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ダクタク句集2018年(平成30年)上期 自選集 [自選集2018]

6/28thu
紫陽花の 色に迷いて 午後は過ぎ
     (あじさいの いろにまよいて ごごはすぎ)
        ※今日の画題はガクアジサイ。青のガクが濃い青
         に変わり、一部は赤みを帯びている。この見事な
         色の変化と組み合わせは、紙の上に再現しよう
         とした途端に、憎らしいほど微妙なものになる。

6/27wed
色付きし ジューンドロップの 実を干しぬ
     (いろづきし じゅーんどろっぷの みをほしぬ)
        ※果樹は確実な子孫確保のために、多すぎる果
         実を6月頃に落とすという。栽培者からすれば、
         「最低限の自動摘果」。しかし欲の深い栽培者
         はそれらを拾い、「食べられるかも・・・」と日向
         に干してみる。7センチほどの桃の実がほんの
         りピンクがかる。

6/26tue
ひっそりと 西瓜の花に 通う朝
     (ひっそりと すいかのはなに かようあさ)
        ※早朝にスイカを植えた畑にクルマで駆けつける。
         貴重な梅雨の晴れ間、人工授粉の好機だ。去年
         成功の小玉ではなく大玉スイカだからハードルが
         高い。とはいえ、たった2苗。雌花が咲いている
         かな? ガソリンをかけて通う。

6/24sun
梅雨の風 荷風翁ふと 空見上げ
     (つゆのかぜ かふうおうふと そらみあげ)
        ※年齢のせいか、永井荷風の作品にしきりにふれ
         たくなる。散歩を好んだ彼の身なりはいつもきち
         んとしていた。背広にネクタイ、手にはいつもの
         カバンと傘が。

6/23sat
梅雨の朝 人待ち顔の 床屋かな
     (つゆのあさ ひとまちがおの とこやかな)
        ※今年の梅雨は梅雨らしい日が続く。知り合いの
         床屋の親父さんが空を眺めて店先にたたずんで
         いた。畑が気になるが商売優先、月曜日までお
         預け・・・。

6/21thu
おのずから 廻廊なるや 立ち葵
     (おのずから かいろうなるや たちあおい)
        ※以前に農業と造園業勤務をしていたらしい人が
         作っている畑。野菜に混じって花々がたくさん
         ある、広いゆとりの畑だ。土地が肥えているの
         か、タチアオイの成長がハンパない。それが畑
         への道を飾っている。タチアオイ、ムクゲ、そし
         て畑のオクラの花も・・・大好きな日本の花。

6/20wed
ホトトギス レジ待つ人と 聞きにけり
     (ほととぎす れじまつひとと ききにけり)
        ※小雨模様の午後、鳴き声が聞こえた。山とは距
         離があるのに、かすかにしかししっかりと。梅雨
         の合間の清涼剤。いい土地だなァと目で会話す
         る。

6/19tue
泰山木 白き香りが 届けられ
     (たいさんぼく しろきかおりが とどけられ)
        ※泰山木は切花にはならないが、家内の同級生
         のご主人が枝を切って届けてくれる。「泰山木が
         好き」と言ってから毎年のことだ。真っ白な、
         大きな花は柑橘系のような、控えめな香り。朝
         晩顔を寄せる。切花ならではの贅沢なクンクン
         ・・・。ありがたい。

6/18mon
梅雨寒や 病む姉に妻 メール打ち
     (つゆざむや やむあねにつま めーるうち)
        ※ゆっくりと指を動かしメールを読む、時に何度
         も・・・。これ、病人の希望。気がついたときに
         時間をかけて返信を打つ。メールは人にやさ
         しい通信手段。

6/17sun
つゆの午後 オルガのバラード 指でぽんッ
     (つゆのごご おるがのばらーど ゆびでぽんっ)
        ※降り止まぬ雨を見ながら美人の一曲を聴く。
          オルガ・シェプス(piano)
          ヒラリー・ハーン(violin)
          アナ・ヴィドヴィチ(guitar)
         勝手に選んだ、同じ年代の若く美しい3人。庄
         司紗耶香は入らないけれど、彼女は別格本山。

6/16sat
小糠雨 上野の山の 昔かな
     (こぬかあめ うえののやまの むかしかな)
        ※シニア男の相合傘で公園を横切る。知人が出
         品している版画展を見に行く。動物園も静か。
         ホッとする静かさ。

6/13wed
新茶飲み ためらいつつも 「買う」を押す
     (しんちゃのみ ためらいつつも かうをおす)
        ※ネットで買い物をする。慣れたつもりでも一抹の
         不安が頭をよぎる。

6/9sat
梅雨台風 週間予報で 身構えぬ
     (つゆたいふう しゅうかんよほうで みがまえぬ)
        ※最近の天気予報は精度が高い。週間予報もま
         るで物語つきで教えてくれる。うーーん、暮らし
         ぶりが決まってしまうみたいで、良いことばかり
         ではないが・・・。

6/8fri
双つ子を 前後に乗せて 梅雨の母
     (ふたつごを ぜんごにのせて つゆのはは)
        ※小雨なんか気にしない。鼻歌まじりの自転車の
         ママ。保育園に預けた後は勤めがあるのだろう。
         時々見かけると、こちらもパワーがもらえそう。

