ダクタク句集2021年(令和3年)下期 自選集 [自選集2021]
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12/31fri
コロナ禍や なれど住処に 蜜柑熟れ
(ころなかや なれどすみかに みかんうれ)
冬型の 高気圧良し ガラス拭き
(ふゆがたの こうきあつよし がらすふき)
ご無沙汰しご無沙汰されて除夜の鐘
(ごぶさたしごぶさたされてじょやのかね)
※大晦日の今日、いつもより多めに飲んで、早
めに床に就くのが恒例。「いく年くる年」は
朝ゆっくり見る。
12/30thu
似せ絵しか 描けぬ哀しさ 年の暮れ
(にせえしか かけぬかなしさ としのくれ)
※水彩画、「描きたいのを好きに描けば良い」
と思うのだが、これがなかなか・・・。
水滸伝 年末までに 終わらざる
(すいこでん ねんまつまでに おわらざる)
12/29wed
誕生日 大根焚きに 揚げ入れて
(たんじょうび だいこんだきに あげいれて)
抱負をという声なくて誕生日
(ほうふをというこえなくてたんじょうび)
※使い慣れていないスマホで、食事に訪れたフ
ァミレスのアプリをインストールしたら、な
んと20%割引の上に誕生祝いとかで大きめの
ケーキまでプレゼントされてびっくり!
12/28tue
老庭師 鋏み風に乗る 年の暮れ
(ろうにわし はさみかぜにのる としのくれ)
極月や 垣の揃いに こだわりて
(ごくげつや かきのそろいに こだわりて)
※元プロの義兄が手入れしてくれたものだが、
代わりの老庭師の腕はまだつたない。でも鋏
の音だけはいいようだ。刃物の世話が上手な
のかも。
12/27mon
年内の 仕事と言われ 蜜柑もぐ
(ねんないの しごといわれ みかんもぐ)
※先日述べた蝉の抜け殻が落ちないようにそっ
と鋏を入れる。去年は裏作の年でほんの少し
しか実をつけなかったが、今年は大丈夫!
背の高さほどの、一抱えほどの木一本なのだ
が、ざっと120個くらいかなと皮算用をし
ている。味もいい、濃厚さもある。
12/25sat
金星の 西に隠れて 聖夜かな
(きんせいの にしにかくれて せいやかな)
おとなしい 番組見たり 聖夜なり
(おとなしい ばんぐみみたり せいやなり)
平らかに 聖地の星を 調べたり
(たいらかに せいちのほしを しらべたり)
かしこみつ 上皇様の お歳聞く
(かしこみつ じょうこうさまの おとしきく)
※作夜はクリスマスイヴ。上皇様とは誕生日が
12年と5日違い。干支も同じ。
12/24fri
空蝉や ミカンの枝で 年を越す
(うつせみや みかんのえだで としをこす)
※実写生でもこれはいけないと言われそう。季
語が三つも重なっている。空蝉、ミカン、年
越し。ミカンをもいで試食した時に発見、こ
んなのもいいじゃないかな。
12/23thu
句を添えて 師走の動画を 温めり
(くをそえて しわすのどうがを あたためり)
※今春スマホユーザーとなったのを機に、その
機動性、カメラの高機能を活かして、動画を
アップすることを思いついた。既に30本近
くをアップロード済だ。
しかし動画といっても静止画を繋いで季節の
5句を盛り合わせ、そこに好きな音楽をBGM
とするものだ。1本が3分弱で飾り気のない
動画である。当然見てくれる人は殆ど0。
これが本人には意外と新鮮な「句帳」となる
ことに気がついた。句の羅列より思い出深い、
面白い。メインは句なのか、写真なのか、音
楽なのかすら・・その時々。これが無料とは。
12/23wed
朝コール 声も馥郁 冬至たり
(あさこーる こえもふくいく とうじたり)
柚子なきを 謝して冬至の ジャスミン湯
(ゆずなきを しゃしてとうじの じゃすみんゆ)
冬至日や 光あるうち 長湯かな
(とうじびや ひかりあるうち ながゆかな)
※今日まで太平洋側は比較的暖か。穏やかな冬
至の晴れ間にホッとする。明日からは一段と
寒さが増すとか。今日は頑張って、句の動画
を5個 YouTubeにアップした。
12/21tue
容保は 宸翰胸に 冬すみれ
(かたもりは しんかんむねに ふゆすみれ)
※大通りの歴史が少しずつ見直されている。慶
喜の幕末への思い、容保の誠意吐露、共に朝
敵とされたことへの反発等々。一朝に全てが
きれいに繋がるものではないが・・・。
12/20mon
路地を来て 神田駅前 冬ぬくし
(ろじをきて かんだえきまえ ふゆぬくし)
※久しぶりに神田小川町近辺に行った。帰途は
知ったかぶりをして路地をめぐり遠回りの神
田駅に出ようとした。道路は最盛期?のよう
には導いてくれなかった。スジ違いを何度か
犯した。されど結果は勝手知ったる神田駅界
隈。この辺はまだ大丈夫。
12/19sun
そこらじゅう痒いが目良し耳も良し
(そこらじゅうかゆいがめよしみみもよし)
寄せ鍋も辛くせよ赤くせよという
(よせなべもからくせよあかくせよという)
コロナ禍も上司落研湯気揺れる
(ころなかもじょうしおちけんゆげゆれる)
※年末清掃の束の間に川柳3題
12/18sat
冬の雲日没早くならざる日
(ふゆのくもにちぼつはやくならざるひ)
※日中の時間が一番短いのは冬至の日だが、日
の入り、日没が早いのは冬至以前の12月上
旬、その分日の出が一番遅いのは冬至後の12
月下旬だとか。少し賢くなった。
12/17fri
山茶花や 公家の住まいの 石の塚
(さざんかや くげのすまいの いしのつか)
※かなり以前の冬の日に或る公家の住居跡を訪
ねたことがあった。京都の寒さを身体で思い
知った一日だった。
12/16thu
目うつろに 呆けし役を 初時雨
(めうつろに ほうけしやくを はつしぐれ)
※俳優山崎努が認知症の老人を演じる映画を見
た。目の表情が真に迫っていた。
12/15wed
寒き日や 喪中の葉書 集めけり
(さむきひや もちゅうのはがき あつめけり)
念入りに 少なき賀状 炬燵かな
(ねんいりに すくなきがじょう こたつかな)
※賀状をゆったり書くという経験はない。枚数
をこなすためについ生産的な方法をその都度
考えるからだ。しかし今年は違った。大幅に
枚数を減らし、本来の?書き方に戻った。あ
せってもいない。
12/14tue
義士の日や 堀部弥兵衛の 齢となり
(ぎしのひや ほりべやへえの としとなり)
※冷たい午前、雪が落ちてきてもおかしくない。
安兵衛の義父で、義士の最高齢。自分の年齢
を考えるのに変に現実感がある。
12/13mon
白菜や 妻息災に ざくと割く
(はくさいや つまそくさいに ざくとさく)
※この音、力強いザクッと・・・元気印。
新海苔や 百年の名産 送りたり
(しんのりや ひゃくねんのめいさん おくりたり)
12/12sun
しつこさで 癌に克つさと 冬帽子
(しつこさで がんにかつさと ふゆぼうし)
※再発した肺ガンに化学療法を続けている床屋
はげっそり痩せたが、禿げあがった頭と目力
は精悍でなお意気軒高だ。
12/11sat
身につかず終いの楽器大掃除
(みにつかずじまいのがっきおおそうじ)
※今日明日の気温はぐっと高くなるとあって、
大掃除その1と指定され、召集を受ける。
12/10fri
花札を二人向かいて冬日向
(はなふだをふたりむかいてふゆひなた)
背伸びして取らん梢のレジ袋
(せのびしてとらんこずえのれじぶくろ)
※今朝の気温は厳しいが、十分な日差しが救っ
てくれる。
12/9thu
開戦の日 熱狂せしか 吾もまた
(かいせんのひ ねっきょうせしか われもまた)
※対米開戦80周年の今年は当時の状況発掘のニ
ュースや資料が多い。対中戦争の泥沼化、米
国中心の対日圧迫政策、軍部の好戦姿勢と国
民の支持、開戦に至った要因は様々なウェイ
ト付けが可能だ。
12/8wed
冬ごもり ペトルーシュカを 聴けと友
(ふゆごもり ぺとるーしゅかを きけととも)
ネットに出 たちまち主役 金目鯛
(ねっとにで たちまちしゅやく きんめだい)
※北海道に住んでいた頃、囲炉裏焼き屋で金目
鯛やホッケは馴染みの魚だった。ところが金
目鯛はその後出世?し、内地(北海道では本
州をこう呼んでいた)で高値となった。今や
ネットでももてはやされているとか。
当時から小生はホッケにより親近感を覚えた。
うまいし塩の香りがする。しかし今や居酒屋
では結構高い。ホッケ、お前もかッ。
12/6mon
極月も あかつき闇を 重宝し
(ごくげつも あかつきやみを ちょうほうし)
同じこと 言う人の来る 落ち葉焚き
(おなじこと いうひとのくる おちばたき)
※加齢のせいばかりではなく親からの遺伝もあ
って深夜から未明の時間に目覚め、そのまま
長い時間を過ごすことが多い。あせることも
あるが読書時々うつらうつら・・・楽しめる
ようになった。冬は寝巻の下に長袖のシャツ
を着ていても、寝床から腕を出すと寒いので、
作業用の手さし(袖カバー)を用意している。
厳寒期には指先出し手袋も。
12/4sat
師走来る 時の会釈は 少しだけ
(しわすくる ときのえしゃくは すこしだけ)
垣根刈る 冬支度かと 言われたき
(かきねかる ふゆじたくかと いわれたき)
※早いものだ、と常套句を言わねばならない。
遠慮会釈のない時の流れ。流れに沿って、昔
流の冬支度を。
12/2thu
舳倉島 渡りの鳥の 五万とぞ
(へぐらじま わたりのとりの ごまんとぞ)
※快晴、晩秋の能登舳倉島の様子を見た。テレ
ビで。渡りの鳥のまたとない中継地だ。夥し
い種類と数。多くはシベリアからで冬を日本
以南の地で過ごすためにきている。すごい、
生命力に溢れた島。
12/1wed
勲一等の 柿は一葉に 師走来る
(くんいっとうの かきはひとはに しわすくる)
※今年の柿はたった一本ながら、たわわに甘い
実をつけ、シニアに毎日の楽しみをくれた。
勲一等功一級ものだ。
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11/30tue
秋野菜 画材として後 分けたまふ
(あきやさい がざいとしてのち わけたもう)
秋の暮 一幕ものの 場を数ふ
(あきのくれ いちまくものの ばをかぞふ)
※我が創作にかかる芝居、長かったなァと思っ
たが、アレッ・・・一幕だったか? 今から
考えると色んな幕があって良かった、そうす
るつもりだったのに。残念。まあ場数は多い
し、今も続いているね。
しかしぃ・・ちょっと待ってェな。ちょっと
書き換えるやさかい。エエェ、出来ひんて?
そ、そんな後生な・・・。
小春日の 人居ぬ園や 獏眠る
(こはるびの ひといぬえんや ばくねむる)
11/28sun
小春日や なに食うたとから 長電話
(こはるびや なにくうたとから ながでんわ)
※スマホで通話はスピーカーで。そして胸のポ
ケットに突っ込んだまま話をする。両手フリ
ーで。長引く友人とのスタイルがこれに落ち
着き、スマホって便利だなァと感心。大いに
笑われた。女の長電話を実体験中。
11/26fri
足腰の かすかに重く 石蕗の花
(あしこしの かすかにおもく つわのはな)
※金木犀の生垣の剪定をやった。2日がかり。
11/25thu
母くれし やなぎ行李よ 冬支度
(ははくれし やなぎごうりよ ふゆじたく)
友の笑み 蝶々とともに 冬茜
(とものえみ ちょうちょとともに ふゆあかね)
※後輩の蝶キチの撮った写真が来年のカレンダ
ーに採用されたと、それを贈ってくれた。立
派な全国版で、彼の渾身の写真12枚が各月
を飾っている。すごい出来だ。嬉しい。
11/23tue
マップ上 動線たどる 一葉忌
(まっぷじょう どうせんたどる いちようき)
※一葉人気は根強い。都心の3か所の旧居跡を
訪ねる人は引きも切らず、ネットの「一葉暮
らしの研究」もいまだに旺盛のよう。
・・・アソコへはここを通ったとか、品を仕
入れにアノ道を行った、この道は何歳の時誰
を訪ねに通ったとかである。都心散歩の多く
のファンに支持されているのではと思う。
11/22mon
デジタルや 愁思の顔も 修正し
(でじたるや しゅうしのかおも しゅうせいし)
※顔の整形、といっても画像上のことだが。思
う通りの方向に自分の画像を修正してくれる。
以前からこの手のソフトはあったが、空前の
進歩をしているというのだ。
空前も 過ぎたらてんで 他人の顔
最近、こういう小手先の開発ばかりだ。
11/21sun
起きるには まだたっぷりと 酉の市
(おきるには まだたっぷりと とりのいち)
大いなる がま口腰に 酉の市
(おおいなる がまぐちこしに とりのいち)
冷え込むや 帽子深めに お酉様
(ひえこむや ぼうしふかめに おとりさま)
※久しぶりに熊手の店、露店の行列。ただお参
りの客は寂しくて涙が出るほどの閑古鳥。威
勢のいい手拍子もそこかしこに少しだけ。が
ま口も空いたままか。今年は二の酉どまり。
11/20sat
秋の暮れ 種の袋の 字のうすし
(あきのくれ たねのふくろの じのうすし)
※秋植え用に大切に保存しておいた種子がなん
なのかわからない? 袋の上の鉛筆のメモが
薄れている。そんなの知るか!! 種を見て
もわからないのか?
