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ダクタク句集2019年(令和1年)上期 自選集 [自選集2019]

6/30sun
梅雨の上り 待つ人ひとり 無人駅
     (つゆののぼり まつひとひとり むじんえき)
        ※台風は思った程でないまま過ぎ去ったが、梅雨
         の強嵐が吹きまくっている。犬の右目下に水泡
         が出来、一段とふくれてしまった。原因は目の
         病気、歯槽膿漏・・・等々? この一週間念入
         りに歯磨きをしたりケアをしてきたが、どうに
         も好転しない。庭の木々が大きく揺れるのを見
         ながら、明日の病院行きを決める。

6/29sat
大阪に 笑みと矢玉が 梅雨いくさ
     (おおさかに えみとやだまが つゆいくさ)
        ※何ひとつ方向付けが出せそうにないG20。参
         加することに意義もあろうが・・・。

良ければと 置かれた皿に 梅雨の雨
     (よければと おかれたさらに つゆのあめ)
        ※「良ければどうぞ」と書かれた札とともに多く
         の皿や湯呑などが閉店した商店の前に並べられ
         ている。

6/28fri
麻のれん 居酒屋さがす 神田かな
     (あさのれん いざかやさがす かんだかな)
        ※6/20都内散歩の続き
         神保町、駿河台下から靖国通りを神田駅方面目
         指して歩く。20回以上続く会が始まったのは
         7年前の神田駅ガード下の居酒屋でだった。
         「聖地」とも言える、その店の周辺を再訪した。
         しかし、店は容易には見つからない。場所の勘
         違い?倒産閉店?・・・。

麗しき ネパールの女や 梅雨の宴
     (うるわしき ねぱーるのひとや つゆのえん)
        ※結局その居酒屋は見つからなかった。とある居
         酒屋で今日の打ち上げ。とどこおりはない。

スマホ見せ 優しき孫を 暑気払い
     (すまほみせ やさしきまごを しょきばらい) 

薄くても サワー楽しき サクランボ
     (うすくても さわーたのしき さくらんぼ)

6/27thu
猫の碑や あじさいの陰に 佇めり
     (ねこのひや あじさいのかげに たたずめり)
        ※6/20都内散歩の続き
         山の上ホテル裏手の急坂が錦華坂。坂下には区
         立お茶の水小学校がある。ここには1873年
         創立の錦華小学校があったという。公立の小学
         校では最も古い学校の一つ。その1期生の一人
         が夏目漱石だ。
夏帽子 すずらん通りを 左側
     (なつぼうし すずらんどおりを ひだりがわ)
        ※神保町の古書店街のひとつ南側の通り。古いカ
         フェとか凝った専門店などがあった。その昔夏
         休みの半分ほどをバイトに費やし、この通りの
         店で高価な楽器を買った。帰りの巣鴨に向かう
         都電な中でいかに意気揚々としていたか。

6/26wed
阿久悠の 記念館涼し 梅雨晴れ間
     (あくゆうの きねんかんすずし つゆはれま)
        ※6/20都内散歩の続き
         明大本部(駿河台キャンパス)の明大博物館に
         寄る。刑罰に関する学説と資料展示がご自慢。
         阿久悠の記念館が併設されている。彼の写真と
         詩が入場者を迎える。いい先輩をもったものだ。
            「夢は砕けて夢と知り、
             愛は破れて愛と知り、
             時は流れて時と知り、
             友は別れて友と知り」

アレは梅雨 密会の地は 山の上
     (あれはつゆ みっかいのちは やまのうえ)
        ※山の上ホテルは改修中。昔懐かしい本館の建物
         は温存されている。

6/25tue
南風や 聖橋への 下り道
     (なんぷうや ひじりばしへの くだりみち)
        ※6/20都内散歩の続き
         湯島聖堂孔子廟の横、聖橋への下り道は快適。
         かつてランドマークだったに違いないニコライ
         堂の美しいドームが見える。

ニコライ堂 薫風受けて 僧二人
     (にこらいどう くんぷううけて そうふたり)
        ※「東京復活大聖堂教会」が正式名称とか。建物
         は国の重要文化財。1891年(明治27)建
         立、関東大震災で倒壊したが、その後再建。

6/24mon
明神の 小暗き裏手に 辿りつき
     (みょうじんの おぐらきうらてに たどりつき)
        ※6/20都内散歩の続き
         秋葉原から蔵前通りを上り、本郷三丁目近くで
         さすがに来過ぎに気づき、引き返して神田明神
         の裏手から石段を登る。すでに茅の輪が設置さ
         れて、夏越しの祓えも近い。帰宅して調べると
         どの神社も「茅の輪くぐり」は6月末までとし、
         夏越しの祓えも6月晦日だけでなく受け付ける
         とか。この日の参拝客にだれもくぐった人はな
         く、我々も茅の輪の横を歩いてきたのだが。

境内は 夏越し近くの 準備かな
     (けいだいは なごしちかくの じゅんびかな)
        ※「銭形平次」と大書した碑がある。野村胡堂の
         「銭形平次捕物控」の記念碑。 同じ神田では
         「半七捕物帳」(岡本綺堂)もあったなァ。
         前回3月の本所散策では「鬼平犯科帳」(池波
         正太郎)平蔵ゆかり?の地があった。

6/23sun
雑多なる 駅に手を振る 二人あり
     (ざったなる えきにてをふる ふたりあり)

夏至近く 秋葉原もまた ルツボかな
     (げしちかく あきはばらもまた るつぼかな)
        ※6/20木曜日の梅雨の晴れ間に、いつもの友人と
         三人で神田界隈を散歩した。前回と同じく秋葉
         原駅での待ち合わせ。電気店街の印象からすれ
         ば、ここは今や無国籍、多目的。メイドカフェ
         で売り、インバウンドが殺到している。耳を澄
         ますと様々な言葉が聞こえ、なによりエネルギ
         ーに溢れている。

6/22sat
レーダーを 見て傘を持ち 梅雨の朝
     (れーだーを みてかさをもち つゆのあさ)

雨雲や 妻はスイカの 受粉しに
     (あまぐもや つまはすいかの じゅふんしに)
        ※スイカの雄しべの花粉はデリケートだ。量が少
         ないし少しの雨にも流れてしまう。なるべく新
         鮮なうちに、雌しべに届けなければならない。
         早朝あやしい雲行きの場合には雨雲レーダーを
         チェックする。

6/21fri
酢の物を 徐々に好みて 古希を越え
     (すのものを じょじょにこのみて こきをこえ)
        ※古希を迎えるまでの10~15年間で食生活の
         基本が変わった。人後に落ちない生活習慣病、
         過剰な体重と問題を抱えながらも、それまでは
         なんにも対策らしきことは出来なかった。それ
         が、この年代を迎えると「かなり劇的に対策が
         身に付いた」のだ。野菜を食べる、特にキャベ
         ツは減量狙いで毎食一定量摂取する。運動する。
         その結果としてついてきたのは、「野菜好き」
         と「酢の物好き」と「減量成功」だった。
         実は古希を越えて久しいが、今では対策として
         の意識はなく、好みとして続いている。自分の
         体質は変わったのだ、とひそかに信じている。
         だからどうしたと言われれば、それだけのこと
         だが・・・。

6/19wed
梅雨の日や 形見となりし 長靴を
     (つゆのひや かたみとなりし ながぐつを)
        ※義兄の殆ど新品の長靴が届いた。故人の最後は
         左足一本だったが、これはちゃんと両足分ある。
         ありがたく使わせてもらうことにする。

6/18tue
紫陽花や 病の友に 歩を合わせ
     (あじさいや やまいのともに ほをあわせ)
        ※術後の友人を上野の山に連れ出した。まだ治療
        の山があるというが、元気そうで健啖ぶりにはホ
        ッとさせられた。

6/16sun
シンタマの 酢漬けに眼 覚めにけり
     (しんたまの すづけにまなこ さめにけり)
        ※6月に入ってからの雨の日に、富士山は降雪が
         あったというが、雨上がりの西空に真っ白な帽
         子をかぶった富士がきれいに見える。
         昨日の朝首輪をした犬と遭遇、我が家の犬に警
         戒して引き返し、自動車道の方にもどっていっ
         た。大丈夫かなと思った矢先に道路に飛び出し、
         轢かれて死んだ。アッという間の出来事。富士
         山に向かって、成仏を祈った。

6/15sat
木道に 車椅子の笑み 菖蒲園
     (もくどうに くるまいすのえみ しょうぶえん)
        ※菖蒲畑には木道が設えてあり、近くの施設から
         らしい車椅子が何台もゆっくり通る。本人も介
         添人もニッコリ、緩んでいる。スケッチの方は
         連敗脱出というまではいかず。少し前進、殆ど
         停滞、というところ。急ぐまい。
         8日には花菖蒲まつりがあって、茜襷(あかね
         だすき)に菅の笠(すげのかさ)の女性たちが
         菖蒲の花摘みをしたとか。

6/14fri
梅雨晴れ間 黒き土から 白きイモ
     (つゆはれま くろきつちから しろきいも)
        ※貴重な晴れ間にジャガイモを掘り出す。新しい
         品種とて家人は楽しみにしていた。まあまあの
         出来だ。

梅雨晴れ間 庭木を鋏む プロの音
     (つゆはれま にわきをはさむ ぷろのおと)
        ※西日本から嵐が近づいているらしい。気温が高
         く、ムシムシしている。今日は教室の仲間と袖
         ヶ浦公園の菖蒲園にスケッチに出かける。この
         季節の恒例としているのだが、絵の成績はひど
         く自己評価で実に3連敗中である。
         きれいなものをきれいに描くのはホントに難し
         い。今年は?

