ダクタク句集2018年(平成30年)下期 自選集 [自選集2018]
12/31mon
オリオンが 這いつくばっても 年がいく
(おりおんが はいつくばっても としがいく)
※定刻18時前の夕方の散歩でほんの少し日が長
くなったのを感じる。この時間帯ではオリオン座が
民家の屋根すれすれに横たわって見える。
義姉死んで 暮れの馳走も 減りにけり
(ぎししんで くれのちそうも へりにけり)
12/30sun
シクラメン 妻七十の 布巾がけ
(しくらめん つましちじゅうの ふきんがけ)
髪を撫で 床屋へ暮れの 坂登る
(かみをなで とこやへくれの さかのぼる)
※年の暮れらしく住まいのあちこちをきれいにする。
午後は床屋に。年内なにかと動くことが正月をゆ
っくりするための必須条件と思われる。
「毎日が日曜日、毎日が寝正月」を長年続けてい
る者の知恵というか心得だ。
12/29sat
耳すます 電話の先は 吹雪なり
(みみすます でんわのさきは ふぶきなり)
※昨夜遅く兄から電話があった。誕生日を祝ってく
れる。しかし話題は「寄る年波」、誕生日のめでた
さはやっぱり半分位。故郷会津は急に雪が強くな
り、今吹雪いているとか・・・。
12/28fri
カラーの葉 よみがえりたり 誕生日
(からーのは よみがえりたり たんじょうび)
※先日の霜で一気に萎れたカラーが今朝は元の姿
にもどっていた。73回目の誕生日、お祝いかな?
と喜ぶ。
妻任せ 誕生日の店 冬の道
(つままかせ たんじょうびのみせ ふゆのみち)
※「主人公が食べたいものを選ぶ」という大原則も
崩れ、連れまわされるハメに。後期高齢者向け
運転適正検査(ボケチェック)ではこうした自己主
張の退潮もチェックされるとか。
冬薔薇や 自分と犬の 年齢数え
(ふゆばらや じぶんといぬの としかぞえ)
※飼い犬との合計年齢は81歳。まだいい。これ
が7年後は80+15=95、明らかに老老介護。
生きていればの話だし、まあ先の話だ。
12/26wed
シクラメン セピアのバックで 際立てり
(しくらめん せぴあのばっくで きわだてり)
※年末最後の絵画教室はシクラメン。出来栄えは
良くない。目の前の花は見事でも、画用紙上の
花は簡単に際立ってくれない。今年も四苦八苦
の一年だった。
12/25tue
駅飾の ツリーをめぐり 御子迎え
(えきしょくの つりーをめぐり みこむかえ)
※都会の大エルミネーションはともかく、地方の
観光施設や駅なども残らず電飾ブームだ。さて
当家の聖なる御子様はどこかな? ア、来た。
12/24mon
年の瀬に 障子やぶれし 空家また
(としのせに しょうじやぶれし あきやまた)
※大勢の家族が住んでいた家、瓦が立派な邸宅と
も言える家が空家に。高度成長時代につくられた
住宅団地では、家々が似通った事情のもとに年を
重ねている。家族の高齢化、離散や別居。
12/23sun
発電所の 煙まっすぐに 枯野かな
(はつでんしょの けむりまっすぐに かれのかな)
※袖ヶ浦の発電所の煙突が小櫃川の橋越しに見え
る。一面の田んぼ、純農村風景をアクアラインに
通じる高速道が貫いている。毎朝夕見ている。
ここに住む者のささやかな喜び。
12/22sat
何故かいま 女優に惚れて 石蕗の花
(なぜかいま じょゆうにほれて つわのはな)
※その女優は黒木華。以前から注目していたのだ
が、先日終わった「西郷どん」での存在感ある演
技でさらに見直した次第。いい女だなァ、自然体
が素晴らしい・・・と。
12/21fri
初霜や カンナ茶となり 黒となり
(はつしもや かんなちゃとなり くろとなり)
※河川敷に長期間盛大に花をつけたカンナは、
今一団の枯れ木枯れ草になっている。年末の光
景として眺めるのが常となった。カンナは冬の季
語、かな。
12/20thu
北風を しのぐ友の句 届きおり
(きたかぜを しのぐとものく とどきおり)
※暖かい日が続く。メールで届いた友人の句のよ
うだ。大掃除日和は必ずしも歓迎ではないが、
いずれやらされる定例の網戸と窓ガラス清掃を
やる。
こういう作業はおしせまった寒い年末にではな
く、せめて10月末辺りでやる習慣だったら良か
ろうと思う。いつもそう思いながらやる。
12/19wed
枯野見る 患者のあらい 口の息
(かれのみる かんじゃのあらい くちのいき)
※病院に義兄を見舞った。長い闘病生活が続く。
流動食を滴下するようになってからは言葉は極
端に減り、呼吸のあらい日が多くなった。回復
を祈る。
暮れの街 薬局厚着の 人多く
(くれのまち やっきょくあつぎの ひとおおく)
12/16sun
窓を拭く 古新聞の 師走かな
(まどをふく ふるしんぶんの しわすかな)
※このところの冷え込みは半端ない。今朝は0度
台。小櫃川向こうの農地の景色は冬ざれそのも
の。こういう句に出会った。
冬ざるる夜の木更津甚句かな 清水基吉
12/15sat
妻亡くす 人と二人で 熱燗を
(つまなくす ひととふたりで あつかんを)
※アルコールに弱い彼を居酒屋に連れて行く。こ
ちらも相当弱い。「とりあえずビールで乾杯」など
はしない。一本の大きめの熱燗を頼み、ちょび
ちょびと少しずつ呑む。
12/14fri
介護士は 討ち入りの日に 生まれたり
(かいごしは うちいりのひに うまれたり)
※赤穂浪士吉良邸討ち入りの日。当地は快晴で風
強し。富士山、越前岳、丹沢山塊まですっかり見
える。寒さが厳しいせいもある。ここまで見えると
かえってアリガタミは半分ほど。
12/13thu
師走とて 家内マージャン 俺掃除
(しわすとて かないまーじゃん おれそうじ)
※70歳を過ぎて0から麻雀サークルに入った。
なかなか勇気がある。年末なのに足繁く通って
いる。初心者でも目一杯頭を使う、ヒヤヒヤ、ド
キドキもする。おまけに指も使う。
認知症対策としてはこの上ない。掃除をいい
つけられても、喜んで送り出す。
12/12wed
シクラメン 仄かな色を 描ききれず
(しくらめん ほのかないろが かききれず)
※時節柄シクラメンは今高価である。比較的安価
なのは色がホノカで花びらも透けそうなほど薄
いヤツ。画材に選んだのはこれだ。仲間の評は
さんざん。
12/10mon
カレンダーに 予定少なく 炬燵かな
(かれんだーに よていすくなく こたつかな)
※11月末から立て込んだ外出や忘年会やらも一
段落。しばらくゆっくり出来る。相変わらず立て
込んでいる世間や世界規模の動きをTVで眺め
るにはコタツが一番。年末年始が急に身近にな
る。それにしても食傷気味のニュースばかり。
今朝7時の当地気温は3度台。
12/9sun
時雨るるや 電球色の 路地の奥
(しぐるるや でんきゅういろの ろじのおく)
※LED電灯が街灯の多くに普及してきて、夜道は
格段に明るくなった。あえて難を言えば、その殆
どが昼光色で冬には余計寒々とすることだ。
昔の電球の暖かい、オレンジっぽい光がなつか
しい。LEDでも昔の電球色は選べるのだが。
12/8sat
顔を見ぬ 友をサカナに 鍋支度
(かおをみぬ ともをさかなに なべじたく)
冬の宙 酔って回って 友の肩
(ふゆのそら よってまわって とものかた)
※なにひとつ遠慮のいらない宴会。孫と病気の話
題は禁止しようかとなったが、結局は挫折。
ワイワイガヤガヤ・・・酔いは急速に。
12/7fri
高速の 下の水面に 鴨寝入る
(こうそくの したのみなもに かもねいる)
※これだけの騒音がある中で、羽に頭を突っ込ん
で寝入っている。屋根があるから安心なのか?
今日も別な組の忘年会がある。
12/6thu
師はひとり 和服で凛と 冬の宴
(しはひとり わふくでりんと ふゆのえん)
※水彩画教室の忘年会。先生はなんと大島つむぎ
のお召し物で現れた。「着て行くところも少ないし、
これ、私の一番のお気に入りなの」と仰るが、これ
またカワイイ。泥染めのことは知っている。気が向
けばさっと和服を着る。良い習慣と気力がないと
出来ないことだと思う。
12/5wed
文綴る うつろな悦や 冬の窓
(ぶんつづる うつろなえつや ふゆのまど)
※曇天の日は歓迎。たまった本を読み、時に雑文
をこしらえる。どうにかなるわけでもないが・・・。
12/4tue
年の瀬や 昭和に買いし 絵を飾る
(としのせや しょうわにかいし えをかざる)
※テレビだけでなく周囲でも年号、平成にまつわるイ
ベントが増えている。そんな昔ではないと思ってい
たのに、この絵の購入は昭和だった。
12/2sun
自転車の こころ旅来る 冬房総
(じてんしゃの こころたびくる ふゆぼうそう)
※NHK-BS火野正平の自転車隊が千葉県にやってく
る。いつも味わい深いふれあいを見せる。もう今頃
県内を通っているのかな?
12/1sat
勧誘員 ねばる師走や 赤き頬
(かんゆういん ねばるしわすや あかきほほ)
※12月だ。国内にも国際的にも目先の懸案が揺
れ動いている。看過できなものも多いが、さり
とて日々の動きに振り回されてはかなわない。
師走は好奇心も半分以下に抑えるのがシニアの
知恵というもの。
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11/30fri
十一月 今日の晦日を 確かめる
(じゅういちがつ きょうのみそかを たしかめる)
※薄暗い朝、まだ師走ではないことを確認する。
小春日や 初スイセンの 白い点
(こはるびや はつすいせんの しろいてん)
※土手道の水仙ロード、年々長くなる。今朝そこ
に2輪だけ開花しているのを発見した。かつか
つ今日は11月。新記録かな?