11/19fri
秋の暮 パテシエ修行の 娘が嫁ぐ
(あきのくれ ぱてしえしゅぎょうの こがとつぐ)
※ケーキ店開業の夢は諦めて結婚するとか。小
さいころから知っている、甥の娘だ。まあそ
れもいいだろう、幸せを祈る。
11/18thu
七五三 子のつく名前 参り札
(しちごさん このつくなまえ まいりふだ)
病葉も 岩風呂に入る 旅の宿
(わくらばも いわぶろにいる たびのやど)
※PCでダウンロードした曲を整理してはせっせ
とスマホに移し、オフで聴ける手筈を整えて
いる。へへ、音の悪いのはリジェクトする。
YouTubeは駄目。
11/17wed
時雨忌や 二の橋を越え 深川へ
(しぐれきや にのはしをこえ ふかがわへ)
※時雨忌は芭蕉の忌日、陰暦10月12日。ゆ
かりの深川へはいつも本所側から歩いて、門
仲をゴールにする。
本所二の橋のたもとには軍鶏なべや「五鉄」
の跡地がある。鬼平の行きつけ。
11/16tue
さざんかや 昵懇の犬 動かざる
(さざんかや じっこんのいぬ うごかざる)
※若い秋田犬が道路のあっちで腹ばいになって
動かないでいる。我が家の犬に興味あっての
ことではない。実はお目当ては小生である。
11/15mon
小春日は畑でワイヤレスイヤホンで
(こはるびははたでわいやれすいやほんで)
秋夕焼 電車の音で 腰伸ばす
(あきゆやけ でんしゃのおとで こしのばす)
幾百の 玉葱植えて 腰立たず
(いくひゃくの たまねぎうえて こしたたず)
※3列の長い畝に黒マルチを張り、300本弱
の玉葱の苗を飽きずに植える。しかし来年の
春までは手間いらず。5月前半収穫の早生。
11/14sun
人の顔したる源氏の人逝ける
(ひとのかおしたるげんじのひとゆける)
※瀬戸内寂聴逝去。若いころは一般的な世評に
乗って、おやおやという思いで眺めていたが、
自分がそこから解き放たれると彼女の顔が生
き生きと穏やかに見え始めた。ますますそう
なった。合掌。
11/12fri
どっしりと 家伝の砧 壁にあり
(どっしりと かでんのきぬた かべにあり)
※郊外から移築した豪農の民家が公園にある。
様々な農具、民具を入れ替わりで展示してい
た。機織りの仕上げに反物の布打ちに使った
とか。生乾きの洗濯物をたたいて柔らかくし
たり皺をのばしたりもした。昔村落の家々で
砧の音がした・・・有名なその光景とは、な
にをしていたんだろう? 聞きそびれた。
11/10wed
男手が スマホを見つつ 菊膾
(おとこでが すまほをみつつ きくなます)
※季節感はあっても好きなものではない。何度
か口にする機会はあったが、ちょっと舌先で
感じてすぐに飲み込む類のものだった。せっ
かくの到来物の食用菊、少し前進したい。年
齢並みに。
11/9tue
歩きけり 新酒試飲は 障子部屋
(あるきけり しんしゅしいんは しょうじべや)
※今は近くに醸造会社はない。昔々の話。
望みしも 秋刀魚一向に 気配なし
(のぞみしも さんまいっこうに けはいなし)
11/8mon
海舟の 呼吸が聞こえる 坂の秋
(かいしゅうの いきがきこえる さかのあき)
※勝海舟は赤坂の地を愛し、都合3度も場所を
変えて住まいした。幕末は氷川下。その場所
はマンションの林の中に埋没しているが、近
くの氷川神社や氷川坂には往時の息吹が残っ
ているように感じた。交通の激しい大通りの
間にあって、不思議な静寂がある。
11/7sun
墓売れて にわか夜なべの 石工かな
(はかうれて にわかよなべの いしくかな)
吾亦紅 午前いっぱい 身じろがず
(われもこう ごぜんいっぱい みじろがず)
※新しいクルマの試乗に行った。今のクルマは
中古だから、二つのクルマの間には10年近
くの隔たりがある。話には聞いていたが、IT
絡みの装備は目を見張るほど。
しかし「安全のために必要なもの」と運転手
サポートという名の「大きなお世話」とが混
然としている。
11/6sat
ゴミ寄せに 鴉が消えて 秋の暮
(ごみよせに からすがきえて あきのくれ)
秋深しジュリーのサンフランシスコ
(あきふかしじゅりーのさんふらんしすこ)
※暦には明日7日は立冬。いくら寒いとは言え
今日明日が冬であるとは肌に合わない。年々
のことだ。新旧暦のずれにあるのだから仕方
がない。しかし自分の句作とかには実感を優
先していきたい。まだ当分は秋の暮だ。
ジュリー・ロンドンの低い声が最も似合う季
節。
11/5fri
日に一つ もいで柿食う 余生良し
(ひにひとつ もいでかきくう よせいよし)
※胃のバリウム検査に行ってきた。1時間ごと
の予約制に改まって待ち時間が短くなった。
この街での検査も25回以上を数える。
11/4thu
文化の日 佳きことありて 嗽二度
(ぶんかのひ よきことありて うがいにど)
文化の日 洗濯しつつ 長電話
(ぶんかのひ せんたくしつつ ながでんわ)
※文化の日とて関係の催しはなにもない。展示
だけの文化祭も繰り上げで既に終わっている。
友人の洗濯時の無聊に付き合う。
11/3wed
背の曲がり 正すこと増え 鱗雲
(せのまがり ただすことふえ うろこぐも)
立冬は とうに来るらし 秋霞
(りっとうは とうにきたるらし あきがすみ)
先生の 甲高い声 秋の午後
(せんせいの かんだかいこえ あきのごご)
※もう晩秋である。様々な老化やその兆候を感
じ始めて久しくなるが、これも秋そのもの。
人生の秋の風情。
11/2tue
山中の 食堂ひとり とろろ汁
(さんちゅうの しょくどうひとり とろろじる)
※房総半島の紅葉の見頃は11月下旬から12
月上旬。年によって短く、気がついた頃には
盛りが終わっていたということも。
今の山のドライブコースは人もクルマもとこ
とんまばら。
11/1mon
故郷の 歳時記重し 秋燈下
(ふるさとの さいじきおもし しゅうとうか)
※昭和55年発行の「会津歳時記」がある。横
になって、うとうとしながら長時間見入るの
が至福の時なのだが、大部だけに仰向けのま
までは5分と持たない。
歳時記といっても当時の俳人仲間が集まり、
地域の俳人と先輩の句を発掘して郷土の匂い
がする俳句集を編んでみよう、ということに
なったらしい。どんな歳時記でもその中に自
分の句がのる、残るというのは俳句人の夢。
あれもこれと話と努力は大きくなり、出来上
がりは重くなった。装丁も立派である。
後にも先にもこれだけの目論見はこれ一回だ
け。匂い豊かで、胸に重くなるのを今日も味
わうことにしよう。
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10/31sun
雁渡し 松籟となる 選挙の日
(かりわたし しょうらいとなる せんきょのひ)
秋燈や 小さき埴輪の 目の丸く
(しゅうとうや ちさきはにわの めのまるく)
※埴輪が机上の電気スタンドに照らされて、今
までにない影が出来、なにやら意味ありげに
見える。何か語りかけるようにも感じられる。
新鮮。今日は玉ねぎの畝作りに駆り出された。
夕方散歩と投票に。
10/30sat
秋祭り かつて担ぎし 大神輿
(あきまつり かつてかつぎし おおみこし)
祭礼の ポスター古き 老舗かな
(さいれいの ぽすたーふるき しにせかな)
※盛んだった秋の祭礼も、今は神社に氏子の主
な者が集まり、祝詞を上げお神酒をいただく
だけとか。コロナ以前からそうだったと主は
話す。
10/28thu
山法師の 実に触れてみる 通学路
(やまぼしの みにふれてみる つうがくろ)
甘柿は 送るべしとて 甥の家
(あまがきは おくるべしとて おいのいえ)
※木に残っている柿の実はもう僅か。甘柿大好
きと言ってくれる家に少し送った。取ってま
でして食べないという家が多い。木守り柿と
かのつもりもないみたい。
10/27wed
栗ご飯 まだ長月の 寒き日に
(くりごはん まだながつきの さむきひに)
※気温はひと月以上も先を行っている。旧暦で
はまだ9月長月だ。しかし寒いおかげで、豚
汁と栗おこわという好みの食卓となった。
10/26tue
ホトトギス清貧の否応なしと
(ほととぎすせいひんのいやおうなしと)
※清貧を旨とする高潔な人と少なくとも外見
は同じになった。老い、億劫、金なしに加
え、with コロナで否応なしの清貧である。
中身もそうありたいと願っているが・・・。
10/25mon
二階まで 朝顔の紺 今日は褒め
(にかいまで あさがおのこん きょうはほめ)
※10月下旬だというのにこの家の朝顔は盛
んだ。一階の壁は葉と蔓が蔽いつくし、紫
がかった紺色の花が二階の板壁と窓辺を半
ば隠している。寒い朝、今朝は季節感の異
常さはさておき、清々しさを感じた。
10/24sun
矯められし もみじ形を 取り戻す
(ためられし もみじかたちを とりもどす)
※長年桃の木いや桃の実優先で、枝が重なって
下部にあるもみじがばっさり伐られ、その後
も伸びる度に切られてきた。やっとこの秋、
桃の大枝を切り、もみじの雪辱を果たしてや
った。家人にはこっぴどく叱られたが。
10/23sat
菊坂の 秋簾ふと 見上げおり
(きくざかの あきすだれふと みあげおり)
※菊坂という響きは昭和、それ以前の明治の暮
らしを彷彿とさせた。源は一葉。谷地ともい
える一帯の佇まいは変わりつつも、訪れる人
々は引きも切らない。傍若無人の観光客は住
民の顰蹙を買っている。今も。小生も観光客。
10/21thu
早く去れ 雉狙わんと 威し銃
(はやくされ きじねらわんと おどしじゅう)
※「有害鳥獣の銃による駆除を行います」朝早
く市のスピーカーから流れる。被害のひどさ
は具体的に知っているけれども、雉もなの?
