山車なくも
(ほうじょうを はしるはやしや だしなくも)
※夏の催しのお祭り、盆踊りを忘れないでと、
祭り囃子をスピーカーに載せたクルマが町内
を回る。かえって寂しいかな?とも思うが町
内の役員のせめてもの心配り。
6/19sun
父の日や 藤村が字を 真似しおり
(ちちのひや とうそんがじを まねしおり)
※父は若い頃から島崎藤村に傾倒していた。昭
和20年代の家の本棚に藤村全集が揃っていた
し、単行本、詩集も豊富だった。なによりの
証拠は藤村の字、書体に憧れ、懸命に真似て
いたことだ。毛筆もペン字も後年聞かされて
から眺めると随分似ている。さすがと思う。
6/17fri
梅雨昏し 四山のあるを 瞑想す
(つゆくらし しざんのあるを めいそうす)
※曇り空の裾に真っ黒な雲が広がり急に暗くな
った。暗さは増すのに雨は降り出さない。近
くに高い山があって周囲に立ち塞がっている
様を想像できる。
6/16thu
あじさいは 素焼きがいいか 惑いおり
(あじさいは すやきがいいか まどいおり)
鬼灯を 鳴らす名人 亡母なりき
(ほおずきを ならすめいじん ははなりき)
※赤く熟れた鬼灯の実を取り出し、楊枝等で慎
重に中の汁体(種?)だけを取り除け、外側
の皮のみとする。これを口に入れ、空気を入
れて膨らましたら舌と口蓋の間に挟んで空気
を出し、音を出す。
汁欲しさに何度も作りはしたが、一度も鳴っ
たことはなかった。
6/15wed
梅雨寒や テレビの欄は スルーして
(つゆざむや てれびのらんは するーして)
アジサイや 紙と腕を越え 色過剰
(あじさいや かみとうでをこえ いろかじょう)
※絵画教室も地味に控えめな集まりを続けてい
るうちに、当市コロナ禍もはっきり下火にな
ってきた。持ち寄ったアジサイは色の多彩さ
だけでなく、形も様々だ。描くには当惑気味。
6/14tue
虞美人草 昭和遠しに 頷きし
(ぐびじんそう しょうわとおしに うなづきし)
※降る雪や明治は遠くなりにけりは大学生だっ
た中村草田男が昭和6年に詠んだ名句。明治
が行って20年の頃、昭和が行って今は34
年。計算するまでもないが。
6/13mon
妻帰る 三浦三崎の 開き鯵
(つまかえる みうらみさきの ひらきあじ)
※フェリーで久里浜から帰って来る。こっち岸
も魚は本場だが、持たされるままに鯵の干物、
申し分ない。
6/11sat
値上げにも 三度の飯や 梅雨晴れ間
(ねあげにも さんどのめしや つゆはれま)
泰山木 エバーグリーンと 唱えた日
(たいさんぼく えばーぐりーんと となえたひ)
※元勤務先製鉄所の50年間の軌跡をドキュメン
タリーに仕立てて放映していた。懐かしかっ
た。50年前の発足時の熱い思いは事業の様変
わりはあっても今も当事者の胸の中にあると
感じた。
6/10fri
立葵 赤を框の 前に見る
(たちあおい あかをかまちの まえにみる)
※当地ではタチアオイの咲き始めと琉球月見草が
いつもいっしょだ。そしてタチアオイの最初は
大抵赤。今年はそれらよりも梅雨の入りが先行
した。
6/9thu
方丈記 古き女優の 声のごと
(ほうじょうき ふるきじょゆうの こえのごと)
※愛聴していたYouTubeコンテンツが消え怒っ
ていたが、そこは無尽蔵、類似サイトも多く、
探す楽しみを味わっている。方丈記解説文の
朗読ではナレーターがあの田中絹代の声のソ
ックリさんで気に入っている。
6/8wed
盆踊り 中止を決めて 梅雨入りぬ
(ぼんおどり ちゅうしをきめて つゆいりぬ)
※町内の役員会、3年連続で盆踊り取りやめを
決めた。子供や年寄り中心の催しだから、も
しものことを考えての決断。
6/6mon
蜻蛉消え 紫式部も 五月闇
(かげろうきえ むらさきしきぶも さつきやみ)
※YouTubeで聴いてきたNHK古典講座「紫式部
日記」が忽然と消えた。NHK関連の著作権者
側がアカウントごと消去したらしい。
ウワー、突然こんなことがァ・・・愕然とし
た。王朝日記シリーズでは更級日記、和泉式
部日記、蜻蛉日記と聴いてきたが、それらは
全部消えた。いずれ繰り返し聴くはずだった。
6/4sat
うこぎ味噌 作らず終いと いい給ふ
(うこぎみそ つくらずじまいと いいたもう)
※格好の話題にうこぎ味噌が浮かび電話をした
が、今年はとりやめたと。垣根の新芽がやや
少なかったから様子を見ているうちに・・・、
とのことだ。電話することが目的だった。
うこぎの天ぷらが話題になった。ネットで買
えるかな。
6/3fri
五月晴 早書き無理も 苦にならず
(さつきばれ はやがきむりも くにならず)
※しゃちほこばって字を書くと手と指がこわば
って、ひどい時には筆が暴走する。気をとり
直して持ち直して書くと回復する。結構同じ
症状の人がいるという。老化現象の一つとか。
なに、緊張して字を書く機会なんて殆どない
し、あってもゆっくり書けばいい。
6/2thu
あじさいや 慎重いまだ 剥がれざる
(あじさいや しんちょういまだ はがれざる)
ドクダミの 節で曲りて 武骨なる
(どくだみの ふしでまがりて ぶこつなる)
6/1wed
夏空や いとうあさこの 生きるって
(なつぞらや いとうあさこの いきるって)
※ラジオのインタビュー番組で「いとうあさこ」
を聞いた。最後半でこれからの抱負と訊かれ、
ただ「生きる」、「生きること」って答えて
いた。孤独な気っ風を感じたね。
**********
5/31tue
南瓜咲く 雄しべ貰いて 婿となす
(かぼちゃさく おしべもらいて むことなす)
※初夏の間は虫たちに任せておけない。しかし
雌しべと雄しべがタイミング良く揃わないこ
とがある。そこで隣近所の畑に声をかける。
5/30mon
祭り化粧 見知らぬ顔と なりて笑む
(まつりげしょう みしらぬかおと なりてえむ)
5/28sat
御用聞き バイクが登る 五月晴
(ごようきき ばいくがのぼる さつきばれ)
※原付バイクと今も言うのか?軽いエンジン音
でゆっくり急坂を登っていく。新緑の坂道。
御用聞きに違いないと思った。御用聞き?今
どき? あの音、ポンポン蒸気を思い出した。
古いなァ。
5/27fri
風薫る さすが汀子の 遺文かな
(かぜかおる さすがていこの いぶんかな)
※虚子の孫稲畑汀子がこの2月に亡くなった。
父の後を継いでホトトギスの大所帯を切盛り
した。最晩年の素直な句境は得難い。
5/26thu
空想は 卯の花髪に 飾る人
(くうそうは うのはなかみに かざるひと)
※NHKの古典講読、王朝日記の世界はいよいよ
「紫式部日記」に入った。散歩しながらYou
Tubeで聞き流しするのだから、もとよりいい
加減なものなのだが、何回か同じところを繰
り返し聞くものだから何%かは頭に残る。原
文に親しむには程遠いが・・・。
既に終わった「更級日記」「和泉式部日記」
「蜻蛉日記」に較べると、理解度がいいのは
何故だろう。ホッとしている。
5/25wed
バイカウツギ バッハの森の ふところに
(ばいかうつぎ ばっはのもりの ふところに)
※バッハのピアノ曲はもっぱらグールドで聴く
ようになった。バッハとて最近はやや凝った、
変形気味の演奏が目立つ中で、正統派の演奏
を聴く思いがする。あのグールドがである。
5/24tue
蘇る バラはアーチを またぎ咲く
(よみがえる ばらはあーちを またぎさく)
グールドの 親ほどになり 五月雨
(ぐーるどの おやほどになり さつきあめ)
※一回り年長のグールドをその活躍の時代から
愛聴している。50歳で急逝した彼は、今や自
分の子供の年齢だ。高価なレコードはお宝も
のだが、YouTubeで毎日のように違った彼を
聴けるのも今日なればこそ。演奏しながらの
ハミングというかうなりというべきか、これ
もちゃんと残っている。(1932-1982)
5/23mon
泰山木 見上げるほどに 蕾増え
(たいさんぼく みあげるほどに つぼみふえ)
※その蕾の小さいうちは葉裏の色と混じり合い
わからない。5月20日を過ぎる辺りでと次
々と大きくなり、真っ白な見事な蕾に、そし
てやがて花開く。この季節に亡くなった母の
記念樹と一人で決めている。
5/22sat
柿若葉 セピアな祖母の 顔ほどに
(かきわかば せぴあなそぼの かおほどに)
※昔は写真はなんであれ貴重だった。黒いシー
トの厚いアルバムに貼られた写真は枚数が限
られたが故に、その時々を思い返す手段だっ
た。それが今は・・・省略。
5/20fri
普段着を 詫びて淑女の バラの香を
(ふだんぎを わびてしゅくじょの ばらのかを)
※バラ園は谷津遊園の跡地。遊園はライダーや
プールなど先端の施設を誇ったが、昭和57年
に閉園した。40年も前のことだ。
行かばやと思いし園は白黒の
写真となりてバラ園飾る
5/19thu
バラに寄す 皺ものびてる 至福かな
(ばらによす しわものびてる しふくかな)
※開花の盛りを越えたというので急遽谷津バラ
園に出掛けた。駐車場を心配したが、ウィー
クデイの午後でなんなくセーフ。幸せそうな
顔、顔がいっぱい。時間ゆっくり。
5/17tue
神田祭 女坂急を ものとせず
(かんださい おんなざかきゅうを ものとせず)
※神田祭は今年2022年偶数年とかで陰祭。ハイ
ライトのひとつ神輿宮入とかは行われなかっ
た。境内からお囃子が聞こえてくると、明神
下から女坂の石段を駆け上がる。比較的近く
に住んでいた頃の、昔々のお話。
5/16mon
カレンダーに桃の摘果と書き込みぬ
(かれんだーにもものてきかとかきこみぬ)
※晴れたら・・・、草むしり、カイガラムシ退治、
ぶどう誘引、桃摘果と労働項目が増えていく。
雨模様のままでもいいっていう気になってきた。
5/15sun
ジャガイモの 花は色あり 長雨よ
(じゃがいもの はなはいろあり ながあめよ)
夕闇に カラー一列 浮かびおり
(ゆうやみに からーいちれつ うかびおり)
※今年4月後半以降関東地方の南部は不純な天候
が続く。ここ房総半島は長雨の後も曇りが続き、
今日も雨模様。
5/14sat
梅雨前の なお梅雨らしき 雨雨が
(つゆまえの なおつゆらしき あめあめが)
薔薇見行 晴れの予想に 恵まれず
(ばらみこう はれのよそうに めぐまれず)
苗見やる 暇なき雨 線状の
(なえみやる いとまなきあめ せんじょうの)
5/13fri
新緑や 名前をずっと 思い出しつつ
(しんりょくやなまえをずっとおもいだしつつ)
※新緑は今が最高。家を出るときから或る人の名
前が思い出せないままだ。目は新緑を愛でてい
る。・・・夏めく、認知症めく。後期高齢者の
暗記試験は満点だったのに・・・。
5/12thu
薔薇の花 吉事を待たず 咲き揃う
(ばらのはな きちじをまたず さきそろう)
雨雲に追われ 野ばらの家の前
(あまぐもにおわれ のばらのいえのまえ)
5/11wed
夏めいて 頭の吹き出 消えにけり
(なつめいて あたまのふきで きえにけり)
※晴れた一日、この時節は寒くも暑くもなく、湿
度も低いし、空気が澄んで正に薫風の光景。一
番贅沢な一日。
5/9mon
青堀の 駅の前なる 古墳初夏
(あおほりの えきのまえなる こふんしょか)
※千葉県は古墳の数では近畿諸府県に比しても遅
れをとらぬ多さであるという。案内板、説明板
の充実、メディアでのアピールなどPRに努めて
いる。
5/8sun
年一度 筍掘りて 友となり
(ねんいちど たけのこほりて ともとなり)
筍を 分けて竹婆の 友となり
(たけのこを わけてちくばの ともとなり)
筍で 通じ壮なり 三品食い
(たけのこで つうじそうなり みしなくい)
※当地の孟宗竹掘りはもう終盤。タケノコ三句。
殆ど川柳だが、家内とその友に感謝。小生はお
相伴に与っている。
5/6fri
立夏の日 カイガラムシの 蔓延れる
(りっかのひ かいがらむしの はびこれる)
今ほどに 端午の写真 あらばこそ
(いまほどに たんごのしゃしん あらばこそ)
※端午の節句に立派な武者人形の前で微笑む男の
子の映像を見た。晴れの舞台にいい写真もムー
ビーすら手軽に残せる時代だなと思ったが、今
日どれだけの家庭でこうした節目節目のお祝い
や、季節の催しをしているだろうか? ネック
はお金ではない。
5/5thu
半袖や オランダ帰りの 鯉のぼり
(はんそでや おらんだがえりの こいのぼり)
大凧や 駐車場行く 連法被
(おおだこや ちゅうしゃじょういく れんはっぴ)
浜松や 大人の揚げる 凧の音
(はままつや おとなのあげる たこのおと)
※5月連休後半に浜松の大凧上げが開催される。
「浜松まつり」という。久しぶりのほぼフルバ
ージョンとか。風がなければ凧が上がらず、
あればあったで凧が乱舞して合戦ともなれば恐
ろしいまでの音が響く。
5/4wed
蝶々が 世をば明るく してもなお
(ちょうちょうが よおばあかるく してもなお)