11/29thu
鷹渡る 里芋の茎 枯るる頃
(たかわたる さといものくき かるるころ)
※東京湾を南下する最後らしい?タカの群れが報
道された。サシバなら9月下旬から10月上旬
だろうから別な種類かも。昨年は双眼鏡を持ち
出して、袖ヶ浦臨海公園に出かけたのだが見ら
れなかった。今年は行かない。畑で最後のサト
イモの収穫。まあまあの出来だ。
11/28wed
いま一度 畦の草刈り 冬構え
(いまいちど あぜのくさかり ふゆがまえ)
※11月も下旬になると一気に年の瀬の感を強く
する。知り合いの米農家を継いだ人は「百姓と
言ったって、今はこつこつ自分でやる仕事は数
える程、せいぜい十姓かな」とアケスケ。「その
分全部お金がかかる」とも。
当方の師走の仕事はガラス戸と網戸の清掃く
らいなもの。一年を通してほんの「数姓」どまり。
11/27tue
キャッシュレス 余計なお世話と 三の酉
(きゃっしゅれす よけいなおせわと さんのとり)
※今年は11/25が三の酉。現金を前掛けに詰めた
熊手屋さんの威勢のいい掛け声で手締めとなる。
これもカード決済となるか?キャッシュレスなど望
まない、少なくともこの俺は、と思っても社会の仕
組みをどんどん変えられてしまう。否応なしの追
い詰め・・・否応なしの昔の消去。
11/25sun
冬の富士 見えるか賭ける 橋の上
(ふゆのふじ みえるかかける はしのうえ)
※富士山からの直線距離で当地木更津は都心とほ
ぼ同じ。しかし少し高い場所から眺めると当地か
らは富士山の全容が見える。東京湾越しの富士
山もいい。冬はちょっと自慢したくなる。
11/24sat
銀杏が 寄せられてあり 石畳
(ぎんなんが よせられてあり いしだたみ)
※朝散歩するコースを迂回して、その神社はある。
境内の4、5本の銀杏の木から毎年ギンナンの
実をいただいている。辺りに人家が少ないのと
実の粒が小さめなのが人気となっていない理由
かもしれない。
11/21wed
秋空に 声と笑みあり 義姉の逝く
(あきぞらに こえとえみあり ぎしのいく)
主なき 庭に今年も むかごかな
(あるじなき にわにことしも むかごかな)
※11/19に家内の姉が亡くなった。79歳。気のいい、
面倒見のいい人だった。合掌。
11/20tue
いつになく カタカナ料理で 秋深む
(いつになく かたかなりょうりで あきふかむ)
※先日の都内散歩の最後は麻布十番で打ち上げ。
適当な居酒屋がなく、家族連れで賑わうファミレス
に入る。生魚、焼き鳥などはないが、これも一興。
対岸の 秋雷暗き 海を裂く
(たいがんの しゅうらいくらき うみをさく)
※日産のゴーン会長逮捕。有価証券報告書の虚
偽記載、会社資金の不正使用など社長以下の
経営陣の被害者然とした会見内容にびっくり。
悪事に加担していると見るのが常識。
11/18sun
三人して 麻布十番の 落ち葉踏む
(みたりして あざぶじゅうばんの おちばふむ)
※都内散歩続き。終点予定の麻布十番に着いた
のは夕方5時。この付近の町並みは山の手とい
うより庶民的な下町の感じ。「赤い靴」の碑があ
った。通りは既に灯りがついている。
諭吉墓よ 灯り持たずに 秋の暮
(ゆきちぼよ あかりもたずに あきのくれ)
※浄土真宗麻生山善福寺は閉門17時とあって
滑り込みセーフ。既に墓地は真っ暗。福沢諭吉
の墓を手探りで発見する。
11/17sat
海舟も 参りし社の もみじかな
(かいしゅうも まいりしやしろの もみじかな)
※都内散歩続き。夕暮れどきの氷川神社はしっと
り落ち着いて、東京ド真ん中の神社とは思えな
い。
六本木 ときめくビルと 人の群れ
(ろっぽんぎ ときめくびると ひとのむれ)
※東京ミッドタウン、六本木ヒルズの近くを歩く。
ビルにはときめかないが、歩く人々には若いエ
ネルギーを感じる。新しい光景。
荷風住みし 偏奇館辺り 坂の秋
(かふうすみし へんきかんあたり さかのあき)
※麻布に入った。永井荷風が戦前に住んだ、お
気に入りの偏奇館跡はこの辺りだ。
11/16fri
氷川坂 明治の静けさ 今日の秋
(ひかわざか めいじのしずけさ きょうのあき)
旧居跡 探しあぐねて 坂の秋
(きゅうきょあと さがしあぐねて さかのあき)
※都内散歩続き。六本木寄りの赤坂六丁目にある
転坂を下ると氷川坂下に出る。ここに明治元年
までの勝海舟の旧居がある。といっても今はマ
ンションで案内板があるだけ。ここは坂本龍馬
も訪ねた場所か。
明治に入り、駿府に住んだ海舟が東京に戻って
居を構えたのも同じ氷川坂付近と知った。あの
氷川清話を語った地だ。これがなかなか見つか
らない。氷川坂、氷川神社の付近を探したがだ
め、夕暮れ近く坂道がこたえる。
11/14wed
日枝神社 秋のさわぎを 濾過したり
(ひえじんじゃ あきのさわぎを ろかしたり)
※都内散歩続き。赤坂見附から溜池方面に歩く。
小高い山の頂に日枝神社がある。東隣は都立日
比谷高校。下界の喧噪がうそのよう。
人の香と 町のにおいを 秋の風
(ひとのかと まちのにおいを あきのかぜ)
11/12mon
記念回 坂また坂の 秋を行く
(きねんかい さかまたさかの あきをいく)
弁慶濠 黄色の水面を ボートさく
(べんけいぼり きいろのみなもを ぼーとさく)
※仲間3人で都内を歩こうと始めた会が先週ちょ
うど20回を数えた。今回は四谷駅から赤坂を
抜け、六本木をかすめて、麻布十番までという
コース。 なじみの所ばかりだが、もちろん全部
を歩くのは初めて。
赤坂見附に坂道を下ると、色づいてきた木々が
濠に映えている。クルマの音はするのだが、な
ぜか静けさを感じる。
11/11sun
帰り花 大豆引き抜く 影長し
(かえりばな だいずひきぬく かげながし)
※今年はここかしこでサクラの帰り花を見る。各地
から似たような報道も多い。今日は小春日和。
ここしばらく、列島各地は概ね穏やかだ。忘れる
前にやってくるのが最近の災害だから・・・、油断
はできないが。
11/10sat
シューさんの 三十路の遺作に 聴きすがる
(しゅーさんの みそじのいさくに ききすがる)
※シューベルト 弦楽五重奏曲 ハ長調 D.956は
31歳で夭折した彼の遺作。若い作曲家が遺し
た曲に、ゆうに2倍以上の歳のシニアがはらは
らと聴き入る。
11/9fri
長き夜や 耳に手をあて 雨を知る
(ながきよや みみにてをあて あめをしる)
※静かな夜でもじっと耳をすますと「シー」という
音がする。雨の音でも遠くのクルマの音でもな
い。これは自分の「人体」の音なのか、それとも
耳内部の「雑音」なのか? 降雨の有無を確か
めるには、さらに両手で聞き耳を立てなければ
ならない。
11/7wed
みとりしと 介護士はいう 冬立つ日
(みとりしと かいごしはいう ふゆたつひ)
※夜勤で帰る介護士が出勤の同僚に短く話をして
いた。介護士と入居患者との間で信頼関係がで
きる・・・。思いをめぐらせた。
11/6tue
ゆらゆらと 神無月の 痩せ蚊かな
(ゆらゆらと かみなしづきの やせかかな)
※比較的暖かい朝。早いもので明日は立冬? 秋
深しという言葉はまだまだと思っているのに。
11/5sun
灯りなき 門前ぼおーっと 黄菊かな
(あかりなき もんぜんぼおーっと きぎくかな)
※菊花展にも出品する方から見事な大輪の黄菊を
いただいた。我が家には不釣り合いだけれども、
ありがたく朝夕眺めている。
11/4sun
文化祭 写真の空を 語る人
(ぶんかさい しゃしんのそらを かたるひと)
※見事な空を熱く、小さな声で話してくれた。シニア
男の多くが写真を趣味にしている。高価な機材が
必要になることもあるが、素人が撮影した空、花、
紅葉などの「発色のすごさ」を見るとそれも安いも
のだと感じる。昔ならプロしか出せなかった色だ。
明らかに時代が技術が後押ししているなと思った。
11/2fri
来し方は 一幕一場 秋の道
(こしかたは いちまくいちば あきのみち)
※図書館の催しで歌舞伎「義経千本桜」(のうち
3場)をAVで観た。名作だけあって、画像であ
ってもなかなかのもの。これが8Kでより鮮明
に迫力ある音響で鑑賞できる日を待っている。
11/1thu
枯れすすき 昭和も遠く なりにけり
(かれすすき しょうわもとおく なりにけり)
※「降る雪や明治は遠くなりにけり」草田男
残すところ平成はあと半年。今年は明治151
年であり、昭和93年だ。これからは平成を振
り返る話が列島中に満ち溢れるだろう。
シニアにとっては「思い出さぐり」と「悔恨地
獄」が毎日の商売のようなもの。特段に変化
はない。
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10/31wed
熊さんも 八っつぁんも名残の 虫を聴く
(くまさんも はっつぁんもなごりの むしをきく)
※江戸時代には虫の音を聴く集まりがあったそう
な。ナガ友の酒を呑む口実か? 旦那衆の風情
好みか? 涼しい日が続き、日増しに少なくなっ
てきた。
10/30tue
床の絵も 少し曲がって 秋深し
(とこのえも すこしまがって あきふかし)
※現役の宮仕え時代は仕事に明け暮れ?、家庭
のことに十分な気遣いが出来なかった。60歳代
で家庭でのことが大事に感じてきて、家の中に
ついて喧しくなった。やれゴミがたまっている、
やれ玄関が、浴室が汚れている・・・昔いた口う
るさいご隠居のよう。時には潔癖なまでになる。
しかし自覚はあるのだ。これがさらに高じるとさ
ぞ家人や周囲は大変なことになるだろうと思っ
たものだ。70歳代になって近頃は、音もなくお
となしくなった。気づいても言わない。気にしな
い。我慢するのでもない。ボケの始まり?とい
う声が自分の中にある。
10/29mon
干し柿を 煮てジャムにする 夜寒かな
(ほしがきを にてじゃむにする よさむかな)
※10月中旬に干し柿に吊るした柿が時期が早す
ぎたせいか? うまく乾燥しない。柿から発する
甘いニオイが継続し、発酵を示すエタノール系
のにおいに変化してきた。当然コバエがたかっ
てきた。品種は干し柿のブランド市田柿なのだ
が、暖かい房総育ちだからかな?とも思う。
干し柿を諦め、レシピに従いジャムにしたが、こ
れも成功とは言えぬ。折角だから食べてはいる
が・・・。毒はないみたい。
10/28sun
温暖化 されど十月の 行火かな
(おんだんか されどじゅうがつの あんかかな)
※水彩画の教室が地元の文化祭で作品を展示した。
これに興奮したわけでもないが、昨夜はよく眠れな
かった。足腰が少し冷えたので、急遽夜中に小さな
電気アンカを引っ張り出した。
もうちょっとマシな絵を描ければこういうこともなかっ
たか・・・。
10/27sat
秋冷や 数年ぶんの 月を見し
(しゅうれいや すうねんぶんの つきをみし)
※一昨日の満月、何年かぶりのワクワク、シミジ
ミ。他に感想なし。
10/25thu
霜降や 裸足歩きを やめにけり
(そうこうや はだしあるきを やめにけり)
※外反母趾のため革靴や運動靴は苦手で、朝夕
の散歩はいつも樹脂製のバンド付きサンダルを
愛用している。真冬も裸足でサンダルを履き、
「足の皮膚も丈夫になる」とか言って痩せ我慢を
続けていた。
ところが一昨年の冬に「シモヤケ」になった。もう
死語だと思っていたのに。自分が? 完治するの
に半年近くかかった。
10/24wed
木守りを 残しシニアの 柿始末
(きまもりを のこしシニアの かきしまつ)
※多くの家の柿の木は熟れた実をたわわにつけ
ているが、ひとつも収穫しない家が多い。
我が家では落葉病に見舞われたが、幸い50個
ほどは熟れて残った。きちんと全部収穫するの
が当家のやり方。そして木守りとして数個を残し、
来年のまたの実りを祈る。この祈りは小鳥が仲
介してくれる。
10/23tue
大粒の ブドウ熟さずを 食うている
(おおつぶの ぶどうじゅくさずを くうている)
※最近実をつけたことのない古いブドウの木が、
今年は見事な大ぶりの緑の房をつけた。
巨峰だから緑が濃紺に変わり、熟さねばならな
い。・・・粒々が半分ほど色づいたところで成熟
は止まった。秋も深まり、あとは小さくなるだけ。
「力尽きたか」と言いつつ、毎日数粒ずつ食べ
ている。半分ほど甘い。
10/22mon
秋桑を ここで摘みしと 太い指
(あきくわを ここでつみしと ふといゆび)
※この付近でかつて桑が作られ蚕を飼っていたこ
とを知った。50年以上も前の話とか。指さす先は
高速道下の広い雑草地、少し色づいている。
10/21sun
貝割菜 嵐の去るを 待ちかねて
(かいわれな あらしのさるを まちかねて)
※菜は風にも雨にも強いのだが、天気が好転しな
いことには畑には行けない。今朝は空気が澄ん
でいて、当地からは富士山と丹沢山系が今シー
ズン一の見栄え。今日アクアラインマラソン。
10/20sat
コスモスや 妻看る人の 笑みをみる
(こすもすや つまみるひとの えみをみる)
※久しぶりの高田馬場は雨模様。先輩二人に再会。
話はやはり健康のこと、家族のこと、今気に入っ
ていること等々。しみじみと良い時間があった。
現在の環境や暮らしの条件にはそれぞれ差があ