と思った。国鳥ではなかったか。
10/20wed
鳥渡る 細長き空を まっすぐに
(とりかえる ほそながきそらを まっすぐに)
美術展 上野の山で 脚さすり
(びじゅつてん うえののやまで あしさすり)
※久しぶりの東京。狭い通りの両側にマンショ
ンなど高いビルが立ち、空を占拠している。
視界に細長の四角い空がある。以前に親しん
だ通りほど、その空の変貌ぶりに驚く。血中
酸素濃度が低くなる。息苦しい。
10/19tue
降り立って 息白き夜は 栗名月
(おりたって いきしろきよは くりめいげつ)
※旧暦9月13日のこの夜の月(十三夜)を栗
名月というらしい。出かけた帰りの電車内か
らは雲が多くとても駄目だなと諦めていたが、
到着した駅頭からはなんときれいに見えた。
10/17sun
銀杏の やしろ前より 遠くなり
(ぎんなんの やしろまえより とおくなり)
※朝の散歩から足を延ばして「銀杏の社」に向
かう。夢にお告げがあったから。それにもか
かわらず時期はちょっと早かった。小さ目の
が袋一杯ほど。
事件ありて 自然薯掘りを とどまりぬ
(じけんありて じねんじょほりを とどまりぬ)
10/16sat
ヒヨドリと 柿を争う 朝の陣
(ひよどりと かきをあらそう あさのじん)
新語見て 却下却下よ 秋の風
(しんごみて きゃっかきゃっかよ あきのかぜ)
※否応なしに飛び込んでくる新語。仮の略語と
しか言いようがない。くだらないのが多い。
しかし言葉とはそれぞれの世代がその時代に
使い残すものだから拒絶しても始まらない。
自浄能力を信じるしかない。
10/15fri
夕闇や サツマイモ掘る 列残す
(ゆうやみや さつまいもほる れつのこす)
※「なーに今日中に終わるさ」と始めたが、半
分近くは明日以降に。概ねいい出来だが、所
々にネキリムシが試食した痕がある。良い色
の外皮が台無しだ。「だから急がないと」と。
10/13wed
化粧瓶なる濁酒を舐めてみる
(けしょうびんなるどぶろくをなめてみる)
※完全な禁煙をして満一カ月の昨日。ご褒美と
いうわけではないが、ちょっと前にお土産に
もらったドブロクを開けてみた。日本酒の原
酒に近い味? 時間がたっただけ変な味。
10/12tue
月見てる 帰宅困難の 客となり
(つきみてる きたくこんなんの きゃくとなり)
※仲間の中に先日夜の地震のために、ホテル泊
りをしたヤツがいた。羨ましいとか馬鹿とか
褒貶半ばの感想が飛び交っている。
10/11mon
ドビュッシーの 曲より速く 妻歩き
(どびゅっしーの きょくよりはやく つまあるき)
小三治の 音を落として 聞いた秋
(こさんじの おとをおとして きいたあき)
※前の句で多くの人が「月の光」を思い浮かべ
るのでは。月は名月、秋の季語。ゆっくり歩
きたいものだねェ・・・といいたいのかよ。
べらぼーめ~。と小三治が言う。バイク、ク
ラシック、音キチ、俳句・・・凝り性が好ま
しかった。
10/10sun
金木犀 欠伸うつしたき 人のあり
(きんもくせい あくびうつしたき ひとのあり)
摘まむ実の次は柿色を見極めつ
(つまむみのつぎはかき いろをみきわめつ)
※雲の低い日、金木犀の香りが強い。朝散歩帰
りに摘まむ庭の果物がぶどうから甘柿に変わ
った。ぶどうの前は桃。我が家の果物だから
おいしいが、いずれも極めて地味なナリであ
る。それでも豊饒を感じている。
10/8fri
房州の団扇 手に良し 秋団扇
(ぼうしゅうの うちわてによし あきうちわ)
※少し蒸し暑い日が続いた。しまい遅れの団扇
が夏の名残り。
10/7thu
秋の日の翳りてモネの日傘かな
(あきのひのかげりてもねのひがさかな)
※肺炎球菌ワクチンの5年前の接種証明を探し
ているが、当然見当たらない。1回目は定期
接種とかで自治体の一部補助があったが、2
回目は任意接種で9千円前後の自己負担とな
る。基礎疾患(習慣病など)がある者は特に
1回目の接種を呼びかけているが、効能5年
でそれ以降のための接種については呼びかけ
どころかコメントもしていない。どの自治体
も概ね然り。無責任とイワザルベカラズ。
10/6wed
紫煙消え 句読点なき 暮らし秋
(しえんきえ くとうてんなき くらしあき)
※禁煙してもうすぐ一カ月。今が踏ん張りどこ
ろだが、なんともメリハリのない暮らしを感
じてしまう。そう感じること自体情けない話
なのだが。
10/5tue
新米の 旬の野菜の ごとくして
(しんまいの しゅんのやさいの ごとくして)
※当地の稲刈りは早いから新米はとっくに出回
っているとか。昨夜当家の食卓にも。
味はよくわからないが、風味・香りは新鮮で
若々しくていい。少し固めのせいもあるかな。
ん、だんだん味も良くなってきた。
10/4mon
過ぎ行くは 渋皮を剥く 背の時間
(すぎゆくは しぶかわをむく せのじかん)
※散歩道を迂回して野山らしき方に向かう。道
沿いに栗の木があり、夕暮れに落ちた実を拾
っても大丈夫みたい。今年は幸運な日に20
個以上をゲット。中学生の通り道でもあるの
で、これ以上はムリ。結局は買って来て栗飯、
甘露煮と相成る。例年のパターン。
10/3sun
風なくて 雲ありてこそ 蕎麦の花
(かぜなくて くもありてこそ そばのはな)
秋時雨 サ行かすかに 朝の床
(あきしぐれ さぎょうかすかに あさのとこ)
※秋のヤセ蚊に散々やられ、真っ暗なうちに目
が覚めてしまう。無駄な思考はせず、ゆっく
り、あせらず、長い時間を過ごす。これがな
かなか難しい。
10/2sat
秋風や 芭蕉が性を 読みしかな
(あきかぜや ばしょうがさがを よみしかな)
※芭蕉が多方面での人脈と才能を持っていたこ
とは既に広く言われている。曰く、山師、ス
パイ、脱藩コーディネーターとか・・・。
しかし、これらの説は芭蕉の俳句が達した高
みを損なう何物でもない。むしろ、到達の要
因となるものだ。こういう評も多い。賛成。
10/1fri
秋の朝 布団変えての 夢路かな
(あきのあさ ふとんかえての ゆめじかな)
※もう一段厚い掛け布団に替えて、台風接近の
朝は意外と健やかに明けた。予想より遅いせ
いで関東南岸最接近は午後になってからだ。
一昨年来のトラウマはあるが、今回は当地
「進路の西側」に当たる。だから比較的平静。
(伊豆諸島の人々には申し訳ないが)
**********
9/30thu
残り出でし 隠元を食う 余生かな
(のこりいでし いんげんをくう よせいかな)
秋が来て 半藤が昭和を 思いけり
(あきがきて はんどうがしょうわを おもいけり)
※半藤一利の著作をまとめて読んだ。おまけに
今回は細君の末利子のエッセイも。昭和と較
べると、今日は甚だグローバルだけれど変動
要因、不安定要素が何倍にも増えた。
好みで二択ならまだいいのだが・・・。
9/29wed
身構える 台風のコース じわりまた
(みがまえる たいふうのこーす じわりまた)
※一昨年の房総半島台風を思わせる台風16号
の不気味な動き。あの時の暴風のすさまじさ
はそれまでの経験の最高値を遥かに超えてい
た。以来トラウマとなって残っている。
9/28tue
総裁選 まともはおらず 票もなし
(そうさいせん まともはおらず ひょうもなし)
画材にと 桜紅葉の シミが好き
(がざいにと さくらもみじの しみがすき)
※候補者はかなりの一長一短、つまり一人トッ
プの器ではないということ。一方朝の散歩道
で拾ったサクラの落ち葉は「お、これがいい、
やや、これも捨てがたい・・・」。
9/27mon
手の震え 医師はムリだった 泡立ち草
(てのふるえ いしはむりだった あわだちそう)
※70歳台でバリバリ現役の医師はごまんとい
る。手術も在宅医療の担い手も・・・少しは
社会に役立ちたいと思うが。
9/26sun
検診の 人まばらにて 秋の鬱
(けんしんの ひとまばらにて あきのうつ)
※コロナ禍の影響でガン検診の受診者が少ない
とか。昨日行ったところが、例年の半分以下
でスイスイだった。ガンの早期発見がそれだ
け困難になり、国民の健康も損なわれ、医療
費負担も嵩むか。必死に呼びかけてはいるが。
9/24fri
吾亦紅 年齢のみ母に 近づいて
(われもこう としのみははに ちかづいて)
※お彼岸のお中日に犬(外飼い)のシャンプー
をした。最近やけにかゆがるので、いい方の
シャンプーで丹念に。薬効はどうか? 少し
はいいみたい。感謝されている。
9/23thu
天高し 分厚き本の 進まざる
(てんたかし ぶあつきほんの すすまざる)
※図書館からのメールで本屋大賞受賞作の順番
が来たことを知る。予約してから半年近くだ。
難渋している読書中の本の次はこれにしよう。
9/22wed
早きこと 今年いずこも 曼殊沙華
(はやきこと ことしいずこも まんじゅしゃげ)
※庭の白い曼殊沙華も久留里線沿いの真っ赤な
曼殊沙華も見事に咲き揃っている。例年はお
彼岸中日にもやや遅れ気味だったのに。
9/21tue
月明かり 術後の姉の いびきかな
(つきあかり じゅつごのあねの いびきかな)
※コロナ禍下での入院と手術、経過は順調だ。
手術直後に限って5分ほどの対面は許された
が、その後の面会はダメ。届け物もナースセ
ンター経由。患者のわがままも抑止される。
ただし、明月は欲しいまま。
名月や 禁煙の唾 飲みこめり
(めいげつや きんえんのつば のみこめり)
9/20mon
電話口 朝飯中だと 敬老日
(でんわぐち あさめしちゅうだと けいろうび)
咽喉が良し 高音も出る 敬老日
(のどがよし こうおんもでる けいろうび)
※実は9月12日を期して禁煙をしている。過
去のようではなく、本当の禁煙だ。完璧な一
週間が経過した。爽快、ではある。
9/19sun
糸瓜忌や くせ爪すこし 治りけり
(へちまきや くせづめすこし なおりけり)
野球忌や 大谷遥かな 峰に立つ
(やきゅうきや おおたにはるかな みねにたつ)
※9月19日は子規忌。おや、子規忌かい、相
変わらず一年は早いなあ、と思う日。子規に
入れ込んでいた頃は少し前から騒いでいた。
9/17fri
秋の猫 リボンなどして 無視しおり
(あきのねこ りぼんなどして むししおり)
※岩合某氏の猫番組。猫の住む歴史、環境など
によって猫の扱い、扱われ方、そして猫の行
動に様々な違いが生じるものだとわかる。
知らない人には愛想のカケラも見せない猫は?
9/16thu
高安の まちまちな房 ぶどう描く
(たかやすの まちまちなふさ ぶどうかく)
※教室終了後の画材分捕りは熾烈を極める。
シャインマスカットの数粒が、昔ながらの小
粒な甲州ブドウ一房より人気を集める。人気
の甲斐路のピンチヒッターだったとはいえ、
ひどい仕打ちだ。甘いのに・・・・。
9/15wed
露草や 嚥下体操の 音きこゆ
(つゆくさや えんげたいそうの おときこゆ)
※開け放ったデイの窓から、大きな声が聞こえ
る。繰り返しの発声のトレーニングが咽喉元
の働きを強くするとか。
9/13mon
床屋言う かつて健脚 キノコ狩り
(とこやいう かつてけんきゃく きのこがり)
肺ガンの シロ点々と 秋澄めり
(はいがんの しろてんてんと あきすめり)
※行きつけの床屋の主人が三度目の癌の攻めに
直面している。手術が可能かどうか?最適の
抗がん剤は?次の外来で決めることになると
いう。
9/12sun
街道に 医家の門柱 帰燕かな
(かいどうに いかのもんちゅう きえんかな)
※季節は確実に過ぎていく。コロナ休みで休講
だった水彩画も来週には再開、画材は季節の
果物だとか。サボり過ぎ、どうしよう。
9/11sat
刈り残す 品種を尋ね うろこ雲
(かりのこす ひんしゅをたずね うろこぐも)
※当地の稲刈りは一部を残し殆どが終了。2年
前の房総半島直撃の台風襲来日も無事に過ぎ
た。まずは目出度い。あの時の強風と被害、
トラウマが完全には癒えていない。
9/10fri
遠きから 思い思いて 風の盆
(とおきから おもいおもいて かぜのぼん)
※いまだに実現していない富山市八尾のおわら
風の盆見物。九月上旬。かすかな憧れだけが
もう何十年も続いている。
若いころは、風の盆という名前に惚れてみた
り女踊りの清楚さが頭に焼き付いていた。中
年の頃は男踊りの渋さ、凛々しさこそ最高だ
と。そして今・・・。
あ、あそこで車椅子に座って飽かず眺めてい
る、あれが私だ。
9/9thu
草のびて 上下交換の 駅のあり
(くさのびて じょうげこうかんの えきのあり)
※晴れ間が見えても遠出はしない。今日は犬の
餌買いにちょっとだけ。単線久留里線の横田
駅は沿線中ほどの駅で、上り下り各一時間1
本の列車が交差する駅。昼下がり、静寂。
9/8wed
騒がしくなれど九月の歌多し
(さわがしくなれど くがつのうたおおし)
※首相最悪のやめ方。にわかに生臭い話が蔓延
しつつある。一方でNHKラジオでこの何日か
で September Song を3,4回聴いた。しか
も歌い手を変えて。耳に断然懐かしいのはや
はりシナトラ。
9/7tue
法師蝉の 影を奪いて 秋の冷え
(ほうしぜみの かげをうばいて あきのひえ)
長雨の 上がらんとして 虫なけど
(ながあめの あがらんとして むしなけど)
※10月下旬並みの気温。風流の人は惜春のよ
うな言葉はなくとも、行く夏を惜しみ次第に
秋めく今頃をしみじみ味わうというのだが・
・・。
9/6mon
刈入れは 爺がビールつぎ 始まれり
(かりいれは じじがびーるつぎ はじまれり)
※刈入れ作業は勤め人の孫の出番。腰を曲げて
眺めていた爺は初日を終えた孫にビールをつ
いでいる。と思う。去年までの主役息子は姿
が見えない。
9/5sun
秋天や 見上げつ半日 畑におり
(しゅうてんや みあげつはんにち はたにおり)
隠元棚 慈しみつつ 撤収す
(いんげんだな いつくしみつつ てっしゅうす)
※秋は畑作業が最高、とか言われ繰り出す。雨
の間の貴重な晴れ間。大当たりだったインゲ
ン豆。
9/3fri
花桔梗 息子寝んとて 帰り来る
(はなききょう むすこねんとて かえりくる)
※アフガニスタン米軍撤退とその後の混沌。
9/2thu
御仏を うたう父の句 二百十日
(みほとけを うたうちちのく にひゃくとうか)
※一気に十月上旬並みの気温に。豪雨被害はあ
ったが、台風の襲来はいまのところ少な目だ。
9/1wed
待ち兼ねて 雨音ソフト 八月尽
(まちかねて あまおとそふと はちがつじん)
秋雨や 雨城楊枝の 代替わり
(あきさめや うじょうようじの だいがわり)
※やっと一雨。雨城は久留里城の別名。長く城
下で作り伝えられた黒もじ楊枝がある。
**********
8/31tue
爽涼や 係船洗う 細き腕
(そうりょうや けいせんあらう ほそきうで)
※久しぶりに木更津港のそばを通った。日中の
気温は今日ぐっと低く、凌ぎやすい。砂利運
搬船が数隻いるだけ。
8/30mon
ホームラン 客なき席に 夏終わる
(ほーむらん きゃくなきせきに なつおわる)
※コロナ禍の真っ最中に、甲子園とパラリンピ
ック。やや不自然な多忙感。プツンッと切る
と田舎の超静寂な午後に。夏今終わる。
8/29sun
塗装屋の 足場の払い 速く秋
(とそうやの あしばのはらい はやくあき)
※近くで長々と丁寧に作業をしていた業者が仕
事を完了した。撤収作業。今日は素早い。
8/27fri
秋暑し 茶筅をしかと 手入れする
(あきあつし ちゃせんをしかと ていれする)
※もどった暑さは一段と強烈、当地は昨日今季
初めての猛暑日をを記録した。
8/26thu
新しき 稲刈り機動く 爺も見る
(あたらしき いねかりきうごく じじもみる)
※中旬までの長雨で大部分倒れた稲田がある。
全く丈夫な田も多い。暑い一日。
8/25wed
調剤の 袋を問われ 残暑かな
(ちょうざいの ふくろをとわれ ざんしょかな)
※毎日飲む薬がまた一つ増えた。山となった薬
を手渡しながら、可愛い薬局のお姉ちゃんが
言ったものだ。「一日おきの薬が多いから大
丈夫ですか?ちゃんと飲めますか?」
バーヤロー!