6/7thu
じゃがいもの まだ小さくて 走り梅雨
     (じゃがいもの まだちいさくて はしりづゆ)

6/6wed
山路さす 二人を追いて 蛍がり
     (やまじさす ふたりをおいて ほたるがり)
        ※蛍を見たという人がいたのに、一番信頼する
         ウォッチャーからはなんの連絡もない。啄木の
         歌に、「ほたる狩り川に行かむという我を 山
         路にさそう君にてありき」というのがあった。
         その歌をパクって、ホタル待ちかねの句としま
         した。

6/5tue
真菰畑 少し減りしも 雉住めり
     (まこもばた すこしへりしも きじすめり)
        ※真菰畑では今ヨシキリが盛んに鳴いている。し
         かし真の主人はキジの一団。朝夕よく見かける
         のだが、ここに棲み着いているか? 何家族な
         のか?は実は不明。

6/4mon
雲映す 父の作りし シャボン玉
     (くもうつす ちちのつくりし しゃぼんだま)
        ※6月の声を聞くとなぜかシャボン玉を思い浮か
         べる。昔は普通の石鹸をとくばかり、ストローも
         工夫なしで、シャボン玉はただ大きさを競うだけ
         だった。いびつな大きな玉の表面は家を写し、
         空を写し、雲も・・・。その雲がゆらゆら揺れてい
         た。

6/2sat
旅終えて すぐの仕事や 袋かけ
     (たびおえて すぐのしごとや ふくろかけ)
        ※作物は待ってはくれない。モモの2度目の摘果
         を兼ねて袋かけをする。モモは果軸の部分が短
         いから袋かけがむずかしい。・・・思い切って摘果
         して実を減らしたが、それでも170枚ほど袋をか
         けた。これが一本の木なのだから、我が家の桃
         の木は立派なもの、と思う。
         ただ大きな実にはならない。味は良い。

6/1fri
くちなしや 庭で髪すく 女を見し
     (くちなしや にわでかみすく ひとをみし)
        ※今日から6月。今となってはやや古風な光景を
         目にした。女性がもう少し若ければ・・・。 


          *****************************
 

5/31thu
蚕豆や 変わらぬ仲の 夫婦かな
     (そらまめや かわらぬなかの ふうふかな)
        ※5/25北九州、長年お世話になっている元上司の
         お宅を訪問した。今年米寿のお祝いと聞いて、お
         元気さにびっくり。好奇心と筋にこだわる志の強
         さも相変わらず。奥様との仲も。

5/30wed
パーク潰え 緑のみ伸びて 夏の空
     (ぱーくついえ みどりのみのびて なつのそら)
        ※5/25北九州、午後空路羽田へ
         宿泊はホテルの12階。眼前にスペースワールド
         の絶叫ライドが聳え立つ。閉鎖、廃業して、今は
         更地化工事が進んでいる。話は聞いて知ってい
         たが、こうして目の当たりにすると、言い知れぬ
         辛い感慨がこみ上げる。様々な人がいた。必死
         に取り組んだ人も。

片蔭や 帆柱山に 向かう道
     (かたかげや ほばしらやまに むかうみち)
        ※今日は入社同期の50周年パーティの日。一応
         今回が最後となる。なつかしい通り、なつかしい山。

5/28mon
五月雨や 湖面の色の 減りて佳し
     (さみだれや こめんのいろの へりてよし)
        ※5/23松江は生憎の雨降り。宍道湖は煙っている。
         こんな日もお城見物には最適かも。城内はしっと
         り落ち着いている。二の丸から眺める、急峻な石
         垣の上にそびえる天守は最高。

アカシアや 城の裏なる 濠深く
     (あかしあや しろのうらなる ほりふかく)

濠を行く 船頭の歌や 瓜の花
     (ほりをいく せんどうのうたや うりのはな)
        ※お城をぐるっと廻る観光船は取りやめたが、船
         頭の渋い歌声が聞こえた時は少し後悔した。

ヘルン家の 小さき池や かきつばた
     (へるんけの ちいさきいけや かきつばた)
        ※小泉八雲旧居跡を訪問。当時武家屋敷を借り
         たものだという。武家屋敷の簡素さとヘルン氏の
         日本趣味が見事に融合していると感じた。

5/27sun
松江いま 夏の初めの 水の街
     (まつえいま なつのはじめの みずのまち)
        ※5/22松江市内は実に50年ぶり。夕暮れの町並
         みはこの街の売りの一つ。城下町の区割りを色
         濃く残している。いい街だなァ・・・。

安来市は 石州瓦の 照り返し
     (やすぎしは せきしゅうがわらの てりかえし)

借景の 新緑揺れて 驚きぬ
     (しゃっけいの しんりょくゆれて おどろきぬ)
        ※念願の足立美術館を訪問。おなじみの日本画、
         庭園を目の当たりにする。ガラス越しの庭園は
         「なじみ過ぎ」と感じたが、遠くの山肌の緑が
         そよぐのを見て、本物を実感する。