っても、長年培ってきた自分のやり方で暮らしを
織り込んでいくしかない。そのことの重要性を話
の中から痛感した。
10/18thu
落花生 採りごろ来たと 先達は
(らっかせい とりごろきたと せんだつは)
※千葉県の大粒落花生の品種「おおまさり」を栽
培して2年目の今年、種豆を世話してくれた人
からサインが出て、収穫を無事終了した。今年
は狭い畑ながら殻込みで12kgくらい、大喜び
である。昨年は少し待ちすぎた上にハクビシン
かアライグマに襲われて、散々な結果だった。
この品種は茹でて食べるのに適していて、早速
食べてみた。甘さ控えめだが香ばしい・・・素人
栽培者は褒めちぎっています。
10/17wed
バリウムが 在庫を一掃 秋の朝
(ばりうむが ざいこをいっそう あきのあさ)
※先日胃がん検診でバリウムを飲んだ。いつもは
体外排泄に2日は苦しむのに、今回は至極スム
ーズ。ビロウな話で恐縮だが、おまけに宿便とや
らも結構押し出されてとみえて、いつになく腸内
がすっきりした。良いことづくめだと・・・検査結果
はどうなることやら。
10/16tue
無人駅 灯りが見せる 蕎麦畑
(むじんえき あかりがみせる そばばたけ)
無人駅 平成を生き 秋時雨
(むじんえき へいせいをいき あきしぐれ)
※最寄りの駅はJR久留里線の無人駅。廃線を免
れて平成を生き延びた。それを支えた利用客は
朝夕の高校生と通勤客。近くの小湊鉄道のよう
に観光スポットとはなっていないが、地味なが
らも根強いファンがおり堅調である。それに高
校生が町内を歩く様はなんとも心強い。
10/14sun
柿くれし 老婆のシワよ 岸の家
(かきくれし ろうばのしわよ きしのいえ)
※「持っていきなよ」、朝時々顔を合わせる土手横
の畑の老婆が大きな甘柿をいくつもくれた。この
人はどうやら私を団地の住人と思って、畑のこと
果実のことをいつも教えてくれる。
どっこい、こちらは今や第一次産業?の人だ。結
構な広さの畑を借り、家には狭い土地に果樹が
5種類7本もあるし、それなりの収穫もある。言い
出せないまま、ありがたく柿を貰う。
10/13sat
筒先の 残りを出さむ 今朝の秋
(つつさきの のこりをださむ けさのあき)
※年をとると、そうそう爽快な目覚めはない。よう
やく涼しくなって、第一の仕事はオシッコ。
大半は出たにしても、肝心なのは出し尽くすこと。
ブルブルッ、ゆっくり急がず。秋冷を味わう。
10/12fri
秋明菊 亡母の遺せし 色二つ
(しゅうめいぎく ははののこせし いろふたつ)
※しのぎやすい気温、朝夕は少し肌寒いほど。静
かな一日。昨日今日と米国発の世界同時株安が
カマビスしいが、NHKで放映した小津安二郎作
品のうち、まだ見ていなかった映画をゆっくりと
味わう。
10/11thu
母の顔 施設に入れる日 坂の秋
(ははのかお しせつにいれるひ さかのあき)
※友人が高齢の母親を施設に入れた。そのお母
さんも暮らしぶりも以前から知っているので、友
人の心境に思いを馳せた。
10/10wed
新月や 藪の小径の カラスウリ
(しんげつや やぶのこみちの からすうり)
※夜遅くの散歩でもいつものコースを行く。ライ
トで照らした草陰にカラスウリが浮かびでた。
まだ十分色づいていない。熟れた色だったら、
ちょっとびっくりするかも。
ボケはじめ ふとしのびよる 秋の風
(ぼけはじめ ふとしのびよる あきのかぜ)
※昨日ある会合に行ったところ、現地に着いて
から一週間違っていたことに気づいた。「カレ
ンダーにつけておかないから」と家内は言う。
実はちゃんと書き込んであったのだ。ただそ
のメモ自体が間違っていた。
ボケ来たかな? ・・・この手のことは既に何
十年も前からあった。ノープロブレム。
10/8mon
展示作 急かずに如かじ 柿の音
(てんじさく せかずにしかじ かきのおと)
※文化祭に展示する水彩画を描いている。一気呵
成に仕上げるか?慎重に行くか? 出来上がり
の絵の調子にも影響する。ヘタはヘタなりに悩
むもの・・・ボサッ、アッ柿が落ちる音。
我が家の柿の音は鐘の音などではない。
10/7sun
秋の月 犬曳く道を 悔やむのみ
(あきのつき いぬひくみちを くやむのみ)
※今月初めの夜、犬の散歩で怪我をした。飼い主
の方である。真っ暗なところで道を渡る際に、
自らが走って縁石に躓いてしまった。軽傷だっ
たが、膝と両手で支える形で倒れたため両手と
腕に10箇所以上の擦過傷を負った。勝手知っ
たる散歩道で「やってはいけないこと」をして
しまった。傷の経過は至極順調だが、今もって
腰と膝が痛い。
怪我をして たまりし秋の 仕事かな
(けがをして たまりしあきの しごとかな)
※垣根の刈り込み、干し柿吊るし、落花生の収穫
など、知的な作業はない。
10/5fri
柿の木は 落葉病なり 空青し
(かきのきは らくようびょうなり そらあおし)
※柿の葉が黄色になり斑点ができ、面白いなと思
っていたら、実が成長できないまま赤くなり落ち
た。病原菌の仕業とか。人間が食べても害はな
いらしい。でも甘くない。残念。
落葉病と台風による強風で、葉はスカスカにな
った。知ったのは、青い空と思った以上の柿の
実の多さだ。
全滅にはならないだろう。ここに至ってもまだ期
待している。甘くて大きい富有柿。
10/4thu
草虱 荷風浅草へ 靴の音
(くさじらみ かふうあさくさへ くつのおと)
※荷風は戦後暫くして市川に住んだ。文筆活動は
一部の小品以外鳴りを潜め、交友もなく、専ら
浅草に通う。秋になると、背広にコートを着て、
カバンに傘を持った彼の姿が思い浮かぶ。革靴
の音。高価なものではなかったとか。
うろこ雲 戸締りしたる 荷風かな
(うろこぐも とじまりしたる かふうかな)
※日常のことにいそいそとする荷風が好きだ。浅
草で決まった店で昼食をとり、馴染みの劇場に
立ち寄る。
10/3wed
選挙終え 基地をぼかした 悔いあらん
(せんきょおえ きちをぼかした くいあらん)
※本土からの押し付けを嫌い、旗幟鮮明を好む県
民性が今回の結果か? 果てしない押し問答が
なおも続くことに・・・。
父知りて 賢治の秋も 深く知り
(ちちしりて けんじのあきも ふかくしり)
※図書館からのメールで門井慶喜の「銀河鉄道の
父」の順番が来たことを知る。予約をしたことすら
忘れた頃に・・・予約システムの醍醐味だ。
ご存知直木賞受賞の本。賢治の行動や文学のこ
とで新たなことは殆どないが、父政二郎の細やか
な心情を通して、人間賢治を味わうことが出来た。
こんな父親の方が、天才賢治より希少価値があ
るようにも思われた。すいすい読書。
10/2tue
日常が 台風一過 舞いもどる
(にちじょうが たいふういっか まいもどる)
※例年以上に怯えを覚える今年の台風。備えをし
て、接近の情報に神経をとがらせ、夜中の強風、
大雨の音に寝もやらず朝を迎える。被害がなけ
れば幸い、・・・朝の光がまぶしい。
10/1mon
台風や 堰守る人の 叫びおり
(たいふうの せきまもるひとの さけびおり)
※取水堰を監視、操作する建家の窓が開き、人が
堰近くにいる作業員に大声で指示をしている。
最近の各地の災害には、思わぬ出水、氾濫が数
多く含まれているから、真剣そのもの。西から強
い台風24号が接近している。
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9/29sat
新語聴く 姦しからず 女子の会
(しんごきく かしましからず じょしのかい)
※今風のカフェに入った。耳をすます。すぐに聞
き分けができない言葉が混じる。若い女子かな
と思ったら、アラフォー世代の数人だ。文庫本
持参ではあったが、現代語仕入れに切り替え
ざるを得なかった。かなりカシマシしい。
9/28fri
稲妻や 機影羽田へ 列をなす
(いなづまや きえいはねだへ れつをなす)
※羽田が沖合拡張されてから、風向きや天候にも
よるが、繁忙時間帯には当地木更津市の上空を
「2列縦隊」で航空機が進入する。夕方見上げる
視界に4機の灯りを数えるのは普通のこと。首を
回すと5機、6機と見えることも。荒天の暗い夜空
を一刻も早くと急いでいるようだ。
9/25tue
月今宵 里に帰れる 母の声
(つきこよい さとにかえれる ははのこえ)
※母の実家は当時年老いた父親(祖父)と姉が住
むだけの静かな家だった。それでも子供を連れ
て里帰りした母はいつも喜んでいた。おしゃべ
りする声までがいつもより弾んでいたような気
がする。広い庭を月明かりが照らす遠い記憶。
9/24mon
しなやかな 線が描けない 夜長かな
(しなやかな せんがかけない よながかな)
※70歳から始めた水彩画の教室通い。まだま
だ入口にいるのだけれど、頭デッカチは難しさ、
奥の深さだけを思う。
「君、君、絵かきになるのではないのだから、
肩の力を抜いて、まずは数を描き給え」・・・
その声もわかっているのだが。
9/22sat
秋彼岸 ページにうらら 陽が動き
(あきひがん ぺーじにうらら ひがうごき)
※今日一日はひとりで、ゆったり気分。ご先祖様
に感謝しながらウトウトする。
9/21fri
曼珠沙華 ビル迫り来る 子規の家
(まんじゅしゃげ びるせまりくる しきのいえ)
※9月19日は子規忌(糸瓜忌)。根岸子規庵の
子規の寝床から庭を見る。ヘチマや鶏頭・・・。
ビルが見えなくて良かった。
超々有名な句ふたつ。
鶏頭の十四五本もありぬべし 子規
糸瓜咲いて痰のつまりし仏かな 子規
9/20thu
山裾の 村道はるかに 酔芙蓉
(やますその そんどうはるかに すいふよう)
※東名大井松田で下りてすぐ、開成町の福澤地区
に、目指す酔芙蓉ロードがあった。店などもないし
入場料をとる人もいない。農道沿い数百メートル
に酔芙蓉が両側に植えられている。ちょうど見頃
だし、これぞ静かなる圧巻!!
鮎壷の 滝轟々と 彼岸花
(あゆつぼの たきごうごうと ひがんばな)
※水の町三島市の西隣長泉町にある「鮎壷の滝」
を初めて目にした。富士の裾野から発した黄瀬
川が住宅地のど真ん中に雄大な滝を作っている。
思った以上の雄大さと富士山の恵みに驚く。
9/19wed
添乗員も またシニアなり 秋の旅
(てんじょういんも またしにあなり あきのたび)
※先週末に静岡県三島、南足柄方面へ日帰りバ
スハイクに出かけた。お決まりの観光地と買い
物施設をめぐるコース。○○フルーツパーク、△
△ヒモノセンターなどなど、その合間に観光地
をちょこっと挟む。参加者の多くがシニアで、昼
ご飯と買い物が目当てだから、文句は言えない。
9/17mon
老老が 敬うべしと この日あり
(ろうろうが うやまうべしと このひあり)
※「敬われる」のではなく、老老が互いに敬う日。
ハードルが高くなった。
9/14fri
アライグマ 捕まえ畑は 秋の声
(あらいぐま つかまえはたけは あきのこえ)
※素人が作っている野菜畑にも明らかに四つ足動
物の仕業とされる被害が続いた。県内で繁殖して
いるハクビシンかと思ったら・・・、捕えてみれば
アライグマ。これも「特定外来生物」として駆除
対象になっている。顔はカワイイし、尻尾は大き
くて人気者のそれ。
9/8sat
胆振なる 地方はいかに 秋の闇
(いぶりなる ちほうはいかに あきのやみ)
※北海道地震の震源地は胆振地方東端の厚真町。
室蘭に住んで胆振という地方名を初めて知った。
今回その名が繰り返しTVで流れる。火山や湖に
恵まれた景勝の地でもあるが、地震はごく少なか
った。多くの人々の顔を思い出す。
9/7fri
稲妻や 枝豆ぬいて 駆けもどる
(いなずまや えだまめぬいて かけもどる)
※台風が過ぎ去っても強風がおさまらない。天気
も不安定だ。我が家の枝豆は時期を遅らせてネ
ットで囲い虫害対策を施したのだったが、肝心の
成長が不十分、失敗に終わった。数少ない青豆
は美味、と自らを慰めている。
昨年は見事な枝豆を大量に収穫したが、信じら
れないことに悉くカメムシに豆のエキスをチュー
チューされていた。
9/4tue
鉄道を 越える小道に ウリひとつ
(てつどうを こえるこみちに うりひとつ)
※「線路をわたってはいけません」の立札。これは
「ここなら近道でわたれます」のお知らせ。
さすがに伸び放題の夏草は刈られていない。地
べたが見えない。何が出てくるか? なんと栄養
満点の大きな白い瓜があった。びっくり。
9/3mon
露草の 踏まれしほどに ありて秋
(つゆくさの ふあれしほどに ありてあき)
※台風21号の影響で前線が刺激され、雨模様が
涼しさをもたらした。新学期が始まったばかりの
中学生たちも落ち着いているように見えるのは
気のせいか? この時期、生徒の自殺が一年の
中で一番多いと聞いた。
9/2sun
店頭に 息子引き継ぐ 鉢あざみ
(てんとうに むすこひきつぐ はちあざみ)
鉢もみじ 一子相伝の 極意をば
(はちもみじ いっしそうでんの ごくいをば)
※近くの商店では跡を継いだ主が、花好き、盆栽
好きだった亡父の遺産を引き継いだようだ。勤
め人だったらしい彼はその道の秘伝を授けられ
ているのだろうか?