店先の 春のブラウス 少し褪せ
(みせさきの はるのぶらうす すこしあせ)
5/3tue
春愁を払いのけよと一日吹く
(しゅんしゅうをはらいのけよとひとひふく)
春の雨 人犬濡れて 意気いまだ
(はるのあめ ひといぬぬれて いきいまだ)
※今日は打って変わってきれいな晴れ日。気温も
ぐんぐん上がる。当地観光地とされる所の一部
をを巡回? どこも連休の人出という感じが戻
っている。テークアウトの弁当をクルマの中で
食べると、こちらも外出・外食をした気分にな
った。
5/2mon
八十八夜 欠けたる急須 捨てられず
(はちじゅうはちや かけたるきゅうす すてられず)
春昼や 鮮魚卸しは 店洗う
(しゅんちゅうや せんぎょおろしは みせあらう)
5/1sun
バス停の あるコンビニに 春幟
(ばすていの あるこんびにに はるのぼり)
春の風 今年一枚 耕さず
(はるのかぜ ことしいちまい たがやさず)
※新たに休耕田かと思ったが、品種別の需給の関
係だとか。一時は稲作担い手の減少・高齢化で
休耕田が増え、やがて担い手の統合と耕作大規
模化とで今はほぼ安定していると聞いていたが、
様々な事情があるようだ。
**********
4/30sat
我が道を 行く人稀に 荷風の忌
(わがみちを いくひとまれに かふうのき)
白足袋の 軒に干されて 四月尽
(しろたびの のきにほされて しがつじん)
※NHKの王朝文学講座をYouTubeで聴き始めて3
カ月。更級日記、和泉式部日記を聞き流した。
犬の散歩の途中にである。それでも多く登場す
る和歌に接して親しみを感じるようになった。
今日の後者の句にも、続けて七七が出る。上等
ではないが。
「白足袋の 軒に干されて 四月尽
紺地の足袋の 普段なつかし」
「良いことの ながりし四月 疾く過ぎん
枕に脈の 音の健やか」
4/29fri
あちこちで 遂に顔伏す 目借時
(あちこちで ついにかおふす めかりどき)
合宿所 窓開け放つ 春の闇
(がっしゅくじょ まどあけはなつ はるのやみ)
※コロナ禍の近況2句。図書館は読書室使用を条
件付きで再開。隣の人が遠いのでつい安心して
コックリ。昨年クラスターを出してしまった高
校の大きな合宿所は今なお閉鎖中。
4/28thu
新年度 なお坂道の 塾通い
(しんねんどなおさかみちのじゅくがよい)
雪形を 見る人しのぶ メールかな
(ゆきがたをみるひとしのぶめーるかな)
4/27wed
描きつつ 春は病いの 憂さくらべ
(えがきつつ はるはやまいの うさくらべ)
オオデマリ アイリスともに 吾嬲り
(おおでまり あいりすともに われなぶり)
※月2回の絵画教室は絵よりもおしゃべり? オ
オデマリと紫色のアイリスの対照の妙は難しす
ぎる。
4/26tue
草を刈る 鎌の研ぎ初め 日永かな
(くさをかる かまのとぎそめ ひながかな)
ようやくの雨音や 晩春を寝る
(ようやくのあまおとや ばんしゅんをねる)
4/25mon
逃げ水の 先に閉じにし 校舎あり
(にげみずのさきにとじにしこうしゃあり)
※こちらも御多聞に漏れず郊外の小中学校を中心
になお統廃合の話がある。生活圏、友人知人、
仕事や親戚などとの関係、果ては選挙の地盤な
ど、近くに訊けばナルホドと同情が大きくなる。
4/24sun
女二人 スイカの苗の 良し悪し
(おんなふたり すいかのなえの よしわるし)
※当地で西瓜の苗が植え時。例年のごとく2苗だ
けポットで買ってきた。ちょっと遅めのわりに
値段が安い。それでは接ぎ木の苗ではないなと
疑う。案の定。
4/23sat
春の黄に 土偶のまなこ 和らげり
(はるのきに どぐうのまなこ やわらげり)
石楠花や 女御の日記 思わるる
(しゃくなげや にょうごのにっき おもわるる)
4/22fri
田は霞む 植うる順番 我にあり
(たはかすむ ううるじゅんばん われにあり)
すみれ野に埃 顔出す戦車兵
(すみれのにほこり かおだすせんしゃへい)
※ウクライナの要衝マウリポリをめぐる局面が
最終期にある。すみれ野と街を蹂躙すること
は許されない。兵は無表情だ。
4/21thu
ミズキ咲き 木の花なべて 白い朝
(みずきさき きのはななべて しろいあさ)
※石楠花の白い花が満開で、白の花ミズキとク
レマチスが加わった。この季節は期せずして
我が家の庭はちょっと大仰だが「白の競演」
となる。花ニラの消えたあとには白い小さな
ユリ形の花が咲いて、地で白の駄目押しをし
ている。
4/20wed
城はサクラ 路地には黒き 板の塀
(しろはさくら ろじにはくろき いたのへい)
※郷里会津のサクラの盛りは子供時代の昔4月
20日前後であったと思う。戊辰戦役で城下
中心部の古い建物は残っていなかったが、城
下町の人の風情とその人々が家屋に託す矜持
がここかしこにあった(ように思う)。
4/19tue
こころみの 源氏分厚き 春の宵
(こころみの げんじぶあつき はるのよい)
※YouTubeのNHK古典講座で「更級日記」を散
歩の時に聞いている。慣れないことだけれど、
せっかくのスマホのギガを有効活用!するた
めだ。テキストもなし、理解不十分も気にし
ないで、45分×27回を一周聞き終えた。
かなりの新発見があり、大雑把でも習得の体
験は実に久しぶりだ。作者の源氏物語への傾
倒ぶりが随所に現れることも初めてわかった。
4/18mon
風やんで ほんの春雨 耳たてる
(かぜやんで ほんのはるさめ みみたてる)
奥穂高 置きし小石よ 風光る
(おくほだか おきしこいしよ かぜひかる)
めがねかけ 少なくなりし 芹摘みぬ
(めがねかけ すくなくなりし せりつみぬ)
4/16sat
数を聞く 老舗爺売る 桜餅
(かずをきく しにせじじうる さくらもち)
※この季節は桜餅専業とも見える。うーん、や
っぱりコンビニ買いのものとは違う。
花ミズキ 宝飾着物 買い取ると
(はなみずき ほうしょくきもの かいとると)
4/15fri
観音堂 五百年の春 大庇
(かんのんどう ごひゃくねんのはる おおひさし)
※桜見物の足を伸ばし、鳳来寺観音堂再訪を果
たした。初めの時よりしっかり保全されてい
るようで一安心。相変わらずの優美さ。周囲
のサクラを眺めて弁当を開く。
4/14thu
葉桜や 病院互いに 付き添いぬ
(はざくらや びょういんたがいに つきそいぬ)
石楠花の 蕾落とさじ 妻の声
(しゃくなげの つぼみおとさじ つまのこえ)
4/13wed
啄木忌 費え支えし 金田一
(たくぼくき ついえささえし きんだいち)
※同郷の先輩金田一京助は文学上の付き合いの
みならず、常に貧困だった東京の啄木に何く
れとなく援助をした。ちなみに小生の中高使
用の国語辞書は金田一の手になるものだ。
4/12tue
花ニラの 群れるを踏まず 猫黒子
(はなにらの むれるをふまず ねこくろこ)
花冷えや 今宵だけとて 床の暖
(はなびえや こよいだけとて とこのだん)
4/11mon
高齢者試験通れり春の膳
(こうれいしゃしけんとおれりはるのぜん)
※家人の免許更新試験、難関の暗誦試験を優秀
な成績で通過したらしい。これは医者の見立
て以上に安心材料、目出度い。
4/10sun
春の朝手の皺深くなりにけり
(はるのあさてのしわふかくなりにけり)
人間は退歩するらし春爛漫
(にんげんはたいほするらしはるらんまん)
4/9sat
山小屋の 春曙は 闇多く
(やまごやの はるあけぼのは やみおおく)
※久しぶりに若い時に山に行った夢を見た。真
っ暗な中でここはどこだろうと息をひそめて
いると、僅かな窓に山が次第に見えてきた。
安心。山小屋だ、ここは。
4/7thu
風車売り 夢に長屋の前におり
(かざぐるまうり ゆめにながやのまえにおり)
春灯 女二人の 声低く
(はるあかし おんなふたりの こえひくく)
※春は茫漠と夢に遊び、覚めては霞の果てに夕
日を見送る。やや退廃的な心地こそ、季節の
特権なりしも、それを許さざるはだれ。
4/6wed
眺めては また剪定の 日和かな
(ながめては またせんていの ひよりかな)
※柿の木も若芽が出てきた。当家で図抜けて遅
いのはぶどうだ。剪定は一応終えているので
格子のバーに誘引する。これもYouTubeで学
習したから方法は進化したはずだ。
ところが剪定のやり残しが多く見つかる。や
っぱり杜撰だな。
4/4mon
花冷えや 親のビデオの 仕舞い方
(はなびえや おやのびでおの しまいかた)
※生前の両親を撮影したビデオが結構ある。い
ずれもちゃんと編集整理したものだ。他のメ
ディアは散逸しても一向に構わないが、これ
だけは親の面影を残す唯一のものであり、大
げさだが墓をどう整理して後につなぐかを考
えるのと同じ心境だ。
4/3sun
蝉貰う人 喜寿となる 連翹忌
(せみもらうひと きじゅとなる れんぎょうき)
※4月2日は高村光太郎の命日。連翹忌という。
30年ほども前の出張の帰りに、友人と花巻市
郊外の高村光太郎旧居を訪れた。辺り一面深い
雪が積もっていて、今のように保存のための上
屋がなかった旧居は見るからに粗末で寒く、す
き間から雪原が覗けた。戦後すぐに、宮沢賢治
の縁繋がりでこの地を選び、隠れ住むように囲
炉裏に坐して自戒自省の数年を過ごした。
近くに農家はない、地元の人とも交わりを避
けていた。例外は村の子供たちで交遊があった
とか。特に花巻まで買い出しに行ってもどる光
太郎から飴玉を貰うのが楽しみだったと言う。
小さな彫り物を貰うこともあったとか。当時の
子供の一人が、たまたま我々が利用したバスの
運転手だった。発車時刻までの生き証人?の話。
4/2sat
ジャカランダ
ホウオウボクになに 四月バカ
(じゃからんだ ほうおうぼくになに しがつばか)
※熱帯三大花樹のことを言っている。もう一つは
アフリカン・チューリップ・ツリー。別名カエ
ンボク。日本でいうチューリップツリー(別名
半纏の木)とは似ても似つかぬが。
友人撮影の写真が載る蝶のカレンダー、4月は
ホウオウボクの真っ赤な花、花、花に憩うヘレ
ナキシタアゲハ。
4/1fri
柳芽吹く 根岸の里の くねり道
(やなぎめぶく ねぎしのさとの くねりみち)
※都心を歩く会は中断して久しい。遠慮のない友
人と連れ立っての歩き会は実に楽しいものだっ
た。子規庵を訪ねたあと根岸の古い道を辿ると
青々とした柳並木の道があった。5年ほども前
になる。季節は違うが光景がよみがえる。今は
子規庵も閉鎖中と聞いた。
**********
3/31thu
春に惑う 田舎住まいと 街住まい
(はるにまどう いなかずまいと まちずまい)
※コロナ禍で「なにがなんでも都会で」という考
えが見直されているという。もっと積極的に首
都東京と東京圏の規模縮小を図るべきだと思う。
事が起こったときに今の首都圏はゆとりが無さ
過ぎるからだ。しかし・・・
折しもこの週末、目黒川花見と宴会の席に誘わ
れた。即刻OK、久しぶりに歩きたい。いや、
やめとけ。
3/30wed
紫雲英田は みちのくにあり トラクター
(げんげだは みちのくにあり とらくたー)
※ようやく田んぼに人の動きが見えた。これから
春耕というか、4月中旬以降の田植えに向けた
耕しが始まる。間に合うのかなと心配になる。
3/29tue
落ち雲雀 見失うほど 草はなし
(おちひばり みうしなうほど くさはなし)
※雲雀は地方によっては姿を消したところもある
とか。ふんだんに見れる当地のアリガタミを再
認識。とはいえ、高速道路の騒音がなかった頃
はさらに格段に良かったのだが。
3/28mon
花曇り 夕餉の好み 尋ねらる
(はなぐもり ゆうげのこのみ たずねらる)
※ご飯のおかずを言い合っているとはなんと平和
ボケで、能天気なことか!と一喝されそうな塩
梅だ。まあ、いいではないか。・・・ちゃんと
ニュースは見ているし。
3/27sun
釘付けは 一人静よ 露天風呂
(くぎづけは ひとりしずかよ ろてんぶろ)
※午後になって雨模様だが気温は下がらない。当
家の桃の花は一気に開く。陽光桜、ソメイヨシ
ノ、桃、プラムなどの開花順はどうであったか、
記憶も曖昧になってしまった。
3/26sat
花種の 名を書く木札 二つ三つ
(はなだねの なをかくきふだ ふたつみつ)
※彼岸中には寒い日の戻りがあるというが、明け
て暖かさが戻ってきた。
春光や かおり貴き 娘あり
(しゅんこうや かおりとうとき むすめあり)
※初秋の9月に上総の国から京に向け、家族と旅
立った娘がいた。菅原孝標の娘13歳である。
この娘、源氏物語に憧れている更級日記の主役。
1020年のこと。ざっと1000年も前の話。
3/24thu
忘るるな メールで頼む さくら餅
(わするるな めーるでたのむ さくらもち)
花を見て より費やせり 御徒町
(はなをみて よりついやせり おかちまち)
※我が家のモモより早く開花したサクラも寒さで
もたもたしている。さて今日は?