8/24tue
仕舞た屋に 都会の子いる 秋暑し
(しもたやに とかいのこいる あきあつし)
※東京ナンバーのクルマが子供を迎えに来たと
ころらしい。2学期もどうにか始まるようだ。
8/22sun
商店の消えゆく秋ぞ空を見る
(しょうてんの きえゆくあきぞ そらをみる)
ショーケースに 時計残れり 今朝の秋
(しょーけーすに とけいのこれり けさのあき)
※地方都市の個人商店はこの国の政策で消えゆ
く運命。主の高齢化などで、櫛の歯が抜ける
ようにパタパタと、しかし着実に消え去る。
8/20fri
ゆっくりと 猫が横切る 盆の明け
(ゆっくりと ねこがよこぎる ぼんのあけ)
日に一度 棚のブドウを 摘まみ食い
(ひにいちど たなのぶどうを つまみぐい)
※あれだけの前線が動き、夏の暑さがもどった。
しかし盆明けの世の中の活動再開は?
8/19thu
クロエーの 髪に秋風 手櫛さす
(くろえーの かみにあきかぜ てぐしさす)
※古代ローマ時代の小説のヒロイン、クロエー。
句が出来ないー。こういう日もある、多い。
8/18wed
塔の隅 見詰めて描く 夏帽子
(とうのすみ みつめてえがく なつぼうし)
※また暑い夏がやってきた。立派な山門を残す
寺に子供たちがスケッチしている。外出もま
まならなかったから、付き添いの人が見当た
らないのに、さぼらずに熱心に描いている。
見習わなければ・・・。
8/17tue
新涼というな前線居座れる
(しんりょうというな ぜんせんいすわれる)
※長雨のせいで気温は下がり、爽やかなとも言
える。当地の稲作農家は盆明けの刈り取りを
前にして、倒れた稲を苦々しく見つめる。
一方、水没した西日本の農家は悲嘆に暮れて
いる。
8/15sun
百日草 在宅治療という不安
(ひゃくにちそう ざいたくちりょうというふあん)
※血中酸素濃度94%以上は在宅治療とか。マク
ロの正解を導くための明快すぎる基準。
8/14sat
花魁草 我が家を去りて この宿に
(おいらんそう わがやをさりて このやどに)
※どこの庭も菜園もこの雨続きで手が入らない
ようだ。我が家も同様。西日本の被害状況の
ニュースを見れば、まだまだ恵まれている。
8/13fri
西瓜乗せ 売り声テスト 繰り返し
(すいかのせ うりごえてすと くりかえし)
※列島全体が前線に覆われ、豪雨の危険が広ま
る。気温が下がり、さすがに西瓜の季節は終
わりそう。知合いの西瓜農家も軽トラに満載
し、盆休みの客を頼みに出かける。
自家製の 小玉西瓜を 半分こ
(じかせいの こだますいかを はんぶんこ)
8/12thu
虹現れて 風の通りで 見んとする
(にじあれて かぜのとおりで みんとする)
※先日夕方の二度の夕立ちで、二つの虹が現れ
た。なかなか見事だった。風の通りは一番涼
しい通り、息を切らして駆け付けた。
声なくも 片陰つくる 幼稚園
(こえなくも かたかげつくる ようちえん)
8/11wed
草むしる 目線でじっと 我が家見る
(くさむしる めせんでじっと わがやみる)
※蚊取り線香をしっかり腰に巻いて草むしり。
この目線、この眺めは新鮮。下から目線。住
んで20年以上になるのに・・・。カメラに
収めると狭い庭が数倍の広さに見える。
8/9mon
片陰を スマホのラジオ ならし行く
(かたかげを すまほのらじお ならしゆく)
※オリンピック絡みの放送が消えると、こんな
にも変わるものか。一種静寂という感じ。
これでコロナ禍関連がなくなったら、この世
は何をテーマに回っていくのだろう。
8/8sun
包丁と テレビの音と 晩夏かな
(ほうちょうと てれびのおとと ばんかかな)
※日がな一日テレビに見入る亭主といやでもお
さんどんをする家内。もうそろそろ飽和状態
に近づいたところで、台風と五輪は閉会式だ。
長かった強雨がようやく上がったところで、
昨日が立秋だったことを知った。
8/7fri
原爆忌後期高齢者の二年
(げんばくき こうきこうれいしゃのにねん)
※原爆投下後76年。自分の満年齢に同じ。方
向性を持った着実な動きの象徴になればと思
うが、ここにも小さな分断が蔓延り、根付い
て久しい。
8/5thu
定斎屋の 売り声知らず 盛夏かな
(じょさいやの うりごえしらず せいかかな)
※街も住宅地の通りも見事に閑散。暑気払いの
薬を売り歩く天秤棒を担いだ薬屋。江戸の風
物詩。これ自身が季語だとか。
8/4wed
呆けては 知命いまだに 夏暖簾
(ほうけては ちめいいまだに なつのれん)
※50の歳は遥かになったが、「このまま行く
ことになるなァ」と暫く顔を見ていない友人
と話す。呆けてきそうな午後の話題。
8/3tue
とまる人あり暑しとも言わず行く
(とまるひとあり あつしともいわずいく)
※蒸し暑い。この朝も修行僧のごとく歩く人が
いる。初の熱帯夜になっても時刻はいつもと
同じだ。
8/2mon
豪雨去り 橋脚白し 土用かな
(ごううさり きょうきゃくしろし どようかな)
※不安定な天気になって、午前中の猛暑と午後
の雷雨というのがパターンになりつつある。
気象予報が今ほどでなかった頃は、この天気
パターンを「夏の天気の決まりごと」として
認識していた。
夕方の突然の驟雨と雷鳴、予測されると風物
詩とは言えなくなった。損をしている。
**********
7/31sat
地元紙にくるまれ母の夏野菜
(じもとしに くるまれははの なつやさい)
※下宿先で空に浮かんだ五輪マークを見た。
57年前の10月。東京生活1年目のあの頃、
こういうものが届いた。
7/30fri
激増も マスクと夏の 暮らしかな
(げきぞうも マスクとなつのくらしかな)
勤めあり 熱帯夜あり 五輪あり
(つとめあり ねったいやあり ごりんあり)
※どんなに感染が拡大しても工場勤務は続く。
都心から放射される拡大の波はこれ以上協力
しても限界。抵抗できない・・・と。体力を
誇る知人の息子のコロナ禍2題。
7/29thu
炎天や 白髪だけの 溝掃除
(えんてんや はくはつだけの みぞそうじ)
風鈴の 短冊に願い かけ直し
(ふうりんの たんざくにねがい かけなおし)
※一都三県の感染者数はなにやらキナ臭い匂い
までしそうだ。ピークアウトするのか、更に
暴騰となるのか。
7/28wed
この夏は 遅めの出会い 川とんぼ
(このなつは おそめのであい かわとんぼ)
※興味に任せてテレビ観戦を続けていると、エ
アコンはつけているのに頭がおかしくなりそ
う・・・。自重と口だけでは駄目。年齢相応
の自制を、と再度の自戒。
7/27tue
朝市の 婆こっくりと 紅蜀葵
(あさいちの ばばこっくりと こうしょっき)
※漁港近くの朝市はコロナ禍とオリンピックが
かさなり、地元客だけがパラパラと散歩がて
らの買い物。何十年か前にもどったようだと。
7/26mon
夏の日や 力出し切る 妙ありて
(なつのひや ちからだしきる みょうありて)
百日紅 五輪の色に 咲き初める
(さるすべり ごりんのいろに さきそめる)
※五輪のテレビ観戦を少し控えなくては・・・
と自戒。日本選手の活躍を追おうとは思って
いないのだが、昨日などは自然にそうなって
しまった。今日も自重、自重と念じつつ観戦
三昧。
7/24sat
雷が清め開会式の夜
(かみなりがきよめ かいかいしきのよる)
※紆余曲折を非難されつつも、昨夜の開会式。
控えめとの感想がありつつ、自己主張や国威
発揚の要素は少なく、自国の伝統や文化に過
度に固執することもなく、大人の開会式運営
だった、と思う。
7/23fri
打ち水や リサイクル屋の 浴衣見る
(うちみずや りさいくるやの ゆかたみる)
※衣料や小物を中心としたリサイクル屋がある。
女主人が浴衣姿でホースで水撒きしていた。
7/22thu
白玉や 墓の話を 少しして
(しろたまや はかのはなしを すこしして)
※後期高齢者の仲間入りをして、お墓はその使
用時期が近づいている。しかし夫婦で考え方
が違う。それで「ま、いいか、そのうちに・
・・」とほっといてある。
7/21wed
夏の庭 たしかに降った はずなのに
(なつのにわ たしかにふった はずなのに)
※夜中にかすかな雨音を聞いた。そういえば少
し涼しくなった。これはいい・・・。朝、雨
の痕跡は皆無。気象の記録も降雨は0。なん
だったんだ、あれは?
7/20tue
まっすぐに来てさっとよけ夏の蜂
(まっすぐにきてさっとよけ なつのはち)
※長雨と土砂災害、相変わらずのコロナ渦に猛
暑が加わった。右往左往しているうちにオリ
ンピックが直近に迫っていた。
7/19mon
浮草の稼業や三十年人恋し
(うきぐさのかぎょうやみそとせひとこいし)
※小津安二郎監督の映画「浮草」、ひと夏の小
さな漁師町での人の触れ合いと夏の風物を謳
っている。珠玉。
7/18sun
はつどれの 西瓜抱えて たたきおり
(はつどれの すいかかかえて たたきおり)
※ラグビーボール型の小玉西瓜。
「この音どう?」と聞かれても一個だけでは
とんとわからない。テレビで習った高い畝を
作って苗を植え、稲わらを敷き詰めるまでの
仕事は私、受粉のために何度も通ったのは家
内。意気揚々としている。
7/16fri
近道の 線路を跨ぐ 日傘かな
(ちかみちの せんろをまたぐ ひがさかな)
※朝一番の散歩で雲の形を見て「今日梅雨明け」
を確信した。案の定・・・。まだ堂々とはし
ていないけれども、ミニ積乱雲がニョキニョ
キ無数に立っていた。
7/15thu
雨降りの パリ祭とかに 手術決め
(あめふりの ぱりさいとかに しゅじゅつきめ)
※去年の今頃は、まだコロナ禍の何たるかにつ
いて殆ど知っていなかった。アソコの病院は
感染者が担ぎ込まれた、他の手術はキャンセ
ルされる、外来も控えた方がいいとか・・・。
肝心の克服はまだだけれども大分敵の正体は
わかってきた。必要な手術は受けよう。
7/14wed
麻のれん 都会の路地の あの日かな
(あさのれん とかいのろじの あのひかな)
※足が遠のいてどのくらいかなァ? 長雨と暑
さと、気候の変動に翻弄される日々・・・、
暮らしを作る力にふと弱さを感じる。
7/12mon
青梅雨や 落ちたる桃に 色微か
(あおづゆや おちたるももに いろかすか)
捩じり花 二回目無事と 返信し
(ねじりばな にかいめぶじと へんしんし)
※豪雨の後は晴れ間を待ち望んだが、梅雨明け
間近と言われると恐怖の真夏の日々を思い出
す。オリンピックがあるし、只ならぬ胸騒ぎ
も少し。無事を祈りたい。
7/11sun
祖父来る 麦わら帽子の 痕しかと
(そふきたる むぎわらぼうしの あとしかと)
※祖父は夏の外出にはどこに行くにしても昔風
の麦わら帽子をかぶって出かけたらしい。
70年以上過ぎて、私の日常も変わらず愛用
している。祖父が我が家を訪ねて、というこ
とはあり得ないが。
7/9fri
扇風機 車内で首ふる ヤツ恋し
(せんぷうき しゃないでくびふる やつこいし)
※東京での通勤時代の前半は電車にエアコンは
なかった。今日みたいな蒸し暑い日でなくと
も夏の車内は毎日が地獄だった。
7/8thu
御田植祭 乙女の白い 角かくし
(おたうえさい おとめのしろい つのかくし)
※未婚のきれいな女性が花嫁姿で30数名も。
文金高島田に角隠しの行列。旧会津田島町の
伝統の御田植祭り(祇園祭)は6月の遅い田
植えを無事終えて、7月に行われる。
(ただし今年の花嫁行列は中止)
7/7wed
梅雨明けず 瓜盗人という 季語のあり
(つゆあけず うりぬすっとという きごのあり)
卒寿翁 聞こえずはただ 聴かぬなり
(そゆじゅおう きこえずはただ きかぬなり)
※矍鑠としている先輩は目と耳の衰えを訴える。
外界の動きには旺盛な好奇心があるから、存
外耳の方はインプット次第ということかも。
7/6tue
梅雨晴れや 園児の声と 松籟と
(つゆばれや えんじのこえと しょうらいと)
梅雨晴れや デイの窓みな 開けられて
(つゆばれや でいのまどみな あけられて)
※三日三晩の雨が上がった。まだ怪しい空模様
である。長続きはすまい。ここは大きく深呼
吸というところか。
7/4sun
葛餅や 黒文字楊枝 舐めて終え
(くずもちや くろもじようじ なめておえ)
※遠くの大先輩の声が聞けた。卒寿。変わらぬ
声が懐かしい。雨も一休み。
7/3sat
長雨や 桃の実落ちる 音二つ
(ながあめや もものみおちる おとふたつ)
※下屋に落ちた実は雨音にも負けない音がする。
その度に私と家内は嘆息をもらす。
7/2fri
梅雨寒や スマホの容量 持て余し
(つゆざむや すまほのようりょう もてあまし)
※今回の雨はすごい。殆ど間断なく三日目。明
日いっぱいは降り続く模様。出かけてもラジ
オを聴くか、カメラを使うのが主体のスマホ
は1ギガ月千円で十分、なんとガラケー時代
よりも安価で済んでいる。家ではWi-Fi。
7/1thu
枇杷熟るる 二回目無事と 返信し
(びわうるる にかいめぶじと へんしんし)
ワクチンや オクラの花の頃に受く
(わくちんや おくらのはなのころにうく)
※ワクチン2回目の接種を終えた。2回目後の
方が副反応が出やすいと言われる。家内も数
日前、接種部位の腫れと痛みが続き、それが
原因と見られる熱が出た。静かにしている。
12/31fri
コロナ禍や なれど住処に 蜜柑熟れ
(ころなかや なれどすみかに みかんうれ)
冬型の 高気圧良し ガラス拭き
(ふゆがたの こうきあつよし がらすふき)
ご無沙汰しご無沙汰されて除夜の鐘
(ごぶさたしごぶさたされてじょやのかね)
※大晦日の今日、いつもより多めに飲んで、早
めに床に就くのが恒例。「いく年くる年」は
朝ゆっくり見る。
12/30thu
似せ絵しか 描けぬ哀しさ 年の暮れ
(にせえしか かけぬかなしさ としのくれ)
※水彩画、「描きたいのを好きに描けば良い」
と思うのだが、これがなかなか・・・。
水滸伝 年末までに 終わらざる
(すいこでん ねんまつまでに おわらざる)
12/29wed
誕生日 大根焚きに 揚げ入れて
(たんじょうび だいこんだきに あげいれて)
抱負をという声なくて誕生日
(ほうふをというこえなくてたんじょうび)
※使い慣れていないスマホで、食事に訪れたフ
ァミレスのアプリをインストールしたら、な
んと20%割引の上に誕生祝いとかで大きめの
ケーキまでプレゼントされてびっくり!