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8/31fri
炎天や 岸辺の闇に サギは待つ
※簡単に戻ってきた猛暑。シラサギは岸辺の丈の
長い草が茂った根元から離れない。じっと小魚
を待っている。暗闇でも真っ白だから丸見えだ
と思ったが、餌よりも熱中症対策優先か。
8/30thu
ぶどう棚 竿撓るほどに 房満ちて
(ぶどうだな さおしなるほどに ふさみちて)
※我が家のぶどうは新しい棚に旺盛に絡み、すで
に食べ頃の実をつけている。6月からの暑さ続
きで例年より早い感じ。棚の部材である竿が重
さのため中央で少しだけ撓っている。豊作のシ
ルシ。品種は名前も覚えていない、地味な薄緑
色のもの。ほんのり甘いのが「いとおしい」。
8/28tue
胡弓なく 街いまだ見ず 風の盆
(こきゅうなく まちいまだみず かぜのぼん)
※9/1-9/3は富山県八尾の風の盆。この季節でなく
とも訪れたことはない。古い町並みを薄暗いまま
にして踊りは進み、哀しげな越中おわら節にのせ
て、菅笠で顔を隠した女性連が優雅に手と指に
神経を払う。しゃしゃり出ることの多い今日の盆
の踊りの中で・・・いいなァ。
8/24fri
二人して うめても熱き 夏出湯
(ふたりして うめてもあつき なついでゆ)
※福島県磐梯山近くの沼尻高原、亡くなった登山
家田部井淳子さんがオーナーだったロッジが閉
館したらしい。以前になるが弟といっしょに訪れ、
ゆっくり午後を過ごした。かなり強度の酸性湯で
熱く、殆どが源泉ということだった。
六十歳の 兄弟裸で 夏惜しむ
(ろくじゅうの きょうだいはだかで なつおしむ)
※カッコーがしきりに鳴いていた。弟の裸を見た
最後の日。
8/21tue
秋風や 白河の関に 出迎えん
(あきかぜや しらかわのせきに でむかえん)
※準優勝の金足農高には緒戦から、その全員野球
とエース吉田の颯爽とした投球ぶりに注目した。
あれよあれよという間の決勝進出。勝てば東北勢
初の優勝だったのだが、残念。しかしおかげでTV
観戦を堪能した。
8/20mon
ケイタイに 残りし露や 秋あざみ
(けいたいに のこりしつゆや あきあざみ)
※今朝も涼しさが続く。朝の小雨でアザミの花が
みずみずしく、いい色になる。
8/19sun
朝涼し 足引く人の 微笑かな
(あさすずし あしひくひとの びしょうかな)
※朝ウォーキングの人の中に、足を引きずるよう
にしてリハビリを兼ねた人達が意外と多い。脳
内出血等の後遺症と戦っている、多くはシニア
またはシニア近くの男性だ。昨日今日は本当に
涼しい。顔つきが全然違っている。
8/17fri
暑いねと それだけ言って 盆は明け
(あついねと それだけいって ぼんはあけ)
※この夏は並みの時候の挨拶は不要だ。ただ「暑
い」と言えばいい。
・・・そうしたら今日は一転関東地方も涼しい、さ
わやかな天気に。びっくりするほどの心地よさ。
北海道大雪山系の黒岳から観測史上最速の初
雪の知らせが届いた。どうなっているんだか?
8/15wed
姉が住む 博士の生家 油蝉
(あねがすむ はかせのせいか あぶらぜみ)
※小学生高学年の時、野口英世記念館をクラスで
訪ねた。現在のような観光施設ではなく、わら葺
きの生家はトタン屋根で覆われ、実姉のイヌさん
が暮らしておられた。別棟で記念館があった。
昭和30年頃の話。一列になって帽子をとり、お
姉さんに挨拶をした。「よく来なさったなァ。ゆっく
りしていきなさい」と言われた。とっても緊張して
いた。
8/12sun
シャバはもう 盆かナースの 冷たい手
(しゃばはもう ぼんかなーすの つめたいて)
※明け方の雷雨ですっかり涼しくなった。近くの
病院の入院患者が通りに面したところで談笑し
ている。顔ぶれは変わっても朝ここに来る人々
は誰も犬にやさしい。
8/11sat
角曲がる 父のスクーター 油照り
(かどまがる ちちのすくーたー あぶらでり)
※クルマの運転免許を持っていなかった父が短期
間スクーターを乗っていたことを思い出した。 暑
い夏の日のシーン。こちらが小学生の頃だ。
今だったら「二輪車は危ないから絶対やめて」と
言い張るのだが。すぐに乗るのをやめたから、意
外と事故でやめたのかも・・・。
8/9thu
南天や 永井博士の 歌聞こゆ
(なんてんや ながいはかせの うたきこゆ)
※長崎 原爆忌
「南天の花」 永井 隆 作詞
山田耕筰 作曲
8/8wed
居酒屋の 夏のざわめき 連れの声
(いざかやの なつのざわめき つれのこえ)
※気のおけない仲間との飲み会、こんなに楽しい
ものはないが、このところ殆ど毎回「酔い潰れて」
いる。断って、その場に横になる程度なのだが、
連れにも悪いし、いい年をしてとも思っている。
20歳前後の飲み始めの頃は、本当に弱かった。
あの頃にもどりつつあるのか・・・。
8/6mon
朝の道 急いで帰る 原爆忌
(あさのみち いそいでかえる げんばくき)
※広島73回目の原爆忌
8/4sat
火星来る 猛暑の赤き 色をして
(かせいきたる もうしょのあかき いろをして)
火星には ウィスキーかと 夏の闇
(かせいには うぃすきーかと なつのやみ)
※どこどこ?というほど、知っているようで何も
知らない。火星、南東のおおよそ仰角30度く
らいにあった。後は色と明るさで忘れない。
大接近故にことさら赤いようだ。この暑さはこ
のせいだったか? だったら鎮静を願って、
ウィスキーで乾杯。
旱星 地上は怨嗟の 声で満つ
(ひでりぼし ちじょうはえんさの こえでみつ)
※旱星という言葉を知った。ちゃんと夏の季語に
なるらしい。炎天続きの夜にひでりを象徴する
ような星。火星やアンタレス(知らない)などの
赤い星をいうらしい。
8/2thu
土用凪 配達夫白き 歯を見せる
(どようなぎ はいたつふしろき はをみせる)
※気圧配置が変わらない。朝からの猛暑が続く。
バイクの郵便配達が一番つらそう。ハイテクだ、
ITだとかいっても、ここには及ばない。汗を拭き
つつ、苦笑を見せる。
8/1wed
遅刻する 子が会釈する 蝉しぐれ
(ちこくする こがえしゃくする せみしぐれ)
※夏休み朝一番の部活。いつもの子がいつものよ
うに駆けてくる。集合時刻遅刻の常習犯だとか言
っていた。下半身が鍛えられるなァと思っていた
らもう前方の角を曲がった。
**************************
7/30mon
グラナダに 眼光ありて 夏の闇
(ぐらなだに がんこうありて なつのやみ)
生き尽くす アルバイシンの 驟雨かな
(いきつくす あるばいしんの しゅううかな)
※7/27「戸嶋靖昌記念館」訪問
戸嶋靖昌1934-2006
後半生をスペイングラナダに過ごし、魂を
燃焼させた孤高の画家
7/26thu
旧友と 雑魚寝願望の ありて夏
(きゅうゆうと ざこねがんぼうの ありてなつ)
※猛暑、酷暑ということで様々なことを思い出す。
標高のある山荘で仲間数人と避暑とシャレ込ん
だら、とんでもない暑さ。あの雑魚寝の日々が
なつかしい。それにしても、なんだアレは?
すさまじい夏だった。
7/23mon
無花果の 向こうに白き ヘルメット
(いちじくの むこうにしろき へるめっと)
※現場建築の仕事は急遽7時30分からにしたら
しい。それでも相当暑いが、無花果の実の色が
日一日と濃くなり、真っ白なヘルメットが忙しく立
ち回る。
スケッチを 済ませて朝餉 河童の忌
(すけっちを すませてあさげ かっぱのき)
※芥川が死んだ年の7月も相当暑く、それを無性
に気にしていたとする説があるらしい。気に入っ
た景色をササッとスケッチブックに書き留め、で
きれば日陰で色をつける。水彩画は上手にとは
望むべくもないから、このスピードと手軽さが目
標だ。しかもこの夏は正念場。ササッとできなけ
れば死んでしまうかも?
7/21sat
夏冨士や 通い詰めたる 麓まで
(なつふじや かよいつめたる ふもとまで)
※うっすらと富士山が見えた。表富士裾野市の標
高900m付近にその昔小屋を建てて、週末ごと
に東京から通いつめた。仕事もキツかった頃の
十年余り、山での暮らしがあって辛うじて息をし
ていた。
7/19thu
月の白 白サルスベリに 白灯り
(つきのしろ しろさるすべりに しろあかり)
※通りの両側にサルスベリの並木がある。最初に
満開になるのは決まって白。今、毎晩見事な光
景を見せて、しばし酷暑を忘れさせる。白い上弦
の月とLEDの白い街灯が演出者。
ついで花を多くつけているのは真っ赤。しばらく
してピンクとバイオレット系がわあーっと咲きそ
ろう。
灯り消し 闇にうなって 熱帯夜
(あかりけし やみにうなって ねったいや)
※「うなっても熱帯夜」。放哉のパクリ。
尾崎放哉「咳をしても一人」。これは冬。ちょっと
小高いところにあるお堂の庵主(小屋守り)が
最後の暮らしだったが、夏は風がよく通って涼
しかったこと、参詣の客があり賽銭収入があっ
たこと、村人から瓜の差し入れがこよなくありが
たかったこと等が記されている。
7/15sun
丁寧な 敬老言葉よ 猛暑日に
(ていねいな けいろうことばよ もうしょびに)
※市の検診を受けに行った。係員の説明の懇切
丁寧なこと!「ここはこうです。わかりますよね?
次はちょっと複雑な設問で申し訳ないのですが
・・・すみません、わかりまちゅ?」 丁寧を通り
越して、子供扱いだ。外見ではボケているかど
うかはわからないから、仕方がないか。それに
しても午前中から暑い日だ。
7/14sat
石垣や 百五十年の 苔青し
(いしがきや ひゃくごじゅうねんの こけあおし)
※明治維新150年。歴史点検の動きあり。懐疑派
はこの2,3年論調を高めるようにしてきたから、
むしろ新鮮味は少ないかも。迎え撃つ正統派、主
流派の方にこそ異論や差別化の主張があり、耳
目を集めている(ようだ)。
7/13fri
桃の実を 香りを熨斗に 無沙汰わび
(もものみを かおりをのしに ぶさたわび)
※例年より早く、数も多くかつ大きな桃が収穫で
きた。我が家の庭にある、一本の桃の木である。
とはいえ素人の哀しさ、大きさはマチマチで袋
はかけたものの虫にやられたものも多い。A級、
B級品は近くの世話になった人におすそわけ。
「いつもより早いね。おいしい」と言ってくれる。
自慢できるのはおいしさ、家では半ばを占める
「C級品」と級外品?を食べる。けれど、おいし
さは変わらず。
7/11wed
フェリー乗る 日焼けした顔が 土産持ち
(ふぇりーのる ひやけしたかおが みやげもち)
※横須賀から帰る家人を東京湾フェリー金谷港ま
で迎えに行った。平日の夕暮れ近く、ゴルフ帰
りのシニア族が溢れている。笑顔の白い歯が目
立つ。これって、保険の効かないデイサービス
かな。
泡盛を 出す房総の 海の家
(あわもりを だすぼうそうの うみのいえ)
※予想以上の猛暑の到来で、海の家の拵えも急
ピッチ。泡盛のメニューがある。心地よい風が吹
いてきた。泡盛1杯で夕暮れの海を眺めるのも
いいなァ。
7/10tue
欠と出す 夏の盆地の クラス会
(けつとだす なつのぼんちの くらすかい)
※今回もちょっと無理。「欠」と書いた途端に或る
顔が浮かぶ。先日高校卒業以来久しぶりに声
を聞いた友人だ。故郷の夏の光景、煙ったよう
な青い盆地・・・。
7/8sun
ヤコブ呼ぶ まだ見ぬ道や 夏帽子
(やこぶよぶ まだみぬみちや なつぼうし)
※久しぶりに友人I に会った。最近スペインの巡
礼の道とサンティアゴ・デ・コンポスティラを旅し
たという。興奮していた。羨ましい限り。
7/3tue
惜敗の 朝夏つばきの さやかなり
(せきはいの あさなつつばきの さやかなり)
※朝5時前の劇的な幕切れ。格上のベルギー相
手に良く戦った。門外漢だが、攻撃力を言われ
て久しい日本チームが、どのチームと試合をし
ても果敢に攻めている。最後のシュートにまで
結びつける執念と度胸がある。敗れても新しい
時代を画した。
顔しかめ 猛暑の午後に すれちがう
(かおしかめ もうしょのごごに すれちがう)
※この暑さと太陽の光線。おだやかに見えなくて
もいい。
7/2mon
来し方を ねほりはほりと 半夏生
(こしかたを ねほりはほりと はんげしょう)
※夏至から数えて11日目、これからの5日間を
半夏生というらしい。夏も半ばを越えて「半夏
生」の花の咲く頃、といえばなにやら奥ゆかし
いが、現実のこの世は猛烈に暑く、シニアの悔
恨癖すら長続きしない。
7/1sun
七月は 蒸し蒸し夏日で 始まりぬ
(しちがつは むしむしなつびで はじまりぬ)
※記録的に早い梅雨明けは、記録的に暑い7月を
呼び寄せるかも。今日は最高33度予想で、しか
も朝から相当な蒸し暑さだ。豪雨の西日本各地、
地震後の大阪ほどではないにしても、この夏は
かなりの覚悟を強いられるようだ。
オリオンが 這いつくばっても 年がいく
(おりおんが はいつくばっても としがいく)
※定刻18時前の夕方の散歩でほんの少し日が長
くなったのを感じる。この時間帯ではオリオン座が
民家の屋根すれすれに横たわって見える。
義姉死んで 暮れの馳走も 減りにけり
(ぎししんで くれのちそうも へりにけり)
12/30sun
シクラメン 妻七十の 布巾がけ
(しくらめん つましちじゅうの ふきんがけ)
髪を撫で 床屋へ暮れの 坂登る
(かみをなで とこやへくれの さかのぼる)
※年の暮れらしく住まいのあちこちをきれいにする。
午後は床屋に。年内なにかと動くことが正月をゆ
っくりするための必須条件と思われる。
「毎日が日曜日、毎日が寝正月」を長年続けてい
る者の知恵というか心得だ。
12/29sat
耳すます 電話の先は 吹雪なり
(みみすます でんわのさきは ふぶきなり)
※昨夜遅く兄から電話があった。誕生日を祝ってく
れる。しかし話題は「寄る年波」、誕生日のめでた
さはやっぱり半分位。故郷会津は急に雪が強くな
り、今吹雪いているとか・・・。
12/28fri
カラーの葉 よみがえりたり 誕生日
(からーのは よみがえりたり たんじょうび)
※先日の霜で一気に萎れたカラーが今朝は元の姿
にもどっていた。73回目の誕生日、お祝いかな?