5/21mon
アオイ咲く 賢治の父の 帰る朝
     (あおいさく けんじのちちの かえるあさ)
        ※図書館の本はパソコンで延長が出来る。とこ
         ろが或る本を延長しようとしたら出来なかった。
         延長可能マークがついていない。「え? 読み
         始めたばかりなのに・・・」と戸惑ったが、実は
         2週間前に一度延長したから、というのが理
         由だった。
         10冊も借りてくると、どれがどうだったか分か
         らなくなってしまうことが原因。プラス、ボケ?
         渋々返しに行った、その本が小説「銀河鉄道の
         父」(門井慶喜著)。

5/20sun
キョンという 鹿駆け去りて 麦の秋
     (きょんという しかかけさりて むぎのあき)
        ※昼下がりに借りている畑にいたら、すぐ近くを
         鹿らしい動物が駆けて行くのを目撃した。あわ
         てているらしく大股?でJRの線路沿いに去って
         いった。こちらも我が目を疑った。近くには国
         道が通りクルマも多いし、人通りもあるのに、
         なんだアレは!! 
         千葉県では外来種のキョンが猛繁殖していると
         いう。被害も急増しているらしい。

5/19sat
衣替え なしくずし故 記録せず
     (ころもがえ なしくずしゆえ きろくせず)
        ※サクラが咲く前の3月中旬から、6、7月並み
         の気温の日があった。今は7月下旬並みとか。
         合間に涼しい日もあるから、行事としての衣替
         え(更衣)は中高生の制服のチェンジくらい?

5/18fri
春暑き 兄の帽子が 草のかげ
     (はるあつき あにのぼうしが くさのかげ)
        ※故郷の東北は今が春真っ盛り。急に伸びた雑草
         を始末していると電話があった。

5/17thu     
五月雨や 水飴つくる 小鍋かな
     (さみだれや みずあめつくる こなべかな)
        ※桃の摘果でたまった若桃からジャムを作ること
         は取りやめて、余った材料を使って水飴を作る
         ことに。リスクなし。

5/16wed
風薫る 妻は麻雀の サークルに
     (かぜかおる つまはまーじゃんの さーくるに)
        ※今が一番いい季節と感じる。昨日まで草むしり
         も果樹の摘果と消毒もやらされて一段落だ。お
         まけに家内は今日公民館へ。マージャンで認知
         症発症の懸念が多少でも減ってくれたら、言う
         ことない。こんなにいい日はない。

5/15tue
桃摘む 形良き実に 躊躇して
     (ももつまむ かたちよきみに ちゅうちょして)
        ※今年の桃の出来はすごく良いようだ。気候のせ
         いか? 摘果も一仕事。 

5/14mon
五月雨や モデルは美形に あらねども
     (さみだれや もでるはびけいに あらねども)
        ※仲間内で順番にモデルとなって描こうと相談し
         た。大部分の人は反対気味であったが、初回は
         自分がつとめますと言ったら、渋々?納得。
         あるシワ、見えないシワ、心のシワ・・・皆描いて
         と開き直って。

5/12sat
荷風忌や 翁の年齢と なりにけり
     (かふうきや おきなのとしと なりにけり)
        ※永井荷風の「濹東綺譚」「つゆのあとさき」を久
         しぶりに読み直した。荷風全集(筑摩)の装丁
         ?に憧れて何冊かを求めた昔がよみがえる。
         今中古の全巻がたった4,000円とか?

玉ノ井も 寺島町も なくて春
     (たまのいも てらじまちょうも なくてはる)
        ※旧遊郭の跡は痕跡もない。地名も駅名もすべ
         て別名に置き換えられた。潔癖なまでに・・・。

初夏の風 ネットで読みいる 荷風かな
     (しょかのかぜ ねっとでよみいる かふうかな)
        ※さわやかな風には合わない本かもしれないが、
         青空文庫で読んだ。リーダーアプリによっては、
         難解な字句や地名などをなぞると、即座にグー
         グル検索で結果が得られる。これは便利だ。痒
         いところに手が届く。

5/11fri
団子坂 四月五人の クラス会
     (だんござか しがつごにんの くらすかい)

若葉風 英世指さす 梢かな
     (わかばかぜ ひでよゆびさす こずえかな)
        ※先日中学校の同級会の帰り、谷中に出て上野を
         経由して帰宅した。上野では出席の友といっしょ
         に、国立科学博物館前の野口英世像を久しぶり
         に見た。おや、ここにも同郷人がいたっけ。

5/10thu
工場閉ず 栄枯の機械を 撫でて春
     (こうばとず えいこのきかいを なでてはる)

春逝きて 油と人の においあり
     (はるゆきて あぶらとひとの においあり)
        ※九州の知人から工場を閉じたと知らせがあった。
         父親の跡を継いで長かったのと機械加工の仕事
         そのものが好きだったから、予定の閉鎖とはいえ
         彼の嘆息が聞こえてきそうだ。中小企業では、こ
         うした後継者不足、人手不足理由の廃業が増え
         ているとか。問題は裾野を形成する、こうした中
         小製造企業に、新規参入も含めて相当の利益
         機会があるかどうかだと思う。

親の字と 並べて似るを 知る若葉
     (おやのじと ならべてにるを しるわかば)
        ※好みは親父の字。じっと見つめて少しでも似て
         いると思えればそれで喜んでいる。

5/7mon
筆握る 力みが哀し 冬のバラ
     (ふでにぎる りきみがかなし ふゆのばら)
        ※70歳近くなって、字を書くときに力が入って
         しまい、ちゃんとした字が書けないばかりか、
         時々鉛筆やペンが大きく飛んでしまうようにな
         った。その都度握り直して「そっと力を抜いて」
         とリセットするのだが、思わず知らずガチガチ
         になってしまう。老化と字を書かない日常習慣、
         それに神経性のなにかのせいだろうか?