6/12wed
チャンドラー 分厚き本と 梅雨ごもり
     (ちゃんどらー ぶあつきほんと つゆごもり)
        ※梅雨らしい雨降りが続く。きらいな方ではない。
         家の中にこもって好きなことをシコシコしてい 
         ても、天候と薄暗い光がそれを許してくれそう
         な気がする。家人から何かいいつかることもな
         い。要するに曇天は天国である。

6/11tue
外れ年 モモを思いやる 梅雨の朝
     (はずれどし ももをおもいやる つゆのあさ)
        ※一昨日からの雨で庭の緑が一段と濃くなった。
         それにしても元気印の我が家のモモ、今年は
         「外れ年」のよう。去年は実の間引きを何度も
         重ねたが、それでも一本で150個ほどが収穫
         できた。今年はその1/5以下か? 外れ年と
         いう形容は良くない。有給休暇。充電の年か。

6/10mon
走り梅雨 シニアスマホ手に 疾走す
     (はしりづゆ しにあすまほてに しっそうす)
        ※見ただけでも寒気が。我が家の妻も運転中のス
         マホこそしないが、スピードはなかなかのもの。
         「スピードを出すな」も「危ないから」は効き
         目がない。「ガソリンを食うから」の方がいい
         みたい。なるほど、女のほうが合理的?

朝露や ぶどうの蔓の 朝の伸び
     (あさつゆや ぶどうのつるの あさののび)

6/9sun
梅雨入るも 岬の道は 晴れ上がり
     (つゆいるも みさきのみちは はれあがり)
        ※公民館の催しで「野山歩き会」があった。今回
         は内房南部にある大房岬(だいぶさみさき)を
         回遊する。地元の小学校の運動会と重なり参加
         者が目減りしたため、会講師のY氏から参加を
         懇請された。市の無料バスを利用するためには
         利用者の数が多いことが条件になるからだ。
         目標の岬の半島を遥かに眺める海岸から歩き始
         める。心配された天気は回復し、雲間から日差
         しがふり注ぐ。

杉落葉 山路を下りて 海光る
     (すぎおちば やまじをおりて うみひかる)
        ※この岬は内房の海に突き出た緑豊かな半島で、
         少年自然の家を始め、各種の施設と遊歩道があ
         る。なにより周囲に広がる海岸美が素晴らしい。
         倉本聰のテレビドラマ「やすらぎの郷」で海と
         海岸のロケに使われているとか。
         半島の標高はさして高くないが、展望台に登っ
         たかと思うと波打ち際まで下りてみたり、たち
         まち体力を消耗する。

砲台の 新緑染みて 謂れ聴く
     (ほうだいの しんりょくしみて いわれきく)
        ※太平洋戦争に準備された砲台跡がいくつかある。
         東京湾口で敵艦の進入を防ぐため、横須賀の三
         浦半島と内房沿いの各地に砲台が建設された。
         結局は使用されなかったもの。
         当時は海に向けて樹木は切り払われたのだろう
         が、今では伸びて様変わり、鬱蒼としている。

6/7fri
エンドウの 実を山ほどに 斃れけり
     (えんどうの みをやまほどに たおれけり)

菜種ごと 鋤き込まれてぞ 夏来る
     (なたねごと すきこまれてぞ なつきたる)
        ※春の菜の花は花が終わって種ができると、その
         まま畑に機械で鋤き込まれる。土壌の養分が増
         すのだろうが、「チリカ」窒素燐酸カリ「はみ
         ね」葉実根・・・肥料としてどんな効果がある
         のだろう?

6/5wed
脚を撫で 紫陽花を見る 路地の家
     (あしをなで あじさいをみる ろじのいえ)
        ※前年末に亡くなった家人の姉の連れ合いが亡く
         なった。本来は頑健な身体の持ち主だったが、
         最後の10年ほどは様々な病気に罹り、家を離
         れ痛みと不自由の暮らしだった。糖尿病で2年
         ほど前に下肢を切断したが、義足にして心機一
         転と思っていただけに残念。合掌。

6/4tue
ゴイサギの 身じろぎもせず 青田風
     (ごいさぎの みじろぎもせず あおたかぜ)

迂回せり チガヤの果てに 霞む道 
     (うかいせり ちがやのはてに かすむみち)
        ※昨日のことである。薄曇りの一日で、半袖にそ
         よ風がぴったり、本当に心地良かった。体調も
         あろうが、こんなに気持ちの良い日は年に何日
         もない。十日間も続けば、もう天国だァ。

6/3mon
泰山木 切り花届く その白き
     (たいさんぼく きりばなとどく そのしろき)
        ※泰山木が好きだ。25年ほど前5月下旬に母が
         亡くなった時、北九州から急ぎ帰る朝に目にし
         たのが契機。この季節になると家人の友人の旦
         那様が、枝ごと花をいくつか切って届けて下さ
         る。キリッとした柑橘系の良い香りがする。

6/2sun
髪鋏み スイカ植えしか オクラはと
     (かみはさみ すいかうえしか おくらはと)
        ※いつも通う理髪店。よそより少し安い。釣り師
         としては県下で名の知れた主人だが、今は畑仕
         事が生きがい。6,7月は日が長く、店が終わ
         った後も畑に通っている。

6/1sat
雀の子 学校今年も 始まれり
     (すずめのこ がっこうことしも はじまれり)
        ※6月、巣立ったばかりの雀の子が兄弟姉妹揃っ
         て飛び回っている。まだ警戒することを知らな
         いで、同級生の後を追い、地面を這い庭の植栽
         の隙間に隠れたり。令和も早一ヶ月が過ぎた。



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5/31fri
雨上がる 夏服の子らの 声高く
     (あめあがる なつふくのこらの こえたかく)
        ※登校する中学生が夏服になった。見た目も涼し
         そうだし、当人たちの元気も良い。

五月雨や 濡れて乾いて また濡れぬ
     (さみだれや ぬれてかわいて またぬれぬ)
        ※雨雲は去ったはずなのに、こぬか雨のような雨
         が音もなく降ってきた。この程度の雨なら着衣
         が乾くスピードの方が勝っている。

5/30thu
ごみゼロの 朝やシニアの 輝けり
     (ごみぜろの あさやしにあの かがやけり)
        ※5/30は町内会の清掃大会。シニアは側溝の底ま
         で浚い、雑巾をかけたように磨き込む。・・・
         同じシニアでもそれほどしない人も多いが。

落花生 苗は暑さに へこたれず
     (らっかせい なえはあつさに へこたれず)
        ※去年成功した落花生を地植えした。丁寧に黒マ
         ルチを使い、防虫ネットで覆った。敵はアライ
         グマ、キョンなど大物。毅然として接近を予防
         し、侵入したら撃退する覚悟だ。(去年夏アラ
         イグマが2頭捕獲された)

5/28tue
真夏日に ひいきの鳥屋は ヒマならず
     (まなつびに ひいきのとりやは ひまならず)
        ※5月としては異常な真夏日の連続。近所の焼き
         鳥屋は冬場はもちろん、この天候にあっても夕
         方の列は変わらない。冷たいビールと・・・。

5/27mon
一人夜や 紫煙ひとすじ 五月闇
     (ひとりよや しえんひとすじ さつきやみ)
        ※少々暑すぎるけれども、ゆっくり夜を過ごす。
         これも至福の時間。

5/26sun
夏の夜 書かれしものを 探し食う
     (なつのよる かかれしものを さがしくう)
        ※今日は所用で夕方に帰宅。家人は外泊である。
         今晩のメニューと食材の在り処を見て、面倒く
         さいがのろのろと準備する。とはいってもカレ
         ーなのだが。

5/25sat
国賓を 待つ真夏日や 若き顔
     (こくひんを まつまなつびや わかきかお)
        ※令和最初の国賓トランプ米国大統領。最大級の
         警戒体制。当然だろう、日々世界の耳目を驚か
         す人物だ。若い警察官の顔に汗が流れるが、拭
         おうともせず毅然として立っている。

5/24fri
真夏日に 胃を切りし人の タバコ吸う
     (まなつびに いをきりしひとの たばこすう)
        ※意気軒昂なのは良いのだが、無茶はいけないと
         言うも、馬の耳に念仏。病気自体が大事なサイ
         ンだったのだから、これを機に「なにかを我慢
         する」度量もまた人生の味わいでは?