と喜ぶ。
妻任せ 誕生日の店 冬の道
(つままかせ たんじょうびのみせ ふゆのみち)
※「主人公が食べたいものを選ぶ」という大原則も
崩れ、連れまわされるハメに。後期高齢者向け
運転適正検査(ボケチェック)ではこうした自己主
張の退潮もチェックされるとか。
冬薔薇や 自分と犬の 年齢数え
(ふゆばらや じぶんといぬの としかぞえ)
※飼い犬との合計年齢は81歳。まだいい。これ
が7年後は80+15=95、明らかに老老介護。
生きていればの話だし、まあ先の話だ。
12/26wed
シクラメン セピアのバックで 際立てり
(しくらめん せぴあのばっくで きわだてり)
※年末最後の絵画教室はシクラメン。出来栄えは
良くない。目の前の花は見事でも、画用紙上の
花は簡単に際立ってくれない。今年も四苦八苦
の一年だった。
12/25tue
駅飾の ツリーをめぐり 御子迎え
(えきしょくの つりーをめぐり みこむかえ)
※都会の大エルミネーションはともかく、地方の
観光施設や駅なども残らず電飾ブームだ。さて
当家の聖なる御子様はどこかな? ア、来た。
12/24mon
年の瀬に 障子やぶれし 空家また
(としのせに しょうじやぶれし あきやまた)
※大勢の家族が住んでいた家、瓦が立派な邸宅と
も言える家が空家に。高度成長時代につくられた
住宅団地では、家々が似通った事情のもとに年を
重ねている。家族の高齢化、離散や別居。
12/23sun
発電所の 煙まっすぐに 枯野かな
(はつでんしょの けむりまっすぐに かれのかな)
※袖ヶ浦の発電所の煙突が小櫃川の橋越しに見え
る。一面の田んぼ、純農村風景をアクアラインに
通じる高速道が貫いている。毎朝夕見ている。
ここに住む者のささやかな喜び。
12/22sat
何故かいま 女優に惚れて 石蕗の花
(なぜかいま じょゆうにほれて つわのはな)
※その女優は黒木華。以前から注目していたのだ
が、先日終わった「西郷どん」での存在感ある演
技でさらに見直した次第。いい女だなァ、自然体
が素晴らしい・・・と。
12/21fri
初霜や カンナ茶となり 黒となり
(はつしもや かんなちゃとなり くろとなり)
※河川敷に長期間盛大に花をつけたカンナは、
今一団の枯れ木枯れ草になっている。年末の光
景として眺めるのが常となった。カンナは冬の季
語、かな。
12/20thu
北風を しのぐ友の句 届きおり
(きたかぜを しのぐとものく とどきおり)
※暖かい日が続く。メールで届いた友人の句のよ
うだ。大掃除日和は必ずしも歓迎ではないが、
いずれやらされる定例の網戸と窓ガラス清掃を
やる。
こういう作業はおしせまった寒い年末にではな
く、せめて10月末辺りでやる習慣だったら良か
ろうと思う。いつもそう思いながらやる。
12/19wed
枯野見る 患者のあらい 口の息
(かれのみる かんじゃのあらい くちのいき)
※病院に義兄を見舞った。長い闘病生活が続く。
流動食を滴下するようになってからは言葉は極
端に減り、呼吸のあらい日が多くなった。回復
を祈る。
暮れの街 薬局厚着の 人多く
(くれのまち やっきょくあつぎの ひとおおく)
12/16sun
窓を拭く 古新聞の 師走かな
(まどをふく ふるしんぶんの しわすかな)
※このところの冷え込みは半端ない。今朝は0度
台。小櫃川向こうの農地の景色は冬ざれそのも
の。こういう句に出会った。
冬ざるる夜の木更津甚句かな 清水基吉
12/15sat
妻亡くす 人と二人で 熱燗を
(つまなくす ひととふたりで あつかんを)
※アルコールに弱い彼を居酒屋に連れて行く。こ
ちらも相当弱い。「とりあえずビールで乾杯」など
はしない。一本の大きめの熱燗を頼み、ちょび
ちょびと少しずつ呑む。
12/14fri
介護士は 討ち入りの日に 生まれたり
(かいごしは うちいりのひに うまれたり)
※赤穂浪士吉良邸討ち入りの日。当地は快晴で風
強し。富士山、越前岳、丹沢山塊まですっかり見
える。寒さが厳しいせいもある。ここまで見えると
かえってアリガタミは半分ほど。
12/13thu
師走とて 家内マージャン 俺掃除
(しわすとて かないまーじゃん おれそうじ)
※70歳を過ぎて0から麻雀サークルに入った。
なかなか勇気がある。年末なのに足繁く通って
いる。初心者でも目一杯頭を使う、ヒヤヒヤ、ド
キドキもする。おまけに指も使う。
認知症対策としてはこの上ない。掃除をいい
つけられても、喜んで送り出す。
12/12wed
シクラメン 仄かな色を 描ききれず
(しくらめん ほのかないろが かききれず)
※時節柄シクラメンは今高価である。比較的安価
なのは色がホノカで花びらも透けそうなほど薄
いヤツ。画材に選んだのはこれだ。仲間の評は
さんざん。
12/10mon
カレンダーに 予定少なく 炬燵かな
(かれんだーに よていすくなく こたつかな)
※11月末から立て込んだ外出や忘年会やらも一
段落。しばらくゆっくり出来る。相変わらず立て
込んでいる世間や世界規模の動きをTVで眺め
るにはコタツが一番。年末年始が急に身近にな
る。それにしても食傷気味のニュースばかり。
今朝7時の当地気温は3度台。
12/9sun
時雨るるや 電球色の 路地の奥
(しぐるるや でんきゅういろの ろじのおく)
※LED電灯が街灯の多くに普及してきて、夜道は
格段に明るくなった。あえて難を言えば、その殆
どが昼光色で冬には余計寒々とすることだ。
昔の電球の暖かい、オレンジっぽい光がなつか
しい。LEDでも昔の電球色は選べるのだが。
12/8sat
顔を見ぬ 友をサカナに 鍋支度
(かおをみぬ ともをさかなに なべじたく)
冬の宙 酔って回って 友の肩
(ふゆのそら よってまわって とものかた)
※なにひとつ遠慮のいらない宴会。孫と病気の話
題は禁止しようかとなったが、結局は挫折。
ワイワイガヤガヤ・・・酔いは急速に。
12/7fri
高速の 下の水面に 鴨寝入る
(こうそくの したのみなもに かもねいる)
※これだけの騒音がある中で、羽に頭を突っ込ん
で寝入っている。屋根があるから安心なのか?
今日も別な組の忘年会がある。
12/6thu
師はひとり 和服で凛と 冬の宴
(しはひとり わふくでりんと ふゆのえん)
※水彩画教室の忘年会。先生はなんと大島つむぎ
のお召し物で現れた。「着て行くところも少ないし、
これ、私の一番のお気に入りなの」と仰るが、これ
またカワイイ。泥染めのことは知っている。気が向
けばさっと和服を着る。良い習慣と気力がないと
出来ないことだと思う。
12/5wed
文綴る うつろな悦や 冬の窓
(ぶんつづる うつろなえつや ふゆのまど)
※曇天の日は歓迎。たまった本を読み、時に雑文
をこしらえる。どうにかなるわけでもないが・・・。
12/4tue
年の瀬や 昭和に買いし 絵を飾る
(としのせや しょうわにかいし えをかざる)
※テレビだけでなく周囲でも年号、平成にまつわるイ
ベントが増えている。そんな昔ではないと思ってい
たのに、この絵の購入は昭和だった。
12/2sun
自転車の こころ旅来る 冬房総
(じてんしゃの こころたびくる ふゆぼうそう)
※NHK-BS火野正平の自転車隊が千葉県にやってく
る。いつも味わい深いふれあいを見せる。もう今頃
県内を通っているのかな?
12/1sat
勧誘員 ねばる師走や 赤き頬
(かんゆういん ねばるしわすや あかきほほ)
※12月だ。国内にも国際的にも目先の懸案が揺
れ動いている。看過できなものも多いが、さり
とて日々の動きに振り回されてはかなわない。
師走は好奇心も半分以下に抑えるのがシニアの
知恵というもの。
**************************
11/30fri
十一月 今日の晦日を 確かめる
(じゅういちがつ きょうのみそかを たしかめる)
※薄暗い朝、まだ師走ではないことを確認する。
小春日や 初スイセンの 白い点
(こはるびや はつすいせんの しろいてん)
※土手道の水仙ロード、年々長くなる。今朝そこ
に2輪だけ開花しているのを発見した。かつか
つ今日は11月。新記録かな?