3/22tue
春の雲 リルケ詩集の一個でも
(はるのくもりるけししゅうのいっこでも)
敦子女史 鴎外読めと言われ春
(あつこじょしおうがいよめといわれはる)
※春夏秋冬、読書の進まぬ理由をあれこれと並べ
る。今は眠気。
尾崎喜八「音楽への愛と感謝」(平凡社ライブ
ラリー)、著者は昔から尊敬する神様のような
人。怠る理由も許してくれる。
3/21mon
彼岸会も行った気になり庭の隅
(ひがんえもいったきになりにわのすみ)
山茱萸やウィルスいずれと思わしむ
(さんしゅゆやうぃるすいずれとおもわしむ)
※山間部に入ったところに山茱萸が咲き誇ってい
る里を見た。早春の花だが家の周囲では見かけ
ない。別名でハルコガネバナとか、幸運をもた
らすといい。
3/20sun
連翹や 登校の列より高く
(れんぎょうや とうこうのれつよりたかく)
連翹や 家建たぬ地の 主のごと
(れんぎょうや いえたたぬちの ぬしのごと)
3/19sat
落ち雲雀 見失わずに 草の陰
(おちひばり みうしなわずに くさのかげ)
今ならば 濃き草餅と 称えんが
(いまならば こきくさもちと たたえんが)
※母の草餅はヨモギが自ら選んで採集したものだ
けに草のにおい芬々で、子供の時分においしい
と言った記憶がない。
3/18fri
春眠や害鳥駆除のふれ聞こゆ
(しゅんみんやがいちょうくじょのふれきこゆ)
※曜日を決めて春秋に行う農村、野山での駆除。
害獣が対象の場合もある。猟銃を用いるのでオ
ダヤカではないが、実施反対派ではない。
3/17thu
涅槃会は 行けずに朝の まぼろしに
(ねはんえは いけずにあさの まぼろしに)
西行忌 彷徨ふ外の 兵ありて
(さいぎょうき さまよふとつの へいありて)
※旧暦2月15日は釈迦入滅の日。今年は中止。
西行はこの日にサクラの散る中で死にたいと歌
に詠み、何度も言っていたとか。なんと実際に
は翌日の16に亡くなった。
3/16wed
鳥曇り 北に平和を 言伝り
(とりぐもり きたにへいわを ことづてり)
※北に帰る準備に余念がない鴨たちに、せめても
のメッセージを託したつもり。
妻は日々 桃の蕾を 測りおり
(つまはひび もものつぼみを はかりおり)
※桃の開花の前にサクラが咲いてしまうのでは?
3/15tue
遅れ来し ラッパスイセン 仄かなり
(おくれきし らっぱすいせん ほのかなり)
※昨日の異常な暑さは植物に強烈な一撃になった
ようだ。圧巻は近所のふくらみかけた開花前の
木蓮が一日で全部開いたこと。見事を通り越し
て変身だ。脚色された舞台のよう。
3/14mon
子をなして 大事らくらく 嫁の春
(こをなして だいじらくらく よめのはる)
※甥の娘が嫁ぎ先で出産した。幼いころから男顔
負けのやんちゃぶりだったが、なるほど安産だ
ったらしい。電話口でも元気いっぱいだった。
3/13sun
花辛夷 今年は畔を 厚くせん
(はなこぶし ことしはあぜを あつくせん)
※東北地方では辛夷の花は農作業開始の目印とか。
当地では早い所で4月中旬に田植えをする。も
う農作業は始まっている。頑丈そうな分厚い畔
作りも今は機械が行う。
3/12sat
辛夷咲く 今年ラッパは 先駆けず
(こぶしさく ことしらっぱは さきげけず)
※辛夷が咲き始めた。上にコブシ、地にラッパス
イセンというのが定番だったが、今年は違う。
2月の寒さのせいか?でもサクラは例年並みだ
という。丈の短い植物が深刻に寒さの被害に遭
ったのかな。
3/11fri
昼前に 鶯餅の 店の前
(ひるまえにうぐいすもちのみせのまえ)
七輪の 目刺しのコゲと においかな
(しちりんの めざしのこげと においかな)
3/10thu
赤ともる ギフチョウを見し 春の茶屋
(あかともる ぎふちょうをみし はるのちゃや)
※友人が写真と文を担当した全編蝶のカレンダー。
3月は草丈も短い繁みに憩うギフチョウである。
3/9wed
雛仕舞う 長持ちの蓋 ギーとなり
(ひなしまう ながもちのふた ぎーとなり)
※余裕を持って雛を飾り、雛祭りが過ぎたら、だ
らだらせずに仕舞う。いずれにも気を配るゆと
りがあったものだ。
3/8tue
春蘭や病疲れの口多し
(しゅんらんややまいづかれのくちおおし)
※元気な知人が一人、ガンを患っている。なお意
気軒高で治療を受けてきたが、なかなか良い結
果が得られない。さすがに表情に弱さが見られ
るようになった。それでも話は殆ど先方から。
3/7mon
戸惑いぬ 溢るるほどの ミモザ来る
(とまどいぬ あふるるほどの みもざくる)
花ミモザ 図書館に行く 道しるべ
(はなみもざ としょかんにいく みちしるべ)
※例年よりずっと遅いミモザ。今年木を小ぶりに
しようというお宅から大きなバケツいっぱいの
ミモザが届いた。
3/6sun
春の路地 母の友 奥に住みたり
(はるのろじ ははのとも おくにすみたり)
※春一番の風もおさまる。この陽気は昔々の季節
の光景を運んでくる。
3/5sat
蕗の薹 秘めたる場所の いい時分
(ふきのとう ひめたるばしょの いいじぶん)
※昨年はゆったり構えていて終盤の食べごろのヤ
ツをごっそりやられたっけ。この暖かさだ。油
断は出来ない。
3/4fri
ラインにて 妹が句を見る 春の夕
(らいんにて いもがくをみる はるのゆう)
牡丹の芽 見知らぬ人に 教えられ
(ぼたんのめ みしらぬひとに おしえられ)
※兄弟とラインで顔を見たり、句を交換したり、
とてもコロナ禍前にはなぜか恥ずかしくて出来
なかったことだ。かと思うと初めての人に牡丹
の芽の違いを教えられたり、思わぬ交流は以前
と同じ。
3/3thu
雛の家 馳走したため 夕餉かな
(ひなのいえ ちそうしたため ゆうげかな)
※正式にお客を招いて食事をふるまう時には、そ
れがお祝い事でも不祝儀例えば法事とかの場合
でも、ご馳走を予め筆で認め、客に供したもの
だ。洋の東西を越えて共通しているものらしい。
3/2wed
低山の遠きにて春平らかなり
(ていざんのとおきにてはるたいらかなり)
※山高きがゆえに貴からず。房総の山々に高山は
ないが、深い無数の地の皺、人の住む多くの山
並みを作っている。低きがゆえにゆったりとた
おやかに見えることもある。
3/1tue
鷽を見し今日暖かき日となれり
(うそをみし きょうあたたかきひとなれり)
※今朝我が庭の梅の木に「鷽うそ」を見た。確か
に。頭の黒色、それに続くオレンジ・・・間違
いない。留鳥で今頃は低地で過ごすとあるから、
間違いないのだが何せ現れることが少ない。自
信はあるのだが、哀しいかな、ド素人+門外漢
だ。しかし人には尋ねない。しばらくは信じる
ことにした。
**********
2/28mon
西郷も 滴り弱き 春の雨
(さいごうも したたりよわき はるのあめ)
※今月は西郷輝彦が亡くなった。前立腺がんを患
っていたとか。合掌。多くのシニアが同じ道を
たどりつつある。小用は出るものの次第に弱く、
時間は長くなる。
2/27sun
移り紅 梅身を染めて 思い初む
(うつりべに うめみをそめて おもいそむ)
※梅の種類で移り紅というのは初め白で開花し、
次第に赤くなるらしい。2月の寒さ続きで梅の
開花は遅れていたが、この陽気で梅の恋が始ま
る?
草の芽の かすかな音の 続々と
(くさのめの かすかなおとの ぞくぞくと)
※球根類の芽出しが盛んだ。他の草花、雑草類も
一斉に地表に出るや、背を伸ばしている。
2/25fri
春の花 鬱なことども ともに増え
(はるのはな うつなことども ともにふえ)
※ウクライナ全土に。かの地の動向を日々記すこ
とはやめることとするが、どうにもこの鬱はや
るせない、見逃しがたい。
2/24thu
菠薐草 コロナ禍の年 青丈夫
(ほうれんそう ころなかのとし あおじょうぶ)
※昨日プーチンが動いた。
2/23wed
黒き幹 黒き節々 梅の花
(くろきみき くろきふしぶし うめのはな)
風の朝 初クロッカスの 地を割いて
(かぜのあさ はつくろっかすの ちをさいて)
2/22tue
看護師が 良く眠る夜 ヒヤシンス
(かんごしが よくねむるよる ひやしんす)
※都心で在宅医療の医院に勤務する親戚の娘が
帰ってきた。日頃心配し通しの親をよそ眼に、
実家での時間の大半をゆっくり眠って過ごし
たという。
2/21mon
全集に すき間のありて 漱石の日
(ぜんしゅうに すきまのありて そうせきのひ)
※今日2月21日は漱石が文部省から文学博士
の称号を打診され、肩書の要なしと回答して
辞退した日だとか。明治44年のこと。
2/20sun
旬の味 到着待てり 春灯り
(しゅんのあじ とうちゃくまてり はるあかり)
春の闇 再配達の 人の笑み
(はるのやみ さいはいたつの ひとのえみ)
※テレビの録画で「プレバト」を見た。お題は
「宅配の手渡し」であった。番組はいつもの
通りだったが、今回同じ題で自分も作ってみ
たのが上記の2句だ。いつも思っているが、
なかなか難しい、これだって「才能あり」は
難しかろうと思う。
2/18fri
電球に笠あり春に灯りあり
(でんきゅうにかさありはるにあかりあり)
※冷たい夕暮れ。近所の家に昔なじみの温かい
電球の灯りがともっている。昨今の明るいけ
れども真っ白な蛍光灯やLEDと違って、見て
いるだけで少しは温かくなってくる。
2/17thu
なすことのあれども春の朝寝かな
(なすことのあれどもはるのあさねかな)
遍路笠去年に廻りし人の笑み
(へんろがさこぞにまわりしひとのえみ)
※朝の夢うつつは値千金。日頃は犬の散歩で許
されないが、今朝だけは別。
友人の友人が四国遍路旅の話をしてくれた。
コロナ禍を思えば冒険と言うか一大決心であ
ったろう。彼に家族はいない。
2/15tue
房総の 光かくやと 春の海
(ぼうそうの ひかりかくやと はるのうみ)
※一年一回の脳MRI検査。昨日とは打って変わ
ってきれいに晴れ上がり、検査、診察後の展
望フロアからの景色が素晴らしい。やれやれ
また一年の命がつながった、と言えば大げさ
か?