5/22wed 
通学路 白のシランは 絶えにけり
     (つうがくろ しろのしらんは たえにけり)
        ※今中学校の通学路沿いに100メートルほどシ
         ランが見事に咲いている。ところが咲いている
         のは赤紫の花だけだ。数年前白の株を15本ほ
         ど家からここに移植したのだが。増えてくれれ
         ば、の期待も空しく、年々減って今年はついぞ
         見かけない。

5/21tue
青嵐 ホタルブクロを 助けんと
     (あおあらし ほたるぶくろを たすけんと)
        ※朝から強い風雨が続いている。昨日施したノッ
         ポ花の添え木が傾いてしまって、かえって花を
         痛めている。ひどい風雨の最中、わが家人は敢
         然と救出に向かう。

5/20mon
花樗 木陰に傘を たたむ人
     (はなおうち こかげにかさを たたむひと)
        ※教えてもらった木は駅の近くの民家の前。セン
         ダンの木(おうち樗、楝は古名とか)だ。駅ま
         で急いできた人がここで時計を見て、ほっと休
         憩する。駅までは15秒。改札口とか階段はない。
         音を聞いてからでも間に合う。

5/19sun
ぶどう棚 雄々しき蔓を 懐柔し
     (ぶどうだな おおしきつるを かいじゅうし)
        ※ぶどう棚を拡張した。鉄パイプ、ジョイント類
         など材料費が結構かかる。家人は「これでブド
         ウを買った方が確実に満足できるのに」などと
         憎まれ口をたたく。
         奔放に伸びたツルを見極め、棚に導く。誘引と
         いう作業。ブドウのツル、元気はあるが実は折
         れやすい。なだめすかしながら、慎重に行う。

5/17fri
草むしり 耳に晩生の チューリップ
     (くさむしり みみにおくての ちゅーりっぷ)
        ※朝9時過ぎまでと決めて草むしりをしている。
         それ以上はやらないが、雑草の伸びと蔓延りの
         スピードに負けない程度だ。しゃがんだ姿勢で
         庭を見るのは新鮮な驚き。様々な色のバラとラ
         ベンダー、芍薬などがいつもと違った顔を見せ
         る。

5/16thu
時雨るや 京マチ子逝き ドリスデイも
     (しぐるるや きょうまちこゆき どりすでいも)
        ※どちらも90歳を超える高齢で天寿を全うした。
         昭和30年過ぎの中学生時代か、印象はとても
         鮮明だ。京マチ子は普通の女優として憧れるに
         は格が上の存在、勝手に別格だと思っていた。
         後年になっていたく感心した小津安二郎「浮草」
         で、一気に距離が縮まった。
         ドリスデイは、やっぱり同じ頃好きだった江利
         チエミが日本のドリスデイと呼ばれていたこと。
         そして何度か聴いたドリスデイの歌声には抜群
         のリズム感と声の彩りに思わず「すげえ」と洩
         らしたこと、昔々の話である。

5/15wed
五月雨 待ちいし緑の 呼吸の音
     (さつきあめ まちいしみどりの いきのおと)
        ※昨日今日の雨は久しぶり。庭の緑も畑の作物も
         一気に息を吹き返す。花木についたアブラムシ
         は消毒しても退治は難しいが、降雨に叩かれて
         大半が地面に落ちるとも。果実を期待する家人
         は一番雨を待っていた。

5/14tue
山吹や 盛りも子規の 好みかな
     (やまぶきや さかりもしきの このみかな)
        ※山際の家でヤマブキの花を見かけた。野生の花
         の印象が住む人をしのばせる。思い出せなかっ
         た子規の句を帰宅してから調べたら、ヤマブキ
         の散り際、花びらを詠んだものが多かった。

           山吹や 小鮒入れたる 桶に散る
           山吹や 花散りつくす 水の上
           山吹の 流れ去りけり 一しきり

5/13mon
子猫なく うつぎ花咲く 病院に
     (こねこなく うつぎはなさく びょういんに)
        ※近所に開業した犬猫病院が次第に流行ってきた。
         朝から患者?が待っている。当家の犬は幸いに
         して快食快便快眠の3拍子が揃い至って健康、
         今のところ医者要らず。
         先代の犬の後期に始めた、毎日牛乳とキャベツ
         のジクを摂らせること。これが秘訣だと信じて
         いる。それと美食回避、運動励行。
         アレッ、これって自分の日課と同じだ。

5/12sun
時雨るや 謡稽古の 渋く渋く
     (しぐるるや うたいげいこの しぶくしぶく)
        ※デイサービスを兼ねた施設から謡の練習らしい
         声が聞こえる。小雨模様の朝、しっとりとした、
         なにか良い感じ。

5/11sat
夕方は 嫌だといかつい 顔ながら
     (ゆうがたは いやだといかつい かおながら)
        ※一人住まいの同年代の知人がいる。若い頃から
         偉丈夫でならした人で、今もまだ体も挙措も堂
         々としている。一人住まいもなんのその、とは
         いうものの、「日暮れ時はさびしい」と。

5/10fri
ローズマリー 夏日予報の 日の朝
     (ろーずまりー なつびよほうの ひのあした)
        ※草むしりは朝のうちに済ませておこう、などと
         言う季節になった。当地はまだ25度を越える
         最高気温はなかった。ちょうど良い気候には長
         居をして欲しいものだが・・・。

5/8wed
覆うもの 隠すものなく 五月晴れ
     (おおうもの かくすものなく さつきばれ)
        ※快晴。雲ひとつなく、青さが際立っている。全
         てがさらされてしまいそうで、眩しいを通り越
         して何故か後ろめたい感じに近い心象だ。

5/7tue
ノド痛の 友にメールを 葱坊主
     (のどいたの ともにめーるを ねぎぼうず)
        ※10日間の連休が終わった。殆ど関係がないの
         にやれやれ感があるのはどうしてだろう。長年
         の勤め人暮らしの惰性かな?
         長い休みほど、アレもコレもと楽しみに計画し、
         結果はその何分の一も実現せず、休み最終日に
         は深刻な挫折感に苛まれたものだ。オマエ、な
         んのために生きているのか?・・・と。

5/5sun
憧れの エゾエンゴサクに あいまみえ
     (あこがれの えぞえんごさくに あいまみえ)
        ※北海道と東北の一部に自生する、ドラマでおな
         じみの花。群落とはいかないが、こちらで育て
         た人がいた。ははん、これか・・・。初夏の風
         を感じた。

5/4sat
ジョウビタキ 八十八夜に なお呼べり
     (じょうびたき はちじゅうはちやに なおよべり)
        ※渡り鳥とされるジョウビタキが5月に入っても、
         「ピーーィッ」と毎朝呼びかける。名前も知ら
         なかった、野鳥門外漢であるが、今年はこの鳥
         が「留鳥」であることを確認したい。

5/3fri
メールでも 訛りはありて 春の声
     (めーるでも なまりはありて はるのこえ)
        ※胃ガンで手術した古い友人とメールをやり取り
         した。元気な様子で安心した。幼稚園、小学校
         からの仲、大学時代は山岳部の猛者で海外にも
         何度か遠征した。バイカル湖の岸辺で拾ってき
         た石を土産に持ち帰ってくれたっけ。

5/2thu
芍薬の 色が描けぬ 今年また
     (しゃくやくの いろがえがけぬ ことしまた)
        ※絵画教室では「花はキライ」とか言っていられ
         ない。例会の半分ほどが季節の花のスケッチだ。
        「この見事な色が、自分で描けたらこんなところ
         にはいない」、声に出さない愚痴である。

5/1wed
新しき 御代や靴ひも 締めなおし
     (あたらしき みよやくつひも しめなおし)
        ※令和元年の初日。ボン・ボヤージ



          **************************


4/30tue
春惜しむ 平成のにおい 定まらず
     (はるおしむ へいせいのにおい さだまらず)
        ※昭和のにおいが色濃く感じられたのは平成に入
         って10年以上もたったころ。
         「降る雪や明治は遠くなりにけり」 中村草田
         男のこの有名な句は昭和6年作とか。

手をかざし 春に行く御代の まぶしさよ
     (てをかざし はるにいくみよの まぶしさよ)

4/29mon
ハナミズキ 軒先あたりが 暮れ残り
     (はなみずき のきさきあたりが くれのこり)
        ※ヒマ人がテレビを見ていると、年の瀬が押し迫
         ってきた感じになる。「平成最後の〇〇」、食
         傷気味のこの謳い文句ももう少しで地上から消
         える。

4/28sun
霊園が オープンと言い 山笑う
     (れいえんが おーぷんといい やまわらう)
        ※テーマパークやパチンコ屋の開業ではあるまい
         に、霊園がオープンとは・・。考えたらおかし
         くなった。近くの山も笑っている。新芽が吹い
         て山は今新緑初期。日に日に緑が濃くなってい
         く。さて自分のお墓はどうしよう?