11/29thu
鷹渡る 里芋の茎 枯るる頃
(たかわたる さといものくき かるるころ)
※東京湾を南下する最後らしい?タカの群れが報
道された。サシバなら9月下旬から10月上旬
だろうから別な種類かも。昨年は双眼鏡を持ち
出して、袖ヶ浦臨海公園に出かけたのだが見ら
れなかった。今年は行かない。畑で最後のサト
イモの収穫。まあまあの出来だ。
11/28wed
いま一度 畦の草刈り 冬構え
(いまいちど あぜのくさかり ふゆがまえ)
※11月も下旬になると一気に年の瀬の感を強く
する。知り合いの米農家を継いだ人は「百姓と
言ったって、今はこつこつ自分でやる仕事は数
える程、せいぜい十姓かな」とアケスケ。「その
分全部お金がかかる」とも。
当方の師走の仕事はガラス戸と網戸の清掃く
らいなもの。一年を通してほんの「数姓」どまり。
11/27tue
キャッシュレス 余計なお世話と 三の酉
(きゃっしゅれす よけいなおせわと さんのとり)
※今年は11/25が三の酉。現金を前掛けに詰めた
熊手屋さんの威勢のいい掛け声で手締めとなる。
これもカード決済となるか?キャッシュレスなど望
まない、少なくともこの俺は、と思っても社会の仕
組みをどんどん変えられてしまう。否応なしの追
い詰め・・・否応なしの昔の消去。
11/25sun
冬の富士 見えるか賭ける 橋の上
(ふゆのふじ みえるかかける はしのうえ)
※富士山からの直線距離で当地木更津は都心とほ
ぼ同じ。しかし少し高い場所から眺めると当地か
らは富士山の全容が見える。東京湾越しの富士
山もいい。冬はちょっと自慢したくなる。
11/24sat
銀杏が 寄せられてあり 石畳
(ぎんなんが よせられてあり いしだたみ)
※朝散歩するコースを迂回して、その神社はある。
境内の4、5本の銀杏の木から毎年ギンナンの
実をいただいている。辺りに人家が少ないのと
実の粒が小さめなのが人気となっていない理由
かもしれない。
11/21wed
秋空に 声と笑みあり 義姉の逝く
(あきぞらに こえとえみあり ぎしのいく)
主なき 庭に今年も むかごかな
(あるじなき にわにことしも むかごかな)
※11/19に家内の姉が亡くなった。79歳。気のいい、
面倒見のいい人だった。合掌。
11/20tue
いつになく カタカナ料理で 秋深む
(いつになく かたかなりょうりで あきふかむ)
※先日の都内散歩の最後は麻布十番で打ち上げ。
適当な居酒屋がなく、家族連れで賑わうファミレス
に入る。生魚、焼き鳥などはないが、これも一興。
対岸の 秋雷暗き 海を裂く
(たいがんの しゅうらいくらき うみをさく)
※日産のゴーン会長逮捕。有価証券報告書の虚
偽記載、会社資金の不正使用など社長以下の
経営陣の被害者然とした会見内容にびっくり。
悪事に加担していると見るのが常識。
11/18sun
三人して 麻布十番の 落ち葉踏む
(みたりして あざぶじゅうばんの おちばふむ)
※都内散歩続き。終点予定の麻布十番に着いた
のは夕方5時。この付近の町並みは山の手とい
うより庶民的な下町の感じ。「赤い靴」の碑があ
った。通りは既に灯りがついている。
諭吉墓よ 灯り持たずに 秋の暮
(ゆきちぼよ あかりもたずに あきのくれ)
※浄土真宗麻生山善福寺は閉門17時とあって
滑り込みセーフ。既に墓地は真っ暗。福沢諭吉
の墓を手探りで発見する。
11/17sat
海舟も 参りし社の もみじかな
(かいしゅうも まいりしやしろの もみじかな)
※都内散歩続き。夕暮れどきの氷川神社はしっと
り落ち着いて、東京ド真ん中の神社とは思えな
い。
六本木 ときめくビルと 人の群れ
(ろっぽんぎ ときめくびると ひとのむれ)
※東京ミッドタウン、六本木ヒルズの近くを歩く。
ビルにはときめかないが、歩く人々には若いエ
ネルギーを感じる。新しい光景。
荷風住みし 偏奇館辺り 坂の秋
(かふうすみし へんきかんあたり さかのあき)
※麻布に入った。永井荷風が戦前に住んだ、お
気に入りの偏奇館跡はこの辺りだ。
11/16fri
氷川坂 明治の静けさ 今日の秋
(ひかわざか めいじのしずけさ きょうのあき)
旧居跡 探しあぐねて 坂の秋
(きゅうきょあと さがしあぐねて さかのあき)
※都内散歩続き。六本木寄りの赤坂六丁目にある
転坂を下ると氷川坂下に出る。ここに明治元年
までの勝海舟の旧居がある。といっても今はマ
ンションで案内板があるだけ。ここは坂本龍馬
も訪ねた場所か。
明治に入り、駿府に住んだ海舟が東京に戻って
居を構えたのも同じ氷川坂付近と知った。あの
氷川清話を語った地だ。これがなかなか見つか
らない。氷川坂、氷川神社の付近を探したがだ
め、夕暮れ近く坂道がこたえる。
11/14wed
日枝神社 秋のさわぎを 濾過したり
(ひえじんじゃ あきのさわぎを ろかしたり)
※都内散歩続き。赤坂見附から溜池方面に歩く。
小高い山の頂に日枝神社がある。東隣は都立日
比谷高校。下界の喧噪がうそのよう。
人の香と 町のにおいを 秋の風
(ひとのかと まちのにおいを あきのかぜ)
11/12mon
記念回 坂また坂の 秋を行く
(きねんかい さかまたさかの あきをいく)
弁慶濠 黄色の水面を ボートさく
(べんけいぼり きいろのみなもを ぼーとさく)
※仲間3人で都内を歩こうと始めた会が先週ちょ
うど20回を数えた。今回は四谷駅から赤坂を
抜け、六本木をかすめて、麻布十番までという
コース。 なじみの所ばかりだが、もちろん全部
を歩くのは初めて。
赤坂見附に坂道を下ると、色づいてきた木々が
濠に映えている。クルマの音はするのだが、な
ぜか静けさを感じる。
11/11sun
帰り花 大豆引き抜く 影長し
(かえりばな だいずひきぬく かげながし)
※今年はここかしこでサクラの帰り花を見る。各地
から似たような報道も多い。今日は小春日和。
ここしばらく、列島各地は概ね穏やかだ。忘れる
前にやってくるのが最近の災害だから・・・、油断
はできないが。
11/10sat
シューさんの 三十路の遺作に 聴きすがる
(しゅーさんの みそじのいさくに ききすがる)
※シューベルト 弦楽五重奏曲 ハ長調 D.956は
31歳で夭折した彼の遺作。若い作曲家が遺し
た曲に、ゆうに2倍以上の歳のシニアがはらは
らと聴き入る。
11/9fri
長き夜や 耳に手をあて 雨を知る
(ながきよや みみにてをあて あめをしる)
※静かな夜でもじっと耳をすますと「シー」という
音がする。雨の音でも遠くのクルマの音でもな
い。これは自分の「人体」の音なのか、それとも
耳内部の「雑音」なのか? 降雨の有無を確か
めるには、さらに両手で聞き耳を立てなければ
ならない。
11/7wed
みとりしと 介護士はいう 冬立つ日
(みとりしと かいごしはいう ふゆたつひ)
※夜勤で帰る介護士が出勤の同僚に短く話をして
いた。介護士と入居患者との間で信頼関係がで
きる・・・。思いをめぐらせた。
11/6tue
ゆらゆらと 神無月の 痩せ蚊かな
(ゆらゆらと かみなしづきの やせかかな)
※比較的暖かい朝。早いもので明日は立冬? 秋
深しという言葉はまだまだと思っているのに。
11/5sun
灯りなき 門前ぼおーっと 黄菊かな
(あかりなき もんぜんぼおーっと きぎくかな)
※菊花展にも出品する方から見事な大輪の黄菊を
いただいた。我が家には不釣り合いだけれども、
ありがたく朝夕眺めている。
11/4sun
文化祭 写真の空を 語る人
(ぶんかさい しゃしんのそらを かたるひと)
※見事な空を熱く、小さな声で話してくれた。シニア
男の多くが写真を趣味にしている。高価な機材が
必要になることもあるが、素人が撮影した空、花、
紅葉などの「発色のすごさ」を見るとそれも安いも
のだと感じる。昔ならプロしか出せなかった色だ。
明らかに時代が技術が後押ししているなと思った。
11/2fri
来し方は 一幕一場 秋の道
(こしかたは いちまくいちば あきのみち)
※図書館の催しで歌舞伎「義経千本桜」(のうち
3場)をAVで観た。名作だけあって、画像であ
ってもなかなかのもの。これが8Kでより鮮明
に迫力ある音響で鑑賞できる日を待っている。
11/1thu
枯れすすき 昭和も遠く なりにけり
(かれすすき しょうわもとおく なりにけり)
※「降る雪や明治は遠くなりにけり」草田男
残すところ平成はあと半年。今年は明治151
年であり、昭和93年だ。これからは平成を振
り返る話が列島中に満ち溢れるだろう。
シニアにとっては「思い出さぐり」と「悔恨地
獄」が毎日の商売のようなもの。特段に変化
はない。
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10/31wed
熊さんも 八っつぁんも名残の 虫を聴く
(くまさんも はっつぁんもなごりの むしをきく)
※江戸時代には虫の音を聴く集まりがあったそう
な。ナガ友の酒を呑む口実か? 旦那衆の風情
好みか? 涼しい日が続き、日増しに少なくなっ
てきた。
10/30tue
床の絵も 少し曲がって 秋深し
(とこのえも すこしまがって あきふかし)
※現役の宮仕え時代は仕事に明け暮れ?、家庭
のことに十分な気遣いが出来なかった。60歳代
で家庭でのことが大事に感じてきて、家の中に
ついて喧しくなった。やれゴミがたまっている、
やれ玄関が、浴室が汚れている・・・昔いた口う
るさいご隠居のよう。時には潔癖なまでになる。
しかし自覚はあるのだ。これがさらに高じるとさ
ぞ家人や周囲は大変なことになるだろうと思っ
たものだ。70歳代になって近頃は、音もなくお
となしくなった。気づいても言わない。気にしな
い。我慢するのでもない。ボケの始まり?とい
う声が自分の中にある。
10/29mon
干し柿を 煮てジャムにする 夜寒かな
(ほしがきを にてじゃむにする よさむかな)
※10月中旬に干し柿に吊るした柿が時期が早す
ぎたせいか? うまく乾燥しない。柿から発する
甘いニオイが継続し、発酵を示すエタノール系
のにおいに変化してきた。当然コバエがたかっ
てきた。品種は干し柿のブランド市田柿なのだ
が、暖かい房総育ちだからかな?とも思う。
干し柿を諦め、レシピに従いジャムにしたが、こ
れも成功とは言えぬ。折角だから食べてはいる
が・・・。毒はないみたい。
10/28sun
温暖化 されど十月の 行火かな
(おんだんか されどじゅうがつの あんかかな)
※水彩画の教室が地元の文化祭で作品を展示した。
これに興奮したわけでもないが、昨夜はよく眠れな
かった。足腰が少し冷えたので、急遽夜中に小さな
電気アンカを引っ張り出した。
もうちょっとマシな絵を描ければこういうこともなかっ
たか・・・。
10/27sat
秋冷や 数年ぶんの 月を見し
(しゅうれいや すうねんぶんの つきをみし)
※一昨日の満月、何年かぶりのワクワク、シミジ
ミ。他に感想なし。
10/25thu
霜降や 裸足歩きを やめにけり
(そうこうや はだしあるきを やめにけり)
※外反母趾のため革靴や運動靴は苦手で、朝夕
の散歩はいつも樹脂製のバンド付きサンダルを
愛用している。真冬も裸足でサンダルを履き、
「足の皮膚も丈夫になる」とか言って痩せ我慢を
続けていた。
ところが一昨年の冬に「シモヤケ」になった。もう
死語だと思っていたのに。自分が? 完治するの
に半年近くかかった。
10/24wed
木守りを 残しシニアの 柿始末
(きまもりを のこしシニアの かきしまつ)
※多くの家の柿の木は熟れた実をたわわにつけ
ているが、ひとつも収穫しない家が多い。
我が家では落葉病に見舞われたが、幸い50個
ほどは熟れて残った。きちんと全部収穫するの
が当家のやり方。そして木守りとして数個を残し、
来年のまたの実りを祈る。この祈りは小鳥が仲
介してくれる。
10/23tue
大粒の ブドウ熟さずを 食うている
(おおつぶの ぶどうじゅくさずを くうている)
※最近実をつけたことのない古いブドウの木が、
今年は見事な大ぶりの緑の房をつけた。
巨峰だから緑が濃紺に変わり、熟さねばならな
い。・・・粒々が半分ほど色づいたところで成熟
は止まった。秋も深まり、あとは小さくなるだけ。
「力尽きたか」と言いつつ、毎日数粒ずつ食べ
ている。半分ほど甘い。
10/22mon
秋桑を ここで摘みしと 太い指
(あきくわを ここでつみしと ふといゆび)
※この付近でかつて桑が作られ蚕を飼っていたこ
とを知った。50年以上も前の話とか。指さす先は
高速道下の広い雑草地、少し色づいている。
10/21sun
貝割菜 嵐の去るを 待ちかねて
(かいわれな あらしのさるを まちかねて)
※菜は風にも雨にも強いのだが、天気が好転しな
いことには畑には行けない。今朝は空気が澄ん
でいて、当地からは富士山と丹沢山系が今シー
ズン一の見栄え。今日アクアラインマラソン。
10/20sat
コスモスや 妻看る人の 笑みをみる
(こすもすや つまみるひとの えみをみる)
※久しぶりの高田馬場は雨模様。先輩二人に再会。
話はやはり健康のこと、家族のこと、今気に入っ
ていること等々。しみじみと良い時間があった。