2/14mon
ウクライナ 畑焼きしたき 人あらむ
(うくらいな はたやきしたき ひとあらん)
※今日一日は接種翌日とあって静養日。おかげ
で発熱、患部の疼痛、頭痛等は全くと言って
いいほどなかった。今回はモデルナ。
2/13sun
看護師の頬 冬残照の僅か
(かんごしの ほほ ふゆざんしょうのわずか)
※やっと3回目のワクチンを打った。周辺市町
村の知人よりはかなり遅め。4日前に接種券
が届いて、予約し、市の集中接種会場に行っ
た。かなり大勢の人がいた。医療関係の人が
言っていたが、遅れは明らかに接種券の配布
作業の遅れのせいだと。
2/11fri
剪定を 一日延ばす 余寒かな
(せんていを いちにちのばす よかんかな)
スコップも 農具も置いて 冴え返る
(すこっぷも のうぐもおいて さえかえる)
2/10thu
初午や 祠に餅の 紙包み
(はつうまや ほこらにもちの かみづつみ)
※農作業を始める日で、豊作を祈るお稲荷さん
のお祭り日とか。餅もそのままではなくて、
油で揚げたものだった。なるほどキツネ色だ。
2/9wed
針供養 和装で参る 生徒たち
(はりくよう わそうでまいる せいとたち)
※花嫁修業という言葉があった。生け花や茶道
は現在も盛んだが、めっきり姿を消したのは
洋裁、和裁の実用を兼ねた習い事。
2/8tue
マニキュアに選手の泪春灯り
(まにきゅあにせんしゅのなみだはるあかり)
※北京冬季五輪は悲喜こもごもの報道あり。
2/7mon
寝違えて 寒き春のみ 他見えず
(ねちがえて さむきはるのみ ほかみえず)
春嵐 ポンペイ見たし 上野は遠し
(はるあらし ぽんぺいみたし うえのはとおし)
※ポンペイレッドと呼ばれる色が印象的なモザ
イク画。関西の粋な日本家屋の壁色にも似た
色だ。
2/5sat
うかれ猫 続きし会は 画面越し
(うかれねこ つづきしかいは がめんごし)
※テレワークとかが普通になった今、積極的に
これを仲間内で活用する輩もいる。突如テレ
読書会をやろうとか、昔の同僚のテレビ顔合
わせをしようとか・・・。まあお断り。
テレビ飲み会に至っては仲間から「そのうち
春になったら」と遠ざけられたのにも拘わら
ず、立春のその日に呼びかけメールが再び舞
い込んだ。やれやれ・・・。
2/4fri
施設あり節分の声声続き
(しせつあり せつぶんのこえごえつづき)
春立ちて 咽喉を撫でさす 猫のおり
(はるたちて のどをなでさす ねこのおり)
2/2wed
冷蔵庫 朝に頓死す 春隣り
(れいぞうこ あさにとんしす はるどなり)
みぞれ日に 市原悦子の 声ありて
(みぞれびに いちはらえつこの こえありて)
※長いこと使ったものは不思議なことに同じよ
うな時期に更新時期が舞い込む。クルマも冷
蔵庫も・・・、心臓も消化器も・・・とかに
はならないようにしなくては。
2/1tue
大寒の地をはむ妻の新車赤
(だいかんのちをはむ つまのしんしゃあか)
※随分待たされた納車日が訪れた。今までのク
ルマとは年次が離れているので、安全機構や
ナビ、操作方法に至るまでかなり変化があり、
面食らっている。当家のクルマ使用と運転は
殆どが家内だが、慣れるまでは助け合いだ。
**********
1/30sun
蠟梅の寺は散歩に遠くなり
(ろうばいのてらはさんぽにとおくなり)
※片道4千歩近くの寺まで、久しぶりに今回は
クルマで赴いた。かすかだが馥郁とした香り
が漂っていた。以前は毎朝この近くまで歩い
て、帰路も徒歩だった。ところが歳だからと、
大して意識もせずに次第に歩数が減少してい
る。・・・歳と身体のいたわり過ぎかも。
1/29sat
春近し 仏頂面の 料理かな
(はるちかし ぶっちょうづらの りょうりかな)
※なんとなく春の兆しを追い求める気持ちがあ
る。確実な暦の展開をあてにしている。どこ
かでオミクロンの性状に気を許してるのかも
知れないが。
1/28fri
疎開知る 着ぶくれの人 門の内
(そかいしる きぶくれのひと もんのうち)
葬場の閉めたる広さ寒夜かな
(そうじょうのしめたるひろさかんやかな)
1/27thu
野水仙 はためくほどの 風となり
(のすいせん はためくほどの かぜとなり)
鉄火丼 どんと来たりて 寒四郎
(てっかどん どんときたりて かんしろう)
※世の中の活気という意味では否応なしの右往
左往、長い様子見だ。超越?至難の業だ。
1/24mon
三寒の膝粘り切り四温かな
(さんかんのひざねばりきりしおんかな)
動画が師 剪定すれば 春近し
(どうががし せんていすれば はるちかし)
※寒中冬籠りとは言え、コロナ禍対策としてで
あり、気分的には落ち着かない日々だ。読書
も切れ目だし、夢枕獏「白鯨」を読み始める。
アノ「白鯨」と較べれば超読みやすいが、
500頁超の厚さだ。
1/23sun
冬ざれや 故郷の大津絵 耳の底
(ふゆざれや くにのおおつえ みみのそこ)
※実に約60年ぶりに会津大津絵という民謡を
聞いた。祖母の小声の歌を聞いた時以来かも。
いくつもの曲がある中で、地味な曲調と戊辰
戦役とその後の暮らしをうたった歌詞は切々
と訴えるものがある。
1/21fri
新しき 回線通じ 今日大寒
(あたらしき かいせんつうじ きょうだいかん)
怒髪立つも 外の寒気で 鎮まれり
(どはつたつも そとのかんきで しずまれり)
※インターネット、光電話等の契約先を変更し
た。昨年の11月以来やっと全ての工事や手
続きが終了した。
1/20thu
蔵壁に 鴉の影が 日脚伸ぶ
(くらかべに からすのかげが ひあしのぶ)
※大寒の日。さすがに日没後は冷える。しかし
冬至から一カ月近くたって、夕方の定刻に出
かけると確実に明るくなってきている。冷え
てもアッタカイ感じだ。その足は鈍いが。
1/19wed
寒稽古 青の絵の具で 始め見ん
(かんげいこ あおのえのぐで はじめみん)
※千葉県も近く「蔓延防止」対象地域に指定さ
れる。絵画教室も今回で暫くは休止となる。
今年最初の会は季語「寒稽古」に当たるが、
絵の出来は並み。
1/18tue
軒めぐり どんどの藁を 給いたり
(のきめぐり どんどのわらを たまいたり)
※どんど焼きが近くの田んぼで町内ごとに行わ
れた。それに先立って子供たちは、風の吹く
寒い日に町内の商店などを回り、大声で藁を
出してもらった。あの頃の梱包の多くは稲わ
ら製の筵だった。
1/17mon
冬の虹告げ丁重な礼言われ
(ふゆのにじつげていちょうなれいいわれ)
この冬は 筆の遅きが さらになり
(このふゆは ふでのおそきが さらになり)
※何年か前から起こった手の強張り。やさしく
握って書く字がままならない。強張ってペン
先が暴走することもしばしば。それを避けよ
うとゆっくり、軽く・・・結果遅くなる。
1/16sun
寒寝床 本持つ指の 頼りなき
(かんねどこ ほんもつゆびの たよりなき)
※当地温暖ではあるが、エアコンなしの部屋の
未明はさすがにこたえる。「指出し手袋」の
出動も指先や腕全体の冷えにはかなわない。
1/15sat
ウィスキーの 新瓶となり 小正月
(うぃすきーの しんびんとなり こしょうがつ)
※小正月なんて一般家庭では半ば死語。小豆粥
とかどんど焼きとか遥か子供時代にははっき
り残っていたが。
1/14fri
雪の道 おすそ分けとて 姪来たる
(ゆきのみち おすそわけとて めいきたる)
※いただいたカステラがすごくおいしかったか
らと言う。2切れだけだけど、それで十分。
1/13thu
ツィッターも ラインも如かず 冬静寂
(つぃったーも らいんもしかず ふゆしじま)
※冷えたが穏やかに晴れ上がる。この静寂の魅
力に対抗できる音は? 主張と騒音のSMS、
ウィルス禍の激しい噂。・・・。
1/12wed
褞袍てふ 便利はなくて 読書かな
(どてらちょう べんりはなくて どくしょかな)
※椅子に座っても寝っ転がっても、上半身と手
元指先が寒い。ドテラとかワタイレとかが懐
かしい。ヒートテックとかではなくて。
1/11tue
布団干す狭くて二枚ばかりなり
(ふとんほすせまくてにまいばかりなり)
※男が設計した家は家事には不向きと、とかく
の不平には慣れているが、寒中の晴れ間に布
団を干そうとして今更自分でも実感。
1/10mon
寒中は 空のみの野の いとどなり
(かんちゅうは そらのみののの いとどなり)
目方増え 医師に年賀の 声低く
(めかたふえ いしにねんがの こえひくく)
※ここ7,8年安定していた体重が怪しい動き
を見せている。想定範囲をこの半月ほど飛び
ぬけている。一足早く緊急事態宣言発出か。
1/9sun
着ぶくれて 北の民話を 繰り出せり
(きぶくれて きたのみんわを くりだせり)
正月や 突然友の 顔と声
(しょうがつや とつぜんともの かおとこえ)
※おそるおそるLineで友達を増やす。思わぬと
ころで友人とテレビ電話で話した。テレワー
クとかテレビ会議とか世の中では盛んだが、
遅ればせながら。
1/8sat
緩斜面 ゆっくり滑るを 夢に見し
(かんしゃめん ゆっくりすべるを ゆめにみし)
初夢や 主席を好きに 握手せり
(はつゆめや しゅせきをすきに あくしゅせり)
※日頃の思いとは別に、いざ対面すると興奮し
て握手までしてしまう。目覚めて醜態とは思
うのだが。ホンマモノの外交もこうした、イ
デオロギー・安保・経済上の便益・歴史など
・・・複雑なファクターを内包しつつ、目先
の国益で動いてしまう。こんなことがあるの
では?
1/7fri
南房総の雪 子供連れ立ち
(みなみぼうそうのゆき こどもつれだち)
街灯の下に 無限の雪降りて
(がいとうのしたに むげんのゆきふりて)
寒の夜 根雪になれと 思いしも
(かんのよる ねゆきになれと おもいしも)
氷砕く クルマの音や 寒椿
(こおりさく くるまのおとや かんつばき)
※雪国生まれの小生にとって昨日の大雪は予想
外の吉事。雪が降りしきる時の吸音するかの
ような静寂を雪が上がった未明から今朝まで
感じていた。満足。
1/6thu
着ぶくれて 道守る人 旗持てり
(きぶくれて みちまもるひと はたもてり)
※普段の暮らしが始まった。通勤、工事・・・
と周囲を見ていたら、雪が降ってきた。見る
見る積もってきた。降り止まぬ。びっくり。
新年にドクター✕を待つ祈り
(しんねんにどくたーえくすをまついのり)
1/5wed
寒の入り 寝床の日記の 行僅か
(かんのいり ねどこのにっきの ぎょうわずか)
※三が日はすうーと過ぎ、早や今日は寒の入り。
寝床の腕、指は防寒対策を施しているが、さ
すがにそれでも冷たい。就寝は素早く、払暁
はゆっくりと・・・このパターンは抜け出せ
そうにない。
1/4tue
冬茜 坂の途中の 家なりき
(ふゆあかね さかのとちゅうの いえなりき)
※都心住まいの頃の通勤路が不思議と印象深い。
中でも毎日上り下りした坂道は四季の光景が
焼き付いている。
1/3mon
万両や 我が時代に 歌ありて
(まんりょうや わがじだいに うたありて)
※紅白歌合戦の歌にしても、現代の若い人々は
歌、楽曲に本当に恵まれているのだろうか?