4/27sat
春嵐 いやがる犬の 注射しに
     (はるあらし いやがるいぬの ちゅうしゃしに)
        ※夏日近くの気温から一転2月並みの冷たい日に。
         近くの会場をパスしてしまったので、歩いて小
         一時間の会場まで犬を連れて行く。当家のメス
         犬様はクルマを好まない。雨に横殴りの風にと
         ことん難渋した。

4/26fri
野焼きする 煙が走り 鹿が飛ぶ
     (のやきする けむりがはしり しかがとぶ)
        ※風が強くなり山肌を煙が這い登る。いるはずの
         ない鹿が飛び出てきた。中ぐらいの外来種キョ
         ンだ。房総半島に多い害獣。昨年秋には野菜畑
         で、山から迷いでてきたキョンを見た。

4/25thu
蜘蛛の糸 サクラの花軸が 風に舞う
     (くものいと さくらのかじくが かぜにまう)
        ※すっかり葉桜になった並木道に、花軸が宙にい
         くつも揺れている。一部の木々に数え切れない
         ほど・・・。

シャクナゲに 白ミズキ咲き クレマチス
     (しゃくなげに しろみずきさき くれまちす)
        ※クレマチスも白。この時期主役の白い花々が咲
         きそろっている。信濃大町の作家丸山健二の
         「白い庭」を思い浮かべる。彼の庭の主役は
         バラ、シャクヤク、ボタンなど。

4/24wed
ぼそぼそと 術後の友に 春少し
     (ぼそぼそと じゅつごのともに はるすこし)
        ※甲状腺ガンの手術を受けた友人と電話で話す。
         声が出ない。しばらくはリハビリと並行して、
         専門医の経過観察が続くという。回復を祈る。

4/23tue
いざ水田 わが磨ききし 田植え機で
     (いざみずた わがみがききし たうえきで)

女房の 軽トラ苗を 満載し
     (にょうぼうの けいとらなえを まんさいし)
        ※田植えが真っ盛り。当節のこと、たくさんの人
         が集まってということはない。相当な広さであ
         っても、奥さんと二人で機械を操って、淡々と
         行う。

4/21sun
スマホ見せ 愛犬探す 少女あり
     (すまほみせ あいけんさがす しょうじょあり)
        ※今日は統一選後半の投票日。一段と暖かい晴れ
         日。子犬2匹を連れた娘が真剣な眼差しで周囲
         を見回していた。昨日の午後、近くの自宅から
         もう一匹の飼い犬が姿をくらましたとか。

4/20sat
統一選 街に昔日の さざめきが
     (とういつせん まちにせきじつの さざめきが)

石楠花の 向こうを赤の 選挙カー
     (しゃくなげの むこうをあかの せんきょかー)

窓々と ドライバー相手の 選挙戦
     (まどまどと どらいばーあいての せんきょせん)
        ※選挙活動は今日が最後。繁華街とか駅前でも人
         はわずかだ。この問題をどうするかを訴えるよ
         り、とりあえずは人影のない団地に繰り出す。
         人影は少ないが窓がある。窓の奥に人がいる。
         今日は土曜日。通りすがりのクルマもある。

4/18thu
はなずおう 今年五軒の 門の中
     (はなずおう ことしごけんの もんのなか)
        ※我が家のスオウが近所の庭に広がって何年か?
         今年はまた一軒増えた。全て鳥の仕業。草花で
         はなく低木だから時間がかかるのに。

4/17wed
ランドセル パン屋の前で 深呼吸
     (らんどせる ぱんやのまえで しんこきゅう)
        ※一段と大きくなった真新しいランドセル。なに
         もかも新鮮、広い社会への第一歩。

4/15mon
今年また 桜吹雪の 人となり
     (ことしまた さくらふぶきの ひととなり)
        ※嵐にも負けなかったサクラがほんの少しの風に
         散って舞う。堤の並木道でタイミングよく、遠
         山金四郎の桜吹雪を味わう。

散る花や 咲く花もあり 葉かげかな
     (ちるはなや さくはなもあり はかげかな)

4/14sun
人は笑み チューリップ畑の 沼に果つ
     (ひとはえみ ちゅーりっぷばたけの ぬまにはつ)
        ※千葉県佐倉市の「チューリップフェスタ」に出
         かけた。花の種類の多さと印旛沼沿いの園の広
         さにびっくり。小学校毎の畝が並んでいたり、
         掘った花を買うサービスがあったり、催しは多
         彩。快晴の園内は遠くが霞むほどで入園者はみ
         んな至極満足の体だ。
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モネがいる チューリップ畑の 青い空
     (もねがいる ちゅーりっぷばたけの あおいそら)
        ※4/7の句を再掲。
         やっぱりモネの「サッセンハイムのチューリッ
         プ畑」を思い起こした。

4/12fri
校庭を 駐車場にして 入学式
   (こうていを ちゅうしゃじょうにして にゅうがくしき)
        ※雨降り日の入学式。生徒が大事に手入れしてい
         たのを知っていただけに、「なんてバカなこと
         を、校庭がめちゃめちゃになるー」と憤る。し
         っかりと、無音で。

4/11thu
木魚あり 春の法事の 夢うつつ
     (もくぎょあり はるのほうじの ゆめうつつ)
        ※若い住職の読経の声が心地よい。差し込む春の
         日が暖かく、ついコックリしてしまう。

4/10wed
ジョウビタキ 留鳥となれ 春の雲
     (じょうびたき りゅうちょうとなれ はるのくも)
        ※紋付鳥とも呼ばれる尉鶲(ジョウビタキ)は渡
         り鳥で初夏には北方の大陸に帰ると言われる。
         そうかなあ・・・、夏にも、あの鳴き声は頻繁
         に聞いていたと思うのだが。どこかの愛鳥家の
         サイトで「韓国では留鳥とされている」とあっ
         た。よし、自信を持って観察していこう。

4/9tue
花の宴 まだ何度でもと 答えけり
     (はなのえん まだなんどでもと こたえけり)
        ※「今年のサクラも終わり、もう何度見ることが
         出来るかな?」 こういう一見弱気な質問をす
         る人には元気な(過ぎる)人が多い。

4/8mon
トンネルの 出口にサクラ また光り
     (とんねるの でぐちにさくら またひかり)

髭面の 手折れるサクラ 傘の下
     (ひげづらの たおれるさくら かさのした)
        ※近くの中学校のまわりには満開のソメイヨシノ
         に混じって、ヤマザクラと八重桜が追いかける
         ように咲き、鄙にはまれな見事な競艶ぶりだ。
         いや、鄙だからこその、この競艶。

4/7sun
鳶ゆうゆう カラスが後を 春うらら
     (とびゆうゆう からすがあとを はるうらら)
        ※サクラ満開。言うことない日曜日。

モネがいる チューリップ畠の 青い空
     (もねがいる ちゅーりっぷばたけの あおいそら)

4/6sat
トッピング サクラと答え 春朦朧
     (とっぴんぐ さくらとこたえ はるもうろう)
        ※一段と暖かくなり、当地河畔の桜も満開。気分
         が良く、頭も少しおかしくなりそう。

夜桜や 外反母趾の 痛さかな
     (よざくらや がいはんぼしの いたさかな)