現在の環境や暮らしの条件にはそれぞれ差があ
っても、長年培ってきた自分のやり方で暮らしを
織り込んでいくしかない。そのことの重要性を話
の中から痛感した。
10/18thu
落花生 採りごろ来たと 先達は
(らっかせい とりごろきたと せんだつは)
※千葉県の大粒落花生の品種「おおまさり」を栽
培して2年目の今年、種豆を世話してくれた人
からサインが出て、収穫を無事終了した。今年
は狭い畑ながら殻込みで12kgくらい、大喜び
である。昨年は少し待ちすぎた上にハクビシン
かアライグマに襲われて、散々な結果だった。
この品種は茹でて食べるのに適していて、早速
食べてみた。甘さ控えめだが香ばしい・・・素人
栽培者は褒めちぎっています。
10/17wed
バリウムが 在庫を一掃 秋の朝
(ばりうむが ざいこをいっそう あきのあさ)
※先日胃がん検診でバリウムを飲んだ。いつもは
体外排泄に2日は苦しむのに、今回は至極スム
ーズ。ビロウな話で恐縮だが、おまけに宿便とや
らも結構押し出されてとみえて、いつになく腸内
がすっきりした。良いことづくめだと・・・検査結果
はどうなることやら。
10/16tue
無人駅 灯りが見せる 蕎麦畑
(むじんえき あかりがみせる そばばたけ)
無人駅 平成を生き 秋時雨
(むじんえき へいせいをいき あきしぐれ)
※最寄りの駅はJR久留里線の無人駅。廃線を免
れて平成を生き延びた。それを支えた利用客は
朝夕の高校生と通勤客。近くの小湊鉄道のよう
に観光スポットとはなっていないが、地味なが
らも根強いファンがおり堅調である。それに高
校生が町内を歩く様はなんとも心強い。
10/14sun
柿くれし 老婆のシワよ 岸の家
(かきくれし ろうばのしわよ きしのいえ)
※「持っていきなよ」、朝時々顔を合わせる土手横
の畑の老婆が大きな甘柿をいくつもくれた。この
人はどうやら私を団地の住人と思って、畑のこと
果実のことをいつも教えてくれる。
どっこい、こちらは今や第一次産業?の人だ。結
構な広さの畑を借り、家には狭い土地に果樹が
5種類7本もあるし、それなりの収穫もある。言い
出せないまま、ありがたく柿を貰う。
10/13sat
筒先の 残りを出さむ 今朝の秋
(つつさきの のこりをださむ けさのあき)
※年をとると、そうそう爽快な目覚めはない。よう
やく涼しくなって、第一の仕事はオシッコ。
大半は出たにしても、肝心なのは出し尽くすこと。
ブルブルッ、ゆっくり急がず。秋冷を味わう。
10/12fri
秋明菊 亡母の遺せし 色二つ
(しゅうめいぎく ははののこせし いろふたつ)
※しのぎやすい気温、朝夕は少し肌寒いほど。静
かな一日。昨日今日と米国発の世界同時株安が
カマビスしいが、NHKで放映した小津安二郎作
品のうち、まだ見ていなかった映画をゆっくりと
味わう。
10/11thu
母の顔 施設に入れる日 坂の秋
(ははのかお しせつにいれるひ さかのあき)
※友人が高齢の母親を施設に入れた。そのお母
さんも暮らしぶりも以前から知っているので、友
人の心境に思いを馳せた。
10/10wed
新月や 藪の小径の カラスウリ
(しんげつや やぶのこみちの からすうり)
※夜遅くの散歩でもいつものコースを行く。ライ
トで照らした草陰にカラスウリが浮かびでた。
まだ十分色づいていない。熟れた色だったら、
ちょっとびっくりするかも。
ボケはじめ ふとしのびよる 秋の風
(ぼけはじめ ふとしのびよる あきのかぜ)
※昨日ある会合に行ったところ、現地に着いて
から一週間違っていたことに気づいた。「カレ
ンダーにつけておかないから」と家内は言う。
実はちゃんと書き込んであったのだ。ただそ
のメモ自体が間違っていた。
ボケ来たかな? ・・・この手のことは既に何
十年も前からあった。ノープロブレム。
10/8mon
展示作 急かずに如かじ 柿の音
(てんじさく せかずにしかじ かきのおと)
※文化祭に展示する水彩画を描いている。一気呵
成に仕上げるか?慎重に行くか? 出来上がり
の絵の調子にも影響する。ヘタはヘタなりに悩
むもの・・・ボサッ、アッ柿が落ちる音。
我が家の柿の音は鐘の音などではない。
10/7sun
秋の月 犬曳く道を 悔やむのみ
(あきのつき いぬひくみちを くやむのみ)
※今月初めの夜、犬の散歩で怪我をした。飼い主
の方である。真っ暗なところで道を渡る際に、
自らが走って縁石に躓いてしまった。軽傷だっ
たが、膝と両手で支える形で倒れたため両手と
腕に10箇所以上の擦過傷を負った。勝手知っ
たる散歩道で「やってはいけないこと」をして
しまった。傷の経過は至極順調だが、今もって
腰と膝が痛い。
怪我をして たまりし秋の 仕事かな
(けがをして たまりしあきの しごとかな)
※垣根の刈り込み、干し柿吊るし、落花生の収穫
など、知的な作業はない。
10/5fri
柿の木は 落葉病なり 空青し
(かきのきは らくようびょうなり そらあおし)
※柿の葉が黄色になり斑点ができ、面白いなと思
っていたら、実が成長できないまま赤くなり落ち
た。病原菌の仕業とか。人間が食べても害はな
いらしい。でも甘くない。残念。
落葉病と台風による強風で、葉はスカスカにな
った。知ったのは、青い空と思った以上の柿の
実の多さだ。
全滅にはならないだろう。ここに至ってもまだ期
待している。甘くて大きい富有柿。
10/4thu
草虱 荷風浅草へ 靴の音
(くさじらみ かふうあさくさへ くつのおと)
※荷風は戦後暫くして市川に住んだ。文筆活動は
一部の小品以外鳴りを潜め、交友もなく、専ら
浅草に通う。秋になると、背広にコートを着て、
カバンに傘を持った彼の姿が思い浮かぶ。革靴
の音。高価なものではなかったとか。
うろこ雲 戸締りしたる 荷風かな
(うろこぐも とじまりしたる かふうかな)
※日常のことにいそいそとする荷風が好きだ。浅
草で決まった店で昼食をとり、馴染みの劇場に
立ち寄る。
10/3wed
選挙終え 基地をぼかした 悔いあらん
(せんきょおえ きちをぼかした くいあらん)
※本土からの押し付けを嫌い、旗幟鮮明を好む県
民性が今回の結果か? 果てしない押し問答が
なおも続くことに・・・。
父知りて 賢治の秋も 深く知り
(ちちしりて けんじのあきも ふかくしり)
※図書館からのメールで門井慶喜の「銀河鉄道の
父」の順番が来たことを知る。予約をしたことすら
忘れた頃に・・・予約システムの醍醐味だ。
ご存知直木賞受賞の本。賢治の行動や文学のこ
とで新たなことは殆どないが、父政二郎の細やか
な心情を通して、人間賢治を味わうことが出来た。
こんな父親の方が、天才賢治より希少価値があ
るようにも思われた。すいすい読書。
10/2tue
日常が 台風一過 舞いもどる
(にちじょうが たいふういっか まいもどる)
※例年以上に怯えを覚える今年の台風。備えをし
て、接近の情報に神経をとがらせ、夜中の強風、
大雨の音に寝もやらず朝を迎える。被害がなけ
れば幸い、・・・朝の光がまぶしい。
10/1mon
台風や 堰守る人の 叫びおり
(たいふうの せきまもるひとの さけびおり)
※取水堰を監視、操作する建家の窓が開き、人が
堰近くにいる作業員に大声で指示をしている。
最近の各地の災害には、思わぬ出水、氾濫が数
多く含まれているから、真剣そのもの。西から強
い台風24号が接近している。
**************************
9/29sat
新語聴く 姦しからず 女子の会
(しんごきく かしましからず じょしのかい)
※今風のカフェに入った。耳をすます。すぐに聞
き分けができない言葉が混じる。若い女子かな
と思ったら、アラフォー世代の数人だ。文庫本
持参ではあったが、現代語仕入れに切り替え
ざるを得なかった。かなりカシマシしい。
9/28fri
稲妻や 機影羽田へ 列をなす
(いなづまや きえいはねだへ れつをなす)
※羽田が沖合拡張されてから、風向きや天候にも
よるが、繁忙時間帯には当地木更津市の上空を
「2列縦隊」で航空機が進入する。夕方見上げる
視界に4機の灯りを数えるのは普通のこと。首を
回すと5機、6機と見えることも。荒天の暗い夜空
を一刻も早くと急いでいるようだ。
9/25tue
月今宵 里に帰れる 母の声
(つきこよい さとにかえれる ははのこえ)
※母の実家は当時年老いた父親(祖父)と姉が住
むだけの静かな家だった。それでも子供を連れ
て里帰りした母はいつも喜んでいた。おしゃべ
りする声までがいつもより弾んでいたような気
がする。広い庭を月明かりが照らす遠い記憶。
9/24mon
しなやかな 線が描けない 夜長かな
(しなやかな せんがかけない よながかな)
※70歳から始めた水彩画の教室通い。まだま
だ入口にいるのだけれど、頭デッカチは難しさ、
奥の深さだけを思う。
「君、君、絵かきになるのではないのだから、
肩の力を抜いて、まずは数を描き給え」・・・
その声もわかっているのだが。
9/22sat
秋彼岸 ページにうらら 陽が動き
(あきひがん ぺーじにうらら ひがうごき)
※今日一日はひとりで、ゆったり気分。ご先祖様
に感謝しながらウトウトする。
9/21fri
曼珠沙華 ビル迫り来る 子規の家
(まんじゅしゃげ びるせまりくる しきのいえ)
※9月19日は子規忌(糸瓜忌)。根岸子規庵の
子規の寝床から庭を見る。ヘチマや鶏頭・・・。
ビルが見えなくて良かった。
超々有名な句ふたつ。
鶏頭の十四五本もありぬべし 子規
糸瓜咲いて痰のつまりし仏かな 子規
9/20thu
山裾の 村道はるかに 酔芙蓉
(やますその そんどうはるかに すいふよう)
※東名大井松田で下りてすぐ、開成町の福澤地区
に、目指す酔芙蓉ロードがあった。店などもないし
入場料をとる人もいない。農道沿い数百メートル
に酔芙蓉が両側に植えられている。ちょうど見頃
だし、これぞ静かなる圧巻!!
鮎壷の 滝轟々と 彼岸花
(あゆつぼの たきごうごうと ひがんばな)
※水の町三島市の西隣長泉町にある「鮎壷の滝」
を初めて目にした。富士の裾野から発した黄瀬
川が住宅地のど真ん中に雄大な滝を作っている。
思った以上の雄大さと富士山の恵みに驚く。
9/19wed
添乗員も またシニアなり 秋の旅
(てんじょういんも またしにあなり あきのたび)
※先週末に静岡県三島、南足柄方面へ日帰りバ
スハイクに出かけた。お決まりの観光地と買い
物施設をめぐるコース。○○フルーツパーク、△
△ヒモノセンターなどなど、その合間に観光地
をちょこっと挟む。参加者の多くがシニアで、昼
ご飯と買い物が目当てだから、文句は言えない。
9/17mon
老老が 敬うべしと この日あり
(ろうろうが うやまうべしと このひあり)
※「敬われる」のではなく、老老が互いに敬う日。
ハードルが高くなった。
9/14fri
アライグマ 捕まえ畑は 秋の声
(あらいぐま つかまえはたけは あきのこえ)
※素人が作っている野菜畑にも明らかに四つ足動
物の仕業とされる被害が続いた。県内で繁殖して
いるハクビシンかと思ったら・・・、捕えてみれば
アライグマ。これも「特定外来生物」として駆除
対象になっている。顔はカワイイし、尻尾は大き
くて人気者のそれ。
9/8sat
胆振なる 地方はいかに 秋の闇
(いぶりなる ちほうはいかに あきのやみ)
※北海道地震の震源地は胆振地方東端の厚真町。
室蘭に住んで胆振という地方名を初めて知った。
今回その名が繰り返しTVで流れる。火山や湖に
恵まれた景勝の地でもあるが、地震はごく少なか
った。多くの人々の顔を思い出す。
9/7fri
稲妻や 枝豆ぬいて 駆けもどる
(いなずまや えだまめぬいて かけもどる)
※台風が過ぎ去っても強風がおさまらない。天気
も不安定だ。我が家の枝豆は時期を遅らせてネ
ットで囲い虫害対策を施したのだったが、肝心の
成長が不十分、失敗に終わった。数少ない青豆
は美味、と自らを慰めている。
昨年は見事な枝豆を大量に収穫したが、信じら
れないことに悉くカメムシに豆のエキスをチュー
チューされていた。
9/4tue
鉄道を 越える小道に ウリひとつ
(てつどうを こえるこみちに うりひとつ)
※「線路をわたってはいけません」の立札。これは
「ここなら近道でわたれます」のお知らせ。
さすがに伸び放題の夏草は刈られていない。地
べたが見えない。何が出てくるか? なんと栄養
満点の大きな白い瓜があった。びっくり。
9/3mon
露草の 踏まれしほどに ありて秋
(つゆくさの ふあれしほどに ありてあき)
※台風21号の影響で前線が刺激され、雨模様が
涼しさをもたらした。新学期が始まったばかりの
中学生たちも落ち着いているように見えるのは
気のせいか? この時期、生徒の自殺が一年の
中で一番多いと聞いた。
9/2sun
店頭に 息子引き継ぐ 鉢あざみ
(てんとうに むすこひきつぐ はちあざみ)
鉢もみじ 一子相伝の 極意をば
(はちもみじ いっしそうでんの ごくいをば)
※近くの商店では跡を継いだ主が、花好き、盆栽
好きだった亡父の遺産を引き継いだようだ。勤
め人だったらしい彼はその道の秘伝を授けられ
ているのだろうか?