と素直な疑念あり。今メディアの多様化の割
にその幅は狭いのでは? 拡散はするが模倣
と好みの境は漠としている。
1/1sat
元朝の 踏切の音 まっすぐ来
(がんちょうの ふみきりのおと まっすぐく)
元日や 妻は普段の 電話をし
(がんじつや つまはふだんの でんわをし)
※犬の散歩に盆も正月もない。ゆっくり帰って
きたら姪夫婦の年賀の来訪。嬉しいスタート。
**********
果樹の実の 普段のように 夏越しかな
(かじゅのみの ふだんのように なごしかな)
※家を取り巻くように狭い土地にいくつもの果
樹があり、今年も至極順調だ。このような酷
い環境でもと思わざるを得ない。今日も酷暑。
6/29wed
半休を 取りて谷中の 沙羅を見に
(はんきゅうを とりてやなかの しゃらをみに)
※勤務時代の半休を思い出した。昼前に会社を
辞すともう自由、どこに行ってもすぐそこ。
この季節には日暮里駅に行って、谷中、上野
を通って御徒町まで。こんなクソ暑い日では
なかった。
6/28tue
じりじりと 梅雨明けの日の 静かなる
(じりじりと つゆあけのひの しずかなる)
松落葉 園児マスクを 外さざる
(まつおちば えんじますくを はずさざる)
片陰を 六月とても 片陰を
(かたかげをろくがつとてもかたかげを)
※梅雨が明けた。今度の明け方が如何に稀なこ
とかを述べ立てる。仕方がない、こっちも茫
然自失である。
6/27mon
ニュース見る プラム凍るを 砕きおり
(にゅーすみる ぷらむこおるを くだきおり)
※ニュースを見続けることも戦争反対の意思表
示だとか。それにしてもかなりの苦痛を伴う。
ウ軍劣勢を仔細に伝える映像が続く、ついプ
ラムをがぶりと・・・。
いかん、いかん、昔の歯と違うのだから。
6/26sun
今朝1メートル20の桔梗咲く
(けさいちめーとるにじゅうのききょうさく)
生きており 鼻毛が騒ぐ 青葉風
(いきており はなげがさわぐ あおばかぜ)
6/25sat
後頭部 撮りて見入るや 夏の月
(こうとうぶ とりてみいるや なつのつき)
※「後ろ髪がもじゃもじゃだよ。床屋に行った
ら?」と言われて鏡の前に。スマホをかざし
カメラで見れば、自らの後頭部がチェックで
きる。「まだまだ大丈夫!」。しかし便利ば
かりではない。後頭部のてっぺんの薄さをい
やでも確認することになる。お月様。
6/24fri
返信に 水ようかんが あそことぞ
(へんしんに みずようかんが あそことぞ)
※妻の留守は四季を問わず快適だが、今日は当
地も初の真夏日になろうかという暑さ、節電
協力ではないがエアコンなしでいく。
6/23thu
沖縄忌 後の沖縄 よろしくと
(おきなわき のちのおきなわ よろしくと)
※1945年6月海軍司令官の大田実海軍中将
は自決直前に海軍次官にあてた電文で、沖縄
戦の惨状と沖縄県民の献身をつづり、「後世
特別の配慮を」と訴えた。
原文の最後は以下の通り。
「一木一草焦土ト化セン 糧食六月一杯ヲ支
フルノミナリト謂フ 沖縄県民斯ク戦ヘリ
県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ 賜ランコ
トヲ」
復帰後の50年、特別の配慮がなかったとは
思わないが、十分だったとはとても思えない。
6/21tue
夏至の陽は 毒消しとなる 街に出よ
(げしのひは どくけしとなる まちにでよ)
黄金虫 ぶどうの葉食う かすかなる
(こがねむし ぶどうのはくう かすかなる)
6/20mon
方丈を 走る囃子や 山車なくも
(ほうじょうを はしるはやしや だしなくも)
※夏の催しのお祭り、盆踊りを忘れないでと、
祭り囃子をスピーカーに載せたクルマが町内
を回る。かえって寂しいかな?とも思うが町
内の役員のせめてもの心配り。
6/19sun
父の日や 藤村が字を 真似しおり
(ちちのひや とうそんがじを まねしおり)
※父は若い頃から島崎藤村に傾倒していた。昭
和20年代の家の本棚に藤村全集が揃っていた
し、単行本、詩集も豊富だった。なによりの
証拠は藤村の字、書体に憧れ、懸命に真似て
いたことだ。毛筆もペン字も後年聞かされて
から眺めると随分似ている。さすがと思う。
6/17fri
梅雨昏し 四山のあるを 瞑想す
(つゆくらし しざんのあるを めいそうす)
※曇り空の裾に真っ黒な雲が広がり急に暗くな
った。暗さは増すのに雨は降り出さない。近
くに高い山があって周囲に立ち塞がっている
様を想像できる。
6/16thu
あじさいは 素焼きがいいか 惑いおり
(あじさいは すやきがいいか まどいおり)
鬼灯を 鳴らす名人 亡母なりき
(ほおずきを ならすめいじん ははなりき)
※赤く熟れた鬼灯の実を取り出し、楊枝等で慎
重に中の汁体(種?)だけを取り除け、外側
の皮のみとする。これを口に入れ、空気を入
れて膨らましたら舌と口蓋の間に挟んで空気
を出し、音を出す。
汁欲しさに何度も作りはしたが、一度も鳴っ
たことはなかった。
6/15wed
梅雨寒や テレビの欄は スルーして
(つゆざむや てれびのらんは するーして)
アジサイや 紙と腕を越え 色過剰
(あじさいや かみとうでをこえ いろかじょう)
※絵画教室も地味に控えめな集まりを続けてい
るうちに、当市コロナ禍もはっきり下火にな
ってきた。持ち寄ったアジサイは色の多彩さ
だけでなく、形も様々だ。描くには当惑気味。
6/14tue
虞美人草 昭和遠しに 頷きし
(ぐびじんそう しょうわとおしに うなづきし)
※降る雪や明治は遠くなりにけりは大学生だっ
た中村草田男が昭和6年に詠んだ名句。明治
が行って20年の頃、昭和が行って今は34
年。計算するまでもないが。
6/13mon
妻帰る 三浦三崎の 開き鯵
(つまかえる みうらみさきの ひらきあじ)
※フェリーで久里浜から帰って来る。こっち岸
も魚は本場だが、持たされるままに鯵の干物、
申し分ない。
6/11sat
値上げにも 三度の飯や 梅雨晴れ間
(ねあげにも さんどのめしや つゆはれま)
泰山木 エバーグリーンと 唱えた日
(たいさんぼく えばーぐりーんと となえたひ)
※元勤務先製鉄所の50年間の軌跡をドキュメン
タリーに仕立てて放映していた。懐かしかっ
た。50年前の発足時の熱い思いは事業の様変
わりはあっても今も当事者の胸の中にあると
感じた。
6/10fri
立葵 赤を框の 前に見る
(たちあおい あかをかまちの まえにみる)
※当地ではタチアオイの咲き始めと琉球月見草が
いつもいっしょだ。そしてタチアオイの最初は
大抵赤。今年はそれらよりも梅雨の入りが先行
した。
6/9thu
方丈記 古き女優の 声のごと
(ほうじょうき ふるきじょゆうの こえのごと)
※愛聴していたYouTubeコンテンツが消え怒っ
ていたが、そこは無尽蔵、類似サイトも多く、
探す楽しみを味わっている。方丈記解説文の
朗読ではナレーターがあの田中絹代の声のソ
ックリさんで気に入っている。
6/8wed
盆踊り 中止を決めて 梅雨入りぬ
(ぼんおどり ちゅうしをきめて つゆいりぬ)
※町内の役員会、3年連続で盆踊り取りやめを
決めた。子供や年寄り中心の催しだから、も
しものことを考えての決断。
6/6mon
蜻蛉消え 紫式部も 五月闇
(かげろうきえ むらさきしきぶも さつきやみ)
※YouTubeで聴いてきたNHK古典講座「紫式部
日記」が忽然と消えた。NHK関連の著作権者
側がアカウントごと消去したらしい。
ウワー、突然こんなことがァ・・・愕然とし
た。王朝日記シリーズでは更級日記、和泉式
部日記、蜻蛉日記と聴いてきたが、それらは
全部消えた。いずれ繰り返し聴くはずだった。
6/4sat
うこぎ味噌 作らず終いと いい給ふ
(うこぎみそ つくらずじまいと いいたもう)
※格好の話題にうこぎ味噌が浮かび電話をした
が、今年はとりやめたと。垣根の新芽がやや
少なかったから様子を見ているうちに・・・、
とのことだ。電話することが目的だった。
うこぎの天ぷらが話題になった。ネットで買
えるかな。
6/3fri
五月晴 早書き無理も 苦にならず
(さつきばれ はやがきむりも くにならず)
※しゃちほこばって字を書くと手と指がこわば
って、ひどい時には筆が暴走する。気をとり
直して持ち直して書くと回復する。結構同じ
症状の人がいるという。老化現象の一つとか。
なに、緊張して字を書く機会なんて殆どない
し、あってもゆっくり書けばいい。
6/2thu
あじさいや 慎重いまだ 剥がれざる
(あじさいや しんちょういまだ はがれざる)
ドクダミの 節で曲りて 武骨なる
(どくだみの ふしでまがりて ぶこつなる)
6/1wed
夏空や いとうあさこの 生きるって
(なつぞらや いとうあさこの いきるって)
※ラジオのインタビュー番組で「いとうあさこ」
を聞いた。最後半でこれからの抱負と訊かれ、
ただ「生きる」、「生きること」って答えて
いた。孤独な気っ風を感じたね。
**********
5/31tue
南瓜咲く 雄しべ貰いて 婿となす
(かぼちゃさく おしべもらいて むことなす)
※初夏の間は虫たちに任せておけない。しかし
雌しべと雄しべがタイミング良く揃わないこ
とがある。そこで隣近所の畑に声をかける。
5/30mon
祭り化粧 見知らぬ顔と なりて笑む
(まつりげしょう みしらぬかおと なりてえむ)
5/28sat
御用聞き バイクが登る 五月晴
(ごようきき ばいくがのぼる さつきばれ)
※原付バイクと今も言うのか?軽いエンジン音
でゆっくり急坂を登っていく。新緑の坂道。
御用聞きに違いないと思った。御用聞き?今
どき? あの音、ポンポン蒸気を思い出した。
古いなァ。
5/27fri
風薫る さすが汀子の 遺文かな
(かぜかおる さすがていこの いぶんかな)
※虚子の孫稲畑汀子がこの2月に亡くなった。
父の後を継いでホトトギスの大所帯を切盛り
した。最晩年の素直な句境は得難い。
5/26thu
空想は 卯の花髪に 飾る人
(くうそうは うのはなかみに かざるひと)
※NHKの古典講読、王朝日記の世界はいよいよ
「紫式部日記」に入った。散歩しながらYou
Tubeで聞き流しするのだから、もとよりいい
加減なものなのだが、何回か同じところを繰
り返し聞くものだから何%かは頭に残る。原
文に親しむには程遠いが・・・。
既に終わった「更級日記」「和泉式部日記」
「蜻蛉日記」に較べると、理解度がいいのは
何故だろう。ホッとしている。
5/25wed
バイカウツギ バッハの森の ふところに
(ばいかうつぎ ばっはのもりの ふところに)
※バッハのピアノ曲はもっぱらグールドで聴く
ようになった。バッハとて最近はやや凝った、
変形気味の演奏が目立つ中で、正統派の演奏
を聴く思いがする。あのグールドがである。
5/24tue
蘇る バラはアーチを またぎ咲く
(よみがえる ばらはあーちを またぎさく)
グールドの 親ほどになり 五月雨
(ぐーるどの おやほどになり さつきあめ)
※一回り年長のグールドをその活躍の時代から
愛聴している。50歳で急逝した彼は、今や自
分の子供の年齢だ。高価なレコードはお宝も
のだが、YouTubeで毎日のように違った彼を
聴けるのも今日なればこそ。演奏しながらの
ハミングというかうなりというべきか、これ
もちゃんと残っている。(1932-1982)
5/23mon
泰山木 見上げるほどに 蕾増え
(たいさんぼく みあげるほどに つぼみふえ)
※その蕾の小さいうちは葉裏の色と混じり合い
わからない。5月20日を過ぎる辺りでと次
々と大きくなり、真っ白な見事な蕾に、そし
てやがて花開く。この季節に亡くなった母の
記念樹と一人で決めている。
5/22sat
柿若葉 セピアな祖母の 顔ほどに
(かきわかば せぴあなそぼの かおほどに)
※昔は写真はなんであれ貴重だった。黒いシー
トの厚いアルバムに貼られた写真は枚数が限
られたが故に、その時々を思い返す手段だっ
た。それが今は・・・省略。
5/20fri
普段着を 詫びて淑女の バラの香を
(ふだんぎを わびてしゅくじょの ばらのかを)
※バラ園は谷津遊園の跡地。遊園はライダーや
プールなど先端の施設を誇ったが、昭和57年
に閉園した。40年も前のことだ。
行かばやと思いし園は白黒の
写真となりてバラ園飾る
5/19thu
バラに寄す 皺ものびてる 至福かな
(ばらによす しわものびてる しふくかな)
※開花の盛りを越えたというので急遽谷津バラ
園に出掛けた。駐車場を心配したが、ウィー
クデイの午後でなんなくセーフ。幸せそうな
顔、顔がいっぱい。時間ゆっくり。
5/17tue
神田祭 女坂急を ものとせず
(かんださい おんなざかきゅうを ものとせず)
※神田祭は今年2022年偶数年とかで陰祭。ハイ
ライトのひとつ神輿宮入とかは行われなかっ
た。境内からお囃子が聞こえてくると、明神
下から女坂の石段を駆け上がる。比較的近く
に住んでいた頃の、昔々のお話。
5/16mon
カレンダーに桃の摘果と書き込みぬ
(かれんだーにもものてきかとかきこみぬ)
※晴れたら・・・、草むしり、カイガラムシ退治、
ぶどう誘引、桃摘果と労働項目が増えていく。
雨模様のままでもいいっていう気になってきた。
5/15sun
ジャガイモの 花は色あり 長雨よ
(じゃがいもの はなはいろあり ながあめよ)
夕闇に カラー一列 浮かびおり
(ゆうやみに からーいちれつ うかびおり)
※今年4月後半以降関東地方の南部は不純な天候
が続く。ここ房総半島は長雨の後も曇りが続き、
今日も雨模様。
5/14sat
梅雨前の なお梅雨らしき 雨雨が
(つゆまえの なおつゆらしき あめあめが)
薔薇見行 晴れの予想に 恵まれず
(ばらみこう はれのよそうに めぐまれず)
苗見やる 暇なき雨 線状の
(なえみやる いとまなきあめ せんじょうの)
5/13fri
新緑や 名前をずっと 思い出しつつ
(しんりょくやなまえをずっとおもいだしつつ)
※新緑は今が最高。家を出るときから或る人の名
前が思い出せないままだ。目は新緑を愛でてい
る。・・・夏めく、認知症めく。後期高齢者の
暗記試験は満点だったのに・・・。
5/12thu
薔薇の花 吉事を待たず 咲き揃う
(ばらのはな きちじをまたず さきそろう)
雨雲に追われ 野ばらの家の前
(あまぐもにおわれ のばらのいえのまえ)
5/11wed
夏めいて 頭の吹き出 消えにけり
(なつめいて あたまのふきで きえにけり)
※晴れた一日、この時節は寒くも暑くもなく、湿
度も低いし、空気が澄んで正に薫風の光景。一
番贅沢な一日。
5/9mon
青堀の 駅の前なる 古墳初夏