4/5fri
つくしんぼ 東伏見の 土を割る
     (つくしんぼ ひがしふしみの つちをわる)
        ※藤島大「北風」を読んだ。早大ラグビー部の練
         習場が東伏見にあった頃、一年生フッカーの目
         を通して、伝統とハードな鍛錬と人間関係を豊
         かに描いている。OBの役割も印象的だ。
         「北風」は第二部歌だとか。学生ナンバー1に
         なった時以外、第一部歌「荒ふる」は封印され
         ている。著者も早大ラガーOB。

4/4thu
アイリスは 咲けど紫紺の 優勝旗
     (あいりすは さけどしこんの ゆうしょうき)
        ※甲子園選抜高校野球決勝戦は習志野(千葉)が
         東邦(愛知)に敗れた。あれよあれよの決勝進
         出で、春の紫紺の優勝旗が初めて千葉にやって
         来るかと期待したが・・・。

4/3wed
厚着して 病院に並ぶ ユキヤナギ
     (あつぎして びょういんにならぶ ゆきやなぎ)
        ※寒気団の襲来で寒さがもどってきている。午前
         8時ころに寒そうな列が出来ている。大半がお
         年寄り。なんとかならないかなァといつも思う。

4/2tue
サクラバナ いささかなりと 嫉妬して
     (さくらばな いささかなりと しっとして)
        ※新元号は万葉集の「梅の花」を愛でる巻の序文
         からとられたという。今朝の、今をときめく当
         地満開のサクラはきれいだったが、さて内心は
         どうであろうか?

4/1mon
新元号 ふーん煙草に 火をつける
     (しんげんごう ふーんたばこに ひをつける)
        ※新元号が「令和」に決まる。



          **************************


3/31sun
春ひばり 姪の息子に 嫁が来る
     (はるひばり めいのむすこに よめがくる)

ムスカリや この粒ほどに 幸多く
     (むすかりや このつぶほどに さちおおく)
        ※夜来の雨があがり、腕白息子最良の日が来た。

3/30sat
金柑を 貰いそこねて 土手の春
     (きんかんを もらいそこねて どてのはる)
        ※朝の散歩で顔見知りのお年寄りとこの冬は会わ
         なかった。この人の畑のそばにキンカンの木が
         何本もある。彼女に断って、そのたわわになっ
         たキンカンを貰おうと思っていた。残念。もう
         遅い。

3/29fri
春の日や 子規に勝れる おらが城
     (はるのひや しきにまされる おらがしろ) 
        ※先日民放TVで「お城総選挙」という番組を
         見た。郷里の会津若松城(鶴ヶ城)が16位で松
         山城よりも上位にきた。大概のランキングとは
         違う結果だ。しかし敬愛する子規に一泡吹かせ
         たようで快哉を叫んだものだ。
         ・・・松山城は三度訪れたが、まっこと良い城、
         一桁も上位に来るのが順当だと思う。
         松山城を本格的に築城したのは賤ヶ岳七本槍の
         一人加藤嘉明。家光の時代に嘉明は加増されて
         会津藩主となった。

3/28thu
花ニラは 清楚の極み 小さきも
     (はなにらは せいそのきわみ ちいさきも)
        ※東京の桜は昨日満開とか。当地は0~3分咲き。
         こんなに差があるのも珍しいのではと思う。家
         の桃の花は満開。散歩ルートでは桜並木の足元
         にひっそり咲く花ニラが主役。

3/27wed
酔いつぶれ 春の飲み屋の ざわめきを
     (よいつぶれ はるののみやの ざわめきを)
        ※都内散歩の会、最後は錦糸町駅前での打ち上げ。
         このところ酔うと気分が悪くなることがある。
         この日もあえなくダウン。居酒屋のざわめきが
         友人の声がとぎれとぎれに・・・。

3/25mon
春宵や 川のきわなる 鍋屋かな
     (しゅんしょうや かわのきわなる なべやかな)
        ※本所と深川の境目に堅川が流れている。その二
         の橋のたもとに軍鶏を食わせる鍋屋「五鉄」が
         あった。平蔵のなじみの店。池波正太郎「鬼平
         犯科帳」での話。今回も本所から錦糸町へ行く
         途中で、すぐ近くを通った。もちろん店はない。

編笠の 平蔵と会う 鍋屋かな
     (あみがさの へいぞうとあう なべやかな)

3/24sun
海舟翁 川の向こうを かけし春
     (かいしゅうおう かわのむこうを かけしはる)
        ※前回赤坂の路地をめぐって勝海舟の屋敷跡を探
         した。当地本所でも海舟ゆかりの地が複数ある。
         まず訪れたのは、吉良邸跡に近い両国公園の中
         の「生誕の地」。立派な記念碑と説明板があっ
         た。次は少し離れて錦糸町駅近くの「揺籃の地」
         と「幼少年時居住の地」だ。NHKのドラマ
         「小吉の女房」で住まいは本所割下水とあった。
         割下水とは雨水などを流す掘割のこと。明暦の
         大火後に整備されたとか。

3/23sat
シニア行く 春の本所は 松坂町
     (しにあいく はるのほんじょは まつざかちょう)
        ※芥川の碑を見て、吉良邸跡に。シニアの足の向
         く先はお決まりのコース。上野介の首を洗った
         という「首洗い井戸」なるものがあった。出来
         過ぎの配置。

洗うべき 春のほこりも なかりけり
     (あらうべき はるのほこりも なかりけり)

3/22fri
春まだき 粋人ありて 腹を切る
     (はるまだき すいじんありて はらをきる)
        ※両国橋を渡ったところに赤穂浪士大高源五の句
         碑がある。「日の恩や 忽ちくだく 厚氷」とあ
         る。立派な句碑だ。雅号は子葉。一流の風流人
         と交流し、吉良邸内偵の役目を担っていたとか。
         句碑の背後には大山巌の巨大な「表忠碑」が立
         っている。赤穂浪士の義挙を称えたのかな? 
         それにしても巨大すぎる。実は日露戦争の戦死
         者を悼んだものであるとか。

回向院 大火と力士 犬と猫
     (えこういん たいかとりきし いぬとねこ)
        ※明暦の大火の死者を供養するために幕府が建立
         したとか。駆け足の印象ではあるが、境内のあ
         ちこちにこの寺の特徴があふれている。力士、
         海難事故の犠牲者、犬猫の供養等々だ。立派な
         本堂は阿弥陀仏と千体地蔵が安置され、お堂の
         左右には犬猫の数知れない卒塔婆が壁にはめ込
         まれ並べてある。ちょっと異様な感じも。
         現代を生きる都会のお寺だなァと感心。

3/21thu
屋形船 女将せわしき 春の夕
     (やかたぶね おかみせわしき はるのゆう)
        ※浅草橋から柳橋にかけての左岸には屋形船や釣
         り船が係留されている。屋形船の料金コースが
         料理の写真と共に貼ってある。2時間30分の
         周遊で料理込み1万円から3万円というところ。

柳橋 古楼はビルに 春の風
     (やなぎばし ころうはびるに はるのかぜ)
        ※柳橋界隈は江戸時代から由緒正しき花街だった
         ところ。隅田川を眺め、柳橋芸者が酌をするお
         座敷遊び、どうにも遠くなってしまったらしい。
         老舗の「亀清楼」はビルとなって閉店中だし、
         柳橋から浅草に向けての通りも見通しがきかず、
         散歩客にはかつての空気を察するよすがもない。

     「お白粉の風薫るなり柳橋」 子規
     「贅沢な人の涼みや柳橋」  子規

水温む 青のかんざしで ぬしに会う
     (みずぬるむ あおのかんざしで ぬしにあう)
        ※柳橋は永代橋を模したデザインの鋼鉄製。昔の
         においはしないが、ガス灯型のライトが吊られ、
         欄干にはかんざしのモチーフが施されている。
         すぐ下流は隅田川。

3/20wed
神田川 北窓開く 岸の家
     (かんだがわ きたまどひらく きしのいえ)

左衛門橋 シニアは春の 帽子かな
     (さえもんばし しにあははるの ぼうしかな)
        ※この会は三人の会。数えること21回、7年目
         に及ぶ。多少の例外はあるが、どの季節も好天
         に恵まれている。今回も晴れて春うらら、下町
         の春は光に溢れている。

橋めぐり トイレを目指す 友の脚
     (はしめぐり といれをめざす とものあし)
        ※橋は河口に向かって、神田ふれあい橋、和泉橋、
         美倉橋、左衛門橋、浅草橋、柳橋と続く。友人
         の脚は前回不調気味に見えたが、今回は快調。
         橋のたもとのトイレにスイスイと向かう。