朝ぼらけ 春の句を書く 寝床かな 
     (あさぼらけ はるのくをかく ねどこかな)
        ※一年ほど前から対策に乗り出した。ただ字を
         書く、力まずに軽く書くことを毎日やることにし
         た。雑記帳に、なんでもいい、下手でもいい・
         ・・ただ力まずに。横になったままやるのも良
         い習慣になった。どうせ書くならと、図書館の
         本から季節の名句を写した。一石二鳥。
         ・・・少しずつ力みが減った。

5/6sun
訪ねしも 主は留守か 白つつじ
      (たずねしも あるじはるすか しろつつじ)
        ※4月から四国のお遍路に出かけていた知人の
         家に寄ってみたが留守だった。帰ったという話は
         聞いていた。なるほど一人住まいの庭はきれい
         に手入れがなされている。土産話は次の機会に。

5/3thu
自分より 若き俳人の 春の歌
     (じぶんより わかきはいじんの はるのうた)
        ※片山由美子、千葉県出身。季節をさりげなく詠
        う句がなんとも好ましい。自分の感慨、家族や知
        人を交えたミニ歴史を光景の中に溶け込ませてい
        る。いいなア・・・。
          流されて花びらほどの浮き氷
          ここまでは来ぬはずの波さくら貝
          逃げ水にいつしか追はれゐるここち

春の川 気鬱なること 投げきれず
     (はるのかわ きうつなること なげきれず)
        ※7月並みの気温から今日午後には久しぶりの雨
         模様となるかも。

5/1tue
今日からは 白きシランも 通学路
     (きょうからは しろきしらんも つうがくろ)
        ※ぶどう棚の脚は土を掘り、セメントで固めて基
         礎を作った。その過程でたくさんの植栽を掘り
         出したので、近くの中学校の通学路に植えて来
         た。ピンクのシランがたくさんあるところに白い
         シランを植えた。他にはたくさんの水仙。

オダマキは 匍匐すれども 春嵐
     (おだまきは ほふくすれども はるあらし)
        ※いつも感心するのはオダマキの強さ、勁さ。

三日経て 勤める人は 田植え終え
     (みっかへて つとめるひとは たうえおえ)  



        *********************************


4/30mon
土筆ニョキ アニメのごとく 地べた割る
     (つくしにょき  あにめのごとく じべたわる)
        ※気がつくと、ここにもあそこにも。そして2、3日
         後には立派な土筆になる。

4/26thu
おらもまだ この春なまり とめどなぐ
     (おらもまだ このはるなまり とめどなぐ)
        ※芥川賞の若竹千佐子著「おら おらで ひとりい
         ぐも」を読んだ。この著者は岩手県出身で木更
         津市在住とか。オラが出身地のなまりとはちょ
         っと違うが、よーくわかる。

4/25wed
春届く ヤナギ行李の においかな
     (はるとどく やなぎごおりの においかな)
        ※その昔故郷から届いた行李荷物を思い出した。
         母の手になる紐掛けはヘタで簡単に解けるのだ
         が、あわててやるから失敗する。柳行李はなつ
         かしい。行李自体ににおいはない。「カラで送り
         返せ」とメモがある。

4/24tue
臈長けし 八重のサクラを 惜しむかな
     (ろうたけし やえのさくらを おしむかな)
        ※3、4月の高い気温で桜前線はすでに遥か北方
         にある。それでも遅い品種の八重が残っていた。
         今年は殊にきれいで、名残りを感じるのは年齢
         のせいもある。

故郷で 見る障子戸の 春灯り
     (ふるさとで みるしょうじどの はるあかり)

帝劇の 地下かつて我 春がすみ
     (ていげきの ちかかつてわれ はるがすみ)
        ※その昔東京駅京葉線から徒歩で帝劇地下まで歩
         き、三田線で西台まで通勤していた。毎日4時間
         余りの通勤時間をよくも通ったものだ。

日くれたり 行幸通りに 春灯り
     (ひくれたり ぎょうこうどおりに はるあかり)
        ※東京駅から馬場先門まで、途中日比谷通りをま
         たぐ形で、広い「行幸通り」が整備された。首都の
         玄関口にふさわしい、シンプルで堂々とした通り
         になった。東に東京駅、西には二重橋が見渡せ
         る。折しも点灯された通りは薄い夕焼け空を背
         景になかなかきれいだ。