(あおほりの えきのまえなる こふんしょか)
※千葉県は古墳の数では近畿諸府県に比しても遅
れをとらぬ多さであるという。案内板、説明板
の充実、メディアでのアピールなどPRに努めて
いる。
5/8sun
年一度 筍掘りて 友となり
(ねんいちど たけのこほりて ともとなり)
筍を 分けて竹婆の 友となり
(たけのこを わけてちくばの ともとなり)
筍で 通じ壮なり 三品食い
(たけのこで つうじそうなり みしなくい)
※当地の孟宗竹掘りはもう終盤。タケノコ三句。
殆ど川柳だが、家内とその友に感謝。小生はお
相伴に与っている。
5/6fri
立夏の日 カイガラムシの 蔓延れる
(りっかのひ かいがらむしの はびこれる)
今ほどに 端午の写真 あらばこそ
(いまほどに たんごのしゃしん あらばこそ)
※端午の節句に立派な武者人形の前で微笑む男の
子の映像を見た。晴れの舞台にいい写真もムー
ビーすら手軽に残せる時代だなと思ったが、今
日どれだけの家庭でこうした節目節目のお祝い
や、季節の催しをしているだろうか? ネック
はお金ではない。
5/5thu
半袖や オランダ帰りの 鯉のぼり
(はんそでや おらんだがえりの こいのぼり)
大凧や 駐車場行く 連法被
(おおだこや ちゅうしゃじょういく れんはっぴ)
浜松や 大人の揚げる 凧の音
(はままつや おとなのあげる たこのおと)
※5月連休後半に浜松の大凧上げが開催される。
「浜松まつり」という。久しぶりのほぼフルバ
ージョンとか。風がなければ凧が上がらず、
あればあったで凧が乱舞して合戦ともなれば恐
ろしいまでの音が響く。
5/4wed
蝶々が 世をば明るく してもなお
(ちょうちょうが よおばあかるく してもなお)
店先の 春のブラウス 少し褪せ
(みせさきの はるのぶらうす すこしあせ)
5/3tue
春愁を払いのけよと一日吹く
(しゅんしゅうをはらいのけよとひとひふく)
春の雨 人犬濡れて 意気いまだ
(はるのあめ ひといぬぬれて いきいまだ)
※今日は打って変わってきれいな晴れ日。気温も
ぐんぐん上がる。当地観光地とされる所の一部
をを巡回? どこも連休の人出という感じが戻
っている。テークアウトの弁当をクルマの中で
食べると、こちらも外出・外食をした気分にな
った。
5/2mon
八十八夜 欠けたる急須 捨てられず
(はちじゅうはちや かけたるきゅうす すてられず)
春昼や 鮮魚卸しは 店洗う
(しゅんちゅうや せんぎょおろしは みせあらう)
5/1sun
バス停の あるコンビニに 春幟
(ばすていの あるこんびにに はるのぼり)
春の風 今年一枚 耕さず
(はるのかぜ ことしいちまい たがやさず)
※新たに休耕田かと思ったが、品種別の需給の関
係だとか。一時は稲作担い手の減少・高齢化で
休耕田が増え、やがて担い手の統合と耕作大規
模化とで今はほぼ安定していると聞いていたが、
様々な事情があるようだ。
**********
4/30sat
我が道を 行く人稀に 荷風の忌
(わがみちを いくひとまれに かふうのき)
白足袋の 軒に干されて 四月尽
(しろたびの のきにほされて しがつじん)
※NHKの王朝文学講座をYouTubeで聴き始めて3
カ月。更級日記、和泉式部日記を聞き流した。
犬の散歩の途中にである。それでも多く登場す
る和歌に接して親しみを感じるようになった。
今日の後者の句にも、続けて七七が出る。上等
ではないが。
「白足袋の 軒に干されて 四月尽
紺地の足袋の 普段なつかし」
「良いことの ながりし四月 疾く過ぎん
枕に脈の 音の健やか」
4/29fri
あちこちで 遂に顔伏す 目借時
(あちこちで ついにかおふす めかりどき)
合宿所 窓開け放つ 春の闇
(がっしゅくじょ まどあけはなつ はるのやみ)
※コロナ禍の近況2句。図書館は読書室使用を条
件付きで再開。隣の人が遠いのでつい安心して
コックリ。昨年クラスターを出してしまった高
校の大きな合宿所は今なお閉鎖中。
4/28thu
新年度 なお坂道の 塾通い
(しんねんどなおさかみちのじゅくがよい)
雪形を 見る人しのぶ メールかな
(ゆきがたをみるひとしのぶめーるかな)
4/27wed
描きつつ 春は病いの 憂さくらべ
(えがきつつ はるはやまいの うさくらべ)
オオデマリ アイリスともに 吾嬲り
(おおでまり あいりすともに われなぶり)
※月2回の絵画教室は絵よりもおしゃべり? オ
オデマリと紫色のアイリスの対照の妙は難しす
ぎる。
4/26tue
草を刈る 鎌の研ぎ初め 日永かな
(くさをかる かまのとぎそめ ひながかな)
ようやくの雨音や 晩春を寝る
(ようやくのあまおとや ばんしゅんをねる)
4/25mon
逃げ水の 先に閉じにし 校舎あり
(にげみずのさきにとじにしこうしゃあり)
※こちらも御多聞に漏れず郊外の小中学校を中心
になお統廃合の話がある。生活圏、友人知人、
仕事や親戚などとの関係、果ては選挙の地盤な
ど、近くに訊けばナルホドと同情が大きくなる。
4/24sun
女二人 スイカの苗の 良し悪し
(おんなふたり すいかのなえの よしわるし)
※当地で西瓜の苗が植え時。例年のごとく2苗だ
けポットで買ってきた。ちょっと遅めのわりに
値段が安い。それでは接ぎ木の苗ではないなと
疑う。案の定。
4/23sat
春の黄に 土偶のまなこ 和らげり
(はるのきに どぐうのまなこ やわらげり)
石楠花や 女御の日記 思わるる
(しゃくなげや にょうごのにっき おもわるる)
4/22fri
田は霞む 植うる順番 我にあり
(たはかすむ ううるじゅんばん われにあり)
すみれ野に埃 顔出す戦車兵
(すみれのにほこり かおだすせんしゃへい)
※ウクライナの要衝マウリポリをめぐる局面が
最終期にある。すみれ野と街を蹂躙すること
は許されない。兵は無表情だ。
4/21thu
ミズキ咲き 木の花なべて 白い朝
(みずきさき きのはななべて しろいあさ)
※石楠花の白い花が満開で、白の花ミズキとク
レマチスが加わった。この季節は期せずして
我が家の庭はちょっと大仰だが「白の競演」
となる。花ニラの消えたあとには白い小さな
ユリ形の花が咲いて、地で白の駄目押しをし
ている。
4/20wed
城はサクラ 路地には黒き 板の塀
(しろはさくら ろじにはくろき いたのへい)
※郷里会津のサクラの盛りは子供時代の昔4月
20日前後であったと思う。戊辰戦役で城下
中心部の古い建物は残っていなかったが、城
下町の人の風情とその人々が家屋に託す矜持
がここかしこにあった(ように思う)。
4/19tue
こころみの 源氏分厚き 春の宵
(こころみの げんじぶあつき はるのよい)
※YouTubeのNHK古典講座で「更級日記」を散
歩の時に聞いている。慣れないことだけれど、
せっかくのスマホのギガを有効活用!するた
めだ。テキストもなし、理解不十分も気にし
ないで、45分×27回を一周聞き終えた。
かなりの新発見があり、大雑把でも習得の体
験は実に久しぶりだ。作者の源氏物語への傾
倒ぶりが随所に現れることも初めてわかった。
4/18mon
風やんで ほんの春雨 耳たてる
(かぜやんで ほんのはるさめ みみたてる)
奥穂高 置きし小石よ 風光る
(おくほだか おきしこいしよ かぜひかる)
めがねかけ 少なくなりし 芹摘みぬ
(めがねかけ すくなくなりし せりつみぬ)
4/16sat
数を聞く 老舗爺売る 桜餅
(かずをきく しにせじじうる さくらもち)
※この季節は桜餅専業とも見える。うーん、や
っぱりコンビニ買いのものとは違う。
花ミズキ 宝飾着物 買い取ると
(はなみずき ほうしょくきもの かいとると)
4/15fri
観音堂 五百年の春 大庇
(かんのんどう ごひゃくねんのはる おおひさし)
※桜見物の足を伸ばし、鳳来寺観音堂再訪を果
たした。初めの時よりしっかり保全されてい
るようで一安心。相変わらずの優美さ。周囲
のサクラを眺めて弁当を開く。
4/14thu
葉桜や 病院互いに 付き添いぬ
(はざくらや びょういんたがいに つきそいぬ)
石楠花の 蕾落とさじ 妻の声
(しゃくなげの つぼみおとさじ つまのこえ)
4/13wed
啄木忌 費え支えし 金田一
(たくぼくき ついえささえし きんだいち)
※同郷の先輩金田一京助は文学上の付き合いの
みならず、常に貧困だった東京の啄木に何く
れとなく援助をした。ちなみに小生の中高使
用の国語辞書は金田一の手になるものだ。
4/12tue
花ニラの 群れるを踏まず 猫黒子
(はなにらの むれるをふまず ねこくろこ)
花冷えや 今宵だけとて 床の暖
(はなびえや こよいだけとて とこのだん)
4/11mon
高齢者試験通れり春の膳
(こうれいしゃしけんとおれりはるのぜん)
※家人の免許更新試験、難関の暗誦試験を優秀
な成績で通過したらしい。これは医者の見立
て以上に安心材料、目出度い。
4/10sun
春の朝手の皺深くなりにけり
(はるのあさてのしわふかくなりにけり)
人間は退歩するらし春爛漫
(にんげんはたいほするらしはるらんまん)
4/9sat
山小屋の 春曙は 闇多く
(やまごやの はるあけぼのは やみおおく)
※久しぶりに若い時に山に行った夢を見た。真
っ暗な中でここはどこだろうと息をひそめて
いると、僅かな窓に山が次第に見えてきた。
安心。山小屋だ、ここは。
4/7thu
風車売り 夢に長屋の前におり
(かざぐるまうり ゆめにながやのまえにおり)
春灯 女二人の 声低く
(はるあかし おんなふたりの こえひくく)
※春は茫漠と夢に遊び、覚めては霞の果てに夕
日を見送る。やや退廃的な心地こそ、季節の
特権なりしも、それを許さざるはだれ。
4/6wed
眺めては また剪定の 日和かな
(ながめては またせんていの ひよりかな)
※柿の木も若芽が出てきた。当家で図抜けて遅
いのはぶどうだ。剪定は一応終えているので
格子のバーに誘引する。これもYouTubeで学
習したから方法は進化したはずだ。
ところが剪定のやり残しが多く見つかる。や
っぱり杜撰だな。
4/4mon
花冷えや 親のビデオの 仕舞い方
(はなびえや おやのびでおの しまいかた)
※生前の両親を撮影したビデオが結構ある。い
ずれもちゃんと編集整理したものだ。他のメ
ディアは散逸しても一向に構わないが、これ
だけは親の面影を残す唯一のものであり、大
げさだが墓をどう整理して後につなぐかを考
えるのと同じ心境だ。
4/3sun
蝉貰う人 喜寿となる 連翹忌
(せみもらうひと きじゅとなる れんぎょうき)
※4月2日は高村光太郎の命日。連翹忌という。
30年ほども前の出張の帰りに、友人と花巻市
郊外の高村光太郎旧居を訪れた。辺り一面深い
雪が積もっていて、今のように保存のための上
屋がなかった旧居は見るからに粗末で寒く、す
き間から雪原が覗けた。戦後すぐに、宮沢賢治
の縁繋がりでこの地を選び、隠れ住むように囲
炉裏に坐して自戒自省の数年を過ごした。
近くに農家はない、地元の人とも交わりを避
けていた。例外は村の子供たちで交遊があった
とか。特に花巻まで買い出しに行ってもどる光
太郎から飴玉を貰うのが楽しみだったと言う。
小さな彫り物を貰うこともあったとか。当時の
子供の一人が、たまたま我々が利用したバスの
運転手だった。発車時刻までの生き証人?の話。
4/2sat
ジャカランダ
ホウオウボクになに 四月バカ
(じゃからんだ ほうおうぼくになに しがつばか)
※熱帯三大花樹のことを言っている。もう一つは
アフリカン・チューリップ・ツリー。別名カエ
ンボク。日本でいうチューリップツリー(別名
半纏の木)とは似ても似つかぬが。
友人撮影の写真が載る蝶のカレンダー、4月は
ホウオウボクの真っ赤な花、花、花に憩うヘレ
ナキシタアゲハ。
4/1fri
柳芽吹く 根岸の里の くねり道
(やなぎめぶく ねぎしのさとの くねりみち)
※都心を歩く会は中断して久しい。遠慮のない友
人と連れ立っての歩き会は実に楽しいものだっ
た。子規庵を訪ねたあと根岸の古い道を辿ると
青々とした柳並木の道があった。5年ほども前
になる。季節は違うが光景がよみがえる。今は
子規庵も閉鎖中と聞いた。
**********
3/31thu
春に惑う 田舎住まいと 街住まい
(はるにまどう いなかずまいと まちずまい)
※コロナ禍で「なにがなんでも都会で」という考
えが見直されているという。もっと積極的に首
都東京と東京圏の規模縮小を図るべきだと思う。
事が起こったときに今の首都圏はゆとりが無さ
過ぎるからだ。しかし・・・
折しもこの週末、目黒川花見と宴会の席に誘わ
れた。即刻OK、久しぶりに歩きたい。いや、
やめとけ。
3/30wed
紫雲英田は みちのくにあり トラクター
(げんげだは みちのくにあり とらくたー)
※ようやく田んぼに人の動きが見えた。これから
春耕というか、4月中旬以降の田植えに向けた
耕しが始まる。間に合うのかなと心配になる。
3/29tue
落ち雲雀 見失うほど 草はなし
(おちひばり みうしなうほど くさはなし)
※雲雀は地方によっては姿を消したところもある
とか。ふんだんに見れる当地のアリガタミを再
認識。とはいえ、高速道路の騒音がなかった頃
はさらに格段に良かったのだが。
3/28mon
花曇り 夕餉の好み 尋ねらる
(はなぐもり ゆうげのこのみ たずねらる)
※ご飯のおかずを言い合っているとはなんと平和
ボケで、能天気なことか!と一喝されそうな塩
梅だ。まあ、いいではないか。・・・ちゃんと
ニュースは見ているし。
3/27sun
釘付けは 一人静よ 露天風呂
(くぎづけは ひとりしずかよ ろてんぶろ)
※午後になって雨模様だが気温は下がらない。当
家の桃の花は一気に開く。陽光桜、ソメイヨシ
ノ、桃、プラムなどの開花順はどうであったか、
記憶も曖昧になってしまった。
3/26sat
花種の 名を書く木札 二つ三つ
(はなだねの なをかくきふだ ふたつみつ)
※彼岸中には寒い日の戻りがあるというが、明け
て暖かさが戻ってきた。
春光や かおり貴き 娘あり
(しゅんこうや かおりとうとき むすめあり)
※初秋の9月に上総の国から京に向け、家族と旅
立った娘がいた。菅原孝標の娘13歳である。
この娘、源氏物語に憧れている更級日記の主役。
1020年のこと。ざっと1000年も前の話。
3/24thu
忘るるな メールで頼む さくら餅
(わするるな めーるでたのむ さくらもち)
花を見て より費やせり 御徒町
(はなをみて よりついやせり おかちまち)
※我が家のモモより早く開花したサクラも寒さで
もたもたしている。さて今日は?
