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2019年(令和1年)伊藤園用 3次(50) [自選集 通 期]

田はまだら 二代目今日も 暮れの酒
     (たはまだら にだいめきょうも くれのさけ)

妻粋な 姐さん被りよ 年の暮れ
     (つまいきな あねさんかぶりよ としのくれ)

木枯らしや 裂帛の気合いに たじろげり
     (こがらしや れっぱくのきあいに たじろげり)

病める友の パソコンを問う 冬支度
     (やめるともの ぱそこんをとう ふゆじたく)

曲屋に 光多き日 鴨来る
     (まがりやに ひかりおおきひ かもきたる)

火消し壷 どっこいしょと言い 仕事終え
     (ひけしつぼ どっこいしょといい しごとおえ)

オークション 沢庵噛みつ 競り合いぬ

時雨るや 欠礼状やや 常となり
     (しぐるるや けつれいじょうやや つねとなり)

酉の市 腰にまわした 革財布
     (とりのいち こしにまわした かわざいふ)

新蕎麦や 到来すれば 間を置かず
     (しんそばや とうらいすれば まをおかず)

秋長けて 玉ねぎ200の 畝作り
     (あきたけて たまねぎにひゃくの うねづくり)

新米を くれたる人の 黒い指
     (しんまいを くれたるひとの くろいゆび)

台風は みな来る気配 そぞろ寒
     (たいふうは みなくるけはい そぞろざむ)

刈田雀 今日海鳥に 追われけり
     (かりたすずめ きょううみどりに おわれけり)

異邦人 昭和の歌もれ 良夜かな
     (いほうじん しょうわのうたもれ りょうやかな)

愛しきや 柿は五つと なりにけり
     (いとしきや かきはいつつと なりにけり)

遅れしを 詫びつつ白き 曼珠沙華
     (おくれしを わびつつしろき まんじゅしゃげ)

絵手紙を 投函すれば 秋の声
     (えてがみを とうかんすれば あきのこえ)

高バシゴ 鋏の音や 秋彼岸
     (たかばしご  はさみのおとや あきひがん)

サンダルに 石の入る日 獺祭忌
     (さんだるに いしのはいるひ だっさいき)

水澄むや 微笑みの仏を 描きおり
     (みずすむや えみのほとけを えがきおり)

分断も 一色も嫌い 国の秋
     (ぶんだんも いっしょくもきらい くにのあき)

稲刈りや 詮議の末の まだら刈り
     (いねかりや せんぎのすえの まだらがり)

童顔の 白髪の釣り師 日の盛り
     (どうがんの しらがのつりし ひのさかり)

鳴き止みて 蝉のつくりし 静寂かな
     (なきやみて せみのつくりし しじまかな)

夕立の 一部始終見る 雨宿り
     (ゆうだちの いちぶしじゅうみる あまやどり)

遠き夏 土蔵の中の 眠りかな
     (とおきなつ どぞうのなかの ねむりかな)

盆踊り アイサツ終わるを 待つ子かな
     (ぼんおどり あいさつおわるを まつこかな)

新盆や 廿日待ちいし 湿りかな
     (にいぼんや はつかまちいし しめりかな)

インゲンの 微かなにおい 夏の夕
     (いんげんの かすかなにおい なつのゆう)

梅雨明けや 猛者が似合わぬ 犬を曳き
     (つゆあけや もさがにあわぬ いぬをひき)

釣りボート 船跡広がり 夏の色
     (つりぼーと ふなあとひろがり なつのいろ)

命日を 違える不孝 沙羅の花
     (めいにちを たがえるふこう しゃらのはな)

農薬を 撒き忘れた田や 青田風
     (のうやくを まきわすれたたや あおたかぜ)

脂なし 口は臭わず 老いの梅雨
     (あぶらなし くちはにおわず おいのつゆ)

梅雨の夕 オハグロ低く 家路かな
     (つゆのゆう おはぐろひくく いえじかな)

梅雨寒や 犬の病の 癒えざる日
     (つゆざむや いぬのやまいの いえざるひ)

なければと 免許の話 半夏生
     (なければと めんきょのはなし はんげしょう)