季節なき ビルの谷間に 庭ぞ春
     (きせつなき びるのたにまに にわぞはる)
        ※浜離宮
         東京都立浜離宮恩賜庭園というのが正式名称。
         汐留操車場跡再開発の高層ビル群が林立する、
         すぐ側にある。江戸時代6代将軍家宣の別邸
         「浜御殿」として整備されたらしい。江戸城の出
         城としての役目から海に面し、潮水を取り入れ
         た泉水庭が広大な敷地に残る。かつては多くの
         建物、樹木があったけれども戦災等で消失し、
         一部が復元されている。茶屋は復元中だ。

4/17tue
春のお堂 低きつぶやきと 抹香と
     (はるのおどう ひくきつぶやきと まっこうと)
        ※先日4月上旬に仲間と都内を歩く会があった。
         今回は築地市場と浜離宮、そこから歩いて銀座
         ~日比谷~東京駅に至るコースだ。集合場所は
         築地本願寺。

4/16mon
隅田川 ふくらむ水や 遅日かな
     (すみだがわ ふくらむみずや ちじつかな)
        ※過日夕方、相生橋のたもとの越中島公園から永
         代橋方面を眺めていた。圧倒的な水量が日が傾
         くにつれ牙を剥くように思われた。

筍の 茹で上がるころや 朝の鳥
     (たけのこの ゆであがるころや あさのとり)
        ※今朝、今採れたばかりという筍が届いた。時を
         移さず茹で上げる。

4/15sun
門仲の 暗き店から 春を見る
     (もんなかの くらきみせから はるをみる)
        ※葉桜の門前仲町で待ち合わせ。昼下がりの眩し
         い通りから、とある居酒屋に。薄暗い店内が妙に
         落ち着く。通りの喧騒がBGMのよう・・・。

4/12thu
さわさわと 水田に白い 雲のかげ
     (さわさわと みずたにしろい くものかげ)
        ※当地早いところは田植えが始まった。これから
         のところも満々と水を湛えている。

4/11wed
常ならず サクラ描きたき 心あり
     (つねならず さくらかきたき こころあり)
        ※下手な描き手にサクラは高嶺の花だ。いつも敬
         遠していたのに、毎朝の或るポイントからの眺め
         に魅せられ俄然描く気になった。堤の満開のサ
         クラ並木に沿って菜の花の満開があり、すこし
         離れて田舎道が平行している、というもの。
         何故かキュンときた。こんなものかな? 画材と
         の幸せな出会いとは。勝手に上機嫌。

4/8sun
菜の花や 親子の指が バスを待つ
     (なのはなや おやこのゆびが ばすをまつ)
        ※毎朝支援学校のバスを待つ親子に会う。決まっ
         て母親の指は我が子の指をじっと握っている。
         濃密な愛情。今日は暖かい日。

4/5thu
選抜の 終わりて患者の 無聊かな
     (せんばつの おわりてかんじゃの ぶりょうかな)
        ※病院一階ホールの大きなテレビの前には入院患
         者や会計待ちの人達がいっぱい見ていた。「高校
         野球、やっぱり人気だね」と思った。

4/4wed
戸隠の 編み師がしごく 竹や春
     (とがくしの あみしがしごく たけやはる)
        ※細々とつないできた信州伝統の竹細工。ザル類
         や農作業用の背負かご、買い物カゴなど多くは
         地味なものだが、ネットや観光ブームのおかげ
         で信じられない注文が舞い込んでいるとか。後
         継者になるかも知れない若い弟子も・・・。浮か
         れることもなく高齢の職人は竹を小割にしてしご
         き、目の前で練習用の編み方を見せてやってい
         る。若者が思い描く、新たなデザインや用途に
         目を細めることもある。

4/2mon
春のバラ 主は遍路 空の果て
     (はるのばら あるじはへんろ そらのはて)

春の宵 髪を乾かす 音のあり
     (はるのよい かみをかわかす おとのあり)

新年度 朔日シャクナゲ ほころびぬ
     (しんねんど ついたちしゃくなげ ほころびぬ)
        ※このところの暖かさでスタンバッていたシャクナ
         ゲが平成30年度早々に開花した。シャクナゲは
         初夏の季語。

おやおやー 患者呼ぶ声 ニューフェース
     (おやおやー かんじゃよぶこえ にゅーふぇーす)
        ※近くのかかりつけの医院、さわやかな声。皆黙
         ってはいるが、新人看護師に目をみはる。



          **************************


3/31sat
春風や 畦におりたつ 海の鳥
     (しゅんぷうや あぜにおりたつ うみのとり)
        ※朝の散歩コースにしている辺は海岸から3~5
         kmの内陸だが、群れをなす海鳥をみかけること
         がある。旅鳥のシギの仲間か? 目の前の小櫃
         川は東京湾に注ぐところで広大な干潟を形成し
         ている。生物が豊かに生息していて首都圏では
         数少ない貴重な場所らしい。川の上流を目指して、
         食事?に来てもおかしくない。 不詳。

3/28wed
春宵の 赤き通りと 通夜の客
     (しゅんしょうの あかきとおりと つやのきゃく)
        ※5月並みの気温も夕方には少し冷える。気温の
         せいで霞がかかったような大気も透き通ってきて、
         夕焼けの光が通りを染めている。

3/26mon
遍路行く 室戸吉良川 蔵の町
     (へんろいく むろときらがわ くらのまち)