12/28tue
老庭師 鋏み風に乗る 年の暮れ
(ろうにわし はさみかぜにのる としのくれ)
極月や 垣の揃いに こだわりて
(ごくげつや かきのそろいに こだわりて)
※元プロの義兄が手入れしてくれたものだが、
代わりの老庭師の腕はまだつたない。でも鋏
の音だけはいいようだ。刃物の世話が上手な
のかも。
12/27mon
年内の 仕事と言われ 蜜柑もぐ
(ねんないの しごといわれ みかんもぐ)
※先日述べた蝉の抜け殻が落ちないようにそっ
と鋏を入れる。去年は裏作の年でほんの少し
しか実をつけなかったが、今年は大丈夫!
背の高さほどの、一抱えほどの木一本なのだ
が、ざっと120個くらいかなと皮算用をし
ている。味もいい、濃厚さもある。
12/25sat
金星の 西に隠れて 聖夜かな
(きんせいの にしにかくれて せいやかな)
おとなしい 番組見たり 聖夜なり
(おとなしい ばんぐみみたり せいやなり)
平らかに 聖地の星を 調べたり
(たいらかに せいちのほしを しらべたり)
かしこみつ 上皇様の お歳聞く
(かしこみつ じょうこうさまの おとしきく)
※作夜はクリスマスイヴ。上皇様とは誕生日が
12年と5日違い。干支も同じ。
12/24fri
空蝉や ミカンの枝で 年を越す
(うつせみや みかんのえだで としをこす)
※実写生でもこれはいけないと言われそう。季
語が三つも重なっている。空蝉、ミカン、年
越し。ミカンをもいで試食した時に発見、こ
んなのもいいじゃないかな。
12/23thu
句を添えて 師走の動画を 温めり
(くをそえて しわすのどうがを あたためり)
※今春スマホユーザーとなったのを機に、その
機動性、カメラの高機能を活かして、動画を
アップすることを思いついた。既に30本近
くをアップロード済だ。
しかし動画といっても静止画を繋いで季節の
5句を盛り合わせ、そこに好きな音楽をBGM
とするものだ。1本が3分弱で飾り気のない
動画である。当然見てくれる人は殆ど0。
これが本人には意外と新鮮な「句帳」となる
ことに気がついた。句の羅列より思い出深い、
面白い。メインは句なのか、写真なのか、音
楽なのかすら・・その時々。これが無料とは。
12/23wed
朝コール 声も馥郁 冬至たり
(あさこーる こえもふくいく とうじたり)
柚子なきを 謝して冬至の ジャスミン湯
(ゆずなきを しゃしてとうじの じゃすみんゆ)
冬至日や 光あるうち 長湯かな
(とうじびや ひかりあるうち ながゆかな)
※今日まで太平洋側は比較的暖か。穏やかな冬
至の晴れ間にホッとする。明日からは一段と
寒さが増すとか。今日は頑張って、句の動画
を5個 YouTubeにアップした。
12/21tue
容保は 宸翰胸に 冬すみれ
(かたもりは しんかんむねに ふゆすみれ)
※大通りの歴史が少しずつ見直されている。慶
喜の幕末への思い、容保の誠意吐露、共に朝
敵とされたことへの反発等々。一朝に全てが
きれいに繋がるものではないが・・・。
12/20mon
路地を来て 神田駅前 冬ぬくし
(ろじをきて かんだえきまえ ふゆぬくし)
※久しぶりに神田小川町近辺に行った。帰途は
知ったかぶりをして路地をめぐり遠回りの神
田駅に出ようとした。道路は最盛期?のよう
には導いてくれなかった。スジ違いを何度か
犯した。されど結果は勝手知ったる神田駅界
隈。この辺はまだ大丈夫。
12/19sun
そこらじゅう痒いが目良し耳も良し
(そこらじゅうかゆいがめよしみみもよし)
寄せ鍋も辛くせよ赤くせよという
(よせなべもからくせよあかくせよという)
コロナ禍も上司落研湯気揺れる
(ころなかもじょうしおちけんゆげゆれる)
※年末清掃の束の間に川柳3題
12/18sat
冬の雲日没早くならざる日
(ふゆのくもにちぼつはやくならざるひ)
※日中の時間が一番短いのは冬至の日だが、日
の入り、日没が早いのは冬至以前の12月上
旬、その分日の出が一番遅いのは冬至後の12
月下旬だとか。少し賢くなった。
12/17fri
山茶花や 公家の住まいの 石の塚
(さざんかや くげのすまいの いしのつか)
※かなり以前の冬の日に或る公家の住居跡を訪
ねたことがあった。京都の寒さを身体で思い
知った一日だった。
12/16thu
目うつろに 呆けし役を 初時雨
(めうつろに ほうけしやくを はつしぐれ)
※俳優山崎努が認知症の老人を演じる映画を見
た。目の表情が真に迫っていた。
12/15wed
寒き日や 喪中の葉書 集めけり
(さむきひや もちゅうのはがき あつめけり)
念入りに 少なき賀状 炬燵かな
(ねんいりに すくなきがじょう こたつかな)
※賀状をゆったり書くという経験はない。枚数
をこなすためについ生産的な方法をその都度
考えるからだ。しかし今年は違った。大幅に
枚数を減らし、本来の?書き方に戻った。あ
せってもいない。
12/14tue
義士の日や 堀部弥兵衛の 齢となり
(ぎしのひや ほりべやへえの としとなり)
※冷たい午前、雪が落ちてきてもおかしくない。
安兵衛の義父で、義士の最高齢。自分の年齢
を考えるのに変に現実感がある。
12/13mon
白菜や 妻息災に ざくと割く
(はくさいや つまそくさいに ざくとさく)
※この音、力強いザクッと・・・元気印。
新海苔や 百年の名産 送りたり
(しんのりや ひゃくねんのめいさん おくりたり)
12/12sun
しつこさで 癌に克つさと 冬帽子
(しつこさで がんにかつさと ふゆぼうし)
※再発した肺ガンに化学療法を続けている床屋
はげっそり痩せたが、禿げあがった頭と目力
は精悍でなお意気軒高だ。
12/11sat
身につかず終いの楽器大掃除
(みにつかずじまいのがっきおおそうじ)
※今日明日の気温はぐっと高くなるとあって、
大掃除その1と指定され、召集を受ける。
12/10fri
花札を二人向かいて冬日向
(はなふだをふたりむかいてふゆひなた)
背伸びして取らん梢のレジ袋
(せのびしてとらんこずえのれじぶくろ)
※今朝の気温は厳しいが、十分な日差しが救っ
てくれる。
12/9thu
開戦の日 熱狂せしか 吾もまた
(かいせんのひ ねっきょうせしか われもまた)
※対米開戦80周年の今年は当時の状況発掘のニ
ュースや資料が多い。対中戦争の泥沼化、米
国中心の対日圧迫政策、軍部の好戦姿勢と国
民の支持、開戦に至った要因は様々なウェイ
ト付けが可能だ。
12/8wed
冬ごもり ペトルーシュカを 聴けと友
(ふゆごもり ぺとるーしゅかを きけととも)
ネットに出 たちまち主役 金目鯛
(ねっとにで たちまちしゅやく きんめだい)
※北海道に住んでいた頃、囲炉裏焼き屋で金目
鯛やホッケは馴染みの魚だった。ところが金
目鯛はその後出世?し、内地(北海道では本
州をこう呼んでいた)で高値となった。今や
ネットでももてはやされているとか。
当時から小生はホッケにより親近感を覚えた。
うまいし塩の香りがする。しかし今や居酒屋
では結構高い。ホッケ、お前もかッ。
12/6mon
極月も あかつき闇を 重宝し
(ごくげつも あかつきやみを ちょうほうし)
同じこと 言う人の来る 落ち葉焚き
(おなじこと いうひとのくる おちばたき)
※加齢のせいばかりではなく親からの遺伝もあ
って深夜から未明の時間に目覚め、そのまま
長い時間を過ごすことが多い。あせることも
あるが読書時々うつらうつら・・・楽しめる
ようになった。冬は寝巻の下に長袖のシャツ
を着ていても、寝床から腕を出すと寒いので、
作業用の手さし(袖カバー)を用意している。
厳寒期には指先出し手袋も。
12/4sat
師走来る 時の会釈は 少しだけ
(しわすくる ときのえしゃくは すこしだけ)
垣根刈る 冬支度かと 言われたき
(かきねかる ふゆじたくかと いわれたき)
※早いものだ、と常套句を言わねばならない。
遠慮会釈のない時の流れ。流れに沿って、昔
流の冬支度を。
12/2thu
舳倉島 渡りの鳥の 五万とぞ
(へぐらじま わたりのとりの ごまんとぞ)
※快晴、晩秋の能登舳倉島の様子を見た。テレ
ビで。渡りの鳥のまたとない中継地だ。夥し
い種類と数。多くはシベリアからで冬を日本
以南の地で過ごすためにきている。すごい、
生命力に溢れた島。
12/1wed
勲一等の 柿は一葉に 師走来る
(くんいっとうの かきはひとはに しわすくる)
※今年の柿はたった一本ながら、たわわに甘い
実をつけ、シニアに毎日の楽しみをくれた。
勲一等功一級ものだ。
**********
11/30tue
秋野菜 画材として後 分けたまふ
(あきやさい がざいとしてのち わけたもう)
秋の暮 一幕ものの 場を数ふ
(あきのくれ いちまくものの ばをかぞふ)
※我が創作にかかる芝居、長かったなァと思っ
たが、アレッ・・・一幕だったか? 今から
考えると色んな幕があって良かった、そうす
るつもりだったのに。残念。まあ場数は多い
し、今も続いているね。
しかしぃ・・ちょっと待ってェな。ちょっと
書き換えるやさかい。エエェ、出来ひんて?
そ、そんな後生な・・・。
小春日の 人居ぬ園や 獏眠る
(こはるびの ひといぬえんや ばくねむる)
11/28sun
小春日や なに食うたとから 長電話
(こはるびや なにくうたとから ながでんわ)
※スマホで通話はスピーカーで。そして胸のポ
ケットに突っ込んだまま話をする。両手フリ
ーで。長引く友人とのスタイルがこれに落ち
着き、スマホって便利だなァと感心。大いに
笑われた。女の長電話を実体験中。
11/26fri
足腰の かすかに重く 石蕗の花
(あしこしの かすかにおもく つわのはな)
※金木犀の生垣の剪定をやった。2日がかり。
11/25thu
母くれし やなぎ行李よ 冬支度
(ははくれし やなぎごうりよ ふゆじたく)
友の笑み 蝶々とともに 冬茜
(とものえみ ちょうちょとともに ふゆあかね)
※後輩の蝶キチの撮った写真が来年のカレンダ
ーに採用されたと、それを贈ってくれた。立
派な全国版で、彼の渾身の写真12枚が各月
を飾っている。すごい出来だ。嬉しい。
11/23tue
マップ上 動線たどる 一葉忌
(まっぷじょう どうせんたどる いちようき)
※一葉人気は根強い。都心の3か所の旧居跡を
訪ねる人は引きも切らず、ネットの「一葉暮
らしの研究」もいまだに旺盛のよう。
・・・アソコへはここを通ったとか、品を仕
入れにアノ道を行った、この道は何歳の時誰
を訪ねに通ったとかである。都心散歩の多く
のファンに支持されているのではと思う。
11/22mon
デジタルや 愁思の顔も 修正し
(でじたるや しゅうしのかおも しゅうせいし)
※顔の整形、といっても画像上のことだが。思
う通りの方向に自分の画像を修正してくれる。
以前からこの手のソフトはあったが、空前の
進歩をしているというのだ。
空前も 過ぎたらてんで 他人の顔
最近、こういう小手先の開発ばかりだ。
11/21sun
起きるには まだたっぷりと 酉の市
(おきるには まだたっぷりと とりのいち)
大いなる がま口腰に 酉の市
(おおいなる がまぐちこしに とりのいち)
冷え込むや 帽子深めに お酉様
(ひえこむや ぼうしふかめに おとりさま)
※久しぶりに熊手の店、露店の行列。ただお参
りの客は寂しくて涙が出るほどの閑古鳥。威
勢のいい手拍子もそこかしこに少しだけ。が
ま口も空いたままか。今年は二の酉どまり。
11/20sat
秋の暮れ 種の袋の 字のうすし
(あきのくれ たねのふくろの じのうすし)
※秋植え用に大切に保存しておいた種子がなん
なのかわからない? 袋の上の鉛筆のメモが
薄れている。そんなの知るか!! 種を見て
もわからないのか?