3/19tue
サクラ待つ おたぬきふれて 歩き初む
     (さくらまつ おたぬきふれて あるきそむ)
        ※先日恒例の都心散歩の会に出かけた。今回は秋
         葉原から神田川沿いに隅田川合流までの橋めぐ
         り。それから両国橋を渡って本所界隈を練り、
         東進して錦糸町まで歩こうというもの。
         秋葉原駅に近い神田川のたもとにある柳森神社
         がスタート地点。ここは「おたぬきさま」を祀
         っている。

3/18mon
兄として どれだけのことを 春疾風
     (あにとして どれだけのことを はるはやて)
        ※弟の命日が来る。満二年。決して順調な生涯で
         はなかっただけに今もじわーと考えている。
         このところ葬式、命日などの記事が多い感あり。
         抹香臭くていけない。もうやーめた。
         もうすぐサクラ開花。

3/16sat
春雨や 盆栽ひとり 傘もなく
     (はるさめや ぼんさいひとり かさもなく)
        ※亡き義兄がくれた松の盆栽が雨に濡れている。
         「春雨じゃ・・・」の風情ではなく、相当弱っ
         ている様子だ。「ダメにするからいらない」と
         言ったのだが。人にものを上げるのが好きな人
         だった。

3/14thu
ふきのとう やや少なきを 惜しみつつ
     (ふきのとう ややすくなきを おしみつつ)
        ※朝早くふきのとうの秘密の場所に出かけた。こ
         のところの暖かさで、殆どが大きくなり過ぎて
         いる。良さそうなのは数えるほど。今シーズン
         はこれが食い納めになりそう。まあ、いいか。
         発ガン物質が含まれるから多食は要注意と友人
         が言っていたっけ。

3/13wed
兄姉を 亡くしことさら 春めぐる
     (きょうだいを なくしことさら はるめぐる)
        ※この冬に兄と姉を亡くした家内はじっとしてい
         る。このところの暖かさで梅の蕾が一気に色づ
         いてきた。

3/12tue
春めくも 大三角の いまだなお
     (はるめくも だいさんかくの いまだなお)
        ※冬の大三角が南東の空に昨夜もバッチリ。冬の
         寒さゆえの見事な自然現象は数知れない。朝夕
         厚着しながら外を歩く楽しみはもう少し。

3/10sun
スマホ見つ 春の野を行く 男あり
     (すまほみつ はるののをいく おとこあり)
        ※昨日関東地方に春一番が吹いたとか。平年より
         かなり遅めらしい。今朝は朝から気温がぐんぐ
         ん上昇している。

3/9sat
技継ぎて 菅生の春に 鋏鳴り
     (わざつぎて すごうのはるに はさみなり)

春寒や 二日酔いして 脚絆卷く
     (はるさむや ふつかよいして きゃはんまく)
        ※他界した義兄は造園業の前社長。とはいえ根っ
         からの職人で、それを誇りにしていた。人が良
         くて優しく、家族をそして酒をこよなく愛した。

3/7thu
なつかしき 顔あり春の 通夜の客
     (なつかしき かおありはるの つやのきゃく)

酔い覚まし 椿のかげを 通夜帰り
     (よいざまし つばきのかげを つやがえり)

3/6wed
春めきて 隣家の音が 声になり
     (はるめきて りんかのおとが こえになり)

春の雨 隣りのむすめの 気合かな
     (はるのあめ となりのむすめの きあいかな)
        ※隣家の小学校高学年の娘は会えば会釈する程度
         だが、時々熱心になにかを稽古する声が聞こえ
         る。はて、なにかな? 兄が習っている合気道
         をいっしょにやっている? それとも回転レシ
         ーブの練習? ドタンバタンの音と彼女の気合
         は春の我が家の七不思議。

3/2sat
春の日に 千日ぶりの 我が家かな
     (はるのひに せんにちぶりの わがやかな)
        ※義兄が今朝息を引き取った。3年弱病院や施設
         に滞在し、あれほど念願した生家に無言でもど
         って来た。

3/1fri
春を待つ 昭和のこけしを 描きけり
     (はるをまつ しょうわのこけしを えがきけり)

白360-5.jpegKC3P0011b.jpg          **************************



          **************************


2/28thu
クロッカス 数えている間の 黄八丈
     (くろっかす かぞえているまの きはちじょう)
        ※八丈は長さとしては超おおげさ。1丈=10尺
         で3メートル強。我が家のクロッカスの花壇は
         真っ黄色だけれど、広さは1m×2mほどで長
         辺でも1丈未満。

2/26tue
えんぶりや 七色の烏帽子 雪に舞う
     (えんぶりや なないろのえぼし ゆきにまう)
        ※東北を代表する冬の祭りで2月中旬に開催され
         る。国の重要無形民俗文化財。凶作や飢饉に何
         度も見舞われた、厳しい気候のこの地で、こん
         なにもカラフルで美しい装束、勇壮な舞いが伝
         承されていることにただ驚嘆。

2/25mon
雪解けや 相生町の 兄の家
     (ゆきどけや あいおいちょうの あにのいえ)
        ※会津若松の兄は現役引退後ガーデニングに凝り
         始めた。前庭を道行く人に開放している。しか
         し今は一面真っ白。道路の雪は大半なくなった
         というが。ところでこの句、大したものではな
         いけれども、中7と下5が共にアで始まるため
         に音の調子が良くなる。声に出すと一層それが
         わかる。俳人の手口をちょっとだけ理解した。

2/24sun
蝶のさま PC動画で 追うてみる
     (ちょうのさま ぴーしーどうがで おうてみる)
        ※ストックを露地栽培風に描いている。ちょっと
         だけ季節を先取りしてモンシロチョウをと思い、
         ネットで検索した。動画も画像も、イラストま
         で・・・溢れている。シーズンフリー。

2/23sat
うらやまし いまだ真冬の 常念を
     (うらやまし いまだまふゆの じょうねんを)
        ※松本市に住む友人のメールに冬の常念岳を讃え
         る文があった。朝の張り詰めた空気の向こうに
         真っ白な常念岳が・・・。

2/22fri
春一番 昔はもっと 待たれしを
     (はるいちばん むかしはもっと またれしを)
        ※花粉症の先達である家人は、この季節私が鼻を
         むずむずさせたりすると、「あ、それ花粉症の
         始まり」と言ってきて20年にもなる。しかし
         いまだにその恐れはない。春一番を待っている。

春未暁 風の戸音が 和らげり
     (はるみぎょう かぜのとおとが やわらげり)

2/21thu
ジョービタキ 寒空ここに いましたか
     (じょーびたき かんくうここに いましたか)
        ※ある雑誌の巻頭カラーページでジョービタキが
         紹介されていた。晩秋に北方から飛来する好き
         な野鳥。紋付鳥とも。「餌が少ないため殆ど単
         独で行動し」、「ピーーヨ」と啼くと。この簡
         単な記述が今までは得られなかった。
         この近所では特に早朝宅地内で、電線の上でよ
         く見かける。いつも一羽。
         「ピーーヨ」・・7~8秒・・「ピーーヨ」。

2/20wed
金文字の 残るガラス戸に 吹雪くかな
     (きんもじの のこるがらすどに ふぶくかな)
        ※小学生の時の通学路に商人宿があった。通りに
         面した入口のガラス戸に、金文字で宿の名が書
         いてあった。その後の長い間、前を取った記憶
         がない。日本海側が分厚い雪雲におおわれる荒
         天の予報を見る時など、時折金文字がどうなっ
         たか、かすれてしまったかと思いやられる。

2/18mon
年月は 盗人なれども 春めぐむ
     (としつきは ぬすっとなれども はるめぐむ)
        ※古今の明哲は言う。「年月は人にとって命にと
         って一番大事な時間を奪っていく」、「流れる
         年月はわれわれの幸福を一つ一つ盗んでいく」
         ・・・。今朝は暖かい、また春めぐるの気配だ。
         これも流れる年月のおかげか。

2/17sun
風邪癒えて 冬の務めを 果たしけり
     (かぜいえて ふゆのつとめを はたしけり)
        ※風邪本復。散々だったが、リバウンド気味だっ
         た体重が目標の50kg台にワンタッチした。世
         間の人の多くがインフルエンザに罹っている。
         仲間入りしたかな? 小さな達成感が残った。
         「風邪癒えて」3題。

風邪癒えて 菜花水仙を 凌駕せり
     (かぜいえて なばなすいせんを りょうがせり)
        ※早朝の犬の散歩は短々バージョンでお茶を濁し
         ていた。犬の体重は増加。久しぶりのフルバー
         ジョンで小櫃川の堤に出かけたら、全然なかっ
         た菜の花が咲き始めていた。