湯上りに 主人の語り 春遍路
     (ゆあがりに しゅじんのかたり はるへんろ)
        ※「いつかは四国遍路へ・・・」と思い始めたのが
         50歳前後の頃。「全路徒歩で」が「一部でも」と
         なり、「ちょっとだけでも」という現在に至って、
         まだ実行していない。蔵の街を朝日に見るか、
         夕焼けか? 遍路宿って? いい主人がいる
         かな? いらぬ心配ばかりしている。

春うらら 椅子組み立てる 釣り師かな
     (はるうらら いすくみたてる つりしかな)
        ※休日の釣り師、ゆっくりとアルミの椅子を準備
         している。ヘラブナ釣りは寒い中が似合う光景
         だが、こんな日もいいものだ。釣り師も一番落
         ち着くのはこの椅子の上だから、この季節この
         好天では釣れそうもないけれど家を出た・・・。

3/24sat           
法事終え 兄の横顔 春の風
     (ほうじおえ あにのよこがお はるのかぜ)
        ※両親と弟の回忌法要をまとめる形で郷里で行った。
         生憎みぞれ混じりの雨。肉親の法事としては今回
         を節目としていた兄はほっと一息という面持ち。温
         泉宿に移動してのお斎も楽しかった。

3/22thu
被り上げ タバコ吸ってる 獅子の春
     (かぶりあげ たばこすってる ししのはる)

あの笛は 母の背中よ 温かき
     (あのふえは ははのせなかよ あたたかき)

彼岸獅子 道端に黒き 雪ありて
     (ひがんじし みちばたにくろき ゆきありて)

春うらら 急くな雄獅子の 弓くぐり
     (はるうらら せくなおじしの ゆみくぐり)
        ※獅子団それぞれに特徴があり、ご贔屓も生まれる。
         舞いを頼むとその家の前で、包んだ芳志(金額)に
         よって舞いのメニューが決まる。通常の3人の舞手
         によるものに加え、真ん中の牝獅子だけの舞い、
         連れてきている子供と牡獅子の舞い、牡獅子によ
         る弓くぐりの舞い・・・と多彩だ。子供の頃は圧巻の
         弓くぐりが見たくて、今で言う「おっかけ」をしたもの
         だ。なつかしい思い出。
         各家では椅子を持ち出し、年寄りを中央に座らせ、
         舞いを楽しんだ。テレビもない、観劇など滅多にな
         い時代であった。家の主人の親孝行。

彼岸獅子 子役のありて 恋しかり
     (ひがんじし こやくのありて こいしかり)
        ※郷里会津若松市では春の彼岸に伝統の「彼岸
         獅子」が市内の各所で披露される。近郊の町か
         ら4、5組の獅子団が市中の商店、家を巡り、縁
         起物の舞を踊る。獅子団は連とも言える集団で、
         今は伝統文化保存会と称して、舞い方、笛太鼓
         の囃子方から構成される。会津に獅子団の音が
         聞こえるとやっと本格的な春が訪れる。

3/18sun
春嵐 備長炭の 窯たたく
     (はるあらし びんちょうたんの かまたたく)
        ※雨混じりの強風が窯をたたき続ける。わずかに
         白い湯気が立つ。原料はカシ。紀伊半島から伝
         えられた備長炭の生産を守っている。

春風に 備長炭は チンとなり
     (はるかぜに びんちょうたんは ちんとなり)
        ※炭の断面を見ると、真っ黒で密度が高い。炭同士
         がふれて出す音は金属音。

3/16fri
この春も 黄の競艶の 名に迷い
     (このはるも きのきょうえんの なにまよい)
        ※春に虫が一番好む色は黄色だとか。黄色の花は
         多いが、ここでいう黄の競艶?は「黄色の花をつけ
         る木」である。公園の植栽に、家々の庭の垣根越
         しに見られるもの。春を感じます。
         迷うのは(一年たつと忘れるのは)、
           マンサク(万作)
           レンギョウ(連翹)
           サンシュユ(山茱萸)
           ヤマブキ(山吹)
           トサミズキ(土佐水木)

3/13tue
ヘッドライト 後悔のみあり 春の霧
     (へっどらいと こうかいのみあり はるのきり)
        ※ちょっと前にTVで映画「ヘッド・ライト」(仏1955)
         を見た。なつかしかった。若い女との恋に家族を
         捨てた中年トラックドライバーの心の動きを描い
         たものだ。女との新たな暮らしを思い描いた矢先、
         女は病気で急死してしまう。中年男の恋とエゴ、
         暮らしと哀愁・・・をギャンは渋く演じる。

3/11sun
春つかむ 指のよごれや ふきのとう
     (はるつかむ ゆびのよごれや ふきのとう)
        ※この春も既にフキノトウの天ぷらを賞味した。そ
         してもう終盤なので、終盤向きの場所に採りに行
         く。数はないけれど大きくてうまそうな・・・。

3/10sat
雨音を しのぐ声あり 猫の恋
     (あまおとを しのぐこえあり ねこのこい)
        ※我が家の犬は猫が嫌い。先代もそうだった。雨音
         と猫の声、そして止まない犬の吠え・・・これが深夜
         に続くとちょっと困る。