11/19fri
秋の暮 パテシエ修行の 娘が嫁ぐ
(あきのくれ ぱてしえしゅぎょうの こがとつぐ)
※ケーキ店開業の夢は諦めて結婚するとか。小
さいころから知っている、甥の娘だ。まあそ
れもいいだろう、幸せを祈る。
11/18thu
七五三 子のつく名前 参り札
(しちごさん このつくなまえ まいりふだ)
病葉も 岩風呂に入る 旅の宿
(わくらばも いわぶろにいる たびのやど)
※PCでダウンロードした曲を整理してはせっせ
とスマホに移し、オフで聴ける手筈を整えて
いる。へへ、音の悪いのはリジェクトする。
YouTubeは駄目。
11/17wed
時雨忌や 二の橋を越え 深川へ
(しぐれきや にのはしをこえ ふかがわへ)
※時雨忌は芭蕉の忌日、陰暦10月12日。ゆ
かりの深川へはいつも本所側から歩いて、門
仲をゴールにする。
本所二の橋のたもとには軍鶏なべや「五鉄」
の跡地がある。鬼平の行きつけ。
11/16tue
さざんかや 昵懇の犬 動かざる
(さざんかや じっこんのいぬ うごかざる)
※若い秋田犬が道路のあっちで腹ばいになって
動かないでいる。我が家の犬に興味あっての
ことではない。実はお目当ては小生である。
11/15mon
小春日は畑でワイヤレスイヤホンで
(こはるびははたでわいやれすいやほんで)
秋夕焼 電車の音で 腰伸ばす
(あきゆやけ でんしゃのおとで こしのばす)
幾百の 玉葱植えて 腰立たず
(いくひゃくの たまねぎうえて こしたたず)
※3列の長い畝に黒マルチを張り、300本弱
の玉葱の苗を飽きずに植える。しかし来年の
春までは手間いらず。5月前半収穫の早生。
11/14sun
人の顔したる源氏の人逝ける
(ひとのかおしたるげんじのひとゆける)
※瀬戸内寂聴逝去。若いころは一般的な世評に
乗って、おやおやという思いで眺めていたが、
自分がそこから解き放たれると彼女の顔が生
き生きと穏やかに見え始めた。ますますそう
なった。合掌。
11/12fri
どっしりと 家伝の砧 壁にあり
(どっしりと かでんのきぬた かべにあり)
※郊外から移築した豪農の民家が公園にある。
様々な農具、民具を入れ替わりで展示してい
た。機織りの仕上げに反物の布打ちに使った
とか。生乾きの洗濯物をたたいて柔らかくし
たり皺をのばしたりもした。昔村落の家々で
砧の音がした・・・有名なその光景とは、な
にをしていたんだろう? 聞きそびれた。
11/10wed
男手が スマホを見つつ 菊膾
(おとこでが すまほをみつつ きくなます)
※季節感はあっても好きなものではない。何度
か口にする機会はあったが、ちょっと舌先で
感じてすぐに飲み込む類のものだった。せっ
かくの到来物の食用菊、少し前進したい。年
齢並みに。
11/9tue
歩きけり 新酒試飲は 障子部屋
(あるきけり しんしゅしいんは しょうじべや)
※今は近くに醸造会社はない。昔々の話。
望みしも 秋刀魚一向に 気配なし
(のぞみしも さんまいっこうに けはいなし)
11/8mon
海舟の 呼吸が聞こえる 坂の秋
(かいしゅうの いきがきこえる さかのあき)
※勝海舟は赤坂の地を愛し、都合3度も場所を
変えて住まいした。幕末は氷川下。その場所
はマンションの林の中に埋没しているが、近
くの氷川神社や氷川坂には往時の息吹が残っ
ているように感じた。交通の激しい大通りの
間にあって、不思議な静寂がある。
11/7sun
墓売れて にわか夜なべの 石工かな
(はかうれて にわかよなべの いしくかな)
吾亦紅 午前いっぱい 身じろがず
(われもこう ごぜんいっぱい みじろがず)
※新しいクルマの試乗に行った。今のクルマは
中古だから、二つのクルマの間には10年近
くの隔たりがある。話には聞いていたが、IT
絡みの装備は目を見張るほど。
しかし「安全のために必要なもの」と運転手
サポートという名の「大きなお世話」とが混
然としている。
11/6sat
ゴミ寄せに 鴉が消えて 秋の暮
(ごみよせに からすがきえて あきのくれ)
秋深しジュリーのサンフランシスコ
(あきふかしじゅりーのさんふらんしすこ)
※暦には明日7日は立冬。いくら寒いとは言え
今日明日が冬であるとは肌に合わない。年々
のことだ。新旧暦のずれにあるのだから仕方
がない。しかし自分の句作とかには実感を優
先していきたい。まだ当分は秋の暮だ。
ジュリー・ロンドンの低い声が最も似合う季
節。
11/5fri
日に一つ もいで柿食う 余生良し
(ひにひとつ もいでかきくう よせいよし)
※胃のバリウム検査に行ってきた。1時間ごと
の予約制に改まって待ち時間が短くなった。
この街での検査も25回以上を数える。
11/4thu
文化の日 佳きことありて 嗽二度
(ぶんかのひ よきことありて うがいにど)
文化の日 洗濯しつつ 長電話
(ぶんかのひ せんたくしつつ ながでんわ)
※文化の日とて関係の催しはなにもない。展示
だけの文化祭も繰り上げで既に終わっている。
友人の洗濯時の無聊に付き合う。
11/3wed
背の曲がり 正すこと増え 鱗雲
(せのまがり ただすことふえ うろこぐも)
立冬は とうに来るらし 秋霞
(りっとうは とうにきたるらし あきがすみ)
先生の 甲高い声 秋の午後
(せんせいの かんだかいこえ あきのごご)
※もう晩秋である。様々な老化やその兆候を感
じ始めて久しくなるが、これも秋そのもの。
人生の秋の風情。
11/2tue
山中の 食堂ひとり とろろ汁
(さんちゅうの しょくどうひとり とろろじる)
※房総半島の紅葉の見頃は11月下旬から12
月上旬。年によって短く、気がついた頃には
盛りが終わっていたということも。
今の山のドライブコースは人もクルマもとこ
とんまばら。
11/1mon
故郷の 歳時記重し 秋燈下
(ふるさとの さいじきおもし しゅうとうか)
※昭和55年発行の「会津歳時記」がある。横
になって、うとうとしながら長時間見入るの
が至福の時なのだが、大部だけに仰向けのま
までは5分と持たない。
歳時記といっても当時の俳人仲間が集まり、
地域の俳人と先輩の句を発掘して郷土の匂い
がする俳句集を編んでみよう、ということに
なったらしい。どんな歳時記でもその中に自
分の句がのる、残るというのは俳句人の夢。
あれもこれと話と努力は大きくなり、出来上
がりは重くなった。装丁も立派である。
後にも先にもこれだけの目論見はこれ一回だ
け。匂い豊かで、胸に重くなるのを今日も味
わうことにしよう。
**********
10/31sun
雁渡し 松籟となる 選挙の日
(かりわたし しょうらいとなる せんきょのひ)
秋燈や 小さき埴輪の 目の丸く
(しゅうとうや ちさきはにわの めのまるく)
※埴輪が机上の電気スタンドに照らされて、今
までにない影が出来、なにやら意味ありげに
見える。何か語りかけるようにも感じられる。
新鮮。今日は玉ねぎの畝作りに駆り出された。
夕方散歩と投票に。
10/30sat
秋祭り かつて担ぎし 大神輿
(あきまつり かつてかつぎし おおみこし)
祭礼の ポスター古き 老舗かな
(さいれいの ぽすたーふるき しにせかな)
※盛んだった秋の祭礼も、今は神社に氏子の主
な者が集まり、祝詞を上げお神酒をいただく
だけとか。コロナ以前からそうだったと主は
話す。
10/28thu
山法師の 実に触れてみる 通学路
(やまぼしの みにふれてみる つうがくろ)
甘柿は 送るべしとて 甥の家
(あまがきは おくるべしとて おいのいえ)
※木に残っている柿の実はもう僅か。甘柿大好
きと言ってくれる家に少し送った。取ってま
でして食べないという家が多い。木守り柿と
かのつもりもないみたい。
10/27wed
栗ご飯 まだ長月の 寒き日に
(くりごはん まだながつきの さむきひに)
※気温はひと月以上も先を行っている。旧暦で
はまだ9月長月だ。しかし寒いおかげで、豚
汁と栗おこわという好みの食卓となった。
10/26tue
ホトトギス清貧の否応なしと
(ほととぎすせいひんのいやおうなしと)
※清貧を旨とする高潔な人と少なくとも外見
は同じになった。老い、億劫、金なしに加
え、with コロナで否応なしの清貧である。
中身もそうありたいと願っているが・・・。
10/25mon
二階まで 朝顔の紺 今日は褒め
(にかいまで あさがおのこん きょうはほめ)
※10月下旬だというのにこの家の朝顔は盛
んだ。一階の壁は葉と蔓が蔽いつくし、紫
がかった紺色の花が二階の板壁と窓辺を半
ば隠している。寒い朝、今朝は季節感の異
常さはさておき、清々しさを感じた。
10/24sun
矯められし もみじ形を 取り戻す
(ためられし もみじかたちを とりもどす)
※長年桃の木いや桃の実優先で、枝が重なって
下部にあるもみじがばっさり伐られ、その後
も伸びる度に切られてきた。やっとこの秋、
桃の大枝を切り、もみじの雪辱を果たしてや
った。家人にはこっぴどく叱られたが。
10/23sat
菊坂の 秋簾ふと 見上げおり
(きくざかの あきすだれふと みあげおり)
※菊坂という響きは昭和、それ以前の明治の暮
らしを彷彿とさせた。源は一葉。谷地ともい
える一帯の佇まいは変わりつつも、訪れる人
々は引きも切らない。傍若無人の観光客は住
民の顰蹙を買っている。今も。小生も観光客。
10/21thu
早く去れ 雉狙わんと 威し銃
(はやくされ きじねらわんと おどしじゅう)
※「有害鳥獣の銃による駆除を行います」朝早
く市のスピーカーから流れる。被害のひどさ
は具体的に知っているけれども、雉もなの?