猫の碑や あじさいの陰に 佇めり
     (ねこのひや あじさいのかげに たたずめり)

南風や 聖橋への 下り道
     (なんぷうや ひじりばしへの くだりみち)

ニコライ堂 薫風受けて 僧二人
     (にこらいどう くんぷううけて そうふたり)

レーダーを 見て傘を持ち 梅雨の朝
     (れーだーを みてかさをもち つゆのあさ)

雨雲や 妻はスイカの 受粉しに
     (あまぐもや つまはすいかの じゅふんしに)

酢の物を 徐々に好みて 古希を越え
     (すのものを じょじょにこのみて こきをこえ)

紫陽花や 病の友に 歩を合わせ
     (あじさいや やまいのともに ほをあわせ)

ゴイサギの 身じろぎもせず 青田風
     (ごいさぎの みじろぎもせず あおたかぜ)

夕方は 嫌だといかつい 顔ながら
     (ゆうがたは いやだといかつい かおながら)

ノド痛の 友にメールを 葱坊主
     (のどいたの ともにめーるを ねぎぼうず)

野焼きする 煙が走り 鹿が飛ぶ
     (のやきする けむりがはしり しかがとぶ)

ぼそぼそと 術後の友に 春少し
     (ぼそぼそと じゅつごのともに はるすこし)

ランドセル パン屋の前で 深呼吸
     (らんどせる ぱんやのまえで しんこきゅう)

モネがいる チューリップ畑の 青い空
     (もねがいる ちゅーりっぷばたけの あおいそら)

木魚あり 春の法事の 夢うつつ
     (もくぎょあり はるのほうじの ゆめうつつ)

夜桜や 外反母趾の 痛さかな
     (よざくらや がいはんぼしの いたさかな)

春ひばり 姪の息子に 嫁が来る
     (はるひばり めいのむすこに よめがくる)

金柑を 貰いそこねて 土手の春
     (きんかんを もらいそこねて どてのはる)

花ニラは 清楚の極み 小さきも
     (はなにらは せいそのきわみ ちいさきも)

春まだき 粋人ありて 腹を切る
     (はるまだき すいじんありて はらをきる)

柳橋 古楼はビルに 春の風
     (やなぎばし ころうはびるに はるのかぜ)

神田川 北窓開く 岸の家
     (かんだがわ きたまどひらく きしのいえ)

左衛門橋 シニアは春の 帽子かな
     (さえもんばし しにあははるの ぼうしかな)
 
なつかしき 顔あり春の 通夜の客
     (なつかしき かおありはるの つやのきゃく)

金文字の 残るガラス戸に 吹雪くかな
     (きんもじの のこるがらすどに ふぶくかな)

年月は 盗人なれども 春めぐむ
     (としつきは ぬすっとなれども はるめぐむ)

絵ろうそく 冬に仏の 華やげり
     (えろうそく ふゆにほとけの はなやげり)

雪模様 独尊唱えし 人は今
     (ゆきもよう どくそんとなえし ひとはいま)

飛び起きて 胸さすりおり 春の夢
     (とびおきて むねさすりおり はるのゆめ)
虎落笛 故郷の山を なぞりけり
     (もがりぶえ こきょうのやまを なぞりけり)

冬麗ら 三ヶ月のたびに 転院す
     (ふゆうらら みつきのたびに てんいんす)

悴みて 野仏枯葉を 集めたり
     (かじかみて のぼとけかれはを あつめたり)

セピア色 大雪の日の 父と母
     (せぴあいろ おおゆきのひの ちちとはは)

振り向いて 教えられたり 冬の虹
     (ふりむいて おしえられたり ふゆのにじ)

着付け待つ 父はクルマで 寒の朝
     (きつけまつ ちちはくるまで かんのあさ)

寒暁や 釣り宿だけが こうこうと
     (かんぎょうや つりやどだけが こうこうと)

初夢や 微笑む古き 顔ありき
     (はつゆめや ほほえむふるき かおありき)

スリコギや 三日とろろの 朝仕事
     (すりこぎや みっかとろろの あさしごと)


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