3/8thu
雲雀来て 川面は鳥の なかりけり
     (ひばりきて かわもはとりの なかりけり)
        ※昨日いつもの散歩コースで初雲雀観察。今年の
         特色は初日から盛んに鳴き立てていることだ。

3/7wed
もどり寒 鵯の黙して 横切れり
     (もどりざむ ひよのもくして よこぎれり)
        ※身近な鳥の中でヒヨドリはとかく行儀が悪い。鳴
         き声がうるさい、食欲が旺盛、他の小鳥をやっつ
         ける・・・等々。それにしても「鵯」とはちょっと可哀
         想な気も。

3/5mon
梅の香に 楊枝作りの 主歩く
     (うめのかに ようじづくりの ぬしあるく)
        ※君津市久留里の伝統工芸に楊枝作りがある。ク
          ロモジから削り出され、久留里城にちなんで「雨
         城楊枝」と呼ばれる。本格的な職人は一人きり、
         後継者も弟子もいないとか。座っての仕事。普段
         はろくに運動もしない。一徹な人柄。その人がウォ
         ーキング・・・。

3/4sun
ゴイサギの 首回し見る 岸の春
     (ごいさぎの くびまわしみる きしのはる)
        ※他の鳥と違って、近くを通ってもゴイサギは悠然と
         している。川面を見張っていた目はぐるりとこちらに
         向けられる。

3/3sat
雛の段 重ねる亡母の 太い指
     (ひなのだん かさねるははの ふといゆび)
        ※思い出すのは、雛人形を優しく飾る姿ではなく、
         蔵の二階から人形が入った大きな木箱を下ろして
         来て、大小の箱を利用してひな壇を作っていた姿
         だ。緋毛氈で覆って出来た時、いつも手品のよう
         だと感心した。

3/1thu
春の日や 師の筆先の すこやかさ
     (はるのひや しのふでさきの すこやかさ)
        ※花特にバラを描かせると先生の絵は生き生きとす
         る。のびやかさは筆先の動きもそうだ。


          **************************


2/28wed
句を作る 春本格の 前にこそ
     (くをつくる はるほんかくの まえにこそ)
        ※春爛漫の時期は間近。しかし本格的な春は根暗の
         者には明るすぎて眩しいし、賑やかすぎる。微妙さ
         に欠ける、陰影がない。暖かくなったり、みぞれが降
         ったり・・・今のうちにこそ句をしたため、詩を作るの
         がいい。
         これ、みんなイメージだけの考え。現実にはなにも
         浮かばない。時期ではなくて要は感性や才能か。

2/27tue
日を映す 水面に気泡の ありて春
     (ひをうつす みなもにきほうの ありて春
        ※いささか古風な句ですが、うららかな午前の日が
         水面に揺れて、そこかしこに水底からの気泡が浮
         き出している様は「水温む」の季語そのものに感
         じました。

2/25sun
暗き日よ 野焼きの赤が 横に這い
     (くらきひよ のやきのあかが よこにはい)

2/22thu
春の駅 夢二の女と すれ違う
     (はるのえき ゆめじのおんなと すれちがう)
        ※夢二の女といってもいっぱいいるから、そのうち
         の誰?ということになるが、幸い彼の描く女性像
         はほぼ決まっている。そう、あのタイプの女性が
         不意にすれ違った。まあ、単にそういうこと。
         金沢、北九州・・・夢二の足跡にまつわる地方都
         市は多い。ここ千葉県では九十九里浜が有名。
         大正時代のように自由でおおらかな、美と情緒を
         楽しむような時代の再現はないだろうか? 夢二
         の再来もない。

2/17sat
春眠や 氷上の冴えは 夢ならず
     (しゅんみんや ひょうじょうのさえは ゆめならず)
        ※目覚めても羽生の演技が幻のように・・・。

春眠や 鴨は一羽も 身じろがず
     (しゅんみんや かもはいちわも みじろがず)

2/16fri
逢魔が時 冬の地震に 立ち竦む
     (おうまがとき ふゆのじしんに たちすくむ)
        ※「逢魔が時」とは夕方薄暗くなった時分をいうら
         しい。クルマでも歩く人でも識別しにくい時間帯
         で事故も多い。こんな夕暮れに地震があった。
         歩いていてわかったのだから相当ひどかったか
         と思ったが、家にいても感じた人は少なかった。
         「逢魔が時」は気味が悪い時間・・・。

2/12mon
カフェ用の 文庫本選ぶ 春の午後
     (かふぇようの ぶんこぼんえらぶ はるのごご)
        ※風は強いが、日差しは暖かい。古くていい喫茶店
         はあるが、なじみになったことはない。都内ではコ
         ダワリのチェーン店が随分増えたとも聞く。こちら
         ではすぐ近くにスターバックスがある。久しぶりに
         出かけよう。

2/11sun
春霧や 異国の街の 気配見せ
       (はるぎりや いこくのまちの けはいみせ)
        ※住んでいるのは丘に広がる、普通の団地だが、一
         番高い辺りに木更津総合高の高い塔が聳えている。
         春の朝霧が立ちこめて、遠くから団地を眺めると、
         自分の住む団地をちょっと見直す。丘の裾はすっ
         ぽり霧に囲まれ、その上に件の塔がいつになく気
         高く見える。ヨーロッパの街に見えないこともない。