風邪癒えて 春シューさんの 即興曲
     (かぜいえて はるしゅーさんの そっきょうきょく)
        ※好きなシューベルトの即興曲を聴く。この曲を
         初めて耳にした時、4曲とも「水の流れ」のイ
         メージを持った。このことは一人合点かな?と
         思っていたら、広くそのイメージが定着してい
         ることも知った。風邪から回復したら、やっぱ
         りこれだ。アップロードは数知れない。
         その中で。 

2/16sat
蒲公英や 幽かに霰を 撥ね返し
     (たんぽぽや かすかにあられを はねかえし)

玉ねぎに 年の初めの 馳走する
     (たまねぎに としのはじめの ちそうする)
       ※2月に入っての雪、霰は珍しくない。そんな荒れ
        気味の2月も下旬に入ると、着実に日々の気温を
        高めていくようだ。晩秋に苗を植えてから、なん
        にも世話しないできた玉ねぎの冬越しも終わりだ。
        「2月下旬に初めての追肥をせよ」とある。

2/15fri
湯たんぽと 氷枕で 三日過ぎ
     (ゆたんぽと こおりまくらで みっかすぎ)
       ※風邪もう一週間近く、結果的にはダウンが続く。
        強がりを言っても、今季もやってしまった。喉と
        痰が中心なので、頭寒足熱を徹底するのが一番。
        灯油ストーブなどで頭が下手に暖房されると途端
        に痰が絡む。二度目の処方薬をもらった。

2/14thu
寒鰤や いまだ本復に 不足あり
     (かんぶりや いまだほんぷくに ふそくあり)
       ※風邪は幸い重くはならない。なんど治ったと思っ
        たことか? いまだにノド変調と微熱がある。治
        ったとは思わず、静かにしよう。

2/12tue
絵ろうそく 冬に仏の 華やげり
     (えろうそく ふゆにほとけの はなやげり)
        ※故郷では昔旧正月もつつましく祝った。寒さの
         底になることの多い、この季節、家の中の行事
         が嬉しかった。仏壇にはお供えも花も少しだけ、
         絵ろうそくが際立った。

2/11mon
春の雪 キャベツの列を まっさらに
     (はるのゆき きゃべつのれつを まっさらに) 
        ※今日も朝方は雪。畑に取り残されたキャベツは
         すっぽりと雪の綿帽子をかぶっている。長いこ
         とハチマキがしてあったから、もう枯れ葉色に
         なり、大きさも縮こまってきていた。

2/10sun
風強し 福寿草咲いて 喉癒えり
     (かぜつよし ふくじゅそうさいて のどいえり)
        ※強風が残っているなか、我が家の絶滅危惧種、
         福寿草が健気にも花開いた。もう一つの危惧種
         は「風邪も寄り付かない」と言っていたのに、
         微熱とのど痛の風邪の症状で三日ほど静かにし
         ていた。こちらも頑張る。

2/9sat
雪模様 独尊唱えし 人は今
     (ゆきもよう どくそんとなえし ひとはいま)
        ※確実と言われた降雪。窓からの光は全面白で華
         やかにさえ見える。何故か主張の強かった人の
         ことを思い出す。ああ、彼も20年近くの間に
         変わっただろうか?

2/8fri
申告の 縁切れ娑婆は 遠くなり
     (しんこくの えんきれしゃばは とおくなり)
        ※社会とのつながり、催しなどは一つ一つ減って
         いく。シニア世代の急増で、こうしたボヤキは
         世に溢れている。

2/7thu
飛び起きて 胸さすりおり 春の夢
     (とびおきて むねさすりおり はるのゆめ)
        ※2月の約束をうっかり失念した、夢を見た。め
         ずらしく飛び起きて、「やっぱり3月じゃん」
         で終わり。

泣く夢を 見しとまた泣く 春の朝
     (なくゆめを みしとまたなく はるのあさ)
        ※悩み多きシニアにはこういうこともある。画と
         して似合わないだろうけど。

2/6wed
虎落笛 故郷の山を なぞりけり
     (もがりぶえ こきょうのやまを なぞりけり)
        ※今日は雨。風もある。しかし虎落笛など、この
         地では期待できない。強風が家の周りの垣根や
         植え込み、防風林などを襲ってできる独特の風
         音を言うとか。故郷では荒天の日など、いくら
         でも聞けたのだろう。その頃は言葉そのものを
         知らなかった。

2/4mon
湯たんぽや 久方ぶりの 朝寝かな
     (ゆたんぽや ひさかたぶりの あさねかな)
        ※立春。朝7時、犬と散歩に行く時の気温は17
         度。昨日は3度。皮膚感覚も狂ってしまう。

冬苦行 プラトンよりも 沙翁かな
     (ふゆくぎょう ぷらとんよりも さおうかな)
        ※古典を読むことは誰しも隠居後の目標。しかし
         プラトンなどギリシャ、ローマの古典は読める
         はずもない。辛うじて今実行中なのはモンテー
         ニュ「随想録」とシェークスピアの併読。双方
         に関連はないのだが、少しは楽しみながら読み
         進むことが出来る。でも大部分は難行、続くこ
         とだけにこだわっている。

2/3sun
駄句三歳 梅の小さな つぼみかな
     (だくみとせ うめのちいさな つぼみかな)
        ※このブログを始めて満三年。俳句も内容も進歩
         はないが、ちょっとホッとしている。取り柄は
         自然体で衒いのない書き付けをしようと継続で
         きたこと。実生活に面白みや変化が乏しいから、
         ブログも充実というには遠い。まあ、これでい
         いかな、と思っている。

2/2sat
黒き指 逝き海苔農家の 三代目
     (くろきゆび ゆきのりのうかの さんだいめ)
        ※木更津周辺の海苔出荷は近年振るわない。有明
         海産と覇を競う時代は再来するのだろうか。逞
         しかった先代が少し前になくなり、半勤半漁の
         三代目は60歳少し前、前途はいかに。
         多くを期待していないのか、当人は意外やのほ
         ほんとしている。

2/1fri
曲がり来る 冬場のバスの 足遅し
     (まがりくる ふゆばのばすの あしおそし)
        ※昨夜の雨と強風は朝にはあがり、快晴の2月の
         空が広がる。なにもかもすっきりしている中で、
         バスだけが相変わらずのんびりと走ってくる。
         春近しを思わせる光景だ。



          **************************


1/31thu
歓呼あり 母の故国の 冬銀河
     (かんこあり ははのここくの ふゆぎんが)
        ※大坂なおみフィーバーも一段落か? それにし
         ても稀に見る試合だった。相手の強烈なサーブ
         に適応して楽勝かと思われた第2セットは暗転、
         逆にとられた時は明らかに劣勢だった。ところ
         が・・・。

拳ふり 鼓舞する夏の メルボルン
     (こぶしふり こぶするなつの めるぼるん)
        ※第3セット開始前の休憩時に彼女は自らの力で
         蘇生したという。感情の高ぶりを抑え、静かに
         自らを鼓舞したとか。すごい。

1/30wed
寒の朝 事故を起こした 顔不憫
     (かんのあさ じこをおこした かおふびん)
        ※出勤途上らしい人が現場で警察を待っている。
         寒い朝で、起こした事故のことがまだ信じられ
         ない表情。蒼白。他人事ではない。

地が恵む 玉鋼あり 冬出雲
     (ちがめぐむ たまはがねあり ふゆいずも)
        ※テレビで冬の「たたら製鉄」の模様を放送して
         いた。ここで出来る「玉鋼」は日本刀作りに欠
         かせない原料となる。
         去年の島根旅行を思い出した。しかし思い出し
         たのは「そば」の味だった。

1/28mon
霜光る 茶畑作りし 人の庭
     (しもひかる ちゃばたけつくりし ひとのにわ)
        ※本場茶畑には防霜ファンがあるが、霜の害が殆
         どない内房、今朝の冷え込みはどうか? うっ
         すらの霜だ。光っている。ファンはないからビ
         ニールシートで覆っているらしい。一人分でも
         自家製茶ができれば満足と言っていた。

1/27sun
納骨や 生家に続く つばき道
     (のうこつや せいかにつづく つばきみち)
        ※義姉の納骨の法要。方々に居を構えたが、結局
         は生家近くの墓地に眠ることに。風の強い、乾
         き切った日。

1/26sat
寒の変事 庭の木はみな 剪られたり
     (かんのへんじ にわのきはみな きられたり)
        ※たまに留守にしたら、庭の木はことごとく短く
         剪定されていた。家内の仕業。殆ど面倒を見な
         いので文句は言えないが、もみじの古木、ムク
         ゲなどいくつかは自分のEEZ(排他的経済圏)
         内だと思っている。空しい抗議をする。