と思った。国鳥ではなかったか。
10/20wed
鳥渡る 細長き空を まっすぐに
(とりかえる ほそながきそらを まっすぐに)
美術展 上野の山で 脚さすり
(びじゅつてん うえののやまで あしさすり)
※久しぶりの東京。狭い通りの両側にマンショ
ンなど高いビルが立ち、空を占拠している。
視界に細長の四角い空がある。以前に親しん
だ通りほど、その空の変貌ぶりに驚く。血中
酸素濃度が低くなる。息苦しい。
10/19tue
降り立って 息白き夜は 栗名月
(おりたって いきしろきよは くりめいげつ)
※旧暦9月13日のこの夜の月(十三夜)を栗
名月というらしい。出かけた帰りの電車内か
らは雲が多くとても駄目だなと諦めていたが、
到着した駅頭からはなんときれいに見えた。
10/17sun
銀杏の やしろ前より 遠くなり
(ぎんなんの やしろまえより とおくなり)
※朝の散歩から足を延ばして「銀杏の社」に向
かう。夢にお告げがあったから。それにもか
かわらず時期はちょっと早かった。小さ目の
が袋一杯ほど。
事件ありて 自然薯掘りを とどまりぬ
(じけんありて じねんじょほりを とどまりぬ)
10/16sat
ヒヨドリと 柿を争う 朝の陣
(ひよどりと かきをあらそう あさのじん)
新語見て 却下却下よ 秋の風
(しんごみて きゃっかきゃっかよ あきのかぜ)
※否応なしに飛び込んでくる新語。仮の略語と
しか言いようがない。くだらないのが多い。
しかし言葉とはそれぞれの世代がその時代に
使い残すものだから拒絶しても始まらない。
自浄能力を信じるしかない。
10/15fri
夕闇や サツマイモ掘る 列残す
(ゆうやみや さつまいもほる れつのこす)
※「なーに今日中に終わるさ」と始めたが、半
分近くは明日以降に。概ねいい出来だが、所
々にネキリムシが試食した痕がある。良い色
の外皮が台無しだ。「だから急がないと」と。
10/13wed
化粧瓶なる濁酒を舐めてみる
(けしょうびんなるどぶろくをなめてみる)
※完全な禁煙をして満一カ月の昨日。ご褒美と
いうわけではないが、ちょっと前にお土産に
もらったドブロクを開けてみた。日本酒の原
酒に近い味? 時間がたっただけ変な味。
10/12tue
月見てる 帰宅困難の 客となり
(つきみてる きたくこんなんの きゃくとなり)
※仲間の中に先日夜の地震のために、ホテル泊
りをしたヤツがいた。羨ましいとか馬鹿とか
褒貶半ばの感想が飛び交っている。
10/11mon
ドビュッシーの 曲より速く 妻歩き
(どびゅっしーの きょくよりはやく つまあるき)
小三治の 音を落として 聞いた秋
(こさんじの おとをおとして きいたあき)
※前の句で多くの人が「月の光」を思い浮かべ
るのでは。月は名月、秋の季語。ゆっくり歩
きたいものだねェ・・・といいたいのかよ。
べらぼーめ~。と小三治が言う。バイク、ク
ラシック、音キチ、俳句・・・凝り性が好ま
しかった。
10/10sun
金木犀 欠伸うつしたき 人のあり
(きんもくせい あくびうつしたき ひとのあり)
摘まむ実の次は柿色を見極めつ
(つまむみのつぎはかき いろをみきわめつ)
※雲の低い日、金木犀の香りが強い。朝散歩帰
りに摘まむ庭の果物がぶどうから甘柿に変わ
った。ぶどうの前は桃。我が家の果物だから
おいしいが、いずれも極めて地味なナリであ
る。それでも豊饒を感じている。
10/8fri
房州の団扇 手に良し 秋団扇
(ぼうしゅうの うちわてによし あきうちわ)
※少し蒸し暑い日が続いた。しまい遅れの団扇
が夏の名残り。
10/7thu
秋の日の翳りてモネの日傘かな
(あきのひのかげりてもねのひがさかな)
※肺炎球菌ワクチンの5年前の接種証明を探し
ているが、当然見当たらない。1回目は定期
接種とかで自治体の一部補助があったが、2
回目は任意接種で9千円前後の自己負担とな
る。基礎疾患(習慣病など)がある者は特に
1回目の接種を呼びかけているが、効能5年
でそれ以降のための接種については呼びかけ
どころかコメントもしていない。どの自治体
も概ね然り。無責任とイワザルベカラズ。
10/6wed
紫煙消え 句読点なき 暮らし秋
(しえんきえ くとうてんなき くらしあき)
※禁煙してもうすぐ一カ月。今が踏ん張りどこ
ろだが、なんともメリハリのない暮らしを感
じてしまう。そう感じること自体情けない話
なのだが。
10/5tue
新米の 旬の野菜の ごとくして
(しんまいの しゅんのやさいの ごとくして)
※当地の稲刈りは早いから新米はとっくに出回
っているとか。昨夜当家の食卓にも。
味はよくわからないが、風味・香りは新鮮で
若々しくていい。少し固めのせいもあるかな。
ん、だんだん味も良くなってきた。
10/4mon
過ぎ行くは 渋皮を剥く 背の時間
(すぎゆくは しぶかわをむく せのじかん)
※散歩道を迂回して野山らしき方に向かう。道
沿いに栗の木があり、夕暮れに落ちた実を拾
っても大丈夫みたい。今年は幸運な日に20
個以上をゲット。中学生の通り道でもあるの
で、これ以上はムリ。結局は買って来て栗飯、
甘露煮と相成る。例年のパターン。
10/3sun
風なくて 雲ありてこそ 蕎麦の花
(かぜなくて くもありてこそ そばのはな)
秋時雨 サ行かすかに 朝の床
(あきしぐれ さぎょうかすかに あさのとこ)
※秋のヤセ蚊に散々やられ、真っ暗なうちに目
が覚めてしまう。無駄な思考はせず、ゆっく
り、あせらず、長い時間を過ごす。これがな
かなか難しい。
10/2sat
秋風や 芭蕉が性を 読みしかな
(あきかぜや ばしょうがさがを よみしかな)
※芭蕉が多方面での人脈と才能を持っていたこ
とは既に広く言われている。曰く、山師、ス
パイ、脱藩コーディネーターとか・・・。
しかし、これらの説は芭蕉の俳句が達した高
みを損なう何物でもない。むしろ、到達の要
因となるものだ。こういう評も多い。賛成。
10/1fri
秋の朝 布団変えての 夢路かな
(あきのあさ ふとんかえての ゆめじかな)
※もう一段厚い掛け布団に替えて、台風接近の
朝は意外と健やかに明けた。予想より遅いせ
いで関東南岸最接近は午後になってからだ。
一昨年来のトラウマはあるが、今回は当地
「進路の西側」に当たる。だから比較的平静。
(伊豆諸島の人々には申し訳ないが)
**********
9/30thu
残り出でし 隠元を食う 余生かな
(のこりいでし いんげんをくう よせいかな)
秋が来て 半藤が昭和を 思いけり
(あきがきて はんどうがしょうわを おもいけり)
※半藤一利の著作をまとめて読んだ。おまけに
今回は細君の末利子のエッセイも。昭和と較
べると、今日は甚だグローバルだけれど変動
要因、不安定要素が何倍にも増えた。
好みで二択ならまだいいのだが・・・。
9/29wed
身構える 台風のコース じわりまた
(みがまえる たいふうのこーす じわりまた)
※一昨年の房総半島台風を思わせる台風16号
の不気味な動き。あの時の暴風のすさまじさ
はそれまでの経験の最高値を遥かに超えてい
た。以来トラウマとなって残っている。
9/28tue
総裁選 まともはおらず 票もなし
(そうさいせん まともはおらず ひょうもなし)
画材にと 桜紅葉の シミが好き
(がざいにと さくらもみじの しみがすき)
※候補者はかなりの一長一短、つまり一人トッ
プの器ではないということ。一方朝の散歩道
で拾ったサクラの落ち葉は「お、これがいい、
やや、これも捨てがたい・・・」。
9/27mon
手の震え 医師はムリだった 泡立ち草
(てのふるえ いしはむりだった あわだちそう)
※70歳台でバリバリ現役の医師はごまんとい
る。手術も在宅医療の担い手も・・・少しは
社会に役立ちたいと思うが。
9/26sun
検診の 人まばらにて 秋の鬱
(けんしんの ひとまばらにて あきのうつ)
※コロナ禍の影響でガン検診の受診者が少ない
とか。昨日行ったところが、例年の半分以下
でスイスイだった。ガンの早期発見がそれだ
け困難になり、国民の健康も損なわれ、医療
費負担も嵩むか。必死に呼びかけてはいるが。
9/24fri
吾亦紅 年齢のみ母に 近づいて
(われもこう としのみははに ちかづいて)
※お彼岸のお中日に犬(外飼い)のシャンプー
をした。最近やけにかゆがるので、いい方の
シャンプーで丹念に。薬効はどうか? 少し
はいいみたい。感謝されている。
9/23thu
天高し 分厚き本の 進まざる
(てんたかし ぶあつきほんの すすまざる)
※図書館からのメールで本屋大賞受賞作の順番
が来たことを知る。予約してから半年近くだ。
難渋している読書中の本の次はこれにしよう。
9/22wed
早きこと 今年いずこも 曼殊沙華
(はやきこと ことしいずこも まんじゅしゃげ)
※庭の白い曼殊沙華も久留里線沿いの真っ赤な
曼殊沙華も見事に咲き揃っている。例年はお
彼岸中日にもやや遅れ気味だったのに。
9/21tue
月明かり 術後の姉の いびきかな
(つきあかり じゅつごのあねの いびきかな)
※コロナ禍下での入院と手術、経過は順調だ。
手術直後に限って5分ほどの対面は許された
が、その後の面会はダメ。届け物もナースセ
ンター経由。患者のわがままも抑止される。
ただし、明月は欲しいまま。
名月や 禁煙の唾 飲みこめり
(めいげつや きんえんのつば のみこめり)
9/20mon
電話口 朝飯中だと 敬老日
(でんわぐち あさめしちゅうだと けいろうび)
咽喉が良し 高音も出る 敬老日
(のどがよし こうおんもでる けいろうび)
※実は9月12日を期して禁煙をしている。過
去のようではなく、本当の禁煙だ。完璧な一
週間が経過した。爽快、ではある。
9/19sun
糸瓜忌や くせ爪すこし 治りけり
(へちまきや くせづめすこし なおりけり)
野球忌や 大谷遥かな 峰に立つ
(やきゅうきや おおたにはるかな みねにたつ)
※9月19日は子規忌。おや、子規忌かい、相
変わらず一年は早いなあ、と思う日。子規に
入れ込んでいた頃は少し前から騒いでいた。
9/17fri
秋の猫 リボンなどして 無視しおり
(あきのねこ りぼんなどして むししおり)
※岩合某氏の猫番組。猫の住む歴史、環境など
によって猫の扱い、扱われ方、そして猫の行
動に様々な違いが生じるものだとわかる。
知らない人には愛想のカケラも見せない猫は?
9/16thu
高安の まちまちな房 ぶどう描く
(たかやすの まちまちなふさ ぶどうかく)
※教室終了後の画材分捕りは熾烈を極める。
シャインマスカットの数粒が、昔ながらの小
粒な甲州ブドウ一房より人気を集める。人気
の甲斐路のピンチヒッターだったとはいえ、
ひどい仕打ちだ。甘いのに・・・・。
9/15wed
露草や 嚥下体操の 音きこゆ
(つゆくさや えんげたいそうの おときこゆ)
※開け放ったデイの窓から、大きな声が聞こえ
る。繰り返しの発声のトレーニングが咽喉元
の働きを強くするとか。
9/13mon
床屋言う かつて健脚 キノコ狩り
(とこやいう かつてけんきゃく きのこがり)
肺ガンの シロ点々と 秋澄めり
(はいがんの しろてんてんと あきすめり)
※行きつけの床屋の主人が三度目の癌の攻めに
直面している。手術が可能かどうか?最適の
抗がん剤は?次の外来で決めることになると
いう。
9/12sun
街道に 医家の門柱 帰燕かな
(かいどうに いかのもんちゅう きえんかな)
※季節は確実に過ぎていく。コロナ休みで休講
だった水彩画も来週には再開、画材は季節の
果物だとか。サボり過ぎ、どうしよう。
9/11sat
刈り残す 品種を尋ね うろこ雲
(かりのこす ひんしゅをたずね うろこぐも)
※当地の稲刈りは一部を残し殆どが終了。2年
前の房総半島直撃の台風襲来日も無事に過ぎ
た。まずは目出度い。あの時の強風と被害、
トラウマが完全には癒えていない。
9/10fri
遠きから 思い思いて 風の盆
(とおきから おもいおもいて かぜのぼん)
※いまだに実現していない富山市八尾のおわら
風の盆見物。九月上旬。かすかな憧れだけが
もう何十年も続いている。
若いころは、風の盆という名前に惚れてみた
り女踊りの清楚さが頭に焼き付いていた。中
年の頃は男踊りの渋さ、凛々しさこそ最高だ
と。そして今・・・。
あ、あそこで車椅子に座って飽かず眺めてい
る、あれが私だ。
9/9thu
草のびて 上下交換の 駅のあり
(くさのびて じょうげこうかんの えきのあり)
※晴れ間が見えても遠出はしない。今日は犬の
餌買いにちょっとだけ。単線久留里線の横田
駅は沿線中ほどの駅で、上り下り各一時間1
本の列車が交差する駅。昼下がり、静寂。
9/8wed
騒がしくなれど九月の歌多し
(さわがしくなれど くがつのうたおおし)
※首相最悪のやめ方。にわかに生臭い話が蔓延
しつつある。一方でNHKラジオでこの何日か
で September Song を3,4回聴いた。しか
も歌い手を変えて。耳に断然懐かしいのはや
はりシナトラ。
9/7tue
法師蝉の 影を奪いて 秋の冷え
(ほうしぜみの かげをうばいて あきのひえ)
長雨の 上がらんとして 虫なけど
(ながあめの あがらんとして むしなけど)
※10月下旬並みの気温。風流の人は惜春のよ
うな言葉はなくとも、行く夏を惜しみ次第に
秋めく今頃をしみじみ味わうというのだが・
・・。
9/6mon
刈入れは 爺がビールつぎ 始まれり
(かりいれは じじがびーるつぎ はじまれり)
※刈入れ作業は勤め人の孫の出番。腰を曲げて
眺めていた爺は初日を終えた孫にビールをつ
いでいる。と思う。去年までの主役息子は姿
が見えない。
9/5sun
秋天や 見上げつ半日 畑におり
(しゅうてんや みあげつはんにち はたにおり)
隠元棚 慈しみつつ 撤収す
(いんげんだな いつくしみつつ てっしゅうす)
※秋は畑作業が最高、とか言われ繰り出す。雨
の間の貴重な晴れ間。大当たりだったインゲ
ン豆。
9/3fri
花桔梗 息子寝んとて 帰り来る
(はなききょう むすこねんとて かえりくる)
※アフガニスタン米軍撤退とその後の混沌。
9/2thu
御仏を うたう父の句 二百十日
(みほとけを うたうちちのく にひゃくとうか)
※一気に十月上旬並みの気温に。豪雨被害はあ
ったが、台風の襲来はいまのところ少な目だ。
9/1wed
待ち兼ねて 雨音ソフト 八月尽
(まちかねて あまおとそふと はちがつじん)
秋雨や 雨城楊枝の 代替わり
(あきさめや うじょうようじの だいがわり)
※やっと一雨。雨城は久留里城の別名。長く城
下で作り伝えられた黒もじ楊枝がある。
**********
8/31tue
爽涼や 係船洗う 細き腕
(そうりょうや けいせんあらう ほそきうで)
※久しぶりに木更津港のそばを通った。日中の
気温は今日ぐっと低く、凌ぎやすい。砂利運
搬船が数隻いるだけ。
8/30mon
ホームラン 客なき席に 夏終わる
(ほーむらん きゃくなきせきに なつおわる)
※コロナ禍の真っ最中に、甲子園とパラリンピ
ック。やや不自然な多忙感。プツンッと切る
と田舎の超静寂な午後に。夏今終わる。
8/29sun
塗装屋の 足場の払い 速く秋
(とそうやの あしばのはらい はやくあき)
※近くで長々と丁寧に作業をしていた業者が仕
事を完了した。撤収作業。今日は素早い。
8/27fri
秋暑し 茶筅をしかと 手入れする
(あきあつし ちゃせんをしかと ていれする)
※もどった暑さは一段と強烈、当地は昨日今季
初めての猛暑日をを記録した。
8/26thu
新しき 稲刈り機動く 爺も見る
(あたらしき いねかりきうごく じじもみる)
※中旬までの長雨で大部分倒れた稲田がある。
全く丈夫な田も多い。暑い一日。
8/25wed
調剤の 袋を問われ 残暑かな
(ちょうざいの ふくろをとわれ ざんしょかな)
※毎日飲む薬がまた一つ増えた。山となった薬
を手渡しながら、可愛い薬局のお姉ちゃんが
言ったものだ。「一日おきの薬が多いから大
丈夫ですか?ちゃんと飲めますか?」
バーヤロー!