2/9fri
梅咲けり されど剪りすぎを 後悔し
     (うめさけり されどきりすぎを こうかいし)
        ※豪雪の峠もようやく過ぎたか、一転春本番ほどの
         温度上昇が続くとか。家人はウォーキングの会で
         南房総市保田に河津桜(地元では「頼朝桜」)を見
         に行った。留守番役は庭の白梅を見ていた。
           梅いくつ数えるほどの寂しさよ

2/7wed
MRI 半年ごとの 命乞い
     (えむあーるあい はんとしごとの いのちごい)
        ※定期的な脳のMRI検査に行く。命乞いという意識
         はないが、動脈瘤の大きさに変化がなければ「向
         こう半年の命を猶予」ということになる。
         やや大げさだが、こんな変にシビアで厄介な状況
         に陥ったのは脳ドッグを受診したのがきっかけだ。

MRI ご託宣待つ 春の午後
     (えむあーるあい ごたくせんまつ はるのごご)
        ※午後になり患者の減った院内はぽかぽかと快適。
         うつらうつらしてたら順番が来た。なんとかセーフ。
         やれやれ・・・。

みぞれ降る バザーの女の あくびかな
     (みぞれふる ばざーのひとの あくびかな)
        ※年に一度の福祉会館でのバザー。生憎の空模様
         である。それをいいことに旺盛に買い占める人もい
         るが、張り切った店の人はやや拍子抜け。

2/1thu
春の窓 幻影前穂の 峰三つ
     (はるのまど げんえいまえほの みねみっつ)
        ※大寒らしい厳しい寒さが続く。寒気団が居座って
         いる。暖かい寝床からなかなか立ち上がれない。
         うとうとしていると、日が差し込む窓に穂高の岩
         稜が霞んでいる。



          **************************

1/31wed 2018
春めくや 子だくさんの 岸の家
     (はるめくや こだくさんの きしのいえ)
        ※いつもやや遠目に見ている川沿いの家。今朝はい
         つも以上の満艦飾。大量の洗濯物がやわらかい冬
         の日に揺れている。子だくさんに違いないと踏んで
         いる。

1/30tue 2018
鮒を嗅ぐ 寺の前行く 釣り師かな
     (ふなをかぐ てらのまえいく つりしかな)
        ※道具を抱えた釣り師が川辺に歩いていく。ベテラ
         ンのヘラブナ釣り師は川の善し悪し、釣り場の善
         し悪しを臭いで嗅ぎ分けるという。 本当かな?と
         思うが、分かるような気もする。既に備え付けの
         専用の釣り台にどっかと腰を下ろし、寒風をもの
         ともせず、じっと浮きを見つめる。

1/17wed
蝋梅や 思い出もまた かすかなり
     (ろうばいや おもいでもまた かすかなり)
        ※今朝は蝋梅が里山への道沿いに並んでいるところ
         まで足を伸ばした。ここのは色も匂いも地味なほう
         だが、それがなんとも興趣をそそる。一時のぞいた
         青空を背景にした花の見事さは一流。遠い思い出
         がかすかに浮かんでくる。

1/7sun 2018
七草の 欠けるを数え 粥啜る
     (ななくさの かけるをかぞえ かゆすする)
        ※強風で体感温度はきびしい。冷えた身体には足り
         ない粥でもすごくありがたい。

1/3wed 2018
すり鉢や 三日とろろの 朝仕事
     (すりばちや みっかとろろの あさしごと)
        ※東北(の一部)では正月三日の朝に「とろろ飯」
         を食べる。とろろ芋をその朝にすり鉢に摺り下ろ
         し、更にすりこぎ棒で延々とすり込む。大家族で
         全て大量だったから、この仕事の長かったことが
         忘れられない。「まだ?」「だめッ、まだまだ」
         これが終わらないと朝ごはんにありつけない。

         円谷幸吉は「父上様、母上様、三日とろろ美味し
         うございました。・・・幸吉はもう走れません。
         幸吉は父母上様の側で暮しとうございました」と
         遺書に記した。

1/1mon 2018
青ペンで 去年の賀状を 恩師褒め
     (あおぺんで こぞのがじょうを おんしほめ)
        ※一年前に賀状に刷ったスケッチの絵を褒められた。
         学校時代に褒められれば、また別な道があったか
         なァ? 70歳過ぎてもうれしい。

1/1mon 2018
戸のすきに 電車の音と 初明かり
    (とのすきに でんしゃのおとと はつあかり)
        ※「戸の隙を洩れ入る光・・・」、中原中也の「朝の
         歌」冒頭の一節。新年早々からパクリ?実はパ
         クりたくてウズウズしていた。こいつは春から縁
         起が良いようで・・・。

1/1mon 2018
遊ぶ子の 路地に声聞く 子規の春
     (あそぶこの ろじにこえきく しきのはる)
        ※昨年正岡子規の明治34年の歳旦帳が発見さ
         れた。亡くなる前の年のものである。中に未発
         表の5句があったという。その中の一句、
           『暗きより元朝を騒く子供哉』
         これから子規の正月を思い描いた。
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