3/22tue
春の雲 リルケ詩集の一個でも
(はるのくもりるけししゅうのいっこでも)
敦子女史 鴎外読めと言われ春
(あつこじょしおうがいよめといわれはる)
※春夏秋冬、読書の進まぬ理由をあれこれと並べ
る。今は眠気。
尾崎喜八「音楽への愛と感謝」(平凡社ライブ
ラリー)、著者は昔から尊敬する神様のような
人。怠る理由も許してくれる。
3/21mon
彼岸会も行った気になり庭の隅
(ひがんえもいったきになりにわのすみ)
山茱萸やウィルスいずれと思わしむ
(さんしゅゆやうぃるすいずれとおもわしむ)
※山間部に入ったところに山茱萸が咲き誇ってい
る里を見た。早春の花だが家の周囲では見かけ
ない。別名でハルコガネバナとか、幸運をもた
らすといい。
3/20sun
連翹や 登校の列より高く
(れんぎょうや とうこうのれつよりたかく)
連翹や 家建たぬ地の 主のごと
(れんぎょうや いえたたぬちの ぬしのごと)
3/19sat
落ち雲雀 見失わずに 草の陰
(おちひばり みうしなわずに くさのかげ)
今ならば 濃き草餅と 称えんが
(いまならば こきくさもちと たたえんが)
※母の草餅はヨモギが自ら選んで採集したものだ
けに草のにおい芬々で、子供の時分においしい
と言った記憶がない。
3/18fri
春眠や害鳥駆除のふれ聞こゆ
(しゅんみんやがいちょうくじょのふれきこゆ)
※曜日を決めて春秋に行う農村、野山での駆除。
害獣が対象の場合もある。猟銃を用いるのでオ
ダヤカではないが、実施反対派ではない。
3/17thu
涅槃会は 行けずに朝の まぼろしに
(ねはんえは いけずにあさの まぼろしに)
西行忌 彷徨ふ外の 兵ありて
(さいぎょうき さまよふとつの へいありて)
※旧暦2月15日は釈迦入滅の日。今年は中止。
西行はこの日にサクラの散る中で死にたいと歌
に詠み、何度も言っていたとか。なんと実際に
は翌日の16に亡くなった。
3/16wed
鳥曇り 北に平和を 言伝り
(とりぐもり きたにへいわを ことづてり)
※北に帰る準備に余念がない鴨たちに、せめても
のメッセージを託したつもり。
妻は日々 桃の蕾を 測りおり
(つまはひび もものつぼみを はかりおり)
※桃の開花の前にサクラが咲いてしまうのでは?
3/15tue
遅れ来し ラッパスイセン 仄かなり
(おくれきし らっぱすいせん ほのかなり)
※昨日の異常な暑さは植物に強烈な一撃になった
ようだ。圧巻は近所のふくらみかけた開花前の
木蓮が一日で全部開いたこと。見事を通り越し
て変身だ。脚色された舞台のよう。
3/14mon
子をなして 大事らくらく 嫁の春
(こをなして だいじらくらく よめのはる)
※甥の娘が嫁ぎ先で出産した。幼いころから男顔
負けのやんちゃぶりだったが、なるほど安産だ
ったらしい。電話口でも元気いっぱいだった。
3/13sun
花辛夷 今年は畔を 厚くせん
(はなこぶし ことしはあぜを あつくせん)
※東北地方では辛夷の花は農作業開始の目印とか。
当地では早い所で4月中旬に田植えをする。も
う農作業は始まっている。頑丈そうな分厚い畔
作りも今は機械が行う。
3/12sat
辛夷咲く 今年ラッパは 先駆けず
(こぶしさく ことしらっぱは さきげけず)
※辛夷が咲き始めた。上にコブシ、地にラッパス
イセンというのが定番だったが、今年は違う。
2月の寒さのせいか?でもサクラは例年並みだ
という。丈の短い植物が深刻に寒さの被害に遭
ったのかな。
3/11fri
昼前に 鶯餅の 店の前
(ひるまえにうぐいすもちのみせのまえ)
七輪の 目刺しのコゲと においかな
(しちりんの めざしのこげと においかな)
3/10thu
赤ともる ギフチョウを見し 春の茶屋
(あかともる ぎふちょうをみし はるのちゃや)
※友人が写真と文を担当した全編蝶のカレンダー。
3月は草丈も短い繁みに憩うギフチョウである。
3/9wed
雛仕舞う 長持ちの蓋 ギーとなり
(ひなしまう ながもちのふた ぎーとなり)
※余裕を持って雛を飾り、雛祭りが過ぎたら、だ
らだらせずに仕舞う。いずれにも気を配るゆと
りがあったものだ。
3/8tue
春蘭や病疲れの口多し
(しゅんらんややまいづかれのくちおおし)
※元気な知人が一人、ガンを患っている。なお意
気軒高で治療を受けてきたが、なかなか良い結
果が得られない。さすがに表情に弱さが見られ
るようになった。それでも話は殆ど先方から。
3/7mon
戸惑いぬ 溢るるほどの ミモザ来る
(とまどいぬ あふるるほどの みもざくる)
花ミモザ 図書館に行く 道しるべ
(はなみもざ としょかんにいく みちしるべ)
※例年よりずっと遅いミモザ。今年木を小ぶりに
しようというお宅から大きなバケツいっぱいの
ミモザが届いた。
3/6sun
春の路地 母の友 奥に住みたり
(はるのろじ ははのとも おくにすみたり)
※春一番の風もおさまる。この陽気は昔々の季節
の光景を運んでくる。
3/5sat
蕗の薹 秘めたる場所の いい時分
(ふきのとう ひめたるばしょの いいじぶん)
※昨年はゆったり構えていて終盤の食べごろのヤ
ツをごっそりやられたっけ。この暖かさだ。油
断は出来ない。
3/4fri
ラインにて 妹が句を見る 春の夕
(らいんにて いもがくをみる はるのゆう)
牡丹の芽 見知らぬ人に 教えられ
(ぼたんのめ みしらぬひとに おしえられ)
※兄弟とラインで顔を見たり、句を交換したり、
とてもコロナ禍前にはなぜか恥ずかしくて出来
なかったことだ。かと思うと初めての人に牡丹
の芽の違いを教えられたり、思わぬ交流は以前
と同じ。
3/3thu
雛の家 馳走したため 夕餉かな
(ひなのいえ ちそうしたため ゆうげかな)
※正式にお客を招いて食事をふるまう時には、そ
れがお祝い事でも不祝儀例えば法事とかの場合
でも、ご馳走を予め筆で認め、客に供したもの
だ。洋の東西を越えて共通しているものらしい。
3/2wed
低山の遠きにて春平らかなり
(ていざんのとおきにてはるたいらかなり)
※山高きがゆえに貴からず。房総の山々に高山は
ないが、深い無数の地の皺、人の住む多くの山
並みを作っている。低きがゆえにゆったりとた
おやかに見えることもある。
3/1tue
鷽を見し今日暖かき日となれり
(うそをみし きょうあたたかきひとなれり)
※今朝我が庭の梅の木に「鷽うそ」を見た。確か
に。頭の黒色、それに続くオレンジ・・・間違
いない。留鳥で今頃は低地で過ごすとあるから、
間違いないのだが何せ現れることが少ない。自
信はあるのだが、哀しいかな、ド素人+門外漢
だ。しかし人には尋ねない。しばらくは信じる
ことにした。
**********
2/28mon
西郷も 滴り弱き 春の雨
(さいごうも したたりよわき はるのあめ)
※今月は西郷輝彦が亡くなった。前立腺がんを患
っていたとか。合掌。多くのシニアが同じ道を
たどりつつある。小用は出るものの次第に弱く、
時間は長くなる。
2/27sun
移り紅 梅身を染めて 思い初む
(うつりべに うめみをそめて おもいそむ)
※梅の種類で移り紅というのは初め白で開花し、
次第に赤くなるらしい。2月の寒さ続きで梅の
開花は遅れていたが、この陽気で梅の恋が始ま
る?
草の芽の かすかな音の 続々と
(くさのめの かすかなおとの ぞくぞくと)
※球根類の芽出しが盛んだ。他の草花、雑草類も
一斉に地表に出るや、背を伸ばしている。
2/25fri
春の花 鬱なことども ともに増え
(はるのはな うつなことども ともにふえ)
※ウクライナ全土に。かの地の動向を日々記すこ
とはやめることとするが、どうにもこの鬱はや
るせない、見逃しがたい。
2/24thu
菠薐草 コロナ禍の年 青丈夫
(ほうれんそう ころなかのとし あおじょうぶ)
※昨日プーチンが動いた。
2/23wed
黒き幹 黒き節々 梅の花
(くろきみき くろきふしぶし うめのはな)
風の朝 初クロッカスの 地を割いて
(かぜのあさ はつくろっかすの ちをさいて)
2/22tue
看護師が 良く眠る夜 ヒヤシンス
(かんごしが よくねむるよる ひやしんす)
※都心で在宅医療の医院に勤務する親戚の娘が
帰ってきた。日頃心配し通しの親をよそ眼に、
実家での時間の大半をゆっくり眠って過ごし
たという。
2/21mon
全集に すき間のありて 漱石の日
(ぜんしゅうに すきまのありて そうせきのひ)
※今日2月21日は漱石が文部省から文学博士
の称号を打診され、肩書の要なしと回答して
辞退した日だとか。明治44年のこと。
2/20sun
旬の味 到着待てり 春灯り
(しゅんのあじ とうちゃくまてり はるあかり)
春の闇 再配達の 人の笑み
(はるのやみ さいはいたつの ひとのえみ)
※テレビの録画で「プレバト」を見た。お題は
「宅配の手渡し」であった。番組はいつもの
通りだったが、今回同じ題で自分も作ってみ
たのが上記の2句だ。いつも思っているが、
なかなか難しい、これだって「才能あり」は
難しかろうと思う。
2/18fri
電球に笠あり春に灯りあり
(でんきゅうにかさありはるにあかりあり)
※冷たい夕暮れ。近所の家に昔なじみの温かい
電球の灯りがともっている。昨今の明るいけ
れども真っ白な蛍光灯やLEDと違って、見て
いるだけで少しは温かくなってくる。
2/17thu
なすことのあれども春の朝寝かな
(なすことのあれどもはるのあさねかな)
遍路笠去年に廻りし人の笑み
(へんろがさこぞにまわりしひとのえみ)
※朝の夢うつつは値千金。日頃は犬の散歩で許
されないが、今朝だけは別。
友人の友人が四国遍路旅の話をしてくれた。
コロナ禍を思えば冒険と言うか一大決心であ
ったろう。彼に家族はいない。
2/15tue
房総の 光かくやと 春の海
(ぼうそうの ひかりかくやと はるのうみ)
※一年一回の脳MRI検査。昨日とは打って変わ
ってきれいに晴れ上がり、検査、診察後の展
望フロアからの景色が素晴らしい。やれやれ
また一年の命がつながった、と言えば大げさ
か?