8/24tue
仕舞た屋に 都会の子いる 秋暑し
(しもたやに とかいのこいる あきあつし)
※東京ナンバーのクルマが子供を迎えに来たと
ころらしい。2学期もどうにか始まるようだ。
8/22sun
商店の消えゆく秋ぞ空を見る
(しょうてんの きえゆくあきぞ そらをみる)
ショーケースに 時計残れり 今朝の秋
(しょーけーすに とけいのこれり けさのあき)
※地方都市の個人商店はこの国の政策で消えゆ
く運命。主の高齢化などで、櫛の歯が抜ける
ようにパタパタと、しかし着実に消え去る。
8/20fri
ゆっくりと 猫が横切る 盆の明け
(ゆっくりと ねこがよこぎる ぼんのあけ)
日に一度 棚のブドウを 摘まみ食い
(ひにいちど たなのぶどうを つまみぐい)
※あれだけの前線が動き、夏の暑さがもどった。
しかし盆明けの世の中の活動再開は?
8/19thu
クロエーの 髪に秋風 手櫛さす
(くろえーの かみにあきかぜ てぐしさす)
※古代ローマ時代の小説のヒロイン、クロエー。
句が出来ないー。こういう日もある、多い。
8/18wed
塔の隅 見詰めて描く 夏帽子
(とうのすみ みつめてえがく なつぼうし)
※また暑い夏がやってきた。立派な山門を残す
寺に子供たちがスケッチしている。外出もま
まならなかったから、付き添いの人が見当た
らないのに、さぼらずに熱心に描いている。
見習わなければ・・・。
8/17tue
新涼というな前線居座れる
(しんりょうというな ぜんせんいすわれる)
※長雨のせいで気温は下がり、爽やかなとも言
える。当地の稲作農家は盆明けの刈り取りを
前にして、倒れた稲を苦々しく見つめる。
一方、水没した西日本の農家は悲嘆に暮れて
いる。
8/15sun
百日草 在宅治療という不安
(ひゃくにちそう ざいたくちりょうというふあん)
※血中酸素濃度94%以上は在宅治療とか。マク
ロの正解を導くための明快すぎる基準。
8/14sat
花魁草 我が家を去りて この宿に
(おいらんそう わがやをさりて このやどに)
※どこの庭も菜園もこの雨続きで手が入らない
ようだ。我が家も同様。西日本の被害状況の
ニュースを見れば、まだまだ恵まれている。
8/13fri
西瓜乗せ 売り声テスト 繰り返し
(すいかのせ うりごえてすと くりかえし)
※列島全体が前線に覆われ、豪雨の危険が広ま
る。気温が下がり、さすがに西瓜の季節は終
わりそう。知合いの西瓜農家も軽トラに満載
し、盆休みの客を頼みに出かける。
自家製の 小玉西瓜を 半分こ
(じかせいの こだますいかを はんぶんこ)
8/12thu
虹現れて 風の通りで 見んとする
(にじあれて かぜのとおりで みんとする)
※先日夕方の二度の夕立ちで、二つの虹が現れ
た。なかなか見事だった。風の通りは一番涼
しい通り、息を切らして駆け付けた。
声なくも 片陰つくる 幼稚園
(こえなくも かたかげつくる ようちえん)
8/11wed
草むしる 目線でじっと 我が家見る
(くさむしる めせんでじっと わがやみる)
※蚊取り線香をしっかり腰に巻いて草むしり。
この目線、この眺めは新鮮。下から目線。住
んで20年以上になるのに・・・。カメラに
収めると狭い庭が数倍の広さに見える。
8/9mon
片陰を スマホのラジオ ならし行く
(かたかげを すまほのらじお ならしゆく)
※オリンピック絡みの放送が消えると、こんな
にも変わるものか。一種静寂という感じ。
これでコロナ禍関連がなくなったら、この世
は何をテーマに回っていくのだろう。
8/8sun
包丁と テレビの音と 晩夏かな
(ほうちょうと てれびのおとと ばんかかな)
※日がな一日テレビに見入る亭主といやでもお
さんどんをする家内。もうそろそろ飽和状態
に近づいたところで、台風と五輪は閉会式だ。
長かった強雨がようやく上がったところで、
昨日が立秋だったことを知った。
8/7fri
原爆忌後期高齢者の二年
(げんばくき こうきこうれいしゃのにねん)
※原爆投下後76年。自分の満年齢に同じ。方
向性を持った着実な動きの象徴になればと思
うが、ここにも小さな分断が蔓延り、根付い
て久しい。
8/5thu
定斎屋の 売り声知らず 盛夏かな
(じょさいやの うりごえしらず せいかかな)
※街も住宅地の通りも見事に閑散。暑気払いの
薬を売り歩く天秤棒を担いだ薬屋。江戸の風
物詩。これ自身が季語だとか。
8/4wed
呆けては 知命いまだに 夏暖簾
(ほうけては ちめいいまだに なつのれん)
※50の歳は遥かになったが、「このまま行く
ことになるなァ」と暫く顔を見ていない友人
と話す。呆けてきそうな午後の話題。
8/3tue
とまる人あり暑しとも言わず行く
(とまるひとあり あつしともいわずいく)
※蒸し暑い。この朝も修行僧のごとく歩く人が
いる。初の熱帯夜になっても時刻はいつもと
同じだ。
8/2mon
豪雨去り 橋脚白し 土用かな
(ごううさり きょうきゃくしろし どようかな)
※不安定な天気になって、午前中の猛暑と午後
の雷雨というのがパターンになりつつある。
気象予報が今ほどでなかった頃は、この天気
パターンを「夏の天気の決まりごと」として
認識していた。
夕方の突然の驟雨と雷鳴、予測されると風物
詩とは言えなくなった。損をしている。
**********
7/31sat
地元紙にくるまれ母の夏野菜
(じもとしに くるまれははの なつやさい)
※下宿先で空に浮かんだ五輪マークを見た。
57年前の10月。東京生活1年目のあの頃、
こういうものが届いた。
7/30fri
激増も マスクと夏の 暮らしかな
(げきぞうも マスクとなつのくらしかな)
勤めあり 熱帯夜あり 五輪あり
(つとめあり ねったいやあり ごりんあり)
※どんなに感染が拡大しても工場勤務は続く。
都心から放射される拡大の波はこれ以上協力
しても限界。抵抗できない・・・と。体力を
誇る知人の息子のコロナ禍2題。
7/29thu
炎天や 白髪だけの 溝掃除
(えんてんや はくはつだけの みぞそうじ)
風鈴の 短冊に願い かけ直し
(ふうりんの たんざくにねがい かけなおし)
※一都三県の感染者数はなにやらキナ臭い匂い
までしそうだ。ピークアウトするのか、更に
暴騰となるのか。
7/28wed
この夏は 遅めの出会い 川とんぼ
(このなつは おそめのであい かわとんぼ)
※興味に任せてテレビ観戦を続けていると、エ
アコンはつけているのに頭がおかしくなりそ
う・・・。自重と口だけでは駄目。年齢相応
の自制を、と再度の自戒。
7/27tue
朝市の 婆こっくりと 紅蜀葵
(あさいちの ばばこっくりと こうしょっき)
※漁港近くの朝市はコロナ禍とオリンピックが
かさなり、地元客だけがパラパラと散歩がて
らの買い物。何十年か前にもどったようだと。
7/26mon
夏の日や 力出し切る 妙ありて
(なつのひや ちからだしきる みょうありて)
百日紅 五輪の色に 咲き初める
(さるすべり ごりんのいろに さきそめる)
※五輪のテレビ観戦を少し控えなくては・・・
と自戒。日本選手の活躍を追おうとは思って
いないのだが、昨日などは自然にそうなって
しまった。今日も自重、自重と念じつつ観戦
三昧。
7/24sat
雷が清め開会式の夜
(かみなりがきよめ かいかいしきのよる)
※紆余曲折を非難されつつも、昨夜の開会式。
控えめとの感想がありつつ、自己主張や国威
発揚の要素は少なく、自国の伝統や文化に過
度に固執することもなく、大人の開会式運営
だった、と思う。
7/23fri
打ち水や リサイクル屋の 浴衣見る
(うちみずや りさいくるやの ゆかたみる)
※衣料や小物を中心としたリサイクル屋がある。
女主人が浴衣姿でホースで水撒きしていた。
7/22thu
白玉や 墓の話を 少しして
(しろたまや はかのはなしを すこしして)
※後期高齢者の仲間入りをして、お墓はその使
用時期が近づいている。しかし夫婦で考え方
が違う。それで「ま、いいか、そのうちに・
・・」とほっといてある。
7/21wed
夏の庭 たしかに降った はずなのに
(なつのにわ たしかにふった はずなのに)
※夜中にかすかな雨音を聞いた。そういえば少
し涼しくなった。これはいい・・・。朝、雨
の痕跡は皆無。気象の記録も降雨は0。なん
だったんだ、あれは?
7/20tue
まっすぐに来てさっとよけ夏の蜂
(まっすぐにきてさっとよけ なつのはち)
※長雨と土砂災害、相変わらずのコロナ渦に猛
暑が加わった。右往左往しているうちにオリ
ンピックが直近に迫っていた。
7/19mon
浮草の稼業や三十年人恋し
(うきぐさのかぎょうやみそとせひとこいし)
※小津安二郎監督の映画「浮草」、ひと夏の小
さな漁師町での人の触れ合いと夏の風物を謳
っている。珠玉。
7/18sun
はつどれの 西瓜抱えて たたきおり
(はつどれの すいかかかえて たたきおり)
※ラグビーボール型の小玉西瓜。
「この音どう?」と聞かれても一個だけでは
とんとわからない。テレビで習った高い畝を
作って苗を植え、稲わらを敷き詰めるまでの
仕事は私、受粉のために何度も通ったのは家
内。意気揚々としている。
7/16fri
近道の 線路を跨ぐ 日傘かな
(ちかみちの せんろをまたぐ ひがさかな)
※朝一番の散歩で雲の形を見て「今日梅雨明け」
を確信した。案の定・・・。まだ堂々とはし
ていないけれども、ミニ積乱雲がニョキニョ
キ無数に立っていた。
7/15thu
雨降りの パリ祭とかに 手術決め
(あめふりの ぱりさいとかに しゅじゅつきめ)
※去年の今頃は、まだコロナ禍の何たるかにつ
いて殆ど知っていなかった。アソコの病院は
感染者が担ぎ込まれた、他の手術はキャンセ
ルされる、外来も控えた方がいいとか・・・。
肝心の克服はまだだけれども大分敵の正体は
わかってきた。必要な手術は受けよう。
7/14wed
麻のれん 都会の路地の あの日かな
(あさのれん とかいのろじの あのひかな)
※足が遠のいてどのくらいかなァ? 長雨と暑
さと、気候の変動に翻弄される日々・・・、
暮らしを作る力にふと弱さを感じる。
7/12mon
青梅雨や 落ちたる桃に 色微か
(あおづゆや おちたるももに いろかすか)
捩じり花 二回目無事と 返信し
(ねじりばな にかいめぶじと へんしんし)
※豪雨の後は晴れ間を待ち望んだが、梅雨明け
間近と言われると恐怖の真夏の日々を思い出
す。オリンピックがあるし、只ならぬ胸騒ぎ
も少し。無事を祈りたい。
7/11sun
祖父来る 麦わら帽子の 痕しかと
(そふきたる むぎわらぼうしの あとしかと)
※祖父は夏の外出にはどこに行くにしても昔風
の麦わら帽子をかぶって出かけたらしい。
70年以上過ぎて、私の日常も変わらず愛用
している。祖父が我が家を訪ねて、というこ
とはあり得ないが。
7/9fri
扇風機 車内で首ふる ヤツ恋し
(せんぷうき しゃないでくびふる やつこいし)
※東京での通勤時代の前半は電車にエアコンは
なかった。今日みたいな蒸し暑い日でなくと
も夏の車内は毎日が地獄だった。
7/8thu
御田植祭 乙女の白い 角かくし
(おたうえさい おとめのしろい つのかくし)
※未婚のきれいな女性が花嫁姿で30数名も。
文金高島田に角隠しの行列。旧会津田島町の
伝統の御田植祭り(祇園祭)は6月の遅い田
植えを無事終えて、7月に行われる。
(ただし今年の花嫁行列は中止)
7/7wed
梅雨明けず 瓜盗人という 季語のあり
(つゆあけず うりぬすっとという きごのあり)
卒寿翁 聞こえずはただ 聴かぬなり
(そゆじゅおう きこえずはただ きかぬなり)
※矍鑠としている先輩は目と耳の衰えを訴える。
外界の動きには旺盛な好奇心があるから、存
外耳の方はインプット次第ということかも。
7/6tue
梅雨晴れや 園児の声と 松籟と
(つゆばれや えんじのこえと しょうらいと)
梅雨晴れや デイの窓みな 開けられて
(つゆばれや でいのまどみな あけられて)
※三日三晩の雨が上がった。まだ怪しい空模様
である。長続きはすまい。ここは大きく深呼
吸というところか。
7/4sun
葛餅や 黒文字楊枝 舐めて終え
(くずもちや くろもじようじ なめておえ)
※遠くの大先輩の声が聞けた。卒寿。変わらぬ
声が懐かしい。雨も一休み。
7/3sat
長雨や 桃の実落ちる 音二つ
(ながあめや もものみおちる おとふたつ)
※下屋に落ちた実は雨音にも負けない音がする。
その度に私と家内は嘆息をもらす。
7/2fri
梅雨寒や スマホの容量 持て余し
(つゆざむや すまほのようりょう もてあまし)
※今回の雨はすごい。殆ど間断なく三日目。明
日いっぱいは降り続く模様。出かけてもラジ
オを聴くか、カメラを使うのが主体のスマホ
は1ギガ月千円で十分、なんとガラケー時代
よりも安価で済んでいる。家ではWi-Fi。
7/1thu
枇杷熟るる 二回目無事と 返信し
(びわうるる にかいめぶじと へんしんし)
ワクチンや オクラの花の頃に受く
(わくちんや おくらのはなのころにうく)
※ワクチン2回目の接種を終えた。2回目後の
方が副反応が出やすいと言われる。家内も数
日前、接種部位の腫れと痛みが続き、それが
原因と見られる熱が出た。静かにしている。
2020-01-21 13:30
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