**************************
8/31fri
炎天や 岸辺の闇に サギは待つ
※簡単に戻ってきた猛暑。シラサギは岸辺の丈の
長い草が茂った根元から離れない。じっと小魚
を待っている。暗闇でも真っ白だから丸見えだ
と思ったが、餌よりも熱中症対策優先か。
8/30thu
ぶどう棚 竿撓るほどに 房満ちて
(ぶどうだな さおしなるほどに ふさみちて)
※我が家のぶどうは新しい棚に旺盛に絡み、すで
に食べ頃の実をつけている。6月からの暑さ続
きで例年より早い感じ。棚の部材である竿が重
さのため中央で少しだけ撓っている。豊作のシ
ルシ。品種は名前も覚えていない、地味な薄緑
色のもの。ほんのり甘いのが「いとおしい」。
8/28tue
胡弓なく 街いまだ見ず 風の盆
(こきゅうなく まちいまだみず かぜのぼん)
※9/1-9/3は富山県八尾の風の盆。この季節でなく
とも訪れたことはない。古い町並みを薄暗いまま
にして踊りは進み、哀しげな越中おわら節にのせ
て、菅笠で顔を隠した女性連が優雅に手と指に
神経を払う。しゃしゃり出ることの多い今日の盆
の踊りの中で・・・いいなァ。
8/24fri
二人して うめても熱き 夏出湯
(ふたりして うめてもあつき なついでゆ)
※福島県磐梯山近くの沼尻高原、亡くなった登山
家田部井淳子さんがオーナーだったロッジが閉
館したらしい。以前になるが弟といっしょに訪れ、
ゆっくり午後を過ごした。かなり強度の酸性湯で
熱く、殆どが源泉ということだった。
六十歳の 兄弟裸で 夏惜しむ
(ろくじゅうの きょうだいはだかで なつおしむ)
※カッコーがしきりに鳴いていた。弟の裸を見た
最後の日。
8/21tue
秋風や 白河の関に 出迎えん
(あきかぜや しらかわのせきに でむかえん)
※準優勝の金足農高には緒戦から、その全員野球
とエース吉田の颯爽とした投球ぶりに注目した。
あれよあれよという間の決勝進出。勝てば東北勢
初の優勝だったのだが、残念。しかしおかげでTV
観戦を堪能した。
8/20mon
ケイタイに 残りし露や 秋あざみ
(けいたいに のこりしつゆや あきあざみ)
※今朝も涼しさが続く。朝の小雨でアザミの花が
みずみずしく、いい色になる。
8/19sun
朝涼し 足引く人の 微笑かな
(あさすずし あしひくひとの びしょうかな)
※朝ウォーキングの人の中に、足を引きずるよう
にしてリハビリを兼ねた人達が意外と多い。脳
内出血等の後遺症と戦っている、多くはシニア
またはシニア近くの男性だ。昨日今日は本当に
涼しい。顔つきが全然違っている。
8/17fri
暑いねと それだけ言って 盆は明け
(あついねと それだけいって ぼんはあけ)
※この夏は並みの時候の挨拶は不要だ。ただ「暑
い」と言えばいい。
・・・そうしたら今日は一転関東地方も涼しい、さ
わやかな天気に。びっくりするほどの心地よさ。
北海道大雪山系の黒岳から観測史上最速の初
雪の知らせが届いた。どうなっているんだか?
8/15wed
姉が住む 博士の生家 油蝉
(あねがすむ はかせのせいか あぶらぜみ)
※小学生高学年の時、野口英世記念館をクラスで
訪ねた。現在のような観光施設ではなく、わら葺
きの生家はトタン屋根で覆われ、実姉のイヌさん
が暮らしておられた。別棟で記念館があった。
昭和30年頃の話。一列になって帽子をとり、お
姉さんに挨拶をした。「よく来なさったなァ。ゆっく
りしていきなさい」と言われた。とっても緊張して
いた。
8/12sun
シャバはもう 盆かナースの 冷たい手
(しゃばはもう ぼんかなーすの つめたいて)
※明け方の雷雨ですっかり涼しくなった。近くの
病院の入院患者が通りに面したところで談笑し
ている。顔ぶれは変わっても朝ここに来る人々
は誰も犬にやさしい。
8/11sat
角曲がる 父のスクーター 油照り
(かどまがる ちちのすくーたー あぶらでり)
※クルマの運転免許を持っていなかった父が短期
間スクーターを乗っていたことを思い出した。 暑
い夏の日のシーン。こちらが小学生の頃だ。
今だったら「二輪車は危ないから絶対やめて」と
言い張るのだが。すぐに乗るのをやめたから、意
外と事故でやめたのかも・・・。
8/9thu
南天や 永井博士の 歌聞こゆ
(なんてんや ながいはかせの うたきこゆ)
※長崎 原爆忌
「南天の花」 永井 隆 作詞
山田耕筰 作曲
8/8wed
居酒屋の 夏のざわめき 連れの声
(いざかやの なつのざわめき つれのこえ)
※気のおけない仲間との飲み会、こんなに楽しい
ものはないが、このところ殆ど毎回「酔い潰れて」
いる。断って、その場に横になる程度なのだが、
連れにも悪いし、いい年をしてとも思っている。
20歳前後の飲み始めの頃は、本当に弱かった。
あの頃にもどりつつあるのか・・・。
8/6mon
朝の道 急いで帰る 原爆忌
(あさのみち いそいでかえる げんばくき)
※広島73回目の原爆忌
8/4sat
火星来る 猛暑の赤き 色をして
(かせいきたる もうしょのあかき いろをして)
火星には ウィスキーかと 夏の闇
(かせいには うぃすきーかと なつのやみ)
※どこどこ?というほど、知っているようで何も
知らない。火星、南東のおおよそ仰角30度く
らいにあった。後は色と明るさで忘れない。
大接近故にことさら赤いようだ。この暑さはこ
のせいだったか? だったら鎮静を願って、
ウィスキーで乾杯。
旱星 地上は怨嗟の 声で満つ
(ひでりぼし ちじょうはえんさの こえでみつ)
※旱星という言葉を知った。ちゃんと夏の季語に
なるらしい。炎天続きの夜にひでりを象徴する
ような星。火星やアンタレス(知らない)などの
赤い星をいうらしい。
8/2thu
土用凪 配達夫白き 歯を見せる
(どようなぎ はいたつふしろき はをみせる)
※気圧配置が変わらない。朝からの猛暑が続く。
バイクの郵便配達が一番つらそう。ハイテクだ、
ITだとかいっても、ここには及ばない。汗を拭き
つつ、苦笑を見せる。
8/1wed
遅刻する 子が会釈する 蝉しぐれ
(ちこくする こがえしゃくする せみしぐれ)
※夏休み朝一番の部活。いつもの子がいつものよ
うに駆けてくる。集合時刻遅刻の常習犯だとか言
っていた。下半身が鍛えられるなァと思っていた
らもう前方の角を曲がった。
**************************
7/30mon
グラナダに 眼光ありて 夏の闇
(ぐらなだに がんこうありて なつのやみ)
生き尽くす アルバイシンの 驟雨かな
(いきつくす あるばいしんの しゅううかな)
※7/27「戸嶋靖昌記念館」訪問
戸嶋靖昌1934-2006
後半生をスペイングラナダに過ごし、魂を
燃焼させた孤高の画家
7/26thu
旧友と 雑魚寝願望の ありて夏
(きゅうゆうと ざこねがんぼうの ありてなつ)
※猛暑、酷暑ということで様々なことを思い出す。
標高のある山荘で仲間数人と避暑とシャレ込ん
だら、とんでもない暑さ。あの雑魚寝の日々が
なつかしい。それにしても、なんだアレは?
すさまじい夏だった。
7/23mon
無花果の 向こうに白き ヘルメット
(いちじくの むこうにしろき へるめっと)
※現場建築の仕事は急遽7時30分からにしたら
しい。それでも相当暑いが、無花果の実の色が
日一日と濃くなり、真っ白なヘルメットが忙しく立
ち回る。
スケッチを 済ませて朝餉 河童の忌
(すけっちを すませてあさげ かっぱのき)
※芥川が死んだ年の7月も相当暑く、それを無性
に気にしていたとする説があるらしい。気に入っ
た景色をササッとスケッチブックに書き留め、で
きれば日陰で色をつける。水彩画は上手にとは
望むべくもないから、このスピードと手軽さが目
標だ。しかもこの夏は正念場。ササッとできなけ
れば死んでしまうかも?
7/21sat
夏冨士や 通い詰めたる 麓まで
(なつふじや かよいつめたる ふもとまで)
※うっすらと富士山が見えた。表富士裾野市の標
高900m付近にその昔小屋を建てて、週末ごと
に東京から通いつめた。仕事もキツかった頃の
十年余り、山での暮らしがあって辛うじて息をし
ていた。
7/19thu
月の白 白サルスベリに 白灯り
(つきのしろ しろさるすべりに しろあかり)
※通りの両側にサルスベリの並木がある。最初に
満開になるのは決まって白。今、毎晩見事な光
景を見せて、しばし酷暑を忘れさせる。白い上弦
の月とLEDの白い街灯が演出者。
ついで花を多くつけているのは真っ赤。しばらく
してピンクとバイオレット系がわあーっと咲きそ
ろう。
灯り消し 闇にうなって 熱帯夜
(あかりけし やみにうなって ねったいや)
※「うなっても熱帯夜」。放哉のパクリ。
尾崎放哉「咳をしても一人」。これは冬。ちょっと
小高いところにあるお堂の庵主(小屋守り)が
最後の暮らしだったが、夏は風がよく通って涼
しかったこと、参詣の客があり賽銭収入があっ
たこと、村人から瓜の差し入れがこよなくありが
たかったこと等が記されている。
7/15sun
丁寧な 敬老言葉よ 猛暑日に
(ていねいな けいろうことばよ もうしょびに)
※市の検診を受けに行った。係員の説明の懇切
丁寧なこと!「ここはこうです。わかりますよね?
次はちょっと複雑な設問で申し訳ないのですが
・・・すみません、わかりまちゅ?」 丁寧を通り
越して、子供扱いだ。外見ではボケているかど
うかはわからないから、仕方がないか。それに
しても午前中から暑い日だ。
7/14sat
石垣や 百五十年の 苔青し
(いしがきや ひゃくごじゅうねんの こけあおし)
※明治維新150年。歴史点検の動きあり。懐疑派
はこの2,3年論調を高めるようにしてきたから、
むしろ新鮮味は少ないかも。迎え撃つ正統派、主
流派の方にこそ異論や差別化の主張があり、耳
目を集めている(ようだ)。
7/13fri
桃の実を 香りを熨斗に 無沙汰わび
(もものみを かおりをのしに ぶさたわび)
※例年より早く、数も多くかつ大きな桃が収穫で
きた。我が家の庭にある、一本の桃の木である。
とはいえ素人の哀しさ、大きさはマチマチで袋
はかけたものの虫にやられたものも多い。A級、
B級品は近くの世話になった人におすそわけ。
「いつもより早いね。おいしい」と言ってくれる。
自慢できるのはおいしさ、家では半ばを占める
「C級品」と級外品?を食べる。けれど、おいし
さは変わらず。
7/11wed
フェリー乗る 日焼けした顔が 土産持ち
(ふぇりーのる ひやけしたかおが みやげもち)
※横須賀から帰る家人を東京湾フェリー金谷港ま
で迎えに行った。平日の夕暮れ近く、ゴルフ帰
りのシニア族が溢れている。笑顔の白い歯が目
立つ。これって、保険の効かないデイサービス
かな。
泡盛を 出す房総の 海の家
(あわもりを だすぼうそうの うみのいえ)
※予想以上の猛暑の到来で、海の家の拵えも急
ピッチ。泡盛のメニューがある。心地よい風が吹
いてきた。泡盛1杯で夕暮れの海を眺めるのも
いいなァ。
7/10tue
欠と出す 夏の盆地の クラス会
(けつとだす なつのぼんちの くらすかい)
※今回もちょっと無理。「欠」と書いた途端に或る
顔が浮かぶ。先日高校卒業以来久しぶりに声
を聞いた友人だ。故郷の夏の光景、煙ったよう
な青い盆地・・・。
7/8sun
ヤコブ呼ぶ まだ見ぬ道や 夏帽子
(やこぶよぶ まだみぬみちや なつぼうし)
※久しぶりに友人I に会った。最近スペインの巡
礼の道とサンティアゴ・デ・コンポスティラを旅し
たという。興奮していた。羨ましい限り。
7/3tue
惜敗の 朝夏つばきの さやかなり
(せきはいの あさなつつばきの さやかなり)
※朝5時前の劇的な幕切れ。格上のベルギー相
手に良く戦った。門外漢だが、攻撃力を言われ
て久しい日本チームが、どのチームと試合をし
ても果敢に攻めている。最後のシュートにまで
結びつける執念と度胸がある。敗れても新しい
時代を画した。
顔しかめ 猛暑の午後に すれちがう
(かおしかめ もうしょのごごに すれちがう)
※この暑さと太陽の光線。おだやかに見えなくて
もいい。
7/2mon
来し方を ねほりはほりと 半夏生
(こしかたを ねほりはほりと はんげしょう)
※夏至から数えて11日目、これからの5日間を
半夏生というらしい。夏も半ばを越えて「半夏
生」の花の咲く頃、といえばなにやら奥ゆかし
いが、現実のこの世は猛烈に暑く、シニアの悔
恨癖すら長続きしない。
7/1sun
七月は 蒸し蒸し夏日で 始まりぬ
(しちがつは むしむしなつびで はじまりぬ)
※記録的に早い梅雨明けは、記録的に暑い7月を
呼び寄せるかも。今日は最高33度予想で、しか
も朝から相当な蒸し暑さだ。豪雨の西日本各地、
地震後の大阪ほどではないにしても、この夏は
かなりの覚悟を強いられるようだ。
2020-01-18 09:43
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