2/14mon
ウクライナ 畑焼きしたき 人あらむ
(うくらいな はたやきしたき ひとあらん)
※今日一日は接種翌日とあって静養日。おかげ
で発熱、患部の疼痛、頭痛等は全くと言って
いいほどなかった。今回はモデルナ。
2/13sun
看護師の頬 冬残照の僅か
(かんごしの ほほ ふゆざんしょうのわずか)
※やっと3回目のワクチンを打った。周辺市町
村の知人よりはかなり遅め。4日前に接種券
が届いて、予約し、市の集中接種会場に行っ
た。かなり大勢の人がいた。医療関係の人が
言っていたが、遅れは明らかに接種券の配布
作業の遅れのせいだと。
2/11fri
剪定を 一日延ばす 余寒かな
(せんていを いちにちのばす よかんかな)
スコップも 農具も置いて 冴え返る
(すこっぷも のうぐもおいて さえかえる)
2/10thu
初午や 祠に餅の 紙包み
(はつうまや ほこらにもちの かみづつみ)
※農作業を始める日で、豊作を祈るお稲荷さん
のお祭り日とか。餅もそのままではなくて、
油で揚げたものだった。なるほどキツネ色だ。
2/9wed
針供養 和装で参る 生徒たち
(はりくよう わそうでまいる せいとたち)
※花嫁修業という言葉があった。生け花や茶道
は現在も盛んだが、めっきり姿を消したのは
洋裁、和裁の実用を兼ねた習い事。
2/8tue
マニキュアに選手の泪春灯り
(まにきゅあにせんしゅのなみだはるあかり)
※北京冬季五輪は悲喜こもごもの報道あり。
2/7mon
寝違えて 寒き春のみ 他見えず
(ねちがえて さむきはるのみ ほかみえず)
春嵐 ポンペイ見たし 上野は遠し
(はるあらし ぽんぺいみたし うえのはとおし)
※ポンペイレッドと呼ばれる色が印象的なモザ
イク画。関西の粋な日本家屋の壁色にも似た
色だ。
2/5sat
うかれ猫 続きし会は 画面越し
(うかれねこ つづきしかいは がめんごし)
※テレワークとかが普通になった今、積極的に
これを仲間内で活用する輩もいる。突如テレ
読書会をやろうとか、昔の同僚のテレビ顔合
わせをしようとか・・・。まあお断り。
テレビ飲み会に至っては仲間から「そのうち
春になったら」と遠ざけられたのにも拘わら
ず、立春のその日に呼びかけメールが再び舞
い込んだ。やれやれ・・・。
2/4fri
施設あり節分の声声続き
(しせつあり せつぶんのこえごえつづき)
春立ちて 咽喉を撫でさす 猫のおり
(はるたちて のどをなでさす ねこのおり)
2/2wed
冷蔵庫 朝に頓死す 春隣り
(れいぞうこ あさにとんしす はるどなり)
みぞれ日に 市原悦子の 声ありて
(みぞれびに いちはらえつこの こえありて)
※長いこと使ったものは不思議なことに同じよ
うな時期に更新時期が舞い込む。クルマも冷
蔵庫も・・・、心臓も消化器も・・・とかに
はならないようにしなくては。
2/1tue
大寒の地をはむ妻の新車赤
(だいかんのちをはむ つまのしんしゃあか)
※随分待たされた納車日が訪れた。今までのク
ルマとは年次が離れているので、安全機構や
ナビ、操作方法に至るまでかなり変化があり、
面食らっている。当家のクルマ使用と運転は
殆どが家内だが、慣れるまでは助け合いだ。
**********
1/30sun
蠟梅の寺は散歩に遠くなり
(ろうばいのてらはさんぽにとおくなり)
※片道4千歩近くの寺まで、久しぶりに今回は
クルマで赴いた。かすかだが馥郁とした香り
が漂っていた。以前は毎朝この近くまで歩い
て、帰路も徒歩だった。ところが歳だからと、
大して意識もせずに次第に歩数が減少してい
る。・・・歳と身体のいたわり過ぎかも。
1/29sat
春近し 仏頂面の 料理かな
(はるちかし ぶっちょうづらの りょうりかな)
※なんとなく春の兆しを追い求める気持ちがあ
る。確実な暦の展開をあてにしている。どこ
かでオミクロンの性状に気を許してるのかも
知れないが。
1/28fri
疎開知る 着ぶくれの人 門の内
(そかいしる きぶくれのひと もんのうち)
葬場の閉めたる広さ寒夜かな
(そうじょうのしめたるひろさかんやかな)
1/27thu
野水仙 はためくほどの 風となり
(のすいせん はためくほどの かぜとなり)
鉄火丼 どんと来たりて 寒四郎
(てっかどん どんときたりて かんしろう)
※世の中の活気という意味では否応なしの右往
左往、長い様子見だ。超越?至難の業だ。
1/24mon
三寒の膝粘り切り四温かな
(さんかんのひざねばりきりしおんかな)
動画が師 剪定すれば 春近し
(どうががし せんていすれば はるちかし)
※寒中冬籠りとは言え、コロナ禍対策としてで
あり、気分的には落ち着かない日々だ。読書
も切れ目だし、夢枕獏「白鯨」を読み始める。
アノ「白鯨」と較べれば超読みやすいが、
500頁超の厚さだ。
1/23sun
冬ざれや 故郷の大津絵 耳の底
(ふゆざれや くにのおおつえ みみのそこ)
※実に約60年ぶりに会津大津絵という民謡を
聞いた。祖母の小声の歌を聞いた時以来かも。
いくつもの曲がある中で、地味な曲調と戊辰
戦役とその後の暮らしをうたった歌詞は切々
と訴えるものがある。
1/21fri
新しき 回線通じ 今日大寒
(あたらしき かいせんつうじ きょうだいかん)
怒髪立つも 外の寒気で 鎮まれり
(どはつたつも そとのかんきで しずまれり)
※インターネット、光電話等の契約先を変更し
た。昨年の11月以来やっと全ての工事や手
続きが終了した。
1/20thu
蔵壁に 鴉の影が 日脚伸ぶ
(くらかべに からすのかげが ひあしのぶ)
※大寒の日。さすがに日没後は冷える。しかし
冬至から一カ月近くたって、夕方の定刻に出
かけると確実に明るくなってきている。冷え
てもアッタカイ感じだ。その足は鈍いが。
1/19wed
寒稽古 青の絵の具で 始め見ん
(かんげいこ あおのえのぐで はじめみん)
※千葉県も近く「蔓延防止」対象地域に指定さ
れる。絵画教室も今回で暫くは休止となる。
今年最初の会は季語「寒稽古」に当たるが、
絵の出来は並み。
1/18tue
軒めぐり どんどの藁を 給いたり
(のきめぐり どんどのわらを たまいたり)
※どんど焼きが近くの田んぼで町内ごとに行わ
れた。それに先立って子供たちは、風の吹く
寒い日に町内の商店などを回り、大声で藁を
出してもらった。あの頃の梱包の多くは稲わ
ら製の筵だった。
1/17mon
冬の虹告げ丁重な礼言われ
(ふゆのにじつげていちょうなれいいわれ)
この冬は 筆の遅きが さらになり
(このふゆは ふでのおそきが さらになり)
※何年か前から起こった手の強張り。やさしく
握って書く字がままならない。強張ってペン
先が暴走することもしばしば。それを避けよ
うとゆっくり、軽く・・・結果遅くなる。
1/16sun
寒寝床 本持つ指の 頼りなき
(かんねどこ ほんもつゆびの たよりなき)
※当地温暖ではあるが、エアコンなしの部屋の
未明はさすがにこたえる。「指出し手袋」の
出動も指先や腕全体の冷えにはかなわない。
1/15sat
ウィスキーの 新瓶となり 小正月
(うぃすきーの しんびんとなり こしょうがつ)
※小正月なんて一般家庭では半ば死語。小豆粥
とかどんど焼きとか遥か子供時代にははっき
り残っていたが。
1/14fri
雪の道 おすそ分けとて 姪来たる
(ゆきのみち おすそわけとて めいきたる)
※いただいたカステラがすごくおいしかったか
らと言う。2切れだけだけど、それで十分。
1/13thu
ツィッターも ラインも如かず 冬静寂
(つぃったーも らいんもしかず ふゆしじま)
※冷えたが穏やかに晴れ上がる。この静寂の魅
力に対抗できる音は? 主張と騒音のSMS、
ウィルス禍の激しい噂。・・・。
1/12wed
褞袍てふ 便利はなくて 読書かな
(どてらちょう べんりはなくて どくしょかな)
※椅子に座っても寝っ転がっても、上半身と手
元指先が寒い。ドテラとかワタイレとかが懐
かしい。ヒートテックとかではなくて。
1/11tue
布団干す狭くて二枚ばかりなり
(ふとんほすせまくてにまいばかりなり)
※男が設計した家は家事には不向きと、とかく
の不平には慣れているが、寒中の晴れ間に布
団を干そうとして今更自分でも実感。
1/10mon
寒中は 空のみの野の いとどなり
(かんちゅうは そらのみののの いとどなり)
目方増え 医師に年賀の 声低く
(めかたふえ いしにねんがの こえひくく)
※ここ7,8年安定していた体重が怪しい動き
を見せている。想定範囲をこの半月ほど飛び
ぬけている。一足早く緊急事態宣言発出か。
1/9sun
着ぶくれて 北の民話を 繰り出せり
(きぶくれて きたのみんわを くりだせり)
正月や 突然友の 顔と声
(しょうがつや とつぜんともの かおとこえ)
※おそるおそるLineで友達を増やす。思わぬと
ころで友人とテレビ電話で話した。テレワー
クとかテレビ会議とか世の中では盛んだが、
遅ればせながら。
1/8sat
緩斜面 ゆっくり滑るを 夢に見し
(かんしゃめん ゆっくりすべるを ゆめにみし)
初夢や 主席を好きに 握手せり
(はつゆめや しゅせきをすきに あくしゅせり)
※日頃の思いとは別に、いざ対面すると興奮し
て握手までしてしまう。目覚めて醜態とは思
うのだが。ホンマモノの外交もこうした、イ
デオロギー・安保・経済上の便益・歴史など
・・・複雑なファクターを内包しつつ、目先
の国益で動いてしまう。こんなことがあるの
では?
1/7fri
南房総の雪 子供連れ立ち
(みなみぼうそうのゆき こどもつれだち)
街灯の下に 無限の雪降りて
(がいとうのしたに むげんのゆきふりて)
寒の夜 根雪になれと 思いしも
(かんのよる ねゆきになれと おもいしも)
氷砕く クルマの音や 寒椿
(こおりさく くるまのおとや かんつばき)
※雪国生まれの小生にとって昨日の大雪は予想
外の吉事。雪が降りしきる時の吸音するかの
ような静寂を雪が上がった未明から今朝まで
感じていた。満足。
1/6thu
着ぶくれて 道守る人 旗持てり
(きぶくれて みちまもるひと はたもてり)
※普段の暮らしが始まった。通勤、工事・・・
と周囲を見ていたら、雪が降ってきた。見る
見る積もってきた。降り止まぬ。びっくり。
新年にドクター✕を待つ祈り
(しんねんにどくたーえくすをまついのり)
1/5wed
寒の入り 寝床の日記の 行僅か
(かんのいり ねどこのにっきの ぎょうわずか)
※三が日はすうーと過ぎ、早や今日は寒の入り。
寝床の腕、指は防寒対策を施しているが、さ
すがにそれでも冷たい。就寝は素早く、払暁
はゆっくりと・・・このパターンは抜け出せ
そうにない。
1/4tue
冬茜 坂の途中の 家なりき
(ふゆあかね さかのとちゅうの いえなりき)
※都心住まいの頃の通勤路が不思議と印象深い。
中でも毎日上り下りした坂道は四季の光景が
焼き付いている。
1/3mon
万両や 我が時代に 歌ありて
(まんりょうや わがじだいに うたありて)
※紅白歌合戦の歌にしても、現代の若い人々は
歌、楽曲に本当に恵まれているのだろうか?
と素直な疑念あり。今メディアの多様化の割
にその幅は狭いのでは? 拡散はするが模倣
と好みの境は漠としている。
1/1sat
元朝の 踏切の音 まっすぐ来
(がんちょうの ふみきりのおと まっすぐく)
元日や 妻は普段の 電話をし
(がんじつや つまはふだんの でんわをし)
※犬の散歩に盆も正月もない。ゆっくり帰って
きたら姪夫婦の年賀の来訪。嬉しいスタート。
**********
2021-02-01 12:33
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