1/25fri
冬の日よ 眩しきまでに 鳩の群れ
     (ふゆのひよ まぶしきまでに はとのむれ)
        ※寒、大寒の間も驚くような寒さ、強風の日はな
         い。おかげさまでという感じもあるが、何事もな
         く日がスルスルと速く過ぎていくという感慨もあ
         る。一冊の本を真面目に読んでいるが、これが
         なかなかに難行で、渋滞しているうちに日が過
         ぎていく。

1/24thu
手袋を 脱がずトランプの 顔を見る
     (てぶくろを ぬがずとらんぷの かおをみる)
        ※帰宅するとテレビがトランプ米大統領の発言
         を伝えている。あの声と剥き出しの表現、そ
         して劇場型の発信力。すっかり馴れたのだが、
         ついつい目と耳が吸い寄せられる。この一、
         二年で罹患した生活習慣病。

1/23wed
ためいきや 冬の日照りで 畑萎え
     (ためいきや ふゆのひでりで はたけなえ)
        ※白菜は大丈夫だったが、ブロッコリーや葉物
         野菜は軒並みなんと小さいことか。冬眠中の
         玉ねぎに影響が出ないようにと水をやる。

1/21mon
出初式 紅白まとう クルマ行く
     (でぞめしき こうはくまとう くるまいく)

冬麗ら 三ヶ月のたびに 転院す
     (ふゆうらら みつきのたびに てんいんす)
        ※知人が入院していた一般病院から転院を迫られ
         た。入院加療が一段落すると、「老人の療養」
         がメインでかつ家族の都合で入院を続けている
         と看做され、入院能力を確保するためにも「出て
         もらおう」という主旨なそうな。この目的のために、
         入院にかかる諸費用(病院側の収入)は逓減す
         るシステムになっていて3ヶ月を過ぎるとぐっと
         低くなる。だから病院は嫌う。

1/20sun
鏡餅 かけらは丸い ピザの上
     (かがみもち かけらはまるい ぴざのうえ)

大寒や ヤビツ峠の 凹みかな
     (だいかんや やびつとうげの へこみかな)
        ※丹沢山塊の東端と「お参りで名高い大山」との
         間の鞍部がヤビツ峠だ。冬場は大概くっきりと
         眺められる。

1/19sat
悴みて 野仏枯葉を 集めたり
     (かじかみて のぼとけかれはを あつめたり)
        ※この周辺の農村では広い田畑の中に村落が点
         在していて、その入口などに野仏や地蔵尊が祀
         られている。現在では道路が通っているから思っ
         てもいない所で出会うことがある。多くは相当古
         いものらしい。半ば朽ちているものも。朝日を浴
         びた寒中の野仏は暖かそうに見えた。

1/18fri      
セピア色 大雪の日の 父と母
     (せぴあいろ おおゆきのひの ちちとはは)
        ※日本海側は雪、関東地方は「バカっ晴れ」で低
         湿度。肩の高さまで積もった雪を取り除いてい
         る写真を見ながら、昔は大変だったと話をされ
         た。故郷で少年の頃である。その大雪を羨まし
         く思ったものだ。写真は当然白黒、セピア色だ
         った。

1/17thu
冬の日の トンネルぬけた そこにあり
     (ふゆのひの とんねるぬけた そこにあり)
        ※稀勢の里引退。怪我も癒え、体力気力充実と言
         われたが、心技体それぞれの充実がうまく噛み
         合っていない。それはもう病気で、噛み合わない
         症候群に陥っていたのだろう。なんとも微妙なも
         のだ。冬の日を浴びれば雲散霧消するかも。

1/15tue
寒空に夕日映え 人ちらと見る
     (かんくうにゆうひはえ ひとちらとみる)

振り向いて 教えられたり 冬の虹
     (ふりむいて おしえられたり ふゆのにじ)

1/14mon
着付け待つ 父はクルマで 寒の朝
     (きつけまつ ちちはくるまで かんのあさ)
        ※成人の日の朝、近所の美容院は朝暗いうちから
         盛況だ。店内は女性だけなのだろう。迎えの父親
         は中に入らず、外のクルマで待っている。もうすぐ
         娘の晴れ姿が・・・。

1/13sun
鈍色の 寒の空あり ノーサイド
     (にぶいろの かんのそらあり のーさいど)
        ※ラグビー大学選手権で明治が天理を下し、22
         大会ぶりに大学日本一の座についた。
         惜しかったなァ・・・。僅差で敗れた天理も惜しか
         ったが、早稲田が今日日本一になってもおかし
         くなかったのに。早稲田は対抗戦で明治を破り、
         大学選手権では明治に敗れた。いずれも本当
         の僅差だった。ゲームの終了が、ロスタイム方
         式ではなく、「終了フォーン後のワンプレイ」方
         式というのが時に猛烈にスリリングな展開を見
         せる。

1/12sat
寒気団 払暁黒き 風連れて
     (かんきだん ふつぎょうくろき かぜつれて)

1/11fri
勝山の 冬の波濤見て 子を産めり
     (かつやまの ふゆのはとうみて こをうめり)
        ※冬の荒い海を見るには内房勝山の海が一番の近
         場。そこに住む知人の娘が無事出産したという知ら
         せがあった。

寒暁や 釣り宿だけが こうこうと
     (かんぎょうや つりやどだけが こうこうと)

1/10thu
櫓へと 昇る石段に 朝の雪
     (やぐらへと のぼるいしだんに あさのゆき)
        ※故郷会津若松の鶴ケ城趾に思い出は尽きないが、
         天守閣が再建される前、観光客も少なかった頃に、
         城内の石垣の上をずうっと歩いて回るのが好きだ
         った。内濠が目の下に眺められ、町並みも遠くの山
         々も一望出来た。
         うっすら雪が積もった本丸南東隅の月見櫓はなか
         でもお気に入り。一番高い石垣の上にあった。

10/8tue
水仙を 揺らすシーソーの 音続き
     (すいせんを ゆらすしーそーの おとつずき)
        ※正月の子供の遊びとして、比較的古典的なシー
         ソー。下部についていて地面に当たるクッション
         用のタイヤが変な音をたてる。

1/7mon
厚着して デイの迎え待つ 寒の入り
     (あつぎして でいのむかえまつ かんのいり)

三が日 明けの病院に 熱気あり
     (さんがにち あけのびょういんに ねっきあり)
        ※正月が過ぎて、いつもの暮らしがもどる。さす
         がに寒の厳しさ。人に会うごと、息が白い。

1/6sun
祖父の手が 小さき手さする 火鉢の上
     (そふのてが ちさきてさする ひばちのえ)
        ※一度だけ正月に母の実家に行った、小学生低学
         年の時。謹厳そのものだった高齢の祖父がめず
         らしく相好を崩して、悴んだ手を火鉢の上でさす
         り温めてくれた。なぜか鮮明な記憶。

1/5sat
初夢や 微笑む古き 顔ありき
     (はつゆめや ほほえむふるき かおありき)
        ※会えないでいる友が現れた。病気はどうか? 
         なにかすることがあるか? 日ごろ考えていた
         のに、それを尋ねることは忘れていた。

スリコギや 三日とろろの 朝仕事
     (すりこぎや みっかとろろの あさしごと)
        ※東北地方の一部では正月三日の朝は「とろろご
         飯」で祝う。小さい頃から今に至るまでとろろ飯
         が大好きだ。これが高じて、年が明けると三日と
         ろろを夢み、なんとか句をひねろうとする。

1/4fri
水洟や 朝の寒さの 異常なる
     (みずばなや あさのさむさの いじょうなる)
        ※今朝の冷え込みは尋常ではなかった。午前7時
         で0度付近。世の中は新年始動の日。とはいえ
         明日はまた週末。挨拶だけのところも多いのか
         な? 朝のクルマは少ない。

1/2wed
お年賀に 同棲若き 二人かな
     (おねんがに どうせいわかき ふたりかな)
        ※親戚の男子とその彼女が挨拶を兼ねて来てくれ
         た。年寄りの夫婦からは、年齢だけではない、言
         葉もエネルギーも、好みも行動もかけ離れ、対極
         にあるカップルだ。眩しさをこらえて見ていた。
         「なんかいいこと、ありそう」

1/1tue
元旦や 天井のシミの いとおしく
     (がんたんや てんじょうのしみの いとおしく)
        ※ほんの少しだけ朝寝をのばす。カーテンの外で
         青空が広がっていくのがわかる。